本発明のデジタル受信装置は、時間方向について互いに離隔するように配列されていると共に周波数方向について互いに離隔するように配列されている複数のスキャッタードパイロット信号を含む信号列を受信する受信手段と、周波数方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第1の等化処理と、周波数方向及び時間方向の両方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第2の等化処理とを、選択的に信号列に施す等化手段と、前記第1及び第2の等化処理を前記等化手段が信号列に施した際の等化性能をそれぞれ測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較する比較手段と、前記比較手段が前記第1及び第2の等化処理の等化性能を比較した結果に基づいて、前記等化手段に施させる等化処理を前記第1及び第2の等化処理から選択する処理選択手段とを備えている。
また、本発明のデジタル受信装置の制御方法は、時間方向について互いに離隔するように配列されていると共に周波数方向について互いに離隔するように配列されている複数のスキャッタードパイロット信号を含む信号列を受信する受信手段を備えているデジタル受信装置の等化処理を制御する方法であって、周波数方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第1の等化処理と、周波数方向及び時間方向の両方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第2の等化処理とを、選択的に信号列に施す等化ステップと、前記第1及び第2の等化処理を前記等化手段が信号列に施した際の等化性能をそれぞれ測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定された前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較する比較ステップと、前記比較ステップで前記第1及び第2の等化処理の等化性能が比較された結果に基づいて、前記等化ステップで施される等化処理を前記第1及び第2の等化処理から選択する処理選択ステップとを備えている。
また、本発明のデジタル受信装置用プログラムは、時間方向について互いに離隔するように配列されていると共に周波数方向について互いに離隔するように配列されている複数のスキャッタードパイロット信号を含む信号列を受信する受信手段を備えているデジタル受信装置用のプログラムであって、周波数方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第1の等化処理と、周波数方向及び時間方向の両方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間しつつ当該補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記信号列を等化する第2の等化処理とを、選択的に信号列に施す等化ステップと、前記第1及び第2の等化処理を前記等化手段が信号列に施した際の等化性能をそれぞれ測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定された前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較する比較ステップと、前記比較ステップで前記第1及び第2の等化処理の等化性能が比較された結果に基づいて、前記等化ステップで施される等化処理を前記第1及び第2の等化処理から選択する処理選択ステップとをデジタル受信装置に実行させるものである。
時間方向に関する補間及び周波数方向に関する補間の両方を伴う等化処理と周波数方向に関する補間のみを伴う等化処理とのどちらの等化性能が良いかは、信号列の受信状況に応じて様々に変化する。本発明のデジタル受信装置、その制御方法及びデジタル受信装置用プログラムによると、2種類の等化処理について実際に測定された等化性能に基づいて時間方向についての補間を伴う等化処理を選択するか否かが判定される。したがって、受信状況が様々に変化する場合に適応した等化処理が信号列に施されることとなる。
また、本発明においては、前記等化手段が、周波数方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間する周波数方向補間手段と、時間方向について前記スキャッタードパイロット信号を補間する時間方向補間手段とを有しており、前記周波数方向補間手段が補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記第1の等化処理を前記信号列に施し、前記周波数方向補間手段及び時間方向補間手段の両方が補間した前記スキャッタードパイロット信号に基づいて前記第2の等化処理を前記信号列に施すことが好ましい。この構成によると、2つの補間手段の組み合わせを選択することにより、周波数方向に関する補間のみを伴う等化処理と、時間方向及び周波数方向の両方に関する補間を伴う等化処理とを簡易な構成で切り替えることができる。
また、本発明においては、前記測定手段が測定した前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較することを前記比較手段が過去に複数回行った結果に基づいて、前記第1及び第2の等化処理のいずれが現在の受信状況により適切なものであるかを評価する評価手段をさらに備えており、前記処理選択手段が、前記第1及び第2の等化処理のうち、前記評価手段が適切と評価したものを選択することが好ましい。この構成によると、いずれの等化処理の等化性能が良いかが、過去の複数回の測定とその測定結果の比較とによって評価される。このため、単独の測定によって評価が行われる場合と比べてより正確にいずれの等化性能が良いかが評価され得るので、より適切な等化処理が信号列に施される。
また、本発明においては、前記評価手段が、前記第1の等化処理が前記第2の等化処理よりもどのくらい現在の受信状況に適切であるかの度合いを示すステート情報を記憶するステート記憶手段と、前記比較手段が前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較した結果が、前記第1の等化処理の等化性能が前記第2の等化処理の等化性能より高いことを示している場合に、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報を、より度合いの高いものに更新し、前記比較手段が前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較した結果が、前記第1の等化処理の等化性能が前記第2の等化処理の等化性能より高くないことを示している場合に、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報を、より度合いの低いものに更新するステート更新手段とを有しており、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報が所定の度合いを超える場合に、前記第1の等化処理が前記第2の等化処理より現在の受信状況に適切であると評価することが好ましい。この構成によると、等化性能の比較に基づいてステート情報が更新され、ステート情報の現在の状態に基づいて等化処理の選択が行われる。したがって、複数回の測定の結果を簡易に評価することが可能となる。
また、本発明においては、前記ステート情報が、第1〜第n(n:2以上の自然数)のステートのいずれかを示し、前記ステート更新手段が、前記比較手段が前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較した結果が、前記第1の等化処理の等化性能が前記第2の等化処理の等化性能より高いことを示している場合に、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報を、前記第1のステートにより近いステートに更新し、前記比較手段が前記第1及び第2の等化処理の等化性能を互いに比較した結果が、前記第1の等化処理の等化性能が前記第2の等化処理の等化性能より高くないことを示している場合に、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報を、前記第nのステートにより近いステートに更新し、前記評価手段が、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報が前記第1〜第m(m:n未満の自然数)のいずれかのステートを示している場合に、前記第1の等化処理が前記第2の等化処理より現在の受信状況に適切なものであると評価することが好ましい。この構成によると、等化性能の比較が行われるたびにステート情報が更新され、ステート情報の現在の状態に基づいて等化処理の選択が行われる。したがって、複数回の測定の結果を簡易に評価することが可能となる。また、ステートの数(n)を調整することにより、使用環境に応じた等化処理の制御がなされるように、デジタル受信装置が構成され得る。
また、本発明においては、前記第1の等化処理を前記等化手段が前記受信手段からの信号列に施す第1の検査モードと前記第2の等化処理を前記等化手段が前記受信手段からの信号列に施す第2の検査モードとを、前記処理選択手段が選択した等化処理を前記等化手段が前記受信手段からの信号列に施す非検査モードを挟んで、交互に切り替える検査制御手段をさらに備えており、前記比較手段が、前記第1の検査モードにおいて前記測定手段が測定した等化性能と当該第1の検査モードと前記被検査モードを挟んで隣り合う前記第2の検査モードにおいて前記測定手段が測定した等化性能とを比較することが好ましい。この構成によると、2種類の等化処理に対応する第1及び第2の検査モードが交互に切り替えられるので、2種類の等化処理を同時に施すような構成と比べて、例えば回路構成が簡易になるなど、簡易な構成でデジタル受信装置が実現される。
また、本発明においては、前記検査制御手段が、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報が示すステートが前記第1〜第mのステートのいずれかである場合には、前記第mのステートに近いほど短い期間に亘って前記非検査モードを前記等化手段に取らせ、前記ステート記憶手段が記憶している前記ステート情報が示すステートが前記第(m+1)〜第nのステートのいずれかである場合には、前記第(m+1)のステートに近いほど短い期間に亘って前記非検査モードを前記等化手段に取らせることが好ましい。この構成によると、2種類の等化処理を切り替える境界のステートに近いほど検査モードにおける等化性能の測定が頻繁になされることとなる。したがって、一方の等化処理が適した受信状況から他方の等化処理が適した受信状況への過渡期間において、受信状況の変化に即応した制御がなされ得ると共に、一方の等化処理に適した状態が安定して継続するような期間においては検査モードの切り替えの回数が少ないので、安定した制御がなされ得る。
また、本発明においては、前記受信手段からの信号列に復調処理を施す復調器をさらに備えており、前記測定手段が、等化性能を示す測定値として、前記受信手段からの信号列に復調処理が施される際に当該信号列のCN(Carrier to Noise)比を測定することが好ましい。この構成によると、実際に測定されたCN比に基づいて、客観的に等化性能が評価され得る。
また、本発明においては、前記検査制御手段が、前記検査モードを1シンボル内に収まるように前記等化手段に取らせることが好ましい。検査モードの切り替えによって等化処理が切り替えられるため、安定した等化処理が確保されなくなるおそれが生じる。このような場合にさらに検査モードの期間が長いと、デジタル受信装置による復調処理が正確になされなくなるおそれも生じる。一方で、上記の構成によると、検査モードの期間が1シンボル内に収まっているため、検査モードの切り替えによって復調処理に及ぼす影響が最小限に抑えられる。
また、本発明においては、前記受信手段に前記信号列を継続的に受信させるモードと、前記受信手段に前記信号列を間欠的に受信させるモードとを選択的に切り替える主制御手段と、前記受信手段が前記信号列を間欠的に受信しているモードにおいて、前記受信手段からの信号列に復調処理が施される際に、当該信号列のビット誤り率を測定する誤り率測定手段と、前記受信手段が前記信号列を継続的に受信するモードが開始する際に前記ステート記憶手段が記憶する前記ステートの初期値を、前記誤り率測定手段が測定した前記信号列のビット誤り率に基づいて決定する初期値決定手段とをさらに備えていることが好ましい。この構成によると、ビット誤り率に基づいて受信状況に応じた適切なステートの初期値が決定される。したがって、受信を開始してから受信状況に適したステートに移行するまでの時間が短縮される。
また、本発明においては、前記等化手段が、前記誤り率測定手段が測定した前記信号列のビット誤り率が閾値を下回っている場合に、前記周波数方向補間手段及び時間方向補間手段のいずれにも前記スキャッタードパイロット信号を補間させることなく前記信号列に等化処理を施すことが好ましい場合がある。信号列の送信局に近接している場合など、特に伝送路状況が良好でありかつガウス雑音のみとみなせる場合には、周波数方向や時間方向に補間すると却って受信の性能が低下する。上記の構成によると、このように特に受信状況が良好な場合にはいずれの補間も行われないので、受信状況に応じた適切な復調処理が信号列に施される。また、スキャッタードパイロット信号の補間を行なわないことにより、消費電力が低減され得る。
また、本発明は、文字、画像、プログラムなどのデータ、及び音声の少なくとも1つの再現処理を行う携帯電話やデジタルテレビジョン等の様々なデジタル受信装置に採用され得る。このようなデジタル受信装置は、等化処理が施された信号列から文字、画像、プログラムなどのデータ、音声等に係る情報を取得し、これらの文字等の再現処理を行う。この構成によると、適切に等化処理が施された信号列から文字等の再現処理がなされるため、再現処理の精度が向上する。
なお、上記の本発明のデジタル受信装置用プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)ディスク、フレキシブルディスク(FD)、MO(Magneto Optical)ディスクなどのリムーバブル型記録媒体や、ハードディスクなどの固定型記録媒体のようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネットなどの通信ネットワークを介して配布可能である。また、このプログラムは、デジタル受信装置専用のものでなくてもよく、復調処理などに係るプログラムと組み合わせて使用されることにより汎用型のプロセッサなどを有する汎用の装置をデジタル受信装置として機能させるプログラムであってもよい。
以下は、本発明の好適な実施形態の一例である携帯通話装置についての説明である。図1は、本実施形態に係る携帯通話装置1000及び携帯通話装置1000に設けられたデジタル復調装置1の全体の概略構成を示している。
本実施形態の携帯通話装置1000(デジタル受信装置)はデジタル復調装置1を有している。携帯通話装置1000がアンテナから受信した信号Srはデジタル復調装置1によって復調される。そして、デジタル復調装置1から出力された復調信号から文字や画像や音声やプログラムなどのデータに係る情報が取り出され、これらの文字や画像や音声やプログラムなどのデータが再現される。これらの文字、画像等は、携帯通話装置1000に設けられた図示されていないディスプレイやスピーカなどを通じて携帯通話装置1000の使用者に提供される。なお、デジタル復調装置1は、携帯通話装置の他、デジタルTV(Television)、無線LAN(Local Area Network)装置、無線LANを搭載したPC(Personal Computer)等に採用されてもよい。
デジタル復調装置1はチューナ900、復調器100及び制御部200を有している。チューナ900は復調器100と電気的に接続されている。また、チューナ900は、アンテナと電気的に接続されており、アンテナからの信号Srに選局処理を施す。つまり、アンテナからの信号Srに含まれる複数のチャンネルから1つのチャンネルを選択的に受信する。そして、選択的に受信したチャンネルに係る信号をIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号に変換し、復調器100へと送信する。復調器100はチューナ900から送信されるIF信号を受信し、IF信号から復調信号、例えばいわゆるTS(Transport Stream)信号を生成して出力する。
なお、デジタル復調装置1は複数の回路部品から構成されている。下記において特に断りがない限り、各回路部品は、それぞれ独立した機能を果たすように特化された回路素子の集合であってもよいし、汎用のプロセッサ等と下記の各機能を果たすようにプロセッサなどのハードウェアを機能させるプログラムとからなるものでもよい。後者の場合には、ハードウェア及びプログラムが組み合わされることによって回路部品が構築される。
<信号列>
以下は、携帯通話装置1000が受信する信号列についての説明である。携帯通話装置1000が受信する信号列は、複数の搬送波によって搬送されたものである。以下においては、本実施形態の一例として、携帯通話装置1000が受信する信号列の伝送方式にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されているものが示されている。
図2(a)は、OFDM方式が採用された信号列の一例を示す模式図である。図2の白丸191及び黒丸192は、各データに対応する単位信号を示している。このうち、黒丸192は、後述のスキャッタードパイロット信号を示している。図2(a)に示されているように、信号列に含まれる単位信号は、時間方向及び周波数方向の両方向に沿って配列されている。
OFDM方式による信号列は、複数の異なる周波数の搬送波によって搬送される。図2(a)の信号列において上下方向に沿った各列は、各搬送波によって搬送される信号を示している。例えば、破線Aに囲まれている信号は、ある1つの搬送波によって搬送される信号である。OFDM方式による信号列は、このような複数の信号を搬送する多数の搬送波の重ね合わせによって構成されている。
OFDM方式による信号列において1つの単位信号に相当する時間的な長さの信号はシンボルと呼称される。図2(a)において、例えば破線Bに囲まれている信号からシンボルが構成されている。つまり、1つのシンボルは、全ての搬送波に跨って時間的に同じ位置に存在する複数の信号から構成されている。
図2(b)は、信号列に含まれるあるシンボル193を時間方向のみに沿って示したものである。シンボル193には、データが含まれている正味の有効部分194以外に、ガードインターバル195が含まれている。ガードインターバル195は、有効部分194の後端に連なる一部分196と全く同じ信号の成分を有しており、シンボル193の先端に連なっている。なお、有効部分194の長さは有効シンボル長と呼ばれる。
信号列を送信する送信局から携帯通話装置1000までに複数の伝送経路が存在する場合には、このような複数の伝送経路を介して互いに時間的なずれを有する複数のマルチパス波が受信される。このような場合には、携帯通話装置1000が受信したマルチパス波に含まれるシンボルが時間的にずれて重なり合う。これによって、例えば、2つの隣り合うシンボル同士が重なり合った信号が受信される。ガードインターバルは、マルチパス波が重なり合った信号から、隣り合ったシンボルが重なり合っていない部分を取り出すために用いられる。ガードインターバルによる補正が施されると、マルチパス波の遅延時間がガードインターバルの長さに収まる範囲であれば、隣り合うシンボル同士の干渉が理論的に発生しない。一方で、マルチパス波の遅延時間がガードインターバルの長さを超えると、隣り合うシンボル同士の干渉をガードインターバルによる補正のみで完全に取り除くことは不可能である。
図2(a)に示されているように、各シンボルには、複数のスキャッタードパイロット信号192が含まれている。スキャッタードパイロット信号192は、1つのシンボル内において周波数方向に沿って等間隔に配列されていると共に、1つの搬送波において時間方向に沿って等間隔に配列されている。本実施形態においては、各シンボルには12の搬送波ごとに1つのスキャッタードパイロット信号192が含まれており、1つの搬送波中には4つのシンボルごとに1つのスキャッタードパイロット信号192が含まれている。また、各シンボルに含まれているスキャッタードパイロット信号192は、時間的に1つ前のシンボルのスキャッタードパイロット信号192より、3つの搬送波に相当する距離だけ周波数が増える方向にずれた位置に配置されている。
スキャッタードパイロット信号192は、規定の符号法などで表される数値列が所定の配列順で信号列内に挿入されることによって、信号列内に配列されている。つまり、スキャッタードパイロット信号192は、信号列内の所定の順にスキャッタードパイロット信号192が示す数値を取っていくと規定の符号法で表される数値列が再現されるように、信号列内に配列されている。
この他、本実施形態において想定される信号列には、信号列に発生する誤りを訂正する誤り訂正処理を施すためのインターリーブや各種の符号化が施されている。例えば、符号化には、リードソロモン符号(以下、「RS符号」と呼称)やビタビ符号が用いられる。また、インターリーブには、ビットインターリーブ、バイトインターリーブ及び時間インターリーブや周波数インターリーブがある。これらは、伝送信号に含まれる信号に対応するデータを時間的に並べ替えたり周波数的に並べ替えたりするものである。各種の符号化やインターリーブが施された信号列に、携帯通話装置1000において後述の復号処理やデインターリーブ処理が施されると、信号列に含まれる誤りが訂正され得る。
なお、本実施形態において想定されている信号列は、例えば、日本の地上デジタル放送に適用され得るものである。日本の地上デジタル放送に係る信号の伝送方式には、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式が採用されている。
<復調器>
以下は、復調器100についての説明である。図3は復調器100の構成を示すブロック図である。図3に示されているように、復調器100は、下記に示されるADC部181等の複数の回路部品から構成されている。
復調器100は、ADC部181、AFC・シンボル同期部182、FFT部183、フレーム同期部184、波形等化部110及び誤り訂正部185を有している。チューナ900から出力されたIF信号SiはADC部181に入力される。ADC部181は、アナログ信号である入力された信号Siをデジタル信号に変換する共に、変換したデジタル信号をAFC・シンボル同期部182へと出力する。
AFC・シンボル同期部182は、ADC部181からのデジタル信号に対してフィルタ処理などの補正処理等を行う。そして、AFC・シンボル同期部182は、後述のFFT部183によるフーリエ変換の開始点、つまり、シンボル同期点を決定してシンボル同期を取ると共に、デジタル信号をFFT部183へと出力する。これと共に、AFC・シンボル同期部182は制御部200へと、シンボル同期点に係る情報を送信する。さらに、AFC・シンボル同期部182は、有効シンボル長を示すモードに係る情報を導出し、その情報を制御部200へと送信する。
なお、ISDB−T方式において、有効シンボル長を示すモードには、モード1(有効シンボル長252μs)、モード2(有効シンボル長504μs)及びモード3(有効シンボル長1008μs)がある。シンボル同期点の決定においては、マルチパス波の影響が最も少ない最適な受信が可能な点が同期点として設定される。このような同期点の決定方法として、信号の相関を参照する方法や、スキャッタードパイロット信号などのパイロット信号を用いて位相のずれを補正する方法等が用いられる。
FFT(Fast Fourier Transform)部183は、AFC・シンボル同期部182からのデジタル信号をフーリエ(時間−周波数)変換する。このフーリエ変換には、いわゆる高速フーリエ変換(FFT)が一般的に用いられる。FFT部183は、フーリエ変換を施したデジタル信号をフレーム同期部184へと順次出力する。
フレーム同期部184は、FFT部183から送られたデジタル信号におけるフレーム単位での同期をとる。1フレームは例えば204のシンボルからなり、1フレームの信号から1まとまりのTMCC情報が取得される。フレーム同期部184によって同期が取られたデジタル信号は波形等化部110へと出力する。
波形等化部110は、デジタル信号に含まれるスキャッタードパイロット信号に基づき、フレーム同期部184によって同期が取られたデジタル信号に対して波形等化を行う。そして、波形等化を施したデジタル信号を誤り訂正部185へと出力する。
誤り訂正部185は波形等化部110からのデジタル信号に誤り訂正処理を施す。誤り訂正処理は、送信元において信号に施されたインターリーブ及び符号化に対応するデインターリーブ処理及び復号処理からなる。種々のインターリーブが施されたデジタル信号が、デインターリーブ処理によりインターリーブ前のデジタル信号に戻されると共に、符号化が施されたデジタル信号が、復号処理により符号化前のデジタル信号に戻される。これによって、伝送経路において信号に含まれることとなった各種の誤りが訂正されるまた、誤り訂正部185は、デジタル信号に誤り訂正処理を施した際の誤りを訂正した量を測定し、BER(Bit Error Rate;ビット誤り率)を算出する(誤り率測定手段)。算出されたBERは、制御部200へと出力される。
以上のように復調器100によって復調処理が施されたデジタル信号がTS信号として復調器100から出力される。
<波形等化>
以下は、波形等化部110のより詳細な説明である。図4は、波形等化部110の構成を示すブロック図である。波形等化部110は、複素除算部111及び117、デマップ部112、MER測定部113、処理選択部114、キャリアフィルタ部115、SP抽出部116、シンボルフィルタ部118、基準SP発生部119、並びに、切り替え制御部130を有している。これらはそれぞれ、波形等化部110を構成する回路部品である。
フレーム同期部184からの信号列は、複素除算部111及びSP抽出部116に入力される。SP抽出部116は、入力された信号列からスキャッタードパイロット信号を抽出する。AFC・シンボル同期部182によってシンボル単位の同期が取られているので、シンボルごとに信号を抽出することが可能である。また、フレーム同期部184によってフレーム単位の同期が取られているので、スキャッタードパイロット信号を表す数値列がフレーム内にどのように配列されているかを把握することが可能である。これらにより、SP抽出部116は、信号列内の時間方向及び周波数方向の両方向について所定の順に配列されたスキャッタードパイロット信号に相当する単位信号を抽出する。そして、抽出した単位信号を複素除算部117へと出力する。
一方で、基準SP発生部119は、スキャッタードパイロット信号に用いられている規定の符号法に基づく数値列を示す信号を、基準信号として順に複素除算部117へと出力する。複素除算部117は、SP抽出部116からのスキャッタードパイロット信号に相当する信号を基準SP発生部119からの基準信号で除算する。除算した結果は、シンボルフィルタ部118及び処理選択部114へと出力される。
シンボルフィルタ部118は、複素除算部117からの除算結果を時間方向について補間した数値を算出する(時間方向補間手段)。かかる時間方向についての補間は、1つの搬送波によって搬送される2つのスキャッタードパイロット信号(例えば、図2(a)のスキャッタードパイロット信号192a及び192b)に基づいて行われる。シンボルフィルタ部118が算出した数値は、処理選択部114へと出力される。
処理選択部114は、後述の切り替え制御部130からの指示に従って、シンボルフィルタ部118からの算出結果及び複素除算部117からの除算結果のどちらか一方をキャリアフィルタ部115へと出力する。
キャリアフィルタ部115は、処理選択部114からの数値を周波数方向について補間した数値を算出する(周波数方向補間手段)。かかる周波数方向についての補間は、1つのシンボルに含まれている2つのスキャッタードパイロット信号(例えば、図2(a)のスキャッタードパイロット信号192b及び192c)に基づいて行われる。キャリアフィルタ部115が算出した数値は、複素除算部111へと出力される。
ここで、処理選択部114がシンボルフィルタ部118からの数値をキャリアフィルタ部115へと出力した場合には、キャリアフィルタ部115が出力する数値は、時間方向及び周波数方向の両方向について補間されたものである。一方で、処理選択部114が複素除算部117からの数値をキャリアフィルタ部115へと出力した場合には、キャリアフィルタ部115が出力する数値は、周波数方向のみについて補間されたものである。なお、スキャッタードパイロット信号の補間には、線形補間や最尤法などが用いられる。
複素除算部111は、フレーム同期部184から入力された信号列に含まれる各単位信号を、キャリアフィルタ部115からの数値で除算する。これによって、信号列に波形等化が施される(等化手段)。波形等化が施された信号列は、複素除算部111からデマップ部112へと出力される。デマップ部112は、波形等化が施された信号列をデマップする。デマップされた結果は、誤り訂正部185へと出力される。
一方で、デマップ部112が信号列をデマップした際に、複素除算部111からの信号列のコンスタレーション及びコンスタレーションの基準値に係る情報がMER測定部113へと出力される。MER測定部113は、かかる情報に基づいて、波形等化が施された信号列のコンスタレーションとコンスタレーションの基準値との差、つまり、MER(Modulation Error Ratio)を測定する(測定手段)。MER測定部113が測定したMERは、切り替え制御部130へと出力される。
<等化処理の切り替え>
以下は、切り替え制御部130による処理選択部114への指示に係る説明である。切り替え制御部130は、複素除算部117からの数値及びシンボルフィルタ部118からの数値のいずれの数値をキャリアフィルタ部115へと出力するかを処理選択部114に指示する。つまり、周波数方向の補間のみを伴う等化処理A(第1の等化処理)、並びに、時間方向及び周波数方向の両方に関する補間を伴う等化処理B(第2の等化処理)のいずれを信号列に施すかを切り替える。
切り替え制御部130は、上記のような切り替えを行うために、MER測定部113からのMERに基づいて、等化処理A及びBのいずれが性能の良い等化処理か(以下、単に「等化性能」と呼称)を評価する(評価手段)。そして、切り替え制御部130は、等化性能を評価するための検査モードと検査モード以外の非検査モードとを交互に切り替える。図5は、切り替え制御部130によって検査モード及び非検査モードの切り替えが行われることを示すタイミングチャートである。図5の曲線171は、検査モード及び非検査モードの各期間に等化処理A及びBのいずれが信号列に施されるかを示している。
図5において、検査モードの期間の長さは非検査モードの期間の長さより短く設定されている。本実施形態においては、検査モードの期間は1シンボル以内に収まる長さに設定されている。また、非検査モードの長さは、切り替え制御部130が等化性能を評価した結果に応じて変化する。1回の検査モードにおいては等化処理A及びBのいずれか一方が信号列に施される。そして、検査モードごとに、等化処理A及びBが交互に切り替えられる。切り替え制御部130は、検査モードごとに、前回の検査モードにおいて測定されたMERと今回の検査モードにおいて測定されたMERとを比較する。そして、その比較結果から、次の非検査モードにおいて等化処理A及びBのいずれを信号列に施すかを決定し、処理選択部114に指示する。
以下は、切り替え制御部130がどのように等化性能を評価し、等化処理A及びBを切り替えるかについてのさらに詳細な説明である。図6(a)は、切り替え制御部130のより詳細な構成を示している。切り替え制御部130は、ステート記憶部131、性能比較部132、ステート更新部133、判定部134及びモード条件記憶部135を有している。
ステート記憶部131は、n(n:2以上の自然数)ビットの数値、つまり、0以上2n−1以下のいずれかの数値を記憶している。この数値は、等化処理A及びBのいずれが適切なものかの指標となる第1〜第2nのステートに1対1に対応している。性能比較部132は、検査モードごとに、今回の検査モードにおいて測定されたMERと前回の検査モードにおいて測定されたMERとを比較する(比較手段)。これによって、等化処理A及びBの等化性能が互いに比較される。
ステート更新部133は、性能比較部132の比較結果に基づいて、ステート記憶部131が記憶しているステートを示す数値を更新する。具体的には、等化処理Aの等化性能が等化処理Bの等化性能より高い場合には、現在のステートよりも第1のステートに近い方に1つ隣のステートを示す数値に更新する。現在のステートが第1のステートである場合には、第1のステートに保持する。また、等化処理Bの等化性能が等化処理Aの等化性能より高い場合には、現在のステートよりも第2nのステートに近い方に1つ隣のステートを示す数値に更新する。現在のステートが第2nのステートである場合には、第2nのステートに保持する。なお、MERの差に応じて2つ以上隣のステートに更新するようにステート更新部133が設定されていてもよい。
判定部134は、ステート更新部133が更新したステート記憶部131の数値に基づいて、検査モードごとに、現在の受信状況に対して等化処理A及びBのどちらがより適切な等化処理かを判定する。具体的には、ステート記憶部131の数値が第1〜第2n−1のステートを示している場合には、等化処理Aの等化性能が等化処理Bの等化処理より高いと判定する。ステート記憶部131の数値が第(2n−1+1)〜第2nのステートを示している場合には、等化処理Bの等化性能が等化処理Aの等化処理より高いと判定する。つまり、第2n−1及び第(2n−1+1)のステートが等化処理Aと等化処理Bとの切り替えの境界に相当する。なお、等化処理Aと等化処理Bとの切り替えの境界が別のステートであってもよい。
モード条件記憶部135は、検査モード及び非検査モードの期間の長さなどを記憶している。検査モードの期間の長さは、上記の通り1シンボルの長さ以下に設定されている。非検査モードの期間の長さはステートに応じて設定されており、等化処理Aと等化処理Bとの切り替えの境界に相当する第2n−1及び第(2n−1+1)のステートに近いステートほど非検査モードの期間の長さが短くなるような値に設定されている。つまり、ステートが第1〜第2n−1のステートである場合には、第2n−1のステートに近いほど短い期間に設定されており、ステートが第(2n−1+1)〜第2nのステートである場合には、第(2n−1+1)のステートに近いほど短い期間に設定されている。
切り替え制御部130は、等化性能が高いと判定部134が判定した等化処理を信号列に施すような指示を処理選択部114に出力する。また、モード条件記憶部135が記憶している検査モード及び非検査モードの期間の長さに従って検査モードと非検査モードとを切り替える。これによって、等化処理Aの等化性能が等化処理Bのそれより高い場合には等化処理Aが、等化処理Bの等化性能が等化処理Aのそれより高い場合には等化処理Bが信号列に施されるように、処理選択部114が制御される。したがって、現在の受信状況により適切な等化処理が信号列に施されることとなる。
図6(b)は、制御部200の構成を示すブロック図である。制御部200は、初期値決定部201及び等化制御部202を有している。制御部200は、信号列を継続的に受信するモードと信号列を間欠的に受信するモードとの間で、チューナ900による信号列の受信モードを切り替える。信号列を継続的に受信するモードとは、例えばユーザに対して地上デジタル放送による映像や音声の提供がなされている期間における受信モードである。信号列を間欠的に受信するモードとは、このような継続的な受信モードに切り替える前に、信号列の受信状況を確認するための受信モードである。
間欠的な受信モードにおいて、制御部200は、波形等化を含む復調処理及び誤り訂正処理をチューナ900からの信号列へと復調器100に間欠的に施させる。このとき、誤り訂正部185は、誤り訂正処理の際のBERを測定し、制御部200へと出力する。
初期値決定部201は、誤り訂正部185からのBERに基づいて、信号列の受信が開始される際のステートの初期値を決定する。具体的には、初期値決定部201は、BERに基づいて現在の受信状況を判定し、等化処理A及びBのいずれが現在の受信状況に適切かを判定する。そして、等化処理Aが適切であると判定した場合には第1〜第2n−1のステートのいずれかに初期値を決定し、等化処理Bが適切であると判定した場合には第(2n−1+1)〜第2nのステートのいずれかに初期値を決定する。これらのステートのいずれを選ぶかは、BERの具体的な大きさなどに応じて判断される。
また、等化制御部202は、例えばユーザなどから地上デジタル放送の受信を開始する指示がなされたか否かに基づいて、信号列の受信を開始するべきか否かを判定し、信号列の受信を開始するべきと判定した場合には、波形等化部110に波形等化を開始させる。これによって、携帯通話装置1000による信号列の継続的な受信が開始する。さらに、等化制御部202は、信号列の受信が行われている期間に、信号列の受信を終了する指示がユーザなどからなされたか否かを判定する。信号列の受信を終了する指示がなされたと判定した場合には、等化制御部202は、等化処理を終了するように波形等化部110へと指示を送る。
<等化処理の流れ>
以下は、信号列の受信が開始されてから受信が終了するまでの等化処理についての説明である。図7及び図8は、信号列に等化処理が施される際の一連のステップを示すフローチャートである。図7は、主に制御部200における処理の内容を、図8は、波形等化部110における処理の内容を示している。
まず、制御部200は、信号列の受信がユーザなどから指示されたか否かを判定する(S1)。例えば、地上デジタル放送の受信が行われる場合には、ユーザが携帯通話装置1000を操作することにより受信が開始される。受信が開始されていない場合には(S1、No)、制御部200は間欠受信を行うタイミングか否かを判定する(S5)。間欠受信を行うタイミングでないと判定した場合には(S5、No)、制御部200はS1の処理に戻る。
間欠受信を行うタイミングであると判定した場合には(S5、Yes)、制御部200は、チューナ900に信号列を受信させると共に、復調器100による復調処理及び誤り訂正処理を開始させる(S6)。このとき、波形等化を含む復調処理が信号列に施され、誤り訂正処理がなされる。誤り訂正部185は、誤り訂正処理を信号列に施すと共に、BERを測定して制御部200へと出力する(S7)。制御部200は、誤り訂正部185からのBERに基づいて、波形等化の際の初期値を決定し、ステート記憶部131などに記憶させる(S8)。
S1において、信号列の受信が指示されたと判定した場合には(S1、Yes)、制御部200は、波形等化部110に波形等化を開始するよう指示を送る(S2)。そして、信号列の受信が終了するまで待機する(S3、No)。ユーザが携帯通話装置1000を操作するなどにより、受信の終了が指示された場合には(S3、Yes)、制御部200は、波形等化部110に波形等化を終了するよう指示を送る(S4)。そして、S1からの処理に戻る。
一方で、波形等化部110は、制御部200から波形等化の開始の指示が送られると、まず検査モードで動作を開始する(S21〜S28)。検査モードが開始されると、切り替え制御部130は、等化処理A及びBのうち、前回の検査モードで行われた処理とは異なるものを選択する(S21)。そして、波形等化部110は、S21において選択された検査モードで等化処理を信号列に施す(S22)。このとき、検査モードの期間の長さは1シンボル以内の長さである。
次に、デマップ部112がデマップを行う(S23)。そして、デマップ部112がデマップを行った結果に基づいて、MER測定部113がMERを算出する(S24)。切り替え制御部130は、MER測定部113からのMERを比較して(S25)、今回の検査モードでの等化性能及び前回の検査モードでの等化性能のいずれが高いかを判定する。そして、その判定結果に基づいてステート記憶部131が記憶しているステートを更新する(S26)。
次に、切り替え制御部130は、ステート記憶部131が記憶しているステートに基づいて、等化処理A及びBのいずれが現在の受信状況に適しているかを判定する(S27)。そして、現在の受信状況に適していると判定した等化処理が非検査モードにおいて行われるように、処理選択部114に指示を送る(S28)。以上のS21〜S28が検査モードにおける処理の流れである。
次に、波形等化部110は、非検査モードで動作する(S29〜S32)。波形等化部110は、切り替え制御部130の指示に従って、等化処理A及びBのいずれかを信号列に施す(S29)。そして、デマップ部112がデマップを行う(S30)。
一方で、制御部200は、携帯通話装置1000による信号列の受信が終了したか否かを判定し、信号列の受信が終了したと判定した場合には波形等化部110に等化処理を終了するように指示を送る。波形等化部110は、等化処理を終了するような指示が制御部200から送られたか否かを判定し(S31)、かかる指示が送られたと判定した場合には(S31、Yes)、等化処理を終了する。上記の指示が送られていないと判定した場合には(S31、No)、波形等化部110は、非検査モードの期間が終了したか否かを判定する(S32)。非検査モードの期間が終了したと判定した場合には(S32、Yes)、波形等化部110は、S21からの検査モードでの等化処理を信号列に施す。非検査モードの期間が終了していないと判定した場合には(S32、No)、S29からの非検査モードでの等化処理を信号列に施す。
以上の構成を有していることにより、本実施形態は以下のような効果を奏する。本実施形態と異なり、遅延時間の長さに応じて等化処理を選択するなどの場合には、マルチパス波の遅延時間を測定する手段が必要である。しかし、マルチパス波が1波からなる場合もあれば複数波からなる場合もあり、また、ドップラーシフトによってそのレベルも変化するなど、マルチパス波の受信状況は様々である。したがって、マルチパス波の遅延時間を正確に取得するのは困難であると共に、受信状況の変化に応じた遅延時間の基準を前もって設定しておくのも困難である。
これに対して、本実施形態によると、スキャッタードパイロット信号の周波数方向の補間のみを伴う等化処理、及び、周波数方向及び時間方向の両方の補間を伴う等化処理のどちらが現在の受信状況に適切なものかが、それぞれの等化処理を実際に施した際の受信性能を測定することによって評価される。したがって、マルチパス波の遅延時間のみならず、ドップラーシフトの影響をも考慮した上で等化処理が選択されるため、受信状況に適切な等化処理の選択が正確になされ得る。
また、本実施形態においては、2つの等化処理のうちいずれの等化性能が高いかに応じてステートの状態を更新しつつ、更新後のステートの状態に応じて等化処理が選択される。したがって、等化性能を複数回比較した結果に基づいて等化処理の選択が行われるので、受信状況に応じた等化処理の選択がより正確になされ得る。また、複数回の更新を経た現在のステートに基づいて等化処理が決定されるため、等化性能を複数回評価した結果を評価する手段が簡易な構成で実現する。
また、本実施形態においては、継続的な受信を開始する前に間欠的な受信を行ってBERが測定されると共に、ステート記憶部131が記憶しているステートの初期値がBERに応じて決定される。したがって、継続的な受信が開始されてから受信状況に適したステートに移行するまでの時間が短縮され、信号列の良好な受信が速やかに開始する。
さらに、本実施形態によると、検査モードの期間の長さは1シンボルに収まる長さである。したがって、検査モードによって復調処理に悪影響が及ぶ場合には、その影響が最小限の範囲に限定され得る。
<受信状況に応じた等化処理の例>
以下は、本実施形態の等化処理が信号列に施される場合に、受信状況と等化処理の切り替えとがどのように対応するのかについての説明である。図9は、本実施形態の携帯通話装置1000によって信号列の受信が行われる場合の受信状況の一例を示す図である。
図9(a)の曲線C1は、携帯通話装置1000の移動の速さと時間との関係を示している。例えば、携帯通話装置1000が高速道路を走行する自動車内で信号列を受信する場合には、携帯通話装置1000は図9(a)のような速さで移動することとなる。期間Taは、自動車が高速道路において増速している期間である。期間Tbは、細かい速さの変化を伴いつつ、自動車が安定に走行している期間である。期間Tcは、自動車が減速している期間である。
図9(b)の曲線C2は、信号列に含まれるマルチパス波の遅延時間の時間変化を示している。遅延時間は、信号列を送信する送信局との距離に依存して変化する。自動車で一定方向に長時間移動するような場合には、信号列を送信する送信局と自動車との距離が単純に増加したり減少したりすることとなる。したがって、遅延時間の時間変化は、例えば信号列を送信する送信局と自動車との距離が単純に増加するのに従って、図9(b)のような単純増加となる。なお、自動車と送信局との位置関係により、遅延時間が単純減少になる場合や、単純増加と単純減少とを繰り返すものとなる場合もある。
ところで、信号列に施される等化処理の性能に影響を与える要素の一例として、携帯通話装置1000の移動によるドップラーシフトと信号列に含まれるマルチパス波とがある。ドップラーシフトが発生すると時間的に信号が大きく変動する。一方、等化処理において時間方向の補間を行う場合には、時間的に離隔したシンボルに含まれるスキャッタードパイロット信号が用いられる。したがって、ドップラーシフトの影響のみを考慮した場合には、時間方向の補間を行わず、周波数方向に関する補間のみを行う方が、等化処理の性能がよい。
図9(a)のように速さが変化する場合には、自動車の移動に伴うドップラーシフトの影響が変化するため、等化処理A及びBのうち等化性能の高い適切な等化処理がどちらであるかが時間的に変化する。つまり、期間Taにおいて速さが小さいときには、時間方向に関する補間も施す等化処理Aが適切である。しかし、速さが増大してある程度の大きさを超えた場合には、周波数方向に関する補間のみを伴う等化処理Bが適切なものとなる。速さがある程度を超えた状態が継続する期間Tbにおいては、等化処理Bが適切である。その後、期間Tcにおいて、速さがある程度を超えた状態において等化処理Bが適切であり、速さがある程度を下回ると、等化処理Aが適切なものとなる。
これに対して、マルチパス波の遅延時間が長くなると、補間方式の違いによる影響が出る。つまり、マルチパス波の遅延時間がある程度大きくなると、時間方向に関する補間が必須なものとなる場合がある。したがって、遅延時間のみを考慮すると、図9(b)において遅延時間が周波数軸方向の補間のみで補正できる限界の長さを超えない期間には、等化処理A及びBのいずれが行われてもよい。しかし、遅延時間が増大して周波数軸方向の補間のみで補正できる限界の長さを超えると、時間方向に関する補間も行う等化処理Aが適切なものとなる。このような補正できる限界の長さは、等価器を構成するフィルタの理想通過帯域により決まっている。
以上より、マルチパス波の遅延時間及びドップラーシフトの両方を考慮した場合に、適切な等化処理は、図10(a)に示されているように変化する。なお、図10(a)の曲線C2において下方の点ほど遅延時間が大きいことを示している。
図10(a)の時刻t1までは、携帯通話装置1000の移動の速さが小さく、遅延時間も小さい。したがって、等化処理Aが適切なものとなる。時刻t1〜t2の期間は、移動の速さがある程度を超えることにより、等化処理A及びBのいずれが適切なものかが短い時間に変化するような過渡期間である。時刻t2を過ぎると、速さがある程度を超えた状態が安定に継続する期間となり、等化処理Bが適切なものとなる。しかし、時刻t2から時刻t3に近づくにつれて、遅延時間が大きくなる。そして、遅延時間の大きさが周波数軸方向の補間のみで補正できる限界の長さの近傍になる時刻t3〜t4の期間は、等化処理A及びBのいずれが適切なものかが短い時間に変化するような過渡期間である。時刻t4を過ぎると、遅延時間が周波数軸方向の補間のみで補正できる限界の長さを完全に超えるため、等化処理Aが適切なものとなる。
そこで、上記のような受信状況の変化に合わせた適切な等化処理が行われるように、本実施形態が以下のように適用される。表1は、本実施形態を具体的に等化処理の制御に適用した場合の一例を示している。表1の例においては、第1〜第4のステートが適用される。これらのステートは2ビットの数値と対応している。また、各ステートに対応する非検査モードの期間の長さは、T00、T01、T10及びT11であり、T00=T11、T01=T10且つT00>T01を満たすように調整されている。そして、第1〜第4のステートは等化処理A又はBに対応している。以下においては、表1に示されるような条件に従って切り替え制御部130が構成されているものとする。
表1に示されるような条件で本実施形態が適用された場合に、図10(a)に示されているような受信状況の変化の下で、以下のような等化処理の制御がなされる。図10(b)は、波形等化部110が信号列に施す等化処理の時間変化を示すタイミングチャートである。
自動車の速さが小さい受信開始時には等化処理Aがなされるように、ステート記憶部131は第1のステートを示す数値00を記憶している。これは、制御部200の初期値決定部201によって決定された初期値である。時刻t1までは、各検査モードにおいて等化処理Aの等化性能が等化処理Bの等化性能より高いと判定される。例えば、検査モードの期間であるta〜tbの期間において等化処理Aがなされた場合の等化性能が測定される。この期間においては遅延時間が短く速さも小さいので、等化処理Aの等化性能が前回(不図示)の等化処理Bの等化性能より高いと判定される。したがって、時刻t1までの期間には、第1のステートに保持されている。つまり、ステート記憶部131は数値00を記憶している。また、各非検査モードは、第1のステートに対応する長さT00に亘って行われる。
図10(c)は、図10(b)において、t1〜t2の期間の部分が拡大されたものである。t1〜t2の期間は、上記の通り、等化処理Aが適切である受信状況から等化処理Bが適切である受信状況へと移行する過渡期間に相当する。図10(c)において、t1〜tk、tl〜tm及びtn〜t2の各期間は検査モードの期間に相当する。
t1〜tkの期間において、前回の検査モードにおける等化処理と異なる等化処理Bが信号列に施され、その等化性能がMER測定部113によって測定される。自動車の速さが増大することにより、t1〜tkの期間において測定された等化処理Bの等化性能は、前回のta〜tbの期間において測定された等化処理Aの等化性能よりも高くなっている。したがって、切り替え制御部130のステート更新部133は、性能比較部132の比較結果に基づいて等化処理Bが等化処理Aよりも現在の受信状況に適していると判定する共に、ステート記憶部131が記憶しているステートの数値を、第2のステートを示す数値01に更新する。第2のステートに対応するのは等化処理Aなので、次の非検査モードに相当するtk〜tlの期間には等化処理Aが信号列に施されるように、切り替え制御部130が処理選択部114に指示を送る。ここで、tk〜tlの期間の長さは、第2のステートに相当する長さT01である。
tl〜tmの期間において等化処理Aが信号列に施され、その等化性能が測定される。tl〜tmの期間には自動車の速さがさらに増大しているため、tl〜tmの期間で測定された等化処理Aの等化性能はt1〜tkの期間で測定された等化処理Bの等化性能より低い。したがって、等化処理Bが等化処理Aよりも現在の受信状況に適していると判定されると共に、ステート記憶部131が記憶しているステートの数値が、第3のステートを示す数値10に更新される。第3のステートに対応するのは等化処理Bなので、次の非検査モードに相当するtm〜tnの期間には等化処理Bが信号列に施される。ここで、tm〜tnの期間の長さは、第3のステートに相当する長さT10である。
tn〜t2の期間において、等化処理Bが信号列に施され、その等化性能が測定される。tn〜t2の期間において自動車の速さは前回のtl〜tmの期間におけるよりも大きくなっている。したがって、切り替え制御部130は、tn〜t2の期間で測定された等化処理Bの等化性能がtl〜tmの期間で測定された等化処理Aの等化性能より低いと判定されると共に、ステート記憶部131が記憶しているステートの数値が、第4のステートを示す数値11に更新される。第4のステートに対応するのは等化処理Bなので、次の非検査モードに相当するt2〜tcの期間には等化処理Bが信号列に施される。ここで、t2〜tcの期間の長さは、第4のステートに相当する長さT11である。
t2〜t3の期間には等化処理Bの等化性能が等化処理Aの等化性能より高くなる範囲で、遅延時間が短く且つ自動車の速さが安定する。したがって、t2〜t3の期間中、tc〜td、te〜tfなどの検査モードにおいては、等化処理Bが等化処理Aより適していると判定されるため、非検査モードにおいて等化処理Bが信号列に施される。
t3〜t4の期間は遅延時間が周波数軸方向の補間のみで補正できる限界の長さを超える過渡期間に相当する。つまり、t3〜t4の期間は、等化処理Bが適切である受信状況から等化処理Aが適切である受信状況へと移行する過渡期間に相当する。したがって、t1〜t2の期間と同様に短期間に等化処理Aと等化処理Bとが繰り返される。
t4から信号列の受信が終了するまでの期間は、遅延時間が長く且つ自動車の速さが減少する期間である。したがって、t4から受信終了までの期間中、tg〜th、ti〜tjなどの検査モードにおいては、等化処理Aが等化処理Bより適していると判定されるため、非検査モードにおいて等化処理Aが信号列に施される。
以上のとおり、本実施形態によると、等化処理A及びBを互いに切り替える境界のステートである第2及び第3のステートにおいて、検査モードの切り替えが頻繁になされることとなる。したがって、一方の等化処理が適した受信状況から他方の等化処理が適した受信状況への過渡期間において、受信状況の変化に即応した等化処理の切り替えがなされ得ると共に、一方の等化処理に適した状態が安定して継続するような期間においては検査モードの切り替えの回数が少ないので、安定した制御がなされ得る。
なお、本実施形態においては、ステートの数や非検査モードの期間の長さを調整することで、携帯通話装置1000の使用環境に応じた適切な等化処理の選択が行われるような設定が可能である。例えば、ステートの数が大きく、非検査モードの期間がより詳細に設定される場合には、受信状況の変化により柔軟に適応した等化処理の選択が行われる。
<波形等化部の変形例>
図11は、上述の実施形態における波形等化部110とは部分的に異なる構成を有する波形等化部510の構成を示すブロック図である。なお、波形等化部510は波形等化部110と多くの共通する構成を有しているため、以下においてこのような共通部分に係る説明は適宜省略される。
波形等化部510は、波形等化部110とは異なり、図11の点線に示されているように、複素除算部117からの除算結果を複素除算部111に直接出力するような構成を有している。制御部200は、復調器100からのBERに基づいて、複素除算部117からの除算結果を複素除算部111に直接出力するか、周波数方向や時間方向の補間を行うシンボルフィルタ部118やキャリアフィルタ部115を介して出力するかを選択する。
具体的には、以下のような制御が行われる。制御部200は、信号列の継続的な受信を開始するような指示がユーザなどからなされる前に、上述の実施形態と同様に、間欠的な受信をチューナ900に行わせる。そして、波形等化部510による等化処理を含む復調処理と誤り訂正処理とを復調器100に行わせる。このとき、誤り訂正部185から制御部200へとBERが出力される。なお、このときの波形等化部510による等化処理は、シンボルフィルタ部118やキャリアフィルタ部115を介して行われてもよいし、これらによる補間を介さずに行われてもよい。
そして、制御部200は、復調器100からのBERが所定の閾値を下回っている場合には、携帯通話装置1000の受信状況が特に良好な状態にあるか否かを判定する。特に良好な状態にあると判定した場合には、制御部200は、信号列の継続的な受信を開始するような指示がユーザなどからなされた後に、シンボルフィルタ部118及びキャリアフィルタ部115のいずれをも介さずに等化処理を行うよう波形等化部510に指示を送る。復調器100からのBERが所定の閾値を下回らず、受診状況が特に良好な状態にはないと判定した場合には、制御部200は、信号列の継続的な受信において上述の実施形態と同様の等化処理が行われるよう波形等化部510に指示を送る。
例えば携帯通話装置1000が信号列の送信局に近接した位置で移動せずに信号列を受信する場合のように特に受信状況が良好でガウス雑音のみとみなせるような場合には、周波数方向や時間方向に関する補間を信号列に施すと却って受信の性能が低下することがある。以上のような波形等化部510の構成により、これらの補間を信号列に施すと却って受信の性能が低下するような特に受信状況が良好である場合にはこれらの補間のいずれも行われないように等化処理を制御することが可能となる。
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された内容の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、上述の実施形態において想定されている信号列は、ISDB−Tに適用され得るものである。しかし、本発明は、ISDB−T方式の他、DVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)、DVB−H(-Handheld)方式、無線LANに用いられるIEEE802.11a/b/g/n方式にも適用され得る。つまり、本発明は、周波数方向及び時間方向の両方向についてスキャッタードパイロット信号を配列するものであれば、どのような伝送方式に採用されてもよい。
また、上述の実施形態においてMER測定部113が測定するMERは、実質的にCN(Carrier to Noise)比と同等のものである。しかし、CN比としてMER以外の測定値が利用されてもよい。
また、上述の実施形態は、ステートを段階的に更新して、ステートがある段階を超えた際に等化処理を切り替えている。すなわち、1回の測定結果のみによって等化処理を切り替えず、複数回の測定結果に基づいて等化処理を切り替えるべきか否かを判定している。
また、上述の実施形態においては、検査モードが1シンボル内の期間に収まるように調整されている。しかし、検査モードが2シンボル以上の期間に亘って継続してもよい。これによると、2シンボル以上の期間に亘って測定された等化性能の結果の平均値を算出し、かかる平均値に基づいて適切な等化処理を評価することが可能となる。したがって、1シンボルの検査モードにおいて測定された等化性能を用いて評価する場合と比べて、より正確な評価が行われる。
また、上述の実施形態においては、1回の検査モードにおいて2つの等化処理のどちらか一方のみが信号列に施されている。しかし、1回の検査モードにおいて同時に2つの等化処理を信号列に別途に施すような構成を波形等化部110が有していてもよい。この場合には、1回の検査モードで2つの等化処理の等化性能を互いに比較することが可能である。
また、上述の実施形態は、主にMERを測定することで等化処理の等化性能を評価している。しかし、BERを用いて等化処理の等化性能が評価されてもよい。例えば、BERの測定期間中に一方の等化処理が行われた期間の長さがどれくらいかを測定するような手段と、かかる手段が測定した期間の長さ及びBERに基づいて、2つの等化処理のうちいずれが現在の受信状況に適しているかを判断する手段とを、携帯通話装置1000が有していてもよい。