JP2008010821A - ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法及びダイボンディング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも低温短時間でダイボンディング用樹脂フィルムを硬化させることができるダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法及びそれを用いるダイボンディング方法を提供すること。
【解決手段】ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法は、ダイボンディング用樹脂フィルムを、マイクロ波の照射により硬化させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法及びダイボンディング方法に関する。
熱硬化性樹脂を主原料とする熱硬化性樹脂フィルムは、半導体や液晶ディスプレイなどの電子デバイスを構成する絶縁材料として広く用いられている。これらの熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ラジカル重合系ポリマーなどが用いられている。例えば特許文献1に開示されている半導体装置の製造方法などに見られるように、通常、これらの材料は半硬化状態で成形加工され、最終製品にする段階で加熱硬化される。これらの材料の加熱には、これまでプレス、圧着機など外部の熱源によって加熱する手法が多くとられてきた。例えば特許文献2などに開示の異方導電性接続部材を用いた回路の接続方法、特許文献3などに開示のプレス成形によるプリント回路板用銅張り積層板の製造方法などが挙げられる。
ところで、ICやLSIなどの半導体素子を支持部材に接合する際にも、上述のような熱硬化性樹脂フィルムと同様のフィルム状接着剤が用いられる。このフィルム状接着剤はダイボンディング用樹脂フィルムと呼ばれ、例えば、フレキシブルプリント配線板に半導体素子を搭載する際などに用いられている。
特開平2−285650号公報 特開昭61−294783号公報 特公昭62−50305号公報
フレキシブルプリント配線板は、ポリイミドフィルムなどの耐熱性熱可塑性フィルムが基材として用いられている。しかし、このような基材上にダイボンディング用樹脂フィルムを用いて半導体素子を接合させようとすると、以下のような問題が発生する場合があった。すなわち、接合の際には、配線板と半導体素子との間に介在させたダイボンディング用樹脂フィルムを高温で硬化させるが、半導体素子及び基材の線膨張係数の違いによって発生する熱応力によって冷却時に基板の反りが生じ、硬化したダイボンディング用樹脂フィルムにひびが入るなどして、半導体装置の信頼性を著しく低下させることがある。なお、加熱温度を下げて冷却時の問題を回避する方法が考えられるが、この場合、長時間の加熱が必要となり生産性の観点から好ましくない。また、長時間の加熱による熱履歴によって材料内部へ応力が蓄積し、結果として各部材の反り、ひずみが生じてしまう。
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、従来よりも低温短時間でダイボンディング用樹脂フィルムを硬化させることができるダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法及びそれを用いるダイボンディング方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、ダイボンディング用樹脂フィルムを、マイクロ波の照射により硬化させる、ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法を提供する。本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法によれば、従来よりも低温短時間でダイボンディング用樹脂フィルムを硬化させることができる。
本発明において、上記「ダイボンディング用樹脂フィルム」は、未硬化のもの、或いは、半硬化されたもののいずれであってもよい。なお、半硬化とは、加熱乾燥によって樹脂フィルムに含まれる溶媒などを除去した状態のものを意味する。
本発明の方法によって上記の効果が奏される理由としては、本発明者らは以下のように考えている。物質にマイクロ波を照射すると、発生する振動電界に物質内の双極子の配向が追従しようとするが、振動電界の時間変化についていけなくなると、電磁エネルギーが熱として物質内に吸収されるため、物質内部から加熱昇温が起こる。このような内部からの加熱昇温は、従来の外部からの加熱反応とは大きく異なる点であり、短時間での硬化反応を実現する要因になっていると考えられる。また、マイクロ波は物質中の極性部位に作用する一方、無極性部位には作用しない。このため、マイクロ波照射反応中は、反応とは関係のない部位の温度が高くならないと考えられる。その結果、オーブン等を用いた従来の外部加熱と比較して低温で反応が進むものと考えられる。このような理由から、従来よりも低温短時間でダイボンディング用樹脂フィルムの硬化が達成できたと本発明者らは考えている。
また、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法によれば、通常のオーブン等を用いた熱反応のみによる場合と比較して低温で、且つ、極めて短時間(3分以内)で樹脂フィルムを十分硬化させることが可能であることから、半導体装置の製造において信頼性向上のみならず生産性の向上も十分に図ることができる。
本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法において、上記ダイボンディング用樹脂フィルムが、シアノ基、アミド基、ウレタン結合、チオール基及びカーボナート基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を含有することが好ましい。
このようなダイボンディング用樹脂フィルムを用いることにより、樹脂フィルムのマイクロ波感応性を高めることができ、マイクロ波照射による低温短時間硬化をより確実且つ容易に実現することができる。
また、同様の観点から、上記ダイボンディング用樹脂フィルムが、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機物質フィラーを更に含有することが好ましい。
また、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法において、上記ダイボンディング用樹脂フィルムが導電性フィラーを含まないものである場合、ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化後の比誘電率(εr)と誘電正接(tanδ)との積(以下「εr・tanδ」と略記する。)が1GHz及び25℃の条件において0.15以上であることが好ましい。
ここで、マイクロ波の照射によって物質の発熱にかかる電力(発熱量)Pは、以下の式で表される。
P=(5/9)・f・E・εr・tanδ×10−10[W/m
(f:マイクロ波の周波数[Hz],E:電界強度[V/m],εr:物質の比誘電率,tanδ:物質の誘電正接)
上記式から、物質のεr及びtanδが小さいと、マイクロ波照射による硬化反応が進みにくいと考えられる。これに対して、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化
方法において硬化後のεr・tanδが上記特定範囲となるダイボンディング用樹脂フィルムを用いることにより、樹脂フィルムのマイクロ波感応性を更に高められ、マイクロ波の吸収による発熱以外の熱供給がない場合であっても、マイクロ波照射反応によって十分に短時間でダイボンディング用樹脂フィルムの硬化を行うことが可能となる。
なお、上述した、導電性フィラーを含まず、硬化後の比誘電率(εr)と誘電正接(tanδ)との積が1GHz及び25℃の条件において0.15以上であるダイボンディング用樹脂フィルムは、マイクロ波の照射により硬化して半導体素子を支持部材に接合するために用いられるマイクロ波照射反応用ダイボンディング用樹脂フィルムとして有用である。
本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法においては、ダイボンディング用樹脂フィルムを、当該樹脂フィルムの温度が150℃を超えないようにマイクロ波の照射により硬化させることが好ましい。このような方法を半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とを接合するためのダイボンディング用樹脂フィルムの硬化に適用すれば、製造される半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。
また、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法においては、産業用として通常使用される、周波数が0.5〜30GHzの範囲内にあるマイクロ波を照射できる。
また、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法においては、マイクロ波の照射によって発生する電界強度が25kV/m以下であることが好ましい。電界強度を25kV/m以下とすることにより、アーク放電の発生を抑制することができる。これにより、放電部位の部材や樹脂に焦げなどが発生することや半導体素子へのダメージをより確実に防止することができる。
また、本発明は、半導体素子及び半導体素子搭載用の支持部材の間に介在させたダイボンディング用樹脂フィルムを、上記本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法により硬化させるダイボンディング方法を提供する。かかる本発明のダイボンディング方法によれば、製造される半導体装置の信頼性を向上させることができる。
本発明によれば、従来よりも低温短時間でダイボンディング用樹脂フィルムを硬化させることができるダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法及びそれを用いるダイボンディング方法が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
まず、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法で用いられるダイボンディング用樹脂フィルムについて説明する。
ダイボンディング用樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂を含む樹脂成分から構成されるものが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ラジカル重合系ポリマーなどが挙げられる。
エポキシ樹脂を用いる場合は、多官能エポキシ樹脂を用いることが好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
フェノール樹脂を用いる場合は、耐熱性を高める観点から、多官能フェノール樹脂を用いることが好ましい。多官能フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂などが挙げられる。
上記の熱硬化性樹脂は単独で用いてもよいし、数種を混合して用いてもよい。
また、熱硬化性樹脂フィルムは、取り扱い性及び作業性の向上を目的に、熱可塑性ポリマーを含有していてもよい。この熱可塑性ポリマーは、熱硬化性樹脂の硬化を実質的に阻害しないことが好ましく、熱硬化性樹脂と相溶していることが好ましい。この熱可塑性ポリマーとしては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエーテルイミド、ポリブタジエンなどが挙げられる。ただし、これらに制限されるものではない。
ダイボンディング用樹脂フィルムは、マイクロ波感応性をより高めるために、極性の高い官能基を有する熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。極性の高い官能基としては、シアノ基、アミド基、ウレタン結合、チオール基、カーボナート基、ヒドロキシル基及び環状エーテルなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。本実施形態においては、極性の高い官能基が、シアノ基、アミド基、ウレタン結合、チオール基及びカーボナート基から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
これら極性の高い官能基を有する熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂の場合、樹脂中のエポキシ基の一部に対して、極性の高い官能基を有する極性官能基含有化合物との反応によって極性の高い官能基を導入する方法により、得られる。より具体的には、例えば、極性官能基含有化合物としてカルボキシル基を有する化合物とエポキシ樹脂との開環反応により、極性の高い官能基がエステル結合を介して導入されたエポキシ樹脂が得られる。この場合に用いられる極性官能基含有化合物としては、シアノ酢酸、テトラヒドロフランカルボン酸、グリコール酸(ヒドロキシ酢酸)等が挙げられる。
本実施形態においては、特に極性の高い官能基を導入できる点で、エポキシ樹脂とシアノ酢酸とを反応させて得られるシアノ酢酸エステル付与エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、硬化後に良好な物性を付与するという観点から、全体のうち20モル%〜60モル%のエポキシ基に対してシアノ酢酸を反応させてシアノ酢酸エステルを形成させたエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
多官能エポキシ樹脂とその他の熱硬化性樹脂を用いる場合、その他の熱硬化性樹脂の配合量は、多官能エポキシ樹脂におけるエポキシ当量に応じて決定することができる。例えば多官能エポキシ樹脂とフェノール樹脂を用いる場合、フェノール樹脂の活性水素の当量と多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が等しくなるような比率で配合することが好ましい。
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、ダイボンディング用樹脂フィルムはエポキシ樹脂の反応促進剤を更に含有することが好ましい。この反応促進剤としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素などのアミン類や2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルフォスフィンなどのフォスフィン類などが挙げられる。
反応促進剤の配合量は、多官能エポキシ樹脂におけるエポキシ当量に応じて決定することができる。例えば反応促進剤としてアミン化合物を用いる場合、アミンの活性水素の当量と、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が等しくなるような比率で配合することが好ましい。また、反応促進剤としてイミダゾール類を用いる場合、反応促進剤の配合量は多官能エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、0.5〜1.0質量部であることがより好ましい。
また、ダイボンディング用樹脂フィルムは、異種材料間の界面結合が向上する観点から、シランカップリング剤などのカップリング剤を含有することが好ましい。
また、ダイボンディング用樹脂フィルムには、導電性、伝熱性若しくはチキソトロピー性を付与する目的で銀粉、金粉、銅粉等の導電性フィラーが添加されることが好ましく、また、低熱膨張性、低吸湿率若しくはチキソトロピー性を付与する目的でシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機物質フィラーが添加されることが好ましい。これらのフィラーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。本実施形態においては、ダイボンディング用樹脂フィルムのマイクロ波感応性を向上させる目的で、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムのような高誘電率フィラーを樹脂フィルムに含有させることが好ましく、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機物質フィラーを樹脂フィルムに含有させることが特に好ましい。
本実施形態で用いられるダイボンディング用樹脂フィルムは、導電性フィラーを含まないものである場合、硬化後の比誘電率(εr)と誘電正接(tanδ)との積(εr・tanδ)が、1GHz及び25℃の条件において0.15以上であることが好ましい。εr・tanδが上記特定範囲となるダイボンディング用樹脂フィルムを用いることにより、樹脂フィルムのマイクロ波感応性を高められ、マイクロ波の吸収による発熱以外の熱供給がない場合であっても、マイクロ波照射反応によって十分に短時間でダイボンディング用樹脂フィルムの硬化を行うことが可能となる。
樹脂フィルムの硬化物のεrやtanδは、マテリアルアナライザー法、空洞共振器法、LCRメーター法などの方法により測定することができる。
硬化物のεr・tanδが0.15以上となるダイボンディング用樹脂フィルムは、その構成成分として極性部位を有する成分を加えることにより得られる。極性部位を有する成分を加える方法としては、上述のように、高誘電率の無機微粒子をダイボンディング用樹脂フィルム中に分散させる方法や、有機合成反応によって熱硬化性樹脂等の樹脂材料中に極性の高い官能基を導入する方法などが挙げられる。
ダイボンディング用樹脂フィルムは、例えば、上記熱硬化性樹脂、必要に応じてその他ポリマー及びフィラーなどを有機溶剤に溶解した溶液を、塗工機を使用してPETフィルムのようなキャリアーフィルム上に塗布した後、加熱乾燥を行うことによって作製される。樹脂フィルムの厚みは、取扱い性を良好にするとともに、有機溶剤を除去しやすくする観点から、3〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノンなどが挙げられる。
次に、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法の好適な一実施形態を説明するための模式断面図である。
本実施形態の方法においては、まず、半導体素子搭載用の支持部材10と、支持部材10上の所定の位置に積層したダイボンディング用樹脂フィルム20とを備えるものを用意する(図1(a))。
支持部材としては、例えば、フレキシブル配線板、リジッド配線板、42アロイリードフレーム、銅リードフレームなどが挙げられる。また、支持部材の材質としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ガラス不織布などの基材にポリイミド系樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂を含浸・硬化させたものなどが挙げられる。
次に、樹脂フィルム20上の所定の位置に半導体素子30を貼り付け、これを加圧・加熱することにより半導体素子30と支持部材10とを接合する(図1(b))。この場合の加熱は、熱履歴による信頼性低下が起こらない範囲であることが好ましく、例えば、120〜160℃の温度で実施することが好ましい。また、加圧は、好ましくは0.01〜0.1MPaの圧力で実施することができる。更に、このときの加熱・加圧時間は、10秒〜1分間とすることができる。
半導体素子30としては、例えば、IC及びLSI等が挙げられる。
本実施形態の方法においては、樹脂フィルム20をマイクロ波の照射によって更に後硬化することにより、樹脂フィルムの硬化物22によって半導体素子30と支持部材10とが良好に接合されたものを得る(図1(c))。このとき、熱履歴による信頼性低下が起こらない範囲で、オーブンなどを利用して外部から加熱してもよい。この場合の外部からの加熱は、特に温度条件は限定しないが、120℃以下が好ましい。
硬化のために照射されるマイクロ波の周波数は、産業用として通常使用されていることから、0.5〜30GHzの範囲内とすることができ、2〜30GHzの範囲内とすることができる。
本実施形態の方法では、例えば商用周波数である2.45GHzの周波数を有するマイクロ波が用いられる。
また、本実施形態の方法においては、マイクロ波の照射によって発生する電界強度が25kV/m以下であることが好ましい。電界強度を25kV/m以下とすることにより、アーク放電の発生を抑制することができる。これにより、放電部位の部材や樹脂に焦げなどが発生することや半導体素子へのダメージをより確実に防止することができる。
電界強度の測定は、光ファイバーをケーブルとして使用し、例えばダイポールアンテナ、ループアンテナ、等方性電界プローブをセンサーとして用いる方法、或いは、電界によって発熱する微小抵抗体または電界によって光学的性質が変化する電気光学結晶をセンサーとして利用することで、光学的に電界の情報を取り込む方法により行うことができる。
更に、本実施形態の方法においては、樹脂フィルム20を、フィルムの温度が150℃を超えないようにマイクロ波の照射により硬化させることが好ましい。この場合、半導体素子30や樹脂フィルムの硬化物22にひびが入るなどの問題が発生することを十分防止しつつ半導体素子30と支持部材10とを接合することができ、半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。フィルムの温度を150℃以下に維持しつつ硬化を進行させるには、例えば、上述したようなマイクロ波感応性を高めたダイボンディング用樹脂フィルムを用いることにより可能である。なお、フィルムの温度の調節は、フィルムに露出部分がある場合、その表面温度に基づいてマイクロ波の出力を変化させる方法を用いてもよく、或いは、予め得られているマイクロ波の出力とフィルムの温度との関係に基づいてマイクロ波の出力を変化させる方法を用いてもよい。
マイクロ波を照射する際、例えば導体回路などの金属部位においてアーク放電が発生することが危惧されるが、これを防ぐ手段として、金属部位を等電位にするために治具を用いて金属部位をアース接続する方法が挙げられる。
金属部位を等電位にするための治具としては、例えば、銅線などのリード線と金属などの電気伝導体で形成された留め金とから構成されており、留め金がリード線の片端に接続されているものが挙げられる。このとき、マイクロ波が照射される金属部位と留め金、及び、留め金とリード線とが確実に接触・接続されている必要がある。
また、リード線を接地するための接続場所としては、マイクロ波照射装置全体が接地されていれば、マイクロ波に晒されない範囲で且つマイクロ波が照射される金属部位との距離がなるべく近い装置内の金属部位が挙げられる。また、マイクロ波照射装置とは別に、コンセントの接地極などに治具のリード線を接続することで接地を行ってもよい。
具体例として、導体回路をアース接続する方法を図2に示す。図2に示される方法では、配線板12の基板14上に設けられた導体回路に接続された配線16が、金属製のクリップ40と被覆銅線42とから構成される治具により接地されている。クリップ40は、配線16と接触するように枠部14を挟むことができ、その外側表面が絶縁ビニールテープ44で被覆されている。また、被覆銅線42のクリップ40側とは反対の端は、コンセントなどの接地極に接続されている。
本実施形態の方法においては、低温速硬化の観点から、上述したようなマイクロ波感応性を高めたダイボンディング用樹脂フィルムを用いることが好ましいが、この場合、所望の温度・時間で樹脂フィルムを硬化させるために必要な電界強度を低く抑えること(好ましくは25kV/m以下に抑制すること)がより容易に実現可能となる。これにより、マイクロ波照射時のアーク放電の発生を十分抑制することができ、支持部材の損傷や半導体素子へのダメージをより確実に防止することができる。
更に、導電性フィラーを含まず、硬化物のεr・tanδが0.15以上となるダイボンディング用樹脂フィルムを用いる場合、オーブン等のマイクロ波の吸収による発熱以外の熱供給がない場合であっても、マイクロ波照射反応によって十分に短時間で樹脂フィルムを硬化させることが可能となる。
上述した、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法によれば、ダイボンディング用樹脂フィルムにマイクロ波を照射することによって、通常の熱反応と比較して、低温、短時間で樹脂フィルムを硬化させることができる。なお、ここでいう通常の熱反応とは、特に具体的な条件等は限定されないが、一般的に150℃を超える温度での加熱処理で生じる熱反応が挙げられる。
従来の硬化方法、すなわち、マイクロ波の照射を行なわず、例えば、160℃に保ったオーブン中で加熱硬化を行った場合では、硬化に要する時間は30分程度である。また、これより高温の、例えば、200℃で加熱硬化を行った場合では、硬化に要する時間は短縮されるが、冷却時の半導体素子と基材との線膨張係数の違いによる熱応力によって基板の反りが生じ、ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化物にひびが入りやすくなる。また、これより低温の、例えば、100℃で加熱硬化を行った場合では、硬化に要する時間は1時間を超え、また50℃では硬化が進行しないなど、生産効率が極めて低下する。
これに対して、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法によれば、マイクロ波の出力制御や、上述の高誘電率(εr)・高誘電正接(tanδ)のダイボンディング用樹脂フィルムの適用などにより、150℃以下、3分以内の低温速硬化も可能である。
以上のことから、半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材とをダイボンディング用樹脂フィルムによって接合するに際し、上述の本発明に係るダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法を適用することにより、生産性及び信頼性の双方に優れたダイボンディングの実現が可能となる。そして、かかるダイボンディング方法によれば、半導体装置の製造における信頼性及び生産性の向上が可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(合成例1)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた500ミリリットルセパラブルフラスコ中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂DER−331L(商品名、ダウ・ケミカル製、エポキシ基当量184)147.2gをシクロヘキサノン125.4gに溶解した。エポキシ樹脂が完全に溶解した後、シアノ酢酸を40.8g、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン(DBU)を0.4g加え、120℃で7時間加熱して反応を進行させた。この反応により、全体のうち60モル%のエポキシ基に対してシアノ酢酸を反応させてシアノ酢酸エステルを形成させたエポキシ樹脂(以下「シアノ酢酸エステル60%付与エポキシ樹脂」という。)を得た。
(実施例1)
ダイボンディング用樹脂フィルムとしてダイボンディングフィルムHS−210(日立化成工業株式会社製、商品名、厚さ50μm)を20mm×50mmの大きさに切り出し、ポリイミドフィルムに載せて、2.45GHzのマイクロ波を照射した。このとき、樹脂フィルムの表面温度が150℃で維持されるようにマイクロ波の出力を制御した。電界強度は、樹脂フィルムの表面温度が設定温度150℃に保たれている間は25kV/mでほぼ一定であった。このような条件でのマイクロ波照射によって、180秒間で硬化反応率は100%に達した。
なお、サンプルの硬化反応率は、示差走査熱量計(DSC)を用いてマイクロ波照射前及び照射後の樹脂フィルムの発熱量を測定し、照射前の樹脂フィルムの発熱量を基準として算出した。
(実施例2)
合成例1のシアノ酢酸エステル60%付与エポキシ樹脂(エポキシ当量588)15g、クレゾールノボラック樹脂KA−1165(商品名、大日本インキ株式会社製、OH基当量119)3.0g、フェノキシ樹脂YP−50EK35(商品名、東都化成株式会社製、35質量%メチルエチルケトン溶液)51.6g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.02g、メチルエチルケトン2.2gを混合し、全体を撹拌して各成分を溶媒に溶解させた。この樹脂溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の膜厚が60μmになるように塗布し、温風循環型乾燥機中で110℃10分間加熱して、フィルム化した。
得られた熱硬化性樹脂フィルムを20mm×50mmの大きさに切り出し、ポリイミドフィルムに載せて、2.45GHzのマイクロ波を照射した。このとき、樹脂フィルムの表面温度が最高値で150℃となるようにマイクロ波の出力を制御した。このような条件において、180秒間でサンプルの硬化反応率が100%に達するようにマイクロ波を照射したところ、少なくとも25kV/mの電界強度を必要とした。
なお、サンプルの硬化反応率は、示差走査熱量計(DSC)を用いてマイクロ波照射前及び照射後の熱硬化性樹脂フィルムの発熱量を測定し、照射前の熱硬化性樹脂フィルムの発熱量を基準として算出した。
また、上記樹脂溶液をガラス板に塗布し、130℃で15分加熱して乾燥した後、ガラス板から削り取ってB−ステージの樹脂粉を採取した。これらの樹脂粉を用いてプレスによって両面銅箔付きの樹脂板を作製した。すなわち、1.0mm厚のフッ素樹脂製スペーサーを用いて市販銅箔の光沢面が樹脂粉側になるようにし、37トンハンドプレスを用いで、170℃で1時間、圧力3.0MPaでプレス成形した。銅箔を全面エッチングによって除去した樹脂板について、1GHz、25℃における比誘電率(εr)と誘電正接(tanδ)を、マテリアルアナライザを用いて測定した結果、εr=4.20、tanδ=0.0490となり、これらの積εr・tanδは0.21であった。
(実施例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量184)15g、クレゾールノボラック樹脂KA−1165(商品名、大日本インキ株式会社製、OH基当量119)9.7g、フェノキシ樹脂YP−50EK35(商品名、東都化成株式会社製、35質量%メチルエチルケトン溶液)70.8g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08g、メチルエチルケトン5g、チタン酸バリウム50gを混合し、全体を撹拌して各成分を溶媒に溶解又は分散させた他は実施例2と同様の方法で熱硬化性樹脂フィルム及び樹脂板を作製し、樹脂フィルムへのマイクロ波照射及び樹脂板のεr、tanδの測定を行った。
樹脂フィルムの表面温度が最高値で150℃となるようにマイクロ波の出力を制御し、180秒間で硬化反応率が100%に達するように熱硬化性樹脂フィルムにマイクロ波を照射したところ、22〜25kV/mの電界強度を必要とした。
また、樹脂板はεr=6.47、tanδ=0.0364であり、これらの積εr・tanδは0.24であった。
(実施例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量184)15g、クレゾールノボラック樹脂KA−1165(商品名、大日本インキ株式会社製、OH基当量119)9.7g、フェノキシ樹脂YP−50EK35(商品名、東都化成株式会社製、35質量%メチルエチルケトン溶液)70.8g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.08g、メチルエチルケトン2.1gを混合し、全体を撹拌して各成分を溶媒に溶解又は分散させた他は実施例2と同様の方法で熱硬化性樹脂フィルム及び樹脂板を作製し、熱硬化性樹脂フィルムへのマイクロ波照射及び樹脂板のεr、tanδの測定を行った。
樹脂フィルムの表面温度が最高値で150℃となるようにマイクロ波の出力を制御し、180秒間で硬化反応率が100%に達するように熱硬化性樹脂フィルムにマイクロ波を照射したところ、少なくとも50kV/mの電界強度を必要とした。
また、樹脂板はεr=3.25、tanδ=0.0326であり、これらの積εr・tanδは0.11であった。
(比較例1)
実施例1のものと同様のダイボンディング用樹脂フィルムについて、マイクロ波照射をせずに、150℃に保ったオーブン中で樹脂フィルムを硬化させたが、180秒間で硬化反応率は17%であった。なお、この条件で硬化反応率が100%に到達するには30分を要した。
(比較例2)
実施例1のものと同様のダイボンディング用樹脂フィルムについて、マイクロ波照射をせずに、オーブン中で樹脂フィルムを硬化させた。このとき、180秒間で硬化反応率が100%に到達するにはオーブン中の温度を230℃まで上昇させる必要があった。その結果、樹脂フィルムの硬化物は、白色から茶色に変色し、脆くなった。
(比較例3)
実施例2と同様にして得られた熱硬化性樹脂フィルムについて、マイクロ波照射をせずに、150℃に保ったオーブン中で樹脂フィルムを硬化させたが、180秒間で硬化反応率は20%であった。なお、この条件で硬化反応率が100%に到達するには30分を要した。
(比較例4)
実施例3と同様にして得られた熱硬化性樹脂フィルムについて、マイクロ波照射をせずに、150℃に保ったオーブン中で樹脂フィルムを硬化させたが、180秒間で硬化反応率は20%であった。なお、この条件で硬化反応率が100%に到達するには30分を要した。
(比較例5)
実施例4と同様にして得られた熱硬化性樹脂フィルムについて、マイクロ波照射をせずに、150℃に保ったオーブン中で樹脂フィルムを硬化させたが、180秒間で硬化反応率は20%であった。なお、この条件で硬化反応率が100%に到達するには30分を要した。
以上のことから、本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法によれば、半導体素子を基板に搭載するために用いられるダイボンディング用樹脂フィルムを、マイクロ波を照射することによって、通常の熱反応と比較して低温短時間で硬化させることが可能となることが確認された。
本発明のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法の好適な一実施形態を説明するための模式断面図である。 実施形態に係る導体回路をアース接続する方法の一例を示す模式図である。
符号の説明
10…支持部材、12…フレキシブル配線板、14…基板、16…配線、20…樹脂フィルム、22…硬化物、30…半導体素子、40…クリップ、42…被覆銅線、44…絶縁ビニールテープ。

Claims (7)

  1. ダイボンディング用樹脂フィルムを、マイクロ波の照射により硬化させる、ダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  2. 前記ダイボンディング用樹脂フィルムが、シアノ基、アミド基、ウレタン結合、チオール基及びカーボナート基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を含有する、請求項1に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  3. 前記ダイボンディング用樹脂フィルムが、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機物質フィラーを更に含有する、請求項1又は2に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  4. 前記ダイボンディング用樹脂フィルムを、当該樹脂フィルムの温度が150℃を超えないようにマイクロ波の照射により硬化させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  5. 前記マイクロ波の周波数が0.5〜30GHzの範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  6. 前記マイクロ波の照射によって発生する電界強度が25kV/m以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法。
  7. 半導体素子及び半導体素子搭載用の支持部材の間に介在させたダイボンディング用樹脂フィルムを、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイボンディング用樹脂フィルムの硬化方法により硬化させる、ダイボンディング方法。
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