JP2018031053A - 希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法 - Google Patents

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【課題】粗大粒子の生成や、磁石結晶で磁気特性を低下させる逆磁区の核となり得る破断面の突起や結晶歪みの発生が抑制され、優れた磁気特性を有する磁石粉末が還元拡散法を用いて低コストで得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法を提供する。【解決手段】還元拡散法により得られる希土類−鉄系母合金粉末を窒化する工程を含む希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下である処理液から磁石原料を濾別し、乾燥する第一の工程と、得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理し、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量が6重量%以下となるようにする第二の工程を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法に関し、さらに詳しくは、粗大粒子の生成や、磁石結晶で磁気特性を低下させる逆磁区の核となり得る破断面の突起や結晶歪みの発生が抑制され、優れた磁気特性を有する磁石粉末が還元拡散法を用いて低コストで得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法に関する。
Sm−Fe−N磁石で代表される希土類−鉄−窒素系磁石は、高性能かつ安価な磁石として知られている。上記Sm−Fe−N系磁石粉末では、SmFe17Nxであればx=3の組成で構成されることによって最大の飽和磁化を示すとされている(非特許文献1参照)。
上記希土類−鉄−窒素系磁石は、従来、FeとSm金属を用いて高周波炉、アーク炉などを用いた溶解法により作製される希土類−鉄合金を、または、FeあるいはFeと、Sm等の原料とCaを混合加熱処理する還元拡散法によって得られる希土類−鉄合金を、窒化することで製造されている。
このようにして得られた粉末状の希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、窒化後に平均粒子径が数μmから5μm程度になるまで微粉砕処理される。
上記溶解法による希土類−鉄合金製造では、原料粉末の1500℃以上での溶解、粉砕、組成均一化のための熱処理が必要で(特許文献3参照)、工程が極めて煩雑であるとともに、各工程間において一旦大気中に曝されるために酸化により不純物が生成し、湿式処理後に窒化を行うが湿式処理時に表面が酸化しているため窒化が均一に進行できなくなり、磁気特性のうち飽和磁化、保磁力、角形性が低下し、結果として最大エネルギー積が低くなってしまう。また、原料として必要とされる希土類金属が高価であるという問題がある。
一方、希土類−鉄合金の製造に還元拡散法を採用すれば、安価な希土類酸化物粉末を原料として利用できるので溶解法に比べてコスト的に有利とされている。本出願人は、原料粉を還元拡散熱処理した合金を窒化し、得られたRFeNの粗粉末を微粉砕しながら表面を被覆することで、耐酸化性を高める提案をしている(特許文献4参照)。
還元拡散法では、通常出発原料に数十μmの鉄粉末を用い、希土類金属もしくは希土類酸化物とアルカリ土類金属を混合の後、還元熱処理を行うことで希土類−鉄合金を作製するが、この方法では最終的な窒化処理の後、磁石合金粉末を数μmに機械粉砕する必要がある。しかし、この機械粉砕により当該RFeN磁石合金粉末の結晶では逆磁区の核となり得る破断面の突起や結晶歪みが発生し、磁気特性が低下してしまうことが課題となっていた。
これに対し、出発原料として用いる粉末の粒子径を小さくすることにより、還元拡散法によって得られる希土類−鉄合金の粒子径を小さく抑え、粉砕せずに磁石粉末を得る方法(特許文献1〜3参照)が提案されている。
特許文献1では、平均粒径が5μm未満である希土類酸化物と、平均粒径が5μm未満である遷移金属酸化物を使用し、乾式混合を行い、2段階で還元することにより、平均粒径が5μm未満の希土類遷移金属合金粉末を得る製造方法が開示されている。
特許文献2には、平均粒子径0.1〜10μmの酸化鉄粒子粉末と、平均粒子径0.5〜5.0μmの酸化サマリウム粒子粉末を、湿式混合もしくは湿式粉砕混合を行い、水素ガス雰囲気下で還元反応を行い鉄粒子と酸化サマリウム粒子との混合物にし、鉄粒子と酸化サマリウム粒子との上記混合物に酸素含有雰囲気で安定化処理を行って、鉄粒子の粒子表面に酸化被膜を形成した後、カルシウムを混合して還元拡散反応を行う方法が提案され、上記鉄粒子表面に酸化被膜を形成することによって、その後の窒化反応を均一に進行させ、粒子間の焼結を抑制することが開示されている。
また、特許文献3では、希土類元素及び遷移金属を酸等により溶解してイオン化し、溶液状態で完全に混合し、沈殿反応により沈殿させれば、沈殿物粒子内の構成元素の分布が均質で、平均粒径が0.05〜20μmで粒子形状が整い、粒度分布のシャープな沈殿物が得られるので、この沈殿物を焼成して、粒子内に希土類元素と遷移金属元素の微視的な混合がなされた金属酸化物を生成した後、還元拡散法を用いると、粒子形状が整った均質な合金粉末が得られることが開示されている。
しかし、いずれの場合も、アルカリ土類金属による還元拡散熱処理時に局部的に非常に大きな発熱を生じ局部的粒成長を引き起こすことを抑制できないため、生成した粗大粒子による磁気特性低下を抑制するまでには至っていなかった。
また、特許文献1に開示されている乾式混合方法では、原料の比重分離や装置内付着、凝集などによる混合不均一が起きやすいという課題や、特許文献2に開示されている鉄粒子と酸化サマリウム粒子との混合物に酸素含有雰囲気で安定化処理を行う方法では、鉄粒子の粒子表面に酸化被膜を形成した後、還元拡散反応を行うが、実施例を参照すると、平均粒径が3μm以上で中には4μmを超える大きなものもあり、窒化不足な粒子が存在するので磁気特性が十分とはいえないという課題、また特許文献3に開示されている晶析による共沈法では、希土類化合物が混合物中に微分散することによって水素による還元熱処理時に鉄希土類複合酸化物の生成が顕著に起こるなど、さらなる課題も指摘されている。
以上のことから、従来の希土類−遷移金属合金の製造方法では、局部的粒成長を無くすことはできておらず、粉砕処理時に、当該磁石合金粉末の結晶で磁気特性を低下させる逆磁区の核となり得る破断面の突起や結晶歪みの発生を引き起こさないような、また、当該磁石合金粉末の局部的粒成長を引き起こさないような、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法の確立が強く望まれていた。
特開平11−310807号公報 特開2003−297660号公報 特許3698538号公報 特許4135447号公報
T.Iriyama IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS,VOL.28,No.5(1992)
本発明は、このような従来技術の状況に鑑み、粗大粒子の生成や、磁石結晶で磁気特性を低下させる逆磁区の核となり得る破断面の突起や結晶歪みの発生が抑制され、優れた磁気特性を有する磁石粉末が還元拡散法を用いて低コストで得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、かかる従来の課題を解決するために、還元拡散法を用いた希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造について鋭意研究を重ねた結果、原料混合段階で、希土類原料粉末が過度に微粒であったり、希土類化合物が非常に微細な状態で分散していたりする場合、水素による還元熱処理時に鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)が多量に生成してしまい、次工程のアルカリ土類金属による還元拡散処理を行う際に、大きなテルミット発熱を生じて磁石合金の局部的な粒成長を引き起こしていることを知見し、
希土類−鉄−窒素系磁石粉末を高性能化するためには、鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を湿式混合処理する段階で、希土類化合物が微細な状態で分散した状態となることを抑制し、原料粉として、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となるような混合粉末を用いて、次工程の水素還元熱処理工程において、得られる還元混合物粉末中に希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)が生成することを抑制すれば、還元拡散工程において、局部的な発熱の増大を抑え、希土類−鉄系合金の粒成長による粗大粒子の発生が抑制され、粗大粒子が非常に少ない希土類−鉄系母合金が得られるようになり、当該希土類−鉄系母合金を窒化処理すれば、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、還元拡散法により得られる希土類−鉄系母合金粉末を窒化する工程を含む希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下である処理液から磁石原料を濾別し、乾燥する第一の工程と、
得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理し、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成量が6重量%以下となるようにする第二の工程と、
得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、本発明の第1の発明において、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末が、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、
長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率が5%未満であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、本発明の第1の発明において、希土類−鉄−窒素系磁石粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、本発明の第1の発明において、Sm量が、磁石粉末全体に対して23.2〜23.6重量%であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、本発明の第1の発明において、第一の工程の鉄化合物が、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、水酸化鉄から選ばれる1種以上であり、希土類化合物が、希土類酸化物、希土類水酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、本発明の第1の発明において、第一の工程の湿式混合処理で、予め前記鉄化合物粉末、希土類化合物粉末のいずれかを水に分散させる試験を行い、水溶液が酸性を示す場合、溶媒に有機溶媒を用いるようにし、一方、水溶液がアルカリ性を示す場合は、溶媒に水、あるいは、有機溶媒を用いるようにすることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、本発明の第1の発明において、第二の工程における熱処理の温度範囲が500〜800℃であること特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、本発明の第1の発明において、第三の工程におけるアルカリ土類金属量が、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であること特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、本発明の第1の発明において、第五の工程においてブドウ状の2次粒子を砕く粉砕強度で解砕を行い、1次粒子塊は粉砕しないことを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法によれば、原料粉に含まれうる塩素を特定の塩素イオン濃度以下となるように規制することで、水素還元時に生成される希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の存在率を大幅に減らすことを可能とし、還元拡散処理後の粒成長を抑制したことにより、粗大粒子の粉砕強度を強める必要が無くなることから、逆磁区の核の発生および結晶歪みの発生を抑制することが可能となり、高性能な希土類−鉄−窒素系磁石粉末を製造することができ、製造コストも安価になることから、その工業的価値は極めて大きい。
本発明(実施例1)の製造方法で作製された希土類−鉄−窒素系磁石粉末の、ボールミルによる解砕後の磁石粉末のSEM像(左側:粒子表面観察、右側:反射電子像による粒子断面観察)を示す写真である。
従来(比較例1)の製造方法で作製された希土類−鉄−窒素系磁石粉末の、ボールミルによる解砕後の磁石粉末のSEM像(左側:粒子表面観察、右側:反射電子像による粒子断面観察)を示す写真である。
従来(比較例4)の製造方法で作製された希土類−鉄−窒素系磁石粉末の、ボールミルによる解砕後の磁石粉末のSEM像(左側:粒子表面観察、右側:反射電子像による粒子断面観察)を示す写真である。
以下、本発明の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法について、詳しく説明する。
本発明は、還元拡散法により得られる希土類−鉄系母合金粉末を窒化する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後乾燥して、当該混合粉末中に含有される塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となる混合粉末を得る第一の工程と、
得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理して、得られる還元混合物粉末中に生成される希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成量を6重量%以下とする第二の工程と、
得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、を備えている。
以下、各工程ごとに詳細に説明する。
1.希土類−鉄母合金の製造方法
(1−a)第一の工程:原料粉末の混合
まず、磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後に乾燥する。
本発明では、水中に酸化物粉末を分散させた後、遠心分離し、その上澄み液を使って、溶出塩素濃度を分析し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となる混合粉末を用いるようにする。塩素イオン濃度の測定方法については、特に限定されるわけではないが、陰イオンクロマトグラフィによることができる。
鉄化合物粉末としては、酸化鉄;Fe、FeO、Fe、オキシ水酸化鉄;FeOOH、水酸化鉄(II);Fe(OH)、水酸化鉄(III);Fe(OH)が好ましく使用できる。また、塩化物出発の酸化物等を化合物として用いることもできるが、塩素が含まれるために、混合・乾燥まで行った後に、酸素含有雰囲気、例えば大気中で800℃以上の温度で焙焼することが望ましい。
これらは、後に生成される希土類−鉄母合金の粒子径を小さくするため、鉄化合物粉末の粒子径は、平均粒子径で3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。これは、平均粒子径が3μmを超えると後に生成される希土類−鉄母合金の粒子径が鉄化合物粉末の粒子径以上となるため、大きな粒子ができやすく保磁力が低下するほか、窒化処理の際に粒子内の窒化不足が起きる要因となるためである。
希土類化合物粉末としては、特に制限されないが、Sm、Gd、Tb、Ceから選ばれる少なくとも1種類の元素、あるいは、さらにPr、Nd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる少なくとも1種類の元素が含まれる、希土類酸化物、希土類水酸化物から選ばれる1種以上であるものが好ましい。中でもSmが含まれる希土類化合物は、本発明の効果を顕著に発揮させることが可能になるので特に好ましい。
Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にすることが好ましい。化合物の形態としては酸化物、水酸化物が好ましく、粒子径については固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないように鉄化合物の粒子径より小さいことが好ましい。ただし0.1μm未満の微粉末を使用する場合は、鉄希土類複合酸化物を多く生成させる要因となるので好ましくない。
混合方法としては、乾式混合、湿式混合があるが、乾式混合は細かい粉を扱うため静電気や大気中の水分などの影響によって粉体同士が凝集を起こしたり混合装置内壁に付着したりしてしまうなど、均一な混合が難しいため、湿式混合が好ましい。また、その他の方法としては、上記したように晶析による鉄と希土類の共沈粉末を製造する方法もあるが、希土類塩が非常に細かい状態で微分散しているため、水素による還元熱処理時に鉄希土類複合酸化物を多量に生成する問題が起こるため、好ましくない。
湿式混合において、希土類化合物粉末の粒子径が鉄化合物粉末の粒子径より大きい場合などは、ボールミル混合やビーズミル混合といった媒体を利用して希土類化合物粉末の粒子径を鉄化合物粉末よりも小さくする混合方法を用いることが好ましい。また、希土類化合物粉末が鉄化合物粉末の粒子径より小さい場合は、攪拌羽根を利用した攪拌混合や、粉砕されにくい大きさのボールや比重の軽いボールを使用したボールミル混合などの方法にて混合することが好ましい。
このとき、予め混合に用いる鉄化合物、希土類化合物のいずれかを水に分散させて、水溶液のpHを確認しておくことが望ましい。水溶液が酸性を示す場合は、溶媒に有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール、もしくはジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどが好ましいが、エタノールもしくはイソプロピルアルコールがより好ましく、かつ有機溶媒中に水分を含まないものがより好ましい。
一方、鉄化合物、希土類化合物のいずれかを水に分散させた水溶液がアルカリ性を示す場合は、溶媒に水、あるいは、有機溶媒を用いることができる。
原料化合物を水に分散させたときに分散溶液が酸性を示す場合に有機溶媒を用いるのは、溶媒が水の場合、例えば、希土類化合物として希土類酸化物を用いた場合、希土類酸化物の一部が水中に溶解し、その後、再析出し、微細な希土類水酸化物となって生成し、この希土類水酸化物が存在することにより、次工程の水素還元時に鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)が形成されるためである。さらには、この鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)が存在することにより、アルカリ土類金属との還元熱処理工程で大きな発熱を生じて最終的に保磁力を低下させてしまうか、もしくは、生成する希土類−鉄母合金粒子が局部的に粒成長を引き起こして、窒化処理時に粒子内部が窒化不足に陥る恐れがあるからである。
湿式混合したスラリーは、次にろ過し、乾燥させるが、乾燥方法は定置乾燥、流動乾燥、気流乾燥、攪拌乾燥、真空乾燥、振動乾燥等どの方法を用いても構わない。
得られた鉄化合物および希土類化合物からなる混合粉末においては、水に分散させたときに、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下であることを確認して用いることが必要である。これは、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%を超える混合粉末を用いると、次の水素による還元熱処理中に発生する水蒸気中に塩化水素として溶け込んだ酸性水蒸気が希土類化合物を攻撃し、溶解、加熱による分解によって鉄化合物もしくはすでに還元された鉄粉末中に希土類化合物が微分散して、鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成を促す方向へ急激に進むためである。
混合粉末は、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下でなければならないために、原料粉の鉄化合物、希土類化合物として塩化物は用いず、酸化物等を用いる場合でも、その原材料として塩化物出発のものは使用しないことが好ましい。なお、塩化物出発の酸化物等を化合物として用いる場合には、前記の通り、混合・乾燥まで行った後に、酸素含有雰囲気、例えば大気中で800℃以上の温度で焙焼することにより混合粉末の塩素イオン濃度を低下させることが好ましい。
(1−b)第二の工程:水素還元
第二の工程は、第一の工程で得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理して、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成量を6重量%以下とする工程である。
水素還元は、(1−a)で作製した混合粉末を、水素気流中にて熱処理することで行われる。熱処理温度範囲としては500〜800℃が好ましい。
これは、500℃を下回ると、還元が不十分となり酸化鉄が残りやすくなるほか、還元後の結晶が不安定なため、大気に触れるとすぐに酸化して再び酸化鉄に戻ってしまうためである。熱処理温度が800℃を超えると、還元はされるが高温のため出発原料の粒子が粒成長して粒子径が大きくなってしまい、次工程の希土類−鉄母合金を得る時点では保磁力を低下させるほどまで粒子径が大きくなるためである。熱処理温度範囲は550〜700℃がより好ましい。熱処理時間は特に限定されないが、例えば1〜5時間とすることができる。また、水素流量も特に限定されないが、例えば1〜100ml/(min・g)とすることができる。
水素還元装置としては、定置式のマッフル炉、昇降炉、回転式のキルン、連続製造可能なプッシャー炉、ローラーハースキルンなどがあるが、回転式のキルンのようにガスの反応効率の良い装置が、短時間で還元が終了するため好ましい。定置式のマッフル炉、昇降炉でも時間をかければ水素還元は可能であるが、より好ましくは、混合粉末からの水蒸気の排出、水素ガスの浸透が遅滞なく行われるように匣鉢内の混合粉末の層厚を薄くするとか、導入ガス量を多くするとか、容器をメッシュ式にするなど様々な方法で反応効率を上げることが望ましい。
上記方法により水素還元を行うことで、得られる還元混合粉末中には、希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の量が少なくなる。
ただ希土類化合物が0.1μm未満の微粉末であったり、原料化合物混合時の溶媒に希土類化合物が溶解して微細な希土類化合物となり、鉄化合物表面に存在したりするなどの状態から、水素還元時、鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成が促進され、鉄粉末、希土類酸化物の他に鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)が多く含まれる場合がある。しかし、この鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の存在比率は6重量%以下でなければならない。これは、希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の存在比率が6重量%を超えると、次の還元拡散工程において局部的な粒成長が起きてしまうからである。より好ましいのは、鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の存在比率が5.5重量%以下となることである。
(1−c)第三の工程:還元拡散、および、反応生成物の冷却
次に、第三の工程では、第二の工程で得られた上記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することによりThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄系母合金を得る。アルカリ土類金属量は、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることが好ましい。
還元拡散法は、前記したように希土類酸化物粉末と鉄粉末、Caなどのアルカリ土類金属の還元剤との混合物を不活性ガス雰囲気中、例えば900〜1180℃で加熱した後、反応生成物を湿式処理して副生したCaOおよび残留Caなどの還元剤成分を除去することによって、直接希土類−鉄系母合金粉末を得る方法である。
本発明では、鉄粉末と希土類酸化物粉末、さらには希土類鉄複合酸化物が存在する還元混合物粉末と還元剤とを混合して、反応容器に投入し、900〜1180℃の温度で熱処理することによって、希土類酸化物と他に残る酸化物原料等を還元するとともに、還元された希土類元素を鉄粉末中に拡散させてThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄母合金を生成させる。
ここで、前工程で得られた還元混合物中の各原料化合物粉末は、それぞれの粉体特性によって分離しないように還元剤とともに、均一に混合する必要がある。混合方法としては、例えばリボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、振動ミルなどが使用できる。
還元剤としては、アルカリ土類金属が使用でき、取り扱いの安全性とコストの点で、目開き4.00mm以下に分級した粒状金属カルシウムもしくは金属マグネシウムが好ましい。上記還元剤は上記還元混合物粉末と混合するか、金属蒸気が還元混合物粉末と接触しうるように分離しておく。還元剤と還元混合物中粉末とを混合して還元拡散を行えば、反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができるので好ましい。
上記還元混合物粉末や還元剤とともに、後の湿式処理工程において反応生成物の崩壊を促進させる添加物を混合することも効果的である。崩壊促進剤としては、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩や酸化物を用いることができ、還元混合物粉末などと同時に均一に混合する。ここで不活性ガスは、アルゴン、ヘリウムから選ばれた1種類以上が用いられる。
還元拡散を行う時の熱処理温度は900〜1180℃の範囲とすることが必要である。900℃未満では、拡散に要する時間が非常に長くなり、生産性に欠けるとともに、鉄粉末に対して希土類元素の拡散が不均一となり、次工程の窒化処理で得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の保磁力や角形性が低下するため好ましくない。また、1180℃を超えると、生成する希土類−鉄母合金が粒成長を起こすため、次工程の窒化処理で均一に窒化することが困難になり磁石粉末の飽和磁化と角形性、保磁力が低下する場合があり、好ましくない。また、希土類元素の蒸発量も非常に多くなり、これを補うために過剰に希土類元素が必要となり高コストにもなる。熱処理温度が900〜1180℃ではこのような現象が起きないほか、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子との混合粉末となるが、粒子同士の焼結は弱く、窒化処理後の解砕のときに結晶歪みを起こしにくいという利点もある。
ここで、還元拡散反応で得られる反応生成物は、例えば、還元剤として金属カルシウムを用いた場合には、ThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄母合金と酸化カルシウム、未反応の余剰の金属カルシウムなどからなる塊状の混合物である。さらに粒状金属カルシウムを原料粉末に混合して還元拡散反応させた場合には、多孔質の塊状混合物となっている。
これに対して、前記特許文献3で採用されている、希土類元素及び遷移金属を酸等により溶解してイオン化し、溶液状態で完全に混合し、沈殿反応により沈殿させ、粒度分布のシャープな沈殿物を得て、この沈殿物を焼成して、粒子内に希土類元素と遷移金属元素の微視的な混合がなされた金属酸化物を生成し、その後還元拡散法を用いて、粒子形状が整った均質な合金粉末を得る方法では、希土類原料として希土類金属が用いられるため、還元拡散法で用いられる希土類酸化物原料に比べて高価となる。特に、希土類元素が、優れた磁気特性をもたらすSmの場合によるコスト差は顕著である。また粒度調整で発生する不要な粉末は、製品収率を低下させ、粉末コストをさらに引き上げてしまう。また沈殿物から焼成、還元拡散する方法では、得られた合金中に存在するα−Fe相などを無くすために均質化熱処理工程が必要であり、さらに窒素を導入する前に均質化熱処理した合金を粗粉砕し、粒度調整する工程が必要となるなど粉末コストをさらに引き上げてしまうため好ましくない。
第三の工程では、還元拡散反応後の反応生成物に対して、雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、引き続き冷却する。冷却としては、300℃以下にするのが好ましく、50〜280℃、より好ましくは100〜250℃に冷却する。冷却後の温度が300°Cを越えていると、次工程の窒化の際に反応生成物との窒化反応が急激に進んでしまい、α−Fe相を増加させてしまうことがあるので、300°Cよりも低い温度まで冷却するのが望ましい。これは、300°Cを越える温度では、反応生成物が活性であるために合金が急激に窒化されて、ThZn17型結晶構造を有する金属間化合物の一部がFeリッチ相とSmNとに分解するものと推測されるからである。
冷却後に、多孔質の塊状混合物である反応生成物を湿式処理しないで、雰囲気ガスを不活性ガスから、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスに変えて、次の窒化工程に移る。このとき反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄母合金粉末が酸化されて反応性が失活し、結果として窒化の度合いをばらつかせるので、大気(酸素)に曝されないように窒化工程に持ち込むことが必要である。
2.希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法
(2−a)第四の工程:窒化処理
第四の工程では、第三の工程で得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る。
窒化ガスとしては、少なくともアンモニアと水素とを含有している混合ガスが必要であり、反応をコントロールするために、アルゴン、窒素、ヘリウムなどを混合することができる。窒化ガスの量は、磁石粉末中の窒素量が3.3〜3.7重量%となるに十分な量であることが好ましい。
全混合ガス圧力に対するアンモニアの比(アンモニア分圧)は、0.2〜0.6が好ましく、0.3〜0.5となるようにするのがより好ましい。アンモニア分圧が0.2未満であると、長時間かけても母合金の窒化が進まず、窒素量を3.3〜3.7重量%とすることができず、得られる磁石粉末の飽和磁化と保磁力が低下してしまう。
少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを、窒化温度である350〜500°C、好ましくは400〜480°Cで供給して、反応生成物中の希土類−鉄系母合金を窒化熱処理する。温度が350°C未満であると、反応生成物中の希土類−鉄系母合金に3.3〜3.7重量%の窒素を導入するのに長時間を要するので工業的優位性がなくなることがある一方、500°Cを超えると、主相であるSmFe17相が分解してα−Feが生成するので、最終的に得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が低下することがある。なお、前工程で反応生成物を冷却した冷却温度から窒化温度までは、毎分4〜10℃の速度で比較的急速に昇温することが生産効率を高める上で望ましい。また、冷却温度での保持時間は、特に必要はない。保持しても窒化に対する効果はないからである。
窒化処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、100〜300分が好ましく、140〜250分とするのがより好ましい。100分未満では、窒化が不十分になり、一方、300分を超えると窒化が進みすぎることがある。
本発明においては、窒化処理に引き続いて、さらに水素ガス、または窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で合金粉末を熱処理することが望ましい。特に好ましいのは、水素ガスで熱処理した後に窒素ガスおよび/またはアルゴンガスで熱処理をすることである。
これにより、希土類−鉄−窒素系磁石粉末を構成する個々の結晶セル内の窒素分布をさらに均一化することができ、角形性を向上させることができる。熱処理の保持時間は、30〜200分が好ましく、60〜250分がより好ましい。
(2−b)第五の工程:湿式処理、微粉砕、乾燥
次に、第四の工程で得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る。
上記したように、窒化後の希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理することで窒化処理生成物塊を崩壊させ、当該窒化処理生成物塊に含まれていた還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を希土類−鉄−窒素系磁石粉末から分離除去することができる。
窒化終了後の磁石粉末に対して湿式処理を行うのは、窒化する前に希土類−鉄系母合金を含む反応生成物を湿式処理すると、この湿式処理過程で希土類−鉄系母合金表面が酸化されて、その後の希土類−鉄系母合金の窒化の度合いをばらつかせるからである。
また、窒化後に窒化処理生成物塊を長期間大気中に放置すると、カルシウムなどの還元剤成分の酸化物が生成し除去しにくくなったり、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の表面の酸化によって、窒化が不均一になり主相の比率の低下とニュークリエーションの核の生成によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された窒化処理生成物塊は、反応容器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのが好ましい。
湿式処理は、まず窒化処理生成物塊を水中に投入して塊を崩壊させ、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)を除去するために、酢酸、塩酸から選ばれる1種以上を用いて酸洗浄する。このときの水溶液の水素イオン濃度はpH4〜7の範囲で実施するとよい。原料混合時に過剰に希土類元素が投入されている場合、還元拡散処理時に、過剰な希土類元素の影響で、主相であるThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄合金の周りに、希土類元素量が多く飽和磁化を低下させる非磁性相が生成され存在している場合があり、主相の希土類元素量の好ましい範囲である23.2〜23.6重量%になるように酸洗を行い、希土類元素量が多い非磁性相を除去しておくことが好ましい。
上記酸洗浄処理の終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を得ることができる。
上記で得られる希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、上記1次粒子の長軸粒子径をSEMによって確認し測定した時、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率は5%未満となる。長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率は、2%未満であると好ましい。これは、1次粒子で、長軸粒子径が4μm以上の粒子が増えていると、粒子断面を確認すると窒化が粒子中心部まで進んでおらず、窒化不足となっている粒子が存在することが確認されるほか、希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、粒子が大きいために飽和磁化、角形性、保磁力を低下させる要因にもなるからである。
上記のように希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末は、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、このような磁石粗粉末を溶媒とともに粉砕機に投入し、上記1次粒子塊は粉砕せず、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕し、その後、ろ過、乾燥することが好ましい。
解砕に用いるに粉砕機は、固体を取り扱う各種の化学工業において広く使用され、種々の材料を粉砕するための粉砕装置であれば、特に限定されるわけではない。その中でも、粉末の組成や粒子径を均一にしやすい点で、媒体撹拌ミルまたはビーズミルによる湿式粉砕方式によることが好適である。粉砕条件としては、上記したように、2次粒子からなる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の焼結部が外れる程度に弱く解砕する程度が好ましく、一次粒子が壊れるほどの強い粉砕とならないよう適宜条件を設定すればよい。
粉砕に用いる溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、メタノール、ヘキサン等が使用できるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。粉砕後所定の目開きのフィルターを用いてろ過し、乾燥して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得ればよい。
3.希土類−鉄−窒素系磁石粉末
上記製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、ThZn17型またはThNi17型結晶構造を持つ希土類元素−鉄−窒素系磁石粉末である。上記希土類−鉄−窒素系磁石粉は、菱面体晶系、六方晶系、正方晶系または単斜晶系の結晶構造をもつ金属間化合物であり、ThZn17型の磁石合金粉としては、例えば、SmFe17合金、NdFe17などが挙げられ、また、ThNi17型の磁石合金粉としては、例えば、GdFe17などが挙げられる。
希土類元素(R)としては、Sm、Nd、Pr、Y、La、Ce、またはGd等が挙げられ、これらは単独でも複数混在でもよいが、これらの中では、Sm及びNdが有効であり、特にSmを80質量%以上含有するものが好ましい。遷移金属元素(T)は、Feが必須成分であり、この一部がCoで置換されたものでもよい。
上記希土類−鉄−窒素系磁石粉には、C、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、又はAuを含有することができる。これらの中には、遷移金属以外の元素も含まれているが、全て遷移金属元素(T)に準じて扱うものとする。これら成分を3質量%以下、好ましくは0.05〜0.5質量%添加すれば、磁石の耐候性や耐熱性をさらに高めることができる。
このうち、Al、Si、Ca、V、Cr、Mn、Cu、Mo、Zr、Nb、又はTa等から選ばれた一種以上を添加すれば保磁力の向上、生産性の向上並びに低コスト化を図ることができる。この場合、添加量は、遷移金属(T)全重量に対して3重量%以下とすることが望ましい。
本発明の磁石合金粉として、特に好ましい希土類−鉄−窒素系磁石粉としては、Sm−Fe−Nが挙げられる。特に、Sm量が磁石粉末全体に対して23.2〜23.6重量%のものが一層好ましい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末の特性値は次の方法で測定した。
(1)磁気特性
希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600kA/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させた試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。
磁石合金粉末の比重を7.67g/cmとし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。Hkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが残留磁化4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
(2)粒子形状
解砕前の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の粒子表面形状、断面を走査型電子顕微鏡(SEM:カールツァイス社、ULTRA55)で観察した。
(3)粒度分布
平均粒子径は、Sympatec社製レーザー回折型粒径分布測定装置:ヘロス・ロードスにて測定した。
粒子長軸粒子径は、SEM像から1次粒子の粒径を1000倍で撮影した写真を2倍に拡大して、最小目盛1mmの定規で長軸粒子径を測定し、測定粒子径と対応する粒子個数を数え、全体粒子個数と、粒径4μm以上の粒子個数から、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率を求めた。
(4)水素還元物の生成物割合の算出
第二の工程において、乾燥混合粉末を水素還元して得られた還元混合物粉末について、粉末X線回折装置を用いて、X線回折測定したデータをもとに生成化合物の同定を行い、それら化合物の存在比率についてリートベルト解析を使用し、半定量値を算出することで、各化合物の割合を求めた。
(5)塩素イオン濃度
塩素イオン濃度は、陰イオンクロマトグラフィを用いて測定した。水中に酸化物粉末を分散させた後、遠心分離し、その上澄み液を使って、溶出塩素濃度を測定した。
(実施例1)
[第一の工程]
磁石原料粉末として、硝酸塩から製造された平均粒子径が0.7μmの酸化鉄Fe粉末(Fe純度99%)100.0gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウムSm粉末(Sm純度99.5%)31.8gを秤量した。次に、500ccのポリ容器中にて秤量した酸化鉄をイソプロピルアルコール130gに分散させスラリー化したところに、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32inchの金属ボールを追加して24時間ボールミル混合を行った。
その後、ポリ容器からスラリーを排出し、金属ボールと分離した後、定置式真空乾燥器にて40℃設定で20時間乾燥した。混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度の総和が0.01重量%未満であった。
[第二の工程]
乾燥した混合粉末100.0gを箱型雰囲気炉に装入して、水素を25ml/(min・g)流し、昇温速度5℃/minで600℃まで加熱して4時間保持した後、室温まで冷却し、徐々に内部を空気に置換して水素還元物を回収した。
このときの水素還元物の一部をXRDにて同定を行い、リートベルト解析でその存在比率を半定量値として算出した。この時の存在比率は、α−Fe:Sm:SmFeO=68.6:30.8:0.6(重量%)であった。
[第三の工程]
この水素還元物16gに、粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(Ca純度99%)3.6gを加え、コンデショニングミキサー(MX−201:シンキー製)で30秒間混合した。
これをステンレススチール反応容器に挿入し、容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながら950℃まで昇温し、8時間保持後250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。
[第四の工程]
次に、Arガスをアンモニア分圧が0.33のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて昇温し、450℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて30分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持し冷却した。
[第五の工程]
取り出した多孔質塊状の反応生成物塊を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。合金粉末をろ過後、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子からなるSm−Fe−N磁石合金粉末を得た。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.2重量%、N3.33重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
このSm−Fe−N磁石合金粉末をエタノール中で振動式ボールミルを用い、エタノール中でSUJ2ボール5/32インチ、振動数 30Hzで、30分間解砕し、常温真空乾燥した。
<磁気特性>
得られたSm−Fe−N磁石合金粉末の磁気特性を、上記測定方法に従い、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。
分析組成とThZn17型結晶構造の格子定数から算出された粉末のX線密度は7.67g/cmで、この値で飽和磁束密度4πImを換算した。iHcは保磁力である。またHkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
結果を表2に示すが、4πIm=1.42T、iHc=889kA/m、Hk=413kA/mであり、高特性が得られた。
<粒子表面性状、凝集状態、粗大粒子>
また、図1(左)に示すように粒子表面性状をSEMにて確認したところ、滑らかな表面状態が観察され、凝集塊や粗大粒子はほとんど見られなかった。
<粒子断面観察>
図1(右)に示すようにSEMにて粒子断面を観察したところ、残留鉄もなく粒子内部まで均一に窒化されていた。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く、また窒化不足であるとコントラストがやや白く映るため明確に判断できる。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、1.6%であった。
(実施例2)
実施例1の条件において、鉄化合物として、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmのFeを粉末で使用し、ボールミル混合・乾燥まで行った後、一度大気中で800℃焙焼を行った後に、水素による還元熱処理を行うように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして行ったところ、水素還元前の混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度の総和が、0.09重量%であり、水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm:SmFeO=67.2:27.5:5.3(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.35重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
<磁気特性>
実施例1と同様に解砕後、サンプリングして磁気特性を求めた。
結果を表2に示すが、4πIm=1.40T、iHc=865kA/m、Hk=409kA/mであり、高特性が得られた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、4.2%であった。
(実施例3)
磁石原料粉末として、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmの酸化鉄Fe粉末100.0gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウムSm粉末31.8gを秤量し、次に500ccのポリ容器中にて秤量した酸化鉄を純水130gに分散させスラリー化した。このときpHは2.3を示すことから、ここに酸化カルシウム(関東化学)を粉末で添加しpHを8.1とした後、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32inchの金属ボールを追加して24時間ボールミル混合・乾燥を行った。
得られた混合粉末は、当初塩素イオン濃度で0.18重量%であったが、この混合粉末を実施例2の条件で焙焼(大気中で800℃焙焼)することにより、表1に示すように、塩素イオン濃度を0.07重量%に下げた後、さらに水素還元を行った。水素還元後の混合粉末の存在比率は、α−Fe:Sm:SmFeO=67.6:28.3:4.1(重量%)となった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.3重量%、N3.33重量%、O0.15重量%、残部Feだった。実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を測定した。結果を表2に示すが、4πIm=1.41T、iHc=880kA/m、Hk=410kA/mであり、高特性が得られた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、3.5%であった。
(比較例1)
実施例2の製造条件において、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmの酸化鉄Fe粉末を使用するが、水素還元前の混合粉末を焙焼せずに水素還元を行う以外は実施例2と同様にして行った。水素還元前の混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度が総和で、0.21重量%と高く、SmFeOの存在比率では、α−Fe:Sm:SmFeO=63.0:16.8:20.2(重量%)となり、生成したSmFeO量が実施例に比較し多くなった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.3重量%、N3.31重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
<磁気特性>
実施例1と同様に解砕後、サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.35T、iHc=706kA/m、Hk=322kA/mであった。
<粒子表面性状、凝集状態、粗大粒子>
また、図2(左)に示すように、比較例1では、粒子表面性状をSEMにて確認したところ、弱粉砕のため滑らかな表面状態であるが、凝集塊や粗大粒子がやや見受けられた。
<粒子断面観察>
図2(右)に示すように、SEMにて粒子断面を観察したところ、残留鉄や粗大粒子も見つかった。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く映るため明確に判断できた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、12.5%であった。
(比較例2)
実施例2の製造条件において、水素還元前の焙焼温度を400℃に下げて焙焼を行うことにより、水素還元前の混合粉末の塩素濃度を低下させ、塩素イオン濃度の総和で0.13重量%とした以外は、実施例2と同様にして行った。水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm:SmFeO=66.8:26.3:6.9(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.5重量%、N3.34重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
<磁気特性>
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.38T、iHc=790kA/m、Hk=390kA/mであった。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、5.8%であった。
(比較例3)
実施例3の製造条件において、ボールミル混合・乾燥し、水素還元前の混合粉末を焙焼せずに水素還元した。混合粉末は、塩素イオン濃度の総和で0.18重量%となった以外は、実施例3と同様である。水素還元後の混合粉末の存在比率はα−Fe:Sm:SmFeO=64.7:21.0:14.3(重量%)となった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.32重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
<磁気特性>
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.37T、iHc=726kA/m、Hk=367kA/mであった。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、9.0%であった。
(比較例4)
実施例2の製造条件において、原料化合物としてFe、Smを使用し、初期粉末混合時に、湿式混合をせず、ジュリアミキサー(徳寿工作所製)による乾式混合に変えた。それ以外は、実施例2の条件を用い水素還元を行ったところ、水素還元前の混合粉末中の塩素濃度は、塩素イオン濃度の総和で0.25重量%であり、水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm:SmFeO=61.3:12.5:26.2(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.33重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
<磁気特性>
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.32T、iHc=693kA/m、Hk=310kA/mであった。
<粒子表面性状、凝集状態、粗大粒子>
また、図3(左)に示すように、比較例4では、粒子表面性状をSEMにて確認したところ、弱粉砕のため滑らかな表面状態であるが、凝集塊や粗大粒子がやや見受けられた。
<粒子断面観察>
図3(右)に示すように、SEMにて粒子断面を観察したところ、乾式混合の影響で、Fe粒子中へのSmの不均一拡散が確認されたほか、Fe粒子内部まで均一に窒化されていない粗大粒子も見つかった。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く、また窒化不足であるとコントラストがやや白く、さらにSmが主相SmFe17Nxより過剰であると白く映ることから、その状況が明確に判断できた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、14.1%であった。
「評価」
上記結果を示す表1、2より、実施例1では、原料鉄化合物として、硝酸塩から製造された酸化鉄Fe粉末を用い、また、実施例2、3では、原料鉄化合物として、塩化物から製造された酸化鉄Fe粉末を用いたが、原料化合物混合後、大気中で焙焼を行うことによって、混合粉末の塩素イオン濃度を低下させた後に水素還元を行っており、鉄希土類複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)生成量が0.1重量%以下に抑制された。その結果、還元拡散処理を行って得られたSm−Fe−N磁石合金粉末は、滑らかな表面状態が観察され、凝集塊や粗大粒子はほとんど見られず、磁気特性も、飽和磁化、保磁力、角形性いずれも高特性を有していることがわかる。
一方、比較例1〜4は、原料鉄化合物に塩化物出発の酸化鉄Fe粉末を用いた例であり、湿式混合した比較例1、3は、水素還元前に焙焼しておらず、比較例2は、水素還元前に焙焼を行っているが、焙焼温度が400℃と低かったことにより水素還元前の塩素濃度が低減できなかった。いずれも水素還元前の塩素濃度が高かったため、水素還元を行うことによりSmFeOが多く生成され、還元拡散処理を行って得られたSm−Fe−N磁石合金粉末では粗大な一次粒子が多く存在したり、窒化が粒子内部まで進行していない粒子の存在も確認されており、結果として、磁気特性全般の低下が確認されている。
これ等の結果は、上述したように、原料混合物中の塩素濃度が、塩素イオン濃度の総和にして0.1重量%を超えると、水素還元時に水素と結合した塩素が塩化水素となり、同時に発生する水蒸気に溶け込み塩酸ガスとなって原料化合物であるSmを溶解し、生成したSm化合物はその後、微細な結晶として再析出し、FeもしくはFeと反応して鉄希土類複合酸化物であるSmFeOの生成を促進し、この還元混合物粉末中に鉄希土類複合酸化物SmFeOが多く存在すると、次工程のアルカリ土類金属を用いた還元拡散処理時に、局部的に非常に大きな発熱を生じ局部的粒成長を引き起こしたため希土類−鉄合金の粗大粒子化が進んだと考えられる。
また、比較例4は、原料化合物を湿式混合ではなく、乾式混合を用いた場合であるが、乾式混合の欠点であるFeとSmの不均一混合が影響している他に、原料鉄化合物に塩化物出発のFeを使用していることから、水素還元前の原料混合物中の塩素濃度が高く、水素還元を行うことによりSmFeOが多く生成され、次工程で発熱により粗大粒子発生につながり、最も磁気特性が低い結果となったものと考えられる。
本発明の製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石は、そのまま加圧成形した圧密磁石とするか、バインダー樹脂と配合した安価なボンド磁石として、広く民生用途あるいは工業用部品などに利用される。

Claims (9)

  1. 還元拡散法により得られる希土類−鉄系母合金粉末を窒化する工程を含む希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
    磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下である処理液から磁石原料を濾別し、乾燥する第一の工程と、
    得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理し、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO(Rは希土類元素)の生成量が6重量%以下となるようにする第二の工程と、
    得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
    次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
    次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、
    を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  2. 請求項1の製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末が、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率が5%未満であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  3. 希土類−鉄−窒素系磁石粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする請求項1または2記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  4. Sm量が、磁石粉末全体に対して23.2〜23.6重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  5. 第一の工程における鉄化合物が、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、水酸化鉄から選ばれる1種以上であり、また、希土類化合物が、希土類酸化物、希土類水酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  6. 第一の工程の湿式混合処理において、予め前記鉄化合物粉末、希土類化合物粉末のいずれかを水に分散させる試験を行い、水溶液が酸性を示す場合、溶媒に有機溶媒を用いるようにし、一方、水溶液がアルカリ性を示す場合は、溶媒に水、あるいは、有機溶媒を用いるようにすることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  7. 第二の工程における熱処理の温度範囲が500〜800℃であること特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  8. 第三の工程におけるアルカリ土類金属量が、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
  9. 第五の工程における解砕は、ブドウ状の2次粒子を砕く粉砕強度とし、1次粒子塊は粉砕しない粉砕強度で行うことを特徴とする請求項1項記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。

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