JP2008007575A - エポキシ樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】多層プリント配線板におけるめっきの下地となる樹脂絶縁層用材料として用いた場合に、前記樹脂絶縁層の粗化処理表面が従来より表面粗さが小さいにもかかわらず、良好なめっきの密着性を発現することができるエポキシ樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板を提供すること。
【解決手段】(A)平均のエポキシ当量が150〜400である第1のエポキシ樹脂、(B)平均のエポキシ当量が450〜500のビスフェノールA型エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂、及び(C)トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂を含有し、(A)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(A)が4.2〜9であるエポキシ樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物に関し、特に、ビルドアップ方式の多層プリント配線板の絶縁材として好適に用いられるエポキシ樹脂組成物に関する。さらに、このようなエポキシ樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板に関する。
従来から、多層プリント配線板の製造方法として、内層回路基板にプリプレグを介して銅箔を積層プレスし、スルーホールによって層間導通をとる方法が知られている。しかし、この方法ではエッチングによって回路を形成するために、微細なパターン配線には充分に対応できないという問題があった。
前記問題を解決しうる多層プリント配線板の製造方法として、近年、内層回路基板の導体層上に、樹脂絶縁層と導体層とを交互に積み上げて多層プリント配線板を形成するビルドアップ方式の製造技術が注目されている。このビルドアップ方式は、例えば、内層回路基板の導体層上に、エポキシ樹脂組成物などからなる樹脂フィルムを積層し、加熱硬化して樹脂絶縁層を形成した後、前記樹脂絶縁層の表面に、メッキ工程などを用いて導体層を形成して多層プリント配線板を製造する方法である。前記製造方法においては、通常、導体層と樹脂絶縁層との密着性を高めるために、前記樹脂絶縁層の表面は過マンガン酸カリウム等の酸化剤により粗化処理される。
前記粗化処理により、導体層と樹脂絶縁層との密着性をより高める方法として、従来から種々の方法が試みられている。
例えば、下記特許文献1には、樹脂絶縁層用のエポキシ樹脂組成物として、ゴム成分を含有するエポキシ樹脂組成物が開示されており、前記エポキシ樹脂組成物から形成される樹脂絶縁層によれば、粗化処理工程において酸化剤によりゴム成分が溶解して、アンカー効果に優れた凹凸を形成することができるものである。
また、下記特許文献2には、エポキシ樹脂成分自身を粗化剤により分解もしくは溶解して凹凸状の粗化面を形成する方法として、エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、エポキシ当量が400未満の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とからなるエポキシ樹脂を、活性水素を1分子中に2個以上含むエポキシ樹脂硬化剤で硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物が開示されている。
前記エポキシ樹脂硬化物においては、前記エポキシ当量が400未満のエポキシ樹脂は前記エポキシ樹脂当量が400以上のエポキシ樹脂よりも硬化時の架橋密度が高いために粗化剤に溶解されにくく、一方、前記エポキシ当量が400以上のエポキシ樹脂はエポキシ当量が400未満のエポキシ樹脂よりも溶解されやすいとされている。そして、エポキシ当量の異なる2種類のエポキシ樹脂を用いることにより、その粗化剤に対する溶解度の差により粗化面を形成するものである。
特開平11−1547号公報 特開平7−304933号公報
近年、ビルドアップ方式においては、樹脂絶縁層の表面にメッキ等により形成される回路の配線間隔を従来よりも小さくして高密度化した多層プリント配線板を得ることが求められている。そして、配線間隔の小さい回路パターンを形成する場合においては、回路が形成される樹脂絶縁層の粗化表面の凹凸の高低差が大きすぎると回路パターンを正確に形成することが困難になる。
前記特許文献1に開示されたようなゴム成分を含有するエポキシ樹脂組成物を樹脂絶縁層として用いた場合には、ゴム成分を粗化剤で溶解して樹脂絶縁層表面に凹凸を形成するために、表面粗さが大きすぎるという問題があった。また、樹脂絶縁層内部にはゴム成分が残留するために、耐熱性や電気絶縁性も低下するという問題があった。
一方、前記特許文献2に記載のようなエポキシ樹脂組成物の硬化物から得られる樹脂絶縁層を粗化して得られる表面は、導体層との密着性は優れているものの、高い密着性を得るためには表面粗さの大きい表面を形成する必要があった。
本発明は、前記問題点に鑑み、表面粗さが小さいにも関わらず、導体層への高い密着性を有する、粗化処理された樹脂絶縁層表面を形成できるエポキシ樹脂組成物、これを用いた樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の手段により前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)平均のエポキシ当量が150〜400である第1のエポキシ樹脂、(B)平均のエポキシ当量が450〜500のビスフェノールA型エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂、及び(C)トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂を含有し、(A)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(A)が4.2〜9であることを特徴とする。
前記第1のエポキシ樹脂(A)は硬化した際に高い架橋密度の硬化部分を形成し、前記第2のエポキシ樹脂(B)は硬化の際に低い架橋密度の硬化部分を形成する。そして、硬化剤として(C)トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂を用いることにより、樹脂絶縁層の表面を粗化処理した場合に、前記架橋密度の高い部分は溶解しにくく、前記架橋密度が低い部分は溶解しやすくなり、架橋密度が低い部分が優先的に溶解されて深い凹部を形成し、架橋密度が高い部分は緩やかに適度に溶解される。
また、前記(A)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(A)が4.2〜9になるように両者を配合することにより、表面粗さは小さいが、凹凸の密度が高い(単位表面積当たりの凹凸の数が多い)面が形成されて粗化面の表面積が大きくなり、導体層との接触面積が大きくなるため高い密着性を示すと考えている。
また、前記(B)成分として、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることにより、硬化の際に臭素原子が立体障害となって、架橋が不完全な部分が生じやすくなり、硬化物を粗化処理した際には、この部分が特に微細な凹凸を形成するように溶解するために、高い密着性を示すことに寄与すると考えている。
また、前記(A)成分の平均のエポキシ当量と(B)成分の平均のエポキシ当量との差は260より大きいことが、特に密着性に優れた粗化面を形成できる点から好ましい。
また、上述のエポキシ樹脂組成物において、前記(C)成分は、トリアジン環を有するクレゾール系ノボラック樹脂であることが好ましい。このような構成によればさらに良好な導体層の密着性を発現することができる。
さらに、上述のエポキシ樹脂組成物において、(D)平均粒径が1μm以下の無機充填材を含有することができる。このような構成によれば表面粗さを小さく維持したまま、さらに導体層との密着性が向上する。
また、本発明の樹脂フィルムは、前記エポキシ樹脂組成物から形成されるものである。このような樹脂フィルムを用いれば、多層プリント配線板の製造において、導体層の下地となる樹脂絶縁層を容易に形成することができる。そして、形成された樹脂絶縁層に、粗化液による粗化処理を施すことにより、表面粗さは小さいが、導体層との密着性が高い樹脂絶縁層を提供することができる。
また、本発明のプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸して形成される。このようなプリプレグを用いれば、多層プリント配線板の製造において、導体層の下地となる樹脂絶縁層を容易に形成することができる。そして、形成された樹脂絶縁層に、粗化液による粗化処理を施すことにより、表面粗さは小さいが、導体層との密着性が高い樹脂絶縁層を提供することができる。
そして、本発明の多層プリント配線板は、内層回路基板の導体層上に樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板であって、前記樹脂絶縁層は、上述のエポキシ樹脂組成物から形成されものであることを特徴とする。このような構成によれば、表面粗さは小さいが、導体層との密着性が高い樹脂絶縁層を得ることができ、その結果として、回路配線間隔を小さくした場合においても、正確な回路パターンを形成しうる多層プリント配線板を提供することができる。
さらに、前記多層プリント配線板においては、前記樹脂絶縁層は前記樹脂フィルム及びプリプレグから選ばれる少なくとも1種から形成されるものであることが好ましい。このような構成によれば前記多層プリント配線板を容易に提供することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物から形成される樹脂絶縁層は、その表面を粗化剤により粗化した場合に表面粗さが小さいにもかかわらず、導体層との密着性に優れた表面を得ることができる。従って、回路の配線間隔を従来よりも小さくして高密度化する場合においても正確な回路パターンを形成することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)平均のエポキシ当量が150〜400である第1のエポキシ樹脂、(B)平均のエポキシ当量が450〜500のビスフェノールA型エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂、及び(C)トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂を含有し、(A)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(A)が4.2〜9であることを特徴とする。
(A)成分である第1のエポキシ樹脂は、平均のエポキシ当量が150〜400のものである。前記平均のエポキシ当量が150未満の場合には、得られる硬化物を粗化処理して形成される表面の表面粗さが小さくなりすぎ、400を超える場合には前記表面粗さが大きくなりすぎて、導体層との密着性が低下する。
(A)成分の具体例としては、例えば、平均のエポキシ当量が150〜400である、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノールのジグリシジルエーテル化合物、多官能アルコールのジグリシジルエーテル化合物、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物であるフェノール系ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びこれらを臭素化したエポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、反応性が高い点からフェノール系ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
(B)成分である第2のエポキシ樹脂は、平均のエポキシ当量が450〜500のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。前記平均のエポキシ当量が450未満の場合には、得られる硬化物を粗化処理して形成される表面の表面粗さが小さくなりすぎて密着性が低下し、500を超える場合には、前記表面粗さが大きくなりすぎる。
(B)成分で用いられるビスフェノールA型エポキシ樹脂の中でも、特に、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。このような臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合には、硬化の際に臭素原子が立体障害となって、架橋が不完全な部分が生じ、硬化物を粗化処理した際には、この部分が微細な凹凸を形成するように溶解するために、高い密着性を示すことに寄与すると考えている。
前記(A)成分及び(B)成分としては、前記(A)成分の平均のエポキシ当量と(B)成分の平均のエポキシ当量との差が260より大きくなるようなエポキシ樹脂の組合せを選択することが好ましい。前記平均のエポキシ当量の差が小さすぎる場合は、(A)、(B)両成分により形成される架橋密度の異なる硬化部分の粗化剤に対する溶解性の差が不充分になり本発明の表面粗さが小さいにもかかわらず高い密着性を備えるという本発明の効果の発現が小さくなり、前記平均のエポキシ当量の差が大きすぎる場合は、架橋密度の差が大きすぎて、表面粗さと密着性のバランスに優れた粗化表面を形成することが困難になる傾向がある。
本発明においては、(A)成分に対する(B)成分の質量比は特に重要であり、その比率((B)成分/(A)成分)が4.2〜9であることを必要とする。(B)/(A)が4.2を下回る場合には、架橋密度が高い部分の割合が高くなりすぎて、粗化処理によって形成される表面の表面粗さが小さくなりすぎ、また、9を超える場合には、架橋密度が低い部分の割合が高すぎて、粗化処理によって形成される表面の表面粗さが大きくなりすぎる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤としてトリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂(C)を含有する。
前記トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂とは、トリアジン環を有する化合物に由来する構成単位を含有するフェノール系ノボラック樹脂である。
前記トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂としては、例えば、以下の一般式(1)で示されるようなものが挙げられる。
Figure 2008007575
(R1 、はそれぞれ、メチル基又は水素、nは1〜5の整数を表す)。
(C)成分の配合量については、(A)成分と(B)成分との合計量の平均のエポキシ当量に対する(C)成分の水酸基当量の比が1:0.3〜1:0.7になるように調整することが好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記(C)成分に由来する窒素の含有率が、エポキシ樹脂組成物全量中に1〜5質量%になるように(C)成分の種類を選択することが好ましい。前記窒素含有率が1〜5質量%の場合には、粗化処理後に緻密で均一な粗化面が得られるので
、結果として導体層との高い密着性を発現する。
このように窒素の含有率が異なるトリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂は、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「フェノライトシリーズ」として、「フェノライトLA1356(窒素含有率19%)、「フェノライトLA3018」(窒素含有率18%)、「フェノライトEXB9851」(窒素含有率8%)等を入手しうる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化反応を促進するために硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としてはエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば特に制限することなく使用することができる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリエチレンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は上記のような樹脂成分とともに無機充填材をさらに含有することができる。このような無機充填材としては、公知の溶融シリカや結晶シリカなどのシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、アルミナ、酸化マグネシウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等が挙げられ、単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらの中でもシリカを用いるのが好ましい。本発明において無機充填材の含有割合は、エポキシ樹脂組成物全量に対して5〜50質量%とすることが好ましい。
また、無機充填材としては平均粒径が1μm以下であることが好ましく((D)成分という)、0.5μm以下が特に好ましい。平均粒径が1μmを超える場合は、硬化後の粗化処理時に粗度が大きくなりすぎる可能性がある。なお、前記平均粒径とはレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された重量平均粒子径を意味する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤を含有してもよい。前記有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、セロソルブ類等を挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、内層回路基板の導体層が形成された外表面に樹脂ワニスに調整されたエポキシ樹脂組成物を塗布したのち、乾燥することにより樹脂絶縁層を形成したり、予め、前記エポキシ樹脂組成物からなる樹脂フィルムやプリプレグを形成しておき、このような樹脂フィルムやプリプレグを内層回路基板の導体層が形成された外表面に載置して、加圧・加熱等により貼り合せて形成することができる。
以下に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、プリプレグ及び多層プリント配線板について更に詳しく説明する。
(樹脂フィルム)
本発明の樹脂フィルムは、前記エポキシ樹脂組成物から形成されるものである。このような樹脂フィルムは、前記エポキシ樹脂組成物から形成される樹脂ワニスを用いて、キャスティング法等によって作製することができる。
例えば、前記樹脂ワニスを支持フィルムの一方の面に5〜100μmの厚みとなるように塗布した後、80〜160℃で1〜40分加熱乾燥し、溶剤を除去するとともに樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させてフィルム状に成形することによって行う。このとき樹脂フィルムの厚みは、5〜80μmであることが好ましい。また、支持フィルム上に樹脂ワニスを塗布・乾燥した後、保護フィルムを貼付しておくと、真空ラミネータの適用に好適な樹脂フィルムとすることができ、例えば、多層プリント配線板の樹脂絶縁層に供される。
また上記の方法において、予め支持フィルムの表面を離型剤で処理しておくと、成形された樹脂フィルムを支持フィルムから容易に剥離することができて作業性が向上する。なお、支持フィルムとしては、樹脂ワニスに溶解しないものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の有機フィルムの他に、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔を用いることができる。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、上述のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸して得られる。例えば、以下の方法によってプリプレグを作製することができる。
すなわち、上記の樹脂ワニス中にシート状基材を浸漬するなどして、樹脂ワニスをシート状基材に含浸させた後、120〜180℃で1〜40分間加熱乾燥し、溶剤を除去するとともに樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって行う。このときプリプレグ中の樹脂量は、プリプレグ全量に対して30〜80質量%であることが好ましい。なお、上記のシート状基材としては、特に限定されるものではないが、好ましくはシート状繊維基材が用いられ、例えば、ガラス等の無機質繊維の織布(クロス)又は不織布や、アラミドクロス、ポリエステルクロス、紙等を用いることができる。
(多層プリント配線板)
本発明に係る多層プリント配線板は、内層回路基板の導体層上に樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板であって、前記樹脂絶縁層は、上述のエポキシ樹脂組成物から形成されるものであることを特徴とする。
多層プリント配線板の製造技術として、内層回路基板の導体層上に樹脂絶縁層と導体層とを交互に積み上げていくビルドアップ方式が知られており、本発明の多層プリント配線板は、前記ビルドアップ方式による多層プリント配線板の製造過程において、例えば、上述の樹脂フィルムを用いて硬化樹脂絶縁層を形成した後、粗化液により粗化処理して表面を粗化したものを前記樹脂絶縁層とし、さらにこの上に積層される前記導体層を導体めっきにより形成して得られるものである。
以下、多層プリント配線板の製造方法を説明しつつ本発明の多層プリント配線板の具体的形態について説明する。
本発明の多層プリント配線板を得るには、先ず、予め外表面に内層回路が形成された内層回路基板を用意し、酸溶液等を用いてこの回路基板の内層回路に黒色酸化処理(黒化処理)等の内層粗化処理を行っておく。次に、内層回路基板の外表面に真空ラミネータを用いて樹脂フィルムを積層成形し、積層した樹脂フィルムの支持フィルムを除去してからオーブンなどで加熱硬化させる。次に、硬化樹脂フィルムの表面を粗化液によって粗化処理を行う。
粗化液としては酸と酸化剤の両方又は一方を含むものであれば、特に限定されるものではない。例えば、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理するをすることができる。
さらに、ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB211」、ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB213」、ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB216」の3種類からなるものをセットで粗化液として用いることもできる。粗化液による粗化処理は、樹脂フィルムの積層成形後の積層板を粗化液に浸漬させることによって行うことができ、また、粗化液の種類を変えて複数回行うことができる。粗化液の温度は40〜9℃、浸漬時間は1〜30分間に設定することができる。
上記ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB211」、ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB213」、ロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB216」の3種類からなるものをセットで粗化液として用いる場合には、まず積層成形後の積層板を「サーキュポジットMLB211」に浸漬させて樹脂を膨潤させ、次に上記積層板を「サーキュポジットMLB213」に浸漬させて樹脂を溶解させ、最後に上記積層板を「サーキュポジットMLB216」に浸漬させて塩基性下の状態を中和させることによって、粗化液による粗化処理を行うことができる。
その後、上記のように粗化処理された樹脂絶縁層の表面に公知のアディティブ法で外層回路を形成することによって、多層プリント配線板を得ることができる。アディティブ法には、フルアディティブ法とセミアディティブ法とがあり、本発明においてはいずれの方法を使用して外層回路を形成してもよい。以下、セミアディティブ法で外層回路を形成する例について説明する。
まず、スルーホールやブラインドバイアホールを形成するための貫通穴や非貫通穴を粗化処理後の樹脂絶縁層にドリル、レーザーなどにより形成する。次に、無電解めっき処理を行って樹脂絶縁層の表面に無電解銅めっき等の無電解めっきを形成した後、外層回路を形成しない部分にめっきレジストを形成する。その後、電解めっき処理を行って、めっきレジストが形成されていない部分に電解銅めっき等の電解めっきを形成した後、めっきレジストを剥離する。そして、めっきレジストの剥離により露出した無電解めっきをクイックエッチング法(フラッシュエッチング)で除去することにより、外層回路が形成された多層プリント配線板を得ることができる。貫通穴や非貫通穴の内面には無電解めっき及び電解めっきが形成されることによって、内層回路と外層回路を電気的に接続するスルーホールやブラインドバイアホールが形成される。なお、適宜にアフターキュアーを行ってもよい。
また、樹脂フィルムの代わりに上述のプリプレグを用いて多層プリント配線板を作製することもできる。樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させた後、得られた含浸体を乾燥機で加熱して乾燥させれば、半硬化のBステージ状態にあるプリプレグを得ることができ、このプリプレグに保護フィルムを配置した後、多段真空プレス等の成形方法によりこれらを一体に積層成形する。成形後に保護フィルムを除去した後は、樹脂フィルムを用いた場合と同様に粗化処理を行いアディティブ法により外層回路を形成して、プリント配線板を得ることができる。なお、シート状基材としてはガラスクロスが好ましく用いられ、例えば、日東紡社製の「WEA1116」(厚さ0.08mmのガラスクロス)や、「WEA1078」(厚さ0.04mmのガラスクロス)等を用いることができる。
さらに、樹脂フィルムの代わりに上述の樹脂ワニスを直接用いて、内層回路基板の導体層上に樹脂絶縁層を設けることによって多層プリント配線板を作製することもできる。すなわち、樹脂フィルムの作製と同様に一般にキャスティング法と呼ばれる方法によって行うものであり、内層回路基板の外表面に好ましくは5〜100μmの厚みに樹脂ワニスを塗布した後、これを100〜200℃で1〜90分間加熱加圧することによって行うことができる。この場合は、内層回路基板に樹脂ワニスが直接フィルム状に成形されるものであるが、乾燥後の厚みは5〜80μmであることが好ましい。その後は、樹脂フィルムを用いた場合と同様に粗化処理を行いアディティブ法により外層回路を形成して、プリント配線板を得ることができる。
〈実施例1〜11及び比較例1〜9〉
表1及び表2に示した、配合組成により、エポキシ樹脂、トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂(硬化剤)、硬化促進剤、レベリング剤及び必要により無機充填材を加え、さらにメチルエチルケトンを加え、固形分が65質量%のエポキシ樹脂ワニスを調製した。各材料としては次のものを用いた。
(エポキシ樹脂)
(A−1):大日本インキ化学工業(株)製N690(クレゾール系ノボラック型エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量215)
(A−2):東都化成(株)製YDB400(ビスフェノールA型臭素化エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量400、臭素含有率48%)
(A−3):日本化薬(株)製NC3000H(多官能エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量290)
(A−4):大日本インキ化学工業(株)製850S(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量190、)
(B―1):大日本インキ化学工業(株)製1121N(ビスフェノールA型臭素化エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量480、臭素含有率21%)
(B―2):大日本インキ化学工業(株)製1051(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂,平均のエポキシ当量480)
(硬化剤)
(C―1):大日本インキ化学工業(株)製LA3018(トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂、下記式(1)中、R1 及びRがメチル基、nが1〜5のもの、窒素含有率18%)
(C―2):大日本インキ化学工業(株)製EXB9851(トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂、上述の一般式(1)中、R1 及びRがメチル基、nが1〜5のもの、窒素含有率8%)
(C−3):大日本インキ化学工業(株)製VH4170(ビスフェノールA型ノボラック樹脂)
(硬化促進剤)
・四国化成工業(株)製2E4AMZ−CN(シアノエチルイミダゾール)
(無機充填剤)
・(株)アドマテックス製SO25R(球状シリカ,重量平均粒径0.5μm)
・電気化学工業(株)FB−1SDX(球状シリカ,重量平均粒径1.8μm)
(その他)
・レベリング剤:大日本インキ(株)社製 F470
次に、ポリエチレンテレフタレートの支持フィルムの離型面に、マルチコーター(ヒラノテクシード社製「M400」)を使用して、上記エポキシ樹脂ワニスを塗布し、これを搬送速度20cm/分で搬送しながら100℃の温度で乾燥し半硬化(Bステージ)状態とした。さらに塗布面に厚さ20μmのポリエチレン(PE)保護フィルムを貼付して保護フィルム付きエポキシ樹脂フィルムを作製した。
積層成形には真空ラミネータを用い、まず、予め外表面に内層回路が形成された内層回路基板(松下電工社製「R−1566」)の表面に前記保護フィルム付きエポキシ樹脂フィルムの保護フィルムを剥離した樹脂面を重ね合わせた後、真空ラミネータを用いて積層成形(温度90℃、圧力0.3MPa)した。そして、支持フィルムを剥離して除去し、オーブンで160℃×75分の条件で硬化させ、粗化液による絶縁層の粗化処理を行った。
この粗化処理は下記(1)〜(3)の順番で行った。
(1)積層成形後の積層板をロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB211」の液中に80℃で6分間浸漬させた。
(2)次にロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB213」の液中に80℃で10分間浸漬させた。
(3)最後にロームアンドハース社製「サーキュポジットMLB216」の液中に45℃で5分間浸漬させた。
その後、粗化処理された樹脂絶縁層の表面に上記のセミアディティブ法を用いて外層回路を形成した。すなわち、無電解銅めっき処理を行って樹脂絶縁層の表面に無電解銅めっきを形成した後、120℃で60分間乾燥させ、回路を形成しない部分にめっきレジストを形成した。さらに電解銅めっき処理を行った後にめっきレジストを剥離し、無電解めっきをフラッシュエッチングにより除去した。無電解銅めっきと電解銅めっきにより形成されためっきの厚さは20±2μm、めっき幅は10mmであった。
外層回路を形成した後、180℃60分間乾燥機でアフターキュアーを行うことによって、多層プリント配線板を得た。上記のようにして得られたプリント配線板をめっきピール強度の評価用サンプルとして用いて、以下に示す方法によりその評価を行った。この結果を表1(実施例)及び表2(比較例)に示す。なお、表1及び表2では、エポキシ樹脂の平均のエポキシ当量を「エポキシ当量」と略記した。
<めっきピール強度の評価方法>
90度ピール試験方法(JIS C6481)に従い、外層回路(銅めっき幅10mm)のピール強度を測定した。いずれの実施例及び比較例についても、n(評価用サンプル数)を3として上記測定を行った。なお、表2中「剥離」は、メッキがきれいに付着せず、ピール強度が測定できないほど密着力が弱かったことを示す。
<算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)の評価方法>
オリンパス社製レーザー顕微鏡「OLS3000」を用い、以下の条件によって各実施例、比較例における粗化処理後の樹脂絶縁層の表面を評価した。
・半導体レーザー:波長408nm
・測定ピッチ:0.1μm
・測定範囲:0.012mm(平面)
Figure 2008007575
Figure 2008007575
表1に示すように、実施例1〜11のめっき外層回路は、いずれも表面粗さが小さいにも関らずめっきピール強度が高いことが分かる。また、第2のエポキシ樹脂の種類が異なる以外は同一の組成の実施例2と実施例11とを比較すると、第2のエポキシ樹脂として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた実施例2の場合には、表面粗さが小さくなっているにもかかわらず、ピール強度が大幅に高くなっていることがわかる。
一方、表2に示すように、比較例のめっき外層回路は、いずれもめっきピール強度が低かった。

Claims (9)

  1. (A)平均のエポキシ当量が150〜400である第1のエポキシ樹脂、(B)平均のエポキシ当量が450〜500のビスフェノールA型エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂、及び(C)トリアジン環を有するフェノール系ノボラック樹脂を含有し、
    (A)成分に対する(B)成分の質量比(B)/(A)が4.2〜9であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記第2のエポキシ樹脂(B)におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂が臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記(A)成分の平均のエポキシ当量と(B)成分の平均のエポキシ当量との差が260より大きい請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記(C)成分がトリアジン環を有するクレゾール系ノボラック樹脂である請求項1〜3の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. さらに(D)平均粒径が1μm以下の無機充填材を含有する請求項1〜4の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物から形成されることを特徴とする樹脂フィルム。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸して形成されることを特徴とするプリプレグ。
  8. 内層回路基板の導体層上に樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板であって、前記樹脂絶縁層が請求項1〜5の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物から形成されるものであることを特徴とする多層プリント配線板。
  9. 前記樹脂絶縁層が請求項6に記載の樹脂フィルム、及び請求項7に記載のプリプレグから選ばれる少なくとも1種から形成されるものである請求項8に記載の多層プリント配線板。
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