JP2018031053A - 希土類−鉄−窒素系合金粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようにして得られた粉末状の希土類−鉄−窒素系磁石は、保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、窒化後に平均粒子径が数μmから5μm程度になるまで微粉砕処理される。
希土類−鉄−窒素系磁石粉末を高性能化するためには、鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を湿式混合処理する段階で、希土類化合物が微細な状態で分散した状態となることを抑制し、原料粉として、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となるような混合粉末を用いて、次工程の水素還元熱処理工程において、得られる還元混合物粉末中に希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)が生成することを抑制すれば、還元拡散工程において、局部的な発熱の増大を抑え、希土類−鉄系合金の粒成長による粗大粒子の発生が抑制され、粗大粒子が非常に少ない希土類−鉄系母合金が得られるようになり、当該希土類−鉄系母合金を窒化処理すれば、優れた磁気特性を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下である処理液から磁石原料を濾別し、乾燥する第一の工程と、
得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理し、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量が6重量%以下となるようにする第二の工程と、
得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率が5%未満であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法により提供される。
鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後乾燥して、当該混合粉末中に含有される塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下となる混合粉末を得る第一の工程と、
得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理して、得られる還元混合物粉末中に生成される希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量を6重量%以下とする第二の工程と、
得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、を備えている。
(1−a)第一の工程:原料粉末の混合
まず、磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、ろ過後に乾燥する。
Smが含まれる場合、高い保磁力を得るためにはSmを希土類元素全体の60重量%以上、好ましくは90重量%以上にすることが好ましい。化合物の形態としては酸化物、水酸化物が好ましく、粒子径については固相内拡散がしやすく、不均一な拡散が起こらないように鉄化合物の粒子径より小さいことが好ましい。ただし0.1μm未満の微粉末を使用する場合は、鉄希土類複合酸化物を多く生成させる要因となるので好ましくない。
第二の工程は、第一の工程で得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理して、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量を6重量%以下とする工程である。
これは、500℃を下回ると、還元が不十分となり酸化鉄が残りやすくなるほか、還元後の結晶が不安定なため、大気に触れるとすぐに酸化して再び酸化鉄に戻ってしまうためである。熱処理温度が800℃を超えると、還元はされるが高温のため出発原料の粒子が粒成長して粒子径が大きくなってしまい、次工程の希土類−鉄母合金を得る時点では保磁力を低下させるほどまで粒子径が大きくなるためである。熱処理温度範囲は550〜700℃がより好ましい。熱処理時間は特に限定されないが、例えば1〜5時間とすることができる。また、水素流量も特に限定されないが、例えば1〜100ml/(min・g)とすることができる。
次に、第三の工程では、第二の工程で得られた上記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することによりTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄系母合金を得る。アルカリ土類金属量は、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることが好ましい。
(2−a)第四の工程:窒化処理
第四の工程では、第三の工程で得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る。
次に、第四の工程で得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る。
上記製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、Th2Zn17型またはTh2Ni17型結晶構造を持つ希土類元素−鉄−窒素系磁石粉末である。上記希土類−鉄−窒素系磁石粉は、菱面体晶系、六方晶系、正方晶系または単斜晶系の結晶構造をもつ金属間化合物であり、Th2Zn17型の磁石合金粉としては、例えば、Sm2Fe17N3合金、Nd2Fe17N3などが挙げられ、また、Th2Ni17型の磁石合金粉としては、例えば、Gd2Fe17N3などが挙げられる。
希土類−鉄−窒素系磁石合金粉末の磁気特性は、日本ボンド磁石工業協会、ボンド磁石試験方法ガイドブック、BM−2002、BM−2005に準じて、1600kA/mの配向磁界をかけてステアリン酸中で希土類−鉄−窒素系磁石粉末を配向させた試料を作製し、4000kA/mの磁界で着磁して測定した。
磁石合金粉末の比重を7.67g/cm3とし、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。Hkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが残留磁化4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
解砕前の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の粒子表面形状、断面を走査型電子顕微鏡(SEM:カールツァイス社、ULTRA55)で観察した。
平均粒子径は、Sympatec社製レーザー回折型粒径分布測定装置:ヘロス・ロードスにて測定した。
粒子長軸粒子径は、SEM像から1次粒子の粒径を1000倍で撮影した写真を2倍に拡大して、最小目盛1mmの定規で長軸粒子径を測定し、測定粒子径と対応する粒子個数を数え、全体粒子個数と、粒径4μm以上の粒子個数から、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率を求めた。
第二の工程において、乾燥混合粉末を水素還元して得られた還元混合物粉末について、粉末X線回折装置を用いて、X線回折測定したデータをもとに生成化合物の同定を行い、それら化合物の存在比率についてリートベルト解析を使用し、半定量値を算出することで、各化合物の割合を求めた。
塩素イオン濃度は、陰イオンクロマトグラフィを用いて測定した。水中に酸化物粉末を分散させた後、遠心分離し、その上澄み液を使って、溶出塩素濃度を測定した。
[第一の工程]
磁石原料粉末として、硝酸塩から製造された平均粒子径が0.7μmの酸化鉄Fe2O3粉末(Fe純度99%)100.0gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウムSm2O3粉末(Sm2O3純度99.5%)31.8gを秤量した。次に、500ccのポリ容器中にて秤量した酸化鉄をイソプロピルアルコール130gに分散させスラリー化したところに、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32inchの金属ボールを追加して24時間ボールミル混合を行った。
その後、ポリ容器からスラリーを排出し、金属ボールと分離した後、定置式真空乾燥器にて40℃設定で20時間乾燥した。混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度の総和が0.01重量%未満であった。
乾燥した混合粉末100.0gを箱型雰囲気炉に装入して、水素を25ml/(min・g)流し、昇温速度5℃/minで600℃まで加熱して4時間保持した後、室温まで冷却し、徐々に内部を空気に置換して水素還元物を回収した。
このときの水素還元物の一部をXRDにて同定を行い、リートベルト解析でその存在比率を半定量値として算出した。この時の存在比率は、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=68.6:30.8:0.6(重量%)であった。
この水素還元物16gに、粒度4メッシュ(タイラーメッシュ)以下の金属カルシウム粒(Ca純度99%)3.6gを加え、コンデショニングミキサー(MX−201:シンキー製)で30秒間混合した。
これをステンレススチール反応容器に挿入し、容器内をロータリーポンプで真空引きしてArガス置換した後、Arガスを流しながら950℃まで昇温し、8時間保持後250℃まで炉内でArガスを流通しながら冷却した。
次に、Arガスをアンモニア分圧が0.33のアンモニア−水素混合ガスに切り替えて昇温し、450℃で200分保持し、その後、同温度で水素ガスに切り替えて30分保持し、さらに窒素ガスに切り替えて30分保持し冷却した。
取り出した多孔質塊状の反応生成物塊を直ちに純水中に投入したところ、崩壊してスラリーが得られた。このスラリーから、Ca(OH)2懸濁物をデカンテーションによって分離し、純水を注水後に1分間攪拌し、次いでデカンテーションを行う操作を5回繰り返し、合金粉末スラリーを得た。
得られた合金粉末スラリーを攪拌しながら希酢酸を滴下し、pH5.0に7分間保持した。合金粉末をろ過後、エタノールで数回、掛水洗浄し、35℃で真空乾燥することによって、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子からなるSm−Fe−N磁石合金粉末を得た。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.2重量%、N3.33重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
このSm−Fe−N磁石合金粉末をエタノール中で振動式ボールミルを用い、エタノール中でSUJ2ボール5/32インチ、振動数 30Hzで、30分間解砕し、常温真空乾燥した。
得られたSm−Fe−N磁石合金粉末の磁気特性を、上記測定方法に従い、反磁場補正をせずに最大磁界1200kA/mの振動試料型磁力計を用いて、飽和磁化:4πIm(T)、保磁力:iHc(kA/m)、角形性:Hk(kA/m)を測定した。
分析組成とTh2Zn17型結晶構造の格子定数から算出された粉末のX線密度は7.67g/cm3で、この値で飽和磁束密度4πImを換算した。iHcは保磁力である。またHkは、減磁曲線の角形性を表し、第二象限において、磁化4πIが4πIrの90%の値を取るときの減磁界の大きさである。
結果を表2に示すが、4πIm=1.42T、iHc=889kA/m、Hk=413kA/mであり、高特性が得られた。
また、図1(左)に示すように粒子表面性状をSEMにて確認したところ、滑らかな表面状態が観察され、凝集塊や粗大粒子はほとんど見られなかった。
図1(右)に示すようにSEMにて粒子断面を観察したところ、残留鉄もなく粒子内部まで均一に窒化されていた。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く、また窒化不足であるとコントラストがやや白く映るため明確に判断できる。
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、1.6%であった。
実施例1の条件において、鉄化合物として、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmのFe2O3を粉末で使用し、ボールミル混合・乾燥まで行った後、一度大気中で800℃焙焼を行った後に、水素による還元熱処理を行うように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして行ったところ、水素還元前の混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度の総和が、0.09重量%であり、水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=67.2:27.5:5.3(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結した、ブドウ状の2次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.35重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
実施例1と同様に解砕後、サンプリングして磁気特性を求めた。
結果を表2に示すが、4πIm=1.40T、iHc=865kA/m、Hk=409kA/mであり、高特性が得られた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、4.2%であった。
磁石原料粉末として、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmの酸化鉄Fe2O3粉末100.0gと、粒径が0.1〜10μmの粉末が全体の96%を占める酸化サマリウムSm2O3粉末31.8gを秤量し、次に500ccのポリ容器中にて秤量した酸化鉄を純水130gに分散させスラリー化した。このときpHは2.3を示すことから、ここに酸化カルシウム(関東化学)を粉末で添加しpHを8.1とした後、さらに酸化サマリウムを投入し、これにSUJ2製の直径5/32inchの金属ボールを追加して24時間ボールミル混合・乾燥を行った。
得られた混合粉末は、当初塩素イオン濃度で0.18重量%であったが、この混合粉末を実施例2の条件で焙焼(大気中で800℃焙焼)することにより、表1に示すように、塩素イオン濃度を0.07重量%に下げた後、さらに水素還元を行った。水素還元後の混合粉末の存在比率は、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=67.6:28.3:4.1(重量%)となった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.3重量%、N3.33重量%、O0.15重量%、残部Feだった。実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を測定した。結果を表2に示すが、4πIm=1.41T、iHc=880kA/m、Hk=410kA/mであり、高特性が得られた。
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、3.5%であった。
実施例2の製造条件において、塩化物出発の平均粒子径が0.9μmの酸化鉄Fe2O3粉末を使用するが、水素還元前の混合粉末を焙焼せずに水素還元を行う以外は実施例2と同様にして行った。水素還元前の混合粉末は、表1に示すように、塩素イオン濃度が総和で、0.21重量%と高く、SmFeO3の存在比率では、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=63.0:16.8:20.2(重量%)となり、生成したSmFeO3量が実施例に比較し多くなった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.3重量%、N3.31重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
実施例1と同様に解砕後、サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.35T、iHc=706kA/m、Hk=322kA/mであった。
<粒子表面性状、凝集状態、粗大粒子>
また、図2(左)に示すように、比較例1では、粒子表面性状をSEMにて確認したところ、弱粉砕のため滑らかな表面状態であるが、凝集塊や粗大粒子がやや見受けられた。
<粒子断面観察>
図2(右)に示すように、SEMにて粒子断面を観察したところ、残留鉄や粗大粒子も見つかった。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く映るため明確に判断できた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、12.5%であった。
実施例2の製造条件において、水素還元前の焙焼温度を400℃に下げて焙焼を行うことにより、水素還元前の混合粉末の塩素濃度を低下させ、塩素イオン濃度の総和で0.13重量%とした以外は、実施例2と同様にして行った。水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=66.8:26.3:6.9(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.5重量%、N3.34重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.38T、iHc=790kA/m、Hk=390kA/mであった。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、5.8%であった。
実施例3の製造条件において、ボールミル混合・乾燥し、水素還元前の混合粉末を焙焼せずに水素還元した。混合粉末は、塩素イオン濃度の総和で0.18重量%となった以外は、実施例3と同様である。水素還元後の混合粉末の存在比率はα−Fe:Sm2O3:SmFeO3=64.7:21.0:14.3(重量%)となった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.32重量%、O0.17重量%、残部Feだった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.37T、iHc=726kA/m、Hk=367kA/mであった。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、9.0%であった。
実施例2の製造条件において、原料化合物としてFe2O3、Sm2O3を使用し、初期粉末混合時に、湿式混合をせず、ジュリアミキサー(徳寿工作所製)による乾式混合に変えた。それ以外は、実施例2の条件を用い水素還元を行ったところ、水素還元前の混合粉末中の塩素濃度は、塩素イオン濃度の総和で0.25重量%であり、水素還元後の存在比率は、α−Fe:Sm2O3:SmFeO3=61.3:12.5:26.2(重量%)であった。
その後、実施例1と同条件で、還元拡散、窒化処理、湿式処理を行い、Sm−Fe−N磁石合金粗粉末を得た。得られた粉末は、1次粒子および1次粒子同士が焼結したブドウ状の2次粒子と、その他に粗大な一次粒子が観察された。
このSm−Fe−N磁石合金粉末組成は、Sm23.4重量%、N3.33重量%、O0.16重量%、残部Feだった。
実施例1と同様に解砕後サンプリングして磁気特性を求めた。結果を表2に示すが、4πIm=1.32T、iHc=693kA/m、Hk=310kA/mであった。
<粒子表面性状、凝集状態、粗大粒子>
また、図3(左)に示すように、比較例4では、粒子表面性状をSEMにて確認したところ、弱粉砕のため滑らかな表面状態であるが、凝集塊や粗大粒子がやや見受けられた。
<粒子断面観察>
図3(右)に示すように、SEMにて粒子断面を観察したところ、乾式混合の影響で、Fe粒子中へのSmの不均一拡散が確認されたほか、Fe粒子内部まで均一に窒化されていない粗大粒子も見つかった。ここで反射電子像において、残留鉄があるとコントラストが黒く、また窒化不足であるとコントラストがやや白く、さらにSmが主相Sm2Fe17Nxより過剰であると白く映ることから、その状況が明確に判断できた。
<長軸粒子径4μm以上の存在割合>
さらに、解砕した磁石粉末から長軸粒子径4μm以上の存在割合を累積個数百分率によって算出した結果、表1に示すように、14.1%であった。
上記結果を示す表1、2より、実施例1では、原料鉄化合物として、硝酸塩から製造された酸化鉄Fe2O3粉末を用い、また、実施例2、3では、原料鉄化合物として、塩化物から製造された酸化鉄Fe2O3粉末を用いたが、原料化合物混合後、大気中で焙焼を行うことによって、混合粉末の塩素イオン濃度を低下させた後に水素還元を行っており、鉄希土類複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)生成量が0.1重量%以下に抑制された。その結果、還元拡散処理を行って得られたSm−Fe−N磁石合金粉末は、滑らかな表面状態が観察され、凝集塊や粗大粒子はほとんど見られず、磁気特性も、飽和磁化、保磁力、角形性いずれも高特性を有していることがわかる。
Claims (9)
- 還元拡散法により得られる希土類−鉄系母合金粉末を窒化する工程を含む希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法であって、
磁石原料となる鉄化合物粉末と希土類化合物粉末を、水あるいは有機溶媒中で湿式混合処理し、塩素イオン濃度の総和が0.1重量%以下である処理液から磁石原料を濾別し、乾燥する第一の工程と、
得られた前記混合粉末を、水素気流中で熱処理し、得られる還元混合物粉末中の希土類鉄複合酸化物RFeO3(Rは希土類元素)の生成量が6重量%以下となるようにする第二の工程と、
得られた前記還元混合物粉末にアルカリ土類金属を添加し、混合して、不活性ガス雰囲気中で、900〜1180℃の温度で熱処理した後、得られた反応生成物を同雰囲気中で冷却することにより希土類−鉄系母合金を得る第三の工程と、
次に、得られた前記希土類−鉄系母合金を含む反応生成物に、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガスを供給し、前記混合ガス気流中で熱処理することにより窒化処理して生成した希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を得る第四の工程と、
次に得られた前記希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を含む窒化処理生成物塊を水中に投入して湿式処理して崩壊させ、得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末を解砕して希土類−鉄−窒素系磁石粉末を得る第五の工程と、
を有する希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。 - 請求項1の製造方法で得られた希土類−鉄−窒素系磁石粗粉末が、1次粒子が複数集まってブドウ状に焼結した2次粒子と、1次粒子とからなる混合粉末であり、長軸粒子径が4μm以上である1次粒子の累積個数百分率が5%未満であることを特徴とする希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 希土類−鉄−窒素系磁石粉末がSm−Fe−Nであることを特徴とする請求項1または2記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- Sm量が、磁石粉末全体に対して23.2〜23.6重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 第一の工程における鉄化合物が、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、水酸化鉄から選ばれる1種以上であり、また、希土類化合物が、希土類酸化物、希土類水酸化物から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 第一の工程の湿式混合処理において、予め前記鉄化合物粉末、希土類化合物粉末のいずれかを水に分散させる試験を行い、水溶液が酸性を示す場合、溶媒に有機溶媒を用いるようにし、一方、水溶液がアルカリ性を示す場合は、溶媒に水、あるいは、有機溶媒を用いるようにすることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 第二の工程における熱処理の温度範囲が500〜800℃であること特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 第三の工程におけるアルカリ土類金属量が、還元されていない酸素量を還元するだけの量を1当量としたとき、1.1〜3.0当量であることを特徴とする請求項1記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
- 第五の工程における解砕は、ブドウ状の2次粒子を砕く粉砕強度とし、1次粒子塊は粉砕しない粉砕強度で行うことを特徴とする請求項1項記載の希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。
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