JP2007529520A - 特定のトリフルオロメチル置換アルコールの立体選択的合成 - Google Patents
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Abstract
【化1】
Description
本発明は、特定のトリフルオロメチル置換アルコールの立体選択的合成に関する。
(発明の背景技術)
式(I)で表されるトリフルオロメチル置換アルコールは、グルココルチコイド受容体に結合する配位子として説明されてきた。この化合物は、炎症性の自己免疫疾患及びアレルギー性疾患をはじめとする、グルココルチコイド受容体の機能により変化する数多くの疾患を治療する際の療法として効果的である。これらの化合物は、米国特許出願公報第2003/0232823号、第2004/0029932号及び第2004/0023999号に例示されているが、これらの公報はそれぞれ引用によりそのすべてが本願明細書の記載に含まれるものであり、今後、「トリフルオロメチル置換アルコール特許出願」と称する。
前記引用の特許出願に開示されている合成方法では、ラセミ体生成物の合成が説明されている。鏡像異性体の分離はキラルHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で行っているが、従来からの他の鏡像異性体分離方法によって分離することもできる。しかしながら、キラルHPLC及び他の鏡像異性体分離方法は、1種の鏡像異性体を大規模に調製するのには通常は不適である。そのため、これらの化合物の調製には立体選択的合成が非常に望ましいとされていた。
本発明は、式(I)で表される特定の化合物の立体選択的合成を開示する。主要工程では、新規なエステル−アザインドール反応を伴う。化学文献中、エステル基から直接アザインドールを形成する例は存在しない。
(発明の概要)
本発明は、式(I)の化合物:
R1は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、それぞれ1〜3個の置換基で置換されていてもよく、
R1の置換基はそれぞれ独立して、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-C5アルコキシ、C2-C5アルケニルオキシ、C2-C5アルキニルオキシ、アリールオキシ、C1-C5アルカノイルオキシ、C1-C5アルカノイル、アロイル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はC1-C5アルキルチオを表し、
R1の置換基はそれぞれ独立して、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はアルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、
R2及びR3はそれぞれ独立して水素又はC1-C5アルキルを表すか、あるいは、R2及びR3が共通して結合する炭素原子と一緒になってC3-C8スピロシクロアルキル環を形成し、
R4は、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル又はC2-C5アルキニルを表し、それぞれ1〜3個の置換基で置換されていてもよく、
R4の置換基はそれぞれ独立して、C1-C3アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ又はオキソを表し、
R5は、
AはR4との結合点であり、
W、X、Y又はZはN又はCHであり、W、X、Y又はZの少なくとも1つはNであり、
R6は、水素、アルキル又はアリールを表し、R5は1〜3個の置換基で置換されていてもよく、
R5の置換基はそれぞれ独立して、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-C5アルコキシ、C2-C5アルケニルオキシ、C2-C5アルキニルオキシ、アリールオキシ、アシル、C1-C5アルコキシカルボニル、C1-C5アルカノイルオキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルオキシ、C1-C5アルキルアミノカルボニルオキシ、C1-C5ジアルキルアミノカルボニルオキシ、C1-C5アルカノイルアミノ、C1-C5アルコキシカルボニルアミノ、C1-C5アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1-C5アルキルアミノスルホニル、C1-C5ジアルキルアミノスルホニル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ニトロ、窒素原子が独立してC1-C5アルキルでモノ置換もしくはジ置換されていてもよいアミノ、どちらかの窒素原子が独立してC1-C5アルキルで置換されていてもよいウレイド、又は、イオウ原子が酸化されスルホキシド又はスルホンになっていてもよいC1-C5アルキルチオを表し、
R5の置換基はそれぞれ独立して、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、アミノ又はトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい。)の立体選択的合成方法に関するもので、
該方法は、
(a)式Aの出発物質を第1保護基剤PG−Y(Yは脱離基を表す)と好適な溶媒中で反応させ、アセチル化試薬及び好適な塩基を加えて、式Bの保護基を施した中間生成物を調製し、
本発明のさらに別の態様において、工程(b)の好適な溶媒は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、t−ブチルメチルエーテル(MTBE)、トルエン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの混合物であり、テトラヒドロフランが好ましい。本発明の別の態様において、工程(b)用の好適な塩基は、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、LDA、LiH、NaH、KH、トリアルキルアミン/R2BOTf(ジアルキルボリルトリフルオロメタンスルホネート)、トリアルキルアミン/TiCl4又はトリアルキルアミン/TiCl2(OiPr)2であり、スパルテイン、MgBr2、TiCl4又はZnCl2等の添加剤を含んでもよいが、好ましくはLiHMDSである。
本発明の別の態様によると、工程(c’)の加水分解は、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、水、DME、MTBE、IPA、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はこれらの混合物から選択される好適な溶媒中、好ましくはMeOH中、アルカリ金属水酸化物、相間移動加水分解又は酸加水分解で行う。本発明の別の態様においては、工程(c’)のエステル化は、酸触媒の存在下で遊離酸をメタノールで処理する。他の態様では、工程(c)又は(c’)の第2保護基剤PG’−Y’における第2の保護基PG’は、トリアルキルシリル基、低級アルキルエーテル(例えば、メトキシメチルエーテル(MOMエーテル))、低級アルキル基、またはβ−ラクトンとして末端カルボキシル基で内部を保護したもので、第2の脱離基Y’は、Cl、Br、I、MsO、TsO及びTfOであるが、Clが好ましい。
本発明の別の態様では、式Fで表される化合物として、3-アミノ-4-ピコリン、4-アミノ-3-ピコリン、2-アミノ-3-ピコリン又は3-アミノ-2-ピコリンが挙げられ、それぞれ環又はメチル基においてアルキルリチウムに相応する置換基で置換されていてもよいが、3-アミノ-4-ピコリンが好ましい。
特定の反応条件、溶媒、保護基及び他の試薬や反応物をはじめとする本発明の特定の具体的実施形態については、本発明の様々な態様を詳細に示すなかで前記記載したが、これらの特定の実施形態又は態様に対する個々の限定により、本発明がその最も広い概念において限定されることはないと解釈すべきではある。したがって、本発明は、様々な組合せとしてこれらの様々な態様をいずれも含まないこともあり、あるいは、そのうちのいくつか又はすべてを含むことがあると理解すべきである。
(用語の定義と使用規定)
本願明細書中に具体的に定義していない用語については、開示及び内容を鑑みて当該分野の当業者が考えうる定義とする。一方、明細書及び添付のクレームで使用されているように、特に逆の指示がないかぎり、以下の用語については表示されている意味を有し、以下の規定に準拠する。
A.化学命名法、用語及び規定
下記に定義する基、ラジカル又は部位においては、基の前に炭素原子の数を規定する場合が多いが、例えばC1-C10アルキルとは炭素原子を1〜10個有するアルキル基又はラジカルを意味する。炭素含有基に付される「低級」という用語は、当該基に応じて炭素原子を1〜8個有する基を意味する(例えば、環状基は環を形成するのに少なくとも3個の原子が必要である)。一般に、2つ以上のサブグループを有する基の場合、最後につけられた基がラジカル結合位置であり、例えば、「アルキルアリール」は式Alk-Ar-で表される一価のラジカルを意味し、「アリールアルキル」は式Ar-Alk-の一価のラジカルを意味する(式中、Alkはアルキル基、Arはアリール基を表す)。さらに、2価のラジカルが適切であるところに1価のラジカルを指定する用語が使用されている場合は、2価のラジカルを指定するものであり、逆の場合も同様であると解釈すべきである。特に記載のないかぎりは、従来からの用語の定義と従来から考えられている安定した原子価が想定され、すべての式および基において成り立つ。
「アルケニル」又は「アルケニル基」という用語は、分岐又は直鎖の1価の脂肪族炭化水素ラジカルで、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するものを意味する。この例としては、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、3-メチルブタ-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等の基が挙げられる。
「アルキニル」又は「アルキニル基」という用語は、分岐又は直鎖の1価の脂肪族炭化水素ラジカルで、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有するものを意味する。この例としては、エチニル、プロピニル、n-ブチニル、2-ブチニル、3-メチルブチニル、n-ペンチニル、ヘプチニル、オクチニル、デシニル等の基が挙げられる。
「アルキレン」又は「アルキレン基」という用語は、分岐又は直鎖の2価の飽和脂肪族炭化水素ラジカルで、特定の炭素数を有するものを意味する。この例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン等の基が挙げられ、本願明細書では上記用語の代わりに-(アルキル)-と同等に表すこともある。
「アルキニレン」又は「アルキニレン基」という用語は、分岐又は直鎖の2価の脂肪族炭化水素ラジカルで、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有するものを意味する。この例としては、エチニレン、プロピニレン、n-ブチニレン、2-ブチニレン、3-メチルブチニレン、n-ペンチニレン、ヘプチニレン、オクチニレン、デシニレン等の基が挙げられ、本願明細書では上記用語の代わりに-(アルキニル)-と同等に表すこともある。
「アルコキシ」又は「アルコキシ基」という用語は、式AlkO-(式中、Alkはアルキル基を示す)で表される1価のラジカルを意味する。この例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、ペントキシ等の基が挙げられる。
「アリールオキシ」又は「アリールオキシ基」という用語は、式ArO-(式中、Arはアリール基を示す)で表される1価のラジカルを意味する。この例としては、フェノキシ、ナフトキ等の基が挙げられる。
「アルキルカルボニル」、「アルキルカルボニル基」、「アルカノイル」又は「アルカノイル基」という用語は、式AlkC(O)-(式中、Alkはアルキル基又は水素を示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「アシル」又は「アシル基」という用語は、式RC(O)-(式中、Rは水素又は有機の置換基から選択される置換基を示す)で表される1価のラジカルを意味する。置換基の例としては、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル等が挙げられる。このようにこの用語にはアルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基が含まれる。
「アシルアミノ」又は「アシルアミノ基」という用語は、式RC(O)N(R)-(式中、Rは、それぞれ水素又は置換基から選択される置換基を示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「アルコキシカルボニル」又は「アルコキシカルボニル基」という用語は、式AlkO-C(O)-(式中、Alkはアルキル基を示す)で表される1価のラジカルを意味する。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル等が挙げられる。
「アルキルアミノカルボニルオキシ」又は「アルキルアミノカルボニルオキシ基」という用語は、式R2NC(O)O-(式中、Rはそれぞれ独立して水素又は低級アルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「アルキルカルボニルアミノ」もしくは「アルキルカルボニルアミノ基」又は「アルカノイルアミノ」もしくは「アルカノイルアミノ基」という用語は、式AlkC(O)NH-(式中、Alkはアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。アルキルカルボニルアミノ基の例としては、アセトアミド(CH3C(O)NH-)が挙げられる。
「アルキルアミノカルボニルオキシ」又は「アルキルアミノカルボニルオキシ基」という用語は、式AlkNHC(O)O-(式中、Alkはアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「アミノ」又は「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。
「アルキルアミノ」又は「アルキルアミノ基」という用語は、式(Alk)NH-(式中、Alkはアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、t-ブチルアミノ等が挙げられる。
「ジアルキルアミノ」又は「ジアルキルアミノ基」という用語は、式(Alk)(Alk)N-(式中、Alkはそれぞれ独立してアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。ジアルキルアミノ基の例としては、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、エチルプロピルアミノ等が挙げられる。
「アルコキシカルボニルアミノ」又は「アルコキシカルボニルアミノ基」という用語は、式AlkOC(O)NH-(式中、Alkはアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「ウレイド」又は「ウレイド基」という用語は、式R2NC(O)NH-(式中、Rはそれぞれ独立して水素又はアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。
「ハロゲン」又は「ハロゲン基」という用語は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基を意味する。
「ハロ」という用語は、基の中の1個以上の水素原子がハロゲン基に置換されていることを意味する。
「アルキルチオ」又は「アルキルチオ基」という用語は、式AlkS-(式中、Alkはアルキルを示す)で表される1価のラジカルを意味する。例としては、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ等の基が挙げられる。
「スルホニル」又は「スルホニル基」という用語は、式-SO2-で表される2価のラジカルを意味する。
「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」という用語は、炭素原子及び水素原子のみからなる安定した1価の3〜15員環の単環式又は多環式飽和脂肪族ラジカルで、縮合環又は架橋環を1個以上含んでいてもよく、5〜7員環の単環式基又は7〜10員環の二環式基が好ましい。特に記載のないかぎり、シクロアルキル環は、結果的に安定した構造となるいずれかの炭素原子に結合していればよく、また、置換基を有する場合は、結果的に安定した構造となるいずれかの好適な炭素原子の位置で置換されているとよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルナニル、アダマンチル、テトラヒドロナフチル(テトラリン)、1-デカリニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、1-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロペンチル、2-メチルシクロオクチル等が挙げられる。
「アリール」又は「アリール基」という用語は、炭素原子数6〜14個の1価又は2価の芳香族炭素環式ラジカルで、単環(例えばフェニル又はフェニレン)又は縮合多環(例えばナフチル又はアントラニル)を有する。特に記載のないかぎり、アリール環は、結果的に安定した構造となるいずれかの好適な炭素原子に結合していればよく、また、置換基を有する場合は、結果的に安定した構造となるいずれかの好適な炭素原子の位置で置換されているとよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナンスリル、インダニル、インデニル、ビフェニル等が挙げられる。「Ar」と略記することもできる。
「本発明の化合物」という用語及びこれと同等の表記については、本願明細書記載の式(I)で表される化合物を包含すると解釈され、内容が許す限り、この化合物の互変異性体、プロドラッグ、塩、とりわけ医薬的に許容される塩、ならびに、溶媒和物及び水和物が含まれる。本発明の化合物及び本発明の化合物を指定する化学式は、安定した化合物のみを含み、不安定な化合物は化合物の化学式によって文言上包含されると考えられる場合であっても取り除くと解釈するのが一般的であり好ましい。同様に、中間生成物については、それ自体をクレームするか否かにかかわらず、内容が許す限り、該中間生成物の塩及び溶媒和物を包含することを意味する。明確にさせるために、許されるかぎり特定の例を本明細書中に示しているが、これらの例は単に例示にすぎず、内容が許すかぎり他の例の排除を意図するものではない。
「溶媒」又は「好適な溶媒」という用語は、反応とともに記載されている反応条件下で実質的に不活性である溶媒又は溶媒の混合物を意味する。例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イロプロパノール、t-ブタノール、ジオキサン、ピリジン等、又はこれらの混合物が挙げられる。特に逆の指定がないかぎり、本発明の反応で使用する溶媒は実質的に不活性な溶媒である。
「任意の」又は「任意で」という用語は、その後に記載されている事象又は状況が起こっても、起こらなくてもよいことを意味し、その記載に、該事象又は状況が起こっている例、及び、起こっていない例の両方が含まれることを意味する。例えば、「任意で置換されていてもよいアリール」とは、アリールラジカルが置換されていても、されていなくてもよいことを意味し、その記載には、置換アリールラジカルと置換基を有していないアリールラジカルの両方を含むことを意味する。
「安定した化合物」又は「安定した構造」という用語は、反応混合物から有用な純度で分離され、効能のある治療薬又は診断薬に処方するのに十分に耐えられる頑強さを有する化合物を意味する。例えば、「ダングリング原子価(dangling valency)」を有するであろう化合物又はカルボアニオンである化合物は、本発明の対象となる化合物ではない。
「置換した」という用語は、ある基又は部位の原子上にある1個以上のいずれかの水素原子を、具体的な指定があろうとなかろうと、指示された置換基の群から選択されたものに置き換えられることを意味し、この場合、原子がもつ通常の原子価を超えないこと、また、置換によって安定した化合物になることが前提である。置換基の結合が、環の連結する2つの原子の結合と交差するように示されている場合は、その置換基は該環のいずれの原子に結合してもよい。置換基が記載されているが、その置換基のどの原子を介して化合物の残りの部分に結合されるかが示されていない場合は、該置換基のいずれの原子を介して結合されていてもよい。例えば、置換基がピペラジニル、ピペリジニル又はテトラゾリルである場合、特に指定のないかぎり、このピペラジニル、ピペリジニル又はテトラゾリル基は、これらの基の中のいずれの原子を介して本発明の化合物の残りの部分に結合していてもよい。一般に、いずれかの構成要素又は化合物中でいずれかの置換基又は基が2度以上登場する場合、その都度ごとの定義は、それ以外に登場する際の定義とはいずれも無関係である。そのため、例えば、ある基が0〜2個のR5で置換されていることが示されている場合、この基は最大2個のR5基で置換されていてもよく、それぞれのR5は、可能なR5基として定義されたリストから独立して選択される。しかしながら、置換基及び/又は変数のこうした組合せは、その組合せによって化合物が結果的に安定する場合のみ許容される。
本願明細書記載の反応におけるそれぞれの収量は、理論収量に対するパーセンテージで示す。
実験例
本発明は、式(I)で表される化合物の製造方法を提供する。すべての反応式において、特に指定のない限り、下記式中のR1〜R5は、本願明細書とさらにはトリフルオロメチル−置換アルコール特許出願に記載のR1〜R5の定義を有する。本発明の化合物の製造において使用する中間体は、市販品として入手することも、あるいはこの分野の当業者には公知の方法で容易に製造することもできる。
最適な反応条件及び反応時間は、使用する個々の反応物によって異なることもある。特に指定のないかぎり、溶媒、温度、圧力及び他の反応条件については当該分野の当業者であれば容易に選択することができる。具体的な手順を実験的実施例のセクションに記載する。通常、反応の進行は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は薄層クロマトグラフィー(TLC)により所望であれば監視することができ、中間生成物及び生成物はシリカゲルクロマトグラフィー及び/又は再結晶化により精製することができる。
以下は、本発明の製造方法を示す代表例である。生成物及び中間体の特徴を調べるために用いるHPLCは、C18Super-ODSカラム(スペルコ社、部品No.818197、4.6mm x 10cm)で行い、5%アセトニトリル/95%水/0.05%TFAから95%アセトニトリル/5%水/0.05%TFAへの勾配溶出により15分かけて行い、さらに95%アセトニトリル/5%水/0.05%TFAで5分間保持する。溶液の濃縮又は蒸発はロータリーエバポレータでの濃縮を意味する。
(R)-1,1,1-トリフルオロ-4-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-4-メチル-2-(1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イルメチル)ペンタン-2-オールの合成
500mLのフラスコ内に、(1S,2R)-1-アミノ-2-インダノール(22.3g、150mmol)を室温で投入し、続いて100mLの無水THFとトリエチルアミン(62.7mL、450mmol)を加えた。この漏斗を10mLのTHFで洗い流した。塩化トシル(28.6g、150mmol)を含むTHF(80mL)溶液を、温度が27℃を超えないようにしてゆっくりと添加した。漏斗をTHF(35mL)で洗い流した。反応物を15℃で1時間攪拌したところ、所望のトシレートに完全に変換されていることがHPLCによりわかった。
100mLの5%重炭酸ナトリウム溶液を加えて反応を終了させ(温度は30℃まで上昇)、混合物を40分間攪拌した。有機層を250mLのt-ブチルメチルエーテル(MTBE)で希釈し、250mLの2N塩酸溶液で2回、125mLの水で1回、125mLの5%重炭酸ナトリウム溶液で1回、125mLの塩水で1回洗浄した。有機層を分取し、濃縮して約100gの粘度のある油状物とした。200mLのヘキサンから再結晶させ、所望の酢酸(1S,2R)-1-(トルエン-4-スルホニルアミノ)インダン-2-イルエステル(49g、収率95%)を白色固体として得た。
前記キラルエステル(103.6g、0.3mol)を含む乾燥THF200mL溶液を攪拌したところに、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(750mL、0.75mol)を含む1Mテトラヒドロフラン溶液を、窒素雰囲気下-30℃でカニューレを使って添加した。得られた茶色の溶液を-30℃で30分間攪拌した。反応温度を-30℃に保ちながら、1,1,1-トリフルオロ-4-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-4-メチル-ペンタン-2-オン(83.47g、0.3mol)の200mLテトラヒドロフラン溶液を前記溶液にゆっくり加えた。こうして得られた反応混合物を-30℃で30分間攪拌した後、約700mLの2M塩酸水溶液を加えて反応を終わらせ、pH7にした。有機層を減圧下で濃縮し、残留している水をEtOAcの共沸蒸留により取り除き、所望のアルドール粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサン)にかけ、2種のジアステレオ異性体の混合物を得た。再結晶(10%EtOAcアセテート/ヘキサン)により、主要な異性体(R)-5-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-5-メチル-3-トリフルオロメチルヘキサン酸(1S,2R)-1-(トルエン-4-スルホニルアミノ)インダン-2-イルエステル(48g、収率25%、98.5%e.e.)を白色固体で得た。
前記メチルエステル(22.6g、64.1mmol)と10.9g(160mmol)のイミダゾールとを、100mLの無水DMFに溶解させ、-10℃に冷却した。塩化トリメチルシリル(TMSiCl、10.5g)を、内部温度を-10℃未満に保ちながら10分間かけて添加した。溶液を周囲温度になるまで放置し、60時間攪拌した。出発物質はまったく残っていないことがHPLC分析によりわかった。200mLのヘキサンと100mLの飽和重炭酸ナトリウムとをさらに加えて、混合物を10分間攪拌した。層を分離させ、有機層を100mLの水で2回、100mLの塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を真空下で取り除き、26.6gの所望のトリメチルシリルエーテル(収率98%)を無色油状物として得た。
Claims (19)
- 式(I)の化合物:
R1は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、それぞれ1〜3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
R1の置換基はそれぞれ独立して、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-C5アルコキシ、C2-C5アルケニルオキシ、C2-C5アルキニルオキシ、アリールオキシ、C1-C5アルカノイルオキシ、C1-C5アルカノイル、アロイル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はC1-C5アルキルチオを表し、
R1の置換基はそれぞれ独立して、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はアルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、
R2及びR3はそれぞれ独立して水素又はC1-C5アルキルを表すか、あるいは、R2及びR3が共通して結合する炭素原子と一緒になってC3-C8スピロシクロアルキル環を形成し、
R4は、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル又はC2-C5アルキニルを表し、それぞれ1〜3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
R4の置換基はそれぞれ独立して、C1-C3アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ又はオキソを表し、
R5はヘテロアリール基であり、1〜3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
R5の置換基はそれぞれ独立して、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、C1-C5アルコキシ、C2-C5アルケニルオキシ、C2-C5アルキニルオキシ、アリールオキシ、アシル、C1-C5アルコキシカルボニル、C1-C5アルカノイルオキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルオキシ、C1-C5アルキルアミノカルボニルオキシ、C1-C5ジアルキルアミノカルボニルオキシ、C1-C5アルカノイルアミノ、C1-C5アルコキシカルボニルアミノ、C1-C5アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1-C5アルキルアミノスルホニル、C1-C5ジアルキルアミノスルホニル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ニトロ、窒素原子が独立してC1-C5アルキルでモノ置換もしくはジ置換されていてもよいアミノ、どちらかの窒素原子が独立してC1-C5アルキルで置換されていてもよいウレイド、又は、イオウ原子が酸化されスルホキシド又はスルホンになっていてもよいC1-C5アルキルチオを表し、
R5の置換基はそれぞれ独立して、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、アミノ又はトリフルオロメチルから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい。)の立体選択的合成方法であって、
前記方法が、
(a)式Aの出発物質を第1保護基剤PG−Y(Yは脱離基を表す)と好適な溶媒中で反応させ、アセチル化試薬及び好適な塩基を加えて、式Bの保護基を施した中間生成物を調製し、
- 前記工程(a)の好適な溶媒が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、t−ブチルメチルエーテル(MTBE)又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(a)の好適な塩基が、トリアルキルアミン類、ピリジン塩基類又は無機塩基類である、請求項1又は2記載の方法。
- 前記工程(a)の好適な塩基が、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、Na2CO3又はNaOHである、請求項3記載の方法。
- 前記第1の保護基PGがアリールスルホニル基又はアルキルスルホニル基であり、前記第1の脱離基YがCl、Br、I、MsO、TsO又はTfOである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(a)の好適なアセチル化試薬が、無水酢酸又は塩化アセチルである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(b)の好適な溶媒が、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、t−ブチルメチルエーテル(MTBE)、トルエン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの混合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(b)の好適な塩基が、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、LDA、LiH、NaH、KH、トリアルキルアミン/R2BOTf(ジアルキルボリルトリフルオロメタンスルホネート)、トリアルキルアミン/TiCl4又はトリアルキルアミン/TiCl2(OiPr)2であり、スパルテイン、MgBr2、TiCl4及びZnCl2から選択される添加剤を含んでもよい、請求項7記載の方法。
- 前記工程(c)の好適な金属アルコキシドのMが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムであり、μが1である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c)の好適な金属アルコキシドのMが、マグネシウム、カルシウム又はバリウムであり、μが2である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c)の好適な金属アルコキシドのRAが、アルキル基又はアリール基である、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c)の好適な金属アルコキシドが、アルカリ金属アルコキシドである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c)の好適な溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、水、DME、MTBE、イソプロピルアルコール(IPA)、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はこれらの混合物である、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c’)の加水分解が、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、水、DME、MTBE、IPA、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はこれらの混合物から選択される好適な溶媒中、アルカリ金属水酸化物、相間移動加水分解又は酸加水分解で行われる、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(c’)のエステル化が、酸触媒の存在下で遊離酸をメタノール処理することによって行われる、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
- 前記第2の保護基PG’が、トリアルキルシリル基、低級アルキルエーテル、低級アルキル基、またはβ−ラクトンとして末端カルボキシル基で内部を保護したものであり、前記第2の脱離基Y’が、Cl、Br、I、MsO、TsO及びTfOである、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(d)の好適な溶媒が、THF、DME、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、MTBE、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、塩化メチレン又はこれらの混合物である、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
- 前記工程(d)の好適な塩基が、n-BuLi、sec-BuLi又はt-BuLiであり、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、β-ジアルキルアミノアルコール類、スパルテイン又はポリエーテル類から選択される添加剤を含んでいてもよい、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
- 前記式Fの化合物が、3-アミノ-4-ピコリン、4-アミノ-3-ピコリン、2-アミノ-3-ピコリン又は3-アミノ-2-ピコリンであり、それぞれ環又はメチル基においてアルキルリチウムに相応する置換基で置換されていてもよい、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
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