JP2008024979A - 希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】非磁性相を低減させ磁化反転の核となるα−Feを低減することができ、かつ、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末を低コストで提供する。
【解決手段】希土類酸化物粉末、鉄粉末、および還元剤を混合し、還元拡散法により反応生成物を得て、該反応生成物を水素処理し、窒化処理した後、水中で崩壊させ、水洗し、その後、得られたスラリーに対して、強酸を用いた酸性水溶液により、処理開始時のスラリーのpHを0.01以上3未満として、酸洗処理を施し、得られた磁石粗粉末を水洗および乾燥し、微粉砕する。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法に関する。
希土類−鉄−窒素系磁石粉末を使用した焼結磁石あるいはボンド磁石は、高性能であり、かつ、安価な磁石であることが知られている。特に、Sm−Fe−N系ボンド磁石は、家電、音響機器、自動車または各種機器などのように、さまざまな機器に使用されている。このような機器の小型化に伴い、ボンド磁石に対して、磁気特性の高性能化と共に、コストダウンが要求されている。
磁気特性に関しては、「Effect of nitrogen content on magnetic properties of Sm2Fe17Nx (0<x<6)」(T.Iriyama, et al., IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS,VOL.28,NO.5(1992), pp.2326-2331)に、Sm−Fe−N系ボンド磁石に用いる磁石粉末は、Sm2Fe17x、x=3で構成されることによって、最大の飽和磁化を示すことが記載されている。
一方、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法としては、熔解法や還元拡散法がある。しかし、熔解法では、原料として必要とされる希土類金属が高価であるため、安価な希土類酸化物粉末を原料として用いることができる還元拡散法が、主に採用されている。
還元拡散法では、まず、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末およびその他からなる原料粉末と、希土類酸化物粉末を還元する還元剤とを配合して混合し、得られた混合物を、非酸化性雰囲気中で加熱焼成を行う還元拡散処理により、希土類−鉄系合金を含む反応生成物を得る。水中における崩壊処理により、得られた反応生成物を破砕した後に、水洗処理および酸洗処理を施すことにより、還元剤の酸化物(CaO)や水酸化物(Ca(OH)2)および希土類元素リッチ相(SmFe2、SmFe3)などの非磁性相を除去し、目標とする組成である粉末状の希土類−鉄系合金を抽出し、その後、窒化処理を施して、希土類−鉄−窒素系合金粉末(磁石粗粉末)を得る。かかる磁石粗粉末を微粉砕処理することにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られる。
しかし、希土類−遷移金属−窒素系磁石における磁気特性の保磁力の発生機構は、ニュークリエーション型(核発生機構)であることから、磁気特性の一つである減磁曲線の角形性を高めるためには、前述の湿式処理で表面に発生する物質(α-Fe)を生成させないことが必要である。また、磁石粉末に主相以外の希土類元素リッチな副相が生じると、磁石粉末全体の主相の割合が低下するので、これが磁化を低下させる原因となる。
湿式処理は、水中における崩壊処理、還元剤の酸化物や水酸化物を除去する水洗処理、および、合金粒子の表面状態を改質し、希土類元素リッチ相を除去するための酸洗処理の工程からなる。湿式処理における酸洗処理では、希土類元素リッチ相の溶出剤として、酢酸、塩酸、または硫酸などが用いられるとされるが、塩酸や硫酸などの強酸を避けて、酸性水溶液としては、酢酸水溶液が主として利用されている。
特開2005−8950号公報に記載されている還元拡散法では、還元拡散処理後、得られた反応生成物に対して水素処理を施して、水中での崩壊性を改善している。また、酸洗処理において、酢酸水溶液を使用し、合金粉末の表面の酸化を抑制し、また、希土類リッチ相以外の内部相までも溶出することを防止するために、温度を10℃〜25℃、pHを4〜6にそれぞれ制御して行うことが記載されている。
しかし、酸洗処理で使用した酢酸水溶液の廃液は、中和した後も、水溶液のCOD(化学的酸素要求量:湖沼などの水中で、有機物などの汚濁物質が、酸化剤で酸化されるときに必要な酸素量)が高く、一般排水として流すことはできないので、排水とするための処理が必要となる。
加えて、処理中の酢酸水溶液は、Ca(OH)2や合金粉末と反応して発熱するので、温度を10℃〜25℃に保つためには、冷却が必要になる。さらに、pHを4〜6に保つためには、管理が必要になる等の理由により、コストがかかるという問題がある。
また、特開2002−180111号公報には、酸洗工程において、非磁性相を除去しすぎると、湿式処理液から付着するオキシ水酸化鉄が、引き続き行われる窒化処理で還元されて、α−Feに変化し、ニュークリエーションサイト(逆磁区の核)となり、得られる磁石の保磁力iHcや角形性Hkが大幅に低下してしまうことを避けるために、酸洗処理の後における洗浄において、pH4.5〜6の炭酸水で行うことにより、保磁力iHcや角形性Hkの低下を抑制できることが記載されている。
しかし、酸洗処理において、酢酸水溶液を用いていることには変わらず、酸洗処理で使用した酢酸水溶液を廃液とすることによる問題が同様に生ずる。加えて、炭酸水を使用して、2段階処理をするので、コストがさらに高くなるという問題がある。
さらに、特開2000−1705号公報には、還元拡散法により得られた反応生成物に対して最初に窒化処理を施し、その後に湿式処理を行うことが記載されている。すなわち、窒化処理後に酸洗処理を行うが、酸洗処理に使用する酸として、カルボン酸を使用することにより耐酸化効果が得られ、塩酸または硝酸のように非カルボン酸では耐酸化効果が得られないことが記載されている。なお、カルボン酸の使用条件として、合金表面の酸化、および合金内部相の溶出を抑制し、かつ、合金表面に水酸化物が残留することを防止するため、温度を40℃以下、pHを3〜8、好ましくは5.5〜7.3に制御している。
しかし、酸洗処理において、酢酸水溶液を用いていることには変わらず、酸洗処理で使用した酢酸水溶液を廃液とすることによる問題が同様に生ずる。加えて、処理温度およびpHについての適正な範囲が狭く、制御にコストがかかるという問題がある。
したがって、排水処理が容易で、処理温度およびpHの管理幅が広く、処理時間が短く、かつ、磁気特性を低下させる非磁性相を低減させ磁化反転の核となるα−Feの少ない希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法を、低コストに確立することが強く望まれている。
「Effect of nitrogen content on magnetic properties of Sm2Fe17Nx (0<x<6)」(T.Iriyama, et al., IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS,VOL.28,NO.5(1992),pp.2326-2331) 特開2005−008950号公報 特開2002−180111号公報 特開2000−1705号公報
本発明は、非磁性相を低減させ、かつ、磁化反転の核となるα−Feを低減させることができ、かつ、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法を低コストに提供することを目的とする。
本発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法は、希土類酸化物粉末、鉄粉末、および還元剤を混合し、還元拡散法により反応生成物を得て、該反応生成物を水素処理し、窒化処理した後、水中で崩壊させ、水洗し、その後、得られたスラリーに対して、強酸を用いた酸性水溶液により、処理開始時のスラリーのpHを0.01以上3未満として、酸洗処理を施し、得られた磁石粗粉末を水洗および乾燥し、粉砕機で微粉砕する工程を含む。
前記強酸として、塩酸または硫酸を用いることが好ましい。また、前記酸洗処理において、塩酸を用いて処理した後に、硫酸を用いて処理してもよい。
前記酸洗処理の処理温度を30〜100℃とする。
また、前記酸洗処理の処理時間を1〜5分とする。
得られる磁石粗粉末の平均粒径を、10〜35μmの範囲内とすることが好ましい。
本発明に係る希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法では、得られる磁石粉末の磁気特性に影響を与えることなく、酸洗工程において、酢酸を使用することなく、処理の制御が容易で、かつ、その後の処理が容易な塩酸や硫酸などの強酸を用いることにより、低コストで希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることができる。
1.希土類酸化物粉末
本発明に用いる希土類酸化物粉末としては、特に制限はないが、Sm、Gd、TbおよびCeから選択される少なくとも1種の希土類元素からなり、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、TmおよびYbから選択される少なくとも1種の希土類元素を含むものが好ましい。特に、Smが含まれるものが好ましい。なお、Smを含む場合、高い保磁力を得るためには、Smを希土類元素全体の60質量%以上、好ましくは、90質量%以上とする。また、希土類酸化物粉末には、保磁力の向上、生産性の向上、さらに低コスト化のため、所定量のMn、Ca、Cr、Nb、Mo、Sb、Ge、Zr、V、Si、Al、Ta、またはCuなどの1種以上が添加されていてもよい。なお、希土類酸化物粉末の粒径は、特に制限はないが、反応性および作業性などの面から10μm以下であることが好ましい。
2.鉄粉末
本発明に用いる鉄粉末としては、特に制限はなく、還元鉄粉、ガスアトマイズ粉、水アトマイズ粉、カルボニル鉄粉および電解鉄粉などを用いることができる。また、鉄の20質量%以下をコバルトで置換した鉄粉末を用いてもよい。鉄粉末の粒径としては、粒径が10〜70μmの粉末が80体積%以上占める粉末を用いることが好ましい。理由は、Fe粉が大きすぎると、Sm−Feを合成させるのに、Fe中にSmが拡散するのに時間がかかったり、小さなFe粉は値段が高いからである。
3.還元剤
本発明に用いる還元剤としては、特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および、これらの水素化物などを用いることができる。取り扱いの安全性とコストの面で、5メッシュ(タイラーメッシュ)以下に篩い分級した粒状金属カルシウムが好ましい。
4.原料粉末の混合
希土類酸化物粉末、鉄粉末、および還元剤の混合には、たとえば、V字ブレンダ、S字ブレンダなど、公知の混合器を用いることができる。
5.還元拡散処理
まず、希土類酸化物粉末、鉄粉末、およびその他の原料粉末を所定量混合し、さらに希土類酸化物粉末を還元するのに十分な還元剤を添加混合した後、この混合物を反応容器に投入し、非酸化性雰囲気(酸素が実質的に存在しない雰囲気)中において、還元剤が溶融する温度800℃以上、かつ、希土類−鉄系合金が溶融しない温度まで昇温、保持して加熱処理することにより、希土類酸化物を希土類元素に還元するとともに、この希土類酸化物を鉄粉末中に拡散させて、希土類−鉄系合金を合成する。
6.水素処理
次に、還元拡散処理により得られた反応生成物を密封容器に装入し、真空引き後、該反応生成物に対して所定条件で水素処理することにより、反応生成物に水素を吸蔵させる。これにより、反応生成物の粉砕性、および水中での崩壊性が改善され、破砕処理を施すことなく、反応生成物を、後の水中崩壊処理および水洗処理により細かく粉砕できるため、合金表面の酸化を抑制できる。また、水素処理行うことで、還元物の崩壊性が向上し、焼結した粒子をばらばらにする効果があり、Smリッチ相を酸洗で十分に除去できるようになる。
水素処理の機構は次の通りである。
還元拡散で合成されたSm−Fe合金では、主相(Sm2Fe17)の周りに、Smリッチ相(SmFe2,SmFe3)が存在する。Sm−Fe合金を水素中に放置すると、主相は、Sm2Fe17xに、Smリッチ相は、SmFe2x,SmFe3xにそれぞれ変化する。主相よりも主相の周りにあるSmリッチ相の方が格子の膨張率が大きいので、Smリッチ相が割れて還元物が崩壊する。
7.窒化処理
本発明では、水素処理の後、所定の処理条件により、反応生成物に対して、窒素ガス、あるいは加熱により分解して窒素を供給しうる化合物ガスを導入することにより、窒化を施す。反応生成物は、多孔質塊状であるため、粉砕を行うことなく、窒素雰囲気中で300〜500℃の温度で熱処理を施すことにより、均一に反応生成物を窒化することができる。湿式処理後に窒化処理を行うと、湿式処理時に粉末表面にオキシ水酸化Feが付着して、窒化処理時に主相の表面にα−Feとなって析出し、酸洗を強化して非磁性相(Smリッチ相)を完全に除去しようとすると、粉末表面が酸化相で覆われ、窒化が不均一になってしてしまい、得られる磁石粉末の磁気特性を低下させる。
窒化処理を粉砕前に施すことにより、非磁性相を低減させ、かつ、粉砕後の窒化処理における、湿式処理時に主相の周りに付着したオキシ水酸化鉄がα−Feとなって析出してしまうという現象が生じないため、飽和磁化および保磁力が高く、かつ、減磁曲線の角形性が良好である磁石特性に優れた磁石粉末を得ることができる。
8.崩壊・水洗処理
次に、得られた希土類−鉄系合金塊を、空冷、炉冷により、室温まで冷却した後、純水中に投入して、崩壊処理を施すとともに、酸化カルシウムや金属カルシウムなどとして残留する還元剤を溶解、除去する。水洗処理として、攪拌とデカンテーションを所定回数行うことにより、合金粉末を主体としたスラリーが得られる。
9.酸洗処理
次に、得られたスラリーに対して酸洗処理を行う。酸洗処理では、残った水酸化カルシウムなどの除去と、磁石粉末の表面状態を活性に保つために過剰に添加した希土類元素によって生成した希土類元素リッチ相の除去とを行う。
この際、酸洗処理に用いる酸性水溶液として、強酸を用いて、スラリーの処理開始時のpHを0.01以上3未満とする。
酸洗処理で一般的に使用されている酢酸は、廃液を中和しただけでは、CODが高いため、一般排水として流すことができないので、排水とするための処理が必要である。一方、強酸は、中和しただけで一般排水に流すことが可能である。このことから、湿式処理工程の酸洗には、強酸である塩酸または硫酸を用いて、処理する。
従来、該スラリーをpHが3を下回る酸性水溶液で処理すると、合金の主相までが溶出するなどして、得られる磁石粉末の保磁力が低くなるなど、高い磁気特性が得られがたいと考えられていた。しかしながら、本発明では、酸洗処理におけるスラリーの性状を、原料の選択、ないしは処理工程の順序、さらには、酸洗処理の条件を適正に選択することにより、得られる磁石粉末の磁気特性を高く保持したまま、強酸を用いた処理条件における酸洗処理を可能としている。窒化後湿式処理を行うことで、酸洗時に粉末表面に付着し窒化時に還元されてα−Feとなるオキシ水酸化鉄が粉末表面に析出しない。粉砕を行うことによって表面の酸化層が脱落するので表面酸化の影響がなくなる。
前記強酸として、塩酸または硫酸を用いることが好ましいが、その他、硝酸なども用いることもできる。また、安価という点から、塩酸を用いて処理した後に、硫酸を用いて処理することが好ましい。
これにより、酸洗処理の開始時に、スラリーのpHを0.01以上3未満に調整することが望ましい。pHは、なるべく0に近いほど、反応速度が速く、短時間で還元剤の水酸化物や希土類元素リッチ相を除去することができる。一方、pHが3以上となると、Smリッチ相を溶かすのに長時間を要するため、好ましくない。また、実用性の観点から、酸性水溶液のpHの下限は、0.01とする。
この場合、処理開始時のpHのみを調整すればよく、その後のpHの管理は必要とされない。したがって、酢酸などを用いた酸性水溶液のように、処理の進行時にpHの適切な管理は必要とされない。
さらに、前記酸洗処理では、処理温度を30〜100℃以下とすることが望ましい。30℃未満では、反応速度が目立って遅くなり、好ましくない。100℃を超えると、反応速度は速くなるが、Sm−Fe−N系合金が大量に解けるようになり、歩留まりが低下するため、好ましくない。
なお、酸洗処理の処理時間は、1〜5分とする。1分未満では、主相の周りに残留するSmリッチ相が多くなる。一方、5分を超えると、主相が多く溶けて歩留まりが低下してしまう。
さらに、湿式処理工程の後に得られる磁石粗粉末(希土類−鉄−窒素系合金粉末)の平均粒径を、10μm以上とすることが望ましい。磁石粗粉末の平均粒径が、10μm未満では、酸洗処理時に生成した酸化層の影響が微粉砕後の粉末の表面に残留し、得られる磁石粉末の磁気特性が低下してしまうので好ましくない。一方、希土類−鉄系合金粉末を湿式処理前に窒化すると、粒径の大きい粉末は、窒化膨張で割れることから、その平均粒径は40μmを超えることはない。このことから、湿式処理工程の後に得られる磁石粗粉末の平均粒径は、10μm〜35μmの範囲内とすることが好ましい。
10.水洗処理、乾燥処理
得られた合金粉末から、酸を除去するための水洗処理を行い、合金粉末を乾燥することにより、希土類−鉄−窒素系合金粉末を得ることができる。
11.微粉砕処理
さらに、得られた希土類−鉄−窒素系合金粉末を所定の粒径まで微粉砕処理を施すことにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ることができる。本発明により得られる磁石粉末は、前述の通り、飽和磁化、保磁力、および減磁曲線の角形性において、いずれも高い磁気特性を示す。
(実施例1)
原料粉末として、アトマイズ法で製造され、粒径が10μm〜70μmの粉末が全体の94%を占める鉄粉末(へガネス社製、ASC300:Fe純度99%)24.3gと、粒径が0.1μm〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウム粉末(豊田通商株式会社製、Sm23純度99.5%)11.4gと、粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(ミンテックジャパン株式会社製、Ca純度99%)4.6gとを秤量し、コンデショニングミキサー(株式会社シンキー製、MX−201)で、30秒間、混合した。
得られた混合粉末を、ステンレススチール製の反応容器に装入し、反応容器内をロータリーポンプで真空引きして、Arガス置換した後、Arガスを流しながら1050℃まで昇温し、4時間、保持した。その後、250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスを、アンモニア分圧が0.33であるアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、昇温し、450℃で200分、保持した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて、30分、保持した後、冷却した。
得られた多孔質塊状の反応生成物を、直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。得られたスラリーから、Ca(OH)2懸濁物を、デカンテーションによって分離した。その後、純水を注水し、1分間、撹拌し、次いで、デカンテーションを行うという操作を、5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液40gを滴下して、2分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.3から6.5まで推移した。その後、ろ過し、得られたスラリーをエタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.2質量%、N:3.32質量%、O:0.15質量%、残部Feであった。
平均粒径は、HELOS Particle Size Analysis(SYMPATEC社製)で測定したD50の値で測定した。得られたSm−Fe−N系合金粉末の平均粒径は、26μmであった。
得られたSm−Fe−N系合金粉末を、振動式ミル(ナルミ技研株式会社製、マルチミル、型式MA−1)を用い、SUJ2ボール5/32インチ、振動数:30Hz、120分間、エタノール中で微粉砕し、常温真空乾燥して、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を、以下のように測定した。
「磁石粉末の磁気特性試験方法」(日本ボンド磁石工業協会、日本ボンド磁石工業協会ガイドブック、BMG−2002、2000年刊)、および「ボンド磁石の温度係数試験方法」(日本ボンド磁石工業協会、日本ボンド磁石工業協会ガイドブック、BMG−2005、2000年刊)に準じて、1600A/mの配向磁界をかけて、ステアリン酸中で配向させて、試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁した。磁石合金粉末の比重を7.67g/cm3とし、反磁場補正をせずに、最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。なお、分析組成とTh2Zn17型結晶構造の格子定数から算出されたX線密度は、7.67g/cm3であり、この値で飽和磁束密度4πImを換算した。また、Hkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
なお、希土類−鉄−窒素系磁石として、4πIm≧1.4T(14kG)、iHc≧800kA/m(10kOe)、Hk≧400kA/m(5kOe)であれば、十分な性能を有するものといえる。
実施例1で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.43T、iHc=895kA/m、Hk=413kA/mであり、いずれの磁気特性にも優れていた。測定結果を、表1に示す。
Figure 2008024979
(実施例2)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液20gを添加した後、1分、撹拌して、硫酸(関東化学株式会社製、JIS K8951)を調製して得た50vol%硫酸水溶液20gを滴下し、2分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.9から6.3まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.2質量%、N:3.33質量%、O:0.18質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、22μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。実施例2で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.42T、iHc=881kA/m、Hk=404kA/mであり、いずれの磁気特性にも優れていた。測定結果を、表1に示す。
(実施例3)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液10gを添加した後、5分間撹拌処理した。処理中のスラリーは、pH0.1から6.1まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.3質量%、N:3.32質量%、O:0.17質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、29μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。実施例2で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.40T、iHc=885kA/m、Hk=4.09kA/mであり、いずれの磁気特性にも優れていた。測定結果を、表1に示す。
(実施例4)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液5gを添加した後、5分間撹拌処理した。処理中のスラリーは、pH2.5から6.1まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.2質量%、N:3.33質量%、O:0.18質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、29μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。実施例2で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.40T、iHc=886kA/m、Hk=4.12kA/mであり、いずれの磁気特性にも優れていた。測定結果を、表1に示す。
(従来例1)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、15℃に冷却して撹拌しながら、酢酸(関東化学株式会社製、特級、JIS K8355)を調製して得た50vol%酢酸水溶液40gを滴下し、30分間処理した。なお、処理中のスラリーがpH4.7から5.5の間に維持されるように、適宜、50vol%酢酸水溶液を滴下した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.5質量%、N:3.30質量%、O:0.15質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、20μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。従来例1で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.40T、iHc=800kA/m、Hk=401kA/mであり、いずれの磁気特性にも優れていた。測定結果を、表1に示す。
しかしながら、pHの調整が必要であり、処理時間も長く、さらに、処理後の酸性水溶液を排水とするための廃液処理が必要であった。
(比較例1)
実施例1で得られた混合粉末を、ステンレススチール製の反応容器に装入し、反応容器内をロータリーポンプで真空引きして、Arガス置換した後、Arガスを流しながら1050℃まで昇温し、4時間、保持した。その後、250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスを、アンモニア分圧が0.33であるアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、昇温し、450℃で200分、保持した。
得られた多孔質塊状の反応生成物を、直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。得られたスラリーから、Ca(OH)2懸濁物を、デカンテーションによって分離した。その後、純水を注水し、1分間、撹拌し、次いで、デカンテーションを行うという操作を、5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを、40℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液40gを滴下し、2分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.3から6.5まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥しSm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.1質量%、N:3.32質量%、O:0.17質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、27μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例1で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.35T、iHc=562kA/m、Hk=301kA/mであり、磁気特性が低かった。測定結果を、表1に示す。
(比較例2)
原料粉末として、アトマイズ法で製造され、平均粒径1.5μmの鉄粉末(JFEスチール株式会社製、KIP−MP550)24.3gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウム粉末(豊田通商株式会社、Sm2O3純度99.5%)11.4gと、粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(ミンテックジャパン株式会社製、Ca純度99%)4.6gとを秤量し、コンデショニングミキサー(株式会社シンキー製、MX−201)で30秒間、混合した。
得られた混合粉末を、ステンレススチール製の反応容器に装入し、反応容器内をロータリーポンプで真空引きして、Arガス置換した後、Arガスを流しながら900℃まで昇温し、4時間、保持した。その後、250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスを、アンモニア分圧が0.33であるアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、昇温し、450℃で100分、保持した。その後、同温度で窒素ガスに切り替えて、30分、保持した後、冷却した。
得られた多孔質塊状の反応生成物を、直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。得られたスラリーから、Ca(OH)2懸濁物を、デカンテーションによって分離した。その後、純水を注水し、1分間、撹拌し、次いで、デカンテーションを行うという操作を、5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを、40℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液40gを滴下し、2分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.3から6.5まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.3質量%、N:3.32質量%、O:0.17質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、5μmであった。粉砕は行わなかった。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例2で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.30T、iHc=482kA/m、Hk=252kA/mであり、磁気特性が低かった。測定結果を、表1に示す。
(比較例3)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、15℃に冷却して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液2gを滴下し、15分間処理した。処理中のスラリーは、pH3.5から6.5まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.5質量%、N:3.33質量%、O:0.18質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、28μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例3で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.32T、iHc=801kA/m、Hk=400kA/mであり、磁気特性は高かったが、処理に長時間が必要であった。測定結果を、表1に示す。
(比較例4)
実施例1で得られた混合粉末を、ステンレススチール製の反応容器に装入し、反応容器内をロータリーポンプで真空引きして、Arガス置換した後、Arガスを流しながら1050℃まで昇温し、4時間、保持した。その後、250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。次に、Arガスを、アンモニア分圧が0.33であるアンモニア−水素混合ガスに切り替えて、昇温し、450℃で200分、保持した。
得られた多孔質塊状の反応生成物を、直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。得られたスラリーから、Ca(OH)2懸濁物を、デカンテーションによって分離した。その後、純水を注水し、1分間、撹拌し、次いで、デカンテーションを行うという操作を、5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを、40℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液5gを添加した後、30秒、撹拌して、硫酸(関東化学株式会社製、JIS K8951)を調製して得た50vol%硫酸水溶液20gを滴下し、2分間処理した。処理中の水溶液は、pH0.9から6.3まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥しSm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.2質量%、N:3.34質量%、O:0.19質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、27μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例4で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.36T、iHc=563kA/m、Hk=306kA/mであり、磁気特性が低かった。測定結果を、表1に示す。
(比較例5)
比較例2で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、40℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液5gを添加した後、30秒、撹拌して、硫酸(関東化学株式会社製、JIS K8951)を調製して得た50vol%硫酸水溶液20gを滴下し、2分間処理した。処理中の水溶液は、pH0.9から6.3まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.3質量%、N:3.30質量%、O:0.17質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、5μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得たが、微粉砕は行わなかった。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例5で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.31T、iHc=481kA/m、Hk=252kA/mであり、磁気特性が低かった。測定結果を、表1に示す。
(比較例6)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、15℃に冷却して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液5gを添加した後、30秒、撹拌して、硫酸(関東化学株式会社製、JIS K8951)を調製して得た50vol%硫酸水溶液20gを滴下し、2分間処理した。処理中の水溶液は、pH0.9から6.3まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.3質量%、N:3.32質量%、O:0.17質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、23μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例6で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.32T、iHc=802kA/m、Hk=400kA/mであり、磁気特性は高かったが、処理に長時間が必要であった。測定結果を、表1に示す。
(比較例7)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液60gを滴下し、7分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.2から6.5まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.8質量%、N:3.30質量%、O:0.15質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、37μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例3で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.30T、iHc=802kA/m、Hk=400kA/mであり、酸洗が不十分のためSm量が多く磁気特性の4πImが低かった。Sm量が多いということはSmリッチ相の溶け残りが多いことが分かる。測定結果を、表1に示す。
(比較例8)
実施例1で得られた合金粉末スラリーに対して、以下の酸洗浄処理を行った。
得られた合金粉末スラリーを、50℃に加熱して撹拌しながら、塩酸(関東化学株式会社製、JIS K8180)を調製して得た50vol%塩酸水溶液40gを滴下し、6分間処理した。処理中のスラリーは、pH0.1から6.0まで推移した。その後、ろ過し、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、Sm−Fe−N系合金粉末(磁石粗粉末)を得た。
組成は、Sm:23.3質量%、N:3.33質量%、O:0.19質量%、残部Feであった。実施例1と同様に平均粒径を測定した。平均粒径は、23μmであった。得られたSm−Fe−N系合金粉末から、実施例1と同様にして、Sm−Fe−N系磁石粉末を得た。
さらに、実施例1と同様に、得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性を測定した。比較例3で得られたSm−Fe−N系磁石粉末の磁気特性は、4πIm=1.47T、iHc=899kA/m、Hk=410kA/mであり、磁気特性は高かったが、収率が悪かった。実施例1から4に比べて10質量%低かった。測定結果を、表1に示す。
(評価)
以上のように、実施例1および2、3,4は、特定の原料粉末を用いて還元拡散法で製造された希土類−鉄系合金を、特定条件で湿式処理前に窒化した希土類−鉄−窒素系磁石粉末であり、いずれも好ましい磁気特性(飽和磁化、保磁力、角形性)を有することが分かる。これに対して、比較例1および4は、湿式処理後に窒化を行い、強酸で酸洗浄処理を行ったために、磁石粉末の表面が酸化していまい、得られた磁石粉末の磁気特性が、酸化相の影響で、磁気特性を発揮する合金の低下により、飽和磁化4πImが低下した。また、酸化によって、磁石表面にα−Feが生成して、逆磁区の核になり保磁力iHcおよび減磁曲線の角形性Hkが低下した。
比較例2および5は、粉砕しないで磁気特性の出る粒径なので、粉砕はしない。これらは、酸洗処理の時に、合金粉末の表面に受けた小さなダメージが、磁石粉末の表面に残留し、磁気特性を低下させた。比較例3はpHが好まし範囲から外れたので酸洗が不十分であったために磁気特性の4πImが低かった。比較例6は、水溶液温度が好ましい範囲から外れただけで、磁気特性には問題がなかったが、処理時間が約8倍を必要としていた。
比較例7および8は酸時間かが好ましい範囲から外れたのでは比較例7は酸洗が不十分であったために磁気特性の4πImが低かった。比較例は磁気特性は問題ないが、磁石粉末の収率が好ましい範囲の条件よりも10質量%程度低かった。

Claims (5)

  1. 希土類酸化物粉末、鉄粉末、および還元剤を混合し、還元拡散法により反応生成物を得て、該反応生成物を水素処理し、窒化処理した後、水中で崩壊させ、水洗し、その後、得られたスラリーに対して、強酸を用いた酸性水溶液により、処理開始時のスラリーのpHを0.01以上3未満として、酸洗処理を施し、得られた磁石粗粉末を水洗および乾燥し、粉砕機で微粉砕する工程を含むことを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  2. 前記強酸として、塩酸または硫酸を用いる請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 前記酸洗処理において、塩酸を用いて処理した後に、硫酸を用いて処理する請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  4. 前記酸洗処理の処理温度を30〜100℃とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  5. 前記酸洗処理の処理時間を1〜5分とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
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WO2022234865A1 (ja) * 2021-05-07 2022-11-10 国立大学法人京都大学 磁粉の製造方法

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