JP4166478B2 - 希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法 - Google Patents

希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は磁性粉末に係り、特に保磁力、角形比に優れ、かつ耐熱性に優れた希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法及びそれにより得られる希土類鉄窒素系磁性粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
異方性の希土類鉄窒素系磁性粉末は優れた磁気特性を有し、NdFeB系の磁性粉末にかわる希土類ボンド磁石用の磁性粉末として注目されており、多くの技術報告が提案されている。希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法として、原料に希土類酸化物を含有する原料粉末を用い、これに還元剤として金属カルシウムを加えて還元拡散し、引き続き窒化する方法が一般に利用されている。
【0003】
この金属カルシウムを用いて還元拡散し、次に窒化する方法は、還元拡散によって生成した合金粉末を大気に曝すことなく、引き続き窒化することができ、これにより粒子表面の酸化が抑えられ、高純度の希土類鉄窒素系磁性粉末が得られるなどの特徴がある。
【0004】
しかし還元拡散の際、金属カルシウムは溶融しており、固液系で還元拡散反応が進行する。このため粒子が凝集しやすく、単分散の希土類鉄窒素系磁性粉末を得ることが難しかった。希土類鉄窒素系磁性粉末は、磁気特性が粒子形状や粉体特性によって左右される。凝集体を多く含有する場合、保磁力、残留磁化の低下を伴う。
【0005】
保磁力を改善するために、Ti,Mn等を微量添加し、磁壁の反転を抑制することを要件とした技術が多数報告されている。この方法では組成制御が困難であり、また製造コストが高くなるなどの問題があった。
【0006】
また磁気特性を改善するために、希土類鉄窒素系磁性粉末を粉砕する技術、酸などでエッチングする技術、被膜を設ける技術などが提案されている。従来の技術では保磁力のみを向上させることは可能である。しかし減磁曲線にて初期の磁化の減少度を改善することはできず、結果として保磁力、角形比を共に向上させることは難しかった。更に粉砕する方法では結晶へダメージを与えることとなり、耐熱性などの特性が低下する問題があった。またエッチングする方法や被膜を設ける方法では重量当たりの残留磁化の低下を伴う問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわち残留磁化が大きく、かつ特に保磁力、角形比に優れ、更に優れた耐熱性を有する希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法及びそれにより得られる希土類鉄窒素系磁性粉末を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記した問題を解決するために、希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法について鋭意研究した結果、原料混合物にカルシウム化合物を混合することによって、還元拡散及び窒化工程での粒子の凝集が抑えられ、凝集体などの粗大粒子を含有せず、かつ優れた保磁力、角形比、耐熱性を有する希土類鉄窒素系磁性粉末が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の目的は、下記(1)の構成によって達成することができる。
(1)希土類酸化物と酸化鉄と金属カルシウムとを含む原料混合物を還元拡散および窒化し窒化物ブロックを得た後、前記窒化物ブロックを水洗してカルシウムを主成分とする副生成物を除去する工程を具備する希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法において、前記原料混合物は、平均粒子径が5μm以下かつ前記原料混合物中の希土類元素と鉄元素の和100重量部に対して50〜200重量部である酸化カルシウムをさらに含有することを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
【0018】
前記(1)に記載した本発明の製造方法は以下の工程を具備してなる。
(原料混合物の調製)
希土類酸化物を含有する原料粉末を用いる。還元剤として金属カルシウムを添加して原料混合物とする。特に本発明では前記原料混合物にカルシウム化合物を添加し使用する。
【0019】
(還元拡散)
前記原料混合物を不活性ガス雰囲気中にて焼成して還元拡散し、原料混合物中の希土類酸化物などを還元する。
【0020】
(窒化)
引き続き炉内を真空引きした後に窒素ガスを含有した雰囲気中にて焼成することで窒化処理を行い、窒化物ブロックとする。
【0021】
(水洗)
前記窒化物ブロックを水洗し、カルシウムを主成分とする副生成物を除去する。
【0022】
本発明では前記原料混合物に酸化カルシウムを添加し使用することによって、保磁力、角形比に優れ、更に粒度が揃い、耐熱性に優れた希土類鉄窒素系磁性粉末を製造できる。
【0023】
特に本発明では前記(1)に記載したように、平均粒子径を規格化した酸化カルシウムを使用することが好ましく、これにより更に優れた保磁力、角形比を有し、また粒子がほぼ
球状で、粒度の揃った希土類鉄窒素系磁性粉末を製造できる。
【0027】
酸化カルシウムの平均粒子径はフィッシャーサブシーブサイザーを用いた空気透過法により測定する。配向磁場で磁化容易軸を揃え、着磁後、VSM(振動試料型磁力計)を用いて希土類鉄窒素系磁性粉末のヒステリシス曲線を測定し、保磁力、角形比、残留磁化を算出する。角形比は、ヒステリシス曲線の第2象限(減磁曲線)にて磁化が残留磁化の9/10となるときの外部磁界の強さと保磁力との比として算出する。また、希土類鉄窒素系磁性粉末の平均粒子径はフィッシャーサブシーブサイザーを用いた空気透過法により測定する。
【0028】
まず希土類鉄窒素系磁性粉末の保磁力を測定する。次に所定量の希土類鉄窒素系磁性粉末を容器に入れ、大気中にて300℃で4時間加熱し、そして室温にて放冷後、保磁力を測定する。下記の式(I)より加熱前後の保磁力の比(%)を算出し、耐熱性αとする。
【0029】
【数1】
Figure 0004166478
【0030】
【発明の実施の形態】
次に本発明について詳細に説明する。本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末は、一般式RFe100−x−y(Rは一種以上の希土類金属を示す)で表される。希土類金属としてはSmを必ず含有することが好ましく、Smを含有することで磁気異方性、飽和磁化が大きくなり、永久磁石材料として優れた磁気特性が得られる。また鉄の一部を他の遷移金属で置換した組成としても構わない。
【0031】
希土類金属の含有量xは3〜30原子%が好ましい。3原子%未満ではα−Fe相が生成し、特に保磁力が低下する。30原子%よりも多い場合、希土類金属が析出し、残留磁化が低下してしまう。またNの含有量yは5〜15原子%が好ましい。5原子%未満ではほとんど保磁力が発現せず、また15原子%よりも多いと希土類金属、鉄自体の窒化物からなる不純相が生成し、磁気特性が顕著に低下してしまう。希土類鉄窒素系磁性粉末のうち、Sm9.1Fe77.313.6で表されるSm−Fe−N系磁性粉末が最も好ましく、優れた磁気特性が得られる。
【0032】
(原料混合物の調製)
希土類鉄窒素系磁性粉末を構成する各元素が上記した所定の組成比となるように原料混合物を調製する。原料には、鉄粉末及び/又は酸化鉄粉末と、希土類酸化物粉末との原料粉末を用いる。また鉄、希土類金属などの構成元素を酸に溶解し、沈殿反応により水酸化物などの不溶性の塩からなる沈殿物とし、この沈殿物を焼成し、原料粉末としてもよい。次に原料粉末を水素ガスなどの還元性ガス雰囲気中にて焼成し、原料粉末中の希土類酸化物以外を還元する。原料に鉄粉末を用いた場合は、この工程を省略してもよい。以上の方法によって希土類酸化物を含む原料粉末が得られる。
【0033】
ここで本発明では希土類酸化物を含む原料粉末は、平均粒子径が3μm以下が好ましく、更に2μm以下が好ましい。このとき平均粒子径が3μm以下の希土類鉄窒素系磁性粉末が製造でき、優れた磁気特性が実現できる。希土類鉄窒素系磁性粉末は、保磁力の発現機構がニュークリエーションであり、粒子径を3μm以下の単磁区粒子径とすることによって、優れた磁気特性とすることができる。
【0034】
本発明では、原料混合物はカルシウム化合物を含有する。カルシウム化合物を添加する作業は特に限定されない。カルシウム化合物を添加する段階は、前述した原料粉末を還元性ガス雰囲気中にて焼成し希土類酸化物以外を還元する工程の前後どちらでも構わない。沈殿物を焼成し原料粉末とする場合は、不溶性の塩からなる沈殿物の状態にカルシウム化合物を添加してもよく、また沈殿物を焼成した後にカルシウム化合物を添加しても構わない。特に本発明では前述した原料粉末を水素ガスなどの還元性ガス雰囲気中にて焼成する工程の前に、原料粉末にカルシウム化合物を添加することが好ましい。これにより還元性ガス雰囲気中にて焼成する際、カルシウム化合物中の水分を蒸発、除去でき、水分による還元拡散、窒化反応の阻害を無くすることができ、優れた磁気特性を実現できる。
【0035】
カルシウム化合物を添加する方法としては、水素ガスなどの還元性ガス雰囲気中にて焼成する工程の前に添加する場合、一般的な湿式又は乾式の混合法が適用できる。水素ガスなどの還元性ガス雰囲気中にて焼成する工程の後に添加する場合、水分による酸化を抑えるために乾式の混合法で行う。混合方法は特に限定されず、例えばダブルコーン,ボールミル,振動ミル,アトライタ,ジェットミル等が使用できる。
【0036】
次に希土類酸化物を含む原料粉末、カルシウム化合物、還元剤として金属カルシウムとを混合し、原料混合物とする。
【0037】
本発明は原料混合物にカルシウム化合物を添加することによって、球状で、粒度が揃い、凝集がなくほぼ単分散の希土類鉄窒素系磁性粉末が製造できる。図1に示したように粒度分布の標準偏差σが0.4以下であり、かつ実施例に示したように平均粒子径は1〜10μmであり、粒度が揃い、凝集による粗大粒子を含有しない磁性粉末が製造できることが分かる。また走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、ほぼ球状の磁性粉末であることが分かった。
【0038】
カルシウム化合物は、(還元拡散)及び(窒化)の工程では原料混合物中の鉄、希土類金属などの構成元素を含有する化合物とほとんど反応しない。このため(還元拡散)及び(窒化)の工程にて、原料混合物に添加したカルシウム化合物は、原料混合物の粒子界面に点在し、焼結による原料混合物粒子の凝集を抑えることができる。
【0039】
本発明では還元拡散後に引き続き窒化処理を行うため、還元拡散後に粉砕、ふるい等によって粒度調整することができない。このため(還元拡散)及び(窒化)の双方の工程で粒子の凝集を抑えることで粒度の揃った磁性粉末が製造できる。
【0040】
特に本発明では前記カルシウム化合物は、平均粒子径を規格化することが好ましい。平均粒子径は5μm以下が好ましく、2μm以下が更に好ましい。前記した平均粒子径が5μm以下の細かい粒子のカルシウム化合物を使用することによって、原料混合物の粒子表面に均一に、かつ全面に分布でき、焼結による凝集を抑える効果が顕著に現れる。このため図1に示したようにカルシウム化合物の平均粒子径が5μm以下のとき、標準偏差が特に小さく、粗大粒子を含まず粒度が揃い、ほぼ球状の希土類鉄窒素系磁性粉末を製造できる。
【0041】
還元拡散後、還元剤として使用した金属カルシウムの大部分は、酸化カルシウムとなる。しかし金属カルシウムは粒径数mmの粒状で使用するため、還元拡散後、金属カルシウムから生成した酸化カルシウムは、粒状に凝集した状態であり、(窒化)工程での焼結による凝集を抑えることはできない。これに対して本発明にて平均粒子径が5μm以下の細かい粒子のカルシウム化合物を使用することによって、原料混合物の粒子表面全面に分布でき、(還元拡散)工程だけでなく特に(窒化)の工程にて焼結による凝集を抑えることができると考えられる。
【0042】
前述したように希土類鉄窒素系磁性粉末は、保磁力の発現機構がニュークリエーションであり、粒子の表面性状、粒子径が磁気特性を左右する。本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末は、球状で、粒度が揃い、ほぼ単分散の状態で得られるため、図2〜4に示したように優れた保磁力、角形比、残留磁化が実現できる。
【0043】
更にカルシウム化合物を添加することによって、図5に示したように希土類鉄窒素系磁性粉末の耐熱性も向上する。理由は定かではないが、カルシウム化合物が原料混合物の粒子表面に均一に分散することによって、(窒化)の工程での窒化反応が均一に行われ、結晶性に優れた窒化物となるために耐熱性が向上すると考えられる。
【0044】
原料混合物中の希土類金属元素と鉄元素の和100重量部に対して、カルシウム化合物は5〜200重量部添加することが好ましく、更に50〜200重量部添加することが好ましい。このとき図6に示したように優れた保磁力を有する希土類鉄窒素系磁性粉末が製造できる。
【0045】
前記カルシウム化合物はカルシウムを含有する化合物であれば、特に限定されず使用できる。特に(還元拡散)及び(窒化)の工程にて還元拡散反応や窒化反応を阻害せず、また(水洗)の工程にて分離除去できる化合物が好ましい。このため本発明では融点が1200℃以上であるカルシウム化合物及び/又は900℃以上で50重量%以上が酸化カルシウムとなるカルシウム化合物であることが好ましい。
【0046】
(還元拡散)及び(窒化)の工程は1200℃以下で焼成する。融点が1200℃以上であるカルシウム化合物は(還元拡散)及び(窒化)の工程にて安定に原料混合物の粒子界面に点在するため、還元拡散反応や窒化反応を阻害しない。また融解し固溶しないため(水洗)の工程にて分離除去でき、本発明にて好ましく使用できる。
【0047】
(還元拡散)工程は不活性ガス雰囲気中にて860〜1200℃で行われる。900℃以上で50重量%以上が酸化カルシウムとなるカルシウム化合物は、還元拡散にて安定な酸化カルシウムとなり、原料混合物の粒子界面に点在する。酸化カルシウムは融点が1200℃以上あり、前述したように還元拡散反応や窒化反応を阻害せず、また融解し固溶しないため(水洗)の工程にて分離除去できる。このため900℃以上で50重量%以上が酸化カルシウムとなるカルシウム化合物についても本発明にて好ましく使用できる。
【0048】
本発明では融点が1200℃以上であるカルシウム化合物、又は900℃以上で50重量%以上が酸化カルシウムとなるカルシウム化合物として、例えば酸化カルシウム,窒化カルシウム,硫酸カルシウム,リン酸カルシウム,フッ化カルシウム,酢酸カルシウム,炭酸カルシウム,炭化カルシウム,水酸化カルシウム等が使用できる。
【0049】
また本発明では原料混合物に添加するカルシウム化合物として、(水洗)工程で得られたカルシウムを主成分とする副生成物を使用できる。副生成物は主に水酸化カルシウムからなる。特にこの水洗工程にて得られる副生成物は、平均粒子径が5μm以下で得られ、本発明に好ましく使用できる。副生成物は懸濁液、スラリー状、又は乾燥粉末の状態で使用できる。懸濁液又はスラリー状で使用する場合、含水分量30%以下とすることが好ましい。また乾燥粉末として使用する場合、含水量3%以下とすることが好ましい。
【0050】
更に原料混合物に添加するカルシウム化合物は、(水洗)工程にて分離除去できれば、不純物を含有していても使用できるが、特に本発明では不純物の含有量が10重量%以下であることが好ましい。これにより不純物が希土類鉄窒素系磁性粉末の結晶中に混晶したり、(水洗)工程にて分離されず残留することを防ぐことができ、優れた磁気特性が実現できる。
【0051】
(還元拡散)
前述した原料混合物をまず不活性ガス雰囲気中にて焼成し、還元拡散する。これにより原料混合物中の希土類酸化物と酸化鉄を還元する。焼成温度は860〜1200℃が好ましく、このとき原料混合物全体を還元拡散できる。
【0052】
(窒化)
前記した還元拡散によって還元した後、引き続き炉内を真空引きし、次に窒素ガス、又は窒素ガスにアンモニアや水素ガスを混合した混合ガスを炉内に導入し、この窒素ガスを含有する雰囲気中で焼成することで窒化処理を行う。特に本発明では還元拡散後の原料混合物を大気と接触させずに窒化処理する。これにより酸化物などの不純相の形成を最小限に抑えることができ、高純度の窒化物が製造できる。窒化処理は300〜500℃で行うことが好ましく、これにより未反応物の残留や不純物相の形成がなく、原料混合物全体を窒化できる。
【0053】
(水洗)
(窒化)工程の後、窒化物ブロックが得られる。この窒化物ブロックを水へ浸漬し、崩壊させる。窒化物ブロック中には還元拡散によって生成した酸化カルシウムや、窒化カルシウム、あるいは未反応の金属カルシウムなどが含まれる。水へ浸漬することで、これら余剰のカルシウム分は水酸化物となる。その後、デカンテーションを数回行うことで、この水酸化カルシウムなどのカルシウムを主成分とする副生成物を分離、除去する。そして真空乾燥することで、希土類鉄窒素系磁性粉末が得られる。
【0054】
前述したように本発明では、(水洗)工程で得られるカルシウムを主成分とする副生成物をカルシウム化合物として原料混合物に添加し使用できる。前記(水洗)工程でのデカンテーションの際、上澄み水溶液を自然沈降するか、又は遠心分離器、フィルタープレスなどを用いることによって、副生成物を得ることができる。副生成物を乾燥物として使用する場合は、乾燥機にて所定の温度で乾燥させる。
【0055】
本発明の製造法によって得られる希土類鉄窒素系磁性粉末は、球状で、粒度が揃い、凝集体などの粗大粒子を含有せずほぼ単分散の状態で得られる。このため粉砕の必要がなく、実施例に示したように保磁力が15kOe以上、かつ角形比が0.4以上の優れた磁気特性が実現でき、更に耐熱性にも優れることが分かる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は具体的実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(原料混合物の調製)
Fe粉末(平均粒子径0.8μm)とSm粉末(平均粒子径1.2μm)とをモル比がSm:Fe=2.3:17となるように混合した。所定の平均粒子径のCaO粉末を所定量加え、ボールミルにより混合した。なおCaO粉末には、平均粒子径50μmのCaO粉末を粉砕して分級し、種々の平均粒子径としたものを使用した。またCaO粉末中の不純物は3%であった。
【0057】
得られた原料粉末を炉内に水素ガスを通気しながら600℃で20時間焼成し、Feの一部を還元した。この還元後の原料粉末中のCaO粉末以外の酸化物の酸素量の2倍当量に相当する粒状金属カルシウムを加え、混合し、軟鋼製のるつぼに充填した。
【0058】
(還元拡散)及び(窒化)
Arガス雰囲気中にて1100℃で1時間焼成し、次に炉内を100℃まで徐冷後に真空引きし、炉内に窒素ガスを導入し、窒素雰囲気中にて450℃で10時間焼成した。
【0059】
(水洗)
得られた窒化物ブロックを純水に投入し、30分撹拌し静止後、上澄みを排水した。以上のデカンテーションを8回繰り返した。次に濃度3%の酢酸水溶液を投入し、10分撹拌し静止後、上澄みを排水した。スラリーを固液分離し、80℃で真空乾燥して、Sm−Fe−N系磁性粉末を得た。なお1回目のデカンテーションにて得られた上澄みはフィルタープレスに送り、カルシウムを主成分とする副生成物を分離し、回収した。
【0060】
参考例1〕CaO粉末の代わりにCaCO粉末,CaSO粉末,Ca(OH)粉末のうちいずれかを使用する以外は実施例1と同様にしてSm−Fe−N系磁性粉末を得た。またCaCO粉末,CaSO粉末,Ca(OH)粉末中の不純物は3.3%であった。
【0061】
参考例2〕実施例1にて(水洗)工程で得られたカルシウムを主成分とする副生成物を乾燥して粉末とし、CaO粉末の代わりに使用する以外は実施例1と同様にしてSm−Fe−N系磁性粉末を得た。なおカルシウムを主成分とする副生成物中の不純物は0.5%であった。
【0062】
〔比較例1〕
CaO粉末を使用しない以外は実施例1と同様にしてSm−Fe−N系磁性粉末を得た。
【0063】
以下の方法にて平均粒子径、粒度分布、磁気特性の測定を行った。
(平均粒子径と粒度分布の測定)
平均粒子径はフィッシャーサブシーブサイザーを用いた空気透過法により測定した。この空気透過法により粉体の比表面積を求め、この比表面積から一次粒子の粒子径の平均値を算出し、平均粒子径とした。Sm−Fe−N系磁性粉末の個数基準の粒度分布は乾式分散方式のレーザー回折散乱法により測定した。粒子径の対数でプロットした頻度分布にて、標準偏差σを算出した。
【0064】
(粒子形状の評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)によって、得られたSm−Fe−N系磁性粉末の粒子形状の観察を行った。本発明のSm−Fe−N系磁性粉末は、全てほぼ球状で、大きさの揃った粒子であることが分かった。
【0065】
(磁気特性の測定)
Sm−Fe−N系磁性粉末をパラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーでパラフィンワックスを溶融させてから20kOeの配向磁場でその磁化容易軸を揃えた。この磁場配向した試料を40kOeの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場20kOeのVSM(振動試料型磁力計)を用いて保磁力、角形比、残留磁化の磁気特性を測定した。
【0066】
(耐熱性の測定)
まず(磁気特性の測定)と同様にしてSm−Fe−N系磁性粉末の保磁力を測定した。次に所定量のSm−Fe−N系磁性粉末を容器に入れ、大気中にて300℃で4時間加熱した。室温にて放冷後、前記した(磁気特性の測定)と同様にして、Sm−Fe−N系磁性粉末の保磁力を測定した。加熱前後の保磁力の比(%)を算出し、耐熱性αとした。この耐熱性αが大きいほど耐熱性に優れることを意味する。
【0067】
得られた本発明のSm−Fe−N系磁性粉末は全て平均粒子径が1〜10μmであり、凝集体などの粗大粒子は含有していなかった。粉体特性、磁気特性、耐熱温度を図1〜6に示した。
【0068】
【発明の効果】
このように本発明は、平均粒子径を規格化したカルシウム化合物を原料混合物に添加し使用することによって、ほぼ球状で粗大粒子を含有せず粒度が揃い、保磁力、角形比、耐熱性に優れた希土類鉄窒素系磁性粉末を容易に製造できる。特にカルシウム化合物として水洗時に得られるカルシウムを主成分とする副生成物を使用することができ、これにより従来廃棄していた副生成物をリサイクルでき、環境負荷を低減できる。本発明の希土類鉄窒素系磁性粉末は、種々の分野への応用が可能であり、例えばボンド磁石に利用した場合、成形時の加熱による磁気特性の劣化が少なく、かつ保磁力、角形比に優れるため高いエネルギー磁束密度のボンド磁石とすることができる。また保磁力、角形比に優れるため薄型形状のようにパーミアンス係数が小さい形状であっても減磁を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】希土類鉄窒素系磁性粉末の粒度分布の標準偏差σと添加したカルシウム化合物の平均粒子径との関係を示す特性図。
【図2】希土類鉄窒素系磁性粉末の保磁力と添加したカルシウム化合物の平均粒子径との関係を示す特性図。
【図3】希土類鉄窒素系磁性粉末の角形比と添加したカルシウム化合物の平均粒子径との関係を示す特性図。
【図4】希土類鉄窒素系磁性粉末の残留磁化と添加したカルシウム化合物の平均粒子径との関係を示す特性図。
【図5】希土類鉄窒素系磁性粉末の耐熱性αと添加したカルシウム化合物の平均粒子径との関係を示す特性図。
【図6】希土類鉄窒素系磁性粉末の保磁力とカルシウム化合物の添加量との関係を示す特性図。

Claims (1)

  1. 希土類酸化物と酸化鉄と金属カルシウムとを含む原料混合物を還元拡散および窒化し窒化物ブロックを得た後、前記窒化物ブロックを水洗してカルシウムを主成分とする副生成物を除去する工程を具備する希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法において、
    前記原料混合物は、平均粒子径が5μm以下かつ前記原料混合物中の希土類元素と鉄元素の和100重量部に対して50〜200重量部である酸化カルシウムをさらに含有することを特徴とする希土類鉄窒素系磁性粉末の製造方法。
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