JP2004193321A - 半導体電極膜付基材及び塗布剤並びに色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性に優れる半導体電極膜付基材、及び前記多孔質性酸化チタン膜を効率的に作製できる塗布剤を提供すること。
【解決手段】基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さが1nm以上50nmとし、好適には、多孔質性酸化チタン膜が、酸化チタン微粒子が凝集してなり、前記酸化チタン微粒子の粒径が10nm以上50nm以下とする。
多孔質性酸化チタン膜を得るための塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さが1nm以上50nmとし、好適には、多孔質性酸化チタン膜が、酸化チタン微粒子が凝集してなり、前記酸化チタン微粒子の粒径が10nm以上50nm以下とする。
多孔質性酸化チタン膜を得るための塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池のアノード電極として有用な半導体電極膜付基材、及び前記半導体電極膜を形成に適する塗布剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料資源の枯渇が懸念され、又、それらの使用によって起こる二酸化炭素などの増加による地球温暖化等の地球環境問題が明らかになってきている。クリーンなエネルギー源である太陽電池を用いた太陽光発電はこれらの問題を解決する有力な方法の一つであり、太陽電池の研究開発が精力的に行われている。
【0003】
しかし現状に広く普及しているシリコン系太陽電池は、原料が高価で製造コストが掛かる等の問題があり、代替となる太陽電池が精力的に研究されている。中でも、Graetzelら(引用文献1、非引用文献1)によって提案されたルテニウム錯体等の色素が担持された酸化チタン等の多孔質性酸化物からなる半導体電極膜を用いる色素増感型太陽電池が、使用される原料の廉価さや、大面積化の容易さ、33%とも言われる光エネルギー変換効率から様々な機関で活発に研究されている。
【0004】
しかし、現在得られている変換効率は、数%〜7%程度のものである(例えば、非特許文献2乃至3参照)。その原因は、色素、電解質、太陽電池セルの封止技術、半導体電極膜、透明導電膜等にある。実用に耐えうる変換効率を得るためには、全てにおいて改善が必要となる。本発明では、その中でも特に半導体電極膜の改善に注目した。
【0005】
色素増感型太陽電池において、光を変換して起電力を得るためには、数μm以上の膜厚を有する多孔質性酸化物からなる半導体電極膜が必要であり、変換効率の観点から前記半導体には酸化チタンが使用される。多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子を凝集させて作製する方法が一般的であり、作製効率も良く広く利用されている。しかし、それから得られる色素増感型太陽電池の変換効率は2%〜6.7%と低いものであった(非特許文献2乃至3)。
【0006】
半導体電極膜、すなわち多孔質性酸化チタン膜は、透明導電膜上に形成されるので、半導電極膜の改善を行う一つの手段は、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることである。この電子伝導性が悪いと太陽電池セルの直列抵抗が増大して、形状因子(フィルファクター)、変換効率等が低下する等の問題が生じる。多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させるためには、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増やす必要がある。接触面積を増やすためには、前記多孔質酸化チタン膜の透明導電膜との界面側が平坦であるほど良い。
【0007】
前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタンの微粒子を凝集して作製されるので、該膜の表面粗さが前記界面側の平坦度を示す指標とすることができる。すなわち、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さが小さい程、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることができる。しかし、酸化チタンの微粒子が凝集した半導体電極膜の表面粗さを小さくするためには、微粒子の粒径を小さくする必要がある。結果、形成される多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。
【0008】
本発明の技術思想とは異なるが、酸化チタン微粒子と酸化チタン前駆体から多孔質性酸化チタン膜を得る方法として、特許文献2では、酸化チタン微粒子が凝集して形成された多孔質性膜に酸化チタン前駆体を接触させ、前記微粒子に酸化物の被覆を形成させる方法が開示されている。又、特許文献3乃至5では、酸化チタン微粒子と酸化チタン前駆体とを有する塗布剤から、多孔質性酸化チタン膜を得る方法が開示されている。
【0009】
特許文献2では、酸化チタン前駆体が、酸化チタン微粒子の表面積が増大に寄与し、光を変換して起電力を得る効率が良くなる。しかし、多孔質性膜を形成後に酸化チタン前駆体を接触させるので、工程が増え、コスト高の原因となる。又、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは改善されない。特許文献3では、生産効率及び変換効率の良い半導体電極膜付基材を得ることを目的としているが、酸化チタン膜は多孔質ではなく、色素を酸化チタン膜上に積層させているので、色素の効率は良くない。特許文献4では、酸化チタン前駆体は、多孔質性酸化チタン膜を低温焼成で得るための助剤として添加しており、酸化チタン前駆体の添加量は少なく、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さを改善させるものではない。
【0010】
特許文献5では、酸化チタン前駆体は、酸化チタン微粒子間を架橋させ、且つ透明導電膜と多孔質性酸化チタン膜とを強固に結合させるので、電子の流れがスムーズになり、色素増感型太陽電池の特性が向上するとある。しかし、該特許では、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増やすことを目的としているわけではないので、酸化チタン前駆体の添加量は少なく、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは改善しておらず、該特許の実施例で得られている色素増感型太陽電池の変換効率は3%〜6%と低いものであった。
【0011】
【特許文献1】
特許第1220380号公報
【特許文献2】
特表平6−511113号公報
【特許文献3】
特開平10−223924号公報
【特許文献4】
特開2002−280327号公報
【特許文献5】
特開2002−75477号公報
【非特許文献1】
Brian O’Regan、 Michael Gratzel、“A low−cost, high−efficiency Solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films”、NATURE 、第353巻、737頁〜740頁、1991年
【非特許文献2】
堀口尚郎、木下暢、原浩二郎、佐山和弘、荒川祐則、“ナノ粒子を用いた酸化物半導体電極の検討”、住友大阪セメントTECHNICAL REPORT、20頁〜22頁、2001年
【非特許文献3】
荒川祐則、石沢均、“グレッツェル・セル作製の実際”、機能材料、3月号、40頁〜47頁、2002年
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、色素増感型太陽電池のアノード電極に好適な半導体電極膜付基材を提供することを目的とし、前記問題を鑑み、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増加させる表面粗さの小さい多孔質性酸化チタン膜、及び該多孔質性酸化チタン膜を効率的に形成できる塗布剤を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のことを鑑み、鋭意検討してなされたものである。すなわち、本発明の半導体電極膜付基材は、基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子が凝集してなり、5点平均の表面粗さが1nm以上50nmであることを特徴とし、好適には、前記酸化チタン微粒子の粒径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記多孔質性酸化チタン膜に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極とすることを特徴とする色素増感型太陽電池である。多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さを、前記範囲内に設定することによって、透明導電膜と多孔質性酸化チタン膜との接触面積が増大し、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性が向上し、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。
【0015】
本発明は前記多孔質性酸化チタン膜を得るための塗布剤であり、該塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下であると表面粗さの小さな多孔質性酸化チタン膜を得ることができる。又、塗布剤が水溶液系で、有機酸を有していることが好ましく、さらには増粘剤を有し、増粘剤が酸化チタン微粒子量と酸化チタン前駆体の酸化チタン換算量との合計に対し、重量比で2倍以上20倍以下有することが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体電極膜付基材は、基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子が凝集してなり、5点平均の表面粗さが1nm以上50nmであることを特徴としている。色素増感型太陽電池は、多孔質性酸化チタン膜中に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極として構成される。太陽光は基材側から入射し、多孔質酸化チタン膜中に担持された色素を光励起し、励起電子を発生させる。当該励起電子は、酸化チタンに注入され、当該注入された電子は、酸化チタン中を移動して、透明導電膜へと伝導し、該透明導電膜から電子を取り出すことによって、太陽電池として作用する。
【0017】
酸化チタンの微粒子を凝集してなる多孔質性膜は、表面粗さが前記微粒子の粒径に依存するので、表面粗さが透明導電膜との界面側の平坦度を示す指標とすることができる。本発明の多孔質性酸化チタン膜は、表面粗さが小さく、平坦性に優れているので、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積が大きくなり、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることができる。結果、色素増感型太陽電池の変換効率が向上する。
【0018】
本発明の酸化チタンとしては、アナタース型、ルチル型等を使用できるが、アナタース型の酸化チタンがより好ましい。又、酸化チタン微粒子の粒径は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。10nm未満であると、多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。一方、50nmを超えると、膜の5点平均の表面粗さを前記範囲内にすることが難しくなる。尚、本発明の表面粗さは、JIS B0601に定義されている表面粗さ「算術平均粗さRa」に基づいて、触針式表面形状測定装置によって得られるものである。又、粒径サイズは走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られるものであり、30万倍の倍率で酸化チタン膜表面を見て、1画面からランダムに20個の微粒子を選択する。その操作を20回行って抽出された微粒子の粒径サイズの平均を微粒子の粒径として定義する。
【0019】
半導体電極膜付基材中の透明導電膜には、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、弗素ドープされた酸化錫等を使用することができ、少なくとも可視光の透過性を有し、抵抗値が20Ω/□以下のものであれば、これらに限定されるものではない。又、基材には、少なくとも可視光の透過性を有していれば、特に限定されるものではなく、フロート法で作製されたソーダ石灰ガラス、石英ガラス、硼珪酸塩ガラス等のガラス板を使用することができ、前記多孔質性酸化チタン膜を基材上に形成する際に、変形しないものであれば、プラスチック製の透明板も使用することができる。そして、太陽光の光エネルギーを効率良く利用するために、透明導電膜を被覆された基材において、その可視光透過率が、”JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づいて測定される可視光透過率が60%以上であることが好ましい。
【0020】
多孔質性酸化チタン膜の空孔に担持される色素としては、ルテニウム錯体、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、9−フェニルキサテン系やメロシアニン系等の色素を担持させることによって、半導体電極付基材がアノード電極となり、色素増感型太陽電池を形成することができる。色素を担持させる方法としては、色素1mM〜0.1mM程度の濃度でエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶液に溶解させ、半導体電極を浸漬させる。浸漬時の状態は、室温でも60℃程度の加温状態で行うことができ、さらには色素溶液を還流させても良い。浸漬時間を、室温で12時間程行えば、ほぼ飽和状態で色素を多孔質性酸化チタン膜に担持させることができる。
【0021】
上記の多孔質性酸化チタン膜を形成するための塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。粒子サイズを当該範囲内としたのは、10nm未満であると、塗布剤から形成される多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。一方、50nmを超えると、塗布剤から形成される膜の5点平均の表面粗さを1nm以上50nmにすることが難しくなる。又、酸化チタン前駆体としては、チタンアルコキシド、チタンアシレート、チタンキレート、チタンハロゲン化物等を利用することができ、中でもチタンアルコキシドは、溶媒成分に有機酸が含有されている場合には、有機酸と錯体を形成しやすく、該錯体は水溶液中で安定化するので特に好ましい。
【0022】
酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有する塗布剤を基材、又は基材上の透明導電膜に塗布、焼成し膜を形成すると、酸化チタン微粒子が結晶核となり、酸化チタン前駆体の酸化チタン源を消費して、結晶成長する。そして、塗布剤中の酸化チタン前駆体は、塗布剤を基材上の透明導電膜に塗布、焼成し多孔質性酸化チタン膜を形成する際に、多孔質性酸化チタン膜の表面、及び透明導電膜側界面の凹及び/又は凸を埋めるので、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは小さくなって、表面及び透明導電膜側界面の平坦度が向上する。結果、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積が増大し、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性が向上する。
【0023】
塗布剤中、酸化チタン前駆体の濃度が酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍好ましくは0.7倍以上であれば、多孔質性酸化チタン膜の表面及び透明導電膜側界面の平坦度を向上させることが顕著になる。しかしながら、酸化チタン前駆体の濃度が高すぎると空孔が形成されにくくなる。又、微粒子の割合が減るため、厚膜化が困難になるので、その濃度は、重量比で2倍以下、好ましくは、1.5倍とすることが好ましい。
【0024】
塗布剤の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルプロピレングリコール、ジアセトンアルコール等、及びそれらの混合物を使用することができる。又、必要に応じ、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等も加えることができる。
【0025】
さらに前記塗布剤は、安全性と環境への影響を鑑みて水溶液であることが好ましい。しかし、酸化チタン前駆体は水に対する安定性が悪いので、酸化チタン前駆体を安定させるための溶媒成分を含有させる必要がある。水に溶解し、酸化チタン前駆体を安定させる溶媒成分を検討したところ、本発明では有機酸が効果的であることを見出した。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、アミノ酸が好ましく、中でもカルボン酸は安価であり、硫黄や窒素を含まないので好ましい。又、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、マンデル酸等のα−ヒドロキシカルボン酸や、シュウ酸等のカルボン酸は酸化チタン前駆体を水溶液中で安定化させるキレート化作用も付与するため、特に好ましい。前記有機酸は、塗布剤中、酸化チタン前駆体に対して、重量比で、0.5倍以上有していれば、酸化チタン前駆体を安定化させる効果を発揮するが、過剰であれば、酸化チタン前駆体の加水分解速度が速くなり、前駆体の安定度が低下するため、4倍以下の含有量とする。
【0026】
本発明の塗布剤には増粘剤を含有させることができる。前記増粘剤としては、塗布剤を基材に成膜後に膜から焼成、減圧等の手段で除去できるポリエチレングリコール、セルロース、澱粉、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の有機物が好ましく、中でもポリエチレングリコールが増粘性、成膜後の除去性から特に好ましく、さらには、前記ポリエチレングリコールは、分子量1万〜50万が特に好ましい。分子量1万未満でも、塗布剤を増粘させることはできるが、塗布剤から形成される多孔質酸化チタン膜の膜厚が小さくなり、例えば、色素増感型太陽電池に適する厚膜の多孔質性酸化チタン膜を得ることが難しくなる。一方、分子量が50万を超えるとポリエチレングリコールを溶媒に溶解させることが困難になる。
【0027】
前記増粘剤は、酸化チタン微粒子量と酸化チタン前駆体の酸化チタン換算量との合計に対し、重量比で2倍〜20倍有していることが好ましい。2倍未満であると、形成される多孔質性酸化チタンの光透過性が悪く、20倍を超えると、膜の強度が低く、且つ基材との密着性が悪くなる。
【0028】
酸化チタン微粒子を溶媒中に均質に分散させる方法としては、半導体微粒子と分散媒とを、乳鉢で混合する方法、ボールミルを使用する方法、バーコータ等を適宜使用することができる。
【0029】
本発明の多孔質性酸化チタン膜を透明導電膜付基材上に形成する方法としては、上記塗布剤を、スクリーン印刷法、バーコータ法等の手段で透明導電膜上に塗布し、焼成又は減圧等の手段、好ましくは焼成によって、溶媒及び増粘剤を膜から除去させ多孔質性酸化チタン膜を得る方法を採用できる。前記、焼成は、400℃〜550℃、10分から60分で行うことが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0031】
本実施例では、多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さと膜厚を触針式表面形状測定器(日本真空技術社製 DEKTAK3)で評価した。
【0032】
又、半導体電極膜付基材の性能は、色素増感型太陽電池セルを作製して評価した。本実施例で作製した色素増感型太陽電池セルについては、図1を用いて説明する。図1は色素増感型太陽電池の断面構造を表している。図3に描かれたような断面構造を有するPt電極9が設けられた100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材11からなるカソード電極3、及び図2に描かれたような断面構造を有する色素が担持された多孔質性の半導体電極膜8付基材(透明導電膜7が被膜された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10)からなるアノード電極2とが半導体電極8とPt電極9との間が30μmの空隙を有するように並列させられ、電極周辺が封着材5としてポリエチレンシートで封着され、電極間を電解質4として、ヨウ化リチウム(0.3M)とヨウ素(0.003M)を含むアセトニトリル溶液が充填されている。又、透明電極7及びPt電極9にはリード線6が設置されている。
【0033】
図示していない疑似太陽光(100mW/cm2 の強度の光)をアノード電極2側から照射し、擬似太陽光により励起された色素から電子が発生し、電子がアノード電極2中の半導体電極8内に移動し、半導体電極8内に移動した電子を透明導電膜7、リード線6を介して外部回路に取り出すことによって発電される。本実施例ではリード線6に図示していない電流電圧測定装置(北斗電工製ポテンショ・ガルバノスタットHA−501)に接続して、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定し、色素増感型太陽電池の性能値とした。この場合、Vocとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。Jscとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。又、FFとは、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc/Jsc)をいい、色素増感型太陽電池としての電流電圧特性曲線の良さを表す。ηは、最大出力Pmaxを光強度(1cm2当たりの値)で除した値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
【0034】
実施例1
イオン交換水50gに有機酸として乳酸2.3gを加え、撹拌して均一な溶液となったところに酸化チタン前駆体としてチタンイソプロポキシド5.2gを滴下し、2時間撹拌することにより、透明な酸化チタン前駆体水溶液を得た。これに粒径20nmの酸化チタン微粒子(アナタース型、日本アエロジル社製)を2.8g混合し、当該混合物をボールミルで72時間撹拌した。これに増粘剤として分子量20万のポリエチレングリコールを60g添加、混合し、塗布剤を得た。この塗布剤は、長時間(約半年間)均一分散溶液状態を維持し、ゲル化又は沈殿は生じなかった。
【0035】
次に透明導電膜付ガラス基材(透明導電膜7として、表面抵抗が10Ω/□の弗素ドープ酸化錫導電膜、ガラス基材10として100mm×100mm×1mm(厚)のフロート法で作製されたソーダ石灰ガラスが使用されている)の透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布し、その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、表面粗さ37nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。
【0036】
得られた半導体電極膜付基材の多孔質性酸化チタン膜に、Ru錯体[cis−di(thiocyanato)−bis(2,2’−bipyridine−4,4’−dicarboxy) ruthenium (II)]を担持させるために Ru錯体5×10−4mol/lのエタノール溶液に半導体電極膜付基材を常温で12時間浸漬し、錯体を担持させた。これをアノード電極2として用い、上記色素増感型太陽電池1を作製し、上記方法で得られた値を半導体電極膜付基材の性能値として評価した。
【0037】
得られた値は、Vocが0.70、Jscが16.2mA/cm2、FFが0.74、ηが8.4%と優れたものであった。
【0038】
実施例2
上記実施例1で用いたチタンイソプロポキシド量を10.2gとした以外はは実施例1と同様の操作で、表面粗さ25nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0039】
得られた値は、Vocが0.71V、Jscが15.0mA/cm2、FFが0.72、ηが7.7%と優れたものであった。
【0040】
実施例3
上記実施例1で用いたチタンイソプロポキシド量を7.3gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ32nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0041】
得られた値は、Vocが0.71V、Jscが15.5mA/cm2、FFが0.73、ηが8.0%と優れたものであった。
【0042】
実施例4
酸化チタン微粒子を粒径40nmとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ43nm、膜厚8μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0043】
得られた値は、Vocが0.68V、Jscが15.9mA/cm2、FFが0.70、ηが7.6%と優れたものであった。
【0044】
実施例5
酸化チタン微粒子を粒径10nmとした以外は実施例1と同様の操作で表面粗さ7nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0045】
得られた値は、Vocが0.72V、Jscが14.8mA/cm2、FFが0.71、ηが7.6%と優れたものであった。
【0046】
比較例1
チタンイソプロポキシド量を3.6gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ88nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0047】
得られた値は、Vocが0.6V、Jscが11.0mA/cm2、FFが0.68、ηが4.5%と性能の低いものであった。
【0048】
比較例2
チタンイソプロポキシド量を1.4gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ325nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0049】
得られた値は、Vocが0.58V、Jscが9.5mA/cm2、FFが0.69、ηが3.8%と性能の低いものであった。
【0050】
比較例3
酸化チタン前駆体の溶液を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布したところ、基板上に膜強度の弱い、表面粗さ378nm、膜厚4μmの多孔質性の酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0051】
得られた値は、Vocが0.55V、Jscが8.2mA/cm2、FFが0.68、ηが3.1%と性能の低いものであった。
【0052】
比較例4
酸化チタン微粒子を粒径3nmとし、酸化チタン前駆体を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行い表面粗さが25nm、膜厚が4μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。当該色素増感型太陽電池中の多孔質性酸化チタン膜中に担持された色素量が極めて少ないものであった。
【0053】
得られた値は、Vocが0.53V、Jscが6.3mA/cm2、FFが0.62、ηが2.1%と性能の低いものであった。
【0054】
比較例5
上記実施例1で用いた乳酸を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。チタンイソプロポキシドを加えたところ、沈殿・ゲル化が生じ、多孔質性酸化チタン膜を得ることができなかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明の半導体電極膜付基材は、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性に優れるので、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。加えて、本発明の塗布剤は、前記多孔質性酸化チタン膜を効率的に作製できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の色素増感型太陽電池の断面
【図2】実施例のアノード電極の断面
【図3】実施例のカソード電極の断面
【符号の説明】
1 色素増感型太陽電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質
5 封着材
6 リード線
7 透明導電膜
8 色素が担持された半導体電極膜
9 Pt電極
10 ガラス基材
11 ガラス基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池のアノード電極として有用な半導体電極膜付基材、及び前記半導体電極膜を形成に適する塗布剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料資源の枯渇が懸念され、又、それらの使用によって起こる二酸化炭素などの増加による地球温暖化等の地球環境問題が明らかになってきている。クリーンなエネルギー源である太陽電池を用いた太陽光発電はこれらの問題を解決する有力な方法の一つであり、太陽電池の研究開発が精力的に行われている。
【0003】
しかし現状に広く普及しているシリコン系太陽電池は、原料が高価で製造コストが掛かる等の問題があり、代替となる太陽電池が精力的に研究されている。中でも、Graetzelら(引用文献1、非引用文献1)によって提案されたルテニウム錯体等の色素が担持された酸化チタン等の多孔質性酸化物からなる半導体電極膜を用いる色素増感型太陽電池が、使用される原料の廉価さや、大面積化の容易さ、33%とも言われる光エネルギー変換効率から様々な機関で活発に研究されている。
【0004】
しかし、現在得られている変換効率は、数%〜7%程度のものである(例えば、非特許文献2乃至3参照)。その原因は、色素、電解質、太陽電池セルの封止技術、半導体電極膜、透明導電膜等にある。実用に耐えうる変換効率を得るためには、全てにおいて改善が必要となる。本発明では、その中でも特に半導体電極膜の改善に注目した。
【0005】
色素増感型太陽電池において、光を変換して起電力を得るためには、数μm以上の膜厚を有する多孔質性酸化物からなる半導体電極膜が必要であり、変換効率の観点から前記半導体には酸化チタンが使用される。多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子を凝集させて作製する方法が一般的であり、作製効率も良く広く利用されている。しかし、それから得られる色素増感型太陽電池の変換効率は2%〜6.7%と低いものであった(非特許文献2乃至3)。
【0006】
半導体電極膜、すなわち多孔質性酸化チタン膜は、透明導電膜上に形成されるので、半導電極膜の改善を行う一つの手段は、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることである。この電子伝導性が悪いと太陽電池セルの直列抵抗が増大して、形状因子(フィルファクター)、変換効率等が低下する等の問題が生じる。多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させるためには、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増やす必要がある。接触面積を増やすためには、前記多孔質酸化チタン膜の透明導電膜との界面側が平坦であるほど良い。
【0007】
前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタンの微粒子を凝集して作製されるので、該膜の表面粗さが前記界面側の平坦度を示す指標とすることができる。すなわち、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さが小さい程、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることができる。しかし、酸化チタンの微粒子が凝集した半導体電極膜の表面粗さを小さくするためには、微粒子の粒径を小さくする必要がある。結果、形成される多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。
【0008】
本発明の技術思想とは異なるが、酸化チタン微粒子と酸化チタン前駆体から多孔質性酸化チタン膜を得る方法として、特許文献2では、酸化チタン微粒子が凝集して形成された多孔質性膜に酸化チタン前駆体を接触させ、前記微粒子に酸化物の被覆を形成させる方法が開示されている。又、特許文献3乃至5では、酸化チタン微粒子と酸化チタン前駆体とを有する塗布剤から、多孔質性酸化チタン膜を得る方法が開示されている。
【0009】
特許文献2では、酸化チタン前駆体が、酸化チタン微粒子の表面積が増大に寄与し、光を変換して起電力を得る効率が良くなる。しかし、多孔質性膜を形成後に酸化チタン前駆体を接触させるので、工程が増え、コスト高の原因となる。又、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは改善されない。特許文献3では、生産効率及び変換効率の良い半導体電極膜付基材を得ることを目的としているが、酸化チタン膜は多孔質ではなく、色素を酸化チタン膜上に積層させているので、色素の効率は良くない。特許文献4では、酸化チタン前駆体は、多孔質性酸化チタン膜を低温焼成で得るための助剤として添加しており、酸化チタン前駆体の添加量は少なく、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さを改善させるものではない。
【0010】
特許文献5では、酸化チタン前駆体は、酸化チタン微粒子間を架橋させ、且つ透明導電膜と多孔質性酸化チタン膜とを強固に結合させるので、電子の流れがスムーズになり、色素増感型太陽電池の特性が向上するとある。しかし、該特許では、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増やすことを目的としているわけではないので、酸化チタン前駆体の添加量は少なく、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは改善しておらず、該特許の実施例で得られている色素増感型太陽電池の変換効率は3%〜6%と低いものであった。
【0011】
【特許文献1】
特許第1220380号公報
【特許文献2】
特表平6−511113号公報
【特許文献3】
特開平10−223924号公報
【特許文献4】
特開2002−280327号公報
【特許文献5】
特開2002−75477号公報
【非特許文献1】
Brian O’Regan、 Michael Gratzel、“A low−cost, high−efficiency Solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films”、NATURE 、第353巻、737頁〜740頁、1991年
【非特許文献2】
堀口尚郎、木下暢、原浩二郎、佐山和弘、荒川祐則、“ナノ粒子を用いた酸化物半導体電極の検討”、住友大阪セメントTECHNICAL REPORT、20頁〜22頁、2001年
【非特許文献3】
荒川祐則、石沢均、“グレッツェル・セル作製の実際”、機能材料、3月号、40頁〜47頁、2002年
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、色素増感型太陽電池のアノード電極に好適な半導体電極膜付基材を提供することを目的とし、前記問題を鑑み、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積を増加させる表面粗さの小さい多孔質性酸化チタン膜、及び該多孔質性酸化チタン膜を効率的に形成できる塗布剤を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のことを鑑み、鋭意検討してなされたものである。すなわち、本発明の半導体電極膜付基材は、基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子が凝集してなり、5点平均の表面粗さが1nm以上50nmであることを特徴とし、好適には、前記酸化チタン微粒子の粒径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記多孔質性酸化チタン膜に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極とすることを特徴とする色素増感型太陽電池である。多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さを、前記範囲内に設定することによって、透明導電膜と多孔質性酸化チタン膜との接触面積が増大し、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性が向上し、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。
【0015】
本発明は前記多孔質性酸化チタン膜を得るための塗布剤であり、該塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下であると表面粗さの小さな多孔質性酸化チタン膜を得ることができる。又、塗布剤が水溶液系で、有機酸を有していることが好ましく、さらには増粘剤を有し、増粘剤が酸化チタン微粒子量と酸化チタン前駆体の酸化チタン換算量との合計に対し、重量比で2倍以上20倍以下有することが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体電極膜付基材は、基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子が凝集してなり、5点平均の表面粗さが1nm以上50nmであることを特徴としている。色素増感型太陽電池は、多孔質性酸化チタン膜中に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極として構成される。太陽光は基材側から入射し、多孔質酸化チタン膜中に担持された色素を光励起し、励起電子を発生させる。当該励起電子は、酸化チタンに注入され、当該注入された電子は、酸化チタン中を移動して、透明導電膜へと伝導し、該透明導電膜から電子を取り出すことによって、太陽電池として作用する。
【0017】
酸化チタンの微粒子を凝集してなる多孔質性膜は、表面粗さが前記微粒子の粒径に依存するので、表面粗さが透明導電膜との界面側の平坦度を示す指標とすることができる。本発明の多孔質性酸化チタン膜は、表面粗さが小さく、平坦性に優れているので、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積が大きくなり、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性を向上させることができる。結果、色素増感型太陽電池の変換効率が向上する。
【0018】
本発明の酸化チタンとしては、アナタース型、ルチル型等を使用できるが、アナタース型の酸化チタンがより好ましい。又、酸化チタン微粒子の粒径は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。10nm未満であると、多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。一方、50nmを超えると、膜の5点平均の表面粗さを前記範囲内にすることが難しくなる。尚、本発明の表面粗さは、JIS B0601に定義されている表面粗さ「算術平均粗さRa」に基づいて、触針式表面形状測定装置によって得られるものである。又、粒径サイズは走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られるものであり、30万倍の倍率で酸化チタン膜表面を見て、1画面からランダムに20個の微粒子を選択する。その操作を20回行って抽出された微粒子の粒径サイズの平均を微粒子の粒径として定義する。
【0019】
半導体電極膜付基材中の透明導電膜には、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、弗素ドープされた酸化錫等を使用することができ、少なくとも可視光の透過性を有し、抵抗値が20Ω/□以下のものであれば、これらに限定されるものではない。又、基材には、少なくとも可視光の透過性を有していれば、特に限定されるものではなく、フロート法で作製されたソーダ石灰ガラス、石英ガラス、硼珪酸塩ガラス等のガラス板を使用することができ、前記多孔質性酸化チタン膜を基材上に形成する際に、変形しないものであれば、プラスチック製の透明板も使用することができる。そして、太陽光の光エネルギーを効率良く利用するために、透明導電膜を被覆された基材において、その可視光透過率が、”JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づいて測定される可視光透過率が60%以上であることが好ましい。
【0020】
多孔質性酸化チタン膜の空孔に担持される色素としては、ルテニウム錯体、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、9−フェニルキサテン系やメロシアニン系等の色素を担持させることによって、半導体電極付基材がアノード電極となり、色素増感型太陽電池を形成することができる。色素を担持させる方法としては、色素1mM〜0.1mM程度の濃度でエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶液に溶解させ、半導体電極を浸漬させる。浸漬時の状態は、室温でも60℃程度の加温状態で行うことができ、さらには色素溶液を還流させても良い。浸漬時間を、室温で12時間程行えば、ほぼ飽和状態で色素を多孔質性酸化チタン膜に担持させることができる。
【0021】
上記の多孔質性酸化チタン膜を形成するための塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下、好ましくは、0.7倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。粒子サイズを当該範囲内としたのは、10nm未満であると、塗布剤から形成される多孔質性膜の空孔サイズが小さくなりすぎる、又は、空孔が形成されなくなり、半導体電極膜中への色素担持量が極めて少なくなる、又は、色素が担持できない等の問題が生じる。一方、50nmを超えると、塗布剤から形成される膜の5点平均の表面粗さを1nm以上50nmにすることが難しくなる。又、酸化チタン前駆体としては、チタンアルコキシド、チタンアシレート、チタンキレート、チタンハロゲン化物等を利用することができ、中でもチタンアルコキシドは、溶媒成分に有機酸が含有されている場合には、有機酸と錯体を形成しやすく、該錯体は水溶液中で安定化するので特に好ましい。
【0022】
酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有する塗布剤を基材、又は基材上の透明導電膜に塗布、焼成し膜を形成すると、酸化チタン微粒子が結晶核となり、酸化チタン前駆体の酸化チタン源を消費して、結晶成長する。そして、塗布剤中の酸化チタン前駆体は、塗布剤を基材上の透明導電膜に塗布、焼成し多孔質性酸化チタン膜を形成する際に、多孔質性酸化チタン膜の表面、及び透明導電膜側界面の凹及び/又は凸を埋めるので、多孔質性酸化チタン膜の表面粗さは小さくなって、表面及び透明導電膜側界面の平坦度が向上する。結果、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜との接触面積が増大し、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性が向上する。
【0023】
塗布剤中、酸化チタン前駆体の濃度が酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍好ましくは0.7倍以上であれば、多孔質性酸化チタン膜の表面及び透明導電膜側界面の平坦度を向上させることが顕著になる。しかしながら、酸化チタン前駆体の濃度が高すぎると空孔が形成されにくくなる。又、微粒子の割合が減るため、厚膜化が困難になるので、その濃度は、重量比で2倍以下、好ましくは、1.5倍とすることが好ましい。
【0024】
塗布剤の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルプロピレングリコール、ジアセトンアルコール等、及びそれらの混合物を使用することができる。又、必要に応じ、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等も加えることができる。
【0025】
さらに前記塗布剤は、安全性と環境への影響を鑑みて水溶液であることが好ましい。しかし、酸化チタン前駆体は水に対する安定性が悪いので、酸化チタン前駆体を安定させるための溶媒成分を含有させる必要がある。水に溶解し、酸化チタン前駆体を安定させる溶媒成分を検討したところ、本発明では有機酸が効果的であることを見出した。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、アミノ酸が好ましく、中でもカルボン酸は安価であり、硫黄や窒素を含まないので好ましい。又、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、マンデル酸等のα−ヒドロキシカルボン酸や、シュウ酸等のカルボン酸は酸化チタン前駆体を水溶液中で安定化させるキレート化作用も付与するため、特に好ましい。前記有機酸は、塗布剤中、酸化チタン前駆体に対して、重量比で、0.5倍以上有していれば、酸化チタン前駆体を安定化させる効果を発揮するが、過剰であれば、酸化チタン前駆体の加水分解速度が速くなり、前駆体の安定度が低下するため、4倍以下の含有量とする。
【0026】
本発明の塗布剤には増粘剤を含有させることができる。前記増粘剤としては、塗布剤を基材に成膜後に膜から焼成、減圧等の手段で除去できるポリエチレングリコール、セルロース、澱粉、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の有機物が好ましく、中でもポリエチレングリコールが増粘性、成膜後の除去性から特に好ましく、さらには、前記ポリエチレングリコールは、分子量1万〜50万が特に好ましい。分子量1万未満でも、塗布剤を増粘させることはできるが、塗布剤から形成される多孔質酸化チタン膜の膜厚が小さくなり、例えば、色素増感型太陽電池に適する厚膜の多孔質性酸化チタン膜を得ることが難しくなる。一方、分子量が50万を超えるとポリエチレングリコールを溶媒に溶解させることが困難になる。
【0027】
前記増粘剤は、酸化チタン微粒子量と酸化チタン前駆体の酸化チタン換算量との合計に対し、重量比で2倍〜20倍有していることが好ましい。2倍未満であると、形成される多孔質性酸化チタンの光透過性が悪く、20倍を超えると、膜の強度が低く、且つ基材との密着性が悪くなる。
【0028】
酸化チタン微粒子を溶媒中に均質に分散させる方法としては、半導体微粒子と分散媒とを、乳鉢で混合する方法、ボールミルを使用する方法、バーコータ等を適宜使用することができる。
【0029】
本発明の多孔質性酸化チタン膜を透明導電膜付基材上に形成する方法としては、上記塗布剤を、スクリーン印刷法、バーコータ法等の手段で透明導電膜上に塗布し、焼成又は減圧等の手段、好ましくは焼成によって、溶媒及び増粘剤を膜から除去させ多孔質性酸化チタン膜を得る方法を採用できる。前記、焼成は、400℃〜550℃、10分から60分で行うことが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0031】
本実施例では、多孔質性酸化チタン膜の5点平均の表面粗さと膜厚を触針式表面形状測定器(日本真空技術社製 DEKTAK3)で評価した。
【0032】
又、半導体電極膜付基材の性能は、色素増感型太陽電池セルを作製して評価した。本実施例で作製した色素増感型太陽電池セルについては、図1を用いて説明する。図1は色素増感型太陽電池の断面構造を表している。図3に描かれたような断面構造を有するPt電極9が設けられた100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材11からなるカソード電極3、及び図2に描かれたような断面構造を有する色素が担持された多孔質性の半導体電極膜8付基材(透明導電膜7が被膜された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10)からなるアノード電極2とが半導体電極8とPt電極9との間が30μmの空隙を有するように並列させられ、電極周辺が封着材5としてポリエチレンシートで封着され、電極間を電解質4として、ヨウ化リチウム(0.3M)とヨウ素(0.003M)を含むアセトニトリル溶液が充填されている。又、透明電極7及びPt電極9にはリード線6が設置されている。
【0033】
図示していない疑似太陽光(100mW/cm2 の強度の光)をアノード電極2側から照射し、擬似太陽光により励起された色素から電子が発生し、電子がアノード電極2中の半導体電極8内に移動し、半導体電極8内に移動した電子を透明導電膜7、リード線6を介して外部回路に取り出すことによって発電される。本実施例ではリード線6に図示していない電流電圧測定装置(北斗電工製ポテンショ・ガルバノスタットHA−501)に接続して、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定し、色素増感型太陽電池の性能値とした。この場合、Vocとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。Jscとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。又、FFとは、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc/Jsc)をいい、色素増感型太陽電池としての電流電圧特性曲線の良さを表す。ηは、最大出力Pmaxを光強度(1cm2当たりの値)で除した値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
【0034】
実施例1
イオン交換水50gに有機酸として乳酸2.3gを加え、撹拌して均一な溶液となったところに酸化チタン前駆体としてチタンイソプロポキシド5.2gを滴下し、2時間撹拌することにより、透明な酸化チタン前駆体水溶液を得た。これに粒径20nmの酸化チタン微粒子(アナタース型、日本アエロジル社製)を2.8g混合し、当該混合物をボールミルで72時間撹拌した。これに増粘剤として分子量20万のポリエチレングリコールを60g添加、混合し、塗布剤を得た。この塗布剤は、長時間(約半年間)均一分散溶液状態を維持し、ゲル化又は沈殿は生じなかった。
【0035】
次に透明導電膜付ガラス基材(透明導電膜7として、表面抵抗が10Ω/□の弗素ドープ酸化錫導電膜、ガラス基材10として100mm×100mm×1mm(厚)のフロート法で作製されたソーダ石灰ガラスが使用されている)の透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布し、その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、表面粗さ37nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。
【0036】
得られた半導体電極膜付基材の多孔質性酸化チタン膜に、Ru錯体[cis−di(thiocyanato)−bis(2,2’−bipyridine−4,4’−dicarboxy) ruthenium (II)]を担持させるために Ru錯体5×10−4mol/lのエタノール溶液に半導体電極膜付基材を常温で12時間浸漬し、錯体を担持させた。これをアノード電極2として用い、上記色素増感型太陽電池1を作製し、上記方法で得られた値を半導体電極膜付基材の性能値として評価した。
【0037】
得られた値は、Vocが0.70、Jscが16.2mA/cm2、FFが0.74、ηが8.4%と優れたものであった。
【0038】
実施例2
上記実施例1で用いたチタンイソプロポキシド量を10.2gとした以外はは実施例1と同様の操作で、表面粗さ25nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0039】
得られた値は、Vocが0.71V、Jscが15.0mA/cm2、FFが0.72、ηが7.7%と優れたものであった。
【0040】
実施例3
上記実施例1で用いたチタンイソプロポキシド量を7.3gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ32nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0041】
得られた値は、Vocが0.71V、Jscが15.5mA/cm2、FFが0.73、ηが8.0%と優れたものであった。
【0042】
実施例4
酸化チタン微粒子を粒径40nmとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ43nm、膜厚8μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0043】
得られた値は、Vocが0.68V、Jscが15.9mA/cm2、FFが0.70、ηが7.6%と優れたものであった。
【0044】
実施例5
酸化チタン微粒子を粒径10nmとした以外は実施例1と同様の操作で表面粗さ7nm、膜厚7μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0045】
得られた値は、Vocが0.72V、Jscが14.8mA/cm2、FFが0.71、ηが7.6%と優れたものであった。
【0046】
比較例1
チタンイソプロポキシド量を3.6gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ88nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0047】
得られた値は、Vocが0.6V、Jscが11.0mA/cm2、FFが0.68、ηが4.5%と性能の低いものであった。
【0048】
比較例2
チタンイソプロポキシド量を1.4gとした以外は実施例1と同様の操作で、表面粗さ325nm、膜厚6μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0049】
得られた値は、Vocが0.58V、Jscが9.5mA/cm2、FFが0.69、ηが3.8%と性能の低いものであった。
【0050】
比較例3
酸化チタン前駆体の溶液を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布したところ、基板上に膜強度の弱い、表面粗さ378nm、膜厚4μmの多孔質性の酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。
【0051】
得られた値は、Vocが0.55V、Jscが8.2mA/cm2、FFが0.68、ηが3.1%と性能の低いものであった。
【0052】
比較例4
酸化チタン微粒子を粒径3nmとし、酸化チタン前駆体を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行い表面粗さが25nm、膜厚が4μmの多孔質性酸化チタン膜を有する半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で色素増感型太陽電池を作製し、性能を評価した。当該色素増感型太陽電池中の多孔質性酸化チタン膜中に担持された色素量が極めて少ないものであった。
【0053】
得られた値は、Vocが0.53V、Jscが6.3mA/cm2、FFが0.62、ηが2.1%と性能の低いものであった。
【0054】
比較例5
上記実施例1で用いた乳酸を加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。チタンイソプロポキシドを加えたところ、沈殿・ゲル化が生じ、多孔質性酸化チタン膜を得ることができなかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明の半導体電極膜付基材は、多孔質性酸化チタン膜と透明導電膜間の電子伝導性に優れるので、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。加えて、本発明の塗布剤は、前記多孔質性酸化チタン膜を効率的に作製できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の色素増感型太陽電池の断面
【図2】実施例のアノード電極の断面
【図3】実施例のカソード電極の断面
【符号の説明】
1 色素増感型太陽電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質
5 封着材
6 リード線
7 透明導電膜
8 色素が担持された半導体電極膜
9 Pt電極
10 ガラス基材
11 ガラス基材
Claims (6)
- 基材上に透明導電膜、多孔質性酸化チタン膜の順に積層された半導体電極膜付基材であって、前記多孔質性酸化チタン膜は、酸化チタン微粒子が凝集してなり、5点平均の表面粗さが1nm以上50nmであることを特徴とする半導体電極膜付基材。
- 酸化チタン微粒子の粒径が10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体電極膜付基材。
- 前記多孔質性酸化チタン膜に色素が担持された請求項1又は2に記載の半導体電極膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池。
- 請求項1又請求項2に記載の多孔質性酸化チタン膜を形成するための塗布剤であって、前記塗布剤は、酸化チタン微粒子、及び酸化チタン前駆体を有し、前記酸化チタン前駆体の濃度が前記酸化チタン微粒子に対して、重量比で0.6倍以上2倍以下であることを特徴とする塗布剤。
- 塗布剤が水溶液系であり、有機酸を有することを特徴とする請求項4に記載の塗布剤。
- 塗布剤が増粘剤を有し、増粘剤が酸化チタン微粒子量と酸化チタン前駆体の酸化チタン換算量との合計に対し、重量比で2倍以上20倍以下有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の塗布剤。
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