JP5345711B2 - コンニャク流動材料、それを用いた飲料および食品 - Google Patents

コンニャク流動材料、それを用いた飲料および食品 Download PDF

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Description

本発明は、多量のコンニャク粉を含んでいるにもかかわらず粘度が低いコンニャク流動材料に関する。また、本発明は、このような特徴を有するコンニャク流動材料の製造方法および用途にも関係する。
コンニャクは、古くから一般消費者に広く親しまれている食品であり、そのまま単品で食されたり、他の素材と組み合せて料理されたうえで食されたりしてきた。また、最近のダイエットブームにより、コンニャクは低カロリーの健康食として注目されるようになっており、様々な食品中にコンニャクを含ませたコンニャク含有食品も開発されている。
コンニャクは、コンニャク芋をすりつぶしたものや、コンニャク粉を水で膨潤させたものに水酸化カルシウムなどのアルカリを加えてpH10.5〜12で固化させることにより一般に製造されている。このような製造過程を経ているため、コンニャクは独特のアルカリ臭を有しており、それが原因でコンニャクを敬遠する人は少なくない。また、ダイエットや健康維持のためにコンニャクを多量に摂取しようとしても、アルカリ臭や単調な味に飽きが来て思うように摂取することができない。
このため、コンニャクを食べやすい食材と混合したり、飲みやすい飲料に分散させたりして、より摂取しやすい形態にして消費者に提供することが種々試みられている。
例えば、アルカリを加えて固化させたコンニャクを細かく裁断して、他の食材や飲料と混合しやすく改良したペースト状物が提案されている(特許文献1)。また、他の方法として、コンニャク粉に含まれている水溶性のコンニャクマンナンを精製した精製水溶性コンニャクマンナンを、他の食材や飲料と混合することも提案されている(特許文献2)。さらに、他の方法として、コンニャク粉に含まれるコンニャクマンナンを酵素処理して液状物とすることも提案されている(特許文献3)。
特開平5−207854号公報 特公昭54−20582号公報 特開平5−199856号公報
しかしながら、特許文献1のペースト状物に含まれている裁断物はアルカリで固化させたコンニャクそのものであることから、このような裁断物が他の食材や飲料と十分な程度に均一に混合されることはない。このため、特許文献1のペースト状物を用いても、通常のコンニャク以上にコンニャク濃度が高い食品や飲料とすることは不可能である。また、アルカリ臭の問題が依然として残っているため、このペースト状物を用いてもコンニャクを多量に摂取しやすい食品や飲料を製造することはできない。
また、特許文献2の水溶性コンニャクマンナンは、コンニャク粉とほぼ同等の膨潤性を有することから流動性がある状態で高濃度化するには自ずと限界がある。コンニャク粉は水と混合することにより膨潤してペースト状になるが、このとき3重量%を大きく上回る濃度でコンニャク粉を含む流動材料は製造することができない。したがって、精製水溶性コンニャクマンナンを用いても、高濃度であり且つ他の食材と混合しやすい流動性を有する材料を提供したり、高濃度でコンニャク粉を含む飲料等を提供したりすることはできない。
さらに、特許文献3の液状物は、コンニャク粉をアルカリ条件下で固化せずに液状になるまで酵素処理したものであることから、原料として用いたコンニャクマンナンはかなり低分子化されており、コンニャクマンナンが本来有しているゲル化力や生体内作用は大幅に損なわれてしまっている。したがって、ダイエットや健康維持を図るという本来の目的には合致しないものである。
このような従来技術の課題を考慮して、本発明者は、コンニャクマンナンが本来有しているゲル化力や生体内作用を十分に維持したまま、他の食材とより均一に高濃度でコンニャク材料を混合させることができる組成物を提供することを目的として鋭意検討を進めた。また、ダイエットや健康維持をより効果的に推進させることができる食品や飲料を提供することも目的として鋭意検討を進めた。
その結果、下記の構成を有する本発明によれば、目的を達成しうることが見出された。
(態様1)
コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有することを特徴とするコンニャク流動材料。
(態様2)
コンニャク粉含有量が5重量%以上であることを特徴とする態様1に記載のコンニャク流動材料。
(態様3)
以下の工程A、工程Bおよび工程Cを含むことを特徴とする、態様1または2に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(工程A) コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理することによりアルカリ組成物を得る工程
(工程B) 前記アルカリ組成物のpHを8未満に低減して強制攪拌しつつ温度を上げて強制攪拌組成物を得る工程
(工程C) 前記強制攪拌組成物を酵素処理する工程
(態様4)
前記工程Bにおいて、前記アルカリ組成物のpHを5〜7に低減する態様3に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(態様5)
前記工程BのpHの低減を、乳酸、クエン酸、酢酸、コハク酸酒石酸、グルコン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を添加することにより行うことを特徴とする態様4または5に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(態様6)
前記工程Cの酵素処理を、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼおよびガラクトマンナーゼからなる群から選ばれた少なくとも一種の酵素を用いて行うことを特徴とする態様3〜5のいずれか一項に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(態様7)
前記工程Cによって得られた酵素処理済み組成物に対して、さらに下記の工程Dを行うことを特徴とする態様3〜6のいずれか一項に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(工程D) 酵素処理済み組成物に含まれる塊粒を断裁する工程
(態様8)
工程Dの断裁を回転フードカッターまたはホモジナイザーを用いて行うことを特徴とする態様7に記載のコンニャク流動材料の製造方法。
(態様9)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料と飲料成分を混合する工程を含むことを特徴とする飲料の製造方法。
(態様10)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料と食材を混合する工程を含むことを特徴とする食品の製造方法。
(態様11)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする飲料。
(態様12)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする食品。
(態様13)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする血中コレステロール低減剤。
(態様14)
態様1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする体脂肪減少剤。
本発明のコンニャク流動材料は、コンニャクマンナンが本来有しているゲル化力や生体内作用を十分に維持したまま、他の食材とより均一に高濃度で混合することが可能である。したがって、本発明のコンニャク流動材料を用いれば、コンニャク材料が高濃度でより均一に含まれている食品や飲料が提供される。また、本発明のコンニャク流動材料は、高い血中コレステロール低減作用と体脂肪減少作用を有する。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明のコンニャク流動材料は、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であることを特徴とする。
本発明のコンニャク流動材料のコンニャク粉含有量は、4重量%以上であることがより好ましく、4.5重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、5.5重量%以上であることが特に好ましい。上限については特に制限はないが、例えば8重量%のコンニャク流動材料を得ることができる。
また、本発明のコンニャク流動材料の20℃における粘度は、3.5Pa・s以下であることがより好ましく、3Pa・s以下であることがさらに好ましく、2.8Pa・s以下であることが特に好ましい。下限値は、好ましくは0.1Pa・s以上であることが好ましく、0.2Pa・s以上であることがより好ましく、0.3Pa・s以上であることがさらに好ましく、0.4Pa・s以上であることが特に好ましい。範囲で規定すると、本発明のコンニャク流動材料の20℃における粘度は、0.1〜4Pa・sであることが好ましく、0.1〜3.5Pa・sであることがより好ましく、0.2〜3.2Pa・sであることがさらに好ましく、0.3〜3Pa・sであることがさらにより好ましく、0.4〜2.8Pa・sであることが特に好ましい。
また、本発明のコンニャク流動材料はゲル化力を有するものであるが、ここでいう「ゲル化力を有する」とはアルカリ条件下で加熱することによってゲル化する機能を発揮することを意味する。
本発明のコンニャク流動材料のように、多量のコンニャク粉を含んでいるにもかかわらず粘度が低く、しかもゲル化力を有する組成物はこれまでに製造されるに至っていなかった。コンニャク粉は水によって膨潤してペースト状になるが、コンニャク粉が元来有している膨潤量には限界があるため、3重量%を大きく上回る量のコンニャク粉を含む流動材料はもともと得ることができない。コンニャク粉を多量に含む流動材料を得るためには、コンニャク粉を構成するコンニャクマンナン(グルコマンナン)を膨潤性がかなり低下するまで分解して水に溶解ないし分散させる方法が考えられるが、このような方法を採用するとコンニャクマンナンが有しているゲル化力や生体内作用が得られなくなってしまうため好ましくない。本発明者は、コンニャクマンナンが有しているゲル化力や生体内作用を維持しつつ、高濃度化する方法を種々検討した結果、本発明の製造方法によれば上記の条件を満たすコンニャク流動材料を簡便に製造しうることを見出した。
本発明のコンニャク流動材料の製造方法は以下の工程A〜Dを有する。工程A〜Dのうち、工程A〜Cは必須工程であり、工程Dは実施することが好ましい工程である。
(工程A) コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理することによりアルカリ組成物を得る工程
(工程B) 前記アルカリ組成物のpHを8未満に低減して強制攪拌しつつ温度を上げて強制攪拌組成物を得る工程
(工程C) 前記強制攪拌組成物を酵素処理する工程
(工程D) 酵素処理済み組成物に含まれる塊粒を断裁する工程
工程Aは、コンニャク粉のゲル化力を部分的に利用してアルカリ組成物を得る工程である。従来のコンニャクの製造方法では、コンニャク粉のゲル化力をほぼ完全に利用して固形のコンニャクを得ているが、本発明の工程Aではコンニャク粉のゲル化力の利用を抑える。すなわち、水を添加して攪拌すればペースト状ないし糊状になるような状態でゲル化をとどめておく。このような状態でゲル化を抑えておくことによって、最終的に得られるコンニャク流動材料にゲル化力を持たせることが可能になり、他の食材や飲料成分と混合した後に、そのゲル化力を発揮させうるようになる。
工程Aで用いるコンニャク粉の産地や種類は特に制限されない。コンニャク芋をそのまま粉末化したものを用いてもよいし、精製工程を経たものを用いてもよい。また、コンニャク粉は必ずしも粒径が揃っている必要はない。
工程Aにおいてコンニャク粉に添加するアルカリは、食品に用いることができるものの中から適宜選択する。コンニャク粉は、通常pH9以上のアルカリ下にてゲル化する。したがって、このようなpH範囲内になるように工程Aにおいてコンニャク粉に添加するアルカリの量を適宜調整する。好ましいのは、塩基性アミノ酸、塩基性塩類または両者の混合物をアルカリとして添加する態様である。
塩基性アミノ酸としては、通常は、アルギニン、ヒスチジン、リジン、シトルリン、オルニチン等の単独または混合したものを使用する。特に好ましいのはアルギニンまたはリジンである。塩基性アミノ酸は、コンニャク粉に対して1.25〜20重量%で添加することが好ましい。塩基性アミノ酸はpHの緩衝性が高い。このため、塩基性アミノ酸を用いれば、安定したpHが得られ、品質が安定していて味のよい食品や飲料を提供しやすいという利点もある。
塩基性物質としては、通常は、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリム等の有機酸塩、及びポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム等のリン酸塩、及び炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、及び硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の単独又は混合したものを用いることができる。このように、塩基性の食品用塩類であればいずれも、本発明において塩基性塩類として使用することができる。
なお、バッファ効果を持たせるために各々の酸または酸性塩類を組み合わせて、最終的にpHがアルカリ性になる組み合わせで用いることも可能である。その場合の酸、塩基性塩類としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、リン酸、リン酸一ナトリウム、リンゴ酸一カリウム等を用いることができる。使用量はコンニャク粉に対して0.01〜20重量%にすることが好ましい。
塩基性アミノ酸と塩基性塩類を併用すれば、両者の機能をうまくバランスさせて製造を容易化できることがある。すなわち、塩基性アミノ酸はpH緩衝性が高く、安定したpHが得られる反面、pH値を任意に設定することが難しいという難点がある。一方、塩基性塩類はpHの緩衝性は低いが、物質の選択により任意にpHを調整できる長所がある。このため、両者をうまく組み合わせれば、pH設定を容易にし、原料、使用水によるpHの変動をおさえて、均一なアルカリ組成物を製造することが可能になる。
pHは9以上に調整するが、9.0〜10.5に調整することが好ましく、9.3〜10.2に調整することがより好ましい。pHが9.0以上であれば、効率よくゲル化を進行させやすい。また、pHが10.5以下であれば、ゲル化反応が進みすぎて離水やアルカリ臭が発生する弊害を防ぎやすい傾向がある。
コンニャク粉に、水とアルカリを添加する順序は特に制限されない。例えば、コンニャク粉に水を加えて膨潤溶解させてからアルカリを添加混合して反応させてもよいし、アルカリを添加した水をコンニャク粉に加えて膨潤と反応を同時に行ってもよい。あるいは、コンニャク粉にアルカリを混合しておいてから水を加えて膨潤溶解させてもよい。これらの方法は適宜組み合わせてもよい。また、コンニャク粉にまず塩基性アミノ酸を含む水を添加して、その後に塩基性塩類を含む水を添加してもよい。いずれの方法であっても、水による膨潤とアルカリによる反応が進行する限り、工程Aの手順として採用することが可能である。
好ましい具体例として、まず、コンニャク粉に水を加えて膨潤溶解し、得られたコンニャク糊状物に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を加え、よく混合する方法を挙げることができる。また、別の好ましい具体例として、水に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を予め混合溶解し、この溶液でコンニャク粉を膨潤溶解する方法を挙げることができる。さらに別の好ましい具体例として、コンニャク粉に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を予め混合し、次いで水を添加混合して膨潤溶解する方法を挙げることができる。
水の添加量は、コンニャク粉1重量部に対して、10〜27重量部が好ましく、11〜23重量部がより好ましく、12〜20重量部がさらに好ましく、13〜18重量部が特に好ましい。
コンニャク粉に水やアルカリを添加した後は、室温または加熱下にて十分に反応させることが好ましい。たとえば、室温で2〜4時間、60℃で15分〜1時間程度処理することにより十分に反応させることができる。温度や時間などの条件は、コンニャク粉とアルカリの割合、添加方法、pH、最終製品とする食品や飲料の種類などによって適宜決定することができる。一般に、pHが高い場合には反応時間は短くてよく、pHが低い場合は反応時間を長くすることが好ましい。
工程Aでは、本発明の効果を過度に損なわない限り、上記以外の食品成分や添加剤を添加してもよい。例えば、乳化剤、澱粉、油脂、調味料または香料等を適宜添加してもよい。その種類や量は、目的とする食品の種類や製造条件、保存環境などに応じて決定することができる。また、このような食品成分や添加剤の添加は、後の工程(例えば工程B、工程Cおよび/または工程D)において行っても構わない。
次に工程Bについて説明する。
工程Bは、工程Aで得られたアルカリ組成物のpHを8未満に低減して強制攪拌しつつ温度を上げる工程である。工程Aで得られる組成物は、高粘度であることから、このままでは他の食材や飲料成分と十分に混合することはできない。また、室温で攪拌することは容易ではないが、本発明の工程Bでは、このようなアルカリ組成物に対して強制攪拌を行う。
工程Bで行う強制攪拌とは、アルカリ組成物の粘度に抗して、アルカリ組成物中に導入した攪拌手段を30rpm以上で回転させるか、それと同等の攪拌を行うものである。攪拌手段としては、2〜12枚のブレード付き回転軸などを挙げることができる。このような強制攪拌を行いながら、徐々に温度を上昇させて行く。温度上昇の幅は5〜60℃が好ましく、10〜55℃がより好ましく、20〜50℃がさらに好ましい。また、温度の上昇速度は、最初は低くしておき、徐々に高めて行くことが好ましい。工程Bにおける最終到達温度は、40〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。工程Bでは、温度上昇に伴って攪拌速度を上げて行くことが好ましい。攪拌速度は最終的に1.5倍以上に上げることが好ましく、1.8倍以上に上げることがより好ましく、2倍以上に上げることが特に好ましい。具体的には、室温から60℃に温度を上昇させつつ、回転速度を30rpmから60rpmに上げる態様を好ましい態様として例示することができる。攪拌時間は2〜45分が好ましく、3〜30分がより好ましく、5〜20分が特に好ましい。
温度上昇前または温度上昇中に、pHを8未満に低減するために、酸を添加する。添加する酸の種類は、本発明の効果を過度に阻害しないものであれば特に制限されない。通常は、乳酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の有機酸溶液を添加する。酸の添加は、一時期に一気に添加してもよいし、連続的または断続的に添加してもよい。pHは、4.6〜7.5に調整することが好ましく、5〜7に調整することがより好ましい。特に、pH4.6未満、特にpH5未満のpH領域に調整してからさらにpHを上昇させるような処理を行うことなく、目的とするpHにコントロールすることが、体内摂取後の作用、味、混合性の点でより好ましい結果が得られる。
次に工程Cについて説明する。
工程Cは、工程Bで得られた強制攪拌組成物を酵素処理する工程である。酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、及びガラクトマンナーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素が好ましい。これらの酵素については、市販品を使用することができる。例えば、三共株式会社製のスクラーゼNなどを好ましく使用することができる。
酵素処理は、酵素が十分に作用しうる温度で行う。通常は、加熱条件下で行い、40〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。また、処理時間は、酵素の種類や温度によって異なるが、通常は10分〜12時間、好ましくは20分〜6時間、さらに好ましくは30分〜3時間である。また、酵素処理中は攪拌を行うことが好ましい。
酵素処理を行った後は、酵素を失活させることが好ましい。酵素を失活させる手段は、本発明の効果に過度な悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されないが、例えば酵素が失活する温度まで上昇させることにより目的を達成することができる。前述のスクラーゼNを用いた場合は、例えば90℃まで温度を上昇させることによって酵素を失活させることができる。
次に工程Dについて説明する。
工程Dは、工程Cで得られた酵素処理済み組成物に含まれる塊粒を断裁する工程である。工程Cによって、本発明の粘度条件を満たすコンニャク流動材料を得ることが可能であるが、工程Cで得られた組成物の粘度をさらに低くしたい場合や、工程Cで得られた組成物に含まれる塊粒をさらに小さくしたい場合には、工程Dを行うことが好ましい。粘度はさらに0.2〜1Pa・s程度低下させることが可能である。
工程Dで行う裁断は、ホモジナイザーやフードカッターを用いて行うことが好ましい。フードカッターやホモジナイザーの構造の詳細は特に限定されない。工程Cで得られた酵素処理済み組成物に塊粒が含まれている場合は、その塊粒を機械的に断裁できればよく、高速回転カッターや高速ホモジナイザー等を用いることが好ましい。このような機械的な断裁処理は複数回繰返すことも可能である。このような裁断処理を行うことによって、一段と分散特性に優れて、他の食材や飲料成分と均一に混合しやすいコンニャク流動材料にすることができる。
なお、本発明のコンニャク流動材料は、本発明の製造方法にしたがって製造されたものに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される条件を満たすものであれば、その製造方法のいかんを問わず本発明のコンニャク流動材料に該当する。例えば、本発明の製造方法の各工程における操作は、技術的に同等な製造物を製造しうるように適宜改変、追加、省略しても構わない。
本発明のコンニャク流動材料は、高濃度のコンニャク粉を含んでいるにもかかわらず、低粘度でゲル化力も有している。このため、他の食材や飲料成分と容易により均一に混合することができる。したがって、本発明のコンニャク流動材料を用いれば、高い濃度でコンニャク材料を含む食品や飲料を効率よく簡単に製造することができる。特に、従来のコンニャク材料では達成することができなかった高濃度の飲料を製造することができる点で、本発明の利用価値は極めて高い。すなわち、コンニャク粉から製造されるコンニャクを大量に食するには大いなる忍耐を要するが、同量のコンニャク粉から製造される本発明の飲料であれば簡単においしく飲むことができるため、手軽にダイエットや健康維持を図ることができる。
本発明のコンニャク流動材料を用いて製造される食品の形態は、特に制限されない。本発明によれば、コンニャク材料を含む多種多様な食品を製造することが可能である。例えば、そば、うどん、フライ、ハンバーガーパテ、ウインナー、はんぺん等のねり製品、ゼリー、ポタージュ、アイスクリーム、バター、ヨーグルト、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング、焼き鳥や蒲焼のたれ、ドレッシングを製造することが可能である。
本発明を利用して提供される食品は、全体の組織のしまりが良好である。このため、自由水が動きにくくなっており、肉汁などを含ませた場合にその保持力が極めて高い。また、形がくずれにくく、保形性が高い。すなわち、ゴムのように伸びることがなく、また逆に収縮することもない。また、本発明の食品は、味しみが良い。このため、煮物などに入れた場合は、だし汁の味が十分にしみ込んで旨みのある食品になる。また、全体としてやわらかくてジューシーな味わいを楽しむこともできる。
また、本発明のコンニャク流動材料を用いて製造される飲料の形態も、特に制限されない。代表的な飲料として、ジュース類を挙げることができる。本発明のコンニャク流動材料を用いれば、コクがあって、喉ごしの良い飲料を提供することができる。ジュース類以外にも、ココア、牛乳、醗酵乳、機能性フレーバー飲料等に適用することができる。
さらに、本発明の食品や飲料は、コンニャク特有のアルカリ臭が抑えられているため、消費者に広く受け入れられ易い。特に、本発明にしたがってコンニャクそのものを製造することも可能であるが、この場合は、従来と同様に強アルカリ条件下で加熱して製造しているにもかかわらず、アルカリ臭が効果的にマスキングされ、臭みのないコンニャクを得ることができる。
本発明のコンニャク流動材料は、体内に摂取することによって、血中コレステロール低減作用と体脂肪減少作用を示す。このため、本発明のコンニャク流動材料は、医薬品としても有用である。本発明のコンニャク流動材料は、古くから食されているコンニャク粉から製造されるものであることから、その安全性が高いことは周知の事実である。また、本発明のコンニャク流動材料の濃度には上限があることから、そのまま摂取しても薬学的な許容量を超えることはないと考えられるが、患者によっては必要に応じて投与量を個別に規定することができる。
また、本発明のコンニャク流動材料を医薬品として加工する場合は、当業者に周知の技術にしたがって、経口摂取しやすい形態に適宜加工することができる。また、薬学的に許容しうる賦形剤を適宜選択して必要量を使用して製剤化することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1> コンニャク材料の製造
(1)アルカリ組成物の調製
コンニャク精粉60kgと炭酸ナトリウム2.15kgを60℃の水1000リットルに添加混合して、30分反応させることによって、pH9.3のアルカリ組成物[1]を得た。
これとは別に、コンニャク精粉60kgと炭酸ナトリウム2.15kgを20℃の水1000リットルに添加混合して、3時間反応させることによって、pH9.3のアルカリ組成物[2]を得た。
(2)pH調整
(1)で得られた各アルカリ組成物に、表1に記載される量のクエン酸と水からなる水溶液を添加して室温で強制攪拌した。強制攪拌は、各混合物を入れたバッチ中に挿入した攪拌手段(10枚のブレード付き回転軸)を室温にて30rpmで回転させることにより開始し、温度を60℃まで上昇させるのに伴って回転速度を60rpmまで速めることにより行った。アルカリ組成物[1]からはpH調整済み組成物[1−a]〜[1−i]を調製し、アルカリ組成物[2]からはpH調整済み組成物[2−a]〜[2−i]を調製した。得られた各組成物のpHは、表1に示すとおりであった。
Figure 0005345711
(3)酵素処理
(2)で得られた各pH調整済み組成物100重量部に対して、ペクチナーゼを主たる酵素とする「スクラーゼN」(三共株式会社製)を0.05重量部添加して60℃で2時間酵素処理を行った。その後、90℃まで温度上昇して酵素を失活させた後、常温に降温して、酵素処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および酵素処理済み組成物[2−a]〜[2−i]を得た。
(4)断裁処理
(3)で得られた各酵素処理済み組成物に含まれる塊粒をフードカッターを使用して断裁処理した。その結果、流動性に優れた断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−i]を得た。50HzのB形粘度計を用いて20℃で測定した粘度は2600cp〜2800cpの範囲内であった(換算値2.6Pa・s〜2.8Pa・s)。得られた各断裁処理済み組成物は、アルカリ条件下でゲル化する作用を有していた。
コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有することを特徴とするコンニャク流動材料は、クエン酸水溶液を添加した後の攪拌速度を10rpmに変更した場合や、先に温度を60℃まで上昇させてからクエン酸水溶液を添加した場合には得ることができなかった。
また、(1)のコンニャク精粉量を40kg、45kg、50kg、55kg、80kgに変更して、上記(1)〜(4)を実施した場合は、それぞれ460cp、1400cp、2520cp、2600cp、3000cpのゲル化力を有するコンニャク流動材料を得た(換算値0.46Pa・s、1.4Pa・s、2.52Pa・s、2.6Pa・s、3.0Pa・s)。
<実施例2> 飲料の製造
実施例1で製造した断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−i]をそれぞれ用いて、表2に記載される材料を混合することにより飲料を製造した。表2において、コンニャク流動材料と記載されているものは、各断裁処理済み組成物に相当する。
得られた飲料は、いずれも飲料として適したものであったが、特に断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−f]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−f]を用いて製造したものは、臭みがほとんどない点で優れていた。その中でも、断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−e]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−e]を用いて製造したものがさらに優れていた。
また、断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−f]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−f]を用いた場合は、味付けが容易であるという利点があることも確認された。味付けの容易性は、特に断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−e]および断裁処理済み組成物[2−a]〜[2−e]を用いた場合に優れていた。
以上の傾向は、コンニャク流動材料として、酵素処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および酵素処理済み組成物[2−a]〜[2−i]を用いて同じ処方で飲料を製造した場合も同様であった。
Figure 0005345711
<実施例3> 食品の製造
コンニャク流動材料として、断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および[2−a]〜[2−i]と、酵素処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および[2−a]〜[2−i]をそれぞれ用いて、以下の食品を製造した。
牛挽き肉150gとコンニャク流動材料500gをよく混合して成形することによりミ−トパテを製造した。このミ−トパテを調理した調理品は、牛挽き肉のみを用いて調理した調理品に比べて、ジュ−シ−であった。また、このミートパテをいったん冷凍保存した後に解凍して上記と同様に調理した場合であっても、ジューシーな調理品を製造することができた。
<実施例4> 別の食品の製造
コンニャク流動材料として、断裁処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および[2−a]〜[2−i]と、酵素処理済み組成物[1−a]〜[1−i]および[2−a]〜[2−i]をそれぞれ用いて、以下の手順で焼き鳥等に用いるたれを製造した。
コンニャク流動材料400g、醤油180ml、砂糖80g、酢60ml、化学調味料2g、水80mlを適宜加熱を行いながら十分に混合してたれを製造した。このたれは、コンニャク流動材料を使用せずに製造したたれに比べて、適度な粘度とコクを有しており、焼き鳥につけたときの液ダレもなく、優れていた。
<実施例5> 製剤の製造
実施例1の裁断処理済み組成物[1−c]を水で3倍に希釈して十分に攪拌混合することによって経口投与剤を製造した。
<試験例>
10週令雄肥満ラット(Zucker fa/fa, 日本医科科学動物資材研)に対して、1日1回7日間にわたって実施例1の裁断処理済み組成物[1−c]を連続経口投与した。投与量は、コンニャク粉の1日の投与量が80mg/kg体重となる量(×1投与群)またはコンニャク粉の1日の投与量が800mg/kg体重となる量(×10投与群)とし、各群についてラット5匹を用いて試験を行った。7日目の最終投与が終了してから2時間後に断頭採血し、ヒトにおける一般血液化学検査項目に準じて、血漿中総タンパク質濃度、血中グルコース濃度(血糖値)、総脂質、中性脂肪(トリグリセリド、TG)、遊離脂肪酸(FAA)、総コレステロール、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、エステル型コレステロール、GOT、GPTを測定した。また、開腹後に背側部にある脂肪塊を摘出してその重量を測定することによって、腹部蓄積脂肪重量を測定した。
中性脂肪は、対照群(145.8±4.03mg/dl)に比較して、×1投与群(160.0±10.18mg/dl)と×10投与群(155.4±14.92mg/dl)で減少傾向を示した。体脂肪量も、対照群(6.68±0.297g)に比較して、×1投与群(6.31±0.333g)で減少傾向を示し、×10投与群(6.18±0.191g)でさらに減少傾向を示した。また、LDL−コレステロールも、対照群(5.6±0.53mg/dl)に比較して、×1投与群(5.2±0.49mg/dl)と×10投与群(4.8±0.37mg/dl)で減少傾向を示した。遊離脂肪酸量は、対照群(402.2±40.26μEQ/l)に比較して、×1投与群(554.4±27.97μEQ/l)と×10投与群(590.6±63.88μEQ/l)でそれぞれ有意(p<0.02、p<0.05)な増加が認められ、体内において脂肪の燃焼を促進し脂肪蓄積を防いでいることが確認された。また、体重については、対照群(401±4.02g)、×1投与群(406.5±4.49g)、×10投与群(392.4±1.42)といずれの投与群においても変化が認められず、本発明のコンニャク流動材料を投与することによって、体重に影響を与えないことが確認された。
以上の結果は、本発明のコンニャク流動材料は血中コレステロール低減作用と体脂肪減少作用を有していることを示しており、これを飲用することによって肥満防止効果を期待できる。
本発明のコンニャク流動材料は、コンニャクマンナンが本来有しているゲル化力や生体内作用を十分に維持したまま、他の食材とより均一に高濃度で混合することが可能である。したがって、本発明のコンニャク流動材料を用いれば、コンニャク材料が高濃度でより均一に含まれている食品や飲料が提供される。このため、食品および飲料の製造分野において、本発明は産業上の利用可能性が高い。また、本発明のコンニャク流動材料は、高い血中コレステロール低減作用と体脂肪減少作用を有している。このため、医薬分野においても本発明は産業上の利用可能性がある。

Claims (15)

  1. コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有することを特徴とするコンニャク流動材料。
  2. 前記コンニャク粉がpH9以上でアルカリ処理されていることを特徴とする請求項1に記載のコンニャク流動材料。
  3. 以下の工程A、工程Bおよび工程Cを経て製造されるコンニャク流動材料。
    (工程A) コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9〜10.5でアルカリ処理することにより、コンニャク粉1重量部に対して水を10〜27重量部含むアルカリ組成物を得る工程
    (工程B) 前記アルカリ組成物のpHを8未満に低減して強制攪拌しつつ温度を上げて強制攪拌組成物を得る工程
    (工程C) 前記強制攪拌組成物を酵素処理する工程
  4. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を含有し、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であることを特徴とする飲料。
  5. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を含有し、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であることを特徴とする飲料。
  6. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を含有し、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であることを特徴とする食品。
  7. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を含有し、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であることを特徴とする食品。
  8. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする体重に影響を与えない血中コレステロール低減剤。
  9. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする体重に影響を与えない血中コレステロール低減剤。
  10. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする体重に影響を与えない体脂肪減少剤。
  11. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を含有することを特徴とする体重に影響を与えない体脂肪減少剤。
  12. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を飲料成分と混合する工程を含むことを特徴とする飲料の製造方法。
  13. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を飲料成分と混合する工程を含むことを特徴とする飲料の製造方法。
  14. 請求項1または2に記載のコンニャク流動材料を食材と混合する工程を含むことを特徴とする食品の製造方法。
  15. 請求項3に記載のコンニャク流動材料を食材と混合する工程を含むことを特徴とする食品の製造方法。
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