JP2006304391A - スイッチング電源回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】全対応負荷領域でZVSとなる、シングルエンドの共振形コンバータの実用化を図る。
【解決手段】一次側スイッチングコンバータをE級共振形として構成し、このE級共振形コンバータの一次側直列共振回路のチョークコイルを絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とするスイッチング電源回路を構成する。絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数と、チョークコイルL10と一次巻線N1との等価的並列接続により、一次側の二次側との総合結合係数については0.65程度を設定する。また、二次側には二次側直列共振回路を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
図12は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Qを備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のソース−ドレイン間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、フェライト材によるE型コアを組み合わせたEE型コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE型コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE型コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(L1)の設定要素となる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧V2の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。つまり、制御すべきスイッチング動作を得るためのドライブ信号を生成して出力する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
図13及び図14は、上記図12に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図12の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=230kHz、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、共振周波数fo1,fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
図13は、図12に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図13(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、ID2が示されている。図13(b)には、中間の負荷電力Po=120W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2が示されている。図13(c)には最小負荷電力Pomin=0W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。
また、図13(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1,Do2に流れる整流電流ID1,ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1,ID2が合成された波形として得られる。
図14は、図12に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率ηAC→DCを示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
また、図14のスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図12に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、オン期間TON、オフ期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、二次側直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、オン期間とオフ期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のオン/オフ期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図12に示す電源回路では、二次側直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
図15は、図12に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図12に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図12に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図15にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。そして、この図15に示す特性の下で、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
図15に示される必要制御範囲Δfsは、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Aまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最小負荷Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Bをまたぐ。
このために、図12に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、1スイッチング周期における期間TON/TOFFの時比率を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図13(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=100W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF,TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲(Δfs)のもとで行われることにより得られるものであるとされる。
特開2000−134925号公報
上記図12に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図13の波形図において、図13(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングであるオフ期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、オン期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDDに流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図13(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングのオフ期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
つまり、図12に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図12の電源回路の実際としては、例えば図14に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図13(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンオン時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、
少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、整流平滑電圧を直流電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、整流平滑電圧がスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、スイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって、所定の第1の共振周波数が設定される一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサを備える。
また、第2のインダクタと、この第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって、所定の第2の共振周波数が設定される一次側直列共振回路を形成し、第2のインダクタと自身との直列接続回路がスイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサを備える。
また、第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、この一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスを備える。
また、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して直列となる関係により二次側直列共振コンデンサを接続することで、少なくとも、二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成され、所定の第3の共振周波数が設定される二次側直列共振回路を備えることとした。
また、コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段とを備えることとした。
なお、本願発明において「結合係数」とは、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合いが高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示す。また、結合係数の用語は、構成態様によらず総称として一般に用いられるものであるが、コンバータトランス自体の結合係数と区別するために、一次側の全体と二次側の全体との間の電磁的な結合の度合いについては「総合結合係数」という。例えば、コンバータトランスに他のインダクタンス成分が付加されない場合には、結合係数の値と総合結合係数の値とは一致する。
上記構成による電源回路は、一次側においてE級スイッチングコンバータとしての回路形態を形成する。E級スイッチングコンバータは、並列共振回路(一次側並列共振回路)と直列共振回路(一次側直列共振回路)を備える複合共振形といわれるソフトスイッチングコンバータの一形式である。そのうえで、E級スイッチングコンバータにおける直列共振回路(一次側直列共振回路)を形成するインダクタ(第2のインダクタ)をコンバータトランスの一次巻線として電源回路を構成している。
また、このような構成では、コンバータトランスの一次側と二次側との総合結合係数は、コンバータトランス自身の結合係数と、第1のインダクタとコンバータトランスの一次巻線(第2のインダクタ)との等価的な並列回路により得られる一次側のリーケージインダクタンスにより決定される。本発明は、このようにして総合結合係数が設定されることを考慮したうえで、疎結合としてみなされる所要の総合結合係数が得られるようにして、コンバータトランス自身の結合係数を設定するようにしている。このような総合結合係数の設定とすることで、中間負荷とされる負荷条件でのZVS動作が得られなくなる状態を回避する一要因となる。
このようにして総合結合係数を設定することにより、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作を解消して、適正なZVS動作を得ている。
また、本発明では、一次側のE級スイッチングコンバータは、商用交流電源を整流平滑化する整流平滑回路を形成する平滑コンデンサの両端電圧である整流平滑電圧を入力してスイッチングを行うようにされている。このとき、平滑コンデンサからE級スイッチングコンバータに流入する電流は、一次側並列共振回路を形成する第1のインダクタを介してスイッチング素子側に流れるようにされることで、直流となる。
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。このことにより、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータの実用化が容易に実現されることになる。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、本実施の形態の背景技術となる、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図10及び図11を参照して説明しておく。
図10は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOS−FETであることとしている。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDDの順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。
また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
図11は、上記図10に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、電流と並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
本実施の形態としては、上記基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを電源回路に適用する。そこで先ず、第1の実施の形態の電源回路の構成例を図1の回路図に示す。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により商用交流電源を整流平滑化する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、上記図10の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。
この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、チョークコイルL10の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、巻始め端部を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送する。
図2は、図1の電源回路が備える絶縁コンバータトランスPITの構造例を示す断面図である。
この図に示すように、絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBを上記EE型コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE型コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして絶縁コンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
そのうえで、EE型コアの中央磁脚に対しては、図のようにして、例えばギャップ長1.6mm程度以上のギャップGを形成する。これによって、結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図12に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側直列共振コンデンサC2を直列となる接続関係によりに接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路を形成する。この二次側直列共振回路は、後述する二次側整流回路の整流動作に応じて共振動作を行うが、これにより、二次巻線N2に流れる二次巻線電流は正弦波状となる。つまり、二次側において電流共振動作が得られる。
この場合の二次側整流回路は、上記のようにして二次側直列共振コンデンサC2が直列接続された二次巻線N2に対して、2本の整流ダイオードDo1,Do2と、1本の平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路として形成される。この倍電圧半波整流回路の接続態様としては、まず、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対して、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと、整流ダイオードDo2のカソードを接続する。また、整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。二次巻線N2の巻始め端部と、整流ダイオードDo2のアノードは、二次側アース電位にて平滑コンデンサCoの負極端子と接続する。
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作は次のようになる。
先ず、二次巻線N2に誘起される交番電圧である二次巻線N2の両端電圧(二次巻線電圧)の一方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されることになるので、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流を二次側直列共振コンデンサC2に対して充電する動作が得られる。これによって、二次側直列共振コンデンサC2には、二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの両端電圧が生成される。次の、二次巻線電圧V2の他方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されて導通する。このとき、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線電圧V1の電位と、上記二次側直列共振コンデンサC2の両端電圧とが重畳された電位により充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。
この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期にのみ充電が行われる。つまり、倍電圧半波としての整流動作が得られている。また、このような整流動作では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続により形成される二次側直列共振回路の共振出力について整流動作を行っているものとしてみることができる。
このようにして生成される二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数、あるいは1スイッチング周期におけるオン期間TONとオフ期間TOFFの時比率(導通角)を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
電圧共振形コンバータの基本的な定電圧制御動作は、スイッチング素子Q1のオフ期間TOFFは一定とされたうえで、オン期間TONを可変制御してスイッチング周波数を可変する動作となる。しかしながら、本実施の形態のようにして、二次側直列共振回路を備える場合には、上記もしているように、1スイッチング周期内の導通角を制御する、PWM(Pulse Width Modulation)制御としての定電圧制御動作も生じる。つまり、定電圧制御動作全体としては、スイッチング周波数制御とPWM制御との複合的な制御が行われるものとなる。
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
上記のようにして形成される本実施の形態の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、L10、N1、C11)と、先に図10に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、本実施の形態のスイッチングコンバータは、図10の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL11を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタンスL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、前述もしたように、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振回路のキャパシタンスによって並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と二次巻線N2とにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、本実施の形態の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図1に示す実施の形態の電源回路は一次側にE旧スイッチングコンバータを備えるDC-DCコンバータとして構成される。
また、本実施の形態のようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10、及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)、に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した、複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
ここで、上記図1に示した回路形態の電源回路について、後述する図3及び図4に示される実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスPITについては、コアについてEER-35を選定して、ギャップGについては1.6mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=59T、N2=30Tを選定した。これにより、絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.75が設定される。
なお、上記EERのコアは、よく知られているように、製品としてのコアの型式、規格の1つであり、この型式には、EEのあることも知られている。本願においてEE型という場合には、断面がEE字形状であることに応じて、EER、EEの何れのタイプについてもEE型のコアであるとして扱うものとする。
また、チョークコイルL10については、EER-28のコアを選定して、中央磁脚に形成するギャップ長については1.2mmを設定し、インダクタンス(リーケージインダクタンス)としては1.05mHが設定されるようにした。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=5600pFを選定した。この一次側並列共振コンデンサCrについてのキャパシタンス設定と、上記チョークコイルL10のインダクタンスとにより、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)=65.8kHzが設定される。
また、一次側直列共振コンデンサC11は、0.027μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、次に説明する絶縁コンバータトランスPITの一次側の総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスとにより、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)=45kHzが設定される。
また、二次側直列共振コンデンサC2は、0.082μFを選定しており、このキャパシタンス設定と、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2とにより、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=48kHzを設定している。
これら共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2の相対的な関係としては、共振周波数fo1(s),fo2についてはほぼ同等として、これら共振周波数fo1(s),fo2に対して、共振周波数fo1(p)が1.4倍〜1.5倍程度となるようにして設定している、ということがいえる。また、図12に示した従来の電源回路における一次側並列回路の共振周波数fo1と二次側直列共振回路の共振周波数fo2との比較では、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2は、全体としてより低い周波数が設定され、また、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2での間の周波数差も縮小されている。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
ここで、図1に示す電源回路における絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とチョークコイルL10とについてスイッチング周期でみた場合には、並列接続の関係にあることと等価であるとみることができる。チョークコイルL10から発生する磁束は、この場合には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2とは結合することがない。このことから、絶縁コンバータトランスPITの一次側におけるリーケージインダクタンスの成分は増加するものとしてみることができる。
このために、絶縁コンバータトランスPITそのものとしての結合係数kとしては、前述したように、例えばk=0.75程度が設定されるのであるが、上記のようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側のリーケージインダクタンスが増加することで、電源回路内における絶縁コンバータトランスPITの総合的な結合係数としては、0.75よりも低い値が得られることになる。つまり、電源回路としてみた、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の間の総合的な結合度としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kに対して、より低く設定されることになる。この結合度についての数値を、ここでは、総合結合係数ktとして扱う。
本実施の形態としては、例えば、チョークコイルL10について、先に説明した所定のインダクタンス値を設定することで、総合結合係数ktについて、0.7程度またはそれ以下の疎結合とみなされる値を設定することとし、実際としては、kt=0.65を設定することとしている。この場合の総合結合係数ktの設定要素としては、絶縁コンバータトランスPITの構造自体による結合係数kと、チョークコイルL10のインダクタンスであることになる。上記もしているように、一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とを直列接続することで形成される一次側直列共振回路については、総合結合係数ktに応じた一次側のリーケージインダクタンスと、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより設定される。
図3の波形図は、図1の電源回路についての要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示している。図3(a)には、最大負荷電力Pomax=300W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1、一次側直列共振電圧V2、二次側交番電圧V3、二次側整流電流ID1,ID2が示される。図3(b)には、中間負荷とされる負荷電力Po=225W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。図3(c)には、最小負荷電力Pomin=0W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。交流入力電圧条件は、VAC=100Vである。
図3(a)に示す最大負荷電力Pomax=300W時の波形図により、図1の電源回路の基本的な動作について説明する。
入力電流I1は、平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入しようとする電流である。入力電流I1がスイッチング素子Q1側に流入する経路である、平滑コンデンサCoの正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン側との間のラインには、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1よりも大きなインダクタンスが設定されたチョークコイルL10が挿入されていることで、入力電流I1は、チョークコイルL10を介するようにして流れることになる。このために、入力電流I1は平均値I0の脈流となる。このような波形の入力電流I1は、直流としてみることができる。つまり、本実施の形態では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は直流となる。チョークコイルL10を介して流れた入力電流I1は、一次巻線N1−一次側直列共振コンデンサC11の直列回路と、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)、一次側並列共振コンデンサCrに対して分流するようにして流れる。
スイッチング素子Q1は、平滑コンデンサCiの両端電圧(Ei)を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行う。スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧であり、スイッチング電流IQ1は、ドレイン側からスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1の共振パルスは、一次側並列共振回路の共振動作により、正弦波状の共振波形として得られる。
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いて反転してドレインからソースに流れることで正極性による波形となる。
一次巻線電流I2は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この図に示す極性では、スイッチング電流IQ1と一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流が合成されたものとしてみることができる。この一次巻線電流I2は、一次側直列共振回路の出力電流としてみることができる。つまり、スイッチング素子Q1がオン/オフ動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である電圧共振パルスが一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。また、一次側直列共振電圧V2は、一次側直列共振コンデンサC11の両端電圧である。この一次側直列共振電圧V2も、図示するようにして、スイッチング周期に応じた正弦波状の交番波形となる。
期間TONが終了して期間TOFFに至ってスイッチング素子Q1がターンオフするタイミングでは、一次側並列共振コンデンサCrを充電するようにして正極性の一次巻線電流I2を流す動作が開始され、これに応じて、スイッチング電圧V1は0レベルから正弦波状により上昇を開始して、電圧共振パルスが立ち上がる。一次巻線電流I2が負極性に反転すると、一次側並列共振コンデンサCrは充電から放電が行われる状態に移行することになり、電圧共振パルスはピークレベルから正弦波状により下降していく。
そして、スイッチング電圧V1としての電圧共振パルス波形が0レベルにまで降下したとされると、先ず、ボディダイオードDDが導通して負極性の一次巻線電流I2を流すことになる。このときスイッチング電圧V1は0レベルであり、一定期間においてボディダイオードDDに一次巻線電流I2が流れると、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間がオンとなって、正極性の一次巻線電流I2を流す。このようにして期間TONにおいて、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に一次巻線電流I2が流れることで、スイッチング電流IQ1の波形が得られる。このような動作は、スイッチング素子Q1のターンオン、ターンオフ時において、一次側並列共振回路によるZVS動作、及び一次側直列共振回路によるZCS動作が得られていることを示す。
また、二次側交番電圧V3、二次側整流電流ID1,ID2によっては、二次側整流回路の動作が示される。
二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路の両端電圧であり、二次側整流回路が入力する二次側交番電圧V3は、二次側交番電圧V3の半周期の期間ごとに、整流ダイオードDo1,Do2に対して順方向電圧を印加し、これに応じて整流ダイオードDo1,Do2が交互に導通する。これにより、二次側交番電圧V3は、整流ダイオードDo1,Do2の導通期間に応じて二次側直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルによりクランプされた交番波形となる。
二次側整流電流ID1,ID2は、図示するようにして、半波の正弦波形状により交互となるようにして平滑コンデンサCoに対して流れる。二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、二次側整流電流ID1,ID2を合成して得られ、図示するようにして正弦波状となる。
上記図3(a)として示される各部の動作をふまえて、図3(b)に示される中間の負荷電力Po=225W時、及び図3(c)に示される最小負荷電力Pomin=0W時の波形を参照してみると、一次側スイッチングコンバータの動作としては、軽負荷から無負荷の傾向となっていくのに従って、1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長は短くなっている。このことは、後述するようにして、最大負荷電力Pomax〜最小負荷電力Pominの範囲での負荷変動に応じた定電圧制御動作として、スイッチング周波数に相応の変化を与えていることを示す。また、期間TOFFと期間TONの時比率に着目すると、軽負荷から無負荷の傾向となっていくのに応じて、期間TOFFが拡大し、期間TONが縮小していく傾向となっている。このことは、最大負荷電力Pomax〜最小負荷電力Pominの範囲での負荷変動に応じた定電圧制御動作として、PWM制御による期間TOFFと期間TONの時比率の変化も与えられていることを示す。
また、図3(b)に示す中間負荷電力Po=225W時のスイッチング電流IQ1の波形によると、図3(a)の場合と同様にして、期間TONが開始されるタイミングで負極性によりボディダイオードDDを流れている動作となっていることがわかる。つまり、適正にZVSが得られている。この点については、図3(c)に示す最小負荷電力Pomin=0W時のスイッチング電流IQ1についても同様のことがいえる。このことは、図1に示す電源回路では、対応負荷電力の全領域においてZVS動作が保証されていることを示している。
図4は、図1に示した電源回路についての実験結果として、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、及び期間TON、TOFFの時間長、及びスイッチング電流IQ1の変化特性を示している。
この図に示すようにして、スイッチング周波数fsについては、最大負荷電力Pomax=300Wから最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)までの範囲で、軽負荷の傾向となるのに応じてほぼ一定の傾きにより高くなっていく傾向で変化している。
また、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONの時間長は、最小負荷電力Pomin=0Wから最大負荷電力Pomax=300Wまでの範囲において、重負荷の傾向となっていくのに応じてほぼ一定の傾きにより増加する傾向となっている。これに対して、スイッチング素子Q1がオフとなる期間TOFFの時間長は、最小負荷電力Pomin=0Wから最大負荷電力Pomax=300Wまでの範囲において、重負荷の傾向となっていくのに応じてほぼ一定の傾きにより低下する傾向となっている。傾きの度合いは、期間TONのほうが期間TOFFよりも大きくなっている。
このようなスイッチング周波数fs及び期間TON、TOFFの特性は、定電圧制御として、先ず、スイッチング周波数fsを可変するスイッチング周波数制御が行われていることを示している。スイッチング周波数fsが変化するということは、TON+TOFFで示される1スイッチング周期の時間長が変化するということであるが、本実施の形態では、スイッチング周波数fsが高くなるのに応じて1スイッチング周期の時間長(TON+TOFF)が短くなっていくときに、期間TONが一定の割合で短くなっていくのに対して、期間TOFFは一定の割合で長くなっていくという変化を示していることになる。このような1スイッチング周期内での期間TON、TOFFの変化は、スイッチング素子Q1の導通期間を制御するPWM制御が行われているものとみることができる。
このことから、本実施の形態ではスイッチング周波数制御とPWM制御とが同時に行われる複合的な定電圧制御動作となっているということがいえる。このような複合制御は制御感度が高い。
図1の電源回路に関して、定電圧制御に関する実際の測定結果としては次のようになった。
先ず、交流入力電圧VAC=100Vで、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対して二次側直流出力電圧Eoを175Vで安定化するために必要とされるスイッチング周波数fsの可変範囲(Δfs)は17.8KHzであり、また、期間TONの変動範囲(ΔTON)は3.4μs、期間TOFFの変動範囲(ΔTOFF)=1.6μsとなった
また、この場合のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=100W程度までの範囲では、軽負荷傾向となるのに従って高くなっていく特性で、負荷電力Po=100W程度では、最大値として93%以上が得られている。また、最大負荷電力Pomax=300Wから負荷電力Po=25W程度までの範囲で90%以上が得られるという良好な特性である。
また、スイッチング電流IQ1は、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)から最大負荷電力Pomax=300までの範囲において、重負荷の傾向となるのに応じてほぼ一定の傾きにより高くなっていく特性である。
ここで、図1に示される本実施の形態の電源回路と、従来例として図12に示した電源回路とを比較してみると次のことがいえる。
一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、図12に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図12の電源回路では、図13により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図12の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
これに対して、図1に示した実施の形態の電源回路では、図3の波形図によっても説明したように、対応負荷電力の全領域にわたってZVS動作が得られている。つまり、中間負荷時における異常動作は解消されている。E級スイッチングコンバータの基本構成は、1石のスイッチング素子と並列共振回路とを含んでいるので、本実施の形態の電源回路は、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの回路構成を備えるスイッチングコンバータとして、実用化が容易に実現可能となっている、ということがいえる。
このような中間負荷時における異常動作の解消は、主としては、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の総合結合係数ktについて、例えばkt=0.65程度とされる疎結合の状態としたことにより得られている。
従来として説明した中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータが二次側直列共振回路を備える場合に生じることが確認されている。つまり、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路とが同時に動作することによる相互作用が原因となっている。
そこで、本実施の形態の電源回路のようにして、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側の総合結合係数ktについて、従来よりも低い所要値を設定すれば、上記した一次側並列共振回路と二次側直列共振回路の相互作用は希薄となって、中間負荷時における異常動作も無くなっていくことになる。具体的には、例えば図13(b)に示した、期間TOFFの終了タイミングの前後で正極性のスイッチング電流IQ1が流れる現象が観察されなくなり、通常のZVSに対応するスイッチング電流IQ1の波形が得られることになる。
また、図12に示す電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I1となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図12の電源回路の構成で、本実施の形態と同等の最大負荷電力Pomax=300Wに対応させる場合には、1000μF程度を選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
これに対して図1に示した本実施の形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイルL10を介してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振回路(N1−C11)に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図3の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施の形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無く、従って、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、図12の回路の場合よりも低い値を選定できる。図1の回路の実際としては、680μFを選定できる。このようにして、本実施の形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。
また、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktとして0.65程度を設定している。この総合結合係数ktは、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kと、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることによる一次巻線N1のリーケージインダクタンスの見かけ上の増加分とにより得られるものである。
例えば、図12に示した電源回路の構成のもとで、0.65程度の総合結合係数kを得ようとすれば、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数ktについて0.65程度が設定されるようにすることになる。このためには、例えば、絶縁コンバータトランスPITが図2に示した構造を採る場合には、ギャップGについて2mm以上に拡大してコアを形成すればよい。しかし、ギャップ長の拡大は渦電流による損失(渦電流損)を増加させる要因となるので、いたずらにギャップ長を拡大していくことは好ましいことではなく、条件などによっては、渦電流損による電力損失が無視できなくなる場合も出てくる可能性がある。
本実施の形態の場合には、上記のようにして一次巻線N1のリーケージインダクタンスの増加分により、0.65程度の総合結合係数ktの値を得ていることで、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては0.75程度までの低下で抑えることができている。そして、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITのコアに形成するギャップGについては1.6mm程度のギャップ長を設定できる。この程度のギャップ長であれば、渦電流損について特に考慮する必要はない。
上記のようにして、本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITにおける渦電流損失の増加を抑えるように考慮して、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kについては、総合結合係数よりも高い値を設定しているが、例えば従来としての図12の電源回路が結合係数k=0.80〜0.85程度であることと比較すれば、相当に低い値を設定している。
このように、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPIT自体が有する結合係数kにまで疎結合の状態とすることは、従来の電圧共振形コンバータでは、一次側から二次側への電力伝送ロスの増加による電力変換効率の低下を招くということを理由に、これまで行われてこなかったという背景がある。
また、直流入力電圧がスイッチングコンバータに流入するラインに比較的大きいインダクタンスのチョークコイルL10を挿入することによる電力損失も相応に生じる。
しかしながら、本実施の形態では、図4の実験結果としても示したように、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、良好とみてよい電力変換効率特性を得ている。
本実施の形態において高電力変換効率が得られているのは、次のような構成に基づいている。
先ず、電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を備える電源回路の構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。特に、この構成は、最大負荷電力から軽負荷の傾向となるのにしたがって、電力変換効率が増加していくという特徴的な性質を有しており、軽負荷傾向に応じて電力変換効率が低下する傾向となる電流共振形コンバータと比較すれば、負荷変動に対する電力変換効率特性としては非常に良好であるということがいえる。また、電圧共振形コンバータとしてシングルエンド方式を採用してスイッチング素子を必要最小限の1石とすることで、例えばハーフブリッジ結合方式、フルブリッジ結合方式、プッシュプル方式などの複数のスイッチング素子を備える構成と比較してスイッチング損失を減少させていることも、電力変換効率の向上要因となっている。
本実施の形態のE級スイッチングコンバータも、一次側並列共振回路と1石のスイッチング素子が組み合わされた構成を含むことで、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの構成を含んでいるということがいえ、上記したような電圧共振形コンバータとしての良好な電力変換効率特性を引き継いでいる。
そのうえで、本実施の形態としては、上記もしているように中間負荷時における異常動作を解消して、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図13(b)に示したように、ターンオン(期間TON開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がオンとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施の形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
また、図1に示す電源回路では、一次側並列共振回路、二次側直列共振回路、及び二次側直列共振回路の各共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2の設定が、電力変換効率向上の大きな要因となっている。図4により説明した電力変換効率特性は、最終的には、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2の調整により得られたものである。つまり、共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2について各種設定を行って実験を行い、前述した相対的な周波数の関係を設定したことで、最終的に得られた特性である。
上記のようにして共振周波数fo1(p),fo1(s),fo2を設定したことで電力変換効率が向上したことの理由としては、次のことを挙げることができる。図3(a)と図13(a)のスイッチング電流IQ1を比較して分かるように、本実施の形態に対応する図3(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、期間TONの終了時以前のタイミングでピークが得られる波形となっている。
このスイッチング電流IQ1の波形は、先に図3にて説明したように、二次巻線電流I2の正弦波形に応じたものである。つまり、二次側直列共振回路の共振動作により得られる電流共振波形に応じた波形成分を持っている。二次巻線電流I2の波形は、共振周波数fo1(p)に対する共振周波数fo1(s)の設定によって決まる。
このことから、図1に示す電源回路のスイッチング電流IQ1の波形は、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路の各共振周波数fo1(p),fo1(s)のしかるべき設定により得られているものである、ということになる。
図3に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
図5の回路図は、本発明の第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示している。
なお、この図において図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この第2の実施の形態の電源回路としても、絶縁コンバータトランスPITについては図2に示したのと同様の構造を採り、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとして、0.75程度を設定する。絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktについては、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることで、0.65程度が設定される。
この図に示す第2の実施の形態の電源回路では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して、二次側部分電圧共振コンデンサCp2を並列に接続している点が、図1に示した第1の実施の形態の電源回路との回路形態的な相違となっている。
このようにして二次側部分電圧共振コンデンサCp2が接続されることで、絶縁コンバータトランスPITの二次側に得られるリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2とのキャパシタンスとによって、整流ダイオードDo1、Do2がターンオフ/ターンオンするタイミングにおいてのみ電圧共振動作を行う、二次側部分電圧共振回路が形成される。なお、二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次側直列共振コンデンサC2よりもはるかに小さなキャパシタンスが設定されるので、二次側直列共振コンデンサC2を含む二次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)などに影響を与えるものではない。
この図5に示す電源回路について実験を行うのにあたり、要部についての選定は、第1の実施の形態の電源回路との共通部分は同様とした。このために、絶縁コンバータトランスPITの結合係数k、総合結合係数kt、一次側並列共振回路の共振周波数fo1(p)、一次側直列共振回路の共振周波数fo1(s)、二次側直列共振回路の共振周波数fo2などについては、図1に示した第1の実施の形態の電源回路と同様になる。そのうえで、二次側部分電圧共振コンデンサCp2については470pFを選定した。
図6の波形図は、図5に示す第2の実施の形態の電源回路についての要部の動作を、スイッチング素子Q1のスイッチング周期により示しており、図6(a)には、最大負荷電力Pomax=300W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1、一次側直列共振電圧V2、二次側交番電圧V3、二次側部分共振電流I4、二次側整流電流ID1,ID2が示される。図6(b)には、中間負荷とされる負荷電力Po=225W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。図6(c)には、最小負荷電力Pomin=0W時における入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1が示される。交流入力電圧条件は、VAC=100Vである。
ここで、入力電流I1、スイッチング電圧V1、一次巻線電流I2、スイッチング電流IQ1、一次側直列共振電圧V2、二次側整流電流ID1,ID2の波形は、図1の電源回路の実験結果である図3と同様の動作であることから、ここでの説明は省略する。これらの波形の動作が図3と同様であることで、第2の実施の形態としても、図1の電源回路と同様に、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されている。また、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流(I1)は直流となる。
図6(a)の二次側部分共振電流I4は、整流ダイオードDo1がターンオフし、かつ、整流ダイオードDo2がターンオンするタイミングにおいてのみ正極性で流れ、整流ダイオードDo1がターンオンし、かつ、整流ダイオードDo2がターンオフするタイミングにおいてのみ負極性で流れている。この波形により、整流ダイオードDo1,Do2がターンオン/ターンオフするタイミングにおいてのみ電圧共振動作を生じる部分電圧共振動作が得られていることが示される。
また、この場合の二次側交番電圧V3は、部分電圧共振動作が生じるのに応じて、波形の立ち上がり/立ち下がりの傾斜が、図1の場合よりも緩やかになる。
また、図5に示す第2の実施の形態の電源回路について、交流入力電圧VAC=100V、負荷変動(Pomax=300W〜Pomin=0W)に対するAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fs、及び期間TON、TOFFの時間長、及びスイッチング電流IQ1の変化特性は、先の第1の実施の形態の電源回路の実験結果である図4とほぼ同様の特性が得られた。
ただし、第2の実施の形態では、二次側部分電圧共振回路が動作して、図6に示したようにして、整流ダイオードDo1、Do2のターンオン/ターンオフ時において、これら整流ダイオードDo1、Do2に流れようとする電流が、二次側部分共振電流I4として二次側部分電圧共振コンデンサCp2を介して流れるようにされている。これにより、ターンオン/ターンオフ時における整流ダイオードDo1、Do2のスイッチング損失は低減される。この結果、AC→DC電力変換効率としては、第1の実施の形態よりも良好な特性が得られる。
以降、本発明の実施の形態の変形例として、二次側整流回路のバリエーションを、図7〜図9に示す。図7に変形例1を示し、図8に変形例2を示し、図9に変形例3を示す。
図7(a)の回路図は、変形例1として、第1の実施の形態に対応する二次側の構成例を示し、図7(b)の回路図は、変形例1として、第2の実施の形態に対応する二次側の構成例を示している。
なお、この図において、図1、図5と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この図に示す電源回路としても、一次側の構成は、図1、図5と同様となる。また、絶縁コンバータトランスPITについては図2に示したのと同様の構造を採り、絶縁コンバータトランスPIT自体の結合係数kとして、0.75程度を設定する。絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との総合結合係数ktについては、一次巻線N1とチョークコイルL10とが等価的に並列接続されることで、0.65程度が設定される。これらの点については、後述する図8(a)(b)、図9(a)(b)の電源回路についても同様である。
先ず、図7(a)に示す電源回路では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路(二次側直列共振回路)に接続される二次側整流回路として、4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路と、1本の平滑コンデンサCoから成るブリッジ全波整流回路を備える。
この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部は、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードの接続点に接続する。また、二次巻線N2の巻始め端部を、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点に接続する。整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位にて、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点と接続される。
上記のようにして形成される全波整流回路によっては、二次巻線N2に誘起(励起)される交番電圧の一方の半周期において、ブリッジ整流回路の整流ダイオード[Do1,Do4]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に誘起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do2,Do3]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に誘起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルの二次側直流出力電圧Eoが生成される。
図7(b)に示す回路は、上記図7(a)の二次側の構成に対して、二次側部分電圧共振コンデンサCp2を接続した回路構成を採る。この場合の二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して並列となる関係により接続しており、これにより、絶縁コンバータトランスPITの二次側のリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2のキャパシタンスとにより、二次側部分電圧共振回路を形成する。この二次側部分電圧共振回路の部分共振動作により、整流ダイオード[Do1,Do4]の組と、整流ダイオード[Do2,Do3]の組とがそれぞれターンオン/ターンオフするタイミングで、これら整流ダイオードに流れようとする電流が、二次側部分電圧共振コンデンサCp2に流れ、整流ダイオードDo1、Do2、Do3、Do4におけるスイッチング損失が低減される。
図8(a)は、変形例2として第1の実施の形態に対応するもので、二次側整流回路として倍電圧全波整流回路を備える。
この場合の倍電圧全波整流回路としては、先ず、二次巻線N2についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに2分割する。二次巻線部N2A,N2Bには、同じ所定巻数(ターン数)が設定される。二次巻線N2のセンタータップは、二次側アースに接続される。
また、二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Aを直列に接続し、二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Bを直列に接続する。これにより、二次巻線部N2Aのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスから成る第1の二次側直列共振回路と、二次巻線部N2Bのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスから成る第2の二次側直列共振回路とが形成される。
そして、二次巻線N2における二次巻線N2A側の端部を、上記二次側直列共振コンデンサC2Aの直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。また、二次巻線N2における二次巻線N2B側の端部を、二次側直列共振コンデンサC2Bの直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。
整流ダイオードDo1,Do3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。また、整流ダイオードDo2,Do4の各アノードの接続点は二次側アースに接続する。
上記接続形態では、二次巻線部N2A,二次側直列共振コンデンサC2A、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第1の二次側直列共振回路を備える第1の倍電圧半波整流回路と、二次巻線部N2B,二次側直列共振コンデンサC2B、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第2の二次側直列共振回路を備える第2の倍電圧半波整流回路とが形成されることになる。
第1の倍電圧半波整流回路では、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC2A→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行い、二次巻線部N2Aの交番電圧(V2)の電位により二次側直列共振コンデンサC2Aに対する充電を行う。他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→二次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行うことで、二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧と二次巻線N2Aの交番電圧の重畳電位により、平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
また、第2の倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、上記他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC2B→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次巻線部N2Aの交番電圧(V2で同等)の電位により、二次側直列共振コンデンサC2Bを充電し、上記一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→二次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo3→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧と二次巻線N2Bの交番電圧の重畳電位により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
上記した整流動作によれば、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期では、二次巻線部N2Bの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期では、二次巻線部N2Aの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベル(V2)の2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られている。
図8(b)に示す回路は、変形例2として第2の実施の形態に対応するもので、上記図8(a)の二次側の構成に対して、二次側部分電圧共振コンデンサCp2を接続した回路構成を採る。この場合の二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次巻線N2に対して、二次側直列共振コンデンサC2A、C2Bを介して並列関係が得られるようにして接続しているものとみることができる。つまり、二次側部分電圧共振コンデンサCp2の一方の極端子を、二次側直列共振コンデンサC2Aを介して二次巻線N2の巻き終わり端部と接続し、二次側部分電圧共振コンデンサCp2の他方の極端子を、二次側直列共振コンデンサC2Bを介して二次巻線N2の巻き始め端部と接続する。
このような接続態様により、絶縁コンバータトランスPITの二次側のリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2のキャパシタンスとにより、二次側部分電圧共振回路が形成される。また、この回路構成では、二次側部分電圧共振回路の共振動作は、第1の倍電圧半波整流回路と第2の倍電圧半波整流回路に対して共通に動作するものとなる。そして、この場合にも、二次側部分電圧共振回路が共振動作を行うことで、整流ダイオードDo1、Do2、Do3、Do4がそれぞれターンオン/ターンオフするタイミングで、これら整流ダイオードに流れようとする電流が二次側部分電圧共振コンデンサCp2に流れることとなって、上記整流ダイオードにおけるスイッチング損失が低減される。
図9(a)は、変形例3として第1の実施の形態に対応するもので、二次側整流回路として倍電圧整流回路を備える。この倍電圧整流回路は、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して、2本の整流ダイオードDo1,Do2と、2本の平滑コンデンサCo1,Co2を図示するようにして接続して形成される。
この場合には、二次巻線N2の巻き終わり端部に対して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードを接続する。整流ダイオードDo1のカソードは平滑コンデンサCo1の正極端子に接続する。
平滑コンデンサCo1,Co2は、平滑コンデンサCo1の負極端子と平滑コンデンサCo2の正極端子を接続するようにして直列接続し、この平滑コンデンサCo1,Co2の接続点に対しては二次巻線N2の巻始め端部を接続する。
二次側アースに対しては、平滑コンデンサCo2の負極端子及び整流ダイオードDo2のアノードを接続する。
このようにして形成される二次側の倍電圧整流回路では、二次巻線N2の誘起電圧の一方の極性の半周期においては、二次巻線N2→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo1の経路で整流電流が流れて、平滑コンデンサCo1に対する充電を行う。また、二次巻線N2の誘起電圧の他方の極性の半周期においては、二次巻線N2→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCo2の経路で整流電流が流れて、平滑コンデンサCo2に対する充電を行う。このようにして、二次巻線N2の誘起電圧の正負の半周期ごとに平滑コンデンサCo1に対する充電と、平滑コンデンサCo2に対する充電とが交互に実行され、平滑コンデンサCo1,Co2の各々には、二次巻線N2の誘起電圧レベルの等倍に対応する電位が得られる。これにより、平滑コンデンサCo1−Co2の直列接続回路の両端電圧として、二次巻線N2の誘起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。
例えば、図1に示した電源回路と同等レベルの二次側直流出力電圧Eoを得るのであれば、二次巻線N2の巻数(ターン数)については、図1の二次巻線N2の巻数の約1/2程度とすることができる。これにより、二次巻線N2の巻線工程を簡略化できる。
図9(b)に示す回路は、変形例3として第2の実施の形態に対応するもので、上記図9(a)の二次側の構成に対して、二次側部分電圧共振コンデンサCp2を接続した回路構成を採る。この場合の二次側部分電圧共振コンデンサCp2は、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路に対して並列となるようにして接続しており、これにより、絶縁コンバータトランスPITの二次側のリーケージインダクタンスと、二次側部分電圧共振コンデンサCp2のキャパシタンスとにより、二次側部分電圧共振回路を形成する。この二次側部分電圧共振回路が部分共振動作を行うことで、整流ダイオードDo1、Do2がそれぞれターンオン/ターンオフするタイミングで二次側部分電圧共振コンデンサCp2に電流が流れ、これらの整流ダイオードにおけるスイッチング損失が低減される。
なお、本発明としては、上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側のE級スイッチングコンバータの細部の回路形態や、二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。
また、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。 実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。 第1の実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。 第1の実施の形態の電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間及びオフ期間、スイッチング電流の変動特性を示す図である。 第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。 第2の実施の形態の電源回路の要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。 第1、第2の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例1としての構成例を示す回路図である。 第1、第2の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例2としての構成例を示す回路図である。 第1、第2の実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例3としての構成例を示す回路図である。 E級スイッチングコンバータの基本構成例を示す回路図である。 図10に示すE級スイッチングコンバータの動作を示す波形図である。 従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。 図12に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。 図12に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間の変動特性を示す図である。 従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
符号の説明
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、L10 チョークコイル、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2(N2A,N2B) 二次巻線、C11 一次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 (二次側)整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、Cp2 二次側部分電圧共振コンデンサ

Claims (1)

  1. 少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、
    上記整流平滑電圧を直流電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、
    上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
    上記整流平滑電圧がスイッチング素子に入力される経路に対して直列に挿入される第1のインダクタと、
    上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続され、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって、所定の第1の共振周波数が設定される一次側並列共振回路を形成する一次側並列共振コンデンサと、
    第2のインダクタと、
    上記第2のインダクタと直列となる関係により接続されることで、少なくとも上記第2のインダクタのインダクタンスと自身のキャパシタンスとによって、所定の第2の共振周波数が設定される一次側直列共振回路を形成し、上記第2のインダクタと自身との直列接続回路が上記スイッチング素子に対して並列となる関係により接続されるようにして設けられる一次側直列共振コンデンサと、
    上記第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との総合結合係数が得られるようにして、自身の結合係数が設定されるコンバータトランスと、
    上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して直列となる関係により二次側直列共振コンデンサを接続することで、少なくとも、上記二次巻線を含む漏洩インダクタンス成分と、上記二次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される二次側直列共振回路と、
    上記コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段とを備える、
    ことを特徴とするスイッチング電源回路。
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