JP2008012671A - 合成樹脂発泡体の製造方法及び合成樹脂発泡体 - Google Patents

合成樹脂発泡体の製造方法及び合成樹脂発泡体 Download PDF

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Abstract

【課題】 発泡体表面を加熱、溶融させ、非発泡層を形成させる従来の試みは成形方法が複雑になるのに加え、加熱工程、冷却工程に必要以上に時間を消費することや等、得られる表面硬化層の平滑性、厚み、均一性に問題があり、工業的な要望を満たすに至っていない。
【解決手段】 蒸気吹込孔と、加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部とを併有した金型を用い、蒸気を吹込んで発泡性合成樹脂を加熱発泡成形する前加熱工程を行い、発泡圧力を+0.04MPa以上に保ちながら、該空間部に発泡性合成樹脂の溶融温度以上に加熱した加熱媒体を流す後加熱工程を行い、その後、該空間部に冷却媒体を流して金型を冷却させる、更に必要により金型に冷却水を噴霧する冷却を付加して、発泡性合成樹脂の表面溶融を停止させ、発泡の進行を停止させる冷却工程を行って、表面に硬化層を有する合成樹脂発泡体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表面に密度の高い表面硬化層を有する合成樹脂発泡体の製造方法及び合成樹脂発泡体に関する。
ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の型内成形において、得られる発泡体表面に硬い表皮を形成させようとする試みは、いくつかなされてきている。例えば、特許文献1においては、主として発泡性ポリプロピレンビーズを発泡させるに当たり、型内を約120℃の過熱蒸気で3分程度加熱し、次いでキャビティー近傍に配設した加熱体パイプにより発泡体表面を約200℃で30秒程度加熱して、発泡体表面を溶融し、次いで、キャビティー近傍に配設した冷却パイプ内に冷却水を通すことで溶融したポリプロピレンを冷却して表面に硬化層が形成された発泡体を得る方法が開示されている。しかしながら、本技術は加熱体パイプと冷却パイプが別個に設けられているため、加熱或いは冷却の際の温度むらが生じ、成形体表面に硬化層が形成されるもののその厚みに大きなバラツキが生じるという問題があった。
また、特許文献2には、一対の金型で形成される成形空間内に、発泡性合成樹脂原料を充填し、一方の金型の背後に配した配管に加熱オイルを流動させることにより、原料粒子の溶融温度以上に加熱した後、この一方の金型の背後の加熱室に冷却水を供給して冷却し、樹脂皮膜を形成させると共に、他方の金型の背後の加熱室に蒸気を供給して通常の発泡成形温度に加熱して、原料粒子を発泡融着させ、しかる後、他方の金型の背後の加熱室に冷却水を供給して冷却する技術が開示されている。
そして、この特許文献2において、一方の金型は、加熱オイルでの加熱を行い、蒸気での加熱をしないため、この一方の金型には、金型背後の加熱室と連通して、蒸気を供給する連通口を設けていない例が記されている。もっとも、連通口は必要に応じて適宜設けることも可能であるとする。さらに、一方の金型での樹脂皮膜の形成が記されているのみであるが、詳細な説明では、加熱オイルを流動させる配管は、他方の金型にも設けることも可能であるとの記述がなされている。
特開昭58−171924号公報 特開平5−253952号公報
発泡体表面を加熱、溶融させ、非発泡層を形成させる試みは種々なされてきたが、別種素材を発泡体表面に被覆、貼着させるいわゆる表皮材を一体化する方法と比べて、成形方法が複雑になり、加熱工程、冷却工程に必要以上の時間がかかり、その上、得られる硬化層が均一なものが得られないといった欠陥を有するため、未だ工業的な要望を満たすに至っていない。
本発明者らは鋭意検討の結果、加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えた金型を使用し、該空間部に加熱媒体と冷却媒体を切り替えて使用することにより、表面硬化層の厚みが均一な合成樹脂発泡成形体が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の第1は、型内発泡成形による製造方法であって、少なくとも金型の一部に加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えた一対の金型から構成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填した後、成形空間に蒸気を吹込んで加熱発泡成形する前加熱工程、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上に維持し、前記空間部に発泡性合成樹脂の溶融温度以上の加熱媒体を流す後加熱工程、後加熱工程の後、前記空間部中の加熱媒体を冷却媒体に切り替えて流し、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満に低下させる冷却工程からなることを特徴とする合成樹脂発泡体の製造方法に関する。
本発明の第2は、型内発泡成形による製造方法であって、少なくとも金型の一部に加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えた一対の金型から構成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填した後、成形空間に蒸気を吹込んで加熱発泡成形する前加熱工程を行い、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上に維持し、前記空間部に発泡性合成樹脂の溶融温度以上の加熱媒体を流す後加熱工程を行い、後加熱工程の後、前記空間部の加熱媒体を冷却媒体に切り替えて流すと共に、金型に冷却水を噴霧し、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満に低下させる冷却工程を行うことを特徴とする合成樹脂発泡体の製造方法に関する。
好ましい態様としては、
(1)金型に備えた前記加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部が、成形空間に対して背面側に位置するボックス状、管状、溝流路状である、
(2)該空間部が、凹欠部を設けた部材、溝を穿った部材、板状の部材の少なくとも1種以上を組合せることで形成されてなる、
(3)加熱及び冷却媒体がオイルである、
(4)加熱及び冷却媒体が水もしくは水蒸気である、
前記記載の合成樹脂発泡体の製造方法に関する。
本発明の第3は、前記記載の製造方法で製造された合成樹脂発泡体に関し、好ましい態様としては、合成樹脂発泡体の表面に表面硬化層を有する前記記載の合成樹脂発泡体に関し、別の好ましい態様としては、合成樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂発泡体である前記記載の合成樹脂発泡体に関する。
本発明の第4は、発泡性合成樹脂を型内成形する際に、表面を熱溶融させて形成させた表面硬化層を有する合成樹脂発泡体であって、2%のアルキルアミンオキシド溶液に接触させ、室温にて放置した際、少なくとも3時間、2%のアルキルアミンオキシド溶液が漏出しないことを特徴とする発泡合成樹脂成形体に関し、好ましい実施態様としては、容器、農業用資材、運輸手段用部材、建築用部材、住宅設備用部材からなる群から選ばれる一以上として用いられることを特徴とする前記記載の発泡合成樹脂成形体に関する。
さらに好ましい態様としては、
(1)容器が、水産物用、農産物用、食料品用の何れかである、
(2)農業用資材が、育苗箱、定植ボードの何れかである、
(3)運輸手段用部材が、ラゲージボックス、フロアレベラー、バンパーコア材の何れかである、
(4)建築用部材が、埋込材、打込型枠、化粧型枠の何れかである、
(5)住宅設備用の部材が、エアコン用ドレンパン、トイレ用防露タンク、浴槽・浴室断熱材の何れかである、
前記記載の発泡合成樹脂成形体に関する。
本発明の第5は、金型の成形空間室側表面に鏡面加工、テフロン(登録商標)加工、メッキ加工の何れかの表面処理を施した事を特徴とする前記記載の製造方法に用いる金型に関する。
従来のように加熱媒体用配管と冷却媒体用配管といった2種の配管を設けるのではなく、金型の成形空間背面の大部分または多くの面積を利用して設けられた空間部に、加熱或いは冷却された同一種の媒体を切り替えて流動させるので、金型構造が複雑になることなく、また、加熱及び冷却媒体を流す空間部の伝熱面積を最大限にすることが出来、加熱或いは冷却効率が非常に高くなる。また、冷却工程において、冷却水噴霧による冷却と、金型に設けた空間部に冷却媒体を流す冷却とを併用することで冷却効率が極めて高くなる。金型の温度むらが縮小出来るため、合成樹脂発泡体表面の溶融速度が均一化し、表面硬化層厚みも均一化する。本発明においては、合成樹脂発泡体表面が溶融することで金型表面転写性が向上することから、金型の成形空間側の金型表面に鏡面加工等の表面処理を施すことで非常に美麗な発泡成形体を得ることも出来る。
本発明の製造方法で得られる合成樹脂発泡体は、従来の表面硬化層付き成形体に比べ、より均一な厚みにて、発泡体の必要表面、好ましくは全表面に密度の高い美麗な表面硬化層を形成することが可能となる。特に、成形金型を鏡面加工することにより極めて美麗な表面光沢を発現しうる。このため、従来の合成樹脂発泡体では得られなかった重量感、触感、美感等を得ることが出来る。これは、従来の型内発泡成形体特有の成形体表面に出現する粒子間の窪み(凹み)が非常に少なくなることも意味する。そのため、汚れが表面に付着しにくく、また付着した汚れは落としやすいので衛生的である。また、防水性、撥水性にも優れている。更に、合成樹脂発泡体表面が美麗であることから、印刷性やラベル密着性が向上し、デザイン性の幅が広がる。また、合成樹脂発泡体の金型転写性が向上することから、細かな模様を表現することが可能となる。
そして、注目すべきは特にポリスチレン系樹脂発泡体に特有で、用途によっては、非常に嫌われるキュッキュッという擦れ音(あるいは軋み音等とも表現することがあるが、本発明においては、以下、擦れ音と表現する)がしない、もしくは低減するという特徴を有する。このため、擦れ音を嫌う自動車等の車輌用、その他運輸手段用の断熱材、緩衝材、遮音材等に好適に使用することができる。
また、良好な表面硬化層が形成されることから、表面硬度が向上し、耐傷性が向上すると共に、曲げ強度、弾性率、突き刺し強度等が軒並み上昇する。又、ポリスチレン系樹脂発泡体特有の割れ、欠け等の欠陥が無くなると共に、発泡体表面に静電気で付着する微粉状の発泡体のホコリ、ごみ等が容易に除去出来る。更には、成形体を構成する素材自体が表面硬化層を形成することから、全てが同一素材であり、異種素材を構成要素として含まないので、リサイクルの観点から極めて有用である。
本発明で使用される発泡性合成樹脂としては、発泡成形が可能なものであれば特に制限されるものではなく、こうした発泡性合成樹脂に用いられる好ましい例としては、ポリスチレン系樹脂、ポリメタアクリル酸エステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等よりなる発泡性合成樹脂が一般的に例示し得る。
これらの内、発泡性ポリスチレン系樹脂がコストや特性上最も一般的で使用し易い。ポリスチレン系樹脂としては、主成分としてスチレン系単量体を重合したものである。スチレン系単量体としては、スチレン、α―メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。さらにスチレンと共重合が可能な成分、例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいは、アクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体を1種又は2種以上、添加し共重合しても良い。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性等の多官能性単量体を併用することもできる。
これら発泡性ポリスチレン系樹脂の内で、発泡性ポリスチレン樹脂が最も汎用で、コスト、物性の点からも好ましい。
また、耐候性の点からは、次に説明する発泡性ポリメタアクリル酸エステル系樹脂を使用することも好ましい。
ポリメタアクリル酸エステル系樹脂としては、例えば、特開2001−233986号公報に記載があるごとき、メタクリル酸メチル単量体単位70〜100重量%及びこれと共重合可能な他の単官能不飽和単量体単位0〜30重量%および多官能性単量体0〜0.2ビニル基mol%とからなる単量体成分を重合して得られる、重量平均分子量が25万〜80万であるメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
メタクリル酸メチル単量体と共重合可能な単官能不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロール等のヒドロキシル基含有のエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドがある。ニトリル類には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有単量体;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル70重量%以上、ビニル芳香族炭化水素0〜10重量%、およびメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル0〜30重量%の組成の範囲のものが好ましい。
発泡性ポリメタアクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は25万〜80万であることが好ましく、更に好ましくは、30万〜60万である。
発泡性ポリメタアクリル酸エステル系樹脂は、前述の単官能不飽和単量体、多官能性単量体を含む多官能性の構成単位となる成分、必要により更に連鎖移動剤および/または重合開始剤を加えて重合し、発泡剤を含浸等の手段により含有させることによって得られる。多官能性の構成単位となる成分としては、多官能性単量体が効果が大きいが、同様の作用を有するものとして多官能連鎖移動剤、多官能性開始剤、およびこれらの混合物を挙げることができる。
前記発泡性ポリスチレン系樹脂や、発泡性ポリメタクリル酸エステル系樹脂を重合する方法には特に限定はないが、特に、一般的なのは、前記単量体等を分散剤等により水中に分散させ、重合開始剤などを加えて、懸濁重合などにより重合し、重合の途中、あるいは重合後に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る方法が例示される。懸濁重合等して得られる発泡性合成樹脂は、一般に粒状で得られる。一般の塊状重合等で得られる合成樹脂等の場合は、ペレット化等して粒状とし、発泡剤を含浸等して発泡性合成樹脂粒子とするのが好ましい。このようにして得られた発泡性スチレン系樹脂粒子においては、残存モノマーが500ppm以下と少なく、低VOC樹脂といわれるものが最も好ましい。
発泡性合成樹脂粒子は、予備発泡するか又は予備発泡しないで使用するが、蒸気等により加熱して予備発泡するのが、良好な発泡成形体を得るのに最も好ましい態様である。一般に使用される発泡性合成樹脂粒子の粒径は、例えば発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の場合、0.2〜4.0mmが好ましく、更に0.5〜2.0mm程度が好ましい。発泡倍率は1.6〜300倍程度が好ましく、更に5〜60倍程度が好ましい。発泡性ポリスチレン系樹脂を用いる場合、分子量は10〜50万が好ましく、更に好ましくは25〜35万あるが、これらに限定されるものではない。
発泡剤としては、C3以上C5以下の炭化水素であるプロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンなどの脂肪族炭化水素類を用いることが好ましい。さらに、およびジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類などの揮発性発泡剤が使用できる。また、これらの発泡剤を併用することもできる。
本発明の製造方法において使用する金型は、少なくとも金型の一部に加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えている。
また、一般的な金型にある蒸気吹込孔を有していても良く、この蒸気吹込孔の開口率は、通常の金型の蒸気吹込孔の開口率が使用できる。例えば、好ましくは0.005〜30%、更に好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.6〜12%である。開口率を低くすると、成形体表面状態が美麗になるが、成形における前加熱工程、後加熱工程、冷却工程等に時間が掛かる傾向が生ずるので、適当な開口率を適宜選択すれば良い。雄金型および雌金型の両金型に蒸気吹込孔を設けるのが、良好な成形体を短時間で得るのに最も好ましいのであるが、一方の金型を蒸気吹込孔無しとし、他方の金型のみに蒸気吹込孔を設けることも可能である。
例えば、具体的には図1に示すように構成される。一対の金型(雌金型11、雄金型12)は、図示していないインサイドプレートを介してフレーム81、82にボルト等で固定され、さらにフレームにバックプレート91、92を取り付けることによって、金型11、12の背後にはそれぞれ蒸気室61、62が形成される。そしてこの一対の金型11、12により、成形空間3を形成し、図2に示すように、成形空間3に発泡性合成樹脂4を充填した後、該発泡性合成樹脂を加熱融着させて発泡体を得る。
この一対の金型11、12には複数の蒸気吹込孔51、52が設けられており、図3に示すように蒸気弁511、512を開き、蒸気室61、62に導入された水蒸気は、蒸気吹込孔51、52から成形空間3へ吹込みされ、発泡性合成樹脂を加熱発泡成形する前加熱工程が実施される。この前加熱工程における好ましい水蒸気の吹込み方としては、まず蒸気弁511を開けると同時にドレーン弁522を開け他の弁は閉めて、成形空間3内や蒸気室61、62内の空気を蒸気圧で外部へ排出させた後、511、512を開の状態にして、その他の弁を全て閉じ、成形空間3及び蒸気室61、62を蒸気加圧環境下において、均一且つ迅速に成形空間3内の発泡粒子を加熱融着させることが好ましい。また、蒸気室内の空気を追い出すには、前記とは逆に蒸気弁512を開けると同時にドレーン弁521を開け他の弁は閉めて行ってもよく、さらにはその両方を組み合わせて順次行っても良い。前加熱工程において発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上、好ましくは、+0.08MPa以上とすることで該発泡性合成樹脂を発泡させる。
この発泡圧力とは、成形空間3内で発泡性合成樹脂が蒸気により加熱され、膨張して発泡する際の圧力であるから、この発泡圧力を測定するには、例えば、発泡成形の際に、発泡性合成樹脂が金型に対して作用する圧力を測定することにより測定することが出来る。実際には、本発明においては、金型に対して作用する圧力を、面圧センサーにより測定した樹脂面圧を発泡圧力としている。しかし、発泡圧力の測定は、この方法に限定されないことは当然である。
この樹脂発泡圧力を得るために、成形空間3に吹込む蒸気の圧力をコントロールするが、発泡性樹脂の特性により、該圧力設定値は大きく変わる。例えば、発泡性スチレン系樹脂で言えば、吹込む蒸気圧力は、蒸気室61、62内の圧力にて、例えば0.01〜0.15MPa程度が好ましく、更には、0.05〜0.10MPa程度の範囲内にてコントロールすることが好ましい。このときの金型の成形空間側の表面温度としては、80〜120℃程度とすることが好ましく、さらには100〜115℃程度とすることが好ましい。
本発明では、この前加熱工程を行い、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上、好ましくは、+0.08MPa以上に維持したまま、図4に示すように、金型11、12の一部に設けた加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部71、72に加熱媒体導入弁551を開き、加熱媒体排出弁531は加熱媒体の特性に応じて開閉し、加熱媒体を流す後加熱工程を実施する。このとき、前記発泡圧力を保てるのであれば、蒸気の吹込みは511、522の蒸気弁を開いたままとすると共に他の弁は閉めて蒸気室への蒸気の吹込みを継続したままでも良いし、全ての弁を閉じて蒸気の吹込みを中断させた状態でも良い。加熱媒体の温度は発泡性合成樹脂の溶融温度以上であることが好ましい。
後加熱工程に用いる、加熱媒体は一般的なものであればよく、たとえば、オイルや水(水蒸気)が例示でき、これらを使用することが好ましい。例えば、加熱及び冷却媒体として、水及び水蒸気を使用する場合、0.5MPa程度の蒸気は一般の発泡スチロール成形工場内で十分供給可能なエネルギー源であるため、特別に温調機や加熱、冷却媒体の切り替え設備などを揃えなくとも、例えば、工場の蒸気メイン配管より枝取りし、減圧弁、電磁切替弁を取り付けるというような極めて安価で、省スペースな手段を採ることが可能となる。例えば、発泡性スチレン系樹脂で言えば、加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部に吹込む水蒸気圧力は、蒸気室内の圧力にて、0.15〜0.5MPa程度が好ましく、金型の成形空間側の表面温度としては、120℃から160℃程度とすることが望ましい。
この後加熱工程においては、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上に維持しているので、必要な発泡力を維持したまま、発泡性合成樹脂の溶融温度以上に加熱された金型11、12に接触している発泡体表面は溶融し、背後からの発泡圧力によって金型方向に押圧される。したがって、高い密度を有し充分な厚みを有する表面硬化層を形成し得る。
空間部71、72の形状は特に限定されることはなく、図1および図2に示すように成形空間3の背面全体の大部分に凹欠部を設けることによる、一つの単純なボックス状の空間でも良いし、溝を穿つことにより、流路空間を形成する構造としても差し支えない。これらの空間部形状の形成方法も特に限定されることはないが、ブロック状の部材に凹欠部を設けたものどうしを組合せる、または凹欠部を設けた部材と平板を組合せる、平板どうしを組合せる等、1種以上の部材を組合せて形成すれば、金型製作が容易になり、製作コストも低減出来る。また、成形空間3の背面側の金型11、12内に配管を埋設し、その同一配管内に、加熱時には加熱媒体を、冷却時には冷却媒体を流してもよい。こうした空間部の構造は、加熱、冷却媒体の特性に合わせて適切な形状を選択すればよい。
本発明では、こうした空間部71、72の構造から、空間部71、72について、たとえば、凹欠部を広く、あるいは溝、管内径の幅を広く、ないしは溝、管の数を多くすること等によって金型背面に多くの面積を占めさせることが可能であることから加熱面積かつ、冷却面積を大きく取ることができる。しかも、空間部71、72は、加熱媒体、冷却媒体の切り替えにより、表面硬化層の場所による厚みバラツキを低減できる。
加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部71、72の製作方法も、特に限定はないが、たとえば、金型11、12の成形空間3に対する背面側に、全体的に凹欠部を設けて空間を設ける、または溝を穿いた後、金型の背面を裏板で覆うことで作成することができる。また、必ずしも金型背面側に凹欠部を設けるのみではなく、裏板側にも凹欠部を設け空間部を形成することも出来る。すなわち、金型背面及び/又は裏板に凹欠部を設け空間部を形成することが出来る。また、金型背面に、板状のアルミ材でボックス状の囲い、空間部を形成することも可能である。上述の方法による金型の作成においては、金属ブロックを切削加工して空間部を形成することが、一般的に強度が高い材料を選択できるため金型の肉厚を薄く出来、伝熱が良好な金型が容易に形成しうるので好ましい。そして、こうして形成された空間部を有する金型には、必要に応じて蒸気吹込孔が設けられる。また、金型の成形空間側表面に鏡面加工を施した金型を使用すると、得られた成形体表面の美麗性が向上するため好ましい。金型の成形空間側表面にシボ加工、つや消し加工等を施した金型を使用すると、シボ表面や、つや消し表面を有する成形体が得られる。本発明で得られる成形体は、金型表面の転写性が極めて優れているため、金型の表面に何らかの加工を行えば、それに応じた忠実な成形体表面を容易に得ることが出来る。金型の成形空間側表面へは、前記した鏡面加工、シボ加工、つや消し加工等の他に、テフロン(登録商標)加工、メッキ加工等、どのような表面処理を行うことも自由であり、いずれの処理の場合にも好ましい結果を得ることが出来る。
前記の後加熱工程を行った後は、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満にする冷却工程を行う。すなわち、空間部に流れている加熱媒体を図4に示す加熱媒体導入弁551を閉め、さらに加熱媒体排出弁531を閉めることにより空間部を流れる加熱媒体を停止し、同一媒体をより低温に設定した媒体、即ち、冷却媒体を図5に示す冷却媒体導入弁552を開き、冷却媒体排出弁532を開けることで流して、冷却する冷却工程を実施する。この冷却工程において、発泡性合成樹脂の表面溶融を停止させると共に、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満に低下させて発泡の進行を停止させる。この際、加熱媒体より温度の低い同一媒体による冷却を同一空間部71、72で行うことにより、本発明においては成形面に位置する金型の表面温度が場所によるバラツキを受けにくく、表面硬化層厚みを均一にコントロールしやすいため好ましい。また、装置も単純化し得るので、工業的に驚くべき効果を発揮することが出来る。
更に本発明の冷却工程においてさらに好ましい態様では、先の後加熱工程で加熱媒体を導入した空間部71、72に冷却のための冷却媒体を流すとともに、蒸気室61、62内に配備した冷却水パイプに取り付けた冷却水ノズル7より冷却水弁571、572を開くことで雄雌金型11、12の背面、特に金型背面全体に冷却水を噴霧する。あるいは、冷却水噴霧後、真空弁581、582を開き、他の弁を閉じることで、蒸気室を真空下に置き、冷却水を気化させる真空冷却を併用して、さらに表面硬化層厚みのコントロールを容易にすることが可能である。冷却水の温度は、例えば0〜80℃程度の範囲で実施するのが好ましい。この際、前記したごとく、水だけによる伝熱冷却でもよいし、更に、水を真空蒸発させて冷却させる真空冷却を併用しても良い。
なお、本発明における表面硬化層厚みは、成形条件、金型設計、使用する原材料の選定でコントロール可能であると共に、表面硬化層の厚みバラツキについては、発泡成形体表面全般について、従来の表面硬化層付き成形体に比べて、例えば底部、側壁部といった同一面上での厚みバラツキが小さく出来る。
本発明において表面硬化層の厚みバラツキは、合成樹脂発泡体の少なくとも一表面を複数個所、好ましくは20箇所測定して得られる、表面硬化層の厚みの平均値と標準偏差から算出した変動率をもって評価することが出来る。本発明において表面硬化層の厚みの変動率は、30%以下であることが好ましく、更に好ましくは25%以下、もっとも好ましくは20%以下に制御することが可能である。なお、本発明において、変動率は以下の計算式によって得られるものである。
変動率(%)=(標準偏差/平均値)×100
本発明の製造方法で得られる合成樹脂発泡体は、既述ごとき表面美麗性、光沢性、非汚染性、防水性、撥水性、耐傷性、防音性、強度等の優れた特性を有することで、様々な用途において広く使用可能であり、特に限定はないが、例えば、容器、農業用資材、運輸手段用部材、建築用部材、住宅設備用部材等に好適に使用することができる。
本発明の発泡合成樹脂成形体は、光沢性を含む、優れた表面美麗性を有しているため、容器として好適に使用することができ、具体的には、魚介類等の水産物、野菜、果物等の農産物、菓子、惣菜等の食料品用容器が挙げられる。このような用途に使用することで、全体として高級感を持たせることが出来、運搬、保管だけでなく、展示兼用箱としても使用することが出来る。また、汚れが付きにくい上に落としやすいため、衛生的であり、耐傷性・突き刺し強度も向上することから、通い箱、リターナブル容器としての使用に効果的で、合成樹脂を適切に選択すれば米飯や惣菜を合成樹脂発泡体に直接入れることも可能となる。さらに、防水性が向上するため、生きた魚介類などを海水等と共に運搬する際にも、品質の改善が可能となる。
農業用資材としては、具体的には、水耕栽培や露地栽培に用いる各種資材等が挙げられ、さらに詳細には、育苗箱、育苗ポット、定植ボード、水耕栽培ベッド、植木鉢、プランター等が挙げられる。中でも育苗箱、定植ボードに最適に用いることができる。本発明の発泡合成樹脂成形体が農業用資材に好適に使用することができるのは、以下の理由による。
従来の通常の発泡樹脂製資材においては、ミクロに観察すれば、融着した発泡粒子界面および界面間には、隙間(ボイド)が多数存在している。このような発泡粒子界面やボイドに入り込んだ混入物や没入した根に付着した根腐菌等の病原菌が、再使用される資材を通じて、新しい植物に感染し、病虫害の発生等の甚大な被害を生じさせる。これらの感染を防止するため、一度使用した各種資材は、充分に洗浄し、更に、55〜60℃の温水で殺菌処理を行っている。しかし、一旦、発泡粒子界面やボイドに入り込んだ混入物や根は洗浄等により完全に除去することは殆ど困難であること、また、このため、洗浄後に温水での殺菌処理を確実に行わなければならない等の問題が存在した。しかし、本発明の合成樹脂発泡体では、良好な表面硬化層を有しているため、発泡粒子界面やボイドへの根の入り込みはほぼ阻止できる。このことから、農業用資材に付着した汚染物や発泡粒子界面・ボイドに没入しようとした根は洗浄により、容易に除去できる。従って、洗浄時間が短縮でき大きな合理化が可能となる。加えて、良好な表面硬化層の存在により、農業用資材表面の損傷が少なく、強度も高いことから、資材を繰り返し使用できる回数が増加することにより、コスト低減に大きな効果を及ぼす。また、表面が美麗であることから鉢やプランターなどにも使用できる。光線等による劣化を防止したい場合には、ポリメタクリル酸エステル系樹脂等の耐候性のある合成樹脂を用いると劣化低減に有効である。
工業用途では、工業部品等を運搬・保管するトレイに使用することで、耐傷性及び非汚染性により、工業部品の汚れが少なくなるとともに、トレイの使用回数も増やすことが出来る。
また、住宅設備用部材として、本発明の発泡合成樹脂成形体の有する防水性を利用して、エアコン用ドレンパン、浴室、洗面台等の水回り機器用途の防水パン、浴槽・浴室断熱材、あるいはトイレ用防露タンク等が挙げられ、中でも、エアコン用ドレンパン、トイレ用防露タンク、浴槽・浴室断熱材に有効に使用できる。
本発明の発泡合成樹脂成形体は、自動車等の車輌や航空機等の運輸手段用部材としても好適に使用することができる。断熱性、緩衝性、遮音性を有しているためこれらの性能が必要とされるような箇所に広く利用できる。例えば、フロアレベラー、ラゲージボックス、バッテリーボックス、ティビアパット、バンパーコア材等が挙げられる。中でもフロアレベラー、ラゲージボックス、バンパーコア材に好適に使用することができる。
従来、合成樹脂発泡体は、自動車部材として断熱材、緩衝材、遮音材として、現行も使用されているが、特に、発泡ポリスチレンは、特有のキュッキュッという擦れ音が発生するため、使用が困難、或いは、別部材と張り合わせて使用されてきた。
本発明で得られる発泡合成樹脂成形体を用いると、擦れ音が低減、場合によっては無くなる。したがって、比較的安価な発泡合成樹脂を運輸手段用部材として使用できるので工業的に非常に有用である。また、これまで合成樹脂発泡体の外観の悪さから使用が避けられるような小物入れや玩具入れ等、さらには安全用衝撃吸収材等にも使用が可能となる。
建築用部材としては、具体的には、ボイドスラブ等の埋込材、打込型枠、あるいは化粧型枠等が挙げられ、これらの用途に好適に使用される。化粧型枠として使用した場合には、化粧型枠表面に、表面硬化層が存在するのでコンクリートの表面性が著しく良好となると共に、型枠の剥離性がよく、しかも、再使用回数が増加する。
また、従来の埋込材においては、埋込材がコンクリート内に浸漬された状態において、発泡体内の空気が気泡として、コンクリート内部に混入して気泡痕を発生する等の問題が指摘されてきたが、本発明の埋込材では良好な表面硬化層が形成されているので、これらの問題の発生が大幅に低減出来るか、あるいは全面解決出来る。
また、盛土ブロックを施工する際、太陽光がブロック表面に反射して、眩しいという問題があるが、金型転写性が良いことを利用して発泡体表面に例えば小さな凹凸等をつけることで、太陽光を分散し、強い反射光をやわらげることも出来る。
そして、どのような用途に使用しても、他素材との複合物でないことから、リサイクル性が優れるので環境適合性の観点からも極めて好ましい。
以上に記した本発明の合成樹脂発泡体が良好に使用される用途において、合成樹脂発泡体の表面に、均一な表面硬化層が形成されていることが重要である。このため、発泡粒子界面間に隙間が殆どないことが好ましい。発泡粒子界面間の隙間を評価するための手法として、公知の方法で評価することも可能であるが、本発明においては、2%のアルキルアミンオキシド溶液に接触させ、室温にて放置した際、少なくとも3時間、好ましくは少なくとも5時間、より好ましくは少なくとも7時間、最も好ましくは少なくとも10時間、2%のアルキルアミンオキシド溶液が漏出しない表面硬化層であれば、発泡粒子界面間の隙間が無いといえる。この特性については、後の実施例にて詳細に説明する。
また、本発明の合成樹脂発泡体で得られる表面硬化層は、合成樹脂発泡体の少なくとも一面を測定した場合、表面硬化層の厚みが170μm以上、好ましくは200μm以上であり、その標準偏差が200以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下というように極めてバラツキが少ない。この特性についても、後の実施例にて詳細に説明する。
次に、本発明の実施例を説明するが、これらは単なる例示であるので、本発明を制限、限定する物ではない。
なお、以下の実施例において、雄雌金型の材質としては、強度が高く、加工精度も高くなる特徴があるアルミブロック材(引張強さ30kg/mm2)を使用した。本実施例で使用した発泡性合成樹脂は、ポリスチレン発泡粒子〔株式会社カネカ製、商品名:カネパールLVF−B、発泡倍率30倍〕である。
また、本実施例により成形した合成樹脂発泡体の成形品寸法は、縦外寸500mm×横外寸350mm×高さ外寸100mm(肉厚20mm)である。なお、本実施例で使用した成形機は、一般に発泡スチレン用成形機として販売されている小型の成形機(ダイセン工業製KR−57)である。各評価は以下のようにして行った。
(1)表面硬化層平均厚み(μm)・厚みバラツキ・変動率
表面硬化層を有する箱成形体の底部分において、成形体長手方向の200mm直線部を切り取り、10mm間隔で20ポイント測定した値の平均値と標準偏差を算出した。
平均値・標準偏差を用いて下記式から変動率(%)を算出した。
変動率(%)=(標準偏差/平均値)×100
(2)蒸気吹込孔開口率(%)
金型表面10cm2に対する蒸気吹込孔の合計面積の割合を求めた。
(3)表面美麗性
成形体表面の美麗性を1〜5の5段階にて目視評価した。ここでは、5が最も美麗である。
(4)光沢度
○:物体が鏡のように写り込む程度の光沢有り。
△:鏡のように物体は写り込まないまでも若干の光の反射が確認出来る程度
×:全く光沢なし
として目視で評価した。
(5)表面硬度
アスカー硬度計にて測定を行い、内側、外側の内壁及び外壁面それぞれ6点測定した平均値を示した。
(6)曲げ弾性率、曲げ強度
成形体底部から縦278mm、横75mm、厚み20mmの大きさでテストピースを抜き取り、JISA9511に準拠し、定歪速度式万能試験機にて測定した。測定数量は10とし、表にはその平均値を示した。
(7)圧縮弾性率、圧縮強度
成形体底部から縦50mm、横50mm、厚み20mmの大きさでテストピースを抜き取り、JISA9511に準拠し、定歪速度式万能試験機にて測定した。測定数量は10とし、表にはその平均値を示した。
(8)中心部発泡倍率
成形体底部を300mm×300mmの大きさで切り取り、その部分について、表面硬化層を表面から約2mm削り落とした残りの部分の重量を測定するとともに、該部分の体積を測定した結果より、密度を算出し、その逆算値を発泡倍率とした。なお、体積は、500mm×500mm×500mmの大きさのケース内に水を満たし、該成形体部分を水没させたときに該ケースより溢れ出した水の体積を測定した。
(実施例1)
本実施例で使用した発泡性合成樹脂は、発泡性ポリスチレン粒子(株式会社カネカ製、商品名:カネパールLVF−B、発泡倍率30倍)である。
また、本実施例により成形した合成樹脂発泡体の成形品寸法は、縦外寸500mm×横外寸350mm×高さ外寸100mm(肉厚20mm)である。なお、本実施例で使用した成形機は、一般に発泡スチレン用成形機として販売されている小型の成形機(ダイセン工業製KR−57)である。
この実施例1では、図1に示す構成を持つ金型に、成形品表面硬化層を形成するため、空間部に、加熱媒体及び冷却媒体としてサーモオイル(出光興産サーモオイル32)(以下、単にオイルと略称する)を使用した。加熱媒体としては、180℃に加熱コントロールした高温オイルを用い、冷却媒体としては、60℃に加熱コントロールした低温オイルを流した。金型の肉厚は、10mmとした。
そして、オイルの温度コントロールは、松井製作所製オイル温調機(AX−200)を使用し、更に、図7に示すようなオイル切替装置を設け、高温オイルと低温オイルを切り替えて図1、図7に示す金型の空間部71、72にオイルを供給した。
このようにオイル切替装置により、高温ラインと低温ラインの2ラインに分割されており、それぞれ、オイル温調機111、121、及び50Lのオイルタンク121、122、および切替弁131、141、151、132、142、152を有している。
空間部71、72にオイルを流さない待機中は、高温ラインでは131、151の切替弁を閉め、141の切替弁を開けることで、オイル温調機内に配備されているポンプにより、オイルをライン中にオイル圧約0.22MPaにて循環させることによりオイル温度を180℃に温調した。
一方、低温ラインでは132、152の切替弁を閉め、142の切替弁を開けることで、オイルを循環させて温度を60℃に温調した。
具体的な成形操作としては、次のような手順にて行った。まず、成形空間に発泡粒子を充填した後、前加熱工程として、蒸気室から蒸気吹込孔を通して、成形空間内へ0.055MPaの蒸気を吹込むことで、成形空間内の発泡粒子を発泡融着させ、発泡圧力を0.085MPaとした。ここで記す発泡圧力とは発泡性合成樹脂が蒸気により加熱膨張して、発泡する際、発泡性合成樹脂が金型に対して作用する圧力、すなわち樹脂面圧のことであり、面圧センサーにより測定している。また、このときの成形空間側の金型温度は、110℃程度まで上昇した。但し、0.055MPaの蒸気を吹き込んで蒸気室や成形空間内を加圧下に置く前には、発泡スチロールの成形工程で一般的に行う、いわゆる一方加熱又はタイムラグ加熱と称される工程を踏んでおり、蒸気室内及び予備発泡粒子間の空気を、蒸気圧を利用して外部へ逃がし、均一かつ迅速に融着させる方式をとっている。
続いて、成形品表面を溶融させる後加熱工程では、発泡粒子の発泡力を維持するために、蒸気吹込を継続することで0.055MPaの蒸気圧での加熱を維持しながら、空間部に180℃の高温オイルを流した。このため、図7における切替弁141を閉め、131(図4の551に相当する加熱媒体導入弁)、151(図4の531に相当する加熱媒体排出弁)の切替弁を開けることにより、金型内の空間部に接続しているフレキシブルホース100からの高温オイルの流動を可能にした。後加熱工程にかけた時間は60秒であり、この60秒経過後、180℃の高温オイルは金型への放熱等により145℃まで低下した。その際、成形空間側の金型表面温度は、約20秒の経過で110℃から130℃程度まで直線的に上昇し、その後約40秒の経過で130℃から除々に温度上昇し、140℃程度まで達した。また、成形品表面を冷却硬化させる冷却工程では、空間部に60℃の低温オイルを流した。このため、図7の高温ライン中の切替弁141を開け、131、151の切替弁を閉じると共に、低温ライン中の切替弁132、152を開け、切替弁142を閉めることで、フレキシブルホース100からの低温オイルの流動を可能にした。また、本実施例の冷却工程では、空間部に60℃の低温オイルを流し、さらに、蒸気室内に配備された冷却水ノズルから約45℃の冷却水を噴霧して冷却効率を高めた。該冷却工程には、8秒かけた。さらに、成形室空間及び蒸気室内を真空下(約−600mmHg;ゲージ圧)に置き、冷却水の蒸発を加速させ、発泡圧力が0.03MPaになったところで、成形品を取り出した。該真空冷却工程は、55秒行い、冷却工程ではトータル63秒かけた。
表2から解るように、実施例1の成形体の底部分では、平均厚みが759μmの表面硬化層が形成された。この厚みの表面硬化層を形成し得たことにより、比較例1に対して、表面硬度では、外側面平均で75から80になり、内側面平均で70から80になった。また、曲げ弾性率は2.15MPaから4.69MPaに、曲げ強度は0.055MPaから0.077MPaになった。又、比較例1のごとき通常発泡成形品の表面に一般的に見られる、発泡粒子の相互融着により発現する界面の模様が、実施例1の表面硬化層においては非常に目立たなくなっていた。さらに、表面硬化層の形成は、発泡粒子の溶融を伴うので、金型表面状態の発泡成形品表面への転写性の向上を促し、このため、比較的表面粗さの小さいアルミ材の使用を可能とすると表面美麗性が大いに向上した。
また、後述の比較例2と対比すると、表2に示すように表面硬化層の厚みバラツキが大幅に改善されていることがわかる。具体的には比較例2は表面硬化層の変動率が57.0%であったものが、本実施例では、表面硬化層厚み平均値759μm、標準偏差が78.6となり変動率は10.4%であった。また、成形体の表面もメルトの発生もなく、著しく美麗になった。これは、高温、低温媒体を同一空間部に切替導入したことにより、金型表面の温度ムラが減少したことが大きな要因である。
(実施例2)
実施例2では、後加熱工程において実施例1のように空間部に高温オイルを循環させる替わりに、約0.3MPaに調圧した蒸気を導入した。吹込み温度としては約150℃であった。使用した金型の基本構成は、実施例1と基本的に同じであるが、空間部に最大0.3MPaの蒸気圧をかける必要があるため、金型の肉厚を15mmにした。成形手順は基本的に実施例1と同様であり、前加熱工程での発泡圧力が0.090MPaになったところで、後加熱工程に入り、蒸気室に0.055MPaの蒸気を吹込みながら、50秒間、空間部へ0.3MPaの蒸気圧をかけた。成形空間側の金型表面温度は、110℃程度から約10秒程度で、145℃程度に達し、ほぼその温度を維持した。更に冷却工程においては、実施例1の冷却オイルの替わりに約45℃の冷却水を流した。
その結果、表2に示すように、平均表面硬化層厚み、厚みバラツキ、表面硬度、強度、美麗性ともに、実施例1と同等の物性のものが得られた。
0.3MPa程度の蒸気で実施例1と同等の物性の成形体が得られることは、工業的には非常に価値が高く、本発明の好ましい態様である。
(実施例3)
実施例1、2では、雄雌金型の両方に表面硬化層を形成させる例を示したが、本実施例では片方のみに表面硬化層を形成させた例を示す。すなわち、実施例2の雄金型の込孔をすべて塞ぎ、一方、雌金型には空間部を設けず、一般的な発泡樹脂型内成形に用いる雌金型を用いた金型構成にて、発泡成形品の内面のみに表面硬化層を形成することを行った。前加熱工程において、雌金型に敷設した蒸気吹込孔からのみ成形空間内に約0.055MPaの蒸気を30秒吹込み、発泡粒子を発泡させた。発泡圧力が0.085MPaになったところで、後加熱工程に入り、雄雌両蒸気室へ0.05MPaの蒸気を吹込みながら、雄金型の背面にある空間部に0.3MPaの蒸気を導入し、雄金型の成形空間側表面に接触している発泡性粒子のみ溶融させた。また、冷却工程においては、雄金型の背面にある空間部に約45℃の水を流すとともに、雄、雌両金型共に蒸気室内の冷却水ノズルより、約45℃の水を噴霧することで、発泡圧力を0.03MPa以下にし、成形品を取り出した。実施例3では、真空冷却は行わず、水でのみ50秒間、冷却を行った。
その結果、発泡成形品の内面は、蒸気吹込孔の跡が全く無い非常に美麗な表面硬化層を得るとともに、この表面硬化層の厚みが759μmとなったことにより、内面側の表面硬度は、表1に示すように実施例1、2と変わらない結果を得ることが出来た。また、曲げ弾性率は、後述の比較例1の2.15MPaより1.00MPa向上し、3.15MPaになった。曲げ強度についても比較例1の0.055MPaより0.006MPa向上し、0.061MPaになった。
内側のみに表面硬化層を必要とする用途であれば、前記方法を用いて成形可能であり、金型費用及び加工費もダウンするので、経済的である。
また、蒸気吹込孔跡、つまり表面突起物が全く無いことから、外的要因によって、突起状の蒸気吹込孔跡が剥がれ落ちることも無くなり、例えば総菜などを直接発泡容器に入れるような場合においても、発泡樹脂の粉が発生せず衛生面が非常に向上する効果が発揮される。
(実施例4)
実施例2で用いた金型の表面を市販のフェルトディスク(トラスコ中山(株)製フェルトミニディスクGFN50M)と油脂研磨材(青棒:酸化クロム)にてバフ仕上げをし、鏡面加工を施した。成形条件は、実施例2と全く同一条件であり、強度物性なども同等であった。いったん成形体表層面を加熱溶融させると成形体表面への金型表面の転写性が著しく向上し、金型の鏡面加工を施すことによって、金型表面の光沢が発生し、その光沢が成形品表面に転写され、視覚的に極めて美麗な成形体を得ることが出来た。成形体の表面硬度や強度を高めた上に、光沢ある表面性を得ることで、従来の発泡スチロールでは出しえなかった高級感が引き出され、商品陳列用のケースなどに好適に用いることが出来る。
(実施例5)
前加熱工程、後加熱工程は、実施例1記載の通りに実施し、冷却工程のみ変更した。すなわち、冷却工程において、空間部に60℃の低温オイルを流すと共に、蒸気室内に配備された冷却水ノズルから約45℃の冷却水を噴霧して冷却効率を高めた。該冷却工程には、60秒かけた。従って、真空冷却を行わない実施である。表面硬化層を形成する本実施例においては、真空冷却よりも水冷の方が操作しやすい傾向であることが判明した。この結果として、表2に示された実施例1の特性と同等の結果が得られた。
(実施例6)
実施例2において、以下の点を変更して成形を行った。後加熱工程において、空間部に約0.3MPaに調圧した蒸気に変え、約0.4MPaに調圧した蒸気を導入した。そして、吹込み温度は、150℃から約155℃となった。前加熱工程での発泡圧力が0.090MPaになったところで、後加熱工程に入り、蒸気室に0.055MPaの蒸気を吹込みながら、35秒間、空間部へ0.4MPaの蒸気圧をかけた。加熱媒体温度は表示の152℃から155℃に上がった。成形空間側の金型表面温度は、110℃程度から約10秒程度で、150℃程度に達し、ほぼその温度を維持した。更に冷却工程においては、実施例1の冷却オイルの替わりに約45℃の冷却水を流すと共に、蒸気室内に配備された冷却水ノズルから約45℃の冷却水を噴霧して冷却効率を高めた。該冷却工程には、60秒かけ、真空冷却は行わなかった。この結果は、表2に示された実施例2の特性と同等の結果が得られたが、実施例6での成形は実施例2よりも操作性が良好であった。
(実施例7)
実施例3において、以下の点を変更して成形を行った。後加熱工程において、空間部に約0.3MPaに調圧した蒸気に変え、約0.4MPaに調圧した蒸気を導入した。前加熱工程での発泡圧力が0.090MPaになったところで、後加熱工程に入り、蒸気室に0.055MPaの蒸気を吹込みながら、35秒間、空間部へ0.4MPaの蒸気圧をかけた。加熱媒体温度は表示の151℃から155℃に上がった。冷却工程においては、雄金型の背面にある空間部に約45℃の水を流すとともに、雄、雌両金型共に蒸気室内の冷却水ノズルより、約45℃の水を60秒間噴霧することで、発泡圧力を0.03MPa以下に冷却を行い、成形品を取り出した。実施例7の結果は、表2に示された実施例3の特性と同等の結果が得られたが、実施例7での成形は前記実施例3よりも操作性が良好であった。
(実施例8)
実施例4において以下の点を変更して成形を行った。後加熱工程において、空間部に約0.3MPaに調圧した蒸気に変え、約0.4MPaに調圧した蒸気を導入した。前加熱工程での発泡圧力が0.090MPaになったところで、後加熱工程に入り、蒸気室に0.055MPaの蒸気を吹込みながら、35秒間、空間部へ0.4MPaの蒸気圧をかけた。加熱媒体温度は表示の151℃から155℃に上がった。冷却工程においては、雄金型の背面にある空間部に約45℃の水を流すとともに、雄、雌両金型共に蒸気室内の冷却水ノズルより、約45℃の水を60秒間噴霧することで、発泡圧力を0.03MPa以下に冷却を行い、成形品を取り出した。実施例8の結果は、表2に示された実施例4の特性と同等の結果が得られたが、実施例8での成形は実施例4よりも操作性が良好であった。
(比較例1)
比較例1として、図8のような一般的な従来の発泡スチロール成形用金型を用い、実施例と同一寸法の成形体を一般的な発泡スチロールの成形工程にて成形を行った。成形手順としては、発泡粒子を成形空間内へ充填した後、0.055MPaまで一方加熱を行い、続いて0.1MPaの蒸気を吹込み、発泡粒子を発泡融着させた後、8秒の冷却水ノズルからの冷却水噴霧と55秒の真空冷却をもって、成形工程を終了した。その結果、表面硬化層厚みは20μmで、表面硬度は、外側の平均が75、内側の平均が70であった。曲げ弾性率は、2.15MPa、曲げ強度は0.055MPa、圧縮弾性率は0.76MPaで、圧縮強度0.025MPaであった。
(比較例2)
比較例2では、図9に示すように、15Aサイズの高温オイルパイプ611、612と低温水パイプ621、622を別々に鋳込んだ金型(アルミ材:AC4Aを使用)で成形を行った。成形手順としては実施例1と同じなので、詳細は割愛するが、高温オイルパイプと低温水パイプが別ルートになっており、後加熱工程では、高温オイルパイプ611、612に180℃の高温オイルを流し、冷却工程においては、高温オイルは高温パイプ中に残したまま、低温水パイプ621、622に45℃の水を流した。冷却の際は、蒸気室内に配備した冷却水ノズル7からも45℃の水を金型へ噴霧した。その結果、実施例1と同等の750μmもの表面硬化層厚みを得ようとすると、成形品表面の樹脂が溶けて表層面がガタガタになる状態、いわゆるメルトが発生し、著しく表面美麗性が損なわれた。また、メルトした部分では成形品の肉厚も小さくなり、成形体表面が凹む現象が発生し、商品価値がない状態で出来上がった。
さらに、表面硬度、曲げや圧縮の強さについては通常発泡成形(比較例1)よりも劣る結果となった。
(比較例3)
比較例2では、商品と成り得る成形品が出来なかったことから、図9に示す構成を持つ金型において、表面硬化層にメルトが発生しない成形条件を探索した。その結果、表面硬化層厚みを約150μmにまで抑えれば表面硬化層にメルトが発生しないことがわかった。厚みのバラツキの変動率は、39.2%であった。表面硬化層が形成されたことにより、表2に示すように比較例1よりも表面硬度、曲げ弾性率、曲げ強度が向上することが確認できた。しかし、光沢度は比較例1と同様、全く光沢なしである「×」のレベルであった。
Figure 2008012671
Figure 2008012671
(実施例9)漏れテスト
実施例3と同様の装置を用い、樹脂としては、発泡性ポリスチレン粒子〔株式会社カネカ製、商品名:カネパールLVF−B、カネパールHD−B、発泡倍率は、表3の通り〕を使用し、成形操作は、実施例7と同様にして、箱内面に表面硬化層を有する外寸301×605×40Hの肉厚12mmの水耕用の育苗箱を成形した。この育苗箱中に2%のアルキルアミンオキシド溶液として台所用洗剤(花王(株)製、商品名マジックリン)を満たし、室温で放置して、育苗箱の外面に台所洗剤が漏れ出してくるまでの時間を測定した。結果を表3に示す。
発泡倍率が高いテストの方が、漏れはじめる時間が短いのは、このテストで用いた育苗箱の肉厚を12mmと一定としたため、後加熱工程で溶融して表面硬化層を形成する樹脂量が、発泡倍率が高いほど少なくなるためである。従って、単に、漏れ出してくるまでの時間を長くするには、育苗箱の肉厚を厚くするか、あるいは、成形時に使用する樹脂の発泡倍率を低くすればよい。しかし、本実施例では、どの程度の漏れ開始時間であれば、本発明で利用する用途に充分であるかを明確化するために、あえて、厳しい条件にて種々の表面硬化層を形成させてテストした。
Figure 2008012671
(実施例10)育苗箱の成形と栽培及び洗浄
実施例2と同様の装置を用い、発泡性ポリスチレン粒子(商品名:カネパールHD)を12倍に予備発泡したものを、実施例9で使用した育苗箱と同一形状の金型で育苗箱を、実施例6の条件にて成形した。但し、実施例9とは異なり、全表面に表面硬化層を設けた。次に、これらの育苗箱に培養液を入れ、厚み30mmのウレタンマットを浸漬した後、ミツバを播種し、4段重ねにして、23℃に設定した育苗機中で10日間育苗した。その後、積重ねを解き、緑化させて育苗を終了した。
使用後の育苗箱は、水を用いてブラシで手洗いした後、60℃の温水で30分間浸漬して消毒した。本発明の表面硬化層を有する育苗箱は、毎回、汚染が簡単に除去でき、10回の使用後も表面状態は極めて良好で、付着汚染も存在せず、何らの障害も生じなかった。これに対し、表面硬化層を有さない従来の育苗箱は、毎回の汚染除去も充分でなく、10回の使用後には、発泡粒子界面間やボイドへ混入物が入り込んだため、汚染の除去は困難であった。
(実施例11)定植ボードの成形と栽培及び洗浄
また、実施例2と同様の装置を用い、発泡性ポリスチレン粒子(商品名:カネパールLVF−B)を25倍に予備発泡したもので、長さ890mm×幅590mm×厚さ30mm、直径25mmの定植孔50個で全表面に表面硬化層を有する定植ボードを実施例6の条件にて成形した。
上記定植ボードを水耕栽培ベッドに戴置し、上記育苗箱で育苗したミツバの苗を定植して、ビニールハウス内で、23℃〜25℃に温度調節して、30日間栽培して収穫した。使用後の定植ボードは、ブラシ付きの機械で水を用いて洗浄後、60℃の温水で30分間浸漬して消毒した。本発明の表面硬化層を有する定植ボードは、毎回の汚染除去が簡単であり、15回の使用後も表面状態は極めて良好で、発泡粒子界面間やボイドへの付着汚染も存在せず、さらに根の没入が最も生じ易い定植孔周辺にも、なんらの根の没入も生じておらず、全く障害がなかった。これに比し、表面硬化層を有さない従来の定植ボードでは、毎回の汚染除去も充分でなく、15回の使用後には、発泡粒子界面間やボイドへの混入物が認められ、更に定植孔周辺への根の入り込みが生じており、洗浄による汚染及び根の除去は困難であった。
本発明に使用する金型の一例を示す縦断面図である。 本発明の充填工程の一例を示す成形装置の縦断面図である。 本発明の前加熱工程の一例を示す成形装置の縦断面図である。 本発明の後加熱工程の一例を示す成形装置の縦断面図である。 本発明の冷却工程の一例を示す成形装置の縦断面図である。 本発明の冷却工程の他の一例を示す成形装置の縦断面図である。 本発明の実施例1のオイル切り替え装置を示す成形装置の上面図である。 一般的な従来技術での発泡型内成形に用いる金型の一例を示す縦断面図である。 先行技術として紹介されている金型の一例を示す縦金型断面図である。
符号の説明
3 成形空間
4 発泡性合成樹脂
7 冷却水ノズル
11 雌金型
12 雄金型
51,52 蒸気吹込孔
61,62 蒸気室
71,72 空間部
111,121 オイル温調機
121,122 オイルタンク
131,141,151,132,142,152 切替弁
511,512 蒸気弁
521,522 ドレーン弁
531 加熱媒体排出弁
551 加熱媒体導入弁
552 冷却媒体導入弁
532 冷却媒体排出弁
571,572 冷却水弁
581,582 真空弁

Claims (17)

  1. 型内発泡成形による製造方法であって、少なくとも金型の一部に加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えた一対の金型から構成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填した後、成形空間に蒸気を吹込んで加熱発泡成形する前加熱工程、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上に維持し、前記空間部に発泡性合成樹脂の溶融温度以上の加熱媒体を流す後加熱工程、後加熱工程の後、前記空間部中の加熱媒体を冷却媒体に切り替えて流し、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満に低下させる冷却工程からなることを特徴とする合成樹脂発泡体の製造方法。
  2. 型内発泡成形による製造方法であって、少なくとも金型の一部に加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部を備えた一対の金型から構成される成形空間に発泡性合成樹脂を充填した後、成形空間に蒸気を吹込んで加熱発泡成形する前加熱工程を行い、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa以上に維持し、前記空間部に発泡性合成樹脂の溶融温度以上の加熱媒体を流す後加熱工程を行い、後加熱工程の後、前記空間部の加熱媒体を冷却媒体に切り替えて流すと共に、金型に冷却水を噴霧し、発泡性合成樹脂の発泡圧力を+0.04MPa未満に低下させる冷却工程を行うことを特徴とする合成樹脂発泡体の製造方法。
  3. 金型に備えた前記加熱及び冷却媒体を流動させ得る空間部が、成形空間に対して背面側に位置するボックス状、管状、溝流路状である請求項1または2記載の合成樹脂発泡体の製造方法。
  4. 該空間部が、凹欠部を設けた部材、溝を穿った部材、板状の部材の少なくとも1種以上を組合せることで形成されてなる請求項3記載の合成樹脂発泡体の製造方法。
  5. 加熱及び冷却媒体がオイルである請求項1〜4のいずれか1項記載の合成樹脂発泡体の製造方法。
  6. 加熱及び冷却媒体が水もしくは水蒸気である請求項1〜4のいずれか1項記載の合成樹脂発泡体の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れか一項記載の製造方法で製造された合成樹脂発泡体。
  8. 合成樹脂発泡体の表面に表面硬化層を有する請求項7記載の合成樹脂発泡体。
  9. 合成樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂発泡体である請求項7または8記載の合成樹脂発泡体。
  10. 発泡性合成樹脂を型内成形する際に、表面を熱溶融させて形成させた表面硬化層を有する合成樹脂発泡体であって、2%のアルキルアミンオキシド溶液に接触させ、室温にて放置した際、少なくとも3時間、2%のアルキルアミンオキシド溶液が漏出しないことを特徴とする発泡合成樹脂成形体。
  11. 容器、農業用資材、運輸手段用部材、建築用部材、住宅設備用部材からなる群から選ばれる一以上として用いられることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の発泡合成樹脂成形体。
  12. 容器が、水産物用、農産物用、食料品用の何れかである請求項11記載の発泡合成樹脂成形体。
  13. 農業用資材が、育苗箱、定植ボードの何れかである請求項11記載の発泡合成樹脂成形体。
  14. 運輸手段用部材が、ラゲージボックス、フロアレベラー、バンパーコア材の何れかである請求項11記載の発泡合成樹脂成形体。
  15. 建築用部材が、埋込材、打込型枠、化粧型枠の何れかである請求項11記載の発泡合成樹脂成形体。
  16. 住宅設備用部材が、エアコン用ドレンパン、トイレ用防露タンク、浴槽・浴室断熱材の何れかである請求項11記載の発泡合成樹脂成形体。
  17. 金型の成形空間側表面に鏡面加工、テフロン(登録商標)加工、メッキ加工の何れかの表面処理を施した事を特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の製造方法に用いる金型。
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