JP2008000061A - 卵白起泡安定化剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】卵白はその起泡性や凝固性などの物性を利用して種々の食品に広く使用されている。なかでもケーキ、メレンゲ、ムースなど製菓、製パンの分野においては、食品の膨化度、きめ、食感などへ卵白の起泡性が大きく関与している。卵白の起泡性には、卵白を泡立てた場合に得られる泡の体積の増加速度を表す泡立ち性、形成した泡が持続する時間を表す安定性の指標があり、それら指標を起泡安定性としその優れていることが望まれている。本発明は、起泡安定性に優れた卵白を提供することを目的する。
【解決手段】ポリグルタミン酸を含有することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリグルタミン酸を含む卵白起泡安定化剤及び、該卵白起泡安定化剤を使用し卵白起泡安定性が改善された卵白、殺菌冷凍卵白及びその製造方法、及びポリグルタミン酸を含む卵白起泡安定化剤が添加された卵白を含有する飲食品に関するものである。
卵白はその起泡性や凝固性などの物性を利用して種々の食品に広く使用されている。なかでもケーキ、メレンゲ、ムースなど製菓、製パンの分野においては、食品の膨化度、きめ、食感などへ卵白の起泡性が大きく関与している。
卵白の起泡性には、卵白を泡立てた場合に得られる泡の体積の増加速度を表す泡立ち性、形成した泡が持続する時間を表す安定性の指標があり、それら指標を起泡安定性としその優れていることが望まれている。
一方、卵白は微生物特に食中毒の原因となる大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などの病原性微生物に汚染されやすい。このため卵白の病原性微生物の死滅を目的とした殺菌が行われるが、殺菌により卵白の起泡安定性は低下する。また、卵白の殺菌は一般的に加熱殺菌が用いられており、その殺菌条件は病原性微生物特にサルモネラ菌の死滅を目的として設定されているため、卵白に存在する耐熱性の強い微生物を完全に死滅させることは不可能である。そのため卵白を長期間保存するためには微生物増殖による腐敗の危険性が少ない冷凍保存が利用されている。しかしながら殺菌により起泡安定性が低下した卵白を冷凍すると、さらに起泡安定性が低下する。このため、殺菌及び冷凍保存による起泡安定性低下の少ない冷凍卵白が求められている。
卵白の起泡安定性低下の問題を解決するために、そのもの自身が起泡性に優れたサイクロデキストリンや動植物性蛋白分解物を起泡助剤として卵白に添加する方法(例えば特許文献1参照)が報告されているが、これら添加物によって泡の泡立ち性の向上は得られるものの安定性が充分に得られない欠点がある。一方、増粘多糖類と界面活性剤若しくは動植物性蛋白分解物を卵白に添加する方法(例えば特許文献2、3参照)が報告されており、起泡安定性の改善効果が確認されている。しかし、これら起泡安定性の改善された卵白は、食品によって使い分けされている現状があり、依然として起泡安定性の改善された卵白が要望されている。
ポリグルタミン酸は食品添加物として食品に広く利用されているが、卵白の起泡安定化剤としての報告例はない。
特許3072640号公報(第1頁−6頁) 特許2612609号公報(第1頁−5頁) 特開平9−313100号公報(第1頁−7頁)
本発明は、起泡安定性に優れた卵白の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、ポリグルタミン酸を卵白に添加すれば、卵白の起泡安定性低下が抑制されることを見いだし、本発明の完成に至った。特に殺菌卵白の殺菌前に添加すると起泡安定性低下が著しく抑制される。
すなわち本発明は、
〔1〕 ポリグルタミン酸を含有する卵白起泡安定化剤、
〔2〕 前記〔1〕記載の卵白起泡安定化剤を含有する卵白、
〔3〕 前記〔1〕記載の卵白起泡安定化剤を卵白の殺菌工程の前に添加することを特徴とする殺菌冷凍卵白の製造法、
〔4〕 前記〔2〕記載の卵白を含有する飲食品
に関する。
本発明によれば、起泡安定性に優れた卵白を提供することができる。
本発明のポリグルタミン酸が含まれることを特徴とする卵白起泡安定化剤は、卵白を泡立てて調製する際きめ細やかな気泡の泡立ち性を高め、安定に保持し、泡の液化を抑制しうる安定化剤であって、ポリグルタミン酸を有効成分として含有することを特徴とするものである。
本発明において、起泡安定化とは、卵白を泡立てた場合に得られる泡の体積の増加速度を表す泡立ち性を高め、形成した泡が持続する時間で表される安定性を向上させることを指す。
本発明で使用するポリグルタミン酸とは、構成アミノ酸であるグルタミン酸がα又はγ結合した直鎖状の水溶性高分子であり、グルタミン酸γ−ベンジルエステルのN−カルボン酸無水物を重合させ、臭化水素で脱ベンジル化して得られる合成により製造されるポリ−α−グルタミン酸などもあるが、飲食品へ使用することを考慮すると天然のポリグルタミン酸が望ましく、納豆菌、枯草菌などの微生物から産出されるポリ−γ−グルタミン酸がより好ましい。またポリグルタミン酸は、処理方法によって様々な分子量のものが調製可能であるが、本発明の効果を得るためには、使用するポリグルタミン酸の平均分子量は500以上、好ましくは平均分子量が500〜2000万、さらに好ましくは平均分子量1万〜600万である。
本発明におけるポリグルタミン酸はポリグルタミン酸の塩を含有してもよく、また培養中に産生するフラクタンなど多糖類が含まれてもよい。可食塩としては例えばポリグルタミン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム塩などが例示できるが、これらの塩は単独で又は2種類以上併用して使用できる。
当該ポリグルタミン酸は、一般に微生物の培養によって生産される。
具体的には、Bacillus subtilis又はその同等の菌株を、例えば糖類などを炭素源とする培地に培養して得られる培養物から菌体表面に生産された粘質物を単離・回収することによって製造する方法が例示される。
ポリグルタミン酸は天然に起源を有するものであるため、用いる産生微生物や精製条件によっては、その構造も微妙に変わりうる。従って、本発明で用いられるポリグルタミン酸は、特定の構造式に基づいて一義的に限定されることなく、上記方法に従って微生物より産生されるポリグルタミン酸の性質を有するものであればよい。
本発明の卵白起泡安定化剤は、上記ポリグルタミン酸を含有するものであれば、その形態などは特に制限されない。
卵白起泡安定化剤に含まれるポリグルタミン酸の量は特に制限されず、調製する卵白量に応じて適宜選択することができ、卵白に対しポリグルタミン酸が0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.3重量%の添加量範囲である。
また、本発明の卵白起泡安定化剤はポリグルタミン酸を含むものであればよく、他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、起泡性に対するポリグルタミン酸の効果を損なわない限り一般に食品や菓子類に使用される添加剤、食品素材が広く用いられるが、具体的にはゼラチン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、キチン、デキストラン、分岐デキストラン、グリコーゲン、イヌリン、マンナン、グルコマンナン、キシラン、プルラン、アルギン酸、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カードラン、サイクロデキストリン、ファーセレラン、加工澱粉、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム、、グァーガム分解物、キサンタンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、ジェランガム、植物性蛋白質、植物性蛋白質分解物、動物性蛋白質、動物性蛋白質分解物、乳化剤などが例示される。
本発明の卵白起泡安定化剤が添加された卵白は、卵白を泡立てて調製する際きめ細やかな気泡の泡立ち性が優れ、安定に保持し、液化が抑制された卵白であって、ポリグルタミン酸を有効成分として含有することを特徴とするものである。
また、本発明の卵白起泡安定化剤の添加時期は特に限定されるものではないが、殺菌又は冷凍された卵白はその起泡安定性が低下することから、卵白の殺菌工程の前に添加されることが好ましい。
卵白に対する卵白起泡安定化剤の配合量は特に制限されるものではないが、卵白に対しポリグルタミン酸が0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の添加量範囲である。これよりもポリグルタミン酸の添加量が多くなると起泡安定性のうち泡立ち性が低下し、一方で、これよりもポリグルタミン酸の添加量が少ないと、起泡安定性のうち泡の安定性が悪くなるため好ましくない。卵白起泡安定化剤を添加する方法は特に限定されないが、卵白に直接投入攪拌して溶解することもできるし、水などに溶解した溶液を卵白に添加することもできる。
本発明の対象となる卵白は、鶏卵より分離されたものであれば特に限定されるものではなく、一般に入手可能なものであればいずれの形態でも良いが、好ましくは未殺菌液卵白である。
本発明の対象となる殺菌冷凍卵白は、卵白を殺菌し冷凍保存したものである。
本発明の殺菌には、卵白中に含まれる微生物を死滅させるかあるいは微生物数を減少させる操作のため、温水加熱殺菌、蒸気加熱殺菌、マイクロ波照射加熱殺菌、通電加熱殺菌、加圧殺菌、紫外線照射殺菌、オゾン散布殺菌、放射線照射殺菌、超音波照射殺菌など公知の方法を用いることができる。
本発明でいう冷凍保存とは凍結保存と同義の言葉であり、特に限定されるものではないが、卵白中に含まれる水分が氷結により固化して流動性が悪くなる状態で保存することをいう。冷凍保存温度としては−5℃以下が好ましく、特に限定されるものではないが−5℃以下−60℃以上が好ましい。−60℃より低い温度では冷凍に特殊な設備が必要となり製造上好ましくない場合がある。
本発明によれば、例えば実施例1に示すように殺菌冷凍した卵白の起泡安定性低下を抑えることができるため、微生物数が少なく長期間保存可能な殺菌冷凍卵白をケーキ、メレンゲ、ムースなど卵白の起泡安定性がその品質に大きく関与する食品、菓子類に使用し、その品質を改善することができる。
即ち、本発明は、前述の卵白起泡安定化剤を含有する卵白を使用することを特徴とする飲食品である。飲食品とは特に限定するものではなくケーキ、メレンゲ、ムース、クリーム、ソース、スープ、ドレッシング、それらを用いた菓子などが挙げられるが、中でもケーキ、メレンゲ、ムースが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
実施例1
未殺菌で均質化した卵白2kgに、ヤクルト薬品工業社製ポリグルタミン酸「ポリグルタミン酸(納豆菌ガム)」2gを添加してプロペラ撹拌機(アズワン社製)で攪拌溶解させた後、58℃湯浴中で品温が3.5分間56℃以上になるよう加熱殺菌を行ない、直ちに品温が8℃以下になるよう氷冷した。その後、−20℃の冷凍庫で1ヶ月間冷凍保存して本願発明の殺菌冷凍卵白(本願発明品1)を得た。
比較例1
実施例1において、ポリグルタミン酸を添加しない以外は実施例1と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品1)を得た。
比較例2
実施例1において、ポリグルタミン酸を添加せず太陽化学社製キサンタンガム「ネオソフトXC」1gを添加する以外は実施例1と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品2)を得た。
比較例3
実施例1において、ポリグルタミン酸を添加せず光洋商会社製大豆蛋白分解物「バーサホィップ500IPS」1gを添加する以外は実施例1と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品3)を得た。
比較例4
実施例1において、ポリグルタミン酸を添加せず光洋商会社製大豆蛋白分解物「バーサホイップ500IPS」1gと太陽化学社製キサンタンガム「ネオソフトXC」1gを添加する以外は実施例1と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品4)を得た。
試験例1
本願発明品1と比較品1、2、3、4を流水解凍で解凍した後、下記の配合処方でホイッパーを付けた卓上ミキサーを用いて一定速度で攪拌することにより起泡させ比重0.16〜0.17のメレンゲを作成し、メレンゲ作成に要する時間を測定した。このメレンゲ作成に要する時間が短いほど泡立ち性が高いことを意味する。また作成したメレンゲを漏斗に200g量りとり、室温で1時間後漏斗下部から滴下した液化量を測定し、次式に基づいてメレンゲの安定性を求めた。この数値が大きい程、メレンゲの安定性が良いことを意味する。
(配合処方)
卵白 280gグラニュー糖80g
結果を表1に示した。
Figure 2008000061
表1に示すように、ポリグルタミン酸を未殺菌生卵白に添加した後に殺菌し冷凍すれば、メレンゲ作成に要する時間を短縮し、泡の安定性の低下を抑えることが可能である。
実施例2
未殺菌で均質化した卵白2kgに、ヤクルト薬品工業社製ポリグルタミン酸「ポリグルタミン酸(納豆菌ガム)」1gを添加してプロペラ撹拌機(アズワン社製)で攪拌溶解させた後、ホモジナイザー(三和機械社製)を使用して均質化圧力150MPaで均質処理を行った。さらに、58℃湯浴中で品温が3.5分間56℃以上になるよう加熱殺菌を行い、直ちに品温が8℃以下になるよう氷冷した後、−20℃の冷凍庫で1ヶ月間冷凍保存して本願発明の殺菌冷凍卵白(本願発明品2)を得た。
比較例5
実施例2において、ポリグルタミン酸を添加しない以外は実施例2と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品5)を得た。
比較例6
実施例2において、ポリグルタミン酸を添加せず太陽化学社製キサンタンガム「ネオソフトXC」1gを添加する以外は実施例2と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品6)を得た。
比較例7
実施例2において、ポリグルタミン酸を添加せず光洋商会社製大豆蛋白分解物「バーサホィップ500IPS」1gを添加する以外は実施例2と同様にして殺菌冷凍卵白(比較品7)を得た。
試験例2
本願発明品2と比較品5、6、7を流水解凍で解凍した後、試験例1と同様の配合処方でメレンゲを作成した。ホイッパーを付けた卓上ミキサーを用いて一定速度で攪拌することにより起泡させ比重0.16〜0.17のメレンゲ作成に要する時間を測定した。また試験例1と同様に作成したメレンゲを漏斗に200g量りとり、室温で1時間後漏斗下部から滴下した液化量を測定しメレンゲの安定性を求めた。
結果を表2に示した。
Figure 2008000061
表2に示すように、ポリグルタミン酸を未殺菌生卵白に添加した後に殺菌し冷凍すれば、メレンゲ作成に要する時間を短縮し、泡の安定性の低下を抑えることが可能である。
試験例3
試験例1で得た本願発明品1と比較品1、2、3、4の卵白を用いて下記の配合処方、別立て法によるスポンジケーキを焼成し、焼成後の比容積を測定した。なお比容積とはケーキの容積(cm)をケーキの重量(g)で除した数字であり、比容積が大きいほどケーキの膨張率が大きいことを示し、即ち起泡性が優れていることを意味する。また、専門パネラー5名による外観、食感の評価を行った。
(配合処方)
薄力粉300g卵白360gグラニュー糖360g卵黄240g
(別立て法)
卵黄240gを湯煎で30℃に温めた後、グラニュー糖180gを加えて卵黄が全体に白っぽくなるまで混合した。卵白360gを入れたボールを氷冷しながら、ホイッパーを付けた卓上ミキサーを用い1分間一定速度で撹拌した後、グラニュー糖180gを3回に分けて加えながら合計3分間一定速度で撹拌してメレンゲを作成した。卵黄にメレンゲ240gを加えヘラで混合した後、薄力粉300gを加えて再度ヘラで混合した。残りのメレンゲを加えた後、ホイッパーを付けた卓上ミキサーを用い1分間一定速度で撹拌したものをミックスとした。ミックス350gを直径18cm丸型の型に入れ、180℃のオーブンで25分間焼成した後、型からスポンジケーキを取り出して網の上にのせ室温で1時間冷却した。冷却したスポンジケーキをポリ袋に入れ、翌日、比容積の測定、外観、食感の評価を行った。
結果を表3に示した。
Figure 2008000061
表3に示すように、ポリグルタミン酸を殺菌前に添加した凍結卵白を用いたスポンジケーキは比容積が大きく、好ましい食感であった。

Claims (4)

  1. ポリグルタミン酸を含有することを特徴とする卵白起泡安定化剤。
  2. 請求項1に記載の卵白起泡安定化剤を含有する卵白。
  3. 請求項1に記載の卵白起泡安定化剤を卵白の殺菌工程の前に添加することを特徴とする殺菌冷凍卵白の製造法。
  4. 請求項2に記載の卵白を含有する飲食品。
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