JP2008011810A - 食品組成物とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂を含有した風味原料をリパーゼ処理して得られるエマルジョンタイプの食品組成物であって、トリグリセリド含量が0.1質量%未満であり、遊離脂肪酸含量が0.01〜20質量%の範囲であり、且つモノグリセリド含量が0.05〜10質量%の範囲であることを特徴とする食品組成物。水系媒質中、油脂を含有する風味原料にリパーゼを作用させながら該リパーゼ処理液を乳化し、本発明に係る前記食品組成物を得ることを特徴とする食品組成物の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明の食品組成物において、エマルジョンは、主として脂肪酸がモノグリセリドで乳化された水中油型エマルジョンであることが好ましい。
本発明の食品組成物において、エマルジョン中の油滴の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
本発明の食品組成物において、エマルジョン中の油滴の平均粒径は0.1μm以下であり、モノグリセリド以外の乳化剤を含むことが好ましい。
本発明の食品組成物において、モノグリセリド以外の乳化剤はサポニンであることが好ましい。
本発明の食品組成物において、リパーゼはトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることが好ましい。
この製造方法において、リパーゼ処理液の乳化を膜乳化又は撹拌によって行うことが好ましい。
また、この製造方法において、平均孔径の異なる複数の膜乳化用のフィルターを用い、リパーゼ処理液に、エマルジョン中の油滴の平均粒径が順次小さくなるように多段の膜乳化を施すことが好ましい。
また、この製造方法において、リパーゼがトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることが好ましい。
この製造方法において、リパーゼ処理液の乳化を膜乳化又は撹拌によって行うことが好ましい。
また、この製造方法において、平均孔径の異なる複数の膜乳化用のフィルターを用い、リパーゼ処理液に、エマルジョン中の油滴の平均粒径が順次小さくなるように多段の膜乳化を施すことが好ましい。
また、この製造方法において、リパーゼがトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることが好ましい。
また、保存中に疎水性物質由来のオリの発生や油の分離が見られず、安定性に優れている。
また、エマルジョン中の油滴の平均粒径を1μm以下とすることで、さらに風味に持続性を付与する効果を有する。
さらにエマルジョン中の油滴の平均粒径を0.1μm以下とし、モノグリセリド以外の乳化剤を添加することで、調味料に実質的なクリアー性を付与する効果を有する。
実施例における各測定条件は、下記の通りである。
エマルジョン中の油滴のうち、粒径が1μm以上の油滴の平均粒径に関しては、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−750(堀場製作所社製)により測定し、粒径が1μm以下の油滴の平均粒径は、ゼータサイザーナノZS(マルマーン社製)により測定した。
試料のエマルジョンをクロロホルム−メタノール混液(2:1)150mLで抽出後、シリカゲルカラムに通液し、ジエチルエーテル−ヘキサン(2:98)で洗浄、ジエチルエーテル−ヘキサン(8:92)で溶出させ、溶媒を除去後、メチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーにより定量した。
ガスクロマトグラフ装置としては、GC353B(GLサイエンス社製)を用い、カラムをTC−WAX0.25mm×60m(GLサイエンス社製)とし、検出器FIDにて測定した。
試料をクロロホルム−メタノール混液(2:1)150mLで抽出後、シリカゲルカラムに通液し、ジエチルエーテル−ヘキサン−酢酸(50:50:0.5)で洗浄、ジエチルエーテルで溶出させ、溶媒を除去後、TMS化し、ガスクロマトグラフィーにより定量した。
ガスクロマトグラフ装置としては、トリグリセリドの場合と同条件により測定した。
カルボン酸をBr−DMEQ(同仁化学社製)にて蛍光ラベルし、HPLCにて定量した。HPLC条件は、カラムとしてFree Fatty Acid HP 60Å 4μm 3.9×150mm(Waters社製)を用い、移動層はアセトニトリル:0.1%燐酸バッファー=6:4を用い、蛍光検出器はλex=370nm、λem=455nmとした。
水96.9質量部に、かつお腹皮節の5mm粗砕物3.0質量部およびリパーゼAY−30(天野エンザイム社製)0.1質量部を添加し、撹拌しながら、40℃15時間反応し、90℃10分間加熱し、酵素反応を停止させた。かつお腹皮節の抽出残渣を除去し、エマルジョンを得た。
なお、かつお腹皮節とは、かつおの内臓を覆っている内外皮の部分で、油脂分が多く、通常、鰹節に向かないが、美味であるため、みやげ物等で珍重されている。
水97.0質量部に、かつお腹皮節の5mm粗砕物3.0質量部を添加し、撹拌しながら40℃15時間後、90℃10分間加熱後、かつお腹皮節の抽出残渣を除去し、抽出液を得た。
水97.0質量部に、かつお腹皮節の5mm粗砕物3.0質量部を添加し、90℃10分間加熱後、かつお腹皮節の抽出残渣を除去し、抽出液を得た。
これらの官能試験の結果、実施例1のエマルジョンは、比較例1および2に比較し、鰹節風味が忠実に、しかも力価高く抽出され、持続性があると評価された。
2mm角程度に刻んだニンニク0.5質量部をサラダ油(日清オイリオ社製)5.0質量部で炒め、冷却後、L−リモネン0.1質量部を添加し、94.3質量部の水に懸濁させた後、リパーゼAY−30を0.1質量部添加し、40℃1時間撹拌しながら反応した。刻んだニンニクを除去した後の液をエマルジョンAとした。
平均孔径10μmのPTFE製メンブランフィルター(アドバンテック社製)に前記エマルジョンAを透過させたものをエマルジョンBとした。
続いて平均孔径5μmのメンブランフィルターにエマルジョンBを透過させたものをエマルジョンC、続いて平均孔径1μmのメンブランフィルターにエマルジョンCを透過させたものをエマルジョンDとした。
次に、エマルジョンA〜Dを90℃で開放加熱し、L−リモネンのエマルジョン中の残存量からL−リモネンの放出速度をHPLC逆相カラムで定量評価した。
なお、L−リモネンは、レモンやオレンジの皮に含まれる香気成分で、香気成分の挙動を示すマーカーとして添加したものである。
得られたエマルジョンA〜Dの組成を表3に示した。
また、各エマルジョン中の油滴の平均粒径を測定したところ、エマルジョンAの油滴の平均粒径が30μm、エマルジョンBが9.8μm、エマルジョンCが4.6μm、エマルジョンDが0.8μmであった。
比較例3と実施例2との比較により、トリグリセリド含量を0.1%以下とする方法として、トリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち、二つを加水分解するリパーゼを作用させながら乳化し、風味原料の抽出残渣を除去し、エマルジョン中の油滴の平均粒径を順次小さくしていくことが有効であることが明らかとなった。
また、エマルジョン中の油滴の平均粒径が1μm以下のエマルジョンDは、L−リモネンの放出速度が非常に遅く、香気成分を保持し、徐放性を示していることが明らかとなった。
水89.9質量部に煮干10質量部を入れ、90℃30分間加熱抽出し、40℃まで冷却後、リパーゼAY−30を0.1質量部添加し、40℃で4時間反応した。煮干の抽出残渣を除去後、平均孔径10μmメンブランフィルターを透過させ、続いて平均孔径5μmメンブランフィルターを透過させ、続いて平均孔径1μmメンブランフィルターを透過させたものをエマルジョンEとした。
得られたエマルジョンE99.5質量部に、シュガーエステルHLB13(第一工業製薬社製)を0.5%添加したもの、デカグリセリンモノエステルHLB12.9(坂本薬品工業社製)を0.5質量部添加したもの、同シュガーエステル0.25質量部と同デカグリセリンモノエステル0.25質量部を添加したもの、酵素分解レシチン(太陽化学社製)を0.5質量部添加したものを調製し、それぞれ細胞破砕装置ミニラボ(Rannie社製)にて100MPaの圧力で5回乳化した。
細胞破砕装置にて乳化処理した各エマルジョンのうち、シュガーエステルを添加したものをエマルジョンF、デカグリセリンモノエステルを添加したものをエマルジョンG、シュガーエステルとデカグリセリンモノエステルを添加したものをエマルジョンH、酵素分解レシチンを添加したものをエマルジョンIとした。
「おでんつゆ」の配合は、薄口醤油5.3質量部、みりん3.3質量部、砂糖0.3質量部、塩0.4質量部、エマルジョンE〜Iのいずれかを3.0質量部、水87.7質量部とした。
エマルジョンEを加えた「おでんつゆ」は、つゆに濁りを生じた点で若干好ましさに欠けたが、エマルジョンF〜Iについては、つゆのクリアー性に問題なく、通常のだし汁を添加した場合となんら変わりなかった。
実施例3で製造したエマルジョンE99.5質量部に対し、大豆サポニン(不二製油社製)0.5質量部、キラヤ抽出濃縮液(ミツバ貿易社製)0.5質量部、ユッカ抽出濃縮液(ミツバ貿易社製)0.5質量部のいずれかを添加し、実施例3と同様に細胞破砕装置で処理した。大豆サポニンを添加したものをエマルジョンJ、キラヤ抽出濃縮液を添加したものをエマルジョンK、ユッカ抽出濃縮液を添加したものをエマルジョンLとした。
さらに実施例3と同様に、各エマルジョンJ〜Lのいずれかを3質量部配合して「おでんつゆ」を調製し、実施例3で製造した「おでんつゆ」とともに、官能評価した。
その結果、エマルジョンE〜L配合品間の目視による比較では、差異が見られず、いずれもクリアー性に問題ないことが確認された。
風味的には、エマルジョンF〜I配合品がわずかに薬品臭さを感じると言うコメントが数人に見られ、エマルジョンJ〜L配合品については、明確に差を認識できなかった。
また、エマルジョンF配合品とエマルジョンI配合品は、保存中にエマルジョンの分離が見られ、安定性および風味的な適性から、添加する乳化剤としてはサポニンが優れていることが明らかとなった。
水96.9質量部に、かつお腹皮節の5mm粗砕物3.0質量部およびリパーゼAY−30(天野エンザイム社製)0.1%を添加し撹拌しながら、40℃4時間反応し、かつお腹皮節の抽出残渣を除去後、平均孔径10μmメンブランフィルターを透過させ、続いて同5μmメンブランフィルターを透過させ、続いて同1μmメンブランフィルターを透過させ、得られた水中油型エマルジョンをエマルジョンMとした。
次に、このエマルジョンM97.0質量部中に、かつお荒節の5mm粗砕物3.0質量部を加え、90℃10分間抽出し、かつお荒節の抽出残渣を除去した。
得られたエマルジョン抽出液と、水97.0質量部にかつお荒節の5mm粗砕物3.0質量部を加え、90℃10分間抽出したかつお荒節の熱水抽出液とを官能評価により比較した。
その結果、かつお荒節の熱水抽出液を好ましいとした者3名に対し、エマルジョンMで抽出したエマルジョン抽出液を好ましいとした者13名であった。
かつお荒節の抽出液は、通常のかつおだしであり、軽い鰹節風味と鰹節特有のうま味を有していたが、エマルジョンMで抽出したエマルジョン抽出液は、非常に強い鰹節風味と強いうま味を有し、且つ風味に持続性があり、非常に好ましいものであった。
Claims (14)
- 油脂を含有した風味原料をリパーゼ処理して得られるエマルジョンタイプの食品組成物であって、トリグリセリド含量が0.1質量%未満であり、遊離脂肪酸含量が0.01〜20質量%の範囲であり、且つモノグリセリド含量が0.05〜10質量%の範囲であることを特徴とする食品組成物。
- エマルジョンは、主として脂肪酸がモノグリセリドで乳化された水中油型エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の食品組成物。
- エマルジョン中の油滴の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の食品組成物。
- エマルジョン中の油滴の平均粒径が0.1μm以下であり、モノグリセリド以外の乳化剤を含むことを特徴とする請求項2に記載の食品組成物。
- モノグリセリド以外の乳化剤がサポニンであることを特徴とする請求項4に記載の食品組成物。
- リパーゼがトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の食品組成物。
- 水系媒質中、油脂を含有する風味原料にリパーゼを作用させながら該リパーゼ処理液を乳化し、請求項1〜6のいずれかに記載の食品組成物を得ることを特徴とする食品組成物の製造方法。
- リパーゼ処理液の乳化を膜乳化又は撹拌によって行うことを特徴とする請求項7に記載の食品組成物の製造方法。
- 平均孔径の異なる複数の膜乳化用のフィルターを用い、リパーゼ処理液に、エマルジョン中の油滴の平均粒径が順次小さくなるように多段の膜乳化を施すことを特徴とする請求項7又は8に記載の食品組成物の製造方法。
- リパーゼがトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の食品組成物の製造方法。
- 水系媒質中、油脂を含有する風味原料にリパーゼを作用させながら該リパーゼ処理液を乳化してエマルジョンを作製し、次いで該エマルジョンと風味原料とを接触させて風味原料中の風味成分をエマルジョンで抽出して請求項1〜6のいずれかに記載の食品組成物を得ることを特徴とする食品組成物の製造方法。
- リパーゼ処理液の乳化を膜乳化又は撹拌によって行うことを特徴とする請求項11に記載の食品組成物の製造方法。
- 平均孔径の異なる複数の膜乳化用のフィルターを用い、リパーゼ処理液に、エマルジョン中の油滴の平均粒径が順次小さくなるように多段の膜乳化を施すことを特徴とする請求項11又は12に記載の食品組成物の製造方法。
- リパーゼがトリグリセリドの三つの脂肪酸残基のうち二つを加水分解するリパーゼであることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の食品組成物の製造方法。
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