JP2007530769A - 低熱放出性低煙性強化繊維/エポキシ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い火災抵抗性と低い発煙性をもつ強化繊維/樹脂複合体を提供する。
【解決手段】強化繊維及びエポキシ樹脂と所望により含まれる樹脂硬化剤と硬化触媒と反応性ホスフォネート難燃剤とからなる接着性組成物からなる複合材料。

Description

本発明は高い燃焼抵抗性と低い煙放出性をもつ軽量複合材料に関し、特に樹脂組成物、より具体的にはエポキシ樹脂組成物、と強化繊維からつくられる構造複合体に関する。これらの複合体はそれらの燃焼抵抗性を実質的に増大させるためにある種の添加剤を含有する。これらの複合体は特に航空機の装飾材、半構造材及び構造材として用いうる。
航空産業の関心は、航空機の内部側壁や貯蔵容器や天井やパーティションの構造材として用いられている複合材料の燃焼性や発火性の低下に向けられている。燃焼安全性の観点から、側壁パネルはそれらが大きい表面積をもちキャビン火災にかかわるおそれが大きい点で特に関心が高い部材である。
航空産業で用いられる繊維複合材としては、一般に、種々のエポキシ樹脂を強化繊維系に含浸させたものがある。これらの強化繊維含浸系は複合体のコア材料に容易に接着するという優れた接着性を示す。しかしこれらのエポキシ樹脂は炎にさらされると燃えて発煙するという点で安全上望ましくない。
非難燃化エポキシ樹脂の場合、たとえばグラファイト/エポキシ組成物の燃焼による分解及びそれに続いてのグラファイト繊維の破壊及び電気機器へのそれら繊維の拡散が重大な問題を生じうる。それ故、これらの導電性短繊維の含有方法及びそれらの拡散防止方法の開発が強く望まれている。
生存性に問題となる航空機キャビン火災事故の危険因子としては、材料の燃焼性と熱放出、それら材料の発煙性及び発生した煙の毒性等がある。これらの危険因子の各々の相対的重要度はそれぞれの火災の周辺環境によって異なる。墜落後のキャビン火災では大きな燃料火災が発火源の主体となる。発火源周囲から火炎が突然急速に制御不能にキャビン内部に生長していくいわゆる「フラッシュオーバー」が乗員乗客の生存性に最も大きな影響をもつことが判明した。
フラッシュオーバーが発生する前は、熱、煙及び毒性ガスのレベルは明らかに許容範囲にあるが、フラッシュオーバーが発生した後では危険が生存を不可能にするレベルに急速に増大する。それ故、墜落後の火災等ではキャビンの材料が燃焼してもたらされる危険を最小化する最も効果的で直接的な手段はフラッシュオーバーの発生を遅らせることがある。煙や毒性の問題と対象的に、燃焼性の問題はフラッシュオーバーの発生に直接影響する。
それ故、強化繊維/樹脂複合体の使用は、強化繊維の存在による複合体の強度だけでなく、樹脂の火災抵抗性にも依存する。樹脂に加えたとき難燃剤として作用する多くの添加剤が知られている。アルミナ3水和物、アンモニウムポリホスフェート及びホウ酸亜鉛等の難燃剤は優れた火災抵抗性を示す固体だが、積層体の厚さが増して強度が低下することから積層体の機械的性質に悪影響を与える。
ある種のハロゲン含有化合物がこれらの用途に用いられ、またこれらの化合物はしばしば相乗化剤としての三酸化アンチモンと組合せて用いられている。これらの優れた難燃化合物の問題点はそれらも大きな負の性質をもっている点である。たとえば、芳香族臭素化合物は、熱分解を受けたときに発生する遊離の臭素ラジカルと臭化水素が高い腐食性をもっている。またこの臭素は樹脂が燃焼したときに生ずる煙を減らす作用はもっていない。事実、臭素化エポキシ樹脂は発煙量を増加させてしまう。
従って、本発明の1の目的は、高い火災抵抗性と低い発煙性をもつ強化繊維/樹脂複合体を提供することにある。
本発明の更なる目的は、強化繊維を割ったり拡散したりすることなしに、高温に耐える上記タイプの複合体を提供することにある。
本発明の更なる目的は、樹脂の火災抵抗性を実質的に高め、複合体の物理的及び機械的性質に悪影響を与えず、高温で複合体の構造一体性を保持しながら樹脂又は炭化した樹脂を安定化する機能をももつ接着性エポキシ樹脂組成物及びそれらからつくった複合体を提供することにある。
従って、本発明は強化繊維及びエポキシ樹脂と所望により含まれる樹脂硬化剤と硬化触媒と反応性ホスフォネート難燃剤とからなる接着性組成物からなることを特徴とする複合材料を提供する。
また本発明は強化繊維に上記接着性組成物を含浸させることを特徴とする複合材料の製造方法を提供する。
以下に、本発明を好ましい態様を例に記載する。
エポキシ樹脂は接着性組成物の合計重量の約40〜約80重量%の範囲で存在する。代表的なエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、4,4’−ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、フェノールサリシレートアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び他化合物、たとえば2官能性フェノール基グリシジルエーテル化合物、2官能性アルコールグリシジルエーテル化合物、ポリフェノール基グリシジルエーテル化合物、及びポリフェノールグリシジルエーテル化合物及びその水和物がある。これらの樹脂の混合物も用いうる。
前記した成分の組合せの変更に依存していた従来技術と対比したとき、新規で本発明の基本的な添加剤を構成している反応性ホスフォネート難燃剤は接着性組成物の合計重量の約5〜約60重量%、より好ましくは約10〜約30重量%存在する。この難燃剤は、WO03/029258及びWO/2004/113411に記載されているが、(−OP(O)(R)−O−アリーレン−)(ここでnは約2〜約30の範囲である)の反復単径をもつオリゴマー状ホスフォネートであり、約12重量%以上のリン含有量をもっている。上記式中、RはC〜Cのような低級アルキルが好ましく、特にメチルが好ましい。本発明に有用なこれらのオリゴマー状ホスフォネートは−OH末端基をもっていても、もっていなくともよい。−OH末端基をもつ独立のホスフォネート種はモノヒドロキシ−又はジヒドロキシ−置換体でありうる。これらの末端基はアリーレン部分又はリン部分のいずれかに付着していることができ、この難燃剤が加えられる組成物中のエポキシ官能基と反応性をもつ。リンに付着した−OH末端基の濃度は、存在しうる末端基(鎖末端)の合計数当り約20〜約100%、好ましくは約50〜約100%でありうる。
「アリーレン」は、非隣接位に2個のヒドロキシ基があるべきである2価のフェノールの適宜の芳香族基をいう。これらの2価のフェノールの例としては、レゾルシノール、ヒドロキノン及びビスフェノール、たとえばビスフェノールA、ビスフェノールF及び4,4’−ビスフェノール、フェノールフタレン、4,4’−チオジフェノール又は4,4’−フルフォニルジフェノールがある。3個以上のヒドロキシ基をもつ少量の多価フェノール、たとえばノボラック又はフロログルシノールも組成物の分子量の増大用に含有させうる。「アリーレン」基の例としては、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン又はビスフェノールジラジカル単位があるが、1,3−フェニレンが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物用のこの成分はいくつかのルートで製造できる:(1)式RPOClの化合物とHO−アリール−OH、又はその塩(ここでRは低級アルキル、好ましくはメチル)との反応;(2)ジフェニルアルキルホスフォネート、好ましくはジフェニルメチルホスフォネートとHO−アリーレン−OHとのエステル交換反応;(3)式−OP(OR’)−O−アリーレン−の反復単位をもつオリゴマー状ホスファイトとアルブゾフ転位触媒(ここでR’は低級アルキル、好ましくはメチル)との反応、又は(4)式−OP(OR’)−O−アリーレンの反復単位をもつオリゴマー状ホスファイトと、トリメチルホスファイト及びアルブゾフ触媒又はジメチルメチルホスフォネートと所望によりアルブゾフ触媒との反応。アリーレン基に−OH末端基が付着している場合それは反応媒体中のHO−アリーレン−OHを制限されたモル過剰にすることでつくりうる。−OH末端基が酸基(P−OH)である場合それは加水分解反応でつくりうる。オリゴマーの末端基は主に−アリーレン−OH基であることが好ましい。
ホスフォネートオリゴマーの分子量は、たとえば出発原料、たとえばジフェニルメチルホスフォネートとレゾルシノール(上記(2)の反応)のモル比を調節することで制御しうる。モル比1:1で最大の分子量が得られる。いずれかが過剰だと分子量はそれに応じて小さくなる。分子量は反応時間を調節することでも制御しうる。反応時間が長いほど分子量は大きくなる。
所望により、多官能性フェノール等の硬化(架橋)剤を接着性組成物中に、その合計重量当りたとえば約5〜約10重量%含有させうる。これらの硬化剤の例としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ポリビニルフェノール及びノボラック樹脂(これはフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA及びビスフェノールS等のフェノール基とアルデヒド基の付加縮合が得られる)がある。これらの分子量は特に制限されず、またこれらの混合物も用いうる。
硬化(架橋)触媒は接着性組成物の合計重量の約0.05〜約1.0重量%の量が用いられ、それらはエポキシ基とフェノールハイドレート基の化学反応を促進しうる適宜の化合物である。代表的な硬化触媒の例としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、2級アミン、3級アミン、テトラアンモニウム塩等がある。
本発明が用いうるイミダゾール化合物の例としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等がある。これらの硬化触媒は2種以上を組合せて用いうる。
通常、本発明の実施において接着性組成物は複合材料の合計重量の約20〜約60重量%用いられる。
本発明の実施に有用な強化繊維の例としては、グラファイト繊維、ガラス繊維及び他の鉱物繊維、たとえば珪灰石繊維がある。これらのなかでグラファイト繊維が特に好ましい。グラファイト繊維はメソフェース又は非メソフェース石油ピッチ、又はコールタールピッチもしくは類似の炭素含有物質の処理でつくられうる炭素繊維として記載しうる。またPAN、アクリル又はレーヨン前駆体を用いてつくられる炭素繊維も用いうる。本発明で有用な炭素繊維の形状は紙、フェルト又はマット構造(織布又は不織布)からなる。
通常、本発明の実施では強化繊維は複合材料の合計重量の約50〜約90重量%用いられる。
本発明の好ましい態様において、前記したように、アセトンやメチルエチルケトン等のエポキシ樹脂用溶媒を用いた前記エポキシ樹脂接着性組成物でグラファイト繊維マットを含浸処理することが好ましい。含浸技術の例としては浸漬、ブラッシング、スプレー等がある。このようにして含浸処理したマットを乾燥させてプリプレグ(接着剤約20〜約40%含有)をつくり、次いでオートクレーブ中での真空処理や約150〜約225℃で約1〜約2時間硬化を行う熱プレス処理で硬化させて実用的な航空機内装材として適する積層体をつくる。
次に実施例によって本発明を例証する。
〔実施例1〕
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(Schenectady International製のHRJ2210ブランド)11gを30mlの2−ブタノン溶媒に60℃で溶解させ、次いでエポキシノボラック樹脂(Bakelite AG製のRUETAPOX300ブランド)63.5gと反応性ポリ(m−フェニレンメチルホスフォネート)(nは約14、後記方法で製造)25gを加え60℃で上記溶媒に溶解させた。次いで2−メチルイミダゾール(Air Products製のAMI−2ブランド)0.5wt%を加えた。得られた温ワニスを平織りグラファイト布帛(Fibre Glast製のNo.530)に塗布した。得られたプリプレグを室温で1夜乾燥し、次いで90℃で30分乾燥した。このプリプレグ(4×4インチ)を16パイル積層し、130℃圧力8MPaで30分間予備硬化させ、次いで171℃圧力30MPaで70分間硬化させた。
ポリ(m−フェニレンメチルホスフォネート)の製造:
ジフェニルメチルホスホネート124g(0.5モル)とレゾルシノール113g(1.03モル)とナトリウムメチレート0.54gを反応フラスコ中で230℃に加熱撹拌した。反応フラスコには、電熱テープ及び絶線体をまいてカラム中でフェノールや揮発したレゾルシノールが固化しないようにした高さ40cmのビグレックス(Vigreux)カラムを取りつけた。真空圧を625mmから5mmHgに徐々に下げた。4時間後に反応を止めた。フェノールを反応中蒸発除去し、冷トラップに留出分93g(フェノールとして計算して約1モル)を集め、反応フラスコには(ポリ)m−フェニレンメチルホスフォネート)生成物241gが残った。留出分はほとんどがフェノールであった。
〔比較〕実施例2
この例では、フェノールホルムアルデヒド樹脂(Schenectady International製のHRJ2210ブランド)15gを30mlの2−ブタノン溶媒に60℃で溶解させ、次いでエポキシノボラック樹脂(Bakelite AG製のRUETAPOX300ブランド)84.5gを加え上記溶媒に60℃で溶解させた。次いで2−メチルイミダゾール(Air Product製のAMI−2ブランド)0.5wt%を加えた。次いで実施例1に記載したと同様にしてプリプレグと複合体を製造した。
〔比較〕実施例3
この例では、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(Schenectady International製のHRJ2210ブランド)15gを、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(Dow Chemical製のD.E.R.530−A80ブランド)84.5gを含有するアセトン溶液100gに60℃で溶解させた。次いで、2−メチルイミダゾール(Air Products製のAMI−2ブランド)0.5wt%を加えた。次いで実施例1に記載法を同様にしてプリプレグと複合体を製造した。
〔実施例4〕
実施例1及び(比較)実施例2及び3の各々でつくった複合体の燃焼性ISO/DP5660標準に従い、75KW/mの熱フラックスにてコーン熱量計を用いて評価した。テスト結果次表に示す。
上記例は本発明の1態様の例証にすぎず、本発明を制限するものではない。求める保持範囲は特許請求の範囲に記載したとおりである。

Claims (15)

  1. 強化繊維及びエポキシ樹脂と所望により含まれる樹脂硬化剤と硬化触媒と反応性ホスフォネート難燃剤とからなる接着性組成物からなることを特徴とする複合材料。
  2. 強化繊維の量が複合材料の合計重量の約50〜約90重量%である請求項1の複合材料。
  3. 接着性組成物の量が複合材料の合計重量の約20〜約60重量%である請求項1の複合材料。
  4. エポキシ樹脂の量が接着性組成物の合計重量の約40〜約80重量%である請求項1の複合材料。
  5. 反応性ホスフォネート難燃剤の量が接着性組成物の合計重量の約5〜約60重量%である請求項1の複合材料。
  6. 硬化触媒の量が接着性組成物の合計重量の約0.05〜1.0重量%である請求項1の複合材料。
  7. 任意成分である樹脂硬化剤の量が接着性組成物の合計重量の約5〜約10重量%である請求項1の複合材料。
  8. 強化繊維がグラファイト繊維、ガラス繊維及び珪灰石繊維からなる群から選ばれる請求項1の複合材料。
  9. 反応性ホスフォネート難燃剤が(−OP(O)(R)−O−アリーレン−)で示される反復単位(但しnは約2〜約30を示す)をもつ請求項1の複合材料。
  10. 強化繊維がグラファイト繊維である請求項8の複合材料。
  11. 反応性ホスフォネート難燃剤がポリ(m−フェニレンメチルホスフォネート)である請求項9の複合材料。
  12. 強化繊維にエポキシ樹脂と所望により含まれる樹脂硬化剤と硬化触媒と反応性ホスフォネート難燃剤とからなる接着性組成物を含浸させることを特徴とする複合材料の製造方法。
  13. 強化繊維がグラファイト繊維、ガラス繊維及び珪灰石繊維からなる群から選ばれる請求項12の方法。
  14. 反応性ホスフォネート難燃剤が(−OP(O)(R)−O−アリーレン−)で示される反復単位(但しnは約2〜約30を示す)をもつ請求項12の方法。
  15. 反応性ホスフォネート難燃剤がポリ(m−フェニレンメチルホスフォネート)である請求項14の方法。
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