JP2007336770A - スイッチング電源回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイドレンジ対応を実現するにあたり問題となっていた2次側の整流ダイオードの損失と2次側直列共振コンデンサの大型化・高コスト化の問題を解決する。
【解決手段】整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、平滑コンデンサCo、及び巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されたパワーチョークコイルPCCを備えて、各半周期に上記パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流も含めて平滑コンデンサCoに二重に充電を行う倍電流整流動作が得られるように構成する。これによって2次側の整流電流レベルを低減でき、2次側の整流ダイオードの損失も低減できる。また絶縁コンバータトランスPITの結合係数を所定以下に設定することでワイドレンジ対応を実現し、これにより2次側直列共振コンデンサを省略できるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種電子機器の電源として備えられるスイッチング電源回路に関する。
特開2006−054935号公報
先に本出願人は、1次側に共振形コンバータを備えた電源回路を各種提案している。図18は、先に本出願人により出願された発明に基づいて構成される共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一例を示す回路図である。この図18に示される電源回路のスイッチングコンバータとしては、ハーフブリッジ結合方式による他励式の電流共振形コンバータに対して、スイッチング中のターンオフ時にのみ電圧共振動作を行う部分電圧共振回路をくみ合わせた構成を採る。
まず、図18に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACに対して2組のフィルタコンデンサCLおよび1組のコモンモードチョークコイルCMCから成るコモンモードノイズフィルタが接続されている。そして、商用交流電源ACから直流入力電圧を生成する整流平滑回路としては、このコモンモードノイズフィルタの後段に対して、ブリッジ整流回路Diおよび平滑コンデンサCiとから成る全波整流回路が備えられる。ブリッジ整流回路Diの整流出力は、平滑コンデンサCiに対して充電され、これによって平滑コンデンサCiの両端には、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiがえられることになる。
整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiを入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2をハーフブリッヂ結合により接続したスイッチング回路系を備える。スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2の各ドレインとソース間に対しては、図示する方向により、それぞれボディダイオードによるダンパーダイオードDD1、ダンパーダイオードDD2が並列に接続される。
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、1次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続される。この1次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと1次巻線N1に生じるリーケージインダクタンスL1によって、並列共振回路(部分電圧共振回路)が形成される。この部分電圧共振回路によりスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。リーケージインダクタンスL1は1次巻線N1によって発生し、2次巻線N2と鎖交しない磁束(漏れ磁束)によって生じるインダクタンスである。そして2次巻線N2についても同様に、2次巻線N2によって発生し、1次巻線N1と鎖交しない磁束(漏れ磁束)によって生じるインダクタンスであるリーケージインダクタンスL2が発生する。
この電源回路においては、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ回路2が設けられる。この発振・ドライブ回路2は、発振回路、駆動回路を有して、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート信号)をスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPIT(Powewr Isolation Transform)は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2のスイッチング出力を2次側に伝送する。この場合の絶縁コンバータトランスPITの1次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインの接続点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。
この、絶縁コンバータトランスPITの構造を説明するために、図19を参照する。
絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを組み合わせたEE型コアを備える。そして、ボビンBを用いて1次側と2次側とで巻装部位を分割したうえで、1次巻線N1と2次巻線N2とを、EE型コアの内磁脚に対して巻装している。また、絶縁コンバータトランスPITのEE型コアの内磁脚に対しては、0.8mm程度のギャップGを形成するようにしている。これによって、1次巻線N1と2次巻線N2とで、0.8から0.85程度の結合係数を得るようにしている。
また、1次巻線N1の他端は、図示するように1次側直列共振コンデンサC1を介して1次側アースに接続されている。
この場合、1次側直列共振コンデンサC1および1次巻線N1は直列に接続されているが、この1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンス、および絶縁コンバータトランスPITの1次巻線N1に生じるリーケージインダクタンスL1により、スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための1次側直列共振回路を形成している。
ここまでの説明によると、この図に示す1次側スイッチングコンバータとしては、1次側直列共振回路(L1とC1)による電流共振形としての動作と、部分電圧共振回路(CpとL1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。つまり、この図に示す電源回路は、1次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路が組み合わされた形式を採っていることになる。以下、このようなスイッチングコンバータについて「複合共振形コンバータ」ということにする。
絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2AとN2Bに対しては、図18に示すように2次側アースに接続されるセンタータップを施した上で、整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2、および平滑コンデンサCoによって形成される両波整流回路が備えられる。
これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧として、2次巻線N2AとN2Bに誘起される交番電圧の等倍レベルに対応する直流電圧である2次側直流出力電圧Eoが得られる。この2次側直流出力電圧Eoは、メイン直流電圧として、図示しないメインの負荷に供給されるとともに、制御回路1に対して定電圧制御のための検出電圧としても分岐して入力される。
制御回路1は、2次側直流出力電圧Eoのレベルに対応してレベルが可変される電圧又は電流としての制御信号を発振・ドライブ回路2に出力する。発振・ドライブ回路2では制御回路1から入力される制御信号に基づいて、発振・ドライブ回路2内の発振回路により生成する発振信号周波数を可変するようにして、スイッチング素子Q1、Q2の各ゲートに印加するスイッチング駆動信号の周波数を変化させる。これにより、スイッチング周波数が可変される。このように、2次側直流出力電圧Eoのレベルに応じてスイッチング素子Q1、Q2のスイッチング周波数が可変制御されることで、1次側直列共振回路の共振インピーダンスが変化して1次側直列共振回路を形成する1次巻線N1から2次側に伝送されるエネルギーも可変され、2次側直流出力電圧Eoのレベルも可変制御される。これにより、2次側直流出力電圧Eoの定電圧制御が図られることになる。
なお、以降においては、このようにスイッチング周波数を可変制御することによって安定化を図る定電圧制御方式を「スイッチング周波数制御方式」ということにする。
図20の波形図は、図18に示した電源回路における要部の動作中の波形を示している。このとき、交流入力電圧VAC=100Vで一定として、負荷電力Poは200W(ワット)とするものである。波形は上から、電圧V1(図18を参照)、電流IQ2(図18を参照)、電流I1(図18を参照)、電流I2(図18を参照)、の各々を示す。
矩形波状の電圧V1は、スイッチング素子Q2の両端電圧であり、スイッチング素子Q2のオン/オフのタイミングに応じて変化するものである。電圧V1が0レベルとなる期間では、スイッチング素子Q2およびダンパーダイオードDD2から成るスイッチング回路系には、図示する波形によるスイッチングの電流IQ2が流れる。また、電圧V1が整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiのレベルでクランプされる期間は、スイッチング素子Q2がオフとなる期間であり、電流IQ2は図示するようにして0レベルとなる。
また、図示していないが、他方のスイッチング素子Q1の両端電圧、およびスイッチング回路(Q1、DD1)に流れる電流としては、電圧V1、および電流IQ2を180°位相をずらした波形として得られる。つまり、前述したように、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは、交互にオン/オフするタイミングでスイッチング動作を行う。
また、1次側直列共振回路(C1−L1)を流れる1次側直列共振電流としては、これらのスイッチング回路(Q1、DD1)およびスイッチング回路(Q2、DD2)に流れる電流が合成されることで、電流I1として図示するものとなる。
また、この1次側の動作が得られることで、絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2には、交番電圧が誘起される。そして、この交番電圧の一方の極性の半周期期間においては、2次側の整流ダイオードDo1が導通する。また、交番電圧の他方の極性の半周期期間においては、2次側の整流ダイオードDo2が導通する。
これにより、2次側の両波整流回路において、2次巻線N2のセンタータップと2次側アースとの間に流れる整流電流I2としては、図示したような波形となる。
図21は、交流入力電圧VAC=100Vの入力電圧条件の下での負荷変動に対する交流ACに対する直流DCの電力変換効率ηAC→DC(以下、電力変換効率ηAC→DCと省略する)、およびスイッチング周波数の特性を示している。図21の一点鎖線に示す曲線は、図18に示した電源回路について、それらの各々を示している。
図示するようにして図18の電源回路のスイッチング周波数fsとしては、定電圧制御駆動が行われることに応じて、重負荷の傾向となるのに従って低くなっているが、負荷変動に対してリニアとなる変化特性ではなく、例えば負荷電力Poが50W程度から0Wまでの範囲では、スイッチング周波数fsが急峻に上昇していく傾向となっている。具体的には、スイッチング周波数fsの値は76kHzから173kHzの範囲となっており、変化幅Δfsの値は97kHzである。
また、同様に、図21の一点鎖線で示す電力変換効率ηAC→DCとしては、負荷電力Poの上昇に伴って高くなっていく傾向となっている。
図21に示す特性によれば、スイッチング周波数fsの値が大きく変化するところから、例えば、交流入力電圧VACの範囲として85Vから264Vの範囲で動作させる、いわゆる、ワイドレンジ対応とすることは、困難であることが分かる。
図22は、このような観点から、ワイドレンジ対応とする別のスイッチング電源回路である。以下において、図18に示すスイッチング電源回路と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。図22に示すスイッチング電源回路と図18に示すスイッチング電源回路との相違点は、図22に示すスイッチング電源回路では、2次側に2次側直列共振コンデンサC2を有する点である。このように、2次側にも共振回路を有するコンバータを「多重共振形コンバータ」と言うこととする。また、図22に示すスイッチング電源回路の1次側は、「複合共振形コンバータ」でもあるので、このようなコンバータを、「多重複合共振形コンバータ」ということとする。
図22に示すスイッチング電源回路においては、各部を以下のように設定している。
絶縁コンバータトランスPITのEE型コアの内磁脚に対するギャップに関しては、図18に示すスイッチング電源回路における0.8mm程度のギャップよりもさらにギャップを拡大して、2mm程度としている。この結果、0.75以下の結合係数を得るようにしている。
また、1次巻線N1に生じるリーケージインダクタンスL1と1次側直列共振コンデンサC1とで定まる1次側直列共振回路の共振周波数を共振周波数fo1、2次巻線N2に生じるリーケージインダクタンスL2と2次側直列共振コンデンサC2とで定まる2次側直列共振回路の共振周波数を共振周波数fo2とする場合において、共振周波数fo1<fo2となる関係に設定している。
ここで、図23の波形図は、図22に示した電源回路における要部の動作中の波形を示している。このとき、交流入力電圧はVAC=100Vで一定とし、負荷電力Poは200W(ワット)とするものである。波形は、上から、電圧V1(図22を参照)、電流IQ2(図22を参照)、電流I1(図22を参照)、電流I2(図22を参照)の各々を示す。
図20に示す電流IQ2、電流I1の値に較べて図23に示す電流IQ2、電流I1の値は、より抑圧されたものとなっているところが注目すべき点である。
また、先の図21の実線および破線に示す曲線により、図22に示した電源回路の特性を示している。図21において、実線は交流入力電圧VAC=100Vにおける特性を示し、破線は交流入力電圧VAC=230Vにおける特性を示すものである。すなわち、各々の交流入力電圧の条件の下での負荷変動に対する電力変換効率ηAC→DC、およびスイッチング周波数fsの特性を示している。
この図21において、図22に示した回路のスイッチング周波数fsとしては、定電圧制御動作が行われることに応じて変化するが、負荷電力Poが200W程度から0Wまでの範囲では、スイッチング周波数fsの変化幅Δfsの値は9kHzと小さいものである。
このようにして図22の回路では、Δfsの値が図18の回路より縮小されることになるが、これによって図22に示す電源回路では、AC100V系とAC200V系とに対応する、いわゆるワイドレンジ対応が実現する。
以下、このことについて説明する。
図24の回路図は、図22に示す電源回路について、1次側直列共振回路と2次側直列共振回路との関係によりみた場合の等価回路を示している。なお、この等価回路図において、図22と同一部分には、同一符号を付している。
この図においては、1:nの巻線比となる所定巻数の1次巻線N1と2次巻線N2を巻装した絶縁コンバータトランスPITが示されている。また、この図において、絶縁コンバータトランスPITにおける1次側と2次側との結合度を結合係数kにより示している。
この絶縁コンバータトランスPITの1次側において、L1l、L1eは、それぞれ、1次巻線N1のリーケージインダクタンス、1次巻線N1の励磁インダクタンスを示す。また、絶縁コンバータトランスPITの2次側のL2l、L2eは、それぞれ2次巻線N2のリーケージインダクタンス、2次巻線N2の励磁インダクタンスを示す。
この図24に示す等価回路図において、絶縁コンバータトランスPITの1次側では、スイッチング周波数fsによる交流(周波数信号)が入力されている。つまり、1次側スイッチングコンバータ(スイッチング素子Q1、Q2)のスイッチング出力が入力となっている。
そして、絶縁コンバータトランスPITの1次側では、このスイッチング周波数fsによる交流の入力を、1次側直列共振コンデンサC1−リーケージインダクタンスL1lを1次巻線N1に対して直列に接続するとともに、励磁インダクタンスL1eを1次巻線N1に対して並列に接続したものとしてみることができる。
また、絶縁コンバータトランスPITの2次側直列共振回路としても同様に、2次側直列共振コンデンサC2−リーケージインダクタンスL2lを2次巻線N2に対して直列に接続するとともに、励磁インダクタンスL2eを2次巻線N2に対して並列に接続したものとしてみることができ、このように形成される2次側直列共振回路の出力を負荷RLに出力することとしている。ここでの負荷RLは、2次側全波整流回路以降の回路および負荷となる。
そして、このような接続態様となる図24の等価回路においては、絶縁コンバータトランスPITの結合係数をk、1次巻線N1の自己インダクタンスをL1とすると、1次巻線N1のリーケージインダクタンスL1lについて
L1l=(1−k2)L1・・・(式1)
により表すことができる。
また、1次巻線N1の励磁インダクタンスL1eについては、
L1e=k2×L1・・・(式2)
により表すことができる。
同様にして、2次巻線N2のリーケージインダクタンスL2l、励磁インダクタンスL2eについては、1次巻線N2の自己インダクタンスをL2とすると、それぞれ、
L2l=(1−k2)L2・・・(式3)
L2e=k2×L2・・・(式4)
により表される。
ここで、図24に示す等価回路においては、絶縁コンバータトランスPITの電磁誘導を介して、1次側に1次側直列共振回路を備え、2次側に2次側直列共振回路を備えていることが示されている。従って、この図に示す回路は、電磁結合による結合形共振回路を形成しているものとしてみることができる。このために、図22に示す電源回路における2次側直流出力電圧Eoについての定電圧制御特性は、絶縁コンバータトランスPITの結合度(結合係数k)に応じて異なるものとなる。この点について図25を参照して説明する。
図25は、図24の等価回路につての、入力(スイッチング周波数信号)に対する出力特性を示している。つまり、2次側直流出力電圧Eoについての制御特性をスイッチング周波数fsとの関係により示している。この図では、スイッチング周波数を横軸にとり、2次側直流出力電圧Eoのレベルを縦軸にとっている。
なお、この図では、1次側直列共振回路の共振周波数fo1と2次側直列共振回路の共振周波数fo2とを重複して示しているが、これは共振周波数fo1と共振周波数fo2の設定値に関わらず同様の特性が得られることを示しているものである。
ここで、絶縁コンバータトランスPITの結合度について、結合係数k=1となる密結合とされる状態を設定したとする。すると、この場合の1次巻線N1のリーケージインダクタンスL1l、および2次巻線N2のリーケージインダクタンスL2lは、それぞれ、(式1)(式3)に対してk=1を代入することで、
L1l=L2l=0・・・(式5)
として表されることになる。つまり、絶縁コンバータトラストPITが密結合であることで、1次巻線N1および2次巻線N2のリーケージインダクタンスは存在していない状態であることが示される。
このようにして、絶縁コンバータトランスPITの1次側と2次側とが密結合とされる状態での定電圧制御特性としては、図25の特性曲線1として示すように、1次側直列共振回路の共振周波数fo1と2次側直列共振回路の共振周波数fo2とは異なる周波数f1、f2において2次側直流出力電圧Eoがピークとなる、いわゆる双峰特性となる。
ここで、周波数f1は、
Figure 2007336770
で表され、
周波数f2は、
Figure 2007336770
で表される。
また、(数1)(数2)における項の1つである中間共振周波数foは、1次側直列共振回路の共振周波数fo1と、1次側のインピーダンスと2次側のインピーダンスと、1次側と2次側とで共通となるインピーダンス(相互結合インダクタンスM)により決定される周波数である。
なお、相互結合インダクタンスMについては、
Figure 2007336770
により表される。
また、結合係数kについて、k=1の状態から徐々に小さくしていったとする、つまり、密結合の状態から徐々に疎結合の度合いを高くしていったとすると、図25に示される特性曲線1は、双峰の傾向が徐々に希薄となって、中間共振周波数fo近傍で平坦化していくような変化を示す。そして、ある結合係数kにまで低下した段階で、いわゆる臨界結合の状態となる。この臨界結合の状態では、特性曲線2として示すようにして、双峰特性としての傾向ではなくなっており、中間共振周波数foを中心として曲線形状が平坦となる特性となる。
そして、さらに臨界結合の状態から結合係数kを小さくしていって、疎結合の状態を強めていったとすると、図25の特性曲線3として示すように、中間周波数foにおいてのみピークとなる単峰特性が得られる。また、この特性曲線3と、特性曲線1,2とを比較してみると、特性曲線3は、ピークレベルそのものは特性曲線1,2より低下するものの、その曲線形状は、より急峻な傾斜を有していることが分かる。
図22の回路の絶縁コンバータトランスPITは、結合係数k≦0.65程度とされる疎結合の状態が設定されている。この結合係数kの設定では、特性曲線3として示される単峰特性による動作となる。
ここで比較のために、図27には、図18に示した複合共振コンバータの定電圧制御特性を、スイッチング周波数fsと2次側直流出力電圧Eoのレベルとの関係により示す。図27ではAC100V系における最大負荷電力Pomax時と最小負荷電力Pomin時、それぞれの特性を表し、また、直流出力電圧Eoを所定レベル(tg)に定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲Δfsを表したものである。
この図27に示す複合共振コンバータの定電圧制御特性と先の図25に示す単峰特性とを比較してみると、図25に対して図27に示した特性は、曲線的には相当に緩やかな傾斜となる。
図18に示した電源回路では、図27に示す特性が曲線的に穏やかであることから、2次側直流出力電圧Eoについて定電圧制御を行うためのスイッチング周波数の必要制御範囲は、例えば単レンジ対応の条件下であっても、fs=80kHzから200kHz以上でΔfs=120kHz以上となる。このために、スイッチング周波数制御による定電圧制御のみによって、ワイドレンジ対応とすることが非常に困難となるのである。
図26においては、図22についての、交流入力電圧VAC=100V時(AC100V系)における最大負荷電力Pomax時、最小負荷電力Pomin時の各特性曲線A,Bと交流入力電圧VAC=230V時(AC200V系)における最大負荷電力Pomax時、最小負荷電力Pomin時の各特性曲線C,Dとの、4つの特性曲線が示されている。
この図26からわかるように、先ず、AC100V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=100V時において、2次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs1で示されることになる。つまり、特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
また、AC200V系の入力に対応する交流入力電圧VAC=230V時において、2次側直流出力電圧Eoを所要の定格レベルtgで定電圧化するために必要となるスイッチング周波数の可変制御範囲(必要制御範囲)は、Δfs2で示される。つまり、特性曲線Cにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsから、特性曲線Dにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fsまでの周波数範囲となる。
この2次側直流出力電圧Eoの制御特性である単峰特性は、先に図27に示した制御特性と比較して、曲線的に相当に急峻である。
このために、交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時の各必要制御範囲となるΔfs1、Δfs2は、図27に示されるΔfsと比較して相当に縮小されたものとなっている。例えば実際に測定したΔfs1、Δfs2としては、図27に示されるΔfsの実際に対して1/10以下程度にまで縮小されるという結果が得られている。
そのうえで、Δfs1における最低スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)から、Δfs2における最高スイッチング周波数(特性曲線Aにおいてレベルtgとなるスイッチング周波数fs)までの周波数可変範囲(ΔfsA)としても、相応に狭いものとなっている。
このように図22の電源回路では、2次側に直列共振コンデンサC2を設置し、絶縁コンバータトランスPITの1次側と2次側の結合係数を図18の結合係数より小さく設定することで、ワイドレンジ対応とするにあたってのスイッチング周波数の可変範囲を、図18の回路の場合よりも格段に狭くすることができ、これによってワイドレンジ対応が可能となった。
しかしながら、図22に示すスイッチング電源回路は次の点で問題を有している。つまり、図22の電源回路では2次側を流れる整流電流I2が、図23に示されているようにそのピークレベルが高く、その分ブリッジ整流回路Doを形成するダイオードDo1、Do2、Do3、Do4の電力損失としても大きくなる。また、このように損失が大きいことで、各ダイオードDo1、Do2、Do3、Do4には放熱板が必要となっている。
また、スイッチング電源回路をワイドレンジ対応とする場合、図22に示したように、2次側に直列共振コンデンサC2を設置しなけなければならない。この直列共振コンデンサC2としてはフィルムコンデンサを設けているが、ワイドレンジ対応とするにあたり、そのキャパシタンスとしては、直流出力電圧Eoが48V時は1μF、24V時は2.2μF、12V時は4.7μFとなるように設定する必要がある。しかし、このような設定値になるとフィルムコンデンサの形状は大型化し、また価格的にも高価になってしまうという難点がある。
そこで本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成する。
先ず、直流入力電圧を入力してスイッチングを行うスイッチング素子を備えて形成したスイッチング手段と、上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される1次巻線と、この1次巻線により交番電圧が誘起される2次巻線とが巻装されて形成される絶縁コンバータトランスを備える。
また、上記絶縁コンバータトランスの1次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記1次巻線に直列接続された1次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成されて第1の共振周波数が設定され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする1次側直列共振回路を備える。
また、少なくとも第1の整流ダイオードと第2の整流ダイオード、及び第1のインダクタ素子と第2のインダクタ素子とが磁気結合された第3のインダクタ素子、及び2次側平滑コンデンサを備えて形成されると共に、上記2次巻線に生じる交番電圧の各半周期の動作として、一方の半周期には、上記第1の整流ダイオードが導通することで流される整流電流と、他方の半周期にて上記第1のインダクタ素子に整流電流が流れたことに応じ上記第3のインダクタ素子に蓄積されたエネルギーに基づく電流とを上記2次側平滑コンデンサに充電し、上記他方の半周期には、上記第2の整流ダイオードが導通することで流される整流電流と、上記一方の半周期にて上記第2のインダクタ素子に整流電流が流れたことに応じ上記第3のインダクタ素子に蓄積されたエネルギーに基づく電流とを充電する倍電流整流動作を行って、上記2次側平滑コンデンサに2次側直流出力電圧を得る2次側直流出力電圧生成手段を備える。
また、上記2次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記2次側直流出力電圧について定電圧制御を行う定電圧制御手段を備える。
その上で、上記第1のインダクタ素子と上記第2のインダクタ素子のインダクタンスは、上記2次巻線に生じる交番電圧の各半周期において上記第1及び第2の整流ダイオードに流れる整流電流に休止期間ができるように設定されていると共に、上記絶縁コンバータトランスは、1次側と2次側との結合係数が疎結合とされる所定以下の値に設定されているものである。
上記構成によるスイッチング電源回路では、1次側は従来と同様にスイッチング動作を電流共振形とする1次側直列共振回路が形成されたスイッチングコンバータの構成が採られる。2次側には上記のようにして倍電流整流動作により2次側直流出力電圧を生成する2次側直流出力電圧手段が設けられる。これにより、同じレベルによる2次側直流出力電圧を得るにあたっては、倍電流整流動作を行わない場合と比較して、2次側に流すべき整流電流のレベルは低減することができる。
また、本発明では、絶縁コンバータトランスの1次側と2次側との結合係数を疎結合とされる所定以下の値に設定しているが、このことによってワイドレンジ対応を実現することができる。これによれば、同じワイドレンジ対応とするにあたって、従来のように2次側にも直列共振回路を設ける必要はなくなる。すなわち、これによりワイドレンジ対応とするにあたり、2次側の直列共振コンデンサを省略することができる。
また、上記構成によれば、第1、第2のインダクタ素子が2次巻線と直列の関係により接続されていることになるが、このインダクタ素子が2次巻線の漏洩インダクタンスの役割を果たすことになる。これによれば、2次巻線に直列にインダクタ素子が接続されない場合と比較して、絶縁コンバータトランスの所定以下の結合係数を得るにあたって設定すべきギャップ長は、その分短くすることができる。
さらに、2次側の第1及び第2のインダクタ素子は磁気結合されている。また、整流ダイオードに流れる電流に休止期間ができるようにされている。これらのことによって、2次巻線に得られる電圧に生じるとされるリンギング成分を抑制することができる。
このようにして本発明は、2次側の直列共振コンデンサが無くてもワイドレンジ対応とすることができるので、従来のコンデンサの大型化やその為にコストが上がる問題は生じなくなる。
また、2次側においては倍電流整流動作を行うことによって、2次側を流れる整流電流のピークレベルを抑える事ができる。それによって2次側の整流ダイオードの導通損を少なくすることができ、ダイオードに放熱板を付ける必要は無くなる。
さらに、リンギング成分が抑制されることによって、2次側の整流ダイオードに印加される電圧レベルを抑えることができる。それによって整流ダイオード素子としては、より低耐圧の部品を用いることができ、これによって整流ダイオード素子をより小型化することができ、価格も抑えることができる。
図1は、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)のうちの、第1の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。この図に示す電源回路は、1次側の基本構成として、ハーフブリッヂ結合方式による他励式の電流共振形コンバータに対して部分電圧共振回路が組み合わされた構成を採る。
まず、図1に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACに対して2組のフィルタコンデンサCLおよび1組のコモンモードチョークコイルCMCから成るコモンモードノイズフィルタが接続されている。そして、商用交流電源ACから直流入力電圧を生成する整流平滑回路としては、このコモンモードノイズフィルタの後段に対して、ブリッジ整流回路Diおよび平滑コンデンサCiとから成る全波整流回路が備えられる。ブリッジ整流回路Diの整流出力は、平滑コンデンサCiに対して充電され、これによって平滑コンデンサCiの両端には、交流入力電圧VACの等倍のレベルに対応する整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiがえられることになる。
整流平滑電圧(直流入力電圧)Eiを入力してスイッチングする電流共振形コンバータとしては、図示するようにして、MOS−FETによる2本のスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2をハーフブリッヂ結合により接続したスイッチング回路系を備える。スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2の各ドレインとソース間に対しては、図示する方向により、それぞれボディダイオードによるダンパーダイオードDD1、ダンパーダイオードDD2が並列に接続される。
また、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に対しては、1次側部分電圧共振コンデンサCpが並列に接続される。この1次側部分電圧共振コンデンサCpのキャパシタンスと1次巻線N1に生じるリーケージインダクタンスL1によって、並列共振回路(部分電圧共振回路)が形成される。この部分電圧共振回路によりスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2のターンオフ時にのみ電圧共振する、部分電圧共振動作が得られるようになっている。リーケージインダクタンスL1は1次巻線N1によって発生し、2次巻線N2と鎖交しない磁束(漏れ磁束)によって生じるインダクタンスである。そして2次巻線N2についても同様に、2次巻線N2によって発生し、1次巻線N1と鎖交しない磁束(漏れ磁束)によって生じるインダクタンスであるリーケージインダクタンスL2が発生する。
この電源回路においては、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2をスイッチング駆動するために、例えば汎用のICによる発振・ドライブ回路2が設けられる。この発振・ドライブ回路2は、発振回路、駆動回路を有して、所要の周波数によるドライブ信号(ゲート信号)をスイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2の各ゲートに対して印加する。これにより、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2は、所要のスイッチング周波数により交互にオン/オフするようにしてスイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPIT(Powewr Isolation Transform)は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2のスイッチング出力を2次側に伝送する。この場合の絶縁コンバータトランスPITの1次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインの接続点(スイッチング出力点)に接続されることで、スイッチング出力が得られるようにされる。
この、絶縁コンバータトランスPITの構造を説明するために、図19を参照する。
絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1とE型コアCR2とを組み合わせたEE型コアを備える。そして、ボビンBを用いて1次側と2次側とで巻装部位を分割したうえで、1次巻線N1と2次巻線N2とを、EE型コアの内磁脚に対して巻装している。また、絶縁コンバータトランスPITのEE型コアの内磁脚に対しては、0.5mm程度のギャップGを形成するようにしている。これによって、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとしては、k=0.8から0.85程度の結合係数を得るようにしている。
また、図1に図示するように、1次巻線N1の一端は、1次側直列共振コンデンサC1を介して1次側アースに接続されている。
この場合、1次側直列共振コンデンサC1および1次巻線N1は直列に接続されているが、この1次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンス、および絶縁コンバータトランスPITの1次巻線N1に生じるリーケージインダクタンスL1により、スイッチングコンバータの動作を電流共振形とするための1次側直列共振回路を形成している。
ここまでの説明によると、この図1に示す1次側スイッチングコンバータとしては、1次側直列共振回路(L1とC1)による電流共振形としての動作と、部分電圧共振回路(CpとL1)とによる部分電圧共振動作とが得られることになる。つまり、この図に示す電源回路は、1次側スイッチングコンバータを共振形とするための共振回路に対して、他の共振回路が組み合わされた形式を採っていることになる。以下、このようなスイッチングコンバータについて「複合共振形コンバータ」ということにする。
上記絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2には、1次巻線N1に伝達されたスイッチング出力に応じた交番電圧が励起されることになる。
2次側の回路の構成としては、2次巻線N2に対して2次側直列共振コンデンサC2が直列に接続されている。具体的にはこの場合、2次側直列共振コンデンサC2は2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)に対して接続されている。この2次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンス及び、絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2に生じるリーケージインダクタンスL2により、2次側直列共振回路を形成している。
そして、上記2次側直列共振コンデンサC2に対しては、図示するようにしてパワーチョークコイルPCCが直列に接続されている。つまり、これによって2次巻線N2とパワーチョークコイルPCCとが直列の関係により接続されている。
上記パワーチョークコイルPCCはセンタータップされ、巻線部Lo1と巻線部Lo2に分かれている。この巻線部Lo1のセンタータップされていない端部と上記2次側直列共振コンデンサC2が接続されている。また、センタータップ出力は平滑コンデンサCoの正極端子と接続され、上記2次巻線N2のもう一方の端部(巻始め端部)は上記巻線部Lo2のセンタータップされていない端部と接続されている。
さらに、上記2次側直列共振コンデンサC2と上記巻線部Lo1との接続点には、整流ダイオードDo1のカソードが接続されており、この整流ダイオードDo1のアノードは、上記平滑コンデンサCoの負極端子と接続されている。さらに、上記2次巻線N2のもう一方の端部(巻始め端部)と上記巻線部Lo2との接続点に対しては、整流ダイオードDo2のカソードが接続されている。この整流ダイオードDo2のアノードは、上記平滑コンデンサCoの負極端子と上記整流ダイオードDo1のアノードとの接続点に接続されており、そして、上記整流ダイオードDo1のアノードと上記整流ダイオードDo2のアノードと上記平滑コンデンサCoの負極端子との接続点には2次側アースが接地されている。
上記のような接続形態を採る2次側回路において、2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に対しては、巻線部Lo1と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo2の直列接続回路が直列に挿入されていることになる。また、同様にして、巻線部Lo2と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo1の直列接続回路が、2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に対して直列に挿入されている。
このような構成を持つ2次側回路において、2次巻線N2に生じる交番電圧の一方の極性の半周期には、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流が[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2→巻線部Lo1→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo2→2次巻線N2]の経路で流れる。
一方、2次巻線N2に生じる交番電圧の他方の極性の半周期には、整流ダイオードDo1が導通し、整流電流は[2次巻線N2→巻線部Lo2→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo1→2次側直列共振コンデンサC2→2次巻線N2]の経路で流れる。
ここで、注目すべきは、上記説明による整流電流経路によれば、一方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo1を介して流れ、また他方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo2を介して流れていることである。すなわち、このようにして各半周期で整流電流が流されることで、パワーチョークコイルPCCに対しては、各半周期にエネルギーが蓄積されることになる。
そして、このようにして各半周期においてパワーチョークコイルPCCにエネルギーが蓄積されることで、2次側回路において一方の極性の半周期には、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo2→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo2]の経路によっても電流が流れることになる。
同様にして、他方の極性の半周期においては、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo1→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo1]の経路によっても電流が流れる。
このように2次側の整流回路では、各半周期に平滑コンデンサCoに二重に電流が充電される。
ゆえに、図1の2次側回路は倍電流整流動作を行っているといえる。
上記倍電流整流動作によれば、2次側直流出力電圧Eoとして所定の電圧レベルを得ようとしたときに、2次側の整流回路に流れる電流のレベルを、倍電流整流動作を行わないとした場合と比較して、低減させることができる。
このようにして整流電流のレベルを抑制できることで、整流ダイオードDo1、Do2の損失も低減され、整流ダイオードDoの放熱板を無くす事が可能となる。
また、上記倍電流整流動作によって得られた2次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷に供給されると共に、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
制御回路1は、2次側直流出力電圧Eoをスイッチング周波数制御方式により安定化させるために設けられている。
この場合の制御回路1は、検出入力である2次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数が可変されるようにしてスイッチング素子Q1,Q2を駆動する。このためには、内部の発振回路により生成する発振信号の周波数を可変することになる。
スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数が可変されることで、1次側直列共振回路の共振インピーダンスが変化し、絶縁コンバータトランスPITの1次巻線N1から2次巻線N2側に伝送される電力量が変化するが、これにより2次側直流出力電圧Eoのレベルを安定化させるように動作する。
次いで、図2を参照して、図1に示したパワーチョークコイルPCCの構造について説明する。
パワーチョークコイルPCCの構造は先に述べた絶縁コンバータトランスPITの構造と同様にフェライト材によるEE型コアを備え、ボビンBを用いて巻線部Lo1と巻線部Lo2とを巻装している。先の図2を参照して説明した絶縁コンバータトランスPITでは、巻装部位を1次側と2次側とに分割しているが、パワーチョークコイルPCCでは、分割せずに一つの巻装部位に巻装している。図示するようにして、ボビンBに対して先ず巻線部Lo2から巻装し、その外側に巻線部Lo2と同じターン数だけ巻線部Lo1を巻装している。また、パワーチョークコイルPCCのEE型コアの内磁脚に対しては、0.25mmのギャップGを形成するようにし、これによって、巻線部Lo1と巻線部Lo2との結合係数kpとしては、kp=0.98が得られている。
次に、図3には図1に示した電源回路の各部の動作波形図を示す。なお、図3に示す実験結果を得るにあたり、図1に示した電源回路は負荷電力Po=150Wから0W、VAC=85Vから264Vの仕様に対し、各要部を次のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについて、コア材としてはEER=35、ギャップ長を0.5mmとし、1次巻線N1及び2次巻線N2の巻数としては、それぞれN1=35T、N2=30Tを巻装し、1次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と2次巻線N2のリーケージインダクタンスL2をL1=400μH、L2=300μHとした。絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数Kとしては、K=0.85を得ている。
また、パワーチョークコイルPCCは、コア材としてはEER=22.5、ギャップ長を0.25mmとし、巻線部Lo1,Lo2は、Lo1=Lo2=55μHとした。パワーチョークコイルPCCにおける巻線部Lo1とLo2との結合係数kpとしては、kp=0.98を得ている。
さらに、1次側直列共振コンデンサC1と1次側部分電圧共振コンデンサCpはC1=0.039μF、Cp=680PFとし、2次側直列共振コンデンサC2はC2=0.15μFと選定した。
図3において、図3(a)では、負荷電力Po=150W(最大負荷電力)時の動作波形を示し、図3(b)では負荷電力Po=0W(無負荷電力)時の動作波形を示している。なお、これらの図では、交流入力電圧VAC=100V時の実験結果を示している。
これら図3(a)(b)において、電圧V1は、スイッチング素子Q2の両端電圧であり、スイッチング素子Q2のオン/オフタイミングを示すものとなる。つまり、電圧V1が0レベルとなる期間には、図示するスイッチング素子Q2の電流IQ2が流れ、この期間はスイッチング素子Q2がオンする。また、電圧V1が図示するように整流平滑電圧Eiのレベルでクランプされる期間には、電流IQ2が0レベルとなり、この期間はスイッチング素子Q2がオフすることが分かる。また、図示はしないが一方のスイッチング素子Q1の両端電圧としては、電圧V1の位相を180度シフトした波形として得られる。同様に、スイッチング素子Q1の電流としても、電流IQ2の位相を180度シフトした波形が得られる。つまり、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2は交互にオン/オフするようにされている。
なお、電流I1は1次側直列共振回路を流れる共振電流であり、略、スイッチング素子Q1の電流とスイッチング素子Q2の電流IQ2との波形が合成された、図のような波形となるものである。
そして、電流I1が流れるのに応じて、絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2には、図示する電圧V2が励起される。この電圧V2の一方の極性の半周期においては、2次側の整流ダイオードDo2が導通して整流電流が流れ、他方の極性の半周期においては、整流ダイオードDo1が導通して整流電流が流れる。
図1に図示した電流I2、電流I3、電流I4、電流I5、電流I6は、上述した交番電圧V2の各半周期に応じて流れ、その波形図は図3(a)(b)に示したとおりである。
また、Po=0W時の電流I4、電流I6の値は零になっている。
この図3(a)(b)に示した電流I4、電流I6は、図1に示した整流ダイオードDo1、Do2を各々流れる電流であるが、その波形によれば、この電流I4、電流I6は、スイッチング周期の各半周期において電流の流れの休止期間ができるように不連続的に流れるものとなっている。
このように電流が流れる動作モードを、ここでは不連続動作モードと呼ぶ。
なお、この不連続動作モードの設定は、巻線部Lo1と巻線部Lo2の巻数(インダクタンス)を調整することで行うことができる。
ところで、上記のようにして図1の回路では、整流ダイオードDo1、Do2に流れる電流が不連続動作モードにより流れるようにしている。
このように整流ダイオードDo1、Do2に流れる電流が不連続動作モードにより流れるようにしているのは、これら整流ダイオードDoがオフする際に発生する空乏層容量と、2次巻線N2のリーケージインダクタンスとに起因して生じるとされる、電圧V2のリンギング成分を抑制するためである。以下、このようなリンギング成分の抑制動作について、引き続き図3の波形図を参照して説明する。
先ず、2次巻線N2に生じる交番電圧の一方の半周期において、整流ダイオードDo2がターンオフした後の不連続期間では、巻線部Lo2に流れる電流として示す電流I5が、上記整流ダイオードDo2がオン時に流れていた方向とは逆方向に流れていることが確認できる。すなわち、この不連続期間においての電流I5は、図1を参照してわかるように、巻線部Lo2→2次巻線N2に流れることになる。この不連続期間における電流I5は、先に説明した倍電流整流動作時にパワーチョークコイルPCCに蓄積されたエネルギーが電流として上記巻線部Lo2から流れでているものである。
このようにして、上記整流ダイオードDo2がターンオフした後の不連続期間に、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分が電流として流れ出ることで、この期間においてパワーチョークコイルPCCのインダクタンスは、その分減少することになる。
また、2次巻線N2に生じる交番電圧の他方の極性の半周期についても、整流ダイオードDo1がターンオフした後の不連続期間では、巻線部Lo1に流れる電流として示す電流I3が、上記整流ダイオードDo1がオン時に流れていた方向とは逆方向に流れていることが確認できる。すなわち、この期間の電流I3は、巻線部Lo1→2次巻線N2に流れることになる。この不連続期間における電流I3は、先に説明した倍電流整流動作時にパワーチョークコイルPCCに蓄積されたエネルギーが電流として上記巻線部Lo1から流れでているものである。
このようにして、上記整流ダイオードDo1がターンオフした後の不連続期間に、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分が電流として流れ出ることで、この期間においてもパワーチョークコイルPCCのインダクタンスは、その分減少することになる。
上記のようにして、図1の回路では、先に説明した倍電流整流動作によって各半周期にパワーチョークコイルPCCに蓄積されたエネルギーを、各半周期における整流ダイオードDoがターンオフした後の不連続期間において放出させることができる。
これにより、各半周期では、整流ダイオードDoがターンオフした後の不連続期間において、上記2次巻線N2のリーケージインダクタンスを減少させることができる。
これによれば、一方の半周期のときは、上記整流ダイオードDo2がオフとなって生じる空乏層容量と上記2次巻線N2のリーケージインダクタンスとに起因して生じるリンギング成分を抑制することができる。
また、他方の極性の半周期のときも同様に、上記整流ダイオードDo1がオフとなって生じる空乏層容量と上記2次巻線N2のリーケージインダクタンスとに起因して生じるリンギング成分を抑制することができる。
ここで、上記のようにして各半周期において整流ダイオードDoがターンオフとなった後の不連続期間にパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分が放出されるのは、当然のことながら各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードとしたことが起因しているが、これと共に、さらに本実施の形態の電源回路のように巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されているということも必須の要件となる。
仮に、巻線部Lo1と巻線部Lo2を磁気結合しない構成とした場合を想定してみると、先に説明した倍電流整流動作が行われる条件では、整流ダイオードDo2が導通する一方の半周期では、巻線部Lo1に独立してエネルギーが蓄積されることになる。また整流ダイオードDo1が導通する他方の極性の半周期には、巻線部Lo2に独立してエネルギーが蓄積されることになる。
そして、上記により説明したリンギング成分の抑制動作によると、上記整流ダイオードDo2が導通する一方の半周期において巻線部Lo1に蓄積された成分は、この一方の半周期での不連続期間において、巻線部Lo2を介して放出されるべきものとなるが、巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されていないとすれば、当然のことながらこのように巻線部Lo1に蓄積された成分が巻線部Lo2を介して流れ得ないものとなる。
同様に、上記整流ダイオードDo2が導通する一方の半周期においては、巻線部Lo2に蓄積された成分は、この一方の半周期での不連続期間において巻線部Lo1を介して放出されるべきものとなるが、同様に巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されていなければ、このような巻線部Lo1から巻線部Lo2を介してのエネルギーの放出も起こり得ないものとなる。
このようにして図1に示した電源回路では、各整流ダイオードDoに流れる電流が不連続動作モードにより流れるようにしていることと、巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されるようにしていることによって、リンギング成分を抑制することができる。
リンギング成分が抑制できれば、整流ダイオードDoに印加される電圧のレベルも抑えられる。このことによって、上記整流ダイオードDoとしては、より低耐圧な部品を選定できるので、上記整流ダイオードDoを小型化でき、価格も抑えることができる。
なお、図3(a)では、電流I3、電流I5として示した巻線部Lo1と巻線部Lo2に流れる電流が、各半周期で休止期間無く流れているのが分かるが、このようにスイッチング周期の各半周期において電流が休止期間無く連続的に流れる動作モードのことを、ここでは連続動作モードと呼ぶ。このように連続動作モードとなるのは、上記巻線部Lo1と上記巻線部Lo2を磁気結合としたことによる。このように磁気結合とすると、上記巻線部Lo1に電流I3が流れることで上記巻線部Lo1から上記巻線部Lo2に誘起電圧が発生し、上記巻線部Lo2に電流I5が流れることで上記巻線部Lo2から上記巻線部Lo1に誘起電圧が発生する。このことから、上記巻線部Lo1と上記巻線部Lo2に流れる電流は連続動作モードとなる。
ところで、図1に示した電源回路は、各要部の定数を先に述べたものに設定することにより、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとしては、先の図18の回路の場合と同様のk=0.85を設定している。
しかしながら、図1に示す電源回路では、2次巻線N2に対して直列に、それぞれ巻線部Lo1、巻線部Lo2が接続されたものとなっており、これによって総合的な結合係数は、この結合係数k=0.85よりも低いものとなっている。つまり、このように2次巻線N2と直列に接続された巻線部Lo1、Lo2は、等価的には2次巻線N2のリーケージインダクタンスを形成しているものとみることができる。このことで図1に示した電源回路では、実質的に2次巻線N2のリーケージインダクタンスがこれら巻線部Lo1、Lo2の分増やされている事になる。これによると、2次巻線と直列に巻線部Lo1、Lo2が設けられていない場合と比較すれば、その分、1次側と2次側との総合的な結合係数としては、より低下するようにされていることになる。
このような図1の回路における1次側と2次側との総合的な結合係数の値としては、先に述べた各部の定数の設定により、0.7から0.8程度の疎結合とされる値を設定するようにされている。
このことで、図1の回路では、AC100V系とAC200V系の双方の入力に対応して動作するワイドレンジ対応を実現することができる。
ここで、先に本出願人は、1次側のみに直列共振回路を設けたスイッチング電源回路について実験を行った結果、絶縁コンバータトランスPITの結合係数(総合的な結合係数)を疎結合とされる所定以下の値に設定することで、ワイドレンジ対応を実現できることを確認した。すなわち、2次側に直列共振回路を設けずとも、結合係数を所定以下とすることで、ワイドレンジ対応を実現できるものである。
なお、上記のようにして実質的に2次巻線N2のリーケージインダクタンスが増えるものとなり、総合的な結合係数が低下するということは、或る所定の結合係数を得るにあって設定すべき絶縁コンバータトランスPITのギャップGの長さ(単にギャップ長とも呼ぶ)としては、その分短くすることができる。
これは、先の図22の回路ではギャップ長を2mmに拡大して結合係数として0.75程度を得ていたのと比較して、図1の場合はギャップ長を0.5mmとして上述のように結合係数(総合的な)が0.7から0.8となることからも明らかである。
図1の回路では、このようにしてギャップ長を狭くすることができることで、ギャップ形成に伴い生じるとされている渦電流損失を低減することができ、それによってより高効率とすることができる。
また、図1では、2次巻線N2に対して直列に2次側直列共振コンデンサC2を接続しているが、このことにより図1の電源回路の2次側では、先にも述べたように2次巻線N2のリーケージインダクタンス(L2)と2次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとにより、2次側直列共振回路が形成される。
このように2次側に対しても直列共振回路が形成されることで、その共振動作によって得られるエネルギーによっても2次側直流出力電圧Eo生成のための電力がまかなわれるので、その分電力変換効率の向上を図ることができる。
また、2次側直列共振回路を設けた場合は、1次側の直列共振回路を流れる電流I1のピークレベルが抑制されるとの実験結果も得られており(先の図20の電流I1と図3の電流I1を参照)、これによって損失が低減することも、効率向上に寄与するものとなっている。
なお、このようにして図1に示す電源回路では、従来の回路(図22の回路)と同様に2次側直列共振コンデンサC2を設けているが、その容量としては、前述もしたようにC2=0.15μF程度であり、従来の回路が備えるものよりも相当に小さいものとすることができる。
これは、図1の回路では、ワイドレンジ対応とするにあたってもともと2次側に直列共振回路は不要であり、従来のようにワイドレンジ対応とするために2次側直列共振コンデンサC2の容量を大きく設定する必要がないためである。
このように2次側直列共振コンデンサC2の容量は比較的小さく設定することができることで、図1の回路としても、従来生じていたコンデンサの大型化やコスト高の問題を解決することができる。
次に、図4には、図1に示した電源回路の特性図を示す。なお、この図4に示す特性図としても、図1に示した電源回路の各要部を上述した定数に設定した場合に得られた実験結果を示している。
この図4は、交流入力電圧VAC=100VとVAC=230Vの入力電圧条件の下での負荷変動に対する電力変換効率ηAC→DC、およびスイッチング周波数fsの特性を示している。
図示した実線は交流入力電圧VAC=100V時の特性になるが、負荷電力Poが最大負荷時の150Wの時の電力変換効率ηAC→DCは91.5%であり、負荷電力Poの150から0Wの変動に対するスイッチング周波数fsは71.4kHzから76.9kHzで、スイッチング周波数fsの変化幅Δfsの値は5.5kHzとなっている。
また、交流入力電圧VAC=230Vは点線で表されており、負荷電力Poが最大負荷時の150Wの時の電力変換効率ηAC→DCは93.0%で、負荷電力Poの150から0Wの変動に対するスイッチング周波数fsは105.1kHzから127.5kHzで、スイッチング周波数fsの変化幅Δfsの値は22.4kHzとなっている。
このようにして、図1の回路のスイッチング周波数fsは、交流入力電圧VAC=100V時のスイッチング周波数fsの負荷変動に対する可変範囲で一番低い値と、交流入力電圧VAC=230V時のスイッチング周波数fsの負荷変動に対する可変範囲で一番高い値は、それぞれ、およそ71.4kHzと127.5kHzとなっている。すなわち、その範囲はおよそ56.1kHzとなっている。ここで、図18の回路の負荷変動に対するスイッチング周波数fsの可変範囲は、AC100V系の単レンジのみに対応するものであるにもかかわらず、先にも述べたように97kHzであった。この数値に対して、図1の回路は、交流入力電圧VAC=100V・負荷電力Po=150Wから交流入力電圧VAC=230V・負荷電力Po=0Wまでの変動に対応するために必要な可変範囲は、上記によるおよそ56.1kHzとなる。すなわち、AC100V系とAC200V系との双方に対応するのに必要な必要制御範囲Δfsとしては概ねこの56.1kHz程度となるものであり、これらの比較から図1の回路をワイドレンジ対応とできるのは明らかである。
そして、電力変換効率ηAC→DCの値に関しては、図21に示した図22の背景技術のスイッチング電源回路のηAC→DCと比較して、負荷電力Poの0Wから150Wまでの全範囲の中で、およそ30Wから80W程度の中負荷時の効率が向上しているのがこの実験の結果からもわかる。
ここで、図5(a)(b)には、図1に示した電源回路の2次側の構成の変形例を示す。なお、図5において、1次側の構成は図1に示したものと同様となるので図示による説明は省略する。
先ず、図5(a)の変形例は、絶縁コンバータトランスPITの2次側巻線として、図示するように2次巻線N2Aと2次巻線N2Bとの複数を設けて、それらを並列に接続した上で、それぞれの出力を、整流ダイオードDo1・整流ダイオードDo2・巻線部Lo1・巻線部Lo2・平滑コンデンサCoによる共通の倍電流整流平滑回路により整流平滑して2次側直流出力電圧Eoを生成するようにしたものである。
図5(a)に示す2次巻線N2A側の回路構成は、図1に示した2次側の回路構成とほぼ同様となる。但しこの場合は、2次側直列共振コンデンサC2の位置が、図1では2次巻線N2Aの一方の端部(巻終わり端部)と接続されていたのが、図5(a)では2次巻線N2Aのもう一方の端部(巻始め端部)と接続されている。
また、この図5(a)に示す回路の2次巻線N2Bには直列に2次側直列共振コンデンサC2Bが接続されている。2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)が、上記2次巻線N2Aの一方の端部(巻終わり端部)と上記巻線部Lo1の接続点に対して接続され、また、上記2次巻線N2Bのもう一方の端部(巻始め端部)は、2次側直列共振コンデンサC2Bを介して上記2次側直列共振コンデンサC2Aと上記巻線部Lo2との接続点に対して接続されている。つまり、このようにして上記2次巻線N2Aと上記2次巻線N2Bとが並列に接続されている。
このような図5(a)の回路構成によれば、倍電流整流回路を形成するにあたって必要となる巻線部Lo1と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo2による共通の直列接続回路と、巻線部Lo2と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo1による共通の直列接続回路とが、それぞれの2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)からもう一方の端部(巻始め端部)の間に対して直列に挿入されていることになる。
換言すれば、上記2次巻線N2Aと上記2次巻線N2Bにそれぞれ生じる交番電圧の各半周期に流れる整流電流の経路において、巻線部Lo1、巻線部Lo2、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、コンデンサC2A、コンデンサC2B、平滑コンデンサCoを共有するようにしているものである。
この図5(a)に示す2次側の構成が採られる場合においても、先の図1に示した電源回路の場合と同様の効果を得ることができる。
次の図5(b)の変形例は、先の図5(a)の変形例では巻線部Lo1、巻線部Lo2、整流ダイオードDo1、整流ダイオードDo2、平滑コンデンサCoを共有するようにしていたものを、整流ダイオードDoを除いた巻線部Lo1、巻線部Lo2、平滑コンデンサCoのみを共有するように構成したものである。
図示するようにしてこの図5(b)の変形例では、並列接続された2次巻線N2Aと2次巻線N2Bのそれぞれに対し、アノード同士を接続するようにされた整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2との直列接続回路を並列に接続するようにしている。
なお、この場合において、2次巻線N2A側に設けられる整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2については、整流ダイオードDo1Aと整流ダイオードDo2Aとする。また、もう一方の2次巻線N2B側に設けられている整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2については、区別して整流ダイオードDo1Bと整流ダイオードDo2Bとする。
その上で、図示するようにして、整流ダイオードDo1Bのカソードが上記2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)に接続され、整流ダイオードDo2Bのカソードは2次側直列共振コンデンサC2Bに接続されている。そして、これら整流ダイオードDo1Bと整流ダイオードDo2Bのアノード同士の接続点が2次側アースに接地されている。
また、上記2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)と整流ダイオードDo1Bのカソードとの接続点は、上記2次巻線N2Aの一方の端部(巻終わり端部)と巻線部Lo1との接続点に対して接続され、上記2次側直列共振コンデンサC2Bと整流ダイオードDo2Bのカソードとの接続点を、2次側直列共振コンデンサC2Aと巻線部Lo2との接続点に対して接続されている。これにより、この場合も上記2次巻線N2Aと上記2次巻線N2Bとが並列に接続される。
この図5(b)に示す構成によれば、2次巻線N2Aに対しては、その一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に、巻線部Lo1と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo2Aの直列接続回路と、巻線部Lo2と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo1Aの直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されたもとなる。
また、2次巻線N2Bに対しては、その一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に巻線部Lo1と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo2Bの直列接続回路と、巻線部Lo2と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo1Bの直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されたもとなる。
これにより、この場合も2次巻線N2Aと2次巻線N2Bのそれぞれの出力に基づいて倍電流整流動作を行って平滑コンデンサCoに整流電流を充電することができる。
この図5(b)に示す構成とした場合にも、先の図1の構成とした場合と同様の効果を得ることができる。
次に示す図6も、図1に示した電源回路の2次側の構成の変形例である。なお、図6においても、1次側の構成は図1に示したものと同様となるので図示による説明は省略する。
この図6は、図1に示した2次側の回路構成から2次側直列共振コンデンサC2を削除したものである。なお、図6の回路構成の説明は、2次側直列共振コンデンサC2が設けられていないこと以外は図1と同様となるので省略する。
また、図6の電源回路は、図1と同様に各部の定数を先に述べたものに設定することにより、絶縁コンバータトランスPITの1次側と2次側との総合的な結合係数について、0.8から0.7という値を設定するものとしている。
このことで、図6の回路では、AC100V系とAC200V系の双方の入力に対応して動作するワイドレンジ対応を実現することができる。
次に、図7には、第2の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示す。
なお、図7において、既に先の図1にて説明した部分と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
図7における第2の実施の形態のスイッチング電源回路は、先の図1の回路と比較すると、その2次側の構成は、各半周期の電流の流れる経路が、インダクタ素子Loに電流が流れた後で整流ダイオードDoに流れる順番であったが、図7の回路ではその順番が逆になり、各半周期の電流が整流ダイオードDoに電流が流れた後でインダクタ素子Loに流れる接続形態となっている。
先ず、この場合も2次巻線N2に対しては直列に2次側直列共振コンデンサC2が接続されている。この2次側直列共振コンデンサC2は、この場合も、2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)に対して接続されている。
そしてこの場合は、上記2次側直列共振コンデンサC2に対しては整流ダイオードDo1のアノードが接続されている。上記整流ダイオードDo1のカソードは整流ダイオードDo2のカソードと接続され、上記整流ダイオードDo2のアノードは2次巻線N2のもう一方の端部(巻始め端部)と接続されている。また、上記整流ダイオードDo1のカソードと上記整流ダイオードDo2のカソードの接続点には、平滑コンデンサCoの正極端子が接続されている。
さらに、上記2次側直列共振コンデンサC2と上記整流ダイオードDo1のアノードとの接続点にはパワーチョークコイルPCCが接続されている。この場合も、上記パワーチョークコイルPCCはセンタータップされ、巻線部Lo1と巻線部Lo2に分かれている。上記パワーチョークコイルPCCの構造は図1と同様のもので、図7のパワーチョークコイルPCCでもギャップG=0.25mmを形成し、それによって結合係数kpは、kp=0.98を得ている。
このパワーチョークコイルPCCにおいて上記巻線部Lo1のセンタータップされていない端部は上記2次側直列共振コンデンサC2と上記整流ダイオードDo1のアノードとの接続点に接続されている。また、パワーチョークコイルPCCのセンタータップ出力は平滑コンデンサCoの負極端子と接続され、その接続点には2次側アースが接地されている。さらに、上記巻線部Lo2のセンタータップされていない端部は上記2次巻線N2のもう一方の端部(巻始め端部)と上記整流ダイオードDo2のアノードとの接続点に接続されている。
このような接続形態となっている2次側回路において、2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に対しては、整流ダイオードDo1と平滑コンデンサCoと巻線部Lo2の直列接続回路が直列に挿入されていることになる。そして、整流ダイオードDo2と平滑コンデンサCoと巻線部Lo1の直列接続回路も、2次巻線N2の一方の端(巻終わり端部)部ともう一方の端部(巻始め端部)との間に対して直列に挿入されている。
ここで、上記構成による2次側回路の整流動作について説明する。先ず、2次巻線N2に生じる交番電圧の一方の極性の半周期には整流ダイオードDo1が導通し、整流電流は[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→巻線部Lo2→2次巻線N2]の経路で流れる。
また、他方の極性の半周期には、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流が[2次巻線N2→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCo→巻線部Lo1→2次側直列共振コンデンサC2→2次巻線N2]の経路で流れる。
上記のような接続形態における整流電流経路によれば、図1の回路と同様に、上記一方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo2を介して流れ、また上記他方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo1を介して流れている。このようにして各半周期で整流電流が流されることで、パワーチョークコイルPCCに対しては、各半周期にエネルギーが蓄積されることになる。
そして、各半周期にパワーチョークコイルPCCにエネルギーが蓄積されることで、上記一方の極性の半周期には、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo1→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo]の経路によっても電流が流れることになる。
同様にして、上記他方の極性の半周期においては、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo2→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCo]の経路によっても電流が流れる。
このように図7の電源回路においても、2次側の整流回路では、各半周期に平滑コンデンサCoに二重に電流が充電される。ゆえに、図7の2次側回路も倍電流整流回路を構成しているといえる。
そして、倍電流整流回路を構成することで、2次側回路の整流電流のレベルを抑制でき、これによって整流ダイオードDoの損失も低減され、整流ダイオードDoの放熱板を無くす事が可能となるのである。
なお、この場合も、上記倍電流整流動作によって得られた2次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷に供給されると共に、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
次に、図8には、図7に示された電源回路の各要部の動作波形図を示す。この図8に示す実験結果を得るにあたり、図7の回路では負荷電力Po=150Wから0W、交流入力電圧VAC=85Vから264Vの仕様に対し、各要部の値を図1の電源回路の値と同様に選定した。
図8に示す波形図においては、交流入力電圧VAC=100V時の実験結果を示し、図8(a)では負荷電力Po=150W(最大負荷電力)時の動作波形を、図8(b)では負荷電力Po=0W(無負荷電力)時の動作波形を示している。
また、図8で示す、電圧V1、電流IQ2、電流I1の波形は、上述した図3の電圧V1、電流IQ2、電流I1の波形とほぼ同じであるので説明は省略する。
図7に示す電流I1が流れるのに応じて、絶縁コンバータトランスPITの2次巻線N2には、電圧V2が励起されるのは図1の回路の場合と同じである。この電圧V2の一方の極性の半周期においては、2次側の整流ダイオードDo1が導通して整流電流が流れ、他方の極性の半周期においては、整流ダイオードDo2が導通して整流電流が流れる。
この交番電圧V2の各半周期に応じて、図7に示した電流I2、電流I3、電流I4、電流I5、電流I6は流れ、その波形図は図8に示したとおりである。
また、図7の電源回路においても、負荷電力Po=0W時には電流I3、電流I5の値は零になっている。
この図8に示した電流I3、電流I5の波形図によれば、図3に示した電流I4、電流I6と同じように、スイッチング周期の各半周期において電流の流れの休止期間ができており、不連続動作モードとなっていることがわかる。
なお、この場合としても、不連続動作モードは、巻線部Lo1、巻線部Lo2の巻数(インダクタンス)を調整することで実現することができる。
ここで、このようにして図7の電源回路においても、整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2に流れる電流が不連続動作モードにより流れるようにしているが、この場合も各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードとしているのは、2次巻線N2に得られる電圧V2に生じるリンギング成分を抑制するためである。
先の図7の説明によれば、第2の実施の形態の電源回路としても、2次側の流整流電流経路に挿入される巻線部Lo1と巻線部Lo2とを磁気結合してパワーチョークコイルPCCが形成されるようにしているが、このように2次側の整流電流経路に挿入された巻線部Lo1と巻線部Lo2とを磁気結合し、さらに上記のようにして各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードとしていることで、第2の実施の形態の電源回路としてもリンギング成分の抑制が図られる。
図7の回路におけるリンギング成分の抑制動作について説明すると、図8に示すように2次巻線N2に生じる交番電圧の一方の極性の半周期においては、巻線部Lo1に流れる電流I4が、整流ダイオードDo1がターンオフした後の不連続期間に、上記整流ダイオードDo1のオン時に流れていた方向とは逆方向に流れていることが確認できる。すなわち、この不連続期間においての電流I4は、巻線部Lo1→巻線部Lo2→2次巻線N2に流れることになる。
また、2次巻線N2に生じる交番電圧の他方の極性の半周期については、巻線部Lo2に流れる電流I6が、整流ダイオードDo2がターンオフした後の不連続期間に、上記整流ダイオードDo2のオン時に流れていた方向とは逆方向に流れていることが確認できる。つまりこの期間の電流I6は、巻線部Lo2→巻線部Lo1→2次巻線N2に流れることになる。
このようにして、整流ダイオードDo1、Do2がターンオフした後の不連続期間において流れる上記電流I4、上記電流I6は、この場合も倍電流整流動作時にパワーチョークコイルPCCに蓄積されたエネルギーが電流として流れでているものである。ゆえに、この場合も各不連続期間においては、パワーチョークコイルPCCのインダクタンスがその分減少するものとなっている。
そして、このように、インダクタンスが減少することで、この場合も図1の回路の場合と同様に、2次巻線N2に得られる電圧V2に生じるリンギング成分を抑制することができる。
このように、リンギング成分が抑制されることで、図7の電源回路においても整流ダイオードDoに印加される電圧レベルが抑えられ、これによって整流ダイオードDoとしては、より低耐圧な部品を選定でき、整流ダイオードDoをより安価、小型化することができる。
なお、図7に示した巻線部Lo1、巻線部Lo2は磁気結合としたことにより、図1に示した巻線部Lo1、巻線部Lo2と同じように各半周期で電流が連続動作モードで流れている。図8に示した、巻線部Lo1、巻線部Lo2に流れる電流I4、電流I6の波形図を見ると、各半周期で電流が休止期間無く流れているのが分かる。
また、図7に示した電源回路としても、図1に示した電源回路と各要部の定数を同じに設定していることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとしては、図1と同様のk=0.85が設定されているが、この場合も先の図7を参照してわかるように2次巻線N2に対しては、それぞれ巻線部Lo1、巻線部Lo2が直列に接続されており、実質的に2次巻線N2のリーケージインダクタンスが巻線部Lo1、Lo2の分増やされている事になる。
つまり、これによって、1次側と2次側との総合的な結合係数としては、上記した絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kの値より低下するようにされている。図7の回路における1次側と2次側との総合的な結合係数の値としては、先に述べた各部の定数の設定により、この場合も0.7から0.8程度の疎結合とされる値を設定するようにされている。このことで、図7の回路としてもワイドレンジ対応が実現されている。
つまり、図7の回路としても、2次側に直列共振回路を設けずに、結合係数を所定以下とすることで、ワイドレンジ対応を実現できるものである。
また、図7の電源回路においても、2次巻線N2に対して直列に2次側直列共振コンデンサC2を接続しており、2次側直列共振回路が形成されている。これにより、図1の場合と同様にして電力変換効率の向上を図ることができる。
さらに、図7に示す回路も、もともと2次側に直列共振回路がなくてもワイドレンジ対応とすることができるので、2次側直列共振コンデンサC2の容量は、図1に示す2次側直列共振コンデンサC2と同様に、相当に小さいものとすることができる。
それによって、図1の回路の場合と同様にコンデンサの大型化や、それに伴うコスト高の問題を解決することができる。
なお、上述のように巻線部Lo1、巻線部Lo2によって総合的な結合係数が低下することで、図7の場合でも、或る所定の結合係数を得るにあって設定すべき絶縁コンバータトランスPITのコアのギャップGのギャップ長を短くすることができる。このことで、図7の回路としても渦電流損失を低減することができ、それによってより高効率とすることができる。
次に、図9には、図7に示した電源回路の特性図を示す。なお、この図9に示す特性図としても、図7に示した電源回路の各要部を上述した定数に設定した場合に得られた実験結果を示している。
図9は、交流入力電圧VAC=100VとVAC=230Vの入力電圧条件の下での負荷変動に対する電力変換効率ηAC→DC、およびスイッチング周波数fsの特性を示している。
この図9における交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時、の電力変換効率ηAC→DCは共に91.5%と93.0%で図1の値と同じである。
また、負荷電力Poの150から0Wの変動に対するスイッチング周波数fsの変化幅Δfsも、交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時、共に図1と同じ値の5.5kHzと22.4kHzになっている。
このようにして、スイッチング周波数fsの変化幅Δfsとしては、同じ条件に対する値が図1の場合と同様であるから、図7の電源回路もワイドレンジ対応とできるのは明らかである。
そして、この図9に示した図7の電源回路における電力変換効率ηAC→DCの特性は、図4に示した図1の電源回路における電力変換効率ηAC→DCの特性と同様であることがわかる。このことから図7の回路としても、図22の背景技術の電源回路と比較して、負荷電力Poの0Wから150Wまでの全範囲の中で、およそ30Wから80W程度の中負荷時の効率が向上するものとなる。
次に、図10には、図7に示した電源回路の2次側の変形例を示す。
先ず、図10(a)の変形例は、先の図5(a)の変形例と同様に、並列接続した2次巻線N2Aと2次巻線N2Bのそれぞれの出力を、整流ダイオードDo1・整流ダイオードDo2・チョークコイルLo1・チョークコイルLo2・平滑コンデンサCoによる共通の倍電流整流平滑回路により整流平滑して2次側直流出力電圧Eoを生成するようにしたものである。
この図10(a)の2次巻線N2A側の回路構成は、図7の2次側回路とほとんど同じ回路構成となっている。但し、2次側直列共振コンデンサC2の位置が、図7の2次側回路には2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)と接続されていたのが、図10(a)では2次巻線N2Aのもう一方の端部(巻始め端部)と接続されている。
また、もう一方の2次巻線N2B側の回路構成としては、まず2次巻線N2Bに対して、直列に2次側直列共振コンデンサC2Bが接続されている。そして、上記2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)は、上記2次巻線N2Aの一方の端部(巻終わり端部)と巻線部Lo1との接続点に対して接続されている。さらに、上記2次巻線N2Bのもう一方の端部(巻始め端部)は、上記2次側直列共振コンデンサC2Bを介して2次側直列共振コンデンサC2Aと巻線部Lo2との接続点に対して接続されている。
このようにして、上記2次巻線N2Aと上記2次巻線N2Bは並列に接続されている。
次に、図10(b)の変形例は、巻線部Lo1、巻線部Lo2、平滑コンデンサCoを共有するように構成したものである。
先ず、この図10(b)の変形例において、2次巻線N2A側の回路構成は、図10(a)の2次巻線N2Aの回路構成と同じである。但し、この場合は後述する2次巻線N2B側の整流ダイオードDoと区別するために、2次巻線N2A側の整流ダイオードDoについては末尾にAを付加している。
また、2次巻線N2B側の回路構成は、2次巻線N2A側の回路構成と同様に、先ず2次巻線N2Bのもう一方の端部(巻始め端部)に、2次側直列共振コンデンサC2Bが接続され、これによって2次巻線N2Bに対しては2次側直列共振コンデンサC2Bが直列に接続されている。そして、2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)には整流ダイオードDo1Bのアノードが接続されている。さらに上記整流ダイオードDo1Bのカソードに対しては整流ダイオードDo2Bのカソードが接続されている。上記整流ダイオードDo2Bのアノードに対しては上記2次側直列共振コンデンサC2Bが接続されている。
このような接続形態により2次巻線N2Bに対しては、上記整流ダイオードDo1Bと上記整流ダイオードDo2Bのカソード同士が接続された直列接続回路が並列に接続されたものとなる。
その上で、上記2次巻線N2Bの一方の端部(巻終わり端部)と整流ダイオードDo1Bのアノードとの接続点は、上記2次巻線N2Aの一方の端部(巻終わり端部)と巻線部Lo1との接続点に対して接続され、上記2次側直列共振コンデンサC2Bと上記整流ダイオードDo2Bのアノードとの接続点が、2次側直列共振コンデンサC2Aと巻線部Lo2との接続点に対して接続されている。
これにより、この場合も上記2次巻線N2Aと上記2次巻線N2Bとが並列に接続される。
さらに、上記整流ダイオードDo1Bと上記整流ダイオードDo2Bのカソード同士の接続点は、上記2次巻線N2Aの整流ダイオードDo1Aと整流ダイオードDo2Aのカソード同士の接続点と平滑コンデンサCoとの接続点に対して接続されている。
この図10(b)に示す構成によれば、2次巻線N2Aに対しては、その一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に、整流ダイオードDo1Aと平滑コンデンサCoと巻線部Lo2の直列接続回路と、整流ダイオードDo2Aと平滑コンデンサCoと巻線部Lo1の直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されたもとなる。
また、2次巻線N2Bに対しては、その一方の端部(巻終わり端部)ともう一方の端部(巻始め端部)との間に整流ダイオードDo1Bと平滑コンデンサCoと巻線部Lo2の直列接続回路と、整流ダイオードDo2Bと平滑コンデンサCoと巻線部Lo1の直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されたもとなる。
これにより、この場合も2次巻線N2Aと2次巻線N2Bのそれぞれの出力に基づいて倍電流整流動作を行って平滑コンデンサCoに整流電流を充電することができる。
図10(a)(b)の回路構成にした場合にも、先の図1の回路構成にした場合と同様の効果を得ることができる。
次に示す図11も、図7に示した電源回路の2次側の構成の変形例である。
この図11の変形例においては、2次側の回路に2次側直列共振コンデンサC2が設けられていないこと以外は、図7の同じなので回路構成の説明は省略する。
また、図11の電源回路は、図7と同様に各部の定数を先に述べたものに設定することにより、絶縁コンバータトランスPITの1次側と2次側との総合的な結合係数について、0.8から0.7という値を設定するものとしている。
このことで、図11の回路では、AC100V系とAC200V系の双方の入力に対応して動作するワイドレンジ対応を実現することができる。
次に、図12には、第3の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示す。
第3の実施の形態は、2次側の整流平滑回路として、先に説明した倍電流整流動作と共に倍圧全波整流動作を行うようにしたものである。
なお、図12において、既に先の図1にて説明した部分と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
先ず、図12において、この場合の2次側回路としては、2次巻線N2がセンタータップされ、2次巻線部N2Aと2次巻線部N2Bの2つの巻線部に分かれている。これら2次巻線部N2Aと上記2次巻線部N2Bの巻数は同数とされる。また、2次巻線N2のセンタータップ出力は2次側アースに接地されている。
上記2次巻線部N2Aに対しては直列に2次側直列共振コンデンサC2Aが接続されている。具体的にこの2次側直列共振コンデンサC2Aは、図示するようにして上記2次巻線部N2Aのセンタータップされてない端部に対して接続されている。
さらに、上記2次側直列共振コンデンサC2Aに対してはパワーチョークコイルPCCが接続されている。この場合もパワーチョークコイルPCCはセンタータップされ、巻線部Lo1と巻線部Lo2に分割されている。このパワーチョークコイルPCCの構造は図1の場合と同様で、ギャップG=0.25mmを形成しそれによって結合係数kpは0.98を得ている。
上記パワーチョークコイルPCCにおいては、上記2次側直列共振コンデンサC2Aが、上記巻線部Lo1のセンタータップされていない端部に対して接続されている。
また、パワーチョークコイルPCCのセンタータップ出力は平滑コンデンサCoの正極端子と接続されている。
また、上記パワーチョークコイルPCCにおいて、上記巻線部Lo2のセンタータップされていない端部は、2次側直列共振コンデンサC2Bに対して接続されている。さらに、この2次側直列共振コンデンサC2Bの巻線部Lo2と接続されない側の端子は、上記2次巻線部N2Bのセンタータップされてない端部に対して接続されている。つまり、これによって上記2次側直列共振コンデンサC2Bは、上記2次巻線部N2Bと直列に接続されている。
ここで、これまでの説明によると、この場合の2次側回路では、2次巻線部N2Aに対して直列に2次側直列共振コンデンサC2Aが接続されているが、このことで2次巻線部N2Aのリーケージインダクタンス(L2A)と2次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスとにより、2次側直列共振回路が形成される。また、2次巻線部N2Bに対しても直列に2次側直列共振コンデンサC2Bが接続されるが、このことで同様に2次巻線部N2Bのリーケージインダクタンス(L2B)と2次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスとにより、2次側直列共振回路が形成される。
このようにして図12の電源回路の2次側においては、2次巻線部N2A側と2次巻線部N2B側との双方に対して直列共振回路が形成され、これによって2次巻線N2がセンタータップにより分割された構成に対応して、2次側の整流動作を共振形とするようにされている。
また、この場合の2次側回路において、上記2次側直列共振コンデンサC2Aと上記巻線部Lo1との接続点に対しては、図示するようにして整流ダイオードDo1のカソードが接続されている。この整流ダイオードDo1のアノードは整流ダイオードDo2のアノードと接続され、整流ダイオードDo2のカソードは上述した2次側直列共振コンデンサC2Bと上記巻線部Lo2の接続点に接続されている。
また、上記整流ダイオードDo1のアノードと上記整流ダイオードDo2のアノードの接続点に対しては、平滑コンデンサCoの負極端子が接続され、これら整流ダイオードDo1のアノードと上記整流ダイオードDo2のアノードと平滑コンデンサCoの負極端子の接続点が、2次巻線N2のセンタータップと2次側アースとの接続点に対して接続され、2次側アースに接地されている。
なお、上記接続形態によれば、この場合も2次側回路においては、2次巻線N2の一方の端部と他方の端部との間に対しては、巻線部Lo1と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo2との直列接続回路が直列に挿入されていることになる。また、同様に巻線部Lo2と平滑コンデンサCoと整流ダイオードDo1の直列接続回路も直列に挿入されていることになる。
ここで、上記接続形態とされる2次側回路の、先ずは倍圧全波整流動作について説明する。
先ず、2次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期において、整流電流は[2次巻線部N2A→整流ダイオードDo1→2次側直列共振コンデンサC2A→2次巻線部N2A]の循環経路により流れる。また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期では、整流電流は[2次巻線部N2B→整流ダイオードDo2→2次側直列共振コンデンサC2B→2次巻線部N2B]の循環経路により流れる。つまりこの場合、2次側直列共振コンデンサC2A、2次側直列共振コンデンサC2Bには、それぞれ対応する半周期において、2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bに励起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる直流電圧がそれぞれ得られるようになっている。
その上で、2次巻線N2に励起される交番電圧の上記した一方の半周期では、整流電流は上記循環経路とは分岐して[2次巻線部N2B→2次側直列共振コンデンサC2B→巻線部Lo2→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo1→2次側直列共振コンデンサC2A→2次巻線部N2A]の経路によっても流れる。
これにより当該半周期には、平滑コンデンサCoに対し、2次巻線部N2Aの交番電圧と、上記のように2次側直列共振コンデンサC2Bに得られた両端電圧が重畳したレベルにより充電が行われる。すなわち、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、2次巻線N2Aに得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られる。
また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期としても、整流電流は上記した循環経路とは分岐して[2次巻線部N2A→2次側直列共振コンデンサC2A→巻線部Lo1→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo2→2次側直列共振コンデンサC2B→2次巻線部N2B]の経路によっても流れ、従ってこの場合も平滑コンデンサCoの両端電圧としては、2次巻線部N2Bの交番電圧と2次側直列共振コンデンサC2Aの充電分とにより、2次巻線部N2Bに得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。
このような整流動作から、この場合の2次側回路においては、平滑コンデンサCoに対し、2次巻線部N2A、N2Bに得られる交番電圧の各半周期に充電を行う動作が得られることになる。そして、その両端電圧としては、上記のようにして2次側巻線に励起される交番電圧の2倍に対応するレベルが得られる。
このことより、図12の2次側回路では倍圧全波整流動作が得られていることが理解できる。
また、上記のような接続形態によれば、図1の回路の場合と同様に、倍電流整流動作も得られる。
すなわち、上記による整流電流経路によれば、上記一方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo2を介して流れ、また上記他方の極性の半周期には整流電流が巻線部Lo1を介して流れていることがわかるが、このことによって、パワーチョークコイルPCCに対しては各半周期にエネルギーが蓄積されることになる。
そして、このように各半周期にパワーチョークコイルPCCにエネルギーが蓄積されることで、この場合も上記一方の極性の半周期には、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo1→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo1]の経路によっても電流が流れることになる。
同様にして、上記他方の極性の半周期においては、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づき、[巻線部Lo2→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDo2]の経路によっても電流が流れる。
このように図12の電源回路においても、2次側回路では、各半周期に平滑コンデンサCoに二重に電流が充電されており、倍電流整流動作が得られていることが理解できる。
このような倍電流整流動作により、この場合も2次側回路の整流電流のレベルを抑制でき、これによって整流ダイオードDoの損失も低減され、整流ダイオードDoの放熱板を無くす事が可能となる。
なお、この場合も、平滑コンデンサCoに得られた2次側直流出力電圧Eoは、図示しない負荷に供給されると共に、制御回路1のための検出電圧としても分岐して入力される。
次に、図13には、図12に示された電源回路の各要部の動作波形図を示す。この図13に示す実験結果を得るにあたり、図12の電源回路としては、負荷電力Po=150Wから0W、交流入力電圧VAC=85Vから264Vの仕様に対し、一次側直列共振コンデンサC1と2次側直列共振コンデンサC2A・C2Bを除く各要部の値を図1の電源回路の値と同様に選定している。
なお、図12の電源回路の場合、2次巻線N2をセンタータップで分割した構成としたことに応じ、上記一次側直列共振コンデンサC1のキャパシタンスとしては0.068μFを選定し、また上記2次側直列共振コンデンサC2A・C2Bのキャパシタンスは共に0.22μFを選定している。
この図13に示す波形図においても、交流入力電圧VAC=100V時の実験結果を示し、図13(a)では負荷電力Po=150W(最大負荷電力)時の動作波形を、図13(b)では負荷電力Po=0W(無負荷電力)時の動作波形を示している。
また、図13で示す、電圧V1、電流IQ2、電流I1の波形は、上述した図3の電圧V1、電流IQ2、電流I1の波形とほぼ同じであるので説明は省略する。
図12に示す電流I1が流れるのに応じて、絶縁コンバータトランスPITの2次側巻線には、電圧V2が励起されるのは図1の回路の場合と同じである。この電圧V2の一方の極性の半周期においては、2次側の整流ダイオードDo2が導通して整流電流が流れ、他方の極性の半周期においては、整流ダイオードDo1が導通して整流電流が流れる。
この交番電圧V2の各半周期に応じて、図12に示した電流I2、電流I3、電流I4、電流I5、電流I6は流れ、その波形図は図13に示したとおりである。
また、図12の電源回路においても、負荷電力Po=0W時には電流I4、電流I6の値は零になっている。
この図13に示した電流I4、電流I6の波形図によれば、整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2に流れる電流は、この場合もスイッチング周期の各半周期において電流の流れの休止期間ができており、不連続動作モードとなっていることがわかる。
ここで、図12の電源回路としても、このように整流ダイオードDo1と整流ダイオードDo2に流れる電流が不連続動作モードで流れるようにし、さらに図12の説明からも理解されるように、整流電流経路に直列に挿入された巻線部Lo1、巻線部Lo2については、この場合も磁気結合している。
上記のようにして各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードとし、巻線部Lo1と巻線部Lo2とを磁気結合することで、この場合も各整流ダイオードDoがターンオフした後の不連続期間に、各巻線部Loに流れる電流I3、電流I5は各整流ダイオードDoがオン時に流れていた方向とは逆の方向に流れる。つまり、これによってそれぞれの不連続期間には、倍電流整流動作時にパワーチョークコイルPCCに蓄積されたエネルギーが電流として流れでることになり、パワーチョークコイルPCCのインダクタンスをその分減少させることができる。この結果、この場合も図1と同様にリンギング成分を抑制することができる。
このように、リンギング成分が抑制されることで、図12の電源回路においても整流ダイオードDoに印加される電圧レベルが抑えられ、これによって整流ダイオードDoとしては、より低耐圧な部品を選定でき、整流ダイオードDoをより安価、小型化することができる。
なお、この場合としても、不連続動作モードは、巻線部Lo1、巻線部Lo2の巻数(インダクタンス)を調整することで実現することができる。
また、図12に示した巻線部Lo1、巻線部Lo2は磁気結合としたことにより、図1に示した巻線部Lo1、巻線部Lo2と同じように各半周期で電流が連続動作モードで流れている。図13に示した、巻線部Lo1、巻線部Lo2に流れる電流I4、電流I6の波形図を見ると、各半周期で電流が休止期間無く流れているのが分かる。
ここで、図12に示した電源回路としても、各要部の定数が上述した値に設定されることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとしては、図1の場合と同様のk=0.85が設定されているが、この場合も先の図12を参照してわかるように、2次巻線N2に対してはそれぞれ巻線部Lo1、巻線部Lo2が直列に接続された状態となっており、実質的に2次巻線N2のリーケージインダクタンスが巻線部Lo1、Lo2の分増やされている事になる。
つまり、この場合も、1次側と2次側との総合的な結合係数としては、上記した絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kの値より低下するようにされている。図12の回路における1次側と2次側との総合的な結合係数の値としては、先に述べた各部の定数の設定により、この場合も0.7から0.8程度の疎結合とされる値を設定するようにされている。このことで、図12の回路としてもワイドレンジ対応が実現されている。
つまり、図12の回路としても2次側に直列共振回路を設けずに、結合係数を所定以下とすることで、ワイドレンジ対応を実現できるものである。
また、図12の電源回路においても、2次側には直列共振回路が形成されているが、これにより、図1の場合と同様にして電力変換効率の向上を図ることができる。
さらに、図12に示す回路も、上述のようにして2次側に直列共振回路がなくてもワイドレンジ対応とすることができるので、2次側直列共振コンデンサC2Aと2次側直列共振コンデンサC2Bの容量は、図1に示す2次側直列共振コンデンサC2と同様に、相当に小さいものとすることができる。
それによって、図1の回路の場合と同様にコンデンサの大型化や、それに伴うコスト高の問題を解決することができる。
なお、上述のように巻線部Lo1、巻線部Lo2によって総合的な結合係数が低下することで、図12の場合でも、或る所定の結合係数を得るにあって設定すべき絶縁コンバータトランスPITのコアのギャップ長を短くすることができる。このことで、図12の回路としても渦電流損失を低減することができ、それによってより高効率とすることができる。
次に、図14には、図12に示した電源回路の特性図を示す。なお、この図14に示す特性図としても、図12に示した電源回路の各要部を上述した定数に設定した場合に得られた実験結果を示している。
図14は、交流入力電圧VAC=100VとVAC=230Vの入力電圧条件の下での負荷変動に対する電力変換効率ηAC→DC、およびスイッチング周波数fsの特性を示している。
この図14における交流入力電圧VAC=100V時、VAC=230V時の電力変換効率ηAC→DCは91.5%、93.0%で、図1の回路の場合とほぼ同じである。
また、負荷電力Poの150から0Wの変動に対するスイッチング周波数fsは、交流入力電圧VAC=100V時では65.0kHzから67.2kHzであり、また交流入力電圧VAC=230V時では100.4kHzから110.8kHzとなっている。これらの結果より、この場合の交流入力電圧VAC=100V・負荷電力Po=150W時から交流入力電圧VAC=230V・負荷電力Po=0Wまでの範囲に対するスイッチング周波数fsの変化幅Δfsはおよそ45.8kHzになっている。
このようにして、スイッチング周波数fsの変化幅Δfsとしては、同じ条件に対する値が図1の場合と比較してさらに狭いものとなっており、このことから図12の電源回路としてもワイドレンジ対応とできるのは明らかである。
また、この図14に示した図12の電源回路における電力変換効率ηAC→DCの特性は、図4に示した図1の電源回路における電力変換効率ηAC→DCの特性と同様であることがわかる。つまり、図12の回路としても、図22の背景技術の電源回路と比較しておよそ30Wから80W程度の中負荷時の効率が向上することがわかる。
次に、図15には、図12に示した電源回路の2次側の変形例を示す。
この図15に示す変形例は、先の図12では巻線部Lo→平滑コンデンサCo→整流ダイオードDoの順に整流電流が流れるようにしていたものを、整流ダイオードDo→平滑コンデンサCo→巻線部Loの順に整流電流が流れるように接続形態を変更したものである。
この場合、図示するようにして2次巻線部N2Aに対して直列に接続された2次側直列共振コンデンサC2Aに対しては、整流ダイオードDo1のアノードが接続されている。そして、この整流ダイオードDo1のカソードは整流ダイオードDo2のカソードと接続されており、その接続点に対しては平滑コンデンサCoの正極端子が接続されている。また、整流ダイオードDo2のアノードは、2次巻線部N2Bに対して直列接続された2次側直列共振コンデンサC2Bと接続される。
さらに、上記した2次側直列共振コンデンサC2Aと整流ダイオードDo1のアノードとの接続点に対しては、パワーチョークコイルPCCが接続されている。このパワーチョークコイルPCCとしてもセンタータップされ、図示するように巻線部Lo1と巻線部Lo2に分割されており、これら各巻線部Loのうち巻線部Lo1のセンタータップされていない端部が上記2次側直列共振コンデンサC2Aと整流ダイオードDo1のアノードとの接続点に対して接続されている。
また、もう一方の巻線部Lo2のセンタータップされてない端部は、上述した整流ダイオードDo2のアノードと2次側直列共振コンデンサC2Bの接続点に対して接続され、さらにパワーチョークコイルPCCのセンタータップは、図示するようにして2次巻線N2のセンタータップと2次側アースとの接続点に対して接続されている。
なお、この場合もパワーチョークコイルPCCの構造は図12の場合と同様で、またギャップ長=0.25mmの設定により結合係数kpは0.98を得ている。
ここで、上記接続形態による2次側回路においても、先の図12の回路の場合と同様に、倍圧全波整流動作、及び倍電流整流動作の双方が得られる。
先ず、2次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期では、整流電流は[2次巻線部N2A→2次側直列共振コンデンサC2A→巻線部Lo1→2次巻線部N2A]の循環経路により流れる。また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期では、整流電流は[2次巻線部N2B→2次側直列共振コンデンサC2B→巻線部Lo2→2次巻線部N2B]の循環経路により流れる。
その上で、上記一方の半周期では、この場合も整流電流は上記循環経路とは分岐して[2次巻線部N2A→2次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→2次巻線部N2A]の経路によっても流れる。
また、上記他方の半周期としても、整流電流は分岐して[2次巻線部N2B→2次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCo→2次巻線部N2B]の経路によっても流れる。
このような動作から、この場合も平滑コンデンサCoに対する充電動作としては、各半周期において、上記循環経路により2次側直列共振コンデンサC2A、2次側直列共振コンデンサC2Bのそれぞれに得られた電圧の重畳分を受けて行われるもとなっており、これによって図15の回路の場合においても、2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bに得られる交番電圧のレベルの2倍に対応したレベルの2次側直流出力電圧Eoを生成する倍圧全波整流動作が得られる。
また、上記のような整流電流経路によれば、この場合も各半周期にはパワーチョークコイルPCCに対してエネルギーが蓄積されるものとなっていることがわかる。そして、上記一方の半周期には、上記他方の半周期にパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が整流ダイオードDo1を介して平滑コンデンサCoに流れ、また上記他方の半周期には、上記一方の半周期にパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が整流ダイオードDo2を介して平滑コンデンサCoに流れる。これによって平滑コンデンサCoには、このようなパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分も加えて二重に電流が充電され、倍電流整流動作が得られる。
また、この図15に示す2次側の構成が採られる場合も、図12の回路の場合と同様にリンギング成分の抑制動作が得られる。
つまり、この図15の2次側回路の構成とした場合も、巻線部Lo1と巻線部Lo2との巻数の調整によって、各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードにより流すようにするが、これによって上記一方の半周期における整流ダイオードDo1がターンオフした後の不連続期間には、当該一方の半周期にて巻線部Lo1に整流電流が流れたことでパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分が、この巻線部Lo1と磁気結合された巻線部Lo2を介して流れでることになる。また、上記他方の半周期としても、整流ダイオードDo2がターンオフした後の不連続期間には、当該他方の半周期にて巻線部Lo2に整流電流が流れたことでパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分が、巻線部Lo2と磁気結合された巻線部Lo1を介して流れでることになる。
このようにして図15に示す構成とした場合も、各半周期の不連続期間にてパワーチョークコイルPCCのインダクタンスを低下するものとなっており、これによってリンギング成分の抑制が図られる。
次に示す図16も、図12に示した電源回路の2次側の構成の変形例である。
この図16において、図16(a)、図16(b)の電源回路は共に、4倍圧整流動作を行うように構成したものである。
先ず、図16(a)の2次側の回路構成としては、2次巻線N2はセンタータップせずに、その一方の端部(巻終わり端部)側において2次側直列共振コンデンサC2Aを直列に接続している。そして、2次側直列共振コンデンサC2Aに対しては、整流ダイオードDo1のアノードを接続し、この整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoAの正極端子と接続している。この平滑コンデンサCoAの負極端子は、2次巻線N2のもう一方の端部(巻始め端部)に対して接続している。
また、上記平滑コンデンサCoAの負極端子には、さらに平滑コンデンサCoBの正極端子を接続している。そして、この平滑コンデンサCoBの負極端子を2次側アースに接地すると共に、これら平滑コンデンサCoBの負極端子と2次側アースとの接続点を、整流ダイオードDo2のアノードに接続している。
さらに、この整流ダイオードDo2のカソードを2次側直列共振コンデンサC2Bの一方の端子と接続し、2次側直列共振コンデンサC2Bの他方の端子を上述した2次巻線N2の一方の端部と2次側直列共振コンデンサC2Aとの接続点に接続している。このような接続形態によれば、上記2次側直列共振コンデンサC2Bとしても、2次巻線N2に対しては直列の関係で接続される。
また、上述した平滑コンデンサCoの負極端子と2次巻線N2のもう一方の端部との接続点に対しては、パワーチョークコイルPCCのセンタータップを接続している。
ここでは図示の都合上、パワーチョークコイルPCCの巻線部Lo1と巻線部Lo2とを離間して示しているが、この場合もパワーチョークコイルPCCは、先の図2にて示したものと同様の構造を有しており、巻線部Lo1と巻線部Lo2はセンタータップにより等分された巻線部であって、磁気結合された関係にある。
図示するようにして、パワーチョークコイルPCCにおける上記巻線部Lo1のセンタータップされていない端部は、上述した2次側直列共振コンデンサC2Aと整流ダイオードDo1のアノードとの接続点に対して接続している。
さらに、パワーチョークコイルPCCにおける上記巻線部Lo2のセンタータップされていない端部は、2次側直列共振コンデンサC2Bと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続している。
この図16(a)に示す2次側の回路の構成によれば、先ず、2次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期において、整流電流は[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2B→巻線部Lo2→2次巻線N2]の循環経路により流れる。また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期では、整流電流は[2次巻線N2→巻線部Lo1→2次側直列共振コンデンサC2A→2次巻線N2]の循環経路により流れる。つまりこの場合にも、2次側直列共振コンデンサC2A、C2Bには、それぞれ対応する半周期において2次巻線N2に励起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる直流電圧がそれぞれ得られるようになっている。
その上で、上記した一方の半周期では、整流電流は上記循環経路とは分岐して[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCoA→2次巻線N2]の経路によっても流れる。
これにより当該半周期には、平滑コンデンサCoAに対し、2次巻線N2の交番電圧に、上記のように2次側直列共振コンデンサC2Aに得られた両端電圧が重畳したレベルにより充電が行われる。すなわち、平滑コンデンサCoAの両端電圧としては、2次巻線N2に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られる。
また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期としても、整流電流は上記した循環経路から分岐して[2次巻線N2→平滑コンデンサCoB→整流ダイオードDo2→2次側直列共振コンデンサC2B→2次巻線N2]の経路によっても流れ、従ってこの場合も平滑コンデンサCoBの両端電圧としては、2次巻線N2の交番電圧と2次側直列共振コンデンサC2Bの充電分とにより、2次巻線N2に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。
このようにして、平滑コンデンサCoAと平滑コンデンサCoBの各両端には、それぞれ2次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる直流電圧が生成される。そして、これによって平滑コンデンサCoAと平滑コンデンサCoBと直列接続回路の両端電圧として得られる2次側直流出力電圧Eoとしては、2次巻線N2に励起される交番電圧レベルの4倍に対応したレベルが得られることになる。
このように2次巻線N2に得られる交番電圧のレベルの4倍に対応したレベルの2次側直流出力電圧Eoを生成できることで、例えば同じレベルの2次側直流出力電圧Eoを生成するにあたって、2次巻線N2の巻数はこれまでに説明した図1、図7、図12の回路の場合と比較して少なくすることができる(例えば1/4)。これによって絶縁コンバータトランスPITの小型化が図られる。
また、この図16(a)に示す変形例の構成によっても、倍電流整流動作が得られる。つまり、上述した整流電流経路によれば、この場合も各半周期にはそれぞれ巻線部Lo2、巻線部Lo1に整流電流が流れることで、パワーチョークコイルPCCにエネルギーが蓄積されることになる。そして、上記した一方の半周期には、上記した他方の半周期にてパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が平滑コンデンサCoAに充電され、また、上記他方の半周期には、上記一方の半周期にパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が平滑コンデンサCoBに充電され、これによって平滑コンデンサCoA、平滑コンデンサCoBに対しては、それぞれ対応する半周期にて上記パワーチョークコイルPCCの蓄積成分も含めて二重に充電が行われている。このことから図16(a)の変形例によっても倍電流整流動作が得られる。
さらに、この図16(a)の変形例としても、リンギング成分の抑制動作が得られる。すなわち、この場合においても、巻線部Lo1と巻線部Lo2の巻数の調整によって各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードにより流すものとするが、このような不連続動作モード化と、この場合も各半周期の整流電流経路に挿入された巻線部Lo1と巻線部Lo2を磁気結合していることとによって、パワーチョークコイルPCCに蓄積された成分を電流として放出させることができる。
このことで、この場合も各半周期の不連続期間にはパワーチョークコイルPCCのインダクタンスは減少するものとなり、この結果リンギング成分の抑制を図ることができる。
続いて、次の図16(b)の変形例について説明する。
この図16(b)の2次側回路の構成としては、先ず、2次巻線N2の一方の端部(巻終わり端部)に対し、2次側直列共振コンデンサC2Aと2次側直列共振コンデンサC2Bとをそれぞれ図16(a)の場合と同様に接続している。
そして、上記2次側直列共振コンデンサC2Aの、上記2次巻線N2と接続されない側の端子に対しては、図示するようにしてパワーチョークコイルPCCの巻線部Lo1の一端を接続し、この巻線部Lo1の他端を平滑コンデンサCoAの正極端子に接続している。この場合も平滑コンデンサCoAの負極端子は、2次巻線N2の他方の端部(巻始め端部)に対して接続している。
ここで、この図16(b)の変形例で用いるパワーチョークコイルPCCとしては、先の図2に示した構造によるものではなく、絶縁コンバータトランスPITと同様に1次側と2次側との巻装領域が分けられたボビンBをEE型コアに取り付け、それらのうち一方の巻装領域に上記巻線部Lo1を、また他方の巻装領域に巻線部Lo2を巻装して構成される。
このような構造によるパワーチョークコイルPCCとしても、巻線部Lo1と巻線部Lo2とが磁気結合されることに変わりはない。
また、この場合も上記平滑コンデンサCoAの負極端子と2次巻線N2の上記他方の端部との接続点に対しては、図示するように平滑コンデンサCoBの正極端子を接続しており、この平滑コンデンサCoBの負極端子は2次側アースに接地している。
さらに、平滑コンデンサCoBの負極端子と2次側アースとの接続点には、上記パワーチョークコイルPCCの巻線部Lo2の一端を接続し、この巻線部Lo2の他端を、2次側直列共振コンデンサC2Bにおける2次巻線N2と接続されない側の端子に対して接続している。
その上で、上記巻線部Lo2と上記2次側直列共振コンデンサC2Bとの接続点に対しては、整流ダイオードDo2のアノードを接続しており、この整流ダイオードDo2のカソードを上述した平滑コンデンサCoAの負極端子と2次巻線N2の他方の端部との接続点に対して接続している。
さらに、これら平滑コンデンサCoAの負極端子と2次巻線N2の他方の端部と整流ダイオードDo2のカソードとの接続点には、整流ダイオードDo1のアノードを接続し、この整流ダイオードDo1のカソードを上述した2次側直列共振コンデンサC2Aと巻線部Lo1との接続点に対して接続している。
このような2次側回路の構成によっても、4倍圧整流動作が得られる。
つまり、2次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期においては、整流電流が[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo2→2次巻線N2]の循環経路により流れる。また、2次巻線N2に励起される交番電圧の他方の半周期では、整流電流は[2次巻線N2→整流ダイオードDo1→2次側直列共振コンデンサC2A→2次巻線部N2]の循環経路により流れる。つまりこの場合にも、2次側直列共振コンデンサC2A、C2Bには、それぞれ対応する半周期において2次巻線N2に励起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルによる直流電圧がそれぞれ得られる。
その上で、この場合も上記一方の半周期に整流電流は上記循環経路とは分岐して[2次巻線N2→2次側直列共振コンデンサC2A→巻線部Lo1→平滑コンデンサCoA→2次巻線N2]の経路によっても流れる。つまり、これにより当該半周期には、平滑コンデンサCoAに対し、2次巻線N2の交番電圧と、上記のように2次側直列共振コンデンサC2Aに得られた両端電圧が重畳したレベルにより充電が行われ、平滑コンデンサCoAの両端電圧としては2次巻線N2に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られる。
また、同様に上記他方の半周期においても整流電流は上記した循環経路から分岐して[2次巻線N2→平滑コンデンサCoB→巻線部Lo2→2次側直列共振コンデンサC2B→2次巻線N2]の経路によっても流れ、従ってこの場合も平滑コンデンサCoBの両端電圧としては、2次巻線N2の交番電圧と2次側直列共振コンデンサC2Bの充電分とにより、2次巻線N2に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。
このようにして、図16(b)の変形例においても、平滑コンデンサCoAと平滑コンデンサCoBとの直列接続回路の両端には2次巻線N2に励起される交番電圧レベルの4倍に対応したレベルによる2次側直流出力電圧Eoが得られるものとなり、4倍圧整流動作が行われていることがわかる。
また、この図16(b)に示す変形例の構成によっても、倍電流整流動作が得られる。つまり、上述した整流電流経路によれば、この場合も各半周期にはそれぞれ巻線部Lo1、巻線部Lo2に整流電流が流れることで、パワーチョークコイルPCCにエネルギーが蓄積されることになる。そして、上記した一方の半周期には、上記した他方の半周期にてパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が巻線部Lo1を介して平滑コンデンサCoAに充電され、また、上記他方の半周期には、上記一方の半周期にパワーチョークコイルPCCに蓄積された成分に基づく電流が巻線部Lo2を介して平滑コンデンサCoBに充電され、これによって平滑コンデンサCoA、平滑コンデンサCoBに対しては、それぞれ対応する半周期にて上記パワーチョークコイルPCCの蓄積成分も含めて二重に充電が行われている。このことから図16(b)の変形例によっても倍電流整流動作が得られる。
なお、この図16(b)の変形例としても、巻線部Lo1と巻線部Lo2の巻数の調整によって各整流ダイオードDoに流れる電流を不連続動作モードにより流すものとしている。さらに、上述したパワーチョークコイルPCCの構造説明からも理解されるように、この場合も各半周期の整流電流経路に挿入された巻線部Lo1と巻線部Lo2とについては磁気結合している。このような不連続動作モード化と巻線部Lo1と巻線部Lo2の磁気結合とによって、図16(b)の変形例としてもリンギング成分の抑制動作が得られる。
続いて、図17の変形例は、2次側に直列共振回路を形成しないものとした場合に、先の図12の場合と同様に倍圧全波整流動作を行うとしたときの構成例である。
この図17の2次側回路の構成と、先の図12の2次側回路の構成を比較してわかるように、図17の変形例としては、先の図12の2次側回路から2次側直列共振コンデンサC2Aと2次側直列共振コンデンサC2Bとを省略し、代わりに平滑コンデンサCoAを追加したものとなっている。具体的にこの平滑コンデンサCoAとしては、その正極端子を2次巻線N2のセンタータップに接続し、負極端子を整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のアノードとの接続点に接続している。
なおこの場合、図12の回路における平滑コンデンサCoに相当する平滑コンデンサについては、図のように平滑コンデンサCoBとして区別している。
この図17の変形例の構成によれば、2次巻線N2に生じる交番電圧の一方の半周期には[2次巻線部N2A→平滑コンデンサCoA→整流ダイオードDo1→2次巻線部N2A]の循環経路により、また他方の半周期には[2次巻線部N2B→平滑コンデンサCoA→整流ダイオードDo2→2次巻線部N2B]の循環経路が形成され、これによって平滑コンデンサCoAには、各半周期に2次巻線部N2A、2次巻線部N2Bに得られる交番電圧の等倍に対応するレベルの直流電圧が生成される。
つまり、図17の変形例では、図12の回路が2次側直列共振コンデンサC2A、2次側直列共振コンデンサC2Bにそれぞれ生成された直流電圧の重畳分を受けて平滑コンデンサCoに各2次巻線部の交番電圧の2倍に対応したレベルの2次側直流出力電圧Eoを生成するようにしていたものを、各半周期に共通の平滑コンデンサCoAに得られる直流電圧の重畳分を受けて平滑コンデンサCoBに各2次巻線部の交番電圧の2倍に対応したレベルの2次側直流出力電圧Eoを生成するようにしたものである。
なお、この図17の変形例としても倍電流整流動作が得られるが、その動作自体は先の図12にて説明したものと同様となるのでここでの改めての説明は省略する。
また、この図17の変形例としても各整流ダイオードDoに流れる電流が不連続動作モードにより流れるようにしており、また図12の場合と同様に、この場合も巻線部Lo1と巻線部Lo2とは磁気結合されている。これらのことから図17の変形例においてもリンギング成分の抑制が図られる。なお、このようなリンギング成分抑制の動作としても図12の場合と同様となるので改めての説明は省略する。
以上、各実施の形態のスイッチング電源回路について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した各実施の形態に限定されるべきものではない。
例えば、絶縁コンバータトランスPITについては、コア形式などをはじめとして、その構造については適宜変更されて構わない。
また、実施の形態で例示したスイッチングコンバータは、他励式による電流共振形コンバータをその基礎としているが、例えば自励式による電流共振形コンバータを備えて構成することも可能である。また、スイッチングコンバータにおいて選定されるスイッチング素子としても、例えばバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などをはじめとしてMOS−FET以外の素子が採用されて構わない。
また、先に説明した各部品素子の定数なども、実際の条件等に応じて適宜変更されて構わないものである。
また、重負荷対応の構成として、商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)を入力して整流平滑電圧Eiを生成するための整流電流回路系を、交流入力電圧VACの2倍に対応するレベルの整流平滑電圧Eiを生成する倍電圧整流回路により構成することもできる。ただし、このようにして整流平滑電圧Eiを生成する整流平滑回路系を倍電圧整流回路とする構成は、AC100V系のみの単レンジ対応としての構成となる。
本発明の第1の実施の形態の電源回路の構成を示す回路図である。 実施の形態の電源回路(図16(a)を除く)が備えるパワーチョークコイル(第3のインダクタ素子)の構造図である。 第1の実施の形態の電源回路におけるAC100V時での要部の動作波形を示す波形図である。 第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数、AC→DC電力変換効率の特性を示す特性図である。 第1の実施の形態の電源回路の2次側の変形例の構成を示す回路図である。 第1の実施の形態の電源回路の2次側の他の変形例の構成を示す回路図である。 第2の実施の形態の電源回路の構成を示す回路図である。 第2の実施の形態の電源回路におけるAC100V時での要部の動作波形を示す波形図である。 第2の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数、AC→DC電力変換効率の特性を示す特性図である。 第2の実施の形態の電源回路の2次側の変形例の構成を示す回路図である。 第2の実施の形態の電源回路の2次側の他の変形例の構成を示す回路図である。 第3の実施の形態の電源回路の構成を示す回路図である。 第3の実施の形態の電源回路におけるAC100V時での要部の動作波形を示す波形図である。 第3の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数、AC→DC電力変換効率の特性を示す特性図である。 第3の実施の形態の電源回路の2次側の変形例の構成を示す回路図である。 第3の実施の形態の電源回路の2次側の他の変形例の構成を示す回路図である。 第3の実施の形態の電源回路の2次側のさらに他の変形例の構成を示す回路図である。 背景技術のスイッチング電源回路の構成を示す図である。 コンバータトランスの構造を示す断面図である。 図18に示すスイッチング電源回路の各部の動作波形を示す図である。 図18に示すスイッチング電源回路の負荷変動に対するスイッチング周波数、電力変換効率を示す図である。 背景技術の他のスイッチング電源回路の構成を示す図である。 図22に示すスイッチング電源回路の各部の動作波形を示す図である。 図22に示すスイッチング電源回路を電磁結合形共振回路としてみた等価回路図である。 図22に示すスイッチング電源回路についての定電圧制御特性を示す図である。 図22に示す電源回路の定電圧制御動作として、交流入力電圧条件及び負荷変動に応じたスイッチング周波数制御範囲(必要制御範囲)を示す図である。 図18に示すスイッチング電源回路の定電圧制御特性を示す特性図である。
符号の説明
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、AC 商用交流電源、Ci 平滑コンデンサ、Q1、Q2 スイッチング素子、C1 1次側直列共振コンデンサ、Cp 1次側部分電圧共振コンデンサ、PIT 絶縁コンバータトランス、N1 1次巻線、N2 2次巻線、N2A、N2B 2次巻線部、L1、L2 リーケージインダクタンス、C2 2次側直列共振コンデンサ、Do1、Do2、Do1A、Do2A、Do1B、Do2B 整流ダイオード、Co、CoA、CoB 平滑コンデンサ、PCC パワーチョークコイル、Lo1、Lo2 巻線部

Claims (7)

  1. 直流入力電圧を入力してスイッチングを行うスイッチング素子を備えて形成したスイッチング手段と、
    上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
    上記スイッチング手段のスイッチング動作により得られるスイッチング出力が供給される1次巻線と、この1次巻線により交番電圧が誘起される2次巻線とが巻装されて形成される絶縁コンバータトランスと、
    上記絶縁コンバータトランスの1次巻線の漏洩インダクタンス成分と、上記1次巻線に直列接続された1次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成されて第1の共振周波数が設定され、上記スイッチング手段の動作を電流共振形とする1次側直列共振回路と、
    少なくとも第1の整流ダイオードと第2の整流ダイオード、及び第1のインダクタ素子と第2のインダクタ素子とが磁気結合された第3のインダクタ素子、及び2次側平滑コンデンサを備えて形成されると共に、上記2次巻線に生じる交番電圧の各半周期の動作として、一方の半周期には、上記第1の整流ダイオードが導通することで流される整流電流と、他方の半周期にて上記第1のインダクタ素子に整流電流が流れたことに応じ上記第3のインダクタ素子に蓄積されたエネルギーに基づく電流とを上記2次側平滑コンデンサに充電し、上記他方の半周期には、上記第2の整流ダイオードが導通することで流される整流電流と、上記一方の半周期にて上記第2のインダクタ素子に整流電流が流れたことに応じ上記第3のインダクタ素子に蓄積されたエネルギーに基づく電流とを充電する倍電流整流動作を行って、上記2次側平滑コンデンサに2次側直流出力電圧を得る2次側直流出力電圧生成手段と、
    上記2次側直流出力電圧のレベルに応じて上記スイッチング駆動手段を制御して、上記スイッチング手段のスイッチング周波数を可変することで、上記2次側直流出力電圧について定電圧制御を行う定電圧制御手段と、を備えると共に、
    上記第1のインダクタ素子と上記第2のインダクタ素子のインダクタンスは、上記2次巻線に生じる交番電圧の各半周期において上記第1及び第2の整流ダイオードに流れる整流電流に休止期間ができるように設定されていると共に、
    上記絶縁コンバータトランスは、1次側と2次側との結合係数が疎結合とされる所定以下の値に設定されている、
    ことを特徴とするスイッチング電源回路。
  2. 上記2次側直流出力電圧生成手段は、
    上記2次巻線の一端と他端との間に対して、それぞれ上記第1のインダクタ素子と上記2次側平滑コンデンサと上記第1の整流ダイオードとによる直列接続回路と、上記第2のインダクタ素子と上記2次側平滑コンデンサと上記第2の整流ダイオードとによる直列接続回路とが直列に挿入されるようにして形成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  3. 上記2次側直流出力電圧生成手段は、
    上記2次巻線の一端と他端との間に対して、上記第1のインダクタ素子、上記2次側平滑コンデンサ、上記第1の整流ダイオードの順で整流電流が流されるようにされたこれら第1のインダクタ素子と2次側平滑コンデンサと第1の整流ダイオードとによる直列接続回路と、上記第2のインダクタ素子、上記2次側平滑コンデンサ、上記第2の整流ダイオードの順に整流電流が流されるようにされたこれら第2のインダクタ素子と2次側平滑コンデンサと第2の整流ダイオードとによる直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されて形成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  4. 上記2次側直流出力電圧生成手段は、
    上記2次巻線の一端と他端との間に対して、上記第1の整流ダイオード、上記2次側平滑コンデンサ、上記第1のインダクタ素子の順で整流電流が流されるようにされたこれら第1の整流ダイオードと2次側平滑コンデンサと第1のインダクタ素子とによる直列接続回路と、上記第2の整流ダイオード、上記2次側平滑コンデンサ、上記第2のインダクタ素子の順に整流電流が流されるようにされたこれら第2の整流ダイオードと2次側平滑コンデンサと第2のインダクタ素子とによる直列接続回路とがそれぞれ直列に挿入されて形成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  5. 上記2次巻線に対して直列に2次側直列共振コンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  6. 上記2次巻線はセンタータップされて第1の巻線部と第2の巻線部とに分割されていると共に、上記第1の巻線部に対しては第1の2次側直列共振コンデンサが、上記第2の巻線部には第2の2次側直列共振コンデンサがそれぞれ直列に接続されており、
    上記2次側直流出力電圧生成手段は、
    上記2次巻線に励起される交番電圧の一方の半周期には、上記第1の巻線部に得られる交番電圧と他方の半周期にて上記第2の2次側直列共振コンデンサに得られた直流電圧とに基づき上記2次側平滑コンデンサに直流電圧を生成すると共に、上記他方の半周期には上記第2の巻線部に得られる交番電圧と上記一方の半周期にて上記第1の2次側直列共振コンデンサに得られた直流電圧とに基づき上記2次側平滑コンデンサに直流電圧を生成することで、各半周期に上記巻線部に得られる交番電圧レベルの2倍に対応するレベルによる上記2次側直流出力電圧を生成する、倍圧全波整流動作を行うように構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
  7. 上記2次側直流出力電圧生成手段は、
    上記2次巻線に励起される交番電圧レベルの4倍に対応するレベルによる上記2次側直流出力電圧を生成する4倍圧整流動作を行うように構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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