JP2013189660A - マグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法 - Google Patents

マグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性と導電性の両方に優れたマグネシウム合金成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】マグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体1と、該基体の表面上の少なくとも一部分を被覆するアルミニウムめっき層であって、該基体に接触かつ結合しているアルミニウムめっき層とを含むことを特徴とするマグネシウム成形体である。
【選択図】図1

Description

本発明はマグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法、とりわけ耐食性に優れかつ十分な導電性を有するマグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法に関する。
マグネシウムおよびマグネシウム合金は、比強度および比剛性が高く、軽量化を容易に行えることから、携帯電話、カメラ、パーソナルコンピュータ等を含む多くの製品に用いられている。
しかし、マグネシウムは、非常に活性が高く、その金属表面は、容易に腐食し、変色等を生じてしまう。そこで、マグネシウム(マグネシウム合金等)に表面処理を施し、被覆を形成することにより、マグネシウム合金の耐食性を向上し、腐食を防止する必要がある。
このような表面処理の方法として、陽極酸化処理、化成処理、塗装が知られている。
実用的なマグネシウムの陽極酸化法としては、米国のダウケミカル社が開発した、DOW17法あるいはHAE法が知られており、長年に亘り用いられている(非特許文献1)。
例えば、DOW17法により純マグネシウムを表面処理すると結晶性のNaMgFとMgFとを主成分とし、非晶質の水和酸化物Mgx−2y(OH)とPO 3−とアンモニウム塩とCrとを少量含む被膜が形成されることが知られており、この被膜により耐食性を向上できる。
化成処理は化学反応を利用して被膜を作る表面処理法であり、マグネシウムと処理液との界面における酸化還元反応により目的の被膜を作る方法である(非特許文献2)。
化成処理は、クロム系化成処理(所謂、低クロム系化成処理を含む)およびノンクロム系化成処理の2つに大別される。
クロム系化成処理では、マグネシウムの表面にクロム酸塩または重クロム酸塩のようなクロムを含む被膜を形成することにより耐食性を向上している。
一方、ノンクロム系化成処理では、例えばリン酸マンガン、リン酸カリウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、およびシュウ酸塩のような、クロムを含まない被膜を形成することにより耐食性を向上している。
日本マグネシウム協会編 マグネシウム技術便覧 P342-344 日本マグネシウム協会編 マグネシウム技術便覧 P350-335
しかし、陽極酸化および化成処理により形成された被膜は、耐食性に優れるという利点を有する一方で、導電性が低いという問題がある。
マグネシウム成形体を例えば家電製品などのようにアースを取るため必要がある用途に使用する場合、電気伝導性が必須となる。このため、陽極酸化または化成処理により得られた被膜の上に、さらに金属めっきを行うことで導電性を付加する場合がある。
しかし、このように金属めっきを行っても基体のマグネシウム部分と金属めっきとの間に導電性に劣る被膜が存在するためにマグネシウム合金成形体として、所望の導電性を確保できない場合がある。
また、このように陽極酸化処理または化成処理を行った後、更にめっき処理を行うことはコスト増となり、経済的にも不利であった。
そこで、本願発明は、耐食性と導電性の両方に優れたマグネシウム合金成形体(以下、「マグネシウムまたはマグネシウム合金成形体」のことを単に「マグネシウム合金成形体」という場合がある。)およびその製造方法を提供することを目的とする。
本願発明の態様1は、マグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体と、該基体の表面上の少なくとも一部分を被覆するアルミニウムめっき層であって、該基体に接触かつ結合しているアルミニウムめっき層と、を含むことを特徴とする成形体である。
本願発明の態様2は、前記アルミニウムめっき層の厚さが5μm〜30μmの範囲であることを特徴とする態様1に記載の成形体である。
本願発明の態様3は、1)AlClとEMIC(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド)とを含むイオン液体を準備する工程と、2)25℃以下に冷却した前記イオン液体にマグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体を浸漬した後、該基体を作用極として電流を流すことにより電解めっきを行い、該基体に接触かつ結合しているアルミニウムめっき層を形成する工程と、を含むことを特徴とする成形体の製造方法である。
本願発明の態様4は、前記イオン液体のAlCl濃度が63mol%〜70mol%であることを特徴とする態様3に記載の製造方法である。
本願発明の態様5は、前記工程2)において、前記イオン液体を5℃〜15℃に冷却することを特徴とする態様3または4に記載の製造方法である。
本願発明の態様6は、前記イオン液体がエチレングリコールを含むことを特徴とする態様3〜5のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明の態様7は、前記電流がパルス電流であることを特徴とする態様3〜6のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明に係るマグネシウム合金成形体は、その表面に耐食性と導電性との両方に優れたアルミニウムめっき層を有する。そして、このアルミニウムめっき層は、マグネシウム合金等から成る基体と接触しかつ結合している。
このため、本願発明に係るマグネシウム合金成形体は優れた耐食性と高い導電性とを両立できる。
また、本願発明に係るマグネシウム合金成形体の製造方法では、マグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体の表面に、該基体と接触するアルミニウムめっき層を形成する。このため、得られたマグネシウム合金成形体は優れた耐食性と高い導電性とを両立できる。
図1は、本願発明係るマグネシウム合金基体を製造するのに用いるめっき装置の例である3極式電解セル(めっき装置)100を示す概略図である。 図2(a)は、用いたAZ121合金板の表面のSEM像であり、図2(b)はMgのEDSマッピング図であり、図2(c)は、AlのEDSマッピング図である。 図3は、パルス電解法に用いた電流パルスによる反応物の界面濃度変化に起因する電位変化を模式的に示す。 図4は、25℃、10℃および5℃に保持したEMIC−AlClイオン液体11中におけるグラッシ−カーボン電極上でのボルタモグラムである。 図5は、イオン液体11の温度25℃、10℃および5℃において、マグネシウム合金基体1上に電析したアルミニウムめっき層の表面写真である。図5(a)はイオン液体11の温度が25℃の場合であり、図5(b)はイオン液体11の温度が10℃の場合であり、図5(c)はイオン液体11の温度が5℃の場合である。 図6は、イオン液体11が10℃の時に得た電析物に対する面分析結果を示す。 図7は、イオン液体11の温度が25℃の場合のSEM像である。図7(a)は表面観察結果であり、図7(b)は断面観察結果である。 図8はイオン液体11の温度が25℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。 図9はイオン液体11の温度10℃において得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図9(a)は表面観察結果であり、図9(b)は断面観察結果である。 図10はイオン液体11の温度が10℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。 図11はイオン液体11の温度5℃において得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図11(a)は表面観察結果であり、図11(b)は断面観察結果である。 図12はイオン液体11の温度が5℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。 図13はイオン液体の温度が25℃の場合の得られたマグネシウム成形体の表面写真であり、図13(a)はEG濃度が0の場合であり、図13(b)はEG濃度が0.1mol/Lの場合であり、図13(c)はEG濃度が0.2mol/Lの場合であり、図13(d)はEG濃度が0.5mol/L場合である。 図14はイオン液体の温度が10℃の場合の得られたマグネシウム成形体の表面写真であり、図14(a)はEG濃度が0の場合であり、図14(b)はEG濃度が0.1mol/Lの場合であり、図14(c)はEG濃度が0.2mol/Lの場合である。 図15は、イオン液体11の温度25℃、EG濃度0.1mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図15(a)は表面観察結果であり、図15(b)は断面観察結果である。 図16は、イオン液体11の温度25℃、EG濃度0.2mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図16(a)は表面観察結果であり、図16(b)は断面観察結果である。 図17は、イオン液体11の温度10℃、EG濃度0.1mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図17(a)は表面観察結果であり、図17(b)は断面観察結果である。 図18は、イオン液体11の温度10℃、EG濃度0.2mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図18(a)は表面観察結果であり、図18(b)は断面観察結果である。 図19は得られた試料の表面写真であり、図19(a)は周波数が0.67Hzの場合を示し、図19(b)は周波数が6.7Hzの場合を示し、図19(c)は周波数が11Hzの場合を示し、図19(d)は周波数が111Hzの場合を示す。 図20は、周波数が6.7Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図20(a)は表面観察結果であり、図20(b)は断面観察結果である。 図21は、周波数が11Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図21(a)は表面観察結果であり、図21(b)は断面観察結果である。 図22は、周波数が111Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図22(a)は表面観察結果であり、図22(b)は断面観察結果である。 図23は、得られたアルミニウムめっき層3の観察結果である。図23(a)は表面写真を示し、図23(b)は表面SEM像を示し、図23(c)は断面SEM像を示す。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
本願発明者らは鋭意検討した結果、詳細を以下に示すように、AlCl(三塩化アルミニウム)とEMIC(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド)とを含むイオン液体を用い、該イオン液体を25℃以下の温度にして、マグネシウム合金基体を該イオン液体に浸漬し、該マグネシウム合金基体を陰極(作用極)として、電流を流すことにより当該イオン液体からアルミニウムめっき層をマグネシウム合金基体(マグネシウムまたはマグネシウム合金から成る基体)に電析させることで、マグネシウム合金基体、すなわち、マグネシウムまたはマグネシウム合金と直接接触し、かつ結合しているアルミニウムめっき層を得ることができることを見出した。
そして、マグネシウム合金基体の表面にこのようなアルミニウムめっき層を有するマグネシウム合金成形体は、耐食性および電気伝導性に優れる。
アルミニウムは、マグネシウムおよびマグネシウム合金と比べて耐食性に優れ、また極めて高い導電性を有することから、マグネシウムおよびマグネシウム合金に接触しかつ(容易に剥離しない程度に十分に強く)結合しているアルミニウムめっき層を形成することができればマグネシウム合金成形体の耐食性および導電性を向上できるであろうことは予想されていた。
しかし、マグネシウムがアルミニウムより卑な元素であるため、従来のイオン液体によるめっき法、電解めっき法および無電解めっき法を含む従来のめっき法では、アルミウムを含むめっき液にマグネシウム合金等を浸漬すると、直ちにマグネシウムとめっき液中のアルミニウムイオンとの置換が急速に進んでいく。
このような、急速な置換反応により形成されるアルミニウムめっきは、スポンジ状の(層状および被膜状でない)形態であり、単に、マグネシウムおよびマグネシウム合金の上に載っているだけで、マグネシウムまたはマグネシウム合金と結合していないものであった。このため、形成したアルミニウム(スポンジ状アルミニウム)は、例えば水洗等により弱い力が作用しただけで簡単にマグネシウム合金等と離れてしまうため、耐食性を向上させる効果を有するものではなかった。
すなわち、マグネシウムおよびマグネシウム合金に接触しかつ結合しているアルミニウムめっき層(アルミニウムめっき被膜)を形成することができなかった。
そして、このような、急速な置換は、電解液(めっき液)として、各種の水溶液または従来のイオン液体を用いる電解めっきにおいて、電流を流さずにマグネシウム合金基体を電解液に浸漬した直後に発生する。
従って、電解めっきにおいて、電流の印加の有無に関わらず、密着性のないスポンジ状アルミニウムが生じていた。
マグネシウムまたはマグネシウム合金の表面に、例えば、銅めっき層またはニッケルめっき層のような、アルミニウムより貴である金属の中間層を形成し、当該中間層の上にアルミニウムめっき層を形成する方法が知られていた。この場合、中間層とアルミニウムとの密着性および中間層とマグネシウムまたはマグネシウム合金との密着性を確保することでアルミニウムめっき層の剥離を抑制することは可能となる。
しかし、めっきにピンホール等が存在すると、アルミニウムよりも貴である中間層とアルミニウムより卑であるマグネシウム合金等との間に、大きな電位差を伴う局部電池を形成し、大きな腐食ピットを形成してしまうという問題がある。めっきのピンホールを完全に無くすことは困難なため、十分な耐食性を得ることはできなかった。
本願発明者は、AlClとEMICとを含むイオン液体を25℃以下の温度にし、当該イオン液体にマグネシウム合金基体を浸漬し、当該マグネシウム基体を陰極(作用極Oとして、作用極とイオン液体中の対極(陽極)との間に電流を流すことにより、当該にマグネシウム合金基体と接触および結合しているアルミニウムめっき層(アルミニウムめっき被膜)を得ることができることを見出した。
AlClとEMICとを含むイオン液体を25℃以下の温度することで、マグネシウムまたはマグネシウム合金との密着性に優れたアルミニウムめっき層が得られることについて、本願発明者らが考える本願発明の技術的範囲を制限するものではないメカニズムは、以下の通りである。
適切なイオン液体を選択し、かつイオン液体の温度を低くすることで、めっき工程でのマグネシウムとイオン液体中のアルミニウムイオンとの間の置換、とりわけマグネシウム合金基体を浸漬した後でかつ電流を流す前の状態でのマグネシウムとアルミニウムイオンとの間の置換が抑制され、密着性の無いスポンジ状のアルミニウムの形成を抑制できる。この結果、密着性に優れたアルミニウムめっき層が得られるものと考えられる。
以下にいくつかの用語の定義を説明する。
本明細書において、マグネシウムまたはマグネシウム合金から成る基体のことを便宜上「マグネシウム合金基体」という場合がある。
すなわち、「マグネシウム合金基体」とは、各種のマグネシウム合金から成る基体だけでなく、純マグネシウムから成る基体を含む。
本明細書において、マグネシウムおよびマグネシウム合金のことを便宜上「マグネシウム合金等」という場合がある。
すなわち、「マグネシウム合金等」とは、各種のマグネシウム合金だけでなく、純マグネシウムを含む。
本明細書において、「アルミニウムめっき層が、マグネシウムシムまたはマグネシウム合金(すなわち、マグネシウム合金基体)と接触しかつ結合している」とは、アルミニウムめっき層とマグネシウムまたはマグネシウム合金(マグネシウム合金基体)との間に物理的および/または化学的な結合力が作用し、水洗によりアルミニウムめっき層が剥離しない、より好ましくは消しゴム試験によりアルミニウムめっき層が剥離しない程度にアルミニウムめっき層とマグネシウムまたはマグネシウム合金(マグネシウム合金基体)とが密着していることを意味する。
なお、消しゴム試験とは、市販のプラスチック消しゴムを用いて、紙に鉛筆で書かれた文字を消すのと同程度の強さで、基体の上にめっきされためっき層を消しゴムで擦りめっき層の大半が剥離するか否かによりめっき層の密着性を評価する試験である。
以下に本願発明に係るマグネシウムまたはマグネシウム合金成形体とその製造方法を詳述する。
図1は、本願発明係るマグネシウム合金基体を製造するのに用いるめっき装置の例である3極式電解セル(めっき装置)100を示す概略図である。
詳細を後述する本願の実施例では、ボルタモグラム測定等の電気化学測定を実施したため3極式電解セル(めっき装置)100を用いた。
めっき装置100は、電解槽15とポテンシオスタット18と含み、ポテンシオスタット18を制御するおよび/または得られたデータを保存・解析するコンピュータ20を更に含む。
電解槽15に内部には、イオン液体11が入れられている。
イオン液体11の温度を測定する温度測定器として、熱電対14が配置されている。熱電対14は、図示しない加熱冷却装置と電気的に接続されており、この加熱冷却装置により、イオン液体11を所望の温度に維持することができる。
そして、イオン液体11に少なくとも一部分が浸漬するように、マグネシウム基体1と、対極(または陽極、CE)10と、参照極(RE)12が配置されている。マグネシウム基体1は、陰極(または作用極、WE)として機能する。
マグネシウム基体1と、対極(陽極)10と、参照極12とはポテンシオスタット18に電気的に接続されている。
ポテンシオスタット(電源装置)18は、マグネシウム基体1を陰極として、マグネシウム基体1と対極10との間に電圧を印加し電流を流すことができる。
ポテンシオスタット18により、マグネシウム基体1と対極10との間に流される電流は、電流値(電圧)が一定の直流でもよく、またパルス電流のように電流値(電圧)が変化してもよい。
電解槽15は、その内部に図1に例示するアルゴンガス(Ar)もしくは窒素ガス等の不活性ガスまたは他のガスのような所望の雰囲気ガスを導入することが可能である。そして、導入した雰囲気ガスが電解槽15の内部から流出するのを抑制するために、電解槽15は、蓋16を有してよい。
なお、上述のように、3極式電解セル(めっき装置)100は、電気化学測定を行える構成となっている(必要に応じて陰極と陽極を入れ換えることも可能な構成となっている)ため、例えば、参照極12のように、本願発明に係るマグネシウム成形体を製造するのに必ずしも必要でない構成要素を含んでいる。
すなわち、所定の温度のイオン液体11を収容できる電解槽15と、少なくとも一部がイオン液体11に浸漬されるマグネシウム基体1および対極10に電流を供給する電源装置18とを有する限りは、既知の任意のめっき装置を本願発明に係るマグネシウム成形体を製造するために用いてよい。
次に、図1に示す各要素について詳述する。
(1)イオン液体
以下に、本発明に用いるイオン液体11について詳述する。
・イオン液体の組成
イオン液体とは、常温型溶融塩と呼ばれる主にイオンからなる、常温で液体である溶融塩である。
本願発明に用いるイオン液体11は、AlCl(三塩化アルミニウム)とEMIC(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド)とを含む。AlClとEMICと含むイオン液体を後述する温度に冷却することで、めっき工程において、アルミニウムとマグネシウムの置換速度を抑制でき、マグネシウム基体1と直接接触し、かつ結合している(密着性に優れる)アルミニウムめっき層を形成できるからである。
好ましくは、AlClとEMICとを合計した量がイオン液体全体に占める比率がモル比で50%以上である。
より好ましくは、イオン液体11は、AlClと、EMICと、詳細を後述する、必要に応じて意図的に加えられる添加材とより成る。より密着性に優れたアルミニウムめっき層(アルミニウムめっき皮膜)を得ることができるからである。
以下、AlClとEMICとのみを混合して得たイオン液体(ただし、後述する意図的に加えた添加剤を含んでよい)を「EMIC−AlClイオン液体」と呼ぶ場合がある。
EMICとAlClとを含むイオン液体はAlCl濃度によって、液中に存在するイオン種が変化し、活量や導電性といった液性も変化する性質がある。溶融塩中のAlCl濃度が63mol%を超えるとイオン液体の融点は急激に低下すること、AlCl の活量が65mol%以上でほぼ1になることから、AlCl濃度は、63mol%以上が好ましく、65mol%以上がより好ましい。
EMIC−AlClイオン液体で、AlCl濃度が、63mol%以上であることがさら好ましく、65mol%以上であることがさらにより好ましい。
一方、AlCl濃度の増加に伴いイオン液体の導電率が低下すすることから、AlCl濃度が70mol%以下であることが好ましい。EMIC−AlClイオン液体で、AlCl濃度が70%以下であることより好ましい。
このような好適なイオン液体として、AlClが約67mol%のEMIC−AlClイオン液体(すなわち、モル比でAlCl:EMICが2:1)を挙げることができる。
このような、EMIC−AlClイオン液体中に存在するイオン種は、AlCl 、AlCl 、Cl及びEMI(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン)である。
・イオン液体の温度
上述したように、本願発明は、イオン液体の温度を低くした状態でマグネシウム合金基体1をイオン液体に浸漬し、通電してめっき(電解めっき)することを特徴とする。
イオン液体の温度は室温以下、具体的には25℃以下にする必要がある。これにより、イオン液体の導電性を低下できる。この結果、アルミニウムとマグネシウムの置換反応、とりわけ通電する前に生ずる置換反応を抑制できると考えられる・
好ましくは、イオン液体を15℃以下にし、より好ましくは、イオン液体を−5℃〜15℃にする。イオン液体の導電性をより好ましい状態まで低下できるからである。更に好ましくは、イオン液体を5〜15℃にする。イオン液体の導電性が過度に低くなるのを確実の防止でき、イオン液体の導電性を非常に好ましい状態にできるからである。
工業的に大規模にめっきを行う際には、めっきによる通電のため、イオン液体が加熱されることから、イオン液体を所望の温度に維持できるように、チラー等の冷却装置を適宜用いることが好ましい。
・イオン液体への添加物
アルミニウムめっき層の厚さが10μm程度であれば、アルミめっき層は比較的容易に平坦になる。
しかし、めっき厚さが10μmより厚くなると、得られるアルミめっき層の平坦度が低下する場合があり、用途によっては低い平坦度が好ましくない場合がある。特に、例えば結晶粒界に析出したβ相(Mg17Al12)のような、析出物が存在するマグネシウム合金を用いる場合は、得られるアルミニウムめっき層の平坦度が低くなる傾向がある。
そこで、得られるアルミニウムめっき層(アルミニウム被覆)をより平坦にするために、イオン液体に添加物を加えてもよい。また、添加物を加えることにより、得られるアルミニウムめっき層の微細な凹凸を平坦にして光沢を増加させてもよい。
このような平滑剤および/または光沢剤として機能する添加物として、2価アルコール類であるEG(エチレングリコール)を例示できる。
これらの中でもイオン液体への溶解度が高く、平滑化または光沢向上の効果が顕著なことからEGが好ましい。EG(エチレングリコール)を添加する場合、イオン液体中での好ましい濃度は、0.05mol/L〜0.5mol/Lであり、より好ましい濃度は0.1mol/L〜0.3mol/Lである。
(2)めっき電流
上述のように、マグネシウム合金基体1を作用極(陰極)とし、対極(陽極)とし電流を流す。電流は直流電流であってよい。
好ましい電流密度は1mA/cm〜5.0mA/cmである。
また、好ましくは、パルス電流を用いる。
繰り返しパルス(パルス電流)による電解めっきは、めっきの分野ではパルスめっきと呼ばれ、拡散の影響を極小化する手段として好ましい。
様々な形状の電位あるいは電流パルスが用いられてよい。
電解の起こらない電位から電解の起こる電位にステップさせ、その後ある一定の時間をおいて再び電解の起きる電位にステップさせること(パルス印加)を繰り返すことが好ましい。
めっきが拡散律速状態の場合、界面濃度はパルス通過時tonには低下し、パルス休止時のtoffには回復するので、それに伴って電位は変動する。パルス電解では、核発生が多く進行し、優先成長を抑制する効果があるので平滑なアルミニウムめっき層を得ることができる
パルス電解は直流電解(直流電流)よりも高い電流密度で、従って高い活性化過電圧で電解することが可能である。この結果、各成長速度が核生成のそれよりも大きくなることで形成されるアルミニウムめっきの微細化及び緻密化が期待できる。
なお、パルス電流の周期T(秒)は、T=ton+toffと定義でき、周波数F(Hz)はF=1/Tと定義でき、Duty比(デューティー比、総時間に占める電流が流れている時間の比)は、Duty比(%)=ton/T×100で定義できる。
好ましい電流密度はtonが1mA/cm〜10.0mA/cmであり、toffが0(ゼロ)である。
好ましい周波数は0.5〜20Hzであり、より好ましい周波数は1〜20Hzであり、さらに好ましい周波数は3〜8Hzである。
好ましいDuty比は、30〜80%であり、より好ましいDuty比は、55〜75%である。
なお、印加電気量は、得ようとするアルミニウムめっき層の厚さに応じて適宜調整してよい。好ましいアルミニウムめっき層の厚さは、1μm〜50μmであり、より好ましいアルミニウムめっき層の厚さは、5μm〜30μmである。めっき層の密着性と耐食性をより確実に両立できるからである。
マグネシウム合金基体上に形成したアルミニウムめっき層の厚さは、例えば、断面でのアルミニウムめっき層の厚さをSEM像上で3箇所以上測定し、これら測定値の平均値を計算することにより求めることができる。
(3)マグネシウム合金基体
マグネシウム合金基体は、マグネシウム(純マグネシウム)またはマグネシウム合金より成る。
マグネシウム合金基体がマグネシウム合金よりなる場合。用いられるマグネシウム合金は、既知の任意のマグネシウム合金を用いてよい。
好ましいマグネシウム合金としてアルミニウム含有量が3質量%以上の各種合金であり、例えば、ASTM規格に規定されるAZ31、AZ61、AZ91、AM50、AM60合金、AZ121(Al:11.3〜12.7質量%、Zn:0.22質量%以下、、残部:Mgと、例えば、Si、Cu、NiおよびFeのような不可避的不純物)、AZ201(Al:19.3〜20.7質量%、Zn:0.22質量%以下、残部:Mgと、例えば、Si、Cu、NiおよびFeのような不可避的不純物)を例示できる。これらの合金に、Ca、Sr、希土類元素等を添加された合金でもよい。合金におけるアルミニウム添加量が3質量%以上になると、アルミニウムの電析が円滑に進み易い。
合金基体1は、板、パイプ、ワイヤー、直方体および球を含む任意の形状であってよい。また、マグネシウム合金基体1は、鋳造、鍛造、ダイカスト(チクソモルディング等を含む)、圧延、引き抜きおよび押し出しを含む既知の加工方法により得ることができる。
なお、マグネシウム合金基体1は、電解めっき処理を施す前に脱脂、洗浄を目的に溶媒洗浄、アルカリ溶液での脱脂洗浄のような前処理を行ってもよい。
アルミニウムめっき層は、用途および要求される特性等に応じて、マグネシウム合金基体1の表面全体に形成してもよいし、表面の一部分に形成してもよい。
マグネシウム合金基体1の一部分にのみアルミニウムめっき層を形成する場合は、めっき層を形成する部分だけをめっき層に浸漬するようマグネシウム合金基体1の表面を樹脂テープまたは樹脂被膜等によりマスキングしてよい。
1.電解浴(イオン液体)の調製
1−1.EMIC−AlClイオン液体11の調製と精製
イオン液体11を以下の方法により得た。
EMICは、高い吸湿性を持つ有機物であるため、すべての操作はアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。このようにイオン液体を調整および精製する際はアルゴンまたは窒素のような不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
EMIC(MERCK製、98%)と無水AlCl(添川理化学製、99.999%)をモル比1:2の組成で所定量を秤量した。次に、ビーカーにEMICを入れ、そこにAlClを少量ずつ加え、その都度ガラス棒で攪拌する作業を繰り返した。また、イオン液体が発熱するため水冷のガラスセル中で冷却しながら撹拌を行った。
EMICイオン液体は、100℃以上で変質する恐れがあるため、このような冷却は好ましい。調製したイオン液体はパイレックス(登録商標)製の密閉瓶に保存した。
調製したイオン液体は薄茶色を呈し透明であった。これはイオン液体中に含まれる不純物が原因と考えられる。イオン液体の不純物は取り除くことが好ましい。
イオン液体の不純物を除去する方法としては混合前のEMICを再結晶させる方法と、得られたイオン液体を精製する方法および、この両方を実施する方法を例示できる。
再結晶させる方法は、EMICをアセトニトリルに溶解し、酢酸エチルを加え沈殿させ、沈殿したEMICを濾過してアセトニトリルと酢酸エチルの混合液で洗浄する操作を数回繰り返す方法である。
またイオン液体を精製する方法は、得られたイオン液体に活性なアルミニウムチップまたはアルミニウムワイヤーを投入し、約50℃で保持し、水およびその他の不純物を置換反応によって除去する方法である。置換反応として水がアルミと水素に、その他の不純物はアルミチップ表面に置換される。
本実施例では、精製する方法のみでイオン液体の不純物が十分取り除かれると判断できたため、精製する方法のみを実施した。
すなわち、上述のイオン液体の入った密閉瓶に高純度のアルミニウムワイヤー(高純度化学研究所製、99.99%、直径2mm)を長さ約1cmのチップにして投入した。アルミニウムワイヤーのチップ投入後50℃で3日間保持して精製を行った。
2.電解めっき(電気化学測定)方法
・めっき装置
めっき装置として図1に示す3極式電解セル(めっき装置)100を用いた。
イオン液体11の温度は、冷却装置を用いて、電解セル100の周りに冷却水を流し、K型熱電対14を用いて温度を測定および制御した。また、電解槽15の蓋16として直径8cmのPTFE板を使用した。
電解めっきにおいて作用極(WE)となるマグネシウム合金基体1として、AZ121マグネシウム合金板を用いた。ボルタモグラム測定用には、作用極としてグラッシーカーボン板を用いた。
マグネシウム合金基体1は、イオン液体11と接触する面積(イオン液体11に浸漬される面積)を3cmとした。
対極(CE)11として高純度のアルミニウム板(ニラコ、99.999%)を用いた。
参照極(RE)12として、高純度のアルミニウムワイヤー(ニラコ、99.98%、直径0.5mm)を用いた。
なお、参照電極12はガラス管で電解浴のイオン液体11と隔離し、セラミックスファイバーで導通を取り、EMIC−AlClイオン液体を満たした。
マグネシウム合金基体1に用いたAZ121合金板は、#400、#600の耐水研磨紙で粗研磨しアセトンを用いて超音波洗浄した後、表面の酸化を防ぐため、電解めっき直前にアルゴン雰囲気のグローブボックス内で#800の耐水研磨紙で研磨を行い、アセトンに浸したキムワイプ(登録商標)で表面の不純物をふき取ってから使用した。
すべての実験はアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行い、電気化学測定はポテンシオスタットを接続して行った。本実験で使用したAZ121マグネシウム合金の組成を表1に示す。
Figure 2013189660
図2(a)は、用いたAZ121合金板の表面のSEM像であり、図2(b)はMgのEDSマッピング図であり、図2(c)は、AlのEDSマッピング図である。
一般にAZ系合金は、マトリクスには初晶マグネシウムであるα相が存在し、粒界にはβ相が存在する。β相とは共晶マグネシウムと金属間化合物Mg17Al12との混合層である。
図2(a)のSEM像において、黒く映っているところは、EDSマッピングズではMgのみが検出されているためα相に対応し、同SEM像で白く映っているところはβ相中のMg17Al12であると考えられる。
・ボルタンメトリー
ボルタンメトリーは、電極表面あるいは電極近傍での反応を把握するための電気化学的手法である。初期電位を浸漬電位に設定し、時間に比例した電位の掃引を行い、ある電位で電位掃引方向を反転させ、順方向と同じ掃引速度で電位を掃引して、初めの電位に戻る。この時、電位をカソード方向に掃引させた場合には還元反応が起こり、電位をアノード方向に掃引させた場合には酸化反応が起こる。
この測定によりイオン液体11中におけるAl電析・溶解電位を調査した。
・パルス電流による電解めっき(パルス電解法)
図3は、パルス電解法に用いた電流パルスによる反応物の界面濃度変化に起因する電位変化を模式的に示す。図3中の「0.1M EG」は、エチレングリコール濃度が0.1mol/Lであることを示し、「0.2M EG」は、エチレングリコール濃度が0.2mol/Lであることを示す。
パルス電解は、電流密度をパルス通過時tonには1.7mA/cmとし、パルス休止時のtoffには0mA/cmとした。Duty比は67%、印加電気量は20C/cmとし、パルス電流の周波数、イオン液体11の温度、イオン液体11が含有する添加物量の条件を変え電解を行い、それぞれの効果について検討した。
・マグネシウム成形体のアルミニウムめっき層の観察
パルス電解によって得られたマグネシウム成形体(マグネシウム合金基体1の表面にアルミニウムめっき層を有する成形体)を電解終了後イオン液体11電解浴から取り出し、アセトンに浸漬してイオン液体11を取り除いた後エタノールで洗浄し乾燥させた。
得られたマグネシウム成形体の表面及び断面を調べるため、SEMによる観察を行った。マグネシウム成形体の断面を観察する際には試料を冷間埋め込み樹脂に埋め込み、切断後Au蒸着を施してから観察し、アルミニウムめっき層の形態や密着性を調べた。また、試料の析出形態を観察するため試料断面をEDS により元素分析を行った。
3.実験結果
3−1.ボルタンメトリー
25℃、10℃および5℃に保持したEMIC−AlClイオン液体11中におけるグラッシ−カーボン電極上でのボルタモグラムを図4に示す。測定は、自然浸漬状態から−0.6Vまでカソード掃引後、0.7Vまでアノード掃引したものである。掃引速度は10mV/秒で行った。
3−2.パルス電流によるめっき
図5は、イオン液体11の温度25℃、10℃および5℃において、マグネシウム合金基体1上に電析したアルミニウムめっき層の表面写真である。図5(a)はイオン液体11の温度が25℃の場合であり、図5(b)はイオン液体11の温度が10℃の場合であり、図5(c)はイオン液体11の温度が5℃の場合である。
何れもパルス電流の周波数は6.7Hzである。
すべての温度において白色の電析物を得た。いずれも消しゴム試験をクリアーする十分な密着力を有していた。図5より、電解液温度の低下に伴い、電析物が不均一になっていることが判る。イオン液体の温度が5℃の場合は、ムラが最も大きかった。アルミニウムめっき層が薄いところは黒く変色していた。
また白色の電析物を同定するためEPMAにより面分析を行った。図6は、イオン液体11が10℃の時に得た電析物に対する面分析結果を示す。図6より、白色の電析物はアルミニウムであった。
アルミニウムめっき層の形態を調査するため、各温度条件で得ためっきの表面及び断面SEM観察を行った。
図7は、イオン液体11の温度が25℃の場合のSEM像である。図7(a)は表面観察結果であり、図7(b)は断面観察結果である。なお図7(a)中の符号30は、埋め込み樹脂を示す(他の図でも埋め込み樹脂を符号30で示した)。図8はイオン液体11の温度が25℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。図8から、25℃のイオン液体11中でめっきを行った場合、図7(a)の表面SEM像より、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間に隙間がある場合があることがわかった。図7(b)でもマグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間に隙間がある場合があることがわかった。
図8に示したEPMAによる面分析結果から、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との界面に酸素元素が存在する場合があることがわかった。アルミニウムめっき層3は酸素元素をほとんど含んでおらず、純アルミニウムであった。
図9はイオン液体11の温度10℃において得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図9(a)は表面観察結果であり、図9(b)は断面観察結果である。図10はイオン液体11の温度が10℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。図9(a)、(b)より電解液温度を10℃の場合、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間に隙間は認められず、イオン液体11を低温化することによってより密着性に優れるアルミニウムめっき層3が得られることがわかった。また、アルミニウムめっき層3は厚さ約15μmの比較的均一なめっき膜であった。図10のEPMAによる面分析結果より、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3基板との界面にわずかに酸素元素が検出されたが、図8に示した25℃の場合と比較して少なかった。
図11はイオン液体11の温度5℃において得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図11(a)は表面観察結果であり、図11(b)は断面観察結果である。図12はイオン液体11の温度が5℃の場合の断面のEPMAによる面分析の結果である。
図11(a)より得られたアルミニウムめっき層3は粒状の電析物であり、ところどころ隙間のある表面であった。図11(b)の断面SEM像からも、アルミニウムめっき層3が粒状の電析物であることがわかる。また、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間の隙間はわずか認められるだけであった。図12のEPMA断面結果から、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との界面には酸素元素が比較的広い範囲で検出され、界面の一部に酸化物が形成していた。
3−3.エチレングリコール添加の効果
上述のEMIC−AlClイオン液体中にエチレングリコール(EG)を0.1mol/L、0.2mol/L、0.5mol/Lを添加したイオン液体及び添加物なしのEMIC−AlClイオン液体を用い、25℃及び10℃においてパルス電解を行った。
図13はイオン液体の温度が25℃の場合の得られたマグネシウム成形体の表面写真であり、図13(a)はEG濃度が0の場合であり、図13(b)はEG濃度が0.1mol/Lの場合であり、図13(c)はEG濃度が0.2mol/Lの場合であり、図13(d)はEG濃度が0.5mol/L場合である。
図14はイオン液体の温度が10℃の場合の得られたマグネシウム成形体の表面写真であり、図14(a)はEG濃度が0の場合であり、図14(b)はEG濃度が0.1mol/Lの場合であり、図14(c)はEG濃度が0.2mol/Lの場合である。
図13から25℃のイオン液体では、EG濃度を0〜0.2mol/L添加した場合の得られた試料のアルミニウムめっき層は、どれも比較的粗い表面を持つものであり、0.5mol/Lまで添加した場合、アルミニウムめっき層は電解後イオン液体からから取り出した際に剥がれ落ちる、密着性に乏しい部分があった。
図15は、イオン液体11の温度25℃、EG濃度0.1mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図15(a)は表面観察結果であり、図15(b)は断面観察結果である。
図16は、イオン液体11の温度25℃、EG濃度0.2mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図16(a)は表面観察結果であり、図16(b)は断面観察結果である。
エチレングリコールを0.1mol/L添加した場合、アルミニウムめっき層3は図15(a)より、直径10〜15μmの粒状の電析物であることがわかり、図15(b)よりアルミニウムめっき層3は厚さが20μmで凹凸が観察できる。また、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間にはほとんど隙間が認められなかった。
エチレングリコールを0.2mol/L添加した場合、図16(a)より、アルミニウムめっき層3は、緻密膜状の電析物の上に直径15〜20μmの粒状の電析物を有する形態であることがわかり、図15(b)よりアルミニウムめっき層3は厚さが15μmで凹凸を有することが判る。また、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間に隙間は認められなかった。
図14より、エチレングリコールを添加しない場合と比較し、0.1mol/Lのエチレングリコールを添加した場合、アルミニウムめっき層は均一で滑らかな表面を有している。
図17は、イオン液体11の温度10℃、EG濃度0.1mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図17(a)は表面観察結果であり、図17(b)は断面観察結果である。
図18は、イオン液体11の温度10℃、EG濃度0.2mol/Lの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図18(a)は表面観察結果であり、図18(b)は断面観察結果である。
エチレングリコールを0.1mol/L添加した場合、図17(a)より、アルミニウムめっき層3は、平滑な表面が得られた。しかし、緻密でない部分も認められた。図17(b)よりアルミニウムめっき層3は厚さが10μmであることが判る。また、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層3との間に隙間は認められなかった。
エチレングリコールを0.2mol/L添加した場合、図18(a)より、アルミニウムめっき層3は、直径15μm程度の粒状の電析物が互いに接触し膜状となっていることが判る。しかし、緻密でない部分も認められた。図18(b)よりアルミニウムめっき層3は厚さが10μmで凹凸があることがわかる。
以上よりエチレングリコールを添加することで得られたアルミニウムめっき層3の表面が平滑になった。
3−4.パルス電解における周波数の影響
Duty比を67%に固定し、表2に示す周波数で実験を行った。
Figure 2013189660
表2に示した周波数を用い、電解液温度10℃、印加電流密度1.7mA/cm、Duty比67%の条件でパルス電解を行った。図19は得られた試料の表面写真であり、図19(a)は周波数が0.67Hzの場合を示し、図19(b)は周波数が6.7Hzの場合を示し、図19(c)は周波数が11Hzの場合を示し、図19(d)は周波数が111Hzの場合を示す。
周波数が0.67Hzでは、得られたサンプルのエッジ付近でアルミニウムめっき層が不均一だったのに対し、6.7Hz、11Hzと周波数を高くすることにより、このような不均一さは見られなくなった。11Hzでは表面の不均一さは改善されていたが、アセトン及びエタノール洗浄後黒い斑点が生じた。111Hzまで周波数を高くするとマグネシウム合金基体1の端の部分に厚いアルミニウムめっき層がみられ、中心部では目視でもわかる程度の粒状の不均一部分が認められた。
図20は、周波数が6.7Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図20(a)は表面観察結果であり、図20(b)は断面観察結果である。
図21は、周波数が11Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図21(a)は表面観察結果であり、図21(b)は断面観察結果である。
図22は、周波数が111Hzの場合に得られたアルミニウムめっき層3のSEM像を示す。図22(a)は表面観察結果であり、図22(b)は断面観察結果である。
なお、周波数0.67Hzの場合の得られたアルミニウムめっき層の表面は図6に既に示してある。0.67Hzで得られたアルミニウムめっき層は、マグネシウム合金基体1とアルミニウムめっき層との界面に隙間は見られず、一様な膜を形成していた。しかし表面は比較的粗く、平滑ではないことがわかる。
図20より、周波数を10倍の6.7Hzにした結果、めっき表面は密で平滑となっていることが判るであった。図20(b)に示す断面観察結果より、アルミニウムめっき層3は一様な厚さを有している。
図21より、11Hzの場合、表面は6.7Hの場合と同様に比較的密な電析物からなり、平滑であった。表面に見られる凹凸は6.7の場合より顕著であることがわかる。断面観察結果から、アルミニウムめっき層は一様な厚さを有し、表面に認められた凹凸の凹部がアルミニウムめっき層を貫通していないことも確認できた。
図22より、周波数が111Hzの場合、アルミニウムめっき層は大きさ約20μmの電析物からなる表面で、6.7Hzおよび11Hzと比較して粗い表面であった。
次に、0.1mol/Lのエチレングリコールを添加したEMIC−AlClイオン液体の温度を10℃にし、周波数6.7Hz、Duty比67%、印加電流1.7mA/cm2の条件でパルス電解を行った。
図23は、得られたアルミニウムめっき層3の観察結果である。図23(a)は表面写真を示し、図23(b)は表面SEM像を示し、図23(c)は断面SEM像を示す。図23(a)より外観は非常に滑らかで、黒い斑点等は生じていないことがわかる。図23(b)の表面SEM像より、直径約1〜2μmの電析物が密に析出した非常に均一なめっき表面であることがわかる。図23(c)の断面SEM像よりアルミニウムめっき層は約12μmの厚さであることがわかる。
なお以上の実施例で示したアルミニウムめっき層はいずれも十分な密着性、すなわち消しゴム試験で剥離しない密着性を有していた。
1 マグネシウム合金基体
3 アルミニウムめっき層
10 対極
11 イオン液体
12 参照極
14 熱電対
15 電解槽
16 蓋
18 ポテンシオスタット(電源装置)
20 コンピュータ
100 3極式電解セル(めっき装置)

Claims (7)

  1. マグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体と、
    該基体の表面上の少なくとも一部分を被覆するアルミニウムめっき層であって、該基体に接触かつ結合しているアルミニウムめっき層と、
    を含むことを特徴とする成形体。
  2. 前記アルミニウムめっき層の厚さが5μm〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  3. 1)AlClとEMIC(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド)とを含むイオン液体を準備する工程と、
    2)25℃以下に冷却した前記イオン液体にマグネシウムまたはマグネシウム合金より成る基体を浸漬した後、該基体を作用極として電流を流すことにより電解めっきを行い、該基体に接触かつ結合しているアルミニウムめっき層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
  4. 前記イオン液体のAlCl濃度が63mol%〜70mol%であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記工程2)において、前記イオン液体を5℃〜15℃に冷却することを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記イオン液体がエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記電流がパルス電流であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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