JP2008027777A - 酸化チタン粒子含有組成物、光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法 - Google Patents

酸化チタン粒子含有組成物、光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる酸化チタン粒子含有組成物等を提供すること。
【解決手段】 酸化チタン粒子と、有機チタンキレート錯体とを含む酸化チタン粒子含有組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は酸化チタン粒子含有組成物、光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法に関する。
近年、地球温暖化やエネルギー問題に対する関心の高まりとともに太陽電池の様々な開発が進められている。その太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池は、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
色素増感型太陽電池は一般に、酸化チタン粒子からなる多孔膜に増感色素を担持させた光電極と、対極と、両極間に充填され、ヨウ素やヨウ化物イオンなどの酸化・還元種を含む有機電解液とで主として構成されている(下記非特許文献1参照)。
ここで、光電極は、酸化チタン粒子と、有機溶媒と、バインダとで構成される組成物を透明導電性基板上に塗布し焼成して有機成分を除去することによって形成されている。上記のような組成物として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1には分散媒、ヒドロキシプロピルセルロース(バインダ)、及びTiOなどの酸化物半導体を含み、スクリーン印刷法に適した印刷用ペーストが開示されている。
また、下記特許文献2には炭素原子数が3〜5のアルコールを主成分とする親水性有機溶媒と有機質バインダとを含む溶媒混合物と、結晶性半導体ナノ粒子とを含む半導体ナノ粒子含有粘性分散液が開示されている。
特開2002−222618号公報 特開2006−76855号公報 B.O’Regan and M.Gratzel、Nature、353;737(1991)
しかしながら、特許文献1、2の印刷用ペースト又は分散液を用いて光電極を作製しても、これを用いて作製した色素増感型太陽電池では光電流が小さくエネルギー変換効率について未だ改良の余地があった。
そこで、本発明は、太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる酸化チタン粒子含有組成物、光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、酸化チタン(TiO)粒子に、有機チタンキレート錯体を添加した酸化チタン粒子含有組成物を透明導電基板上に塗布して光電極を形成すると、これを用いて作製した太陽電池において、有機チタンキレート錯体無添加の組成物を用いて作製した太陽電池に比べて、光電流及び開放端電圧が増大し、エネルギー変換効率を大幅に向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物は、酸化チタン粒子と、有機チタンキレート錯体とを含むものである。
本発明の酸化チタン粒子含有組成物によれば、加水分解反応性が低く化学的に安定な有機チタンキレート錯体が用いられるため、長期的に安定な組成物を実現することができる。従って、特性バラツキの少ない太陽電池を製造できる。さらに、本発明の酸化チタン粒子含有組成物によれば、太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる。その理由は、下記の通りではないかと本発明者らは考えている。
すなわち、酸化チタン粒子に有機チタンキレート錯体を添加することにより、酸化チタン粒子の表面が有機チタンキレート錯体で修飾される。このような酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板の表面上に塗布後、焼成又は紫外線照射することで、酸化チタン粒子の表面上に非常に薄い酸化チタン層(厚さ約1nm)が形成される。このことは、上記組成物を塗布し、焼成又は紫外線照射した後の酸化チタン粒子表面の細孔構造解析より、有機チタンキレート錯体添加の場合、無添加の場合に比べて比表面積及び細孔容量が低下し、また細孔径が約2nm小さくなったことから、明らかになったものである。これにより従来、抵抗成分となっていた酸化チタン粒子間のボトルネック部分に酸化チタンを含む層が形成され、酸化チタン粒子間の電気的接触が良好となり、電子輸送特性が向上するではないかと考えられる。実際、強度変調光電流分光法(Intensity Modulated Photocurrent Spectroscopy;IMPS)及び強度変調光起電力分光法(Intensity Modulated Photovoltage Spectroscopy;IMVS)を用いて、酸化チタン電極内を輸送する電子の拡散定数及び電子寿命を測定したところ、電子の拡散定数及び電子寿命は、有機チタンキレート錯体添加の場合、無添加の場合に比べて2〜4倍に増大し、電子輸送特性が向上したことが判明した。そして、これにより色素増感型太陽電池などの太陽電池において光電流を大幅に増大させることができると考えられる。
また、酸化チタン粒子に有機チタンキレート錯体を添加することにより、透明導電性基板の表面上にも極薄い酸化チタン層が形成されると考えられる。そして、色素増感型太陽電池などの太陽電池において、透明導電性基板の表面上の極薄酸化チタン層により、透明導電性基板から電解質への漏れ電流(逆電子移動)が抑制され、開放端電圧を増大させることができるのではないかと考えられる。
本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物は、粘度調整剤をさらに含んでもよい。この場合、本発明の酸化チタン粒子含有組成物の粘度が調整可能となるので、例えば透明導電性基板に組成物を所定のパターンで印刷しても、組成物の形状が保持され、流動化が防止される。このため、本発明の酸化チタン粒子含有組成物は、透明導電性基板上に所定のパターンを印刷法で形成するのに適する。
上記有機チタンキレート錯体は、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジnブトキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルへプタンジオネート)、チタンテトラアセチルアセトナート、及びチタンオクチレングリコーレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好適である。上記有機チタンキレート錯体を含む酸化チタン粒子含有組成物によれば、長期的に安定な組成物を実現することができることに加えて、酸化チタン粒子の表面修飾に適しているため太陽電池のエネルギー変換効率をより十分に向上させることができる。
本発明に係る光電極の製造方法は、上記酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し焼成する工程を含む。
本発明に係る光電極の製造方法によれば、上記酸化チタン粒子含有組成物を塗布し焼成することによって、酸化チタン粒子の表面上及び透明導電性基板の表面上に非常に薄い酸化チタン層ができ、このような光電極を用いた色素増感型太陽電池などの太陽電池において光電流及び開放端電圧を大幅に増大させ、太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる。また、本発明に係る光電極の製造方法によれば、酸化チタン粒子含有組成物に含まれる有機チタンキレート錯体の加水分解が抑えられるため、特性バラツキの少ない太陽電池を実現可能な光電極を製造できる。
また本発明に係る光電極の製造方法は、上記酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し、紫外線を照射する工程を含む。
本発明に係る光電極の製造方法によれば、透明導電性基板に塗布した酸化チタン粒子含有組成物に紫外線を照射することで、酸化チタン粒子含有組成物中に残存するカーボン量が低減される。すなわち、紫外線照射により酸化チタン粒子の光触媒効果が発現し、抵抗成分となる有機成分(例えば有機チタンキレート錯体や粘度調整剤)が分解されて除去され、これにより酸化チタン粒子の電子伝導性が向上する。また、本発明に係る光電極の製造方法によれば、酸化チタン粒子含有組成物に含まれる有機チタンキレート錯体の加水分解が抑えられるため、特性バラツキの少ない太陽電池を実現可能な光電極を製造できる。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体電極及び当該半導体電極に隣接して配置された透明導電性基板を有する光電極と、対極と、前記半導体電極と前記対極との間に存在する電解質とを備える太陽電池の製造方法であって、上記酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し焼成する第1の工程と、前記酸化チタン粒子に増感剤を付着させる第2の工程とを含む工程によって前記光電極を形成するものである。
本発明に係る太陽電池の製造方法によれば、エネルギー変換効率が十分に向上した太陽電池を製造することが可能である。また酸化チタン粒子含有組成物に含まれる有機チタンキレート錯体の加水分解が抑えられるため、特性バラツキの少ない太陽電池を製造できる。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体電極及び当該半導体電極に隣接して配置された透明導電性基板を有する光電極と、対極と、前記半導体電極と前記対極との間に存在する電解質とを備える太陽電池の製造方法であって、上記酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し、紫外線を照射する第1の工程と、前記酸化チタン粒子に増感剤を付着させる第2の工程とを含む工程によって前記光電極を形成するものである。
本発明に係る太陽電池の製造方法によれば、エネルギー変換効率が十分に向上した太陽電池を製造することが可能である。また酸化チタン粒子含有組成物に含まれる有機チタンキレート錯体の加水分解が抑えられるため、特性バラツキの少ない太陽電池を製造できる。
本発明によれば、太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる酸化チタン粒子含有組成物、光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法が提供される。
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
〔酸化チタン粒子含有組成物〕
まず本発明の酸化チタン粒子含有組成物の製造方法について説明する。
本発明の酸化チタン粒子含有組成物は、酸化チタン粒子と有機チタンキレート錯体とを含む。
本発明の酸化チタン粒子含有組成物によれば、加水分解反応性が低く化学的に安定な有機チタンキレート錯体が用いられるため、長期的に安定な組成物を実現することができる。従って、特性バラツキの少ない太陽電池を製造できる。さらに、本発明の酸化チタン粒子含有組成物によれば、太陽電池のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる。この理由として、本発明者らが考える理由について図1を参照して説明する。なお、図1の(a)は、本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物における酸化チタン粒子の集合体を示す模式図であり、そのうちの1つの酸化チタン粒子については拡大図を示してある。また図1の(b)は、本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した太陽電池において半導体電極が電解液に浸されている状態を示す模式図である。
即ち、酸化チタン粒子に有機チタンキレート錯体を添加することにより、酸化チタン粒子の表面が有機チタンキレート錯体で修飾される(図1の(a)参照)。このような酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板の表面上に塗布後、焼成又は紫外線照射することで、酸化チタン粒子の表面上に非常に薄い酸化チタン層(厚さ約1nm)A1が形成される(図1(b)参照)。このことは、上記組成物を塗布し、焼成又は紫外線照射した後の酸化チタン粒子表面の細孔構造解析より、有機チタンキレート錯体添加の場合、無添加の場合に比べて比表面積及び細孔容量が低下し、また細孔径が約2nm小さくなったことから、明らかになったものである。これにより従来、抵抗成分となっていた酸化チタン粒子間のボトルネック部分に酸化チタンを含む層A1が形成され、酸化チタン粒子間の電気的接触が良好となり、電子輸送特性が向上するのではないかと考えられる。実際、強度変調光電流分光法(IMPS法)及び強度変調光起電力分光法(IMVS法)を用いて、酸化チタン電極内を輸送する電子の拡散定数及び電子寿命を測定したところ、電子の拡散定数及び電子寿命は、有機チタンキレート錯体添加の場合、無添加の場合に比べて2〜4倍に増大し、電子輸送特性が向上したことが判明した。そして、これにより色素増感型太陽電池などの太陽電池において光電流を大幅に増大させることができると考えられる。
また、酸化チタン粒子に有機チタンキレート錯体を添加することにより、透明導電性基板の透明導電膜表面上にも極薄い酸化チタン層A2が形成されると考えられる。そして、色素増感型太陽電池などの太陽電池において、透明導電性基板の透明導電膜表面上の極薄酸化チタン層A2により、透明導電性基板の透明導電膜から電解質への漏れ電流(逆電子移動)が抑制され、開放端電圧を増大させることができるのではないかと考えられる。
酸化チタン(TiO)粒子は、主として酸化チタンから構成される粒子であればよく、その結晶構造は問わない。酸化チタンの結晶構造としては、例えばルチル型、アナターゼ型等が挙げられる。これらのうち、アナターゼ型及びルチル型のバンドギャップは、それぞれ3.2eV及び3.0eVであり、アナターゼ型のほうが伝導帯の下端のエネルギー準位が高く、開放端電圧が高いという報告や、色素増感型太陽電池ではアナターゼ型がルチル型よりも効率が高いという報告がある(A.Kay and M.Graetzel、Chem.Mater.、14;2930(2002))。このことからアナターゼ型が好ましい。酸化チタン粒子としては、アナターゼ型粒子を単独使用してもよく、アナターゼ型とルチル型との混合粒子を使用してもよい。
酸化チタン粒子の粒子径は5nm〜500nmの間であればよく、好ましくは10nm〜100nmの間である。酸化チタン粒子の粒子径が5nm未満では、粒子径が上記範囲にある場合と比べて、後述する半導体電極の細孔径を小さくし、増感色素の吸着時間を増大させ、電解質の拡散を困難とさせて、拡散抵抗を増大させる傾向がある。一方、粒子径が500nmを超えると、粒子径が上記範囲にある場合と比べて増感色素の吸着量が減少する他、粗大粒子により半導体電極内の応力を増大させ、機械的強度を不足させ、半導体電極を剥がれやすくする傾向がある。また酸化チタン粒子の平均粒径は、10nm〜500nmであることが好ましい。平均粒子径が10nm未満では、平均粒子径が上記範囲にある場合に比べて半導体電極の細孔径を小さくし、増感色素の吸着時間を増大させ、電解質の拡散を困難とさせて、拡散抵抗を増大させる傾向がある。一方、平均粒子径が500nmを超えると、平均粒子径が上記範囲にある場合に比べて増感色素の吸着量が減少する他、粗大粒子により半導体電極内の応力を増大させ、機械的強度を不足させ、半導体電極が剥がれやすくなる傾向がある。
さらに、特開2000−106222号公報に記載されるように、粒子径の大きい酸化チタン粒子(10nm〜300nm)と粒子径の小さい酸化チタン粒子(10nm以下)とを混在させてもよい。この場合、一つの層からなる半導体電極を形成すると、半導体電極に入射する入射光が、大きい粒子によって半導体電極の内部で散乱されるためエネルギー変換効率を向上させることができる。また、半導体電極を有する光電極において、特開2003−142171公報に記載されるように、半導体電極の上にルチル型の酸化チタン粒子からなる光反射層を設けてもよい。この場合の半導体電極は平均粒子径が70nm以下の酸化チタン粒子と平均粒子径が150nm以上の酸化チタン粒子とを混合したものであってもよく、上記光反射層は、ルチル型の酸化チタン粒子(平均粒子径が150nm以上、屈折率が2.4以上)と二酸化ケイ素粒子(屈折率が1.8以下)とを混合させたものであってもよい。
有機チタンキレート錯体は、例えば、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジnブトキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルへプタンジオネート)、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコーレート、チタンペルオキソクエン酸錯体、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジnブトキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテール)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルへプタンジオネート)、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコーレートが好ましく用いられる。この場合、酸化チタン粒子の表面が上記有機チタンキレート錯体によって修飾され、酸化チタン粒子含有組成物を用いて光電極を作製すると、酸化チタン粒子同士間の部分において酸化チタンが十分に含まれることとなるため、光電流及び開放端電圧がより増加し、太陽電池のエネルギー変換効率をより向上させることができる。
本発明の組成物中、有機チタンキレート錯体は、酸化チタン粒子100重量%に対して好ましくは10〜50重量%の割合で含まれており、より好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは25〜35重量%の割合で含まれている。有機チタンキレート錯体の割合が10〜50重量%の範囲内にあると、太陽電池の光電流及び開放端電圧をより増大ささせることができ、且つ太陽電池の製造効率をより向上させることができる。
本発明の組成物は、有機溶媒をさらに含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ターピネオールなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなど種々の有機溶媒が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の組成物は、粘度調整剤をさらに含んでもよい。粘度調整剤は、組成物の粘度を調整しうるものであればいかなるものでもよく、後述の半導体電極に一般に使用されるものを用いることができる。このような粘度調整剤としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子樹脂が挙げられる。但し、粘度調整剤としては、上記有機溶媒に溶解可能であるものが用いられる。
〔太陽電池の製造方法〕
(第1実施形態)
次に、本発明に係る太陽電池の製造方法の第1実施形態について説明する。まず本実施形態に係る製造方法によって得られる太陽電池について説明する。
図2に示すように、本実施形態の太陽電池20は、主として、光電極10と、対極CEと、シール材5により光電極10と対極CEとの間に形成される間隙から構成されている。この間隙には、電解質E(液体状或いはゲル状の電解質)が充填されて保持されている。
光電極10は、主として、受光面F2を有する半導体電極2と、当該半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極(透明導電性基板)1と、半導体電極2に付着される増感剤とから構成されている。半導体電極2は、主として酸化チタン粒子で構成されており、具体的には酸化チタン粒子に上記の増感剤が吸着されている。そして、半導体電極2は、電解質Eと接触している。なお、電解質は半導体電極2の酸化チタン粒子の細孔にも滲み込んでいる。ここで、酸化チタンとしては、アナターゼ型TiOが上述のように伝導帯の下端のエネルギー準位がより高く、開放端電圧がより高いため、ルチル型TiOよりもアナターゼ型TiOが好ましい。
この太陽電池20は、透明電極1を透過して半導体電極2に照射される光によって、半導体電極2内の酸化チタン粒子に吸着されている増感剤が励起され、この増感剤から半導体電極2内の酸化チタン粒子へ電子が注入される。そして、半導体電極2内の酸化チタン粒子に注入された電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
透明電極1としては、通常の色素増感型太陽電池又は無機固体型太陽電池に搭載される透明電極を使用できる。特に、透明電極1は、例えば導電性ガラス基板からなる透明基板4のうち半導体電極2の側にいわゆる透明導電膜3を積層した構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明導電膜を用いればよい。
透明電極1としては、例えば、フッ素ドープSnOコートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO−Sb)、等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものも透明電極として使用できる。
透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いてよい。透明基板として、具体的には透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが挙げられる。なお、透明基板4は、光を透過するものであれば、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよいが、特に透明ガラスであることが好ましい。
半導体電極2に付着される増感剤は、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ増感剤であれば特に限定されるものではない。増感剤は、より好ましくは、少なくとも200nm〜10μmの波長の光により励起されて電子を放出するものであればよい。ここで、増感剤は、有機系色素及び無機系増感剤を含む。増感剤が有機系色素である場合、その太陽電池は色素増感型太陽電池となり、増感剤が無機系増感剤である場合は、その太陽電池は無機固体型太陽電池となる。
ここで、有機系色素とは、金属錯体や有機色素等を示す。金属錯体としては銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィルまたはその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N’−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
無機系増感剤としては、例えば、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、二硫化銅インジウム(CuInS)、硫化鉛(PbS)等を用いることができる。
対極CEは、電解質中に含有される酸化還元対(例えば、I /I等)の酸化体に電子を反応させて還元体を得る還元反応(例えば、I をIへ還元する還元反応)を高効率で進行させることができる材料から構成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン太陽電池、液晶パネル等に通常用いられている透明電極と同じものを用いることができる。
対極CEとしては、例えば前述の透明電極1と同じ構成を有するものが用いられ、その透明導電膜(図示せず)の側が電解質Eに接触されるように配置されている。この他に対極CEとしては、透明電極1と同様の透明導電膜3上にPt等の金属薄膜電極を形成し、金属薄膜電極を電解質Eの側に向けて配置させるものであってもよい。また、透明電極1の透明導電膜3に白金を少量付着させたものや、白金などの金属薄膜なども対極CEとして使用できる。さらに、多孔質の炭素電極を対極として用いてもよい。
更に、電解質Eは、光励起され半導体への電子注入を果した後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されず、例えば、液状の電解質であってもよく、これに公知のゲル化剤(高分子或いは低分子のゲル化剤)を添加して得られるゲル状の電解質であってもよい。
また、電解質Eに使用される液状電解質の溶媒としては、溶質成分を溶解できる化合物であれば特に制限はないが、電気化学的に不活性で、比誘電率が高くかつ粘度が低い溶媒(およびこれらの混合溶媒)に溶かしたものが好ましく、例えば、メトキシプロピオニトリルやアセトニトリルのようなニトリル化合物、γ−ブチロラクトンやバレロラクトンのようなラクトン化合物、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのようなカーボネート化合物が挙げられる。
電解質Eに使用される液状電解質の溶質としては、半導体電極2に担持された増感剤(例えば色素)や、対極CEと電子の受け渡しを行える酸化還元対(I /I系の電解質、Br /Br系の電解質、ハイドロキノン/キノン系の電解質などのレドックス電解質)や、この電子の受け渡しを助長する作用を有する化合物等が挙げられ、これらがそれぞれ単独であるいは複数組み合せて含まれていてもよい。
より具体的には、酸化還元対を構成する物質としては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化リチウムのようなハロゲン化物などが挙げられる。電子の受け渡しを効率よく行うための添加剤としては、4−t−ブチルピリジンのようなヘテロ環状化合物などが挙げられる。
シール材5は、電解質Eが、半導体電極2及び対極CEの側面から外部に漏れることを防止するためのものである。このシール材5としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
また、電解質Eを密封する目的で、シール材5に対し、光電極10及び対極CEを一体化するために使用する接着剤としては、電解質Eの成分ができる限り外部に漏洩しないように封止できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、エチレン/メタクリル酸共重合体、表面処理ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂などを用いることができる。
次に、太陽電池20の製造方法について説明する。
まず透明電極1を準備する。透明電極1は、TCOガラス基板等の透明基板4上に、先に述べたフッ素ドープSnO等の透明導電膜3を、スプレーコート法等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。透明導電膜3は、スプレーコート法の他にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。
次に、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する。半導体電極2は以下のようにして形成される。
即ち、まず上記の酸化チタン粒子含有組成物を準備する。そして、この酸化チタン粒子含有組成物を透明電極1の透明導電膜3上に塗布して焼成する。こうして、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2が形成される。この場合、焼成により有機チタンキレート錯体中の有機物成分の含有率が低減される結果、酸化チタン粒子同士間の部分に占める酸化チタン粒子の含有率が高くなり、半導体電極2における光電流を増大させることができる。
ここで、酸化チタン粒子含有組成物の塗布方法は、例えばバーコーター法、印刷法などが挙げられる。
焼成の温度は、酸化チタン粒子含有組成物の組成にもよるため一概には言えないが、通常は300〜600℃であり、好ましくは400〜600℃である。
焼成の温度が400℃未満では、前駆体層の充分な焼成を充分に行うことができなくなる傾向が大きくなる。一方、600℃を超えると、透明電極1の電気抵抗が増大する傾向が大きくなると共に透明基板4に歪みが発生し半導体電極2の前駆体層(又は、焼成後の半導体電極2)の一部又は全部が剥離し電池性能が低下する傾向が大きくなる。上記焼成は通常、空気中等の酸化性雰囲気下で行われる。
なお、塗布後焼成前に、酸化チタン粒子含有組成物を乾燥させる工程が行われてもよい。加熱焼成する前に乾燥工程を設けることで、組成物に添加される有機溶媒を蒸発させることができ、それにより急激な熱負荷による酸化チタン粒子含有組成物の膜の応力・歪みを緩和でき、透明電極1から半導体電極2の剥がれやクラック(割れ)を防止できる利点がある。
また焼成後、半導体電極2の製造完了前に、焼成された酸化チタン粒子含有組成物に対して紫外線を照射することが好ましい。この場合、紫外線の照射により酸化チタンの光触媒効果が発現し、酸化チタン粒子同士間の部分において抵抗成分となる有機物成分がより十分に分解され、酸化チタン粒子の含有率がより高くなり、半導体電極2における光電流をより増大させることができる。
次に、半導体電極2中に、浸着法等の公知の技術により増感剤を付着させる(第2工程)。こうして光電極10が得られる。このとき、増感剤は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着または堆積など)させることにより付着させればよい。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に光電極10を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感剤(例えば増感色素)の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に付着させてもよい。
次に、別途対極CEを形成する。ここで、対極CEの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば対極CEが透明電極1と同様の構成を有する場合には、先に述べた透明電極1の製造方法と同様にして対極CEを作製すればよい。
次に、対極CEのうち半導体電極2と反対の側の面上に基板(図示せず)を配置し、半導体電極2及び対極CEの側面をシール材5で被覆する。次に、半導体電極2及び光電極10と対極CEとの間に形成される間隙の内部に電解質Eを注入する。
この電解質Eの注入は、例えば、光電極10、対極CE、又は、シール材5に予め設けておいた注入口を利用して行うことができる。この注入口は、電解質Eの注入を完了した後に所定の部材や樹脂により塞がれる。こうして太陽電池20が得られる。また、電解質Eの注入の際、電解質Eがゲル状の場合には加熱により液化すれば注入が可能となる。また、電解質Eが固体電解質の場合には、例えば、固体電解質を溶解可能な溶媒を用いて固体電解質を溶解した液を調製し、色素を吸着させた後の半導体電極2をこの液に含浸させ、その後溶媒を除去するなどしてもよい。
上記のようにして太陽電池20を製造すると、太陽電池20のエネルギー変換効率を十分に向上させることができる。また酸化チタン粒子含有組成物に含まれる有機チタンキレート錯体の加水分解が抑えられるため、太陽電池20の特性バラツキを少なくすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る太陽電池の製造方法の第2実施形態について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の製造方法により製造される太陽電池を示す断面図である。なお、第1実施形態の太陽電池20と同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図3に示すように、本実施形態の太陽電池30は、多数の細孔を有した構造を有する多孔体層PSを半導体電極2と対極CEとの間に導入し、さらに、対極CEの形状及び構成を下記のようにしたこと以外は第1実施形態の太陽電池20と同様の構成を有している。
すなわち、多孔体層PSは、電解質Eを保持可能であり、電子伝導性を有さない多孔体であれば特に限定されない。例えば、多孔体層PSとして、ルチル型の酸化チタン粒子により形成した多孔体を使用してもよい。また、ルチル型の酸化チタン以外の構成材料としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ等が挙げられる。更に、この多孔体層PSは、光電極10を透過する光を反射してその反射光を再び光電極10内に照射する光反射層としての機能も有している。これにより、光電極10における光の利用効率を向上させることができる。また、この電解質Eは半導体電極2内にも保持されている。また、対極CEが多孔質の炭素電極の場合には対極CE中にも保持されている。ここで、多孔体層PSが半導体電極2の裏面F22を覆う部分と、半導体電極2のうち裏面F22に隣接する側面を密着して覆う鍔状の縁部分とを有している。そして、この鍔状の縁部分は、光電極10のうちの透明電極1を貫通して透明基板4に接触している。具体的には、鍔状の縁部分は、透明電極1の受光面F1の法線方向に延びており、透明電極1と導通している。
この透明電極1と多孔体層PSとの接続部についてより詳細に説明すると、この接続部において、透明電極1の透明導電膜3の一部は、例えばレーザスクライブ等の技術により完全に削りとられ、透明基板4の表面が露出される深さの溝9が形成されている。そして、この溝9の部分に多孔体層PSの鍔状に形成された縁部分が挿入されている。
次に、対極CEについて説明する。図2に示した太陽電池20では対極CEとして透明電極1と同様の構成を有する電極が採用されているのに対し、本実施形態に係る太陽電池30では、対極CEとして、導電性の炭素材料を構成材料として含む炭素電極が採用されている。
対極CE(炭素電極)は、例えば、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子とを構成材料として形成された多孔質の電極である。この多孔質の対極CE(炭素電極)の細孔内には、電解質Eが保持される。なお、多孔質の炭素電極である対極CE中には、例えば、電極反応の速度をより速やかに進行させる観点から、Pt微粒子等の触媒微粒子が分散担持されていてもよい。
この対極CE(炭素電極)も、多孔体層PSのうち半導体電極2の裏面F22を覆う部分を覆う部分と、多孔体層PSの鍔状の縁部分とを密着して覆うための鍔状の縁部分とを有している。そして、この対極CE(炭素電極)の鍔状の縁部分も、光電極10の透明電極1の受光面F1の法線方向に延びてその先端が透明電極1の透明導電膜3の表面に密着するように接続されている。
更に、対極CE(炭素電極)のうち多孔体層PSと反対側の面上には、防湿フィルム7が隣接するように配置される。また、半導体電極2の側面のうち多孔体層PSの鍔状の縁部分で覆われていない部分、及び、多孔体層PSの側面のうち、対極CEの鍔状の縁部分で覆われていない部分は、図2に示した太陽電池20に使用されているものと同様のシール材5を密着させることによりシールされている。更に、対極CEの鍔状の縁部分の外表面に対してもシール材5が密着するように配置されている。このように、防湿フィルム7と、シール材5を配置することにより、半導体電極2及び多孔体層PSのそれぞれの内部に含有されている電解質の電池40外部への逸散が充分に防止される。
以上のように、太陽電池30は、光電極10の透明電極1に多孔体層PSと対極CEとがそれぞれ一体化された構成を有している。そして、多孔体層PSの鍔状の縁部分により、光電極10と対極CEとの電気的な接触が防止されている。なお、光電極10と対極CEとの電気的な接触(光電極10と対極CEとの間での電子移動)が充分に防止されるのであれば、図3において、多孔体層PSの鍔状の縁部分を設けずに、半導体電極2の側面と対極CEの鍔状の縁部分の内側面とが見かけ上接触している状態の構成としてもよい。この場合、溝9内には半導体電極2の構成材料が挿入される。
次に、太陽電池30の製造方法について説明する。
先ず、透明電極1を準備する。透明電極1の形成方法は、基本的には、先に述べた太陽電池20の製造方法で説明した透明電極1の製造方法と同様である。但し、本実施形態では、透明導電膜3を透明基板4上に形成した後、レーザスクライブ処理により、透明導電膜3の一部を削り、透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図3参照)を形成する点で第1実施形態における透明電極1の形成方法と相違する。
この溝9を形成した後、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)を形成する(第1工程)。この場合、溝9を回避するように透明導電膜3の表面上に、上述した酸化チタン粒子含有組成物を塗布し、焼成又は紫外線照射することによって半導体電極2を形成する。但し、このとき、溝9中にも半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)が形成されるようにし、次いで、レーザスクライブ処理により、溝9を埋める半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)の部分を削り取り、再び透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図4参照)を形成してもよい。
次に、絶縁性の多孔体材料を含む液を調製し、当該液を半導体電極2上に塗布し、次いで乾燥させることにより、半導体電極2と、半導体電極2上に形成される多孔体層PSの前駆体層とを備えた積層体を得る。ここで、多孔体層PSの前駆体層(又は多孔体層PS)は、例えば、ルチル型の酸化チタン等の電気的絶縁性の多孔体層PSの構成材料を含む分散液(スラリー)を調製し、これを半導体電極2の面F22上に塗布し乾燥させることにより得ることができる。
ここで、多孔体層PSの前駆体層を形成した後、更に、空気中等の酸化雰囲気下、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成してもよい。この場合、熱処理の温度が400℃未満であると、前駆体層の焼成を十分に行うことができなくなる傾向が大きくなる。また、熱処理の温度が600℃を超えると、透明電極1の電気抵抗が増大する傾向が大きくなると共に透明基板4に歪みが発生し多孔体層PSの前駆体層(又は、焼成後の多孔体層PS)の一部又は全部が剥離し電池性能が低下する傾向が大きくなる。
ただし、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成するための熱処理を省いても、後で、半導体電極2の前駆体層及び多孔体層の前駆体層の熱処理を一括して行うことにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成することができる。このため、製造効率を向上させる観点からは、ここの段階での熱処理は省くことが好ましい。
なお、半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)の作製が完了した段階で透明電極1に溝9が形成されていない場合には、レーザスクライブ処理により、多孔体層PSの前駆体層(又は多孔体層PS)の一部を削り、透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図3参照)を形成すればよい。このとき、レーザスクライブ処理により、多孔体層PSの鍔状の縁部分のうち対極CE(炭素電極)が形成される側の表面を削り、多孔体層PSの形状を整える。
次に、導電性の炭素材料を含む液を調製し、当該液を、上記のようにして得られる積層体上に塗布し、次いで乾燥させることにより、積層体上に対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成する。
対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成する方法は特に限定されず、例えば、以下の手法で形成することができる。すなわち、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子と、アセチルアセトン等の有機溶媒と、イオン交換水と、界面活性剤とを含むスラリー(或いはこのスラリーに増粘剤を添加したカーボンペースト)を調製し、これを多孔体層PSの前駆体層上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。上記のスラリー(或いはペースト)の塗布、乾燥の一連の作業を繰り返すことにより、得られる対極CE(炭素電極)の厚さを調節することができる。
ここで、対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成した後、更に、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成してもよい。この場合、熱処理の温度が400℃未満であると、前駆体層の充分な焼成を行うことができなくなる傾向が大きくなる。
また、熱処理の温度が600℃を超えると、透明電極1の電気抵抗が増大する傾向が大きくなる。また、この場合には、基板4に歪みが発生し、以下に示す(i)〜(iii)の現象のうちの少なくとも1つが発生して電池性能が低下する傾向が大きくなる。
(i):半導体電極2の前駆体層(又は、焼成後の半導体電極2)の一部又は全部が剥離する現象、
(ii):多孔体層PSの前駆体層(又は焼成後の多孔体層PS)の一部又は全部が剥離する現象、
(iii):対極CEの前駆体層(又は焼成後の対極CE)の一部又は全部が剥離する現象。
また、ここでの熱処理は、酸化雰囲気下及び非酸化雰囲気下(酸化剤を含まない雰囲気、例えば、希ガスなどの不活性ガス、窒素などの上記の温度範囲で化学的に不活性なガス中)の何れで行ってもよいが、酸化雰囲気下で行う場合には、対極CE(炭素電極)の劣化をより確実に防止する観点から、400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。ただし、対極CE(炭素電極)の前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成するための熱処理を省いても、後述の熱処理により、対極CE(炭素電極)の前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成することができるので、製造効率を向上させる観点からは、ここの段階での熱処理は省くことが好ましい。
次に、チタン化合物を含む処理液を調製し、当該処理液中に、透明電極1、半導体電極2、多孔体層PS及び対極CEからなる積層体を浸漬し、次いで、当該積層体を前記処理液から取り出して洗浄し、酸化雰囲気下、400〜600℃の温度範囲で熱処理する。ただし、酸化雰囲気下での熱処理は、対極CEの劣化をより確実に防止する観点から400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。
この工程における処理手順、処理条件は、先に述べた太陽電池20の製造方法と同様である。すなわち、処理液に含まれるチタン化合物としては、三塩化チタン、チタンアルコキシド又はチタン錯体が好ましい。また、チタン化合物として、四塩化チタンも好ましい。溶媒又は分散媒としては、水、アルコール、エーテル類、ケトン類等が挙げられる。また、これら溶媒又は分散媒のうちの少なくとも2種を任意に混合して使用してもよい。
また、使用する処理液に含まれるチタン化合物が三塩化チタン、チタンアルコキシド又はチタン錯体である場合、処理液中に得られる積層体を浸漬する際の温度は0〜50℃であることが好ましい。
更に、使用する処理液に含まれるチタン化合物が四塩化チタンである場合、処理液中に得られる積層体を浸漬する際の温度は0〜120℃であることが好ましい。また、使用する処理液中のチタン化合物の濃度は0.01〜0.20mol/Lであることが好ましい。
更に、チタン化合物を含む処理液から処理後の積層体を取り出して洗浄する場合の洗浄液としては、希塩酸水溶液、エタノール、又は、メタノールを使用する。なお、この洗浄の処理は、積層体の外表面[半導体電極2(又は半導体電極2の前駆体層)、多孔体層PS(又は多孔体層PSの前駆体層)及び対極CE(又は対極CEの前駆体層)内部の細孔壁の表面を除く]に付着した余分な処理液を除去するための処理である。但し、この洗浄処理においては、半導体電極2(又は半導体電極2の前駆体層)、多孔体層PS(又は多孔体層PSの前駆体層)及び対極CE(又は対極CEの前駆体層)内部の細孔中に侵入させたチタン化合物を含む処理液は積層体外部に除去されないようにする。
次に、半導体電極2中に、浸着法等の公知の技術により増感剤を付着させる(第2工程)。こうして光電極10が得られる。増感剤は上述したように、有機系色素と無機系増感剤を含む。増感剤を半導体電極2に付着させる方法は、例えば色素を含む溶液中に、得られる積層体(光電極10と多孔体層PSと対極CEを一体化したもの)を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感剤(例えば増感色素)の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に付着させてもよい。
次に、積層体(光電極10と多孔体層PSと対極CEを一体化したもの)の大きさに合わせた形状を有するシール材5を準備し、図3に示すように半導体電極2、多孔体層PS及び対極CE3の外部に露出した側面、及び、対極CEの鍔状の縁部の外表面にシール材5をそれぞれ配置し、熱溶着する。
次に、対極CEの裏面(対極CEのうち半導体電極2の裏面F22に平行な面であって、多孔体層PSと接触している面と反対側の外表面)に、図3に示すように防湿フィルム7を配置して熱融着する。
次に、太陽電池30の内部(半導体電極2、多孔体層PS及び対極CE)に電解質Eを注入する。この電解質Eの注入は、例えば、光電極10、対極CE、又は、シール材5に予め設けておいた注入口を利用して行うことができる。この注入口は、電解質Eの注入を完了した後に所定の部材や樹脂により塞がれる。こうして太陽電池30が得られる。なお、電解質Eの注入の際、電解質Eがゲル状の場合には加熱により液化すれば注入可能となる。また、電解質Eが固体電解質の場合には、例えば、固体電解質を溶解可能な溶媒を用いて固体電解質を溶解した液を調製し、炭素対極を形成する以前の色素を吸着させた後の積層体をこの液に含浸させ、その後溶媒を除去するなどしてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る太陽電池の製造方法の第3実施形態について説明する。まず、本実施形態の製造方法により製造される太陽電池について図4を参照しながら説明する。なお、第1及び第2実施形態の太陽電池と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態に係る太陽電池40は、複数の電池を併設したモジュールの形態を有する。具体的には、図4に示す太陽電池40は、図3に示した太陽電池30をそれぞれ複数個直列に並設する場合の一例(3個直列に併設する場合)を示している。
さらに具体的に説明すると、図4に示す太陽電池40は、図3に示す太陽電池30を複数個並設させ、各太陽電池30の透明電極を1つの共通の透明電極として使用している。以下、各太陽電池30のうち透明電極を除いた部分を「単セル」と呼ぶこととする。
太陽電池40においては、3つある単セルのうち中央の単セルの対極CEは、透明導電膜3を介して隣の単セルの半導体電極2に電気的に接続され、中央の単セルの半導体電極2は、透明導電膜3を介して、残りの単セルの対極CEに電気的に接続されている。従って、3つの単セルは直列に接続されることとなる。
本実施形態において、透明電極は、透明基板4上に、透明導電膜3及び集電電極6を順次形成した構成を有する。ここで、集電電極6は、光電極10における光電流をより増大させるために透明導電膜3よりも低い抵抗を有している。このような集電電極6としては、例えば銀(Ag)又はチタン(Ti)などの金属が用いられる。また集電電極6の形状は特に限定されず、例えばメッシュ状となっている。
隣り合う単セルのシール材5は、一体化されて隣り合う単セルの間の間隙を充填しており、且つ、すべての単セルの対極CEをも覆っている。従って、各単セルのうちの対極CEと防湿フィルム7との間にもシール材5が設けられることになる。
次に、太陽電池40の製造方法について説明する。
まず透明電極11を準備する。すなわち、透明基板4上に透明導電膜3及び集電電極6を順次形成したものを準備する。次に、単セルの数と同数の溝9を、レーザスクライブ処理法などによって、互いに平行に且つ所定の間隔で形成する。
次に、スクリーン印刷法によって、上述した酸化チタン粒子含有組成物を、透明電極11のうち集電電極6側の表面上に各溝9を回避するように塗布する。このとき、酸化チタン粒子含有組成物は、四塩化チタン等を含んでいないため、酸化チタン粒子含有組成物による集電電極6の腐食が十分に防止される。その結果、太陽電池40において四塩化チタン水溶液などの強酸による集電電極6の腐食に伴う電気抵抗の増大や電池変換効率の低下を十分に防止できる。このため、光電極10Aにより、十分に変換効率が向上した太陽電池40が得られる。また、酸化チタン粒子含有組成物は、粘度調整剤を含んでいると好ましい。この場合、印刷後の酸化チタン粒子含有組成物の形状が保持され、流動化が防止されるので、隣り合う酸化チタン粒子含有組成物同士の合体が十分に防止される。その結果、単セル間の短絡が十分に防止された太陽電池40が得られることになる。
次に、多孔体層PS、対極CEを形成する。半導体電極2への増感剤の付着は、第1実施形態の場合と同様である。次に、すべての単セル(本実施形態では3つ)を覆うようにシール材5を配置して熱溶着させる。最後に、防湿フィルム7をシール材5に貼付して、太陽電池40の製造が完了する。なお、多孔体層PS、対極CE、シール材5の形成方法については、第2実施形態における多孔体層PS、対極CE、シール材5の形成方法と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、酸化チタン粒子含有組成物を透明電極1上に塗布した後、焼成して半導体電極2が形成されているが、酸化チタン粒子含有組成物を焼成する代わりに紫外線照射することによっても半導体電極2を形成することができる。すなわち、酸化チタン粒子含有組成物を焼成しなくても、紫外線照射することにより、光電流を増大させ得る半導体電極2を得ることができるのである。これは、紫外線照射によって、酸化チタンの光触媒効果が発現し、抵抗成分となる有機成分が分解されることによると本発明者らは考えている。またこのように焼成に代えて紫外線照射を行うことにより半導体電極2を形成して光電極を得る方法は、透明電極1が、高分子フィルムなどの耐熱性の低いものである場合に特に有効である。
紫外線照射後は、酸化チタン粒子含有組成物を加熱処理することが好ましい。この場合、紫外線照射で一旦還元された酸化チタン粒子表面が酸化され、その酸化された半導体電極2の結晶性が向上して半導体電極2における電子伝導性が、加熱処理をしない場合に比べてより向上する。
また、上記実施形態において、本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物は、色素増感型太陽電池、無機系固体型太陽電池に用いられているが、本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物は、酸化チタンを用いるあらゆる種類の太陽電池、例えば、ETA(Extremely Thin Absorber)型太陽電池、バルクヘテロ接合型有機太陽電池等にも適用可能である。
また、上記第1実施形態では、透明電極1と同様の構成を有する電極を対極CEとして備える太陽電池20について説明したが、この対極CEは、太陽電池30を構成する対極CE、すなわち、炭素電極としてもよい。この場合の対極CE(炭素電極)は、上記と同様の方法で作製できる。
なおこの場合、導電性の炭素材料を含む液を調製し、当該液を、基板上に塗布し、次いで乾燥させて対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成した後、更に、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、細孔を有する多孔質の対極CE(炭素電極)を形成してもよい。また、ここでの熱処理は、酸化雰囲気下及び非酸化雰囲気下(酸化剤を含まない雰囲気、例えば、希ガスなどの不活性ガス、窒素などの上記の温度範囲では化学的に不活性なガス中)の何れで行ってもよいが、酸化雰囲気下で行う場合には、炭素電極の劣化をより確実に防止する観点から、400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。
さらに、上記第3実施形態では、太陽電池30を複数個並設させ、各太陽電池30の透明電極を1つの共通の透明電極として使用した太陽電池が示されているが、本発明の太陽電池は、太陽電池20を単セルとして複数個並設させ、各単セルの透明電極を1つの共通の透明電極1として使用した太陽電池であってもよい。この場合、太陽電池は、単セルを並列接続したものとなる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒子径18nm(粒子径:10nm〜30nm)のアナターゼ型酸化チタン粒子を、エタノール及びメタノールの混合溶媒(エタノール:メタノール=10:1(体積比))に均一に分散して分散液を得た。このとき、酸化チタン粒子は、混合溶媒100重量%に対し、10重量%の割合で分散させた。この分散液100重量%に対し、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)をエタノールと混合した溶液を26重量%の割合で添加し、ホモジナイザーで均質に混合分散させて酸化チタンスラリーを得た。このとき、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)が、酸化チタン粒子100重量%に対して30重量%の割合となるように添加した。
次に、粘度調整剤としてのエチルセルロースを、有機溶媒としてのエタノールに濃度が10重量%となるように溶かした溶液と、アルコール系有機溶媒(ターピネオール)とを上記酸化チタンスラリーに添加し、再度、ホモジナイザーで均質に分散させた。次いで、ターピネオール以外のアルコールをエバポレータで除去した後、ミキサーで混合した。こうしてペースト状の酸化チタン粒子含有組成物を得た。このとき、酸化チタン粒子含有組成物は、黄色ないしは黄褐色を呈していた。このことから、酸化チタン粒子含有組成物中にチタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)が含まれていることが確認できた。なお、得られた酸化チタン粒子含有組成物の組成は、酸化チタン粒子含有組成物を100重量%として、酸化チタン粒子が11重量%、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)が15重量%、粘度調整剤が5重量%であった。
一方、20mm×20mm×1mmのサイズの透明導電(TCO)ガラス基板を用意し、このTCOガラス基板上に上記のようにして得た組成物をスクリーン印刷法で所定のパターンを形成するように塗布し、150℃で乾燥した後、電気炉内で450℃に加熱して、TCOガラス基板上に半導体電極を積層してなる積層体を得た。
次に、増感剤として、ルテニウム錯体(赤色色素:N719)を用い、これのエタノール溶液(増感色素の濃度;3×10−4mol/L)を調製した。
そして、この溶液に、上記の積層体を浸漬し、25℃の温度条件のもとで40時間放置した。これにより、半導体電極の内部に増感色素を約1.0×10−7mol/cm吸着させた。こうして光電極を得た。
一方、上記と同様のTCOガラス基板を用意し、その表面上に、イソプロパノール中に塩化白金酸を10重量%含む溶液を滴下して乾燥後、400℃で加熱処理した。こうして、TCOガラス基板上にPt粒子が分散されてなる対極を作製した。
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のシール材(商品名:「ハイミラン」、エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム)を準備した。そして、上記光電極と対極との間に空間が形成されるように光電極及び対極を配置し、半導体電極及び対極のうち外側に露出した側面にシール材を接触させて熱溶着させた。次いで、溶媒となるメトキシプロピオニトリルに、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムと、ヨウ化リチウムと、4−tert−ブチルピリジンとを溶解させて液状電解質E(ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度:0.6mol/L、ヨウ化リチウムの濃度:0.1mol/L、4−tert−ブチルピリジン濃度:0.5mol/L)を調製した。そして、対極に予め設けておいた孔から上記空間に上記液状電解質を注液した。その後、孔をシール材と同素材の部材で塞ぎ、当該部材を熱溶着させて孔を封止し、色素増感型太陽電池を完成させた。
(比較例1)
酸化チタン粒子含有組成物の調製に際し、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
(実施例2)
酸化チタン粒子含有組成物を450℃で加熱する代わりに、紫外線ランプ(高圧水銀ランプ:ウシオ電機社製USH−500D、500W定格入力)を用いて酸化チタン粒子含有組成物に紫外線を1時間照射することによって半導体電極を作製したこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
(実施例3)
酸化チタン粒子含有組成物を450℃で加熱した後、さらに実施例2と同様にして酸化チタン粒子含有組成物に紫外線を照射することによって半導体電極を作製したこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
(比較例2)
チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)に代えて、0.05mol/Lの三塩化チタン水溶液を添加したこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
〔太陽電池の性能評価〕
上記実施例1〜3及び比較例1〜2で作製した色素増感型太陽電池の光照射時(疑似太陽光:1sun)の電流−電圧特性を測定した。結果を図5に示す。図5に示す結果より、有機チタンキレート錯体を含む酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した実施例1〜3の色素増感型太陽電池は、有機チタンキレート錯体を含まない酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した比較例1の色素増感型太陽電池に比べ、光電流が約2倍増大したことが分かった。さらに、実施例1、2の結果より、酸化チタン粒子含有組成物を450℃で焼成する場合と、その代わりに紫外線照射する場合とで光電流に差は見られず、両者では同等の効果が見られることが分かった。さらに実施例1〜3の結果より、有機チタンキレート錯体を含む酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した実施例1〜3の色素増感型太陽電池の中でも、実施例3の色素増感型太陽電池が、実施例1、2の色素増感型太陽電池より光電流が増大していた。このことから、組成物に紫外線を照射した後、加熱することが、光電流を増大させるために最も効果的であることが分かった。
また、実施例1及び比較例1の酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池について、暗状態で、すなわち光を遮断した状態で電流−電圧特性を調べた。結果を図6に示す。図6に示すように、有機チタンキレート錯体を含む組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池の方が、有機チタンキレート錯体を含まない組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池よりも、電圧を一定としたときの暗電流が低減されることが分かった。言い換えると、有機チタンキレート錯体を含む組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池の方が、有機チタンキレート錯体を含まない組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池よりも開放端電圧が約0.06V増大していた。このことから、透明導電性基板から電解液への逆電子移動が抑制されていることが確認された。
〔安定性確認実験〕
実施例1の酸化チタン粒子含有組成物の長期安定性を確認するため、作製したその日の組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池のほかに、作製してから室温で1月間放置した組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池について電流−電圧特性を調べた。結果を図7に示す。なお、図7において、「初期」は、作製したその日の組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池の電流−電圧特性を示し、「1月後」は、作製してから室温で1月間放置した組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池の電流−電圧特性を示す。図7に示す結果より、作製したその日の組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池と、作製してから室温で1月間放置した組成物を用いて製造した色素増感型太陽電池とで電流−電圧特性に殆ど変化はなく、組成物の長期間の安定性が確認された。
(参考例)
酸化チタン粒子含有組成物への紫外線照射効果を検証するため、紫外線(UV)照射前後の半導体電極No.1〜No.8を作製し、これら半導体電極について光電子分光法(XPS)を用いて光電子分光スペクトルを測定してカーボン量の変化を算出した。結果を表1に示す。表1において、カーボン量(at%)は、酸化チタン粒子中の全元素(Ti、O、N、C、H)の総量を100at%とするとき、そのうちの全カーボン量を意味する。また、半導体電極No.1〜No.8のうちNo.5〜8については、光電子分光スペクトルの結果を図8に示す。
Figure 2008027777
表1および図8に示すように、紫外線照射により、半導体電極中のカーボン量が減少することが判った。特に150℃で乾燥後のUV照射の場合(No.5〜8)で顕著に減少し、450℃で加熱後のUV照射の場合(No.1〜4)でもカーボンが微減した。なお、No.3および4はそれぞれ実施例1、3の半導体電極に対応しており、図5に示した通り、No.3の色素増感型太陽電池の方が、No.1の色素増感型太陽電池よりも光電流が増大していた。このことから、紫外線照射による酸化チタンの光触媒効果により、キレート添加により発生した抵抗成分である有機成分が除去され、これにより光電流が増大したものと考えられる。
(a)は酸化チタン粒子含有組成物中の酸化チタン粒子を示す模式図、(b)は本発明に係る酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した太陽電池において半導体電極が電解液に浸されている状態を示す模式図である。 本発明に係る太陽電池の製造方法の第1実施形態により得られる太陽電池を示す断面図である。 本発明に係る太陽電池の製造方法の第2実施形態により得られる太陽電池を示す断面図である。 本発明に係る太陽電池の製造方法の第3実施形態により得られる太陽電池を示す断面図である。 実施例1〜3及び比較例1〜2の色素増感型太陽電池における擬似太陽光照射時の電流−電圧特性を示すグラフである。 実施例1及び比較例1の色素増感型太陽電池における暗状態時の電流−電圧特性を示すグラフである。 実施例1における作製初期の酸化チタン粒子含有組成物、及び作製後1月の酸化チタン粒子含有組成物を用いて作製した色素増感型太陽電池の電流−電圧特性を示すグラフである。 紫外線照射前後の半導体電極についての光電子分光スペクトルを示すグラフである。
符号の説明
1…透明電極(透明導電性基板)、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、5…シール材、6…集電電極、7…防湿フィルム、9…レーザスクライブにより形成された溝、10…光電極、20,30,40…色素増感型太陽電池、CE…対極、F1,F2,F3…受光面、F22…半導体電極2の裏面、PS…多孔体層。

Claims (7)

  1. 酸化チタン粒子と、有機チタンキレート錯体とを含む酸化チタン粒子含有組成物。
  2. 粘度調整剤をさらに含む、請求項1記載の酸化チタン粒子含有組成物。
  3. 前記有機チタンキレート錯体が、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジnブトキシド(ビス−2,4ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルへプタンジオネート)、チタンテトラアセチルアセトナート、及びチタンオクチレングリコーレートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の酸化チタン粒子含有組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し焼成する工程を含む、光電極の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子含有組成物を透明導電性基板上に塗布し、紫外線を照射する工程を含む、光電極の製造方法。
  6. 半導体電極及び当該半導体電極に隣接して配置された透明導電性基板を有する光電極と、対極と、前記半導体電極と前記対極との間に存在する電解質とを備える太陽電池の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子含有組成物を前記透明導電性基板上に塗布し焼成する第1の工程と、前記酸化チタン粒子に増感剤を付着させる第2の工程とを含む工程によって前記光電極を形成する、
    太陽電池の製造方法。
  7. 半導体電極及び当該半導体電極に隣接して配置された透明導電性基板を有する光電極と、対極と、前記半導体電極と前記対極との間に存在する電解質とを備える太陽電池の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子含有組成物を前記透明導電性基板上に塗布し、紫外線を照射する第1の工程と、前記酸化チタン粒子に増感剤を付着させる第2の工程とを含む工程によって前記光電極を形成する、
    太陽電池の製造方法。
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