JP2004207205A - 半導体電極膜形成用塗布剤及び半導体電極膜付基材並びに色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い光透過性を有し、厚膜で多孔質性の半導体電極膜を得るために塗布剤、及び高い光透過性の半導体電極膜付基材、並びに高効率の色素増感型太陽電池を提供すること。
【解決手段】基材上に半導体電極を形成するための塗布剤であって、該塗布剤が粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sであり、前記塗布剤が増粘剤を有し、増粘剤が半導体微粒子に対し、重量比で2〜20倍を有すること。該塗布剤を用いて半導体電極膜付基材、及び色素増感型太陽電池を得ること。
【選択図】 図2
【解決手段】基材上に半導体電極を形成するための塗布剤であって、該塗布剤が粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sであり、前記塗布剤が増粘剤を有し、増粘剤が半導体微粒子に対し、重量比で2〜20倍を有すること。該塗布剤を用いて半導体電極膜付基材、及び色素増感型太陽電池を得ること。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池用の半導体電極材料に好適な半導体電極膜を提供できる半導体電極膜形成用塗布剤及び半導体電極膜付基材、並びに色素増感型太陽電池に関する。
【従来の技術】
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料資源の枯渇が懸念され、またそれらの使用によって起こる二酸化炭素などの増加による地球温暖化等の地球環境問題が明らかになってきている。クリーンなエネルギー源である太陽電池を用いた太陽光発電はこれらの問題を解決する有力な方法の一つであり、太陽電池の研究開発が精力的に行われている。
しかし現状に広く普及しているシリコン系太陽電池は、原料が高価で製造コストが掛かる等の問題があり、代替となる太陽電池が精力的に研究されている。中でも、Graetzelら(引用文献1、非引用文献1)によって提案されたルテニウム錯体等の色素が担持された酸化チタン等の多孔質性の酸化物半導体電極膜を用いる色素増感型太陽電池が、使用される原料の廉価さや、大面積化の容易さ、33%とも言われる光エネルギー変換効率から様々な機関で活発に研究されている。
しかし、現在得られている変換効率は、数%〜7%程度のものである(例えば、非特許文献2乃至3参照)。その原因は、色素、電解質、セルの封止技術、半導体電極膜、透明導電膜等にある。実用に耐えうる変換効率を得るためには、全てにおいて改善が必要となる。本発明では、その中でも特に半導体電極膜の改善に注目した。
色素増感型太陽電池において、光を変換して起電力を得るためには、数μm以上の膜厚を有する多孔質性の半導体電極膜が必要であり、最も変換効率の良い酸化チタン半導体微粒子からならなる半導体電極膜付基材の透過率は、例えば、非特許文献2では33%と低く、それから得られる色素増感型太陽電池の変換効率は2%と低いものであった。又、非特許文献3でも色素増感型太陽電池の変換効率は、6.7%と低いものであった。
半導電極膜の改善を行う一つの手段は、光のロスを少なくするために該膜部の透過率を向上させることである。半導体微粒子から高い光透過性で厚膜の半導体電極膜を得るためには、半導体電極膜形成用塗布剤に半導体微粒子を均質に分散させ、且つ塗布剤の組成を適切に制御する必要がある。特許文献2乃至3では、半導体微粒子と溶媒とを乳鉢で混合する等が開示されているが、具体的な塗布剤の組成を開示していない。又、特許文献4乃至6では、塗布剤にポリエチレングリコールを含ませることにより、強度の高い厚膜の多孔質性の半導体電極膜を得られることを開示しているが、ポリエチレングリコールの混合比は示されていない。
特許文献7乃至9では、ポリエチレングリコールの添加量が開示されているが、半導体微粒子に対して、その添加量は少量であり、そのような塗布剤から得られた多孔質性の半導体電極薄膜は透過率が低い、強度が弱い等の問題があった。
【特許文献1】
特開平1−220380号公報
【特許文献2】
特開平11−273754号公報
【特許文献3】
特開2000−348784号公報
【特許文献4】
特開2002−93475号公報
【特許文献5】
特開2001−143771号公報
【特許文献6】
特開2001−167807号公報
【特許文献7】
特開2000−195570号公報
【特許文献8】
特開2000−268890号公報
【特許文献9】
特開2001−160426号公報
【非特許文献1】
Brian O’Regan、 Michael Gratzel、“A low−cost, high−efficiency Solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films”、NATURE 、第353巻、737頁〜740頁、1991年
【非特許文献2】
堀口尚郎、木下暢、原浩二郎、佐山和弘、荒川祐則、“ナノ粒子を用いた酸化物半導体電極の検討”、住友大阪セメントTECHNICAL REPORT、20頁〜22頁、2001年
【非特許文献3】
荒川祐則 石沢均、“グレッツェル・セル作製の実際”、機能材料、3月号、40頁〜47頁、2002年
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題を鑑み、色素増感型太陽電池用の半導体電極材料に好適に使用できる高い光透過性で多孔質性の半導体電極膜が容易に得ることができる半導体電極膜形成用塗布剤、及び該塗布剤から得られる半導体電極膜付基材、並びに該半導体電極膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のことを鑑み、高い光透過性の厚膜で多孔質性の半導体電極膜を得るために塗布剤を鋭意検討してなされたものである。すなわち、本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、基材上に半導体電極を形成するための塗布剤である。又、該塗布剤が粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sであることを特徴し、好適には前記粘度を得るために、塗布剤は増粘剤を有し、増粘剤が半導体微粒子に対し、重量比で2〜20倍有することを特徴とする。又、前記増粘剤は、ポリエチレングリコールであることが好ましく、前記半導体微粒子が酸化チタンであることが好ましい。さらに本発明の塗布剤には、塗布剤の基材への成膜性の向上のために、単糖類又は少糖類を有していることが好ましい。
本発明の半導体電極膜付基材は、上記塗布剤を用いて形成された多孔質性の半導体電極膜付基材であって、該半導体電極膜付基材の可視光透過率が60%以上であることを特徴とし、前記半導体電極膜の膜厚が、5μm〜20μmであることが好ましい。又さらに本発明は、前記半導体電極膜中に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池である。
【発明の実施の形態】
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sである。半導体微粒子の粒径が1nmであると、塗布剤から得られる多孔質性の半導体電極膜の空孔サイズが小さくなりすぎる。あるいは、膜が緻密になりすぎることから、微粒子の分散媒として用いた成分を膜から除去することが難しくなり、不純物の多い半導体電極膜となり、光伝導効率が低下する等の不具合が生じる。又、色素増感型太陽電池を作製する際、色素を半導体電極膜中に担持することが非常に困難になる。半導体微粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られるものであり、30万倍の倍率で酸化チタン膜表面を見て、1画面からランダムに20個の微粒子を選択する。その操作を20回行って抽出された微粒子の粒径サイズの平均を微粒子の粒径として定義する。
塗布剤の粘度は、μmオーダーの高い光透過性の厚膜を得るためには重要な物性である。又、高い光透過性の半導体電極膜を得るためには、半導体微粒子が塗布剤中に均質に分散していなければならない。塗布剤の粘度が0.5Pa・s未満であると、形成される半導体電極膜の光透過性が悪く、且つ厚膜を得ることが難しくなる。一方、100Pa・sを超えると半導体微粒子を塗布剤中に均質に分散させることが難しく、且つ塗布剤の成膜性が悪くなる。尚、前記粘度は、“JIS Z 8803”(液体粘度−測定方法)に基づいて測定して得られるものである。
半導体微粒子を塗布剤中に均質に分散させる方法としては、半導体微粒子と分散媒とを、乳鉢で混合する方法、ボールミルを使用する方法、バーコータ等を適宜使用することができる。
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、微粒子の分散媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン等の溶媒に加えて増粘剤を有することができる。又、必要に応じ、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等も加えることができる。増粘剤としては、塗布剤を基材に成膜後に膜から焼成、減圧等の手段で除去できるポリエチレングリコール、セルロース、澱粉、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の有機物が好ましく、中でもポリエチレングリコールが増粘性、成膜後の除去性から特に好ましく、さらには、前記ポリエチレングリコールは、分子量1万〜50万が特に好ましい。分子量1万未満でも、塗布剤を増粘させることはできるが、塗布剤から形成される半導体電極膜が薄くなり、例えば、色素増感型太陽電池に適する厚膜の半導体電極膜を得ることが難しくなる。一方、分子量が50万を超えるとポリエチレングリコールを溶媒に溶解させることが困難になる。
前記増粘剤は、半導体微粒子に対し、重量比で2倍〜20倍有していることが好ましい。2倍未満であると、形成される半導体電極膜の光透過性が悪く、20倍を超えると、膜の強度が低く、且つ基材との密着性が悪くなる。
ブドウ糖等の単糖類又はショ糖等の少糖類は、塗布剤のガラス基材への塗布剤の粘度へ大きな影響を与えることなく、成膜性を向上させるので本発明の塗布剤に適宜含有させることができる。単糖類又は少糖類は、1分子中のヒドロキシル基が多いため、ガラス基板上のOH基と水素結合が起こり、ガラス基材への成膜性が向上する。前記単糖類又は前記少糖類は半導体微粒子に対し、重量比で10倍まで含有させることできる。10倍を越えても、顕著な成膜性の向上が認められないばかりか、有機物が過剰となるために、成膜後に有機物の除去が困難となり、形成される半導体電極膜中に不純物が多くなり変換効率が低下する等の不具合が生じる。
半導体微粒子は、単種、あるいは、2種以上の酸化物半導体を使用することができるが、光伝導効率の観点から、半導体微粒子には、酸化チタンを単種で用いることが好ましい。酸化チタンには、アナタース型、ルチル型等があるが、アナタース型の酸化チタンがより好ましい。
本発明では、多孔質性の半導体電極膜付基材の膜は上記の半導体電極膜形成用塗布剤を用いて形成される。基材には、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、弗素ドープされた酸化錫等の透明導電膜を有する透明板を使用でき、透明板として、代表的なものとして、フロート法で作製されたソーダ石灰ガラス、石英ガラス、硼珪酸塩ガラス等のガラス板をあげることができる。又、成膜後の分散媒の除去工程によって、変形しないものであれば、プラスチック製の透明板も使用することができる。
又、本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、光透過性に優れる厚膜を容易に得ることができ、光伝導効率に適する5μm〜20μmの膜厚の半導体電極膜を有する基材を、“JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づいて測定される可視光透過率が60%以上とすることができる。半導体電極膜付基材の可視光透過率が60%以上であれば、光エネルギーを効率的に利用することができる。
上記半導体電極膜の空孔に、ルテニウム錯体、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、9−フェニルキサテン系やメロシアニン系等の色素を担持させることによって、該半導体電極付基材がアノード電極となり、色素増感型太陽電池を形成することができる。
上記のような半導体電極膜付基材を得る方法としては、上記半導体膜形成用塗布剤を、スクリーン印刷法、バーコータ法等の手段で基材上(透明導電膜上)に塗布し、焼成又は減圧等の手段、好ましくは焼成によって、分散媒を膜から除去させ多孔質性の半導体電極膜を得る方法を採用できる。前記、焼成は、400℃〜550℃、10分から60分で行うことが好ましい。
半導体電極膜中に色素を担持させる方法としては、色素1mM〜0.1mM程度の濃度でエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶液に溶解させ、半導体電極を浸漬させる。浸漬時の状態は、室温でも60℃程度の加温状態で行うことができ、さらには色素溶液を還流させても良い。浸漬時間は、室温で12時間程度浸漬すれば、ほぼ飽和状態で色素が半導体電極に吸着させることができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明で得られた半導体電極膜付基材は、“JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づき、可視光分光光度計(U―4000、日立製作所)で可視光透過率を測定した。
又、半導体電極膜付基材の性能は、色素増感型太陽電池セルを作製して評価した。本実施例で作製した色素増感型太陽電池セルについては、図1を用いて説明する。図1は色素増感型太陽電池の断面構造を表している。図3に描かれたような断面構造を有するPt電極9が設けられた100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材11からなるカソード電極3、及び図2に描かれたような断面構造を有する色素が担持された多孔質性の半導体電極膜8付基材(透明導電膜7が被膜された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10)からなるアノード電極2とが半導体電極8とPt電極9との間が30μmの空隙を有するように並列させられ、電極周辺が封着材5としてポリエチレンシートで封着され、電極間を電解質4として、ヨウ化リチウム(0.3M)とヨウ素(0.003M)を含むアセトニトリル溶液が充填されている。又、透明電極7及びPt電極9にはリード線6が設置されている。
図示していない疑似太陽光(100mW/cm2の強度の光)をアノード電極2側から照射し、擬似太陽光により励起された色素から電子が発生し、電子がアノード電極2中の半導体電極8内に移動し、半導体電極8内に移動した電子を透明導電膜7、リード線6を介して外部回路に取り出すことによって発電される。本実施例ではリード線6に図示していない電流電圧測定装置(北斗電工製ポテンショ・ガルバノスタットHA−501)に接続して、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定し、色素増感型太陽電池の性能値とした。この場合、Vocとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。Jscとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。又、FFとは、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc/Jsc)をいい、色素増感型太陽電池としての電流電圧特性曲線の良さを表すパラメータで、主に内部抵抗とダイオード因子に左右される。ηは、最大出力Pmaxを光強度(1cm2当たりの値)で除した値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
実施例1
半導体微粒子として、粒径10nm〜20nmのアナタース型の酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製)、溶媒として、硝酸(60%)水溶液とイオン交換水とが、重量比で2:98で混合されたものを用いた。半導体微粒子と溶媒との混合比を重量比で10:90とし、ボールミルを用いて、72時間分散させ半導体微粒子分散溶液を得た。この溶液に半導体微粒子に対して重量比で10倍量の増粘剤である分子量20万のポリエチレングリコールを添加し粘度が25Pa・sの半導体電極膜形成用塗布剤を得た。
次に透明導電膜付ガラス基材(透明導電膜7として、表面抵抗が10Ω/□の弗素ドープ酸化錫導電膜、ガラス基材10として100mm×100mm×1mm(厚)のフロート法で作製されたソーダ石灰ガラスが使用されている)の透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布し、その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、基板上に多孔質性の酸化チタン膜からなる膜厚8μmの半導体電極膜を形成した。得られた半導体電極膜付基材の透過率は75%であった。
得られた半導体電極膜付基材の半導体電極膜中に、色素としてRu錯体[cis−di(thiocyanato)−bis(2,2’−bipyridine−4,4’−dicarboxy) ruthenium (II)]を担持させるために Ru錯体5×10−4mol/lのエタノール溶液に半導体電極膜付基材を常温で12時間浸漬し、半導体電極膜中に色素を担持させた。これをアノード電極2として用い、上記色素増感型太陽電池1を作製し、上記方法で得られた値を色素増感型太陽電池の性能値とした。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.75V、Jscが15.0mA/cm2、FFが0.77、ηが8.7%と優れたものであった。
【表1】
実施例2
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で4倍量とし、粘度が7Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が79%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.72V、Jscが14.0mA/cm2、FFが0.75、ηが7.6%と優れたものであった。
実施例3
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で16倍量とし、粘度が80Pa・sの塗布剤を得た以外は実施例の1同様の操作で透過率が78%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.76V、Jscが1.2mA/cm2、FFが0.76、ηが8.2%と優れたものであった。
実施例4
半導体微粒子に対して重量比で0.5倍量のショ糖を添加し、粘度が26Pa・sの塗布剤を得た以外は実施例1と同様の操作で、ガラス基材を用いて、透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布したところ、ガラス基板上の成膜性が向上し、基板の周辺部まで均一に成膜ができた基板を得た。その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、クラックのない膜厚7μm、透過率80%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。 得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.73V、Jscが15.2mA/cm2、FFが0.75、ηが8.3%と優れたものであった。
比較例1
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で1.9倍量とし、粘度が0.3Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が45%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.57V、Jscが9mA/cm2、FFが0.69、ηが3.5%であり、実施例1乃至実施例3と比べ性能が劣っていた。
比較例2
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で0.3倍量とし、粘度が0.004Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が33%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.61V、Jscが7.1mA/cm2、FFが0.68、ηが2.9%であり、実施例1乃至実施例3と比べ性能が劣っていた。
比較例3
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で21倍量とし、粘度が120Pa・sの塗布剤を得、実施例1の同様の操作で前記塗布剤を、基材に塗布し、焼成したところ、膜が多孔質性に成りすぎ、ガラス基材から半導体電極膜が剥離した。
【発明の効果】
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、光透過性に優れる多孔質性の厚膜の半導体電極膜を形成できるので、該膜が形成された基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池は、光エネルギーのロスを低くすることができ、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の色素増感型太陽電池の断面
【図2】実施例のアノード電極の断面
【図3】実施例のカソード電極の断面
【符号の説明】
1 色素増感型太陽電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質
5 封着材
6 リード線
7 透明導電膜
8 色素が担持された半導体電極膜
9 Pt電極
10 ガラス基材
11 ガラス基材
本発明は、色素増感型太陽電池用の半導体電極材料に好適な半導体電極膜を提供できる半導体電極膜形成用塗布剤及び半導体電極膜付基材、並びに色素増感型太陽電池に関する。
【従来の技術】
近年、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料資源の枯渇が懸念され、またそれらの使用によって起こる二酸化炭素などの増加による地球温暖化等の地球環境問題が明らかになってきている。クリーンなエネルギー源である太陽電池を用いた太陽光発電はこれらの問題を解決する有力な方法の一つであり、太陽電池の研究開発が精力的に行われている。
しかし現状に広く普及しているシリコン系太陽電池は、原料が高価で製造コストが掛かる等の問題があり、代替となる太陽電池が精力的に研究されている。中でも、Graetzelら(引用文献1、非引用文献1)によって提案されたルテニウム錯体等の色素が担持された酸化チタン等の多孔質性の酸化物半導体電極膜を用いる色素増感型太陽電池が、使用される原料の廉価さや、大面積化の容易さ、33%とも言われる光エネルギー変換効率から様々な機関で活発に研究されている。
しかし、現在得られている変換効率は、数%〜7%程度のものである(例えば、非特許文献2乃至3参照)。その原因は、色素、電解質、セルの封止技術、半導体電極膜、透明導電膜等にある。実用に耐えうる変換効率を得るためには、全てにおいて改善が必要となる。本発明では、その中でも特に半導体電極膜の改善に注目した。
色素増感型太陽電池において、光を変換して起電力を得るためには、数μm以上の膜厚を有する多孔質性の半導体電極膜が必要であり、最も変換効率の良い酸化チタン半導体微粒子からならなる半導体電極膜付基材の透過率は、例えば、非特許文献2では33%と低く、それから得られる色素増感型太陽電池の変換効率は2%と低いものであった。又、非特許文献3でも色素増感型太陽電池の変換効率は、6.7%と低いものであった。
半導電極膜の改善を行う一つの手段は、光のロスを少なくするために該膜部の透過率を向上させることである。半導体微粒子から高い光透過性で厚膜の半導体電極膜を得るためには、半導体電極膜形成用塗布剤に半導体微粒子を均質に分散させ、且つ塗布剤の組成を適切に制御する必要がある。特許文献2乃至3では、半導体微粒子と溶媒とを乳鉢で混合する等が開示されているが、具体的な塗布剤の組成を開示していない。又、特許文献4乃至6では、塗布剤にポリエチレングリコールを含ませることにより、強度の高い厚膜の多孔質性の半導体電極膜を得られることを開示しているが、ポリエチレングリコールの混合比は示されていない。
特許文献7乃至9では、ポリエチレングリコールの添加量が開示されているが、半導体微粒子に対して、その添加量は少量であり、そのような塗布剤から得られた多孔質性の半導体電極薄膜は透過率が低い、強度が弱い等の問題があった。
【特許文献1】
特開平1−220380号公報
【特許文献2】
特開平11−273754号公報
【特許文献3】
特開2000−348784号公報
【特許文献4】
特開2002−93475号公報
【特許文献5】
特開2001−143771号公報
【特許文献6】
特開2001−167807号公報
【特許文献7】
特開2000−195570号公報
【特許文献8】
特開2000−268890号公報
【特許文献9】
特開2001−160426号公報
【非特許文献1】
Brian O’Regan、 Michael Gratzel、“A low−cost, high−efficiency Solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films”、NATURE 、第353巻、737頁〜740頁、1991年
【非特許文献2】
堀口尚郎、木下暢、原浩二郎、佐山和弘、荒川祐則、“ナノ粒子を用いた酸化物半導体電極の検討”、住友大阪セメントTECHNICAL REPORT、20頁〜22頁、2001年
【非特許文献3】
荒川祐則 石沢均、“グレッツェル・セル作製の実際”、機能材料、3月号、40頁〜47頁、2002年
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題を鑑み、色素増感型太陽電池用の半導体電極材料に好適に使用できる高い光透過性で多孔質性の半導体電極膜が容易に得ることができる半導体電極膜形成用塗布剤、及び該塗布剤から得られる半導体電極膜付基材、並びに該半導体電極膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のことを鑑み、高い光透過性の厚膜で多孔質性の半導体電極膜を得るために塗布剤を鋭意検討してなされたものである。すなわち、本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、基材上に半導体電極を形成するための塗布剤である。又、該塗布剤が粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sであることを特徴し、好適には前記粘度を得るために、塗布剤は増粘剤を有し、増粘剤が半導体微粒子に対し、重量比で2〜20倍有することを特徴とする。又、前記増粘剤は、ポリエチレングリコールであることが好ましく、前記半導体微粒子が酸化チタンであることが好ましい。さらに本発明の塗布剤には、塗布剤の基材への成膜性の向上のために、単糖類又は少糖類を有していることが好ましい。
本発明の半導体電極膜付基材は、上記塗布剤を用いて形成された多孔質性の半導体電極膜付基材であって、該半導体電極膜付基材の可視光透過率が60%以上であることを特徴とし、前記半導体電極膜の膜厚が、5μm〜20μmであることが好ましい。又さらに本発明は、前記半導体電極膜中に色素が担持された半導体電極膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池である。
【発明の実施の形態】
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sである。半導体微粒子の粒径が1nmであると、塗布剤から得られる多孔質性の半導体電極膜の空孔サイズが小さくなりすぎる。あるいは、膜が緻密になりすぎることから、微粒子の分散媒として用いた成分を膜から除去することが難しくなり、不純物の多い半導体電極膜となり、光伝導効率が低下する等の不具合が生じる。又、色素増感型太陽電池を作製する際、色素を半導体電極膜中に担持することが非常に困難になる。半導体微粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られるものであり、30万倍の倍率で酸化チタン膜表面を見て、1画面からランダムに20個の微粒子を選択する。その操作を20回行って抽出された微粒子の粒径サイズの平均を微粒子の粒径として定義する。
塗布剤の粘度は、μmオーダーの高い光透過性の厚膜を得るためには重要な物性である。又、高い光透過性の半導体電極膜を得るためには、半導体微粒子が塗布剤中に均質に分散していなければならない。塗布剤の粘度が0.5Pa・s未満であると、形成される半導体電極膜の光透過性が悪く、且つ厚膜を得ることが難しくなる。一方、100Pa・sを超えると半導体微粒子を塗布剤中に均質に分散させることが難しく、且つ塗布剤の成膜性が悪くなる。尚、前記粘度は、“JIS Z 8803”(液体粘度−測定方法)に基づいて測定して得られるものである。
半導体微粒子を塗布剤中に均質に分散させる方法としては、半導体微粒子と分散媒とを、乳鉢で混合する方法、ボールミルを使用する方法、バーコータ等を適宜使用することができる。
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、微粒子の分散媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン等の溶媒に加えて増粘剤を有することができる。又、必要に応じ、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等も加えることができる。増粘剤としては、塗布剤を基材に成膜後に膜から焼成、減圧等の手段で除去できるポリエチレングリコール、セルロース、澱粉、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の有機物が好ましく、中でもポリエチレングリコールが増粘性、成膜後の除去性から特に好ましく、さらには、前記ポリエチレングリコールは、分子量1万〜50万が特に好ましい。分子量1万未満でも、塗布剤を増粘させることはできるが、塗布剤から形成される半導体電極膜が薄くなり、例えば、色素増感型太陽電池に適する厚膜の半導体電極膜を得ることが難しくなる。一方、分子量が50万を超えるとポリエチレングリコールを溶媒に溶解させることが困難になる。
前記増粘剤は、半導体微粒子に対し、重量比で2倍〜20倍有していることが好ましい。2倍未満であると、形成される半導体電極膜の光透過性が悪く、20倍を超えると、膜の強度が低く、且つ基材との密着性が悪くなる。
ブドウ糖等の単糖類又はショ糖等の少糖類は、塗布剤のガラス基材への塗布剤の粘度へ大きな影響を与えることなく、成膜性を向上させるので本発明の塗布剤に適宜含有させることができる。単糖類又は少糖類は、1分子中のヒドロキシル基が多いため、ガラス基板上のOH基と水素結合が起こり、ガラス基材への成膜性が向上する。前記単糖類又は前記少糖類は半導体微粒子に対し、重量比で10倍まで含有させることできる。10倍を越えても、顕著な成膜性の向上が認められないばかりか、有機物が過剰となるために、成膜後に有機物の除去が困難となり、形成される半導体電極膜中に不純物が多くなり変換効率が低下する等の不具合が生じる。
半導体微粒子は、単種、あるいは、2種以上の酸化物半導体を使用することができるが、光伝導効率の観点から、半導体微粒子には、酸化チタンを単種で用いることが好ましい。酸化チタンには、アナタース型、ルチル型等があるが、アナタース型の酸化チタンがより好ましい。
本発明では、多孔質性の半導体電極膜付基材の膜は上記の半導体電極膜形成用塗布剤を用いて形成される。基材には、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、弗素ドープされた酸化錫等の透明導電膜を有する透明板を使用でき、透明板として、代表的なものとして、フロート法で作製されたソーダ石灰ガラス、石英ガラス、硼珪酸塩ガラス等のガラス板をあげることができる。又、成膜後の分散媒の除去工程によって、変形しないものであれば、プラスチック製の透明板も使用することができる。
又、本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、光透過性に優れる厚膜を容易に得ることができ、光伝導効率に適する5μm〜20μmの膜厚の半導体電極膜を有する基材を、“JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づいて測定される可視光透過率が60%以上とすることができる。半導体電極膜付基材の可視光透過率が60%以上であれば、光エネルギーを効率的に利用することができる。
上記半導体電極膜の空孔に、ルテニウム錯体、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、9−フェニルキサテン系やメロシアニン系等の色素を担持させることによって、該半導体電極付基材がアノード電極となり、色素増感型太陽電池を形成することができる。
上記のような半導体電極膜付基材を得る方法としては、上記半導体膜形成用塗布剤を、スクリーン印刷法、バーコータ法等の手段で基材上(透明導電膜上)に塗布し、焼成又は減圧等の手段、好ましくは焼成によって、分散媒を膜から除去させ多孔質性の半導体電極膜を得る方法を採用できる。前記、焼成は、400℃〜550℃、10分から60分で行うことが好ましい。
半導体電極膜中に色素を担持させる方法としては、色素1mM〜0.1mM程度の濃度でエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール溶液に溶解させ、半導体電極を浸漬させる。浸漬時の状態は、室温でも60℃程度の加温状態で行うことができ、さらには色素溶液を還流させても良い。浸漬時間は、室温で12時間程度浸漬すれば、ほぼ飽和状態で色素が半導体電極に吸着させることができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明で得られた半導体電極膜付基材は、“JIS R 3106”(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づき、可視光分光光度計(U―4000、日立製作所)で可視光透過率を測定した。
又、半導体電極膜付基材の性能は、色素増感型太陽電池セルを作製して評価した。本実施例で作製した色素増感型太陽電池セルについては、図1を用いて説明する。図1は色素増感型太陽電池の断面構造を表している。図3に描かれたような断面構造を有するPt電極9が設けられた100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材11からなるカソード電極3、及び図2に描かれたような断面構造を有する色素が担持された多孔質性の半導体電極膜8付基材(透明導電膜7が被膜された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10)からなるアノード電極2とが半導体電極8とPt電極9との間が30μmの空隙を有するように並列させられ、電極周辺が封着材5としてポリエチレンシートで封着され、電極間を電解質4として、ヨウ化リチウム(0.3M)とヨウ素(0.003M)を含むアセトニトリル溶液が充填されている。又、透明電極7及びPt電極9にはリード線6が設置されている。
図示していない疑似太陽光(100mW/cm2の強度の光)をアノード電極2側から照射し、擬似太陽光により励起された色素から電子が発生し、電子がアノード電極2中の半導体電極8内に移動し、半導体電極8内に移動した電子を透明導電膜7、リード線6を介して外部回路に取り出すことによって発電される。本実施例ではリード線6に図示していない電流電圧測定装置(北斗電工製ポテンショ・ガルバノスタットHA−501)に接続して、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定し、色素増感型太陽電池の性能値とした。この場合、Vocとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。Jscとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。又、FFとは、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc/Jsc)をいい、色素増感型太陽電池としての電流電圧特性曲線の良さを表すパラメータで、主に内部抵抗とダイオード因子に左右される。ηは、最大出力Pmaxを光強度(1cm2当たりの値)で除した値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
実施例1
半導体微粒子として、粒径10nm〜20nmのアナタース型の酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製)、溶媒として、硝酸(60%)水溶液とイオン交換水とが、重量比で2:98で混合されたものを用いた。半導体微粒子と溶媒との混合比を重量比で10:90とし、ボールミルを用いて、72時間分散させ半導体微粒子分散溶液を得た。この溶液に半導体微粒子に対して重量比で10倍量の増粘剤である分子量20万のポリエチレングリコールを添加し粘度が25Pa・sの半導体電極膜形成用塗布剤を得た。
次に透明導電膜付ガラス基材(透明導電膜7として、表面抵抗が10Ω/□の弗素ドープ酸化錫導電膜、ガラス基材10として100mm×100mm×1mm(厚)のフロート法で作製されたソーダ石灰ガラスが使用されている)の透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布し、その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、基板上に多孔質性の酸化チタン膜からなる膜厚8μmの半導体電極膜を形成した。得られた半導体電極膜付基材の透過率は75%であった。
得られた半導体電極膜付基材の半導体電極膜中に、色素としてRu錯体[cis−di(thiocyanato)−bis(2,2’−bipyridine−4,4’−dicarboxy) ruthenium (II)]を担持させるために Ru錯体5×10−4mol/lのエタノール溶液に半導体電極膜付基材を常温で12時間浸漬し、半導体電極膜中に色素を担持させた。これをアノード電極2として用い、上記色素増感型太陽電池1を作製し、上記方法で得られた値を色素増感型太陽電池の性能値とした。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.75V、Jscが15.0mA/cm2、FFが0.77、ηが8.7%と優れたものであった。
【表1】
実施例2
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で4倍量とし、粘度が7Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が79%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.72V、Jscが14.0mA/cm2、FFが0.75、ηが7.6%と優れたものであった。
実施例3
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で16倍量とし、粘度が80Pa・sの塗布剤を得た以外は実施例の1同様の操作で透過率が78%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.76V、Jscが1.2mA/cm2、FFが0.76、ηが8.2%と優れたものであった。
実施例4
半導体微粒子に対して重量比で0.5倍量のショ糖を添加し、粘度が26Pa・sの塗布剤を得た以外は実施例1と同様の操作で、ガラス基材を用いて、透明導電膜上に半導体電極膜形成用塗布剤をスクリーン印刷機で塗布したところ、ガラス基板上の成膜性が向上し、基板の周辺部まで均一に成膜ができた基板を得た。その後、空気中、450℃で30分間焼成を行うことにより、クラックのない膜厚7μm、透過率80%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。 得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.73V、Jscが15.2mA/cm2、FFが0.75、ηが8.3%と優れたものであった。
比較例1
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で1.9倍量とし、粘度が0.3Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が45%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.57V、Jscが9mA/cm2、FFが0.69、ηが3.5%であり、実施例1乃至実施例3と比べ性能が劣っていた。
比較例2
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で0.3倍量とし、粘度が0.004Pa・sの塗布剤を得、塗布剤の塗布をバーコータで行った以外は実施例の1同様の操作で透過率が33%の半導体電極膜付基材を得た。又、実施例1と同様の操作で物性を評価した。
得られた色素増感型太陽電池の性能値は、Vocが0.61V、Jscが7.1mA/cm2、FFが0.68、ηが2.9%であり、実施例1乃至実施例3と比べ性能が劣っていた。
比較例3
増粘剤の量を半導体微粒子に対して重量比で21倍量とし、粘度が120Pa・sの塗布剤を得、実施例1の同様の操作で前記塗布剤を、基材に塗布し、焼成したところ、膜が多孔質性に成りすぎ、ガラス基材から半導体電極膜が剥離した。
【発明の効果】
本発明の半導体電極膜形成用塗布剤は、光透過性に優れる多孔質性の厚膜の半導体電極膜を形成できるので、該膜が形成された基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池は、光エネルギーのロスを低くすることができ、色素増感型太陽電池の変換効率の向上に奏効する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の色素増感型太陽電池の断面
【図2】実施例のアノード電極の断面
【図3】実施例のカソード電極の断面
【符号の説明】
1 色素増感型太陽電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質
5 封着材
6 リード線
7 透明導電膜
8 色素が担持された半導体電極膜
9 Pt電極
10 ガラス基材
11 ガラス基材
Claims (8)
- 基材上に半導体電極を形成するための塗布剤であり、該塗布剤が粒径1nm〜100nmの半導体微粒子を有し、該塗布剤の粘度が0.5Pa・s〜100Pa・sであることを特徴とする半導体電極膜形成用塗布剤。
- 前記塗布剤が増粘剤を有し、増粘剤が半導体微粒子に対し、重量比で2〜20倍有することを特徴とする請求項1に記載の半導体電極膜形成用塗布剤。
- 増粘剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体電極膜形成用塗布剤。
- 塗布剤が単糖類又は少糖類を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体電極膜形成用塗布剤。
- 半導体微粒子が酸化チタンであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の半導体電極膜形成用塗布剤。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の半導体電極用塗布剤を用いて形成された多孔質性の半導体電極膜付基材であって、該半導体電極膜付基材の可視光透過率が60%以上であることを特徴とする半導体電極膜付基材。
- 前記半導体電極膜の膜厚が、5μm〜20μmであることを特徴とする請求項6に記載の半導体電極膜付基材。
- 半導体電極膜中に色素が担持された請求項6又は請求項7に記載の半導体膜付基材をアノード電極とする色素増感型太陽電池。
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