以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操向輪2を操舵するために操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するための例えばラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達するための軸継手としての中間軸6とを有している。
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通して、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部にステアリングホイール3が連結されている。ステアリングシャフト4の他方の端部に中間軸6が連結されている。
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラックバー14と、ピニオン軸13およびラックバー14を支持するラックハウジング15とを有している。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラックバー14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラックバー14は、ラックハウジング15に直線往復移動自在に支持されている。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ラックハウジング15の両側へラックバー14の両端部が突出している。ラックバー14の各端部はそれぞれ、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して対応する操向輪2に連結されている。
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4等を介して操舵機構5に伝達される。操舵機構5では、ピニオン軸13の回転が、ピニオン歯13aおよびラック歯14aによって、自動車の横方向に沿ってのラックバー14の直線移動に変換される。これにより操向輪2を操舵することができる。
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、減速機19とを有している。
本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、操舵機構5に関連して設けられている。
図2は、図1に示す操舵機構5の斜視図である。図3は、図1に示す電動パワーステアリング装置1の操舵機構5の正面図である。
図2および図3を参照して、操舵機構5のラックハウジング15は、第1のハウジング20と第2のハウジング21とを有している。
第1のハウジング20は、ラックバー14に沿って延びる第1の筒状部20aと、ピニオン軸13を支持しつつトルクセンサ16を収容して支持する部分としての第2の筒状部20bと、車体9に取り付けられて支持される被取付部20cとを有している。
第2のハウジング21は、第1のハウジング20を介して車体9に支持されている。第2のハウジング21は、ラックバー14に沿って延びる筒状部21aと、電動モータ18を支持しつつ減速機19の一部を構成するギヤハウジング21bとを有している。筒状部21aは、後述するハウジング本体31の第3の筒部35およびエンドカバー32の筒状部32fにより形成されている。また、ギヤハウジング21bは、ハウジング本体31における第3の筒部35の延設部70以外の部分と、エンドカバー32における筒状部32f以外の部分とにより形成されている。
図1に戻って、ピニオン軸13は、入力軸22と、出力軸23と、トーションバー24とを有している。入力軸22および出力軸23は、トーションバー24を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸22は、中間軸6およびステアリングシャフト4を介して、ステアリングホイール3に連なっている。出力軸23の端部には、ピニオン歯13aが設けられている。入力軸22に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー24が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸22および出力軸23が相対回転する。
トルクセンサ16は、トーションバー24に関連して設けられ、トーションバー24を介する入力軸22および出力軸23間の相対回転変位量に基づいてトルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。
ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、電動モータ18を制御する。
電動モータ18は、モータハウジング18aと、このモータハウジング18aに軸受を介して回動自在に支持される出力軸18bとを有している。電動モータ18の出力軸18bは、ラックバー14が延びる方向に平行に配置され、出力軸18bとラックバー14との間に所定距離が隔てられている。
減速機19は、電動モータ18により駆動される駆動ギヤ25と、この駆動ギヤ25により駆動される中間ギヤ26と、この中間ギヤ26により駆動される従動ギヤ27と、従動ギヤ27により駆動されるナット28と、ナット28により複数のボール29を介して駆動されるねじ軸30とを有している。
駆動ギヤ25と、中間ギヤ26と、従動ギヤ27とが、それぞれ斜歯歯車からなり、斜歯歯車機構を構成している。
ナット28とボール29とねじ軸30とが、ボールねじ機構を構成している。ボールねじ機構は、ナット28の回転運動をねじ軸30の直線運動に変換する変換機構として機能する。ナット28は、雌ねじを有している。ナット28は、従動ギヤ27に一体回転できるように固定されていて、例えば従動ギヤ27に一体に形成されている。ねじ軸30は、雄ねじを有している。ねじ軸30は、ラックバー14に一体移動するように固定されている。本実施形態では、ねじ軸30の雄ねじがラックバー14の外周に形成されていて、ねじ軸30とラックバー14とが一体に形成されている。
電動モータ18の出力が、駆動ギヤ25、中間ギヤ26および従動ギヤ27を順次に介し、さらにボールねじ機構を介して、操舵機構5のラックバー14に伝達される。
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してラックバー14に伝達され、これとともに、ステアリングホイール3の動きが操舵機構5のラックバー14に伝わり、操向輪2が操舵される。具体的には、電動モータ18の出力回転は、伝動装置としての減速機19により減速されつつ、ラックバー14の直線運動に変換されて、ラックバー14に伝達され、その結果、操舵が補助される。
図4は、図3に示すS4−S4断面の操舵機構5の要部の一部断面右側面図である。図5は、図4に示すS5−S5断面の断面図である。図6は、図5に示すS6−S6断面の断面図である。
図5を参照して、本実施の形態では、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび中間ギヤ26の中心軸線26aは互いに平行に配置されている。また、中間ギヤ26の中心軸線26aおよび従動ギヤ27の中心軸線27aは互いに平行に配置されている。ラックバー14、ナット28、およびねじ軸30は、従動ギヤ27と同心に配置されている。
図4および図6を参照して、中間ギヤ26の中心軸線26aは、軸方向S2(中心軸線26aが延びる方向に相当する。)から見たときに、駆動ギヤ25の中心軸線25aと、従動ギヤ27の中心軸線27aとを含む平面P0(二点鎖線で図示。)から、この平面P0の法線方向に所定距離離れて配置されている。
図3および図5を参照して、第2のハウジング21は、ハウジング本体31と、エンドカバー32とを有している。ハウジング本体31は、単一部品からなり、駆動ギヤ25、中間ギヤ26および従動ギヤ27を支持している。このように、単一部品からなるハウジング本体31は、部品点数が最小で済むので、部品コストおよび組立コストを低減することができる。また、エンドカバー32は、単一部品からなり、ハウジング本体31に固定されている。
本実施形態では、駆動ギヤ25、中間ギヤ26および従動ギヤ27が、同一のハウジングとしてのハウジング本体31によって回動自在に支持されている。
図7は、図3に示す第2のハウジング21の分解斜視図である。図8は、図3に示す第2のハウジング21の分解斜視図であり、図7とは異なる方向から見た斜視図である。図9A,図9Bおよび図9Cは、図3に示す第2のハウジング21のハウジング本体31の左側面図、正面図および右側面図である。
図7および図8を参照して、ハウジング本体31は、第1の筒部33と、第2の筒部34と、第3の筒部35とを有している。第1の筒部33と、第2の筒部34と、第3の筒部35とは、互いに接続されていて、金属、例えばアルミニウム合金により一体に形成されている。
図5および図8を参照して、第1の筒部33は、有底円筒形状をなしている。第1の筒部33は、駆動ギヤ25を支持している。第1の筒部33は、駆動ギヤ25を収容するための第1の収容空間33aを区画している。
図7および図8を参照して、第1の筒部33は、軸方向S1について互いに反対側に配置された第1の端部33bおよび第2の端部33cを有している。第1の端部33bは、覆われている。第1の収容空間33aは、第1の筒部33の一端としての第2の端部33cのみで、軸方向S1の一方の向き(図5で左側に相当する)のみに向けて開放されている。第2の端部33cは、軸方向S1に直角に交差する端面33eを有している。
第1の筒部33の軸方向S1は、第1の筒部33の軸線が延びる方向に相当し、第1の収容空間33aの軸方向、駆動ギヤ25の軸方向、および後述する駆動ギヤ支軸38の軸方向と互いに一致する。
図5および図7を参照して、第2の筒部34は、有底円筒形状をなしている。第2の筒部34は、中間ギヤ26を支持している。第2の筒部34は、中間ギヤ26を収容するための第2の収容空間34aを区画している。
図7および図8を参照して、第2の筒部34は、軸方向S2について互いに反対側に配置された第1の端部34bおよび第2の端部34cを有している。
第2の筒部34の軸方向S2は、第2の筒部34の軸線が延びる方向に相当し、第2の収容空間34aの軸方向、および後述する中間ギヤ支軸46の軸方向と互いに一致し、中間ギヤ26の軸方向および第1の筒部33の軸方向S1に平行である。
第1の端部34bは、相対的に大径の円孔でありかつ開口孔としての入口開口34hを形成している。入口開口34hは、中間ギヤ26の外径よりも所定長長い内径の円形をなし、組立時に中間ギヤ26を第2の収容空間34a内に組み入れるときの入口として機能する。また、第1の端部34bは、入口開口34hの縁部としての端面34dを有している。端面34dは、軸方向S2に直角に交差している。
第2の端部34cは、塞がれていて、その中央部に、相対的に小径の円孔としての支持孔34iを形成している。支持孔34iは、中間ギヤ26を支持するために設けられている。また、第2の端部34cは、支持孔34iの縁部としての端面34eを有している。端面34eは、軸方向S2に直角に交差している。
第2の収容空間34aは、一端としての第1の端部34bのみで、軸方向S2の他方の向き(図5で右側に相当する)のみに向けて開放されている。
図5および図8を参照して、第3の筒部35は、円筒形状をなしている。第3の筒部35は、従動ギヤ27を回動自在に支持し、ラックバー14を挿通させている。第3の筒部35は、従動ギヤ27を収容するための第3の収容空間35aを区画している。
図7および図8を参照して、第3の筒部35は、軸方向S3について互いに反対側に配置された第1の端部35bおよび第2の端部35cを有している。第1の端部35bおよび第2の端部35cは、ともに開口している。第2の端部35cの内周面が、第1の端部35bの内周面よりも大径に形成されている。第3の収容空間35aは、第3の筒部35の軸方向S3の一端としての第2の端部35cで、軸方向S3の一方に向けて開放されているといえる。
第3の筒部35の軸方向S3は、第3の筒部35の軸線が延びる方向に相当し、第3の収容空間35aの軸方向、従動ギヤ27の軸方向、ラックバー14の軸方向、および後述する従動ギヤ支軸62の軸方向と互いに一致し、軸方向S1,S2と平行である。
第3の筒部35の第1の端部35bは、軸方向S3に直角に交差する端面35dを有している。また、第3の筒部35の第2の端部35cは、軸方向S3に直角に交差する端面35eを有している。この端面35eと、第1の筒部33の第2の端部33cの端面33eとは、軸方向S3について互いに同じ位置に配置されている。
図9A,図9Bおよび図9Cを参照して、第2の収容空間34aは、当該第2の収容空間34aに隣接する第1の収容空間33aおよび第3の収容空間35aとは逆向きに開放されている。さらに、第2の収容空間34aを軸方向S2から見たときに、第2の収容空間34aは、残りの収容空間としての第1の収容空間33aに部分的に重なっていて、これとともに、残りの収容空間としての第3の収容空間35aに部分的に重なっている。
すなわち、第1の収容空間33aにおける一部であって第1の筒部33の第2の端部33cの近傍にある周方向の一部の領域33a1と、第2の収容空間34aにおける一部であって第2の筒部34の第1の端部34bの近傍にある周方向の一部の領域34a1とが、軸方向S1,S2に見たときに互いに重なっている。また、第3の収容空間35aの一部であって第3の筒部35の第2の端部35cの近傍にある周方向の一部の領域35a2と、第2の収容空間34aにおける一部であって第2の筒部34の第1の端部34bの近傍にある周方向の一部の領域34a2とが、軸方向S2,S3に見たときに互いに重なっている。
また、上述の各領域33a1,34a1,34a2,35a2は、後述するように対応するギヤ25,26,27を支持する部分をそれぞれ含んでいる。これにより、大径の各筒部33,34,35が、対応するギヤ25,26,27を安定して受けることができるので、各ギヤ25,26,27同士の傾きが生じ難く、しかも、ハウジング本体31を小型化することができる。
図5と図8を参照して、エンドカバー32は、ハウジング本体31の軸方向S1の端部に取り付けられていて、固定部材としての複数のボルト36により固定されている。エンドカバー32は、第1の部分32aと、第2の部分32bとを有している。これら第1の部分32aと第2の部分32bとは、互いに一体に形成され、軸方向S1に直交する方向に互いに隣接して配置されている。
エンドカバー32の第1の部分32aは、第1の筒部33の開放側端部としての第2の端部33cに配置されている。エンドカバー32の第1の部分32aは、電動モータ18を位置決めし、ハウジング本体31に位置決めされている。電動モータ18は、ハウジング本体31にエンドカバー32を介して位置決めされている。また、電動モータ18は、ハウジング本体31に固定部材としてのボルト37(図11参照)により固定されている。電動モータ18とハウジング本体31とは、その間にエンドカバー32を挟持している。
また、エンドカバー32の第2の部分32bは、第3の筒部35の開放側端部としての第2の端部35cに配置されていて、この第2の端部35cを覆っている。
また、エンドカバー32は、第1の部分32aと第2の部分32bとの接続部32cを有している。接続部32cは、電動モータ18を支持しつつ、第3の筒部35の第2の端部35cを覆っている。
図10A,図10Bおよび図10Cは、図3に示す第2のハウジング21のエンドカバー32の左側面図、正面図および右側面図である。図11は、図3に示す操舵機構5の左側面図である。
図10A,図10Bおよび図10Cを参照して、エンドカバー32は、ハウジング本体31に対向する内面32dと、この内面32dとは反対側にある外面32eとを有している。
エンドカバー32の内面32dは、第1の部分32aに対応する部分と、第2の部分32bに対応する部分とを有している。エンドカバー32の外面32eは、第1の部分32aに対応する部分と、第2の部分32bに対応する部分とを有している。
エンドカバー32の内面32dにおいて第1の部分32aに対応する部分は、ハウジング本体31の第1の筒部33の第2の端部33cの端面33eに接する環状の端面32a1と、第1の筒部33の第2の端部33cの内周面に嵌合される環状凸部32a2とを有している。環状凸部32a2は、環状の端面32a1から軸方向S1に突出して形成されている。環状凸部32a2の外周は、円筒面に形成されている。
図8および図11を参照して、エンドカバー32の外面32eにおいて、第1の部分32aに対応する部分は、円筒形状の内周面32a3と、この内周面32a3を取り囲む環状の端面32a4とを有している。内周面32a3は、内面32dの環状凸部32a2の外周に同心に配置されていて、電動モータ18のモータハウジング18aの端部の嵌合部に嵌合している。外面32eの端面32a4は、内面32dの端面32a1と平行に形成され、電動モータ18のモータハウジング18aの端部の端面に当接している。
電動モータ18のモータハウジング18aの端部の嵌合部および端面は、ハウジング本体31に連結するための連結部を構成している。
エンドカバー32の上述の内周面32a3および端面32a4は、電動モータ18のモータハウジング18aの連結部に連結するための連結部として機能し、電動モータ18を位置決めすることができる。
図9Bおよび図10Bを参照して、エンドカバー32の内面32dにおいて第2の部分32bに対応する部分は、環状の端面32b1と、環状凸部32b2とを有している。環状凸部32b2は、環状の端面32b1の内周縁部から軸方向S3に突出して形成されている。環状凸部32b2の外周は、円筒面に形成されていて、ハウジング本体31の第3の筒部35の第2の端部35cの内周面に嵌合されている。環状の端面32b1は、ハウジング本体31の第3の筒部35の第2の端部35cの端面35eに接している。これにより、エンドカバー32は、ハウジング本体31に位置決めされている。
図5および図10Bを参照して、エンドカバー32の外面32eにおいて第2の部分32bに対応する部分は、軸方向S3に突出した筒状部32fを有している。筒状部32fには、ラックバー14のねじ軸30が軸方向S3に移動自在に挿通されている。筒状部32fは、内面32dの環状凸部32b2の外周に同心に配置され、また、ハウジング本体31の第3の筒部35の内周面68に同心に配置されている。
図11を参照して、筒状部32fの最大の外径D1は、第3の筒部35の最大の内径(第3の収容空間35aの最大外径D2に相当する。)よりも小さくされている。軸方向S3に見たときに、第3の筒部35の第3の収容空間35aおよびモータハウジング18aが部分的に互いに重なっている。
図12は、図5の要部拡大図であり、主に駆動ギヤ25を示す。
図12を参照して、電動パワーステアリング装置1は、駆動ギヤ25を支持する第1の支軸としての駆動ギヤ支軸38と、駆動ギヤ25を回動自在に支持する複数の軸受39,40と、軸受39,40の軸方向移動を規制するための固定部材41およびロックナット42と、電動モータ18の出力軸18bに駆動ギヤ支軸38を連結するための軸継手43とを有している。
駆動ギヤ25は、駆動ギヤ支軸38および2つの軸受39,40を介して、ハウジング本体31の第1の筒部33に回動自在に支持されている。第1の筒部33は、2つの軸受39,40を保持している。2つの軸受39,40は、駆動ギヤ支軸38を回動自在に支持している。
軸受39は、外輪39aと、内輪39bと、内輪39bおよび外輪39aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール39cとを有している。軸受40は、外輪40aと、内輪40bと、内輪40bおよび外輪40aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール40cとを有している。各軸受39,40は深溝型の玉軸受である。
駆動ギヤ25は、斜歯歯車からなり、金属により略円柱形状に形成されていて、外周に複数の斜歯が形成されている。
駆動ギヤ25は、軸方向S1についての駆動ギヤ支軸38の一方の端部に一体回転できるように同心に固定されている。駆動ギヤ25と駆動ギヤ支軸38とは、本実施形態では、一体に形成されている。なお、駆動ギヤ25と駆動ギヤ支軸38とは、互いに別体に形成されて、互いに固定されてもよい。
駆動ギヤ25は、片持ち状態で支持されている。複数の軸受39,40は、駆動ギヤ25に対して駆動ギヤ支軸38の軸方向S1の同側に配置されている。一方の軸受39は、駆動ギヤ25に隣接して配置されている。他方の軸受40は、駆動ギヤ25から軸方向S1に離れて配置されている。一方の軸受39と他方の軸受40とは、その互いに対向する端面同士の間に、所定間隔を隔てて配置されている。
駆動ギヤ支軸38は、軸方向S1に延びた段付き状の円柱形状をなしている。駆動ギヤ支軸38は、大径部38aと、大径部38aに端壁38bを介して接続された小径部38cとを有している。大径部38aは、駆動ギヤ25に隣接して配置され、円筒面に形成されている。小径部38cは、円筒面に形成されていて、駆動ギヤ25とは大径部38aを挟んで反対側に配置されている。
駆動ギヤ支軸38は、一方の軸受39の内輪39bを保持する第1の保持部38dと、他方の軸受40の内輪40bを保持する第2の保持部38eと、軸継手43に一体回動するように連結された連結部38fとを有している。
連結部38fは、軸方向S1について駆動ギヤ支軸38の端部であって駆動ギヤ25とは反対側にある他方の端部に配置されている。
第1の保持部38dは、一方の軸受39の内輪39bの軸方向移動を規制する。第1の保持部38dは、内輪39bの内周面に嵌合する嵌合部と、内輪39bの一方の端面を受けて軸方向S1の一方の向きへの内輪39bの移動を規制する第1の規制部と、内輪39bの他方の端面を受けて軸方向S1の他方の向きへの内輪39bの移動を規制する第2の規制部とを有している。第1の保持部38dの嵌合部は、駆動ギヤ25に隣接した大径部38aの外周面からなる。第1の保持部38dの第1の規制部は、駆動ギヤ25の側面からなる。第1の保持部38dの第2の規制部は、大径部38aの外周面に形成された周溝に嵌められた止め輪44からなる。
第2の保持部38eは、他方の軸受40の内輪40bの軸方向移動を規制する。第2の保持部38eは、内輪40bの内周面に嵌合する嵌合部と、内輪40bの一方の端面を受けて軸方向S1の一方の向きへの内輪40bの移動を規制する規制部とを有している。第2の保持部38eの嵌合部は、小径部38cの外周面からなる。第2の保持部38eの規制部は、端壁38bからなる。
駆動ギヤ支軸38は、軸方向S1の両側についての移動を、固定部材41および一対の軸受39,40を介してハウジング本体31の第1の筒部33により規制されている。
図12および図7を参照して、第1の筒部33は、内周面45を形成する筒状の部分としての主体部33fと、軸方向S1についての第1の筒部33の第1の端部33bに配置された底部33gとを有している。
第1の収容空間33aは、第1の筒部33の内周面45および底部33gにより取り囲まれて区画されている。第1の収容空間33aは、軸方向S1の一方の側へ向けて、具体的には、底部33gとは反対側へ向けて、開放されている。第1の収容空間33aには、軸方向S1の上述の一方の側から、被収容部品としての駆動ギヤ25を組み込むことができるようになっている。
内周面45は、駆動ギヤ25を取り囲んでいる第1の部分45aと、一対の軸受39,40を保持した第2の部分45bと、固定部材41を保持した第3の部分45cと、エンドカバー32が嵌められている第4の部分45dとを有している。第1の部分45aと、第2の部分45bと、第3の部分45cと、第4の部分45dとは、この順に軸方向S1に沿って底部33g側から互いに隣接して並んでいて、この順により大径に形成されている。
内周面45において、第1の部分45aは、軸方向S1から見たときに断面円弧形状をなしている。これの円弧端同士の間に開口が形成されている。この開口を通じて、第1の筒部33の内部は、第2の筒部34の内部に連通している。第2の部分45bは、第1の部分45aに、端壁45eを介して接続されている。第2の部分45bは、周方向に連続した円筒面からなる。第3の部分45cは、雌ねじを有している。この雌ねじに固定部材41がねじ込まれている。第4の部分45dは、第3の部分45cに端壁45fを介して接続されていて、周方向に連続した円筒面からなる。
固定部材41は、第1の筒部33の内周面45に軸方向S1の位置調整可能に係合している。固定部材41は、環状をなし、これの外周には、雄ねじが形成されている。固定部材41が、第1の筒部33の入口側開口にある内周面45の第3の部分45cの雌ねじに、ねじ込まれている。固定部材41のねじ込み量を調整することにより、軸受40の外輪40aを所定の押圧力で押圧付勢することができる。また、固定部材41の雄ねじに、回り止め部材としてのロックナット42がねじ込まれている。ロックナット42の端面が第1の筒部33の入口側開口にある端壁45fに当接している。ロックナット42は、軸方向S1についての固定部材41の移動を阻止している。
固定部材41は、以下のように、一対の軸受39,40に軸方向S1についての予圧を付与するための予圧付与部材として機能する。その結果、2つの軸受39,40についての軸受すきま(遊び)が除去されているので、駆動ギヤ25が噛み合い時に傾きを生じ難くされている。
すなわち、2つの軸受39,40の内輪39b,40bは、軸方向S1について互いに近接する向きの相対移動を規制されていて、互いに対向する端面同士の間に、軸方向S1に所定距離を隔てて並んで配置されている。これとともに、2つの軸受39,40の外輪39a,40aにおいて、互いに遠い側にある端面は、第1の筒部33の端壁45eと、固定部材41の端面とに当接して、軸方向S1に受けられている。また、外輪39a,40a同士は、互いに近接する向きへの移動を許容されている。
この状態で、固定部材41を第1の筒部33にねじ込んで、固定部材41を軸方向S1に位置調整し、両外輪39a,40a同士を近づけて、その間の距離を所定距離に調整するようにしている。例えば軸方向S1についての外輪39a,40a同士の間隔は、内輪39b,40b同士の間隔よりも短くされている。
これにより、両軸受39,40に軸方向S1についての所定の予圧としての押圧力を付与することができる。軸受39の内輪39bと外輪39aとは、軸方向S1の逆向きに互いに付勢されている。これとともに、軸受40の内輪40bと外輪40aとは、軸方向S1の逆向きに互いに付勢されている。その結果、両軸受39,40の軸受すきまが除去される。
図13は、図5の要部拡大図であり、主に中間ギヤ26を示す。
図13を参照して、電動パワーステアリング装置1は、中間ギヤ26を支持する第2の支軸としての中間ギヤ支軸46と、中間ギヤ支軸46に設けられた端板47と、中間ギヤ支軸46に支持されていて中間ギヤ26を回動自在に支持している複数の軸受48,49と、軸受48,49同士を離隔させているスペーサ50と、軸受48,49の軸方向移動を規制するための固定部材51およびロックナット52とを有している。
また、電動パワーステアリング装置1は、中間ギヤ26をハウジング本体31に対して位置調整するための偏倚機構53を有している。偏倚機構53においては、中間ギヤ支軸46を回動させることにより、中間ギヤ26の中心軸線26aの位置を調整することができる。これにより、中間ギヤ26に関係するバックラッシュ量が調整されるようになっている。
また、電動パワーステアリング装置1は、回動位置調整された中間ギヤ支軸46の回動を規制するための回動規制部材であり且つ加圧部材としての締結部材54を有している。この締結部材54は、後述するように位置調整された中間ギヤ支軸46を締結する締結機構74を構成している。
中間ギヤ支軸46は、一方向に延びる棒状部材からなる。中間ギヤ支軸46は、その長手方向(軸方向S2に相当する。)の一方の端部としての第1の端部46aと、長手方向の他方の端部としての第2の端部46bと、長手方向の中間部46cとを有している。中間ギヤ支軸46の中間部46cが、軸受48,49を支持している。また、中間ギヤ支軸46の第1の端部46aに、端板47が設けられている。中間ギヤ支軸46と端板47とは、一体回転できるように一体化されていて、軸ユニットをなしている。
本実施形態の軸ユニットでは、中間ギヤ支軸46と端板47とは、一体に形成されていて、単一部品を構成している。なお、中間ギヤ支軸46と端板47とは、互いに別体で形成されて互いに固定されることも考えられる。
一方の軸受48は、外輪48aと、内輪48bと、内輪48bおよび外輪48aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール48cとを有している。他方の軸受49は、外輪49aと、内輪49bと、内輪49bおよび外輪49aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール49cとを有している。各軸受48,49は、深溝型の玉軸受である。
ハウジング本体31の第2の筒部34が、上述の軸ユニットを支持している。すなわち、第2の筒部34の入口開口34hの内周面が、中間ギヤ支軸46の第1の端部46aを端板47を介して支持している。第2の筒部34の支持孔34iの内周面が、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bに隣接する部分46fを直接に支持している。中間ギヤ支軸46が、軸受48,49を介して、中間ギヤ26を回動自在に支持している。
中間ギヤ26は、円筒形状をなす金属製の芯金55と、芯金55を取り囲んで環状に合成樹脂部材により形成された歯部56とを有している。
歯部56の外周に、複数の斜歯が形成されている。歯部56は、芯金55に比べて、軸方向S2に短く形成されている。歯部56の内周面が、芯金55の外周に一体回転するように固定されている。
芯金55の内周面は、小径部55aと、大径部55bとを有している。小径部55aと大径部55bとは、環状の端壁55cを介して接続されている。小径部55aは、軸方向S2についての芯金55の内周面の一方の端部に設けられ、端板47に隣接して配置されている。大径部55bは、軸方向S2についての芯金55の内周面の他方の端部および中間部に設けられている。大径部は、軸方向S2の中間部に設けられて軸方向S2に真直に延びる円筒形状をなす部分を有している。軸方向S2についての大径部55bの端部であって小径部55aとは反対側にある端部には、周方向に延びる周溝が形成されている。この周溝に止め輪57が嵌められている。
芯金55の内周面は、軸受48,49を保持している。すなわち、大径部55bは、2つの軸受48,49の外輪48a,49aの外周に嵌合する嵌合部として機能する。端壁55cは、一方の軸受48の外輪48aの一方の端面を受けて軸方向S2の一方の向きへの外輪48aの移動を規制する規制部として機能する。また、止め輪57は、他方の軸受49の外輪49aの他方の端面を受けて軸方向S2の他方の向きへの外輪49aの移動を規制する第2の規制部として機能する。
これにより、2つの軸受48,49の外輪48a,49aとスペーサ50とが、芯金55の内周面の大径部55bに軸方向S2に並んで嵌合されていて、また、軸方向S2について端壁55cと止め輪57とに挟まれている。その結果、2つの軸受48,49は、芯金55に対しての軸方向S2の両側への移動を規制されている。また、2つの軸受48,49は、軸方向S2の両側への相対移動を規制されている。
また、2つの軸受48,49の内輪48b,49bは、軸ユニットの中間ギヤ支軸46に回動自在に支持され、中間ギヤ支軸46に対しての軸方向S2についての移動を規制されている。
中間ギヤ支軸46は、これの長手方向に平行な中心軸線46dと、外周面58とを有している。外周面58は、中間ギヤ支軸46の中間部46cにおいて、2つの軸受48,49の軸方向S2への移動を規制する規制部58dと、2つの軸受48,49が嵌合されている嵌合部58eと、固定部材51およびロックナット52が係合している係合部58fとを有している。規制部58dと、嵌合部58eと、係合部58fとは、この順で軸方向S2に並んでいて、互いに同心に配置されている。
規制部58dは、軸方向S2について端板47に隣接して配置されていて、嵌合部58eよりも大径に形成されている。
嵌合部58eは、軸方向S2について規制部58dに隣接し、端壁58gを介して規制部58dに接続されていて、長手方向に平行に所定長さで延びた円筒面を含んでいる。
係合部58fは、ねじ部としての雄ねじが形成されている。この雄ねじに、固定部材51およびロックナット52がねじ込まれている。
中間ギヤ支軸46の中間部46cは、2つの軸受48,49を介して中間ギヤ26を支持するために軸受48,49を保持している。すなわち、規制部58dが、軸受48の内輪48bの一方の端面を受けて軸方向S2の一方の向きへの内輪48aの移動を規制する規制部として機能する。係合部58fの雄ねじにねじ込まれた固定部材51が、軸受49の内輪49bの他方の端面を受けて軸方向S2の他方の向きへの内輪49bの移動を規制する規制部として機能する。固定部材51と端壁58gとの間に、2つの軸受48,49がスペーサ50を介して挟まれている。これにより、中間ギヤ支軸46に対する軸方向S2の両側への2つの軸受48,49の移動が規制されている。また、軸方向S2について、2つの軸受48,49の内輪48b,49b同士は、互いに遠ざかる向きへの相対移動を規制されているが、互いに近づく向きへの相対移動を許容されている。
固定部材51は、上述のように保持された一対の軸受48,49に軸方向S2についての予圧を付与するための予圧付与部材として機能する。その結果、2つの軸受48,49についての軸受すきま(遊び)が除去されているので、中間ギヤ26が噛み合い時に傾きを生じ難くされている。
すなわち、固定部材51を係合部58fにねじ込んで、固定部材51を軸方向S2に位置調整し、両内輪48b,49b同士を近づけて、その間の距離を所定距離に調整するようにしている。例えば軸方向S2についての内輪48b,49b同士の間隔は、外輪48a,49a同士の間隔よりも短くされている。
これにより、両軸受48,49に軸方向S2についての所定の予圧としての押圧力を付与することができる。軸受48の内輪48bと外輪48aとは、軸方向S2の逆向きに互いに付勢されている。これとともに、軸受49の内輪49bと外輪49aとは、軸方向S2の逆向きに互いに付勢されている。その結果、両軸受48,49の軸受すきまが除去される。
また、中間ギヤ支軸46の外周面58は、中間ギヤ支軸46の中間部46cにおいて、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dに対して偏心した偏心部58cを有している。
偏心部58cは、上述の規制部58dと、上述の嵌合部58eと、上述の係合部58fとを有している。
また、中間ギヤ支軸46の外周面58は、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bに隣接する部分46fおいて、第2の筒部34により直接に支持されている被支持部58aを有している。
被支持部58aは、軸方向S2について係合部58fに隣接して配置されている。被支持部58aは、偏心部58cよりも小径の円筒面に形成されている。この円筒面は、中間ギヤ支軸46の長手方向に平行な中心軸線を有している。この中心軸線が、上述の中間ギヤ支軸46の中心軸線46dに相当する。
また、中間ギヤ支軸46は、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bにおいて、締結部材54が係合している係合部46gを有している。
係合部46gは、中間ギヤ支軸46の長手方向について、被支持部58aよりも先端側の外周面58に配置されている。係合部46gは、偏心部58cよりも小径であり且つ被支持部58aの円筒面よりも小径の雄ねじを有している。この雄ねじは、締結部材54の雌ねじにねじ嵌合している。
中間ギヤ支軸46の第1の端部46aは、ハウジング本体31の第2の筒部34により端板47を介して支持される被支持部46eと、後述するように偏倚機構53を機能させるための連結部59とを有している。中間ギヤ支軸46の長手方向について、連結部59は、先端に配置されている。第1の端部46aおよび端板47の外周47aは、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dに同心に配置されている。
端板47は、中間ギヤ支軸46の長手方向についての中間ギヤ支軸46の第1の端部46aに配置されている。端板47は、環状の板部材からなる。端板47は、互いに対向する一対の主面である第1の主面47bおよび第2の主面47cを有している。第1の主面47bは、ハウジング本体31の第2の筒部34内に配置されている。第2の主面47cは、第1の主面47bとは反対側に配置されていて、第2の筒部34の外に配置されている。第1の主面47bおよび第2の主面47cは、中間ギヤ支軸46の長手方向と直角に交差している。また、端板47は、外周47aを有している。
外周47aは、ハウジング本体31の第2の筒部34の入口開口34hに嵌合された第1の部分としての嵌合部47dと、この嵌合部47dに軸方向S2について隣接し第2の筒部34の外に配置された第2の部分としての隣接部47eとを有している。
嵌合部47dは、第1の主面47bから軸方向S2に所定長さで形成されている。嵌合部47dは、周方向に無端状に連続して延びた円筒面を含んでいる。この円筒面は、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dに同心に配置されている。
また、嵌合部47dには、周方向に無端状に連続して延びる周溝が形成されている。この周溝には、シール部材としてのOリング60が嵌め入れられている。Oリング60は、弾性を有していて、周方向に連続して延びている。Oリング60は、第2の筒部34の入口開口34hの内周面と、端板47の外周47aの嵌合部47dとの間に弾性変形を受けた状態で介在して、この間を弾力的に封止している。
図4および図13を参照して、端板47は、外周47aの隣接部47eを形成する外周縁部47jを有している。
外周縁部47jは、第2の主面47cから軸方向S2に所定長さで形成されている。外周縁部47jは、軸方向S2から見たときに長円形をなしている。この長円形は、中心軸線46dからの距離が相対的に長い部分としての円弧部分と、中心軸線46dからの距離が相対的に短い部分としての直線部分とを有している。なお、外周縁部47jは、外周47aの嵌合部47dを形成していない。
外周縁部47jは、外周47aの嵌合部47dよりも径方向外方へ突出して延設された2つの延設部47fを有している。この延設部47fは、上述の円弧部分を形成している。また、外周縁部47jは、上述の直線部分を形成する2つの切欠部47g1,47g2を有している。一方の切欠部47g1は、第3の筒部35に近接して配置され、第3の筒部35から逃がされた逃げ部として機能する。本実施形態では、2つの延設部47fと2つの切欠部47g1,47g2とは、周方向に交互に隣接して並んでいる。2つの延設部47fは、中心軸線46dを対称の中心とした点対称形状をなしている。なお、切欠部47g2は、廃止されてもよい。
外周縁部47jは、入口開口34hの縁部としての端面34dを覆う覆い部として機能する。本実施形態では、外周縁部47jの延設部47fが、端面34dの一部分であって軸方向S2から見たときに延設部47fと重なり合う部分34d1のみを覆っている。
2つの延設部47fは、径方向に互いに反対側に配置されている。延設部47fに対応する外周47aは、所定半径の円筒面に形成されている。この円筒面は、外周47aの嵌合部47dと同心であり、嵌合部47dよりも大径に形成されていて、外周47aの最大外径を形成し、嵌合部47dと端面47hを介して接続されている。
端面47hは、第2の筒部34の端面34dに当接していて、軸方向S2に受けられた受け部として機能する。この受け部は、締結部材54によって第2の筒部34の端面34dに締結され、軸方向S2に締め付け状態で固定されている。
2つの切欠部47g1,47g2は、径方向に互いに反対側に配置されていて、互いに同じ形状に形成されている。以下、切欠部47g1に則して説明する。
切欠部47g1は、外周47aの嵌合部47dよりも径方向外方にある部分と、外周47aの嵌合部47dよりも径方向内方へ窪まされた部分とを有している。窪まされた部分は、第2の筒部34の端面34dの部分34d1以外の部分34d2を露出させていて、嵌合部47dに端面47iを介して接続されている。
図13に戻って、締結部材54は、軸方向S2について端板47とは反対側にある中間ギヤ支軸46の第2の端部46bに配置され、第2の筒部34の外側に配置され、第2の筒部34の底部34gに隣接して配置されている。第2の筒部34の外側において、底部34gは開放されている。締結部材54は、第2の筒部34の外側から中間ギヤ支軸46に取り付けることができる。
締結部材54は、有底の筒状部材である。締結部材54の内周面は、係合部54bとしての雌ねじを形成されていて、中間ギヤ支軸46の端部46bの係合部46gの雄ねじにねじ込まれている。締結部材54の外周は、当該締結部材54を中間ギヤ支軸46にねじ込むための工具に係合可能な工具係合部54cを有している。この工具係合部54cは、互いに対向する平面を含んでいる。締結部材54が中間ギヤ支軸46にねじ込まれることにより、締結部材54は、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bをハウジング本体31の第2の筒部34の底部34gに、任意の回動位置で締結している。
締結機構74は、加圧部材としての締結部材54と、端板47と、第2の筒部34とを有している。すなわち、締結部材54と端板47とが中間ギヤ支軸46を介して連結されている。これとともに、締結部材54と端板47との間に、第2の筒部34が挟持されている。締結部材54が中間ギヤ支軸46にねじ嵌合されることにより、中間ギヤ支軸46が軸方向S2に引っ張られ、締結部材54と端板47とが互いに近づこうとする。その結果、締結部材54の端面54aが第2の筒部34の底部34gの端面34eに押し付けられ、これとともに、端板47の受け部としての端面47hが第2の筒部34の端面34dに押し付けられる。これにより、中間ギヤ支軸46が第2の筒部34に固定される。
図13および図7を参照して、第2の筒部34は、軸方向S2に延びる筒状の部分としての主体部34fと、軸方向S2についての第2の端部34cに配置された底部34gとを有している。第2の筒部34は、内周面61を有している。
内周面61は、端板47の外周47aが嵌合した嵌合部としての第1の部分61aと、第1の部分61aに軸方向S2に隣接し中間ギヤ26の歯部56を取り囲む第2の部分61bと、第2の部分61bに軸方向S2に隣接し固定部材41およびロックナット42を取り囲む第3の部分61cと、中間ギヤ支軸46が嵌合した嵌合部としての第4の部分61dとを有している。第1、第2および第3の部分61a,61b,61cは、主体部34fに形成されている。第4の部分61dは、底部34gに形成されている。第1の部分61aと、第2の部分61bと、第3の部分61cと、第4の部分61dとは、この順に軸方向S2に沿って第1の端部34b側から互いに隣接して並んでいて、この順により小径に形成されている。
第1の部分61aは、軸方向S2についての一方の端部としての第1の端部34bに設けられ、周方向に無端状に連続した円筒面からなる。第1の部分61aには、端板47の外周47aの嵌合部47dががたつきなく嵌め入れられている。第1の部分61aは、入口開口34hを形成し、入口開口34hの内周面(入口開口34hの内周面61aともいう。)に相当する。
第2の部分61bには、開口が設けられている。この開口を通じて、第2の筒部34は、第1の筒部33および第3の筒部35の内部へ連通している。
第3の部分61cは、中間ギヤ26の芯金55の一部であって歯部56の端面から軸方向S2に突出した部分を取り囲んでいる。第3の部分61cは、第1の筒部33および第3の筒部35に対応して径方向内方に張り出した凸湾曲部分を含んでいる。
第4の部分61dは、円筒面からなり、支持孔34iを形成し、支持孔34iの内周面(支持孔34iの内周面61dともいう。)に相当する。第4の部分61dには、中間ギヤ支軸46の外周面58の被支持部58aが嵌合されて、支持されている。
一対の円孔としての入口開口34hと支持孔34iとは、互いに同一軸線上に配置されていて、また、第1の筒部33の内周面の中心軸線および第3の筒部35の内周面の中心軸線と平行に配置されている。
また、入口開口34hの縁部(開口孔の入口縁部ともいう。)としての端面34dは、環状の平坦面に形成されていて、入口開口34hの内周面61aの中心軸線に垂直に交差している。また、底部34gの外面には、支持孔34iの縁部としての端面34eが設けられている。端面34eは、環状の平坦面に形成されていて、支持孔34iの内周面61dの中心軸線に垂直に交差している。
図14は、図5の要部拡大図であり、主に従動ギヤ27を示す。図14を参照して、電動パワーステアリング装置1は、従動ギヤ27を支持する第3の支軸としての従動ギヤ支軸62と、従動ギヤ27を回動自在に支持する複数の軸受63,64と、軸受63,64の軸方向移動を規制するための2つの固定部材65,66とを有している。
第3の筒部35は、2つの軸受63,64を保持している。2つの軸受63,64は、従動ギヤ支軸62を回動自在に支持している。一方の軸受63は、外輪63aと、内輪63bと、内輪63bおよび外輪63aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール63cとを有している。他方の軸受64は、外輪64aと、一対の内輪64b,64dと、内輪64b,64dおよび外輪64aの間に転動自在に介在する転動体としての複数のボール64cとを有している。他方の軸受64は、従動ギヤ支軸62およびハウジング本体31に対しての軸方向S3の両側への移動を、固定部材65,66により規制されている。従動ギヤ支軸62は、従動ギヤ27に一体回動するように連結され、且つ従動ギヤ27を支持している。また、従動ギヤ支軸62は、ナット28に一体回動するように連結されていて、本実施形態では、ナット28と一体に形成されている。ナット28は、ボール29を介して、ねじ軸30を駆動する。
従動ギヤ27は、金属により環状をなして形成されている。従動ギヤ27の外周は、複数の斜歯を形成されている。
従動ギヤ支軸62は、筒状をなして軸方向S3に延びている。従動ギヤ支軸62の外周67は、一方の軸受63が嵌合された第1の部分67aと、ナット28の外周に対応する第2の部分67bと、従動ギヤ27が嵌合される第3の部分67cと、従動ギヤ支軸62の最大外径部を形成する第4の部分67dと、第4の部分67dよりも小径とされて他方の軸受64が嵌合される第5の部分67eと、雄ねじが形成されたねじ部としての第6の部分67fとを有している。
これらの第1〜第6の各部分67a,67b,67c,67d,67e,67fは、順に軸方向S3に並んでいる。また、第1、第2、第3、第5および第6の各部分67a,67b,67c,67e,67fは、軸方向S3について第4の部分67dから遠ざかるほどに、より小径に形成されている。また、第3の部分67cと第4の部分67dとは、端壁67gを介して接続されている。また、第4の部分67dと第5の部分67eとは、端壁67hを介して接続されている。
従動ギヤ支軸62は、外周67の第1および第5の部分67a,67eに保持された2つの軸受63,64により回動自在に支持されている。
従動ギヤ支軸62の外周67の第3の部分67cは、円筒面に形成されている。第3の部分67cは、従動ギヤ27の内周面に圧入により固定されている。これにより、従動ギヤ27と従動ギヤ支軸62との軸方向S3についての相対移動と、相対回動とがともに規制されている。従動ギヤ27の側面が、端壁67gに当接している。
第5の部分67eは、円筒面に形成されている。第5の部分67eは、軸受64の一対の内輪64b,64dの内周面に嵌合している。この軸受64の一方の内輪64bの一方の端面は、端壁67hに当接している。
第6の部分67fの雄ねじには、固定部材65がねじ嵌合している。
固定部材65は、環状をなしていて、内周面を有している。この内周面には、雌ねじが形成されている。固定部材65の端面は、軸受64の他方の内輪64dの端面に当接して、この端面を押圧している。軸方向S3について、固定部材65と端壁67hとが、その間に、軸受64の一対の内輪64b,64dを挟持して固定している。
ナット28は、従動ギヤ支軸62に一体に形成されていて、従動ギヤ支軸62を介して第3の筒部35に支持されている。
ねじ軸30は、ナット28にねじ係合していて、ナット28に同心に配置されている。ねじ軸30が、その軸線の回りの回動を規制された状態で、ナット28がねじ軸30の軸線の回りに相対回動することにより、ナット28とねじ軸30とが軸方向S3に相対移動することができる。ねじ軸30は、ラックバー14に、互いに同心に配置されていて、一体に形成されている。
ラックバー14、ねじ軸30、ナット28、従動ギヤ支軸62、および従動ギヤ27は、一対の軸受63,64を介してハウジング本体31の第3の筒部35に同心に配置されて、第3の筒部35に支持されている。
一方の軸受63は、深溝型の玉軸受からなる。また、他方の軸受64は、単一の複列外向きアンギュラ玉軸受からなる。
軸受64の外輪64aは、2つの軌道溝を有している。軸受64の一対の内輪64b,64dはそれぞれ、単一の軌道溝を有している。外輪64aの一方の軌道溝と、一方の内輪64bの軌道溝とが、互いに対向し、この間に複数のボール64cが介在している。また、外輪64aの他方の軌道溝と、他方の内輪64dの軌道溝とが、互いに対向し、この間に複数のボール64cが介在している。このように、軸受64は、2列のボール列を有している。また、一対の内輪64b,64dの互いに対向する端面同士が互いに当接した状態で、各ボール64cが、内輪64b,64dおよび外輪64aの対応する軌道溝に所定の予圧を付与されて接触するようにされている。
軸受64には、軸方向S3についての所定量の予圧が付与されている。すなわち、固定部材65が従動ギヤ支軸62の外周67の第6の部分67fの雄ねじにねじ嵌合されることにより、一対の内輪64b,64dが、固定部材65および端壁67hの間に挟持され、一対の内輪64b,64dの互いに対向する端面同士が互いに当接している。これにより、各ボール64cが、内輪64b,64dおよび外輪64aの対応する軌道溝に接触状態とされていて、対応する内輪64b,64dの軌道溝と外輪64aの軌道溝とから、軸方向S3の逆向きに互いに押圧付勢されている。その結果、各ボール64cと対応する軌道溝との間のすきま(遊び)が除去されている。なお、軸受64の外輪64aは、後述するように第3の筒部35に固定されている。
第3の筒部35の内周面68は、軸方向S3の第1の端部35bに配置されて内周面68の最小内径を形成する第1の部分68aと、この第1の部分68aに隣接していて一方の軸受63を保持する第2の部分68bと、第2の部分68bに隣接してナット28を収容する第3の部分68cと、第3の部分68cに隣接して従動ギヤ27を収容する第4の部分68dと、第4の部分68dに隣接して他方の軸受64を収容する第5の部分68eと、第5の部分68eに隣接して雌ねじが形成されたねじ部としての第6の部分68fと、第6の部分68fに隣接して円筒面に形成された第7の部分68gとを有している。
これら第1〜第7の各部68a,68b,68c,68d,68e,68f,68gは、上述のように記載された順に、軸方向S3についての第3の筒部35の第1の端部35bから第2の端部35cまで、互いに隣接して並んでいて、記載の順により大径になるように形成されている。第1の部分68aと第2の部分68bとは、端壁68hを介して接続されている。第4の部分68dと第5の部分68eとは端壁68iを介して接続されている。
第3の筒部35の内周面68の第2の部分68bは、円筒面により形成されていて、軸受63の外輪63aの外周に嵌合してこの外周を受けている。外輪63aの端面は、端壁68hに当接している。これにより、第3の筒部35に対しての軸受63の軸方向S3の一方の向きへの移動が規制されている。
第3の部分68cの内径は、ナット28の最大外径よりも大きくされている。
第4の部分68dは、軸方向S3から見たときに断面円弧状をなし、円弧端同士の間を通じて、第2の筒部34の内部に連通している。
第5の部分68eは、周方向に連続した無端状の円筒面により形成されている。第5の部分68eには、軸受64の外輪64aの外周および環状のスペーサ69の外周が嵌合している。
第6の部分68fの雌ねじに、固定部材66がねじ込まれている。固定部材66は、環状をなしていて、その外周に雄ねじが形成されている。固定部材66が第6の部分68fの雌ねじにねじ込まれることにより、軸方向S3について、軸受64の外輪64aが、スペーサ69を介して、端壁68iと固定部材66との間に挟持されている。その結果、第3の筒部35に対しての軸方向S3の両側への軸受64の移動が規制されている。
第7の部分68gに、エンドカバー32の環状凸部32b2が嵌合されている。
これらの第1〜第7の各部分68a,68b,68c,68d,68e,68f,68gが、その内側に、第3の収容空間35aを区画している。第3の収容空間35aは、軸方向S3の両側へ開放されている。第3の収容空間35aには、従動ギヤ27および従動ギヤ支軸62が収容されていて、ねじ軸30が挿通している。
図14および図9Bを参照して、第3の筒部35は、軸方向S3について、第2の筒部34の端面34dの軸方向位置から第1の端部35bへ向けて、所定長で延設された筒部としての延設部70を有している。延設部70には、ラックバー14が挿通し、ナット28が収容されている。
図7および図9Cを参照して、延設部70は、径方向に薄肉に形成された複数の薄肉部70aと、薄肉部70aよりも径方向外方に突出した径方向に厚肉に形成された複数の厚肉部70bとを有している。薄肉部70aと、厚肉部70bとは、第3の筒部35の周方向に交互に配置されている。複数の薄肉部70aは、周方向に均等に配置されている。複数の厚肉部70bは、周方向に均等に配置されている。
厚肉部70bには、連結部としてのねじ孔71が設けられている。このねじ孔71には、雌ねじが形成されていて、ボルトがねじ込まれている。これにより、第1のハウジング20と第2のハウジング21とが連結されている(図2参照。)。
互いに周方向に隣接する2つの厚肉部70bと、その間にある薄肉部70aとは、径方向に窪んだ凹部70c,70d,70eを形成している。これら凹部70c,70d,70eは、本実施形態では3箇所に設けられている。
また、複数の厚肉部70bは、軸方向S3から見たときに、第2の筒部34との重なり合いを回避した位置に配置されている。これにより、3つの凹部70c,70d,70eのうちで、第2の筒部34に最も近接した凹部70cが、端板47との干渉から逃げる逃げ部として機能する。
この逃げ部としての凹部70cは、薄肉部70aの周方向の一部を凹湾曲形状に切り欠いた切欠部70fを有している。この切欠部70fは、軸方向S3から見たときに、凹湾曲面としての断面円弧状の樋形状をなしている。この樋形状の曲率中心は、第2の筒部34の入口開口34hの内周面の中心に同心に配置されている。樋形状の曲率半径は、入口開口34hの内周面の半径と等しいか、これよりも大きく形成されている。切欠部70fは、第2の筒部34の入口開口34hの径方向について、入口開口34hの内周面よりも外方に配置されている。逃げ部としての凹部70cおよび切欠部70fは、偏倚機構53を動作させるために設けられている。
図15は、図6に示す減速機19および偏倚機構53の模式図である。図13と図15を参照して、偏倚機構53は、中間ギヤ支軸46と、端板47と、第2の筒部34の同一軸線上の一対の円孔としての入口開口34hおよび支持孔34iとを有している。中間ギヤ支軸46をその中心軸線46dの回りに回動させることにより、中間ギヤ支軸46の外周58の偏心部58cの中心軸線(中間ギヤ26の中心軸線26aに相当する。)を移動させることができる。このとき、偏心部58cの中心軸線は、中心軸線46dを中心とした円弧状の軌道を描きつつ移動する。これにより、偏倚機構53は、中間ギヤ26の中心軸線26aを、駆動ギヤ25および従動ギヤ27の両方のギヤの中心軸線25a,27aに対して平行移動させて、偏倚させて、位置調整することができる。
本実施形態では、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび従動ギヤ27の中心軸線27aの位置がハウジング本体31に対して規制されている。その一方で、中間ギヤ26の中心軸線26aがハウジング本体31に対して、偏倚機構53により位置調整できるようにされている。これにより、中間ギヤ26の中心軸線26aを、駆動ギヤ25の中心軸線25aに対して近接させたり、または遠ざけたりすることができ、同様に、従動ギヤ27の中心軸線27aに対しても近接させたり、または遠ざけたりすることができる。その結果、駆動ギヤ25および中間ギヤ26の間のバックラッシュ量を調整できるようにされ、また、従動ギヤ27および中間ギヤ26の間のバックラッシュ量を調整できるようにされている。
図13および図15を参照して、偏倚機構53では、中間ギヤ支軸46は、同一軸線上にある入口開口34hおよび支持孔34iに支持されていて、回動位置を調整可能とされている。すなわち、中間ギヤ支軸46がハウジング本体31の第2の筒部34に固定されていない状態では、中間ギヤ支軸46を、入口開口34hおよび支持孔34iに同心に当該中間ギヤ支軸46の中心軸線46dの回りに回動させて、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整することができる。なお、中間ギヤ支軸46が第2の筒部34に固定された状態では、中間ギヤ支軸46を回動させることはできない。
このように、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整することにより、外周58の偏心部58cの中心軸線(中間ギヤ26の中心軸線26aに相当する。)を中心軸線46dに対して位置調整することができる。ひいては中間ギヤ26を、ハウジング本体31に位置決めされた駆動ギヤ25および従動ギヤ27に対して位置調整することができる。
中間ギヤ26を位置調整したときに、中間ギヤ26および駆動ギヤ25の間のバックラッシュと、中間ギヤ26および従動ギヤ27の間のバックラッシュとが、互いにほぼ等しい量でともに増加(または減少して)調整されるように、各ギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27aおよび中間ギヤ支軸46の中心軸線46dは、以下のように配置されている。
すなわち、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第1平面P1を考える。また、以下で説明する所定の二等分角面PDと直交し中心軸線26aを含む第2平面P2を考える。ここで、所定の二等分角面PDとは、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第3平面P3と、従動ギヤ27の中心軸線27aおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第4平面P4とのなす角度DCを二等分して、中間ギヤ26の中心軸線26aを通過する平面である。
中間ギヤ支軸46の回動位置の調整範囲は、後述するように所定の回動位置範囲DB内に規制されている。この範囲DB内で、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときには、中間ギヤ26の中心軸線26aは、軸方向S2から見たときに、中心軸線46dを中心とした円弧状の移動軌跡を描いて移動する。中間ギヤ支軸46を範囲DBの中央位置に回動位置調節したときに、第1平面P1は第2平面P2に一致する。
また、範囲DB内で、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときには、第1平面P1は、第2平面P2に対して、0(度)〜所定値(度)、例えば15(度)の角度をなして交差するように設定されている。ここで、所定値は、範囲DBの端に中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときに、第1平面P1が、第2平面P2に対してなす角度であり、範囲DBの半分の角度またはこの角度に近似した角度になる。
なお、本実施形態では、中間ギヤ支軸46を、規制された回動位置範囲DB内で回動位置調整するようにしているが、これには限定されない。例えば、位置調整された状態において、第1平面P1が、第2平面P2に対して、0〜30度の範囲DA内の角度をなして交差するように設定されていればよい。または、第1平面P1および第2平面P2が互いに一致する中央位置に対して、±15度の角度範囲で、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整する範囲が設定されていてもよい。
これらの条件が満足される場合に、中間ギヤ支軸46を上述の範囲内で回動位置調整するときに、中間ギヤ26の中心軸線26aを、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび従動ギヤ27の中心軸線27aにともに同程度の距離を近接させたり、または遠ざけたりすることができるので、バックラッシュを容易に調整することができる。
また、本実施形態では、偏倚機構53は、以下の公差のバックラッシュの各ギヤ25,26,27を被調整対象としている。これにより、中間ギヤ26および駆動ギヤ25の間のバックラッシュと、中間ギヤ26および従動ギヤ27の間のバックラッシュとを、ともに最適な所定範囲内に確実に設定できるようにしている。
すなわち、先ず、上述の範囲DBの中央位置に中間ギヤ支軸46が回動位置調整された所定状態において、中間ギヤ26および駆動ギヤ25の間のバックラッシュに、所定の第1の公差が設定されている。上述の所定状態において、中間ギヤ26および従動ギヤ27の間のバックラッシュに、所定の第2の公差が設定されている。上述の第1の公差と第2の公差とは、同様に設定され、すなわち、同じ範囲、例えば同一の所定値からゼロまでの間の範囲に設定されている。
例えば、上述の所定状態が実現されかつ各部が標準的な寸法で得られたときに、上述の各バックラッシュが公差内で得られるように、各ギヤ25,26,27のオーバーピン径の公差が設定されている。
このように設定されたバックラッシュの公差では、通例、上述の所定状態で組み立てたときに、上述の2つのバックラッシュは、ほぼ同じ値で得られ、2つのバックラッシュの差も小さくなる。従って、偏倚機構53により、2つのバックラッシュをともに増加または減少させて調整すると、2つのバックラッシュをともに最適値である最小値に調整することができる。また、部品の組み合わせによっては、2つのバックラッシュの差が公差の最大値と等しくなる場合も考えられるが、このような場合であっても、少なくとも一方のバックラッシュを最適値である最小値に調整することができる。
偏倚機構53により中間ギヤ26を位置調整した後に、中間ギヤ支軸46をハウジング本体31に締結機構74の締結部材54により固定する。これにより、中間ギヤ26の位置を調整不能に固定することができる。
図16は、図15に示す偏倚機構53と調整用治具の分解斜視図である。図16と図5を参照して、本実施形態の偏倚機構53では、後述するように、調整した回動位置で中間ギヤ支軸46の回動を規制した状態で、中間ギヤ26および駆動ギヤ25の間のバックラッシュと、中間ギヤ26および従動ギヤ27の間のバックラッシュとを、それぞれ独立して測定するようにしている。このために、中間ギヤ支軸46を任意の回動位置に回動させかつこの回動位置で停止させるための回動用治具101を用いるようにしている。
また、バックラッシュを測定するときに、中間ギヤ支軸46と中間ギヤ26の相対回転を規制する。本実施形態では、中間ギヤ支軸46と中間ギヤ26の相対回転を規制する治具としての規制部材102と、バックラッシュを測定するための測定用治具103とを用いる。
また、偏倚機構53は、規制部材102を取り付けるための規制部材取付部72と、回動用治具101に連結するための連結部59とを有している。
また、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときに、中間ギヤ支軸46の所定の回動位置範囲DB(図15参照。)に対応して、第3の筒部35と端板47との間の互いの干渉が生じることが考えられる。
そこで、本実施形態では、図4および図13を参照して、第3の筒部35と端板47との干渉を防止するために、ハウジング本体31の第3の筒部35に、逃げ部としての凹部70cが設けられている。また端板47にも、逃げ部としての切欠部47g1が設けられている。中間ギヤ支軸46が所定の回動位置範囲DB内の回動位置にあるときには、凹部70cと切欠部47g1とは互いに離れて対向している。
また、偏倚機構53は、中間ギヤ支軸46の所定の回動位置範囲DB外への中間ギヤ支軸46の回動を阻止するストッパ75を有している。このストッパ75は、凹部70cに設けられた一対の凸部からなる。中間ギヤ支軸46が一方の向きに回動するときに、所定の回動位置範囲DBの端部を越えて範囲外へ回動しようとすると、回動の向きに応じたいずれか一方のストッパ75が、切欠部47g1に当接する。一対のストッパ75は、所定の回動位置範囲DBの両側の端部での回動を阻止する。これにより、中間ギヤ支軸46の所定の回動位置範囲DBが規制されるので、中間ギヤ支軸46を不適切な回動位置に回動させることが防止される。
また、図4および図15を参照して、一対のストッパ75により規制された所定の回動位置範囲DBの中央位置において、上述の所定の二等分角面PDと第1平面P1とが互いに直角に交差している。
図16に戻って、本実施形態では、中間ギヤ支軸46の回動位置調整、およびバックラッシュの調整は、操舵機構5の部分組立品(製造用中間体またはサブ組立品ともいう。)としてのユニット73を調整対象としてなされる。
図5および図16を参照して、ユニット73では、第2のハウジング21に駆動ギヤ25、中間ギヤ26、従動ギヤ27が組み込まれているが、電動モータ18は取り外されている。また、締結部材54は取り外されているか、または中間ギヤ支軸46に取り付けられていても緩められている。
図17Aおよび図17Bは、図16に示す回動用治具の正面図および側面図である。図16、図17Aおよび図17Bを参照して、回動用治具101は、ハウジング本体31を固定する固定部104と、固定部104に固定されたユニット73の連結部59を回動させるための回動部105と、回動部105の回動を規制するための規制部106と、これらを支持する支持部材107とを有している。
固定部104は、固定用ボルト104aと、支持部材107に形成された挿通孔104bとを有している。固定用ボルト104aが、挿通孔104bに挿通して、ユニット73のねじ孔71にねじ込まれている。ねじ孔71は、ハウジング本体31の第3の筒部35の端面35dに設けられている。これにより、ハウジング本体31が、支持部材107に固定されている。ねじ孔71は、上述のように第1のハウジング20と第2のハウジング21との連結用と、回動用治具101への固定用とで兼用されている。
回動部105は、手動操作により回動動作を入力するための入力部としてのナット105aと、ナット105aにねじ係合する雄ねじ部材105bと、ナット105aに係合するアーム105cと、アーム105cをナット105aに付勢する付勢部材としてのばね105dと、アーム105cに一体回動可能に連結された出力部としての出力軸105eとを有している。
出力軸105eは、支持部材107に回動自在に支持されている。出力軸105eは、連結部59に密着可能な連結部59への動力伝達面を有している。
連結部59は、中間ギヤ支軸46の端部に、軸方向S2に端板47から突出して配置されている。連結部59は、動力伝達面としての一対の平坦面を有している。一対の平坦面は、互いに平行に配置されて、所定距離を離隔され、互いの間に二面幅を形成している。連結部59は、回動用治具101の出力軸105eに連結および連結の解除を自在に切り換えることができるようになっている。連結部59は、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整するために回動用治具101を連結でき、また、調整作業が完了した後に連結を解除できるようにされている。なお、連結部59は、端板47に設けられていてもよい。
また、雄ねじ部材105bの一端は、支持部材107に固定されている。雄ねじ部材105bの他端にナット105aがねじ込まれている。雄ねじ部材105bは、ナット105aに入力された回動動作を減速して伝達するためのねじ機構を、ナット105aと協働して構成している。ばね105dは、アーム105cをナット105aに付勢することによりアーム105cおよびナット105aの係合状態を維持する。
ナット105aを回すと、ナット105aが、雄ねじ部材105bの軸線に沿って直線移動し、これに伴ってアーム105cおよび出力軸105eが回動する。このとき、ナット105aの回動角度に比べて、出力軸105eの回動角度は小さくなっていて、出力軸105eに連結された中間ギヤ支軸46の回動位置を微細な角度で調整できるようになっている。また、ナット105aをいずれの向きに回したときにも、ナット105aとアーム105cとは互いに連動し、両方向に同様に中間ギヤ支軸46の回動位置を調整することができる。
規制部106は、中間ギヤ支軸46の回動を規制するために設けられている。規制部106は、出力軸105eに形成された円弧状に延びる挿通孔としての長孔106aと、支持部材107に形成された雌ねじ106bと、長孔106aを挿通して雌ねじ106bにねじ込まれた固定用ボルト106cとを有している。固定用ボルト106cを締め込むことにより、出力軸105eを、さらにこれに連結された中間ギヤ支軸46の回動を規制することができる。
図18は、図15に示す偏倚機構53の要部の調整状態の拡大図である。
図16および図18を参照して、規制部材102は、先端が円錐状に形成されたボルトである。規制部材102は、雄ねじが形成された軸部102aと、この軸部102aの端部に設けられた操作部としての頭部102bと、軸部102aの先端に設けられた円錐形状をなす係合部としての凸部102cとを有している。
規制部材102が、端板47の規制部材取付部72に取り付けられた状態で、凸部102cが、中間ギヤ26の係合部としての凹部55eに係合するようにされている。この凹部55eは、芯金55の端面55dに円錐形状をなして形成されている。
規制部材取付部72は、端板47に設けられていて、雌ねじが形成されたねじ孔からなる。このねじ孔は、複数カ所に配置されていて、それぞれ中心軸線46dからの距離が異なっている。複数のねじ孔のうちで、いずれかひとつのねじ孔が適宜選択されて利用される。中間ギヤ26を中間ギヤ支軸46の回りに適宜相対回動させたときに、規制部材取付部72が凹部55eに対向するように配置されている。これにより、選択されたねじ孔にねじ込まれた規制部材102の先端の凸部102cが、中間ギヤ26の凹部55eに係合することができる。
規制部材102が規制部材取付部72のねじ孔にねじ込まれると、規制部材102の先端の凸部102cが中間ギヤ26の凹部55eに係合し、押圧状態で密着する。その結果、中間ギヤ26が、中間ギヤ支軸46および端板47に対して回動できなくされる。
図16と図12を参照して、測定用治具103は、駆動ギヤ25を回動させるための第1の駆動部103aと、第1の駆動部103aにより駆動された駆動ギヤ25の回動角度を測定するための第1の測定部103bと、従動ギヤ27を回動させるための第2の駆動部103cと、第2の駆動部103cにより駆動された従動ギヤ27の回動角度を測定するための第2の測定部103dと、これら各部103a,103b,103c,103dを支持する支持部材103eとを有している。
第1の駆動部103aは、駆動ギヤ支軸37の端部に連結でき、また、この連結を解除できるようにされている。第1の駆動部103aにより、駆動ギヤ支軸37を回動させることができる。
第1の測定部103bは、回動角度センサを有していて、第1の駆動部103aの回動角度位置を測定することができる。
第2の駆動部103cは、ラックバー14の端部に連結でき、また、この連結を解除できるようにされている。第2の駆動部103cにより、ラックバー14を回動させることができる。ラックバー14を、その軸方向S3についての移動を規制した状態で回動させることにより、ラックバー14と従動ギヤ支軸62とを一体回動させることができる。なお、ラックバー14と従動ギヤ支軸62との相対回動を規制するための治具としての規制部材(図示せず)を、調整時に両者14,35間に介在させて、ラックバー14と従動ギヤ支軸62とを一体回動させるようにし、当該規制部材を調整完了後に取り外すようにしてもよい。
第2の測定部103dは、回動角度センサを有していて、第2の駆動部103cの回動角度位置を測定することができる。
図16、図17Aおよび図17Bを参照して、上述の各治具101,102,103を用いたバックラッシュの調整を説明する。
先ず、部分組立品としてのユニット73が組み立てられる。ユニット73では、中間ギヤ26が中間ギヤ支軸46に固定される。具体的には、図18を参照して、規制部材102が端板47の規制部材取付部72のねじ孔にねじ込まれて、規制部材102の凸部102cが、中間ギヤ26の凹部55eに当接している。
図16を参照して、ユニット73のハウジング本体31が回動用治具101の固定部104に取り付けられる。ユニット73の連結部59が、回動用治具101の出力軸105eに連結される。ユニット73の駆動ギヤ支軸37が、測定用治具103の第1の駆動部103aに連結される。ユニット73のラックバー14が、測定用治具103の第2の駆動部103cに連結される。
図15と図16を参照して、出力軸105eを規制部106により固定し、中間ギヤ支軸46の回動を規制する。この状態で、第1の駆動部103aにより、駆動ギヤ25を両方向に回転させる。駆動ギヤ25が回転しうる最大の角度量(角度範囲)を測定する。例えば駆動ギヤ25を一方の向きへ回動させるときの端になる回動角度位置と、他方の向きへ回動させるときの端になる回動角度位置との差を求める。この差が、上述の角度量に相当し、また駆動ギヤ25と中間ギヤ26との間のバックラッシュに比例する量に相当する。同様に、従動ギヤ27が回転しうる最大の角度量(角度範囲)を測定する。この角度量は、従動ギヤ27と中間ギヤ26との間のバックラッシュに比例する。
例えば、駆動ギヤ25と中間ギヤ26との間のバックラッシュに対応する角度量と、従動ギヤ27と中間ギヤ26との間のバックラッシに対応する角度量とを比較する。小さい方の角度量が、予め定める最小値または所定範囲内の値になるように、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整する。具体的には、中間ギヤ26と中間ギヤ支軸46との相対回動の規制を解除し、回動用治具101の回動部105により、中間ギヤ支軸46を予め定めた角度で回動する。
次に、上述と同様にして、中間ギヤ26の回動を規制した状態で、駆動ギヤ25と中間ギヤ26との間のバックラッシュ量に対応する角度量と、従動ギヤ27と中間ギヤ26との間のバックラッシュ量に対応する各度量とを測定する。測定値が所要の範囲内にあれば、調整を終了する。
図16と図13を参照して、調整が終了したときに、回動用治具101の出力軸105eと連結部59との連結が維持され、かつ規制部106により出力軸105eの回動が規制された状態で、ユニット73において、締結部材54が中間ギヤ支軸46に締め付けられる。これにより、中間ギヤ支軸46が固定される。
次に、ユニット73から各治具101,103が取り外される。また、規制部材102が規制部材取付部72から取り外されて、中間ギヤ26が中間ギヤ支軸46に対しての固定を解除される。
図1,図5および図13を参照して、このように本実施形態では、電動パワーステアリング装置1は、電動モータ18の出力を、ハウジング本体31により回動自在に支持された駆動ギヤ25、中間ギヤ26および従動ギヤ27を順次に介して操舵機構5に伝達する電動パワーステアリング装置1において、上記中間ギヤ26を、駆動ギヤ25および従動ギヤ27の側へこれらのギヤ25,27の中心軸線25a,27aに対して平行移動させて偏倚させる偏倚機構53を備えている。この偏倚機構53は、同一軸線上の上記ハウジング本体31の一対の円孔としての入口開口34hおよび支持孔34iに回動位置調整可能に支持された中間ギヤ支軸46を含んでいる。この中間ギヤ支軸46は、中心軸線46dと、外周面58と、外周面58に設けられて中間ギヤ26を回転可能に支持し中心軸線46dに対して偏心した偏心部58cとを有していることを特徴としている。
本実施形態によれば、偏倚機構53では、中間ギヤ支軸46をその中心軸線46dの回りにハウジング本体31に対して回動させるのに伴って、軸方向S2から見たときに、中間ギヤ支軸46の外周面58の偏心部58cの中心軸線を円弧状の軌跡を描きつつ平行移動させることができる。その結果、中間ギヤ26の中心軸線26aを、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび従動ギヤ27の中心軸線27aに対して平行移動させることができるので、例えば駆動ギヤ25および中間ギヤ26間のバックラッシュと、中間ギヤ26および従動ギヤ27間のバックラッシュとの少なくとも一方のバックラッシュを調整でき、さらに最適化することが可能となる。従って、バックラッシュに起因したラトル音の発生を抑制できる。
また、中間ギヤ支軸46は、中間ギヤ26の平行移動のための調整しろとしての隙間を必要とせずに済む。その結果、各ギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27a同士の傾きが生じ難いので、この傾きに起因した噛み合い音を小さく抑制することができる。また、ラトル音と噛み合い音との抑制がバックラッシュの調整により達成されるので、マッチング組立に比べて製造時の手間が軽減される。
なお、これらの偏倚機構53による効果は、ハウジング本体31が複数の部品により構成される場合であっても、上述の実施形態のように単一部品により形成される場合であっても得ることができる。しかし、ハウジング本体31が単一部品により形成される場合には、各ギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27a同士の傾きが生じ難いので、噛み合い音を小さく抑制するのに好ましい。
また、図5と図13を参照して、回動位置調整された中間ギヤ支軸46の回動を規制するための締結部材54が設けられているのが好ましい。この場合、中間ギヤ26の中心軸線26aを駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび従動ギヤ27の中心軸線27aに対して位置調整された位置で固定することができるので、バックラッシュを調整された状態、例えば小さな状態に維持できる結果、ラトル音の発生を確実に抑制することができる。
また、図15を参照して、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第1平面P1は、所定の二等分角面PDと直交する第2平面P2に対して、0〜30度の範囲DAの角度をなして交差している。ここで、上記所定の二等分角面PDとは、駆動ギヤ25の中心軸線25aおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第3平面P3と、従動ギヤ27の中心軸線27aおよび中間ギヤ26の中心軸線26aを含む第4平面P4とのなす角度DCを二等分して、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dを通過する平面である。
この構成では、中間ギヤ支軸46を一方の向きへ回動位置調整されるときに、中間ギヤ26および駆動ギヤ25の間のバックラッシュと、中間ギヤ26および従動ギヤ27の間のバックラッシュとが、ともに減少するように、またはともに増大するように調整される。従って、ラトル音の発生がより一層抑制される。また、バックラッシュを最適化するための調整が容易である。なお、この効果を得るには、中間ギヤ支軸46の角度位置の調整範囲が、上述の範囲DA内の少なくとも一部の角度位置を含めばよい。
また、図13を参照して、一対の円孔の一方は、ハウジング本体31に設けられた、中間ギヤ26よりも大径の開口孔としての入口開口34hを含んでいる。中間ギヤ支軸46の一方の端部としての第1の端部46aに、中間ギヤ支軸46と一体回転可能な端板47が設けられている。この端板47の外周47aは、上記一方の円孔であり開口孔としての入口開口34hに嵌合される嵌合部47dを含むようにしている。この場合、嵌合部47dが大径であるので、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dが傾き難い。また、ハウジング本体31の大径の開口孔としての入口開口34hを通じて、中間ギヤ26をハウジング本体31の第2の筒部34内に容易に組み付けることができる。中間ギヤ支軸46を両持ち状態で高剛性に支持できるので、各ギヤ25,26,27を互いに平行に確実に配置できる。
また、図16を参照して、端板47に、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときに、中間ギヤ支軸46と中間ギヤ26の相対回転を規制するための規制部材102を取り付け可能な規制部材取付部72が設けられている。この場合、例えば中間ギヤ支軸46の回動を停止させたときに、中間ギヤ26の回動を確実に規制することができる。このときに、例えば、駆動ギヤ25を回動させることで、駆動ギヤ25と中間ギヤ26との間のバックラッシュを容易に測定することが可能となる。従って、このバックラッシュを最適に調整することができる。同様に、従動ギヤ27と中間ギヤ26との間のバックラッシュを測定することが可能となるので、このバックラッシュを最適に調整することができる。
また、図16を参照して、本実施形態では、中間ギヤ支軸46の第1の端部46aに、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するための回動用治具101を連結可能な連結部59が設けられている。この場合、治具101と中間ギヤ支軸46の連結部59とを互いに連結させた状態で、治具101を用いて、中間ギヤ支軸46を容易に回動させることができる。その結果、バックラッシュを容易に調整することができる。
また、図13を参照して、ハウジング本体31の上記一方の円孔としての入口開口34hの内周面61aと、端板47の外周47aの嵌合部47dとの間に、弾性を有するOリング60が介在している。この場合、入口開口34hの内周面61aと外周47aの嵌合部47dとの間の隙間を、組み立てやすい程度の大きさで確保しつつ、Oリング60を利用した弾性支持の調心作用により、入口開口34hおよび支持孔34iの中心軸線に対しての中間ギヤ支軸46の傾きの発生をより一層抑制することができ、その結果、3つのギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27a同士の傾きの発生を抑制することができる。また、Oリング60により封止効果を得ることができる。
また、図4を参照して、従動ギヤ27と同心に配置されたラックバー14が備えられている。ハウジング本体31は、ラックバー14を挿通させる筒部としての第3の筒部35の延設部70を含んでいる。端板47は、ハウジング本体31の開口孔の入口縁部としての端面34dの一部34d1を覆う覆い部としての外周縁部47jを含んでいる。延設部70および外周縁部47jの両方に、中間ギヤ支軸46を回動位置調整するときに、中間ギヤ支軸46の所定の回動位置範囲DB(図15参照)に対応して互いの干渉を防止するための逃げ部としての凹部70cおよび切欠部47g1が設けられている。この場合、第3の筒部35の延設部70および端板47の外周縁部47jの互いの干渉が生じることを防止できるので、中間ギヤ支軸46の回動位置の調整範囲を広くすることができ、バックラッシュを容易に調整できる。干渉を生じないように、筒部としての延設部70と端板47との距離を大きくせずに済むので、ハウジング本体47の小型化も可能となる。
また、図13を参照して、ハウジング本体31の他方の円孔としての支持孔34iは、中間ギヤ支軸46の他方の端部としての第2の端部46bに近接する部分46fを支持している。この場合、中間ギヤ支軸46を両持ち状態で安定して支持できるので、中間ギヤ支軸46の傾きの発生をより一層抑制することができる。
また、図13を参照して、回動規制部材は、中間ギヤ支軸46の他方の端部としての第2の端部46bをハウジング本体31に締結する締結部材54を含むようにしている。この場合、中間ギヤ支軸46は、任意の回動位置に調整された状態を維持しつつ、ハウジング本体31に固定される。
また、図4,図5,図12,図13および図14を参照して、単一部品からなるハウジング本体31が、各ギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27aを互いに平行に位置決めするための位置決め面としての以下の各円筒面、すなわち、第1の筒部33の軸受保持面としての内周面45の第2の部分45b、第2の筒部34の支持孔34i、第2の筒部34の入口開口34h、および第3の筒部35の軸受保持面としての内周面68の第5の部分68eを、一体に形成している。これにより、各ギヤ25,26,27の中心軸線25a,26a,27a同士の傾きの発生を抑制するのに、好ましい。
これに加えて、位置調整後に中間ギヤ支軸46を固定するための固定面としての一対の平行平面をなす端面34d,34eが、上述の位置決め面とともに一体に形成されているので、固定状態での傾きの発生を抑制するのに、好ましい。
一対の平行平面をなす一方の端面34dが大径で、他方の端面34eが小径であるので、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dの向きは、おもに大径の入口開口34hの縁部としての端面34dにより規制される。従って、締結部材54が、小径の端面34eに当接した状態で、ねじ係合したときに、中間ギヤ支軸46に傾きを生じさせる虞はない。
第1の筒部33の軸受保持面としての内周面45の第2の部分45bと、第2の筒部34の入口開口34hの内周面と、第3の筒部35の軸受保持面としての内周面68の第5の部分68eとのそれぞれが、対応するギヤ25,26,27よりも大径に形成されているので、傾きの発生を抑制するのに、好ましい。
また、駆動ギヤ支軸38を支持する軸受39,40が互いに別体とされて複数であるので、軸受39,40のボール列同士の軸方向距離を長く確保し易い。これとともに、一対の軸受39,40のボール列同士の軸方向距離が、駆動ギヤ支軸38を支持する第1の筒部33の軸受保持面としての内周面45の第2の部分45bの内径と等しい大きさか、この内径よりも大きくされている。これにより、駆動ギヤ支軸38を、安定して支持でき、駆動ギヤ25と中間ギヤ26との傾きの発生を抑制するのに、寄与する。
また、端板47は、径方向について逃げ部としての切欠部47g1とは反対側に、切欠部47g1と同形状の切欠部47g2を有している。これにより、端板47の受け部としての端面47hが、中心軸線46dを挟んで径方向の対称位置に配置されるので、締結力をバランスよく受けることができ、締結時に傾きを生じ難くすることができる。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。例えば、駆動ギヤ25、中間ギヤ26および従動ギヤ27は、それぞれ互いに噛み合う平歯車であってもよい。
図19は、図13に示す締結部材の変形例の断面図である。図19を参照して、締結部材54は、雄ねじが形成された軸部54dと、軸部54dの端部に形成されて工具警護埋め54cを含む大径の頭部54eとを有していてもよい。すなわち、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bに、係合部46gとしての雌ねじが形成されている。この雌ねじに、締結部材54の係合部54bとしての雄ねじがねじ込まれている。この場合にも、上述の雌ねじを有する締結部材54と同様に、中間ギヤ支軸46をハウジング本体31に締結することができる。
また、図19では、支持孔34iは、中間ギヤ支軸46の第2の端部46bを支持している。この場合にも、支持孔34iは、上述のように端部46bに近接する部分46fを支持する場合と同様に、中間ギヤ支軸46を安定して支持することができる。
また、締結機構74としては、端板47のみを第2の筒部34に固定することも考えられる。
また、上述の各実施形態において、端板47の覆い部としての外周縁部47jが、ハウジング本体31の入口開口34hの縁部としての端面34dの全体を覆うことも考えられる。例えば、外周縁部47jの延設部47fが、周方向に無端状に連続した環状に形成されている場合には、端面34dの全体を覆うことができる。要は、外周縁部47jが、端面34dの少なくとも一部を覆っていればよい。
また、外周縁部47jが、端面34の少なくとも一部を覆う場合には、外周縁部47jが、径方向に大型化して、外周縁部47jと第3の筒部35とが干渉を生じる虞がある。この干渉を回避するための逃げ部としては、上述の実施形態では、外周縁部47jおよび第3の筒部35に設けているが、外周縁部47jおよび第3の筒部35のいずれか一方に設けることも考えられる。要は、逃げ部としては、外周縁部47jおよび第3の筒部35の少なくとも一方に設けられていればよい。この場合、上述の実施形態と同様に、バックラッシュを容易に調整することができる。
また、中間ギヤ支軸46の回動位置の調整に支障がなければ、上述の逃げ部を設けずに済ますこともできる。
また、上述の各実施形態において、第2の筒部34の入口開口34hの内周面に、周溝を形成し、この周溝にOリング60を嵌め入れていてもよい。この場合には、端板47の外周47aの嵌合部47dの周溝を廃止することができる。要は、端板47の外周47aの嵌合部47dと、第2の筒部34の入口開口34hの内周面との間に、弾性を有するOリング60が介在していればよい。なお、Oリング60を廃止することも考えられる。
また、上述の各実施形態において、連結部59は、中間ギヤ支軸46と一体に回転する端板47に設けられていてもよい。端板47にある連結部59に、対応した治具(図示せず)を連結することにより、中間ギヤ支軸46を容易に回動させることができる。
また、偏倚機構53による調整作業が終了した後に、規制部材102が、規制部材取付部72に取り付けられた状態で、中間ギヤ支軸46と中間ギヤ26の相対回転を許容する位置に固定されることも考えられる。また、規制部材取付部72を廃止することも考えられる。
また、上述の各実施形態において、中間ギヤ支軸46と端板47とを別体で形成し、互いに同心に位置決めできるように嵌合し互いに固定することが考えられる。また、互いに別体の中間ギヤ支軸46と端板47とを互いに同心に且つ相対回動可能に嵌合することも考えられる。この場合、中間ギヤ支軸46の回動位置を調整するときには、端板47をハウジング本体31に固定し、中間ギヤ支軸46と端板47とを相対回動させる。調整後に、中間ギヤ支軸46と端板47とを固定するようにする。
また、上述の各実施形態において、偏倚機構53において、第2平面P2としては、所定の二等分角面と直交し、中間ギヤ支軸46の中心軸線46dを通る平面とし、ここでの上述の所定の二等分角面とは、駆動ギヤおよび中間ギヤ支軸の中心軸線を含む第3平面と、従動ギヤおよび中間ギヤ支軸の中心軸線を含む第4平面とのなす角度を二等分して、中間ギヤ支軸の中心軸線を通過する平面としてもよい。この場合の第2平面も、上述の実施形態で説明した第2平面P2と同様に扱うことができる。
また、上述の各実施形態において、偏倚機構53において、第1平面P1が、第2平面P2に対して、範囲DA外の角度をなして交差することも考えられる。この場合、中間ギヤ26を、駆動ギヤ25および従動ギヤ27のいずれか一方の側へこれらのギヤの中心軸線25a,27aに対して平行移動させて偏倚させるようにすることも可能となる。
例えば、中間ギヤ26を、駆動ギヤ25の側へのみ平行移動させて偏倚させる場合には、駆動ギヤ25と中間ギヤ26との間のバックラッシュを調整して小さくすることができるので、減速機全体としてのラトル音を抑制するのに寄与する。同様に、中間ギヤ26を従動ギヤ27の側へのみ平行移動させて偏倚させる場合も、ラトル音を小さく抑制するのに寄与する。また、各ギヤ25,26,27間のバックラッシュのうちで、減速機19の全体のラトル音に大きく影響するバックラッシュを、積極的に小さくすることが可能となる。要は、偏倚機構53が、中間ギヤ26を、駆動ギヤ25および従動ギヤ27の少なくとも一方の側へこれらのギヤ25,27の中心軸線25a,27aに対して平行移動させて偏倚させるようにしてあればよい。
また、上述の各実施形態において、位置調整された中間ギヤ支軸46がハウジング本体31に加工により固定されることも考えられる。この場合には、回動規制部材を廃止することができる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…電動パワーステアリング装置、5…操舵機構、14…ラックバー、18…電動モータ、25…駆動ギヤ、25a…駆動ギヤの中心軸線、26…中間ギヤ、26a…中間ギヤの中心軸線、27…従動ギヤ、27a…従動ギヤの中心軸線、31…ハウジング本体(ハウジング)、34d…端面(入口縁部)、34d1…端面の部分(入口縁部の一部)、34h…入口開口(一対の円孔の一方、開口孔)、34i…支持孔(他方の円孔)、46…中間ギヤ支軸、46a…第1の端部(中間ギヤ支軸の一方の端部)、46b…第2の端部(中間ギヤ支軸の他方の端部)、46d…(中間ギヤ支軸の)中心軸線、46f…中間ギヤ支軸の他方の端部に近接する部分、47…端板、47a…(端板の)外周、47d…(端板の)嵌合部、47g1…切欠部(逃げ部)、47j…外周縁部(覆い部)、53…偏倚機構、54…締結部材(回動規制部材)、58…(中間ギヤ支軸の)外周面、58c…偏心部、59…連結部、60…Oリング、61a…(一方の円孔の)内周面、70…延設部(筒部)、70c…凹部(逃げ部)、72…規制部材取付部、101…回動用治具(治具)、102…規制部材、DA…範囲、DB…中間ギヤ支軸の所定の回動位置範囲、DC…第3平面と第4平面とのなす角度、P1…第1平面、P2…第2平面、P3…第3平面、P4…第4平面、PD…二等分角面