JP2007517086A - シラン架橋したポリエチレンの改良した製造方法 - Google Patents
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Abstract
a)硬化工程の前に、試料をシラン架橋可能なポリエチレンから取り、
b)該試料をフィルムに加工処理し、
c)該フィルムを赤外分光法により分析し、
d)IRスペクトルのあらかじめ定めた領域を決定し、次いで
e)工程d)において決定した領域を、あらかじめ決定した回帰曲線を用いて、硬化処理後のシラン架橋したポリエチレンにおけるゲル含量と相関させる。
【選択図】図1
Description
ポリエチレンの架橋は周知であり、及び本ポリマーの応用可能な範囲を広げるために使用される。架橋により、熱可塑性ポリエチレンの機械特性が向上し、特に架橋されたポリエチレンは、架橋されていないポリエチレンよりも優れた、高温に対する抵抗性、ゆっくりとしたクラックの成長に対する抵抗性及び化学的な抵抗性を有する。過酸化物による、及び照射による架橋に加えて、シラン架橋が重要性を増している。シラン架橋したポリエチレンは広く使用されており、特にケーブル工業において及び絶縁目的で、おそらくよりいっそう重要には、冷水、熱水、石油製品及び天然ガスの搬送用のパイプ工業において使用されている。
第二の反応工程において、シラン架橋可能なポリエチレンから成形され、かつ適切な触媒を通常含む物品が、水性媒体、好ましくは熱水又は蒸気中において加熱され、それによりSi−O−Si結合が形成されかつ硬化(又は架橋)がおこる。
該二段階の方法において、グラフト重合反応及び半仕上げの製品の製造は、別々に行われる。最初の混合工程において、ポリエチレンは、過酸化物及び該鎖ラジカルにグラフトされるビニルシランと反応し、シラン架橋可能なポリエチレンが通常は粒子の形態で得られ、該粒子はさらなる加工処理がされる前に、水の排除の下に貯蔵され得る。該粒子は、その後触媒(必要であれば)と混合され、最終的な形状、例えばパイプに押し出し成形され、熱と水を加えることにより硬化する。
シラン架橋したポリエチレンの成形物品の調製に関する良好な概要を、例えば、“Plastics and Rubber Processing and Applications,13(1990)81−91”に見出すことができる。
シラン架橋したポリエチレンの成形物品を調製する方法の品質制御は非常に困難であり、なぜならば、最終製品の品質は、該物品が高い温度及び湿度の下で硬化する時である、成形物品の製造の最終段階において生じる架橋(すなわち、ゲルの形成)の量に顕著に依存するためである。通常は、成形物品の品質は、架橋された物品から薄片を取得し、続いて該薄片をポリエチレンに対する溶媒、通常はキシレンで処理することにより測定される。キシレンに溶解しない試料の量が測定され、該量が、硬化した成形物品の量に対応する(なぜならば硬化したポリエチレンもはやキシレンに溶解しないためである)。この方法は、いくつかの規格、例えばDIN16892において記載されている。
この方法は長時間かかり、なぜならば、成形物品の硬化は数時間又は数日すらかかることがあるからであり、また、炎症性かつ毒性の溶媒、例えばキシレンを要する。さらに、硬化した成形物品の品質の情報が、この方法により入手できる前に、通常はいくつかのさらなる物品が、同様の不満足な硬化を既にしている。一般的に、硬化した物品の再利用は不可能である。
成形物品が硬化するときに生じる架橋の量は、ポリエチレン鎖に化学的に結合した架橋可能なシランの量に強く依存する。この量は、多くのパラメーター、例えば、ポリエチレンと混合されるビニルシラン及び過酸化物の量だけでなく、反応条件、例えばポリエチレン上へのビニルシランのグラフトが通常行われる押し出し成型器における温度、圧力及び混合時間により影響を受ける。
硬化した物品の試料の赤外スペクトル測定により、シラン架橋したポリエチレンの成形物品の品質を評価する試みがなされてきた。しかしながら、これは若干の問題を解決したのみであり、なぜならばこの方法は、有害な化学物質の使用を避け、かつ迅速であるが、上述したような不利な点である硬化の後に行われる。さらに、赤外分光法をシラン架橋したポリエチレンの試料の測定に使用した場合、通常はSi−O−Si結合(架橋結合である)に対応するピークの強度が測定される。このピークは、硬化していない製品中に存在するSi−O−C結合に対応するピークと重なり、そのため、図1に明示するように、シラン硬化したポリエチレンのIRスペクトルは、成形物品中のシラン硬化したポリエチレンの量を測定するために十分に信頼できるものではない。
先行技術において開示された方法に関する上記の欠陥、及び特に低い精度かつ高い投資コストは、工業において実際に使用されている赤外分光法によるシラン架橋されたポリエチレンの品質制御を妨げた。実際、現在のところは、最終的に硬化した成形物品を溶解することに基づいた、規格技術のみが使用されている。
さらに、正確でかつ付加的なレオメトリーデータの測定を必要とせず、IR−スペクトルの測定のみを必要とする、シラン架橋したポリエチレンの成形物品の品質を予測する方法を有することは有利であろう。
本発明は、ある種類の分析が行われた場合、硬化前のシラン架橋可能なポリエチレンに関するIR−スペクトルのいくらかの部分の分析が、シラン架橋したポリエチレンの最終的に硬化した成形物品の品質の評価に使用できるという、予想外の発見に基づいている。
a)硬化工程の前に、試料をシラン架橋可能なポリエチレンから取り、
b)該試料をフィルムに加工処理し、
c)該フィルムを赤外スペクトルにより分析し、
d)IRスペクトルのあらかじめ定めた領域を決定し、次いで
e)工程d)で決定した領域を、あらかじめ決定した回帰曲線を用いて、硬化工程後のシラン架橋したポリエチレン中のゲル含量と相関させる。
本明細書に従って、用語“シラン架橋した又は硬化したポリエチレン”は、硬化処理され、これによりSi−O−Si結合の形成の下に架橋が生じたポリエチレンを意味する。これに対して、用語“シラン架橋可能なポリエチレン”は、未だ硬化処理をされていないが、硬化処理することを意図されているポリエチレンを意味する。シラン架橋可能なポリエチレンの製造方法の条件、並びに最終的には、シラン架橋可能なポリエチレンを硬化又は架橋処理する前のシラン架橋可能なポリエチレンの貯蔵条件及び貯蔵時間に依存して、いくらかの架橋がシラン架橋可能なポリエチレンにおいて生じ、従ってシラン架橋可能なポリエチレンは、既にいくらかのSi−O−Si結合を含み得ることが理解される。当業者は、本明細書中で使用するものとして、用語“シラン架橋可能なポリエチレン”及び“シラン架橋した又は硬化したポリエチレン”の意味を認識する:一の用語(“シラン架橋可能なポリエチレン”)は、硬化することが意図されているが、未だ硬化していない製品を意味し、他の用語(“シラン架橋した(硬化した)ポリエチレン”)は既に硬化処理され、かつ最終用途が意図された最終的に硬化した製品を意味する。該硬化工程は通常、シラン架橋可能なポリエチレンを水の存在下で数時間から数日間熱処理することからなり、従って、用語“シラン架橋した(硬化した)ポリエチレン”が、そのような硬化処理された製品を意味する一方で、用語“シラン架橋可能なポリエチレン”は、そのような硬化処理がされていない製品を意味する。
本発明はシラン架橋した(硬化した)ポリエチレンを製造する全ての方法に有用であると同時に、その最も広い適用は、シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンを含む成形物品及び成形物品の一部の製造方法におけるものであり得る。最も好ましいのは、シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンの成形物品の製造方法である。
シラン架橋可能なポリエチレンの成型及びその硬化は、当業者にとって周知である。いくつかの方法が商業上使用され、詳細には、例えば本明細書の導入部分において引用する文献、及び商業方法のため公然と入手可能な文献を参照できる。本発明に従って、シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンの二段階の調製方法が、上述の一段階の方法よりも好ましい。
本発明の方法により好ましく得られる成形された製品は、最も好ましくはパイプである。
フリーラジカル源、特に過酸化物の適切な濃度は、本方法においては、0.001から1、好ましくは0.005から0.5、例えば0.05又は0.25である。
適切な照射は、例えば電子線、ガンマ線又はUV光による照射である。適切な照射の量は、当業者に周知である。
自体公知の方法で該試料がフィルムに加工処理される。好ましくは、該試料は、赤外分光法のための試料を調製する通常の装置中で、フィルムに圧縮加工される。該試料は、例えば、任意に圧力をかけることに加えて、熱をかけることによりフィルムに加工処理され、及び該試料を溶融し、かつ自体公知の方法でフィルムを調製することが可能である。試料がシラン架橋可能なポリエチレンの生産ラインから取られる場合、該試料は、通常は溶融形態(好ましくはない)であり、IR分光法に適したフィルムへ直接加工処理できる。
IR測定は、好ましくは透過技術により行われるものであってよく、又は減衰全反射法(ATR)技術により行われるものであって良い。ATR技術に適した分光計は、例えばパーキンエルマー製のTravelIRである。他のIR技術も使用できる。
一方、好ましくはないが、当然のことながら、シラン架橋可能なポリエチレンの生産ラインと分光計を組み合わせて、シラン架橋可能なポリエチレンの試料をある期間の後に自動的に取り、フィルムに加工処理し、IR分光計、特にFTIR分光計で分析することも可能である。
意外にも、あらかじめ決定した回帰曲線を用いることにより、そのように決定した領域と、シラン架橋した(硬化した)製品のゲル含量とを相関させることが可能であることが見出された。該回帰曲線は、該方法で使用したシランの量及び該方法で使用したフリーラジカル源の量と、硬化方法の間に生じた架橋の量、従って最終製品の品質を相関させる。
まず最初に、ある量のシラン架橋可能なポリエチレン試料、通常は4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上を、基準濃度のフリーラジカル源、例えば0.005、0.1、0.15、0.2、0.25又は0.3%と共に、シランの濃度を変化させて調製する。変化させたシランの濃度は、以下のものでよい:0%、1%、1.3%、1.5%、1.8%、2.2%。当然のことながら、上記特定の濃度は具体例に過ぎず、かつ他のパーセンテージを使用することが可能である。一の測定は、0%のシラン濃度についてでなければならない。上記シラン濃度について、優れた結果が達成された。本方法のより高い精度が要求される場合には、シラン濃度の変化と共に、試料の数を増やすことも可能であり、例えば9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、及び例えば以下のシラン濃度を選択することも可能である:0%、1%、1,2%、1.3%、1,4%、1.5%、1.7%、1.8%、2.0%、2.2%及び2.4%又は同様の濃度。
任意に、さらなる試料、好ましくは4以上、より好ましくは5以上又は6以上が調製され、上記シラン濃度及び過酸化物濃度の無作為な組み合わせが使用される。
上記試料の調製のために使用されるシラン化合物及び過酸化化合物の濃度は、好ましくは、本発明の方法により制御されるべきである、シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンの商業的な製造方法において使用される過酸化物濃度及びシラン濃度と同じ範囲内にある。
本発明は、以下の例に関してより詳細に説明されるが、しかしながら以下の例は本発明を何ら制限することを意図しない。
商業的に、例えばBUSS AG社から入手可能である、シラン架橋可能なポリエチレンを調製するためのシングルスクリュー押し出し成型器中に、商標Eltexのもと、BP−ソルベイポリエチレン社から入手した高密度ポリエチレン(HDPE)を供給する。該HDPEは以下の特性を有していた:密度:0.940−0.945kg/m3;MFI2.16=3−5g/10’。
処理条件は、約50分のシラングラフトに対する反応時間が許容されるように設定された。ニーダー中の温度は160から200℃、かつ処理量は14kg/時間であった。
グラフト反応は、ビニルトリメトキシシラン及びフリーラジカル源としてジ−tert−ブチルペルオキシドを用いて行われた。
1.基準濃度(上述のものとして)
2.濃度増加量:+12%
3.濃度増加量:+38%
4.濃度増加量:+50%。
各試料から、Amut Extruder25L/D中で、6m/分の速度で、通常の架橋促進剤を含んだ高密度ポリエチレンマスターバッチ、例えばパダナプラスト(Padanaplast)により製造された商業上入手可能な触媒マスターバッチPOLIDAN Catalyst PSを5%使用して、パイプが製造された。
粒子がシラン架橋可能なポリエチレンの各試料から取られ、2mm厚のフィルムが通常のIR圧縮により製造された。透過スペクトルが、Perkin Elmer FTIR分光計を用いて各試料から得られた。標準的なFTIRソフトウェアを用いて、各スペクトルから、シラン0%の化合物に関するスペクトルが引かれ、かつ各スペクトルが、基準としてのCH3ピークを用いて標準化された。1200から1000cm-1の範囲における領域が測定された。
上記の4試料の標準化されたFTIRスペクトルが、図2に示されている。
ゲル含量(%)=AxLN(IRスペクトルの領域)+B。
2.濃度増加量:+12%
3.濃度増加量:+38%
4.濃度増加量:+50%
Claims (16)
- ポリエチレンが少なくとも一つのエチレン二重結合を含むシランでグラフトされ、シラン架橋可能なポリエチレンとなり、次いで該シラン架橋可能なポリエチレンが架橋(硬化)処理される、シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンの製造方法であって、以下の処理工程を含むことを特徴とする方法:
a)硬化工程の前に、試料をシラン架橋可能なポリエチレンから取り、
b)該試料をフィルムに加工処理し、
c)該フィルムを赤外分光法により分析し、
d)IRスペクトルのあらかじめ定めた領域を決定し、次いで
e)工程d)で決定した領域を、あらかじめ決定した回帰曲線を用いて、硬化工程後のシラン架橋したポリエチレン中のゲル含量と相関させる。 - 該ポリエチレンがポリエチレンホモポリマー又はエチレンと少なくとも一つの他のオレフィンとのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
- 該他のオレフィンが、プロピレン、ブテン、オクテン、酢酸ビニル、(メタ)アクリレート及びこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の方法。
- 少なくとも一つのエチレン二重結合を含むシランがビニルシランである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 該シランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン及びビニルメチルジエトキシシランから選択される、請求項4に記載の方法。
- 該IRスペクトルのあらかじめ定められた領域が、1150cm-1から1205cm-1の範囲における波数で開始し、かつ1000cm-1から1085cm-1の範囲における波数で終了する領域である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
- ポリエチレンを少なくとも一つのエチレン二重結合を含むシランとグラフトしてシラン架橋可能なポリエチレンとする方法が、フリーラジカル源の存在下で行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
- 該フリーラジカル源が、過酸化物、ジアゾ化合物又はラジカルを生成する照射である、請求項7に記載の方法。
- 該シラン架橋した(硬化した)ポリエチレンが、少なくとも成形された製品の部分である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
- 第一の段階において、ポリエチレンをフリーラジカル源及びシランと反応させ、シラン架橋可能なポリエチレンの粒子を得て、第二の段階において、シラン架橋可能なポリエチレンの粒子を任意に触媒と混合し、成形された製品に形成し、次いで熱と水を適用して硬化させる、請求項9に記載の方法。
- 工程a)における試料が、シラン架橋可能なポリエチレンの粒子から取られる、請求項10に記載の方法。
- 工程e)において使用される回帰曲線が、以下の手順に従って得られる、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法:
A)シラン架橋可能なポリエチレンの試料が、基準となる濃度のフリーラジカル源と変化させた濃度のシランを含むポリエチレンから製造され、
B)シラン架橋可能なポリエチレンの試料が、基準となる濃度のシラン及び変化させた濃度のフリーラジカル源を含むポリエチレンから製造され、
C)任意にシラン架橋可能なポリエチレンの試料が、変化させた濃度のフリーラジカル源及び変化させた濃度のシランを含むポリエチレンから製造され、
D)上記A)、B)及び任意にC)で製造された各試料が硬化され、次いで硬化された製品のゲル含量が測定され、
E)上記A)、B)及び任意にC)で製造された各試料について、制御された膜厚のフィルムが得られ、かつIR分光法が行われ、
F)上記工程E)において得られた各スペクトルから、シランを用いずに製造した試料のスペクトルが引かれ、かつ得られたスペクトルが標準化され、
G)各標準化されたスペクトルのあらかじめ定められた領域が決定され、
H)工程G)の領域が、工程D)で得られた対応する硬化した製品のゲル含量と相関され、かつ回帰曲線がこれらのデータに基づいて計算される。 - 工程A)において、シラン濃度が0%の1つの試料及び変化させたシラン濃度を有する5以上の試料が製造される、請求項12に記載の方法。
- 工程B)において、変化させた濃度のフリーラジカル源を有する5以上の試料が製造される、請求項12又は13に記載の方法。
- 工程C)が行われ、かつ変化させた濃度のシラン及びフリーラジカル源を有する5以上の試料が製造される、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
- ポリエチレンが過酸化物及びビニルシランと高い温度で反応して、シラン架橋可能なポリエチレンとなる方法において、シラン架橋したポリエチレンの成形された製品の品質を制御するための以下の手順の使用:
a)試料をシラン架橋可能なポリエチレンから取り、
b)該試料をフィルムに加工処理し、
c)該フィルムを赤外分光法により分析し、
d)IRスペクトルのあらかじめ定めた領域を決定し、次いで
e)工程d)で決定した領域を、あらかじめ決定した回帰曲線を用いて、シラン架橋したポリエチレンの成形した製品のゲル含量と相関させる。
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