JP4353164B2 - スイッチング電源回路 - Google Patents
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本発明は、スイッチング電源回路に関するものである。
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
図12は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。このような、電圧共振型コンバータは、後述する二次側には、二次巻線側のリーケージインダクタL2と二次側直列共振コンデンサC2とによって直列共振回路が形成され、多重共振形コンバータと称されている。
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、直流入力電圧Eiを生成している。なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
直流入力電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOSFETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
スイッチング素子Q1に対しては、MOSFETのボディダイオードDD1が並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のドレインとソースとの間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。そして、一次側並列共振コンデンサCrと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1のスイッチング出力を二次側に伝送する。絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、図13に示すように、フェライト材によるE型コアCR1及びE型コアCR2を組合せたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚を覆うボビンBの上に巻装している。そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては0.8mm〜1.0mm程度のギャップGを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(リーケージインダクタL1のインダクタンスの値)の設定要素となる。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される二次巻線電圧V3の2倍に対応するレベルの直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
制御回路1は、検出電圧として入力される直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。また、発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す直流出力電圧Eoのレベルに応じて周波数などを可変したドライブ信号を出力することで、直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。これにより、直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
図14及び図15は、上記図12に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図12の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER−35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF(ピコ・ファラッド)、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μF(マイクロ・ファラッド)を選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1=230kHz(キロ・ヘルツ)、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、一次側並列共振周波数fo1、二次側直列共振周波数fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
図14は、図12に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図14(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時におけるスイッチング素子Q1に加わるスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I2、二次巻線電流I3、整流電流ID1、整流電流ID2が示されている。図14(b)には、中間の負荷電力Po=120W時におけるスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I2、二次巻線電流I3が示されている。図14(c)には最小負荷電力Pomin=0W時におけるスイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がON(オン)となる期間である期間TONにおいて0レベルで、OFF(オフ)となる期間である期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。このスイッチング電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD1)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I2は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。また、図14(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1、Do2に流れる整流電流ID1、整流電流ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I3は、整流電流ID1、整流電流ID2が合成された波形として得られる。図15は、図12に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1の期間TON、期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
また、図15のスイッチング周波数fs、期間TON、期間TOFFによっては、図12に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、期間TON、期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、ON期間とOFF期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のON/OFF期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図12に示す電源回路では、直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
図16は、図12に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図12に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図12に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図16にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の入力交流電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A、特性曲線Bとして示され、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C、特性曲線Dで示されるものとなる。そして、この図16に示す特性の下で、直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
図16に示される可変範囲Δfsは、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Bまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Aをまたぐ。
このために、図12に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、スイッチングの一周期における時比率(期間TON/期間TOFF)を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図14(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=120W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TON)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF、期間TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の一次側並列共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の二次側直列共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲Δfsのもとで行われることにより得られるものであるとされる。
特開2000−134925号公報
上記図12に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図14の波形図において、図14(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンON(オン)タイミングである期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDD1に流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図14(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンONタイミングの期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
つまり、図12に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図12の電源回路の実際としては、例えば図15に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図14(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンON時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の−増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。商用交流電源を整流平滑化して整流平滑電圧を生成する一次側整流素子及び一次側平滑コンデンサを有する一次側整流平滑回路と、上記整流平滑電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング素子と、上記交流電圧を一次巻線に入力し、二次巻線に交流電圧を生成するコンバータトランスと、上記二次巻線に生じる交流電圧を整流平滑して出力直流電圧を生成する二次側整流素子及び二次側平滑コンデンサを有する二次側整流平滑回路と、上記出力直流電圧に基づいて上記スイッチング素子を制御するスイッチング素子制御手段と、を備えるスイッチング電源回路において、上記一次側整流平滑回路の出力端と上記コンバータトランスの一次巻線の一方の巻線端及び上記スイッチング素子の一方の端子との間に介在するチョークコイルと、上記コンバータトランスの一次巻線の他方の巻線端と上記スイッチング素子の他方の端子との間に一次側直列共振コンデンサを接続して形成され、上記コンバータトランスの上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスと上記一次側直列共振コンデンサとで共振周波数が支配を受ける一次側直列共振回路と、上記スイッチング素子に並列に一次側並列共振コンデンサを接続して形成され、上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスと上記一次側並列共振コンデンサとで共振周波数が支配を受ける一次側並列共振回路と、上記チョークコイルに並列接続されるクランプ用コンデンサと補助スイッチ素子の直列回路と、を具備し、上記補助スイッチ素子は、上記スイッチング素子が非導通のときに導通することとした。
上記構成によるスイッチング電源回路は、商用交流電源を整流平滑化して整流平滑電圧を生成する一次側整流素子及び一次側平滑コンデンサを有する一次側整流平滑回路と、上記整流平滑電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング素子と、上記交流電圧を一次巻線に入力し、二次巻線に交流電圧を生成するコンバータトランスと、上記二次巻線に生じる交流電圧を整流平滑して出力直流電圧を生成する二次側整流素子及び二次側平滑コンデンサを有する二次側整流平滑回路と、上記出力直流電圧に基づいて上記スイッチング素子を制御するスイッチング素子制御手段と、を備えるスイッチング電源回路であるので、交流電力を直流電力に変換し、スイッチング素子制御手段が制御するスイッチング素子によって交流電力に変換し、コンバータトランスにおいて、二次側に所定の電圧を得ることができる。
さらに、上記一次側整流平滑回路の出力端に接続されたチョークコイルを介して上記コンバータトランスの一次巻線の一方の巻線端及び上記スイッチング素子の一方の端子に電力を供給するので、上記一次側平滑回路から供給される電流は直流電流に近い脈流電流となる。また、上記コンバータトランスの一次巻線の他方の巻線端と上記スイッチング素子の他方の端子との間に直列共振コンデンサを接続することによって、上記コンバータトランスの上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスと上記直列共振コンデンサとで共振周波数が支配を受ける直列共振回路を形成し、上記スイッチング素子に並列に接続される一次側並列共振コンデンサと上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスとで共振周波数が支配を受ける並列共振回路を形成するので、スイッチング素子のスイッチング周波数の可変周波数範囲は狭いものとできる。
その上に、上記チョークコイルに並列接続されるクランプ用コンデンサと補助スイッチ素子の直列回路を有し、上記補助スイッチ素子は、上記スイッチング素子が非導通のときに導通することとしたので、上記スイッチング素子に加わる電圧をクランプすることができる。
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
さらに、上記のようにして、電源回路内に流れる電流量の低減に応じて電力損失の低減が図られることで、総合的な電力変換効率特性は大幅に向上するとともに、スイッチング素子の耐電圧を低いものとできる。
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について説明するに先立ち、本実施形態の背景技術となる、E級共振によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図1及び図2を参照して説明しておく。
図1は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振型で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOSFETであることとしている。このMOSFETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDD1が、ドレインとソースとの間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDD1の順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレインとソースとの間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流電源Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Eiの負極と接続される。また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には一次側直列共振コンデンサC11が直列に接続される。一次側直列共振コンデンサC11と直流電源Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
図2は、上記図1に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がONとなる期間TONにおいて0レベルで、OFFとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD1)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDD1を流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD1)に流れるスイッチング電流IQ1と、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンOFF(オフ)タイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンONタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
また、直流電源Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する入力電流I1は、チョークコイルL10、チョークコイルL11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
本願の発明者は、上記基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを適用して電源回路を構成し、この電源回路について実験を行った。この電源回路の構成例を図3の回路図に示す。
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
商用交流電源ACからの交流電力は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により交流電力を整流平滑化して直流電力に変換する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として直流入力電圧Eiが得られる。この直流入力電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
この図において、直流入力電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、図1の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOSFETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧Eiは、チョークコイルL10の直列接続を介してスイッチング素子Q1のドレイン及び絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の巻線端に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。このチョークコイル巻線N10によって形成されるインダクタL10は、図1に示したE級スイッチングコンバータにおけるチョークコイルL10に相当する機能部位となる。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。この場合のスイッチング素子Q1には、MOSFETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDD1を内蔵する。このボディダイオードDD1としては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDD1は、スイッチング素子Q1のON/OFF動作(ONは導通、OFFは非導通を示し、ONとOFFとを交互に繰り返すスイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
また、スイッチング素子Q1のドレインとソースとの間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1によって形成されるリーケージ(漏洩)インダクタL1の有するリーケージインダクタンスとによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。なお、上述の一次側並列共振回路は、チョークコイルL10のインダクタンスの値がリーケージインダクタL1のインダクタンスの値に較べて大きいものとして、チョークコイルL10を考慮に入れなかったが、チョークコイルL10のインダクタンスの値がリーケージインダクタL1のインダクタンスの値に近く場合、一次側並列共振コンデンサCrの値に較べて、後述する一次側直列共振コンデンサC11の値が近い値である場合、平滑コンデンサCiのキャパシタンスの値が一次側並列共振コンデンサCrに近い場合等、チョークコイルL10と平滑コンデンサCiと一次側並列共振コンデンサCrとで形成される共振回路の共振周波数が、一次側並列共振コンデンサCrとリーケージインダクタL1とで形成される共振回路の共振周波数に近い場合には、チョークコイルL10の一次側並列共振回路に対する寄与も考慮しなければならない。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1のドレインとソースとの間電圧であるスイッチング電圧V1としては、そのOFF期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
また、スイッチング素子Q1のドレインとソースとの間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の一方の巻線端(例えば巻き終わり端部)をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、一次巻線N1の他方の巻線端(例えば巻始め端部)を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOSFETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にON/OFF動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送するもので、このために、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。
この場合の絶縁コンバータトランスPITの構造としては、一例として、フェライト材によるE型コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線として、一次巻線N1と二次巻線N2とをEE字形コアの中央磁脚の部分に巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.6mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.75程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは、一般的に疎結合とし評価される結合度であり、その分、絶縁コンバータトランスPITは飽和状しにくくなっている。
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。この二次巻線N2に対しては、二次側直列共振コンデンサC2を直列となる接続関係によりに接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路を形成する。この二次側直列共振回路は、後述する二次側整流回路の整流動作に応じて共振動作を行うが、これにより、二次巻線N2に流れる二次巻線電流は正弦波状となる。つまり、二次側において電流共振動作が得られる。
この場合の二次側整流回路は、上記のようにして二次側直列共振コンデンサC2が直列接続された二次巻線N2に対して、2本の整流ダイオードDo1,Do2と、1本の平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路として形成される。この倍電圧半波整流回路の接続態様としては、まず、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対して、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと、整流ダイオードDo2のカソードを接続する。また、整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。二次巻線N2の巻始め端部と、整流ダイオードDo2のアノードは、二次側アース電位にて平滑コンデンサCoの負極端子と接続する。
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作は次のようになる。先ず、二次巻線N2に誘起される交番電圧である二次巻線N2の両端電圧(二次巻線電圧)の一方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されることになるので、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流を二次側直列共振コンデンサC2に対して充電する動作が得られる。これによって、二次側直列共振コンデンサC2には、二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの両端電圧が生成される。次の、二次巻線電圧V3の他方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo1に順方向電圧が印加されて導通する。このとき、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線電圧V3の電位と、上記二次側直列共振コンデンサC2の両端電圧とが重畳された電位により充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる直流出力電圧Eoが得られることになる。この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期にのみ充電が行われる。つまり、倍電圧半波としての整流動作が得られている。また、このような整流動作では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続により形成される二次側直列共振回路の共振出力について整流動作を行っているものとしてみることができる。このようにして生成される直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
制御回路1は、入力された直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変し、また、これに伴って、1スイッチング周期における期間TONと期間TOFFの時比率(導通角)を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
上記のようにして形成される図3の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、L10、N1、C11)と、先に図1に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、図3におけるスイッチングコンバータは、図1の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL11の巻線を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、図3における一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタL1と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、図3の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図3に示す電源回路は一次側にE級スイッチングコンバータを備えるDC−DCコンバータとして構成される。
また、このようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10または/及びリーケージインダクタL1(共振回路を形成する各部品の定数によって、チョークコイルL10とリーケージインダクタL1との寄与度が異なる)及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD1)に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
ところで、一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、先に従来例として図12に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図12の電源回路では、図14により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のOFF期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図12の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
図3により説明した電源回路は、上記しているように、一次側に電圧共振形コンバータの回路形態を備える複合共振形のスイッチングコンバータである、という点では、図12に示した従来の電源回路と共通の構成を採っているといえる。
しかしながら、この図3の電源回路について実験を行ったところ、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消され、所定の対応負荷電力の全範囲において正常なスイッチング動作が得られることが確認された。
図12に示される電源回路の中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータに二次側直列共振回路を備えた形式の複合共振形コンバータを構成した場合に生じやすいことが確認されている。これは、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路(整流回路)とが同時に動作することによる相互作用が主たる原因となっている。つまり、上記した中間負荷時の異常動作は、一次側電圧共振形コンバータと二次側直列共振回路とを組み合わせた回路構成であることがそもそもの要因であると捉えることができる。このことに基づき、先ず、図3に示す電源回路としては、一次側スイッチングコンバータとして、電圧共振形コンバータに代えて、E級スイッチングコンバータを適用した構成のものを備えることとしたものである。
このような構成が要因となって、図3の電源回路では、二次側に対して直列共振回路を設ける、あるいは設けない場合とに関わらず、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されることとなった。
このようにして、図3の電源回路では、従来例としての図12の電源回路において問題となっていた中間負荷時における異常動作が解消されている。
しかしながら、このようなE級コンバータを多重共振コンバータと組み合わせる場合においては、スイッチング素子Q1のOFF期間に発生する電圧共振パルス電圧であるスイッチング電圧V1のピーク値は、入力交流電圧である入力交流電圧VACの値が、264Vとなる場合には、1600Vにも達してしまい、スイッチング素子Q1の耐圧は、余裕をみて、1800V程度必要となっている。
そこで、本実施形態としては、図3に示した電源回路からさらに推し進め、電源回路としてE級スイッチングコンバータを適用することで、中間負荷時における異常動作を解消したうえで、さらに、スイッチング素子Q1の耐圧が低くとも良いようにするための構成を提案する。
このような本実施形態としての電源回路として、本発明の実施形態の電源回路の構成例を図4に示す。なお、この図において、図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図4に示す電源回路は、電圧共振コンバータの一次側に、チョークコイル巻線N10を有するチョークコイルPCC(インダクタL10)を付加してE級スイッチング動作を実現する。このときに、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と二次巻線N2との結合係数を0.8以下の疎結合で構成する。二次側は、二次巻線N2と並列に二次側部分電圧共振コンデンサC4を接続し、全波ブリッジから直流出力電圧を得る多重共振コンバータを構成する。そして、さらに、この多重共振コンバータのチョークコイルPCC(インダクタL10)と並列に、クランプ用コンデンサC3と補助スイッチ素子Q2の直列回路が接続される。
そして、この補助スイッチ素子Q2のゲートを制御するために、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線として絶縁コンバータトランス補助巻線Ng、抵抗Rg1、抵抗Rg2が設けられている。
ここで、多重共振コンバータ部のスイッチング素子Q1及び補助スイッチ素子Q2のいずれも、MOSFET、IGBT、BJTのいずれであっても良いが、以下の説明においては、MOSFETを用いる場合について説明をする。
すなわち、図4に示す電源回路の主要部分は以下のように接続されている。チョークコイル巻線N10の一方の巻線端を平滑コンデンサCiの正極端子と接続し、チョークコイル巻線N10の他方の巻線端を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一方の巻線端及びスイッチング素子Q1の一方の端子であるMOSFETのドレインとに接続する。すなわち、平滑コンデンサCiの正極端子と一次巻線N1の一方の巻線端及びスイッチング素子Q1の一方の端子であるMOSFETのドレインとの間にインダクタL10が接続されている。そして、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の他方の巻線端とスイッチング素子Q1の他方の端子であるMOSFETのソースとの間に一次側直列共振コンデンサC11を接続している。また、一次側並列共振コンデンサCrの一方の端子は、スイッチング素子Q1の一方の端子であるMOSFETのドレインと接続され、一次側並列共振コンデンサCrの他方の端子は、スイッチング素子Q1の他方の端子であるMOSFETのソースと接続されている。すなわち、スイッチング素子Q1と一次側並列共振コンデンサCrとは並列に接続されている。
さらに、絶縁コンバータトランス補助巻線Ngが設けられ、この絶縁コンバータトランス補助巻線Ngからの電圧が抵抗Rg1と抵抗Rg2とで分圧されて補助スイッチ素子Q2として機能するMOSFETのゲートに加えられるようになされている。補助スイッチ素子Q2のドレインには、クランプ用コンデンサC3が接続されている。すなわち、クランプ用コンデンサC3と補助スイッチ素子Q2とは直列回路を形成している。そして、このクランプ用コンデンサと補助スイッチ素子Q2との直列回路は、チョークコイルPCC(インダクタL10)と並列に接続されている。なお、絶縁コンバータトランス補助巻線Ngは、一次巻線N1から積み上げるように巻かれているが、補助スイッチ素子Q2として機能するMOSFETのソースが一次巻線N1の一方の端子に接続されているので、巻線を積み上げるように接続されているのであり、別巻線として設けても何の問題もない。
上述の回路形態では、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の他方の巻線端とスイッチング素子Q1のソースとの間に一次側直列共振コンデンサC11を接続しており、この絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1に生じるリーケージ(漏れ)インダクタL1と一次側直列共振コンデンサC11とで共振周波数が支配を受ける一次側直列共振回路が形成されている。また、スイッチング素子Q1に並列に一次側並列共振コンデンサCrを接続して、一次巻線N1に生じるリーケージインダクタL1と一次側並列共振コンデンサCrとで共振周波数が支配を受ける一次側並列共振回路が形成されている。さらに、チョークコイルPCC(インダクタL10)に並列接続されるクランプ用コンデンサC3と補助スイッチ素子Q2の直列回路と、を具備しており、補助スイッチ素子Q2は、スイッチング素子Q1が非導通のときに導通するようになされている。補助スイッチ素子Q2はボディダイオードDD2を内蔵しており、一方向きの電流に対しては、ON/OFFの切り替え制御を可能とし、他方向の電流はON状態とし、両方向に電流を通過させることができるようになされている。
スイッチング素子Q1がスイッチング動作を行うのに応じて、一次側並列共振回路の電圧共振動作により、スイッチング素子Q1がOFFとなる期間において一次側並列共振コンデンサCrに対して充放電電流を流す。また、一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1のON時において、一次側直列共振コンデンサC11−一次巻線N1−スイッチング素子Q1の経路で共振電流が流れるようにして共振動作を行う。
なお、本実施形態において、共振周波数が「支配を受ける」とは、一次巻線N1に生じるリーケージインダクタL1の値と一次側直列共振コンデンサC11の値に、一次側直列共振回路の共振周波数の値は、大きく依存し、リーケージインダクタL1の値と一次側並列共振コンデンサCrの値に一次側並列共振回路の共振周波数の値は、大きく依存することを言うものであり、他の部品のこの各々の共振周波数への影響は比較的小さいことを言うものである。厳密に言うとこれらの共振周波数は、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンス値と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンス値との比、平滑コンデンサCiのキャパシタンス値と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンス値との比、インダクタL10のインダクタンス値とリーケージインダクタL1のインダクタンス値との比、も共振周波数に関係するものであるが、これらは、支配的ではないので、共振周波数はこれらによっては支配を受けないものとしている。
具体的に、一次側並列共振周波数について例を挙げて説明すれば、一例としては、一次側並列共振コンデンサCrとリーケージインダクタL1のみではなく、一次側並列共振コンデンサCrとリーケージインダクタL1とを接続する一次側直列共振コンデンサC11の値も一次側並列共振周波数に影響を与える。しかしながら、一次側直列共振コンデンサC11の値が一次側並列共振コンデンサCrの値より非常に大きい場合には、一次側直列共振コンデンサC11の一次側並列共振への寄与は、少ないものであり、一次側直列共振コンデンサC11によって、一次側並列共振周波数は支配を受けないと評価することができる。また、別の例として、インダクタL10と平滑コンデンサCiとの直列回路が、リーケージインダクタL1に並列に接続されていることによって、一次側並列共振周波数に影響を及ぼす。ここで、平滑コンデンサCiの値は、一般的に一次側並列共振コンデンサCrの値に較べて非常に大きなキャパシタンス値を有するので、交流的にはショートとみなせる。しかしながら、インダクタL10の値がリーケージインダクタL1の値よりも、格段に大きい場合には、インダクタL10とリーケージインダクタL1との並列接続によるインダクタンスの値は、略リーケージインダクタL1によって定まるので、一次側並列共振周波数は支配を受けないと評価することができる。なお、部品、配線に生じる浮遊容量成分、インダクタンス成分は、上述の一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振コンデンサC11、リーケージインダクタL1、インダクタL10に含まれるものとしている。
また、上記したような回路形態では、絶縁コンバータトランス補助巻線Ngによって発生する電圧の極性は、スイッチング素子Q1がOFF(非導通)となる場合に補助スイッチ素子Q2がON(導通)となるように接続されている。抵抗Rg1と抵抗Rg2の抵抗値の比率を変化させることによって、補助スイッチ素子Q2がON(導通)となる時間が調整可能とされている。
また、二次側については、絶縁コンバータトランスPITは、二次巻線N2を有し、二次側整流素子は、二次巻線N2から出力される交流電圧を整流する複数の整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4を有し、平滑コンデンサCoは、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4で発生する整流電圧を充電する。
さらに、二次側部分電圧共振コンデンサC4を備えるので、部分電圧共振が生じ、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4のONとOFFとの切り替え点でスイッチング損失が生じることを防止でき、さらなるスイッチング電源回路の効率の向上が図れる。
以下、図4に示すスイッチング電源回路のさらに細部について説明を行う。上記構成による図4の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスPITの構造例を図5に示す。絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE型コアCR1及びE型コアCR2を組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状を有し、樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N1及び絶縁コンバータトランス補助巻線Ngを巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBを上記EE字形コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次巻線N1と絶縁コンバータトランス補助巻線Ng及び二次巻線N2とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして絶縁コンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
そのうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては、図のようにして、ギャップGを形成する。これによって、結合係数kとしては、疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図12に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップGは、E型コアCR1、E型コアCR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。本実施形態においては、コア材として、EER―35を用い、ギャップGを1.6mmとし、一次巻線N1の巻数を60T、二次巻線N2の巻数を30T、絶縁コンバータトランス補助巻線Ngの巻き数を1Tに設定した。また、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについては、k=0.75が設定される。
チョークコイルPCCについても、所定形状サイズのEE字形コアに対して巻線を施す構造とすることで構成できる。本実施形態においては、コア材として、ER―28を用い、ギャップGを0.8mmとし、チョークコイル巻線N10の巻数を50Tとして、インダクタL10のインダクタンス値として、1mH(ミリ・ヘンリー)を得ている。
そして、図4に示した回路形態の電源回路について、後述する実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振コンデンサC11、クランプ用コンデンサC3及び二次側部分電圧共振コンデンサC4の各キャパシタンスについては、
Cr=1500pF
C11=0.01μF
C3=0.1μF
C4=3300pF
を選定した。
Cr=1500pF
C11=0.01μF
C3=0.1μF
C4=3300pF
を選定した。
また、抵抗Rg1、抵抗Rg2については、
Rg1=150Ω(オーム)
Rg2=100Ω
を選択した。
Rg1=150Ω(オーム)
Rg2=100Ω
を選択した。
また、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、直流出力電圧Eoは175Vとしている。
図4の電源回路の実験結果として、図6(a)、図6(b)の波形図を挙げる。この図6(a)では、最大負荷電力Pomax=300W、入力交流電圧VAC=100Vの条件での、スイッチング素子Q1の両端の電圧であるスイッチング電圧V1、スイッチング素子Q1に流れる電流であるスイッチング電流IQ1、チョークコイルPCCに流れる電流である入力電流I1、一次側直列共振コンデンサC11の両端の電圧である一次側直列共振電圧V2、一次巻線N1に流れる電流である一次巻線電流I2、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流である一次側並列共振電流ICr、補助スイッチ素子Q2に流れる電流である補助スイッチ電流IQ2、二次巻線N2に発生する電圧である二次巻線電圧V3、二次巻線N2に流れる電流である二次巻線電流I3を示している。
また、図6(b)では、最大負荷電力Pomax=300W、入力交流電圧VAC=230Vの条件での、スイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、入力電流I1、一次側直列共振電圧V2、一次巻線電流I2、一次側並列共振電流ICr、補助スイッチ電流IQ2、二次巻線電圧V3、二次巻線電流I3を示している。
図6(a)に示す波形図により、図4の電源回路の基本的な動作について説明する。
スイッチング素子Q1は、平滑コンデンサCiの両端電圧を直流入力電圧Eiとして入力してスイッチング動作を行う。
スイッチング電圧V1(スイッチング素子Q1のドレインとソースとの間の電圧である)は、発振・ドライブ回路2からの信号によってスイッチング素子Q1を駆動してドレインとソースとの間がONまたはOFFとされる。ここで、補助スイッチ電流IQ2をクランプ用コンデンサC3に流しているので、スイッチング電圧V1の上昇は、入力交流電圧VACが100Vのときは、460V、入力交流電圧VACが230Vのときは、660Vと低いものとなっている。すなわち、補助スイッチ素子Q2とクランプ用コンデンサC3がない場合には、OFF期間において正弦波状の共振パルス波形が得られるものであるが、この正弦波状の共振パルス波形のピーク部分はクランプされてしまっている。しかしながら、正弦波の立ち上がり近傍の波形は、クランプがされない場合と略同様の波形となっており、スイッチング素子Q1のターンOFF(オフ)タイミングにおいてZVS動作となる効果は十分に得られている。
スイッチング電流IQ1(スイッチング素子Q1に流れる電流である)は、ドレイン側からスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD1)に流れる電流となる。スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がONとなるべき期間TONと、OFFとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1の電圧共振パルスは、一次側並列共振回路の共振動作により、正弦波状の共振波形として得られる。
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンONタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDD1を流れることで負極性の波形となり、続いて反転してドレインからソースに流れることで正極性による波形となる。
入力電流I1(平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入する電流である)は、チョークコイル巻線N10によって形成されるインダクタL10のインダクタンスと、一次巻線N1のリーケージインダクタL1の合成インダクタンスを介するようにして流れることになる。このために、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は脈流となる。
一次側直列共振電圧V2(一次側直列共振コンデンサC11の両端の電圧である)は、スイッチング周期に応じた正弦波に近い交番波形となる。
一次巻線電流I2(一次巻線N1に流れる電流である)は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この場合には、スイッチング電流IQ1と一次側並列共振電流ICrとをほぼ合成するようにして得られる波形となる。スイッチング素子Q1がON/OFF動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である共振パルス電圧が一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、正弦波成分によるスイッチング周期に応じた交番波形となる。
一次巻線電流I2は、期間TONが終了して期間TOFFに至ってスイッチング素子Q1がターンOFFするタイミングでは、一次側並列共振電流ICrとして、一次側並列共振コンデンサCrに対して正極性により流れることで、一次側並列共振コンデンサCrを充電する動作が開始され、これに応じて、スイッチング電圧V1は0レベルから正弦波状により上昇を開始して、電圧共振パルスが立ち上がる。一次側並列共振電流ICrが負極性に反転すると、一次側並列共振コンデンサCrは充電から放電が行われる状態に移行することになり、電圧共振パルスはピークレベルから下降していく。このような動作は、スイッチング素子Q1のターンON、ターンOFF時において、一次側並列共振回路によるZVS動作、及び一次側直列共振回路によるZCS動作が得られていることを示す。このように、一次側並列共振電流ICr(一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流である)は、スイッチング電圧V1の立ち上がり、スイッチング電圧V1の立ち下がりのタイミングで電流を流して、スイッチング素子Q1のスイッチング損失を軽減する。
補助スイッチ電流IQ2(補助スイッチ素子Q2に流れる電流である)は、スイッチング素子Q1がOFFとなるごとに、流れてスイッチング電圧V1をクランプして過大な電圧がスイッチング素子Q1のドレインとソースの間に印加されないようにする。すなわち、一次巻線電流I2と一次巻線N1に発生する電圧および絶縁コンバータトランス補助巻線Ngに発生する電圧との位相は90°ずれており、スイッチング素子Q1がOFFとなるタイミングで補助スイッチ素子Q2がONとなるような電圧が絶縁コンバータトランス補助巻線Ngの両端に発生して、補助スイッチ素子Q2をONとして、クランプ用コンデンサC3に電流を流し、スイッチング素子Q1のドレインとソースの間の電圧上昇を防止する。
二次巻線電圧V3(二次巻線N2の両端の電圧、すなわち、二次側部分電圧共振コンデンサC4との接続回路の両端電圧である)は、整流ダイオードDo1ないし整流ダイオードDo4の導通期間に直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルにクランプされる。
二次巻線電流I3(二次巻線N2に流れる電流)は、部分的な正弦波電流となる。
図7、図8を参照して、図4に示す本実施形態の電源回路の特性を示す。図7は、入力交流電圧VACが100V、および入力交流電圧VACが230Vのときの、負荷電力0Wから300Wの範囲における本実施形態の変形E級スイッチング動作多重共振コンバータのAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fsを示すものであり、図7に示す実線は、入力交流電圧VACの値が100Vのときを示し、破線は入力交流電圧VACの値が230Vのときを示すものである。
また、図8は、入力交流電圧VACが85Vから230Vの範囲における負荷電力300Wときの本実施形態の変形E級スイッチング動作多重共振コンバータのAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)、スイッチング周波数fsを示すものである。
図7に示すように、入力交流電圧VACの値が100Vのときの、AC→DC電力変換効率は、91.0%に達し、スイッチング周波数fsの範囲は、89.3kHzから110.0kHz、スイッチング周波数fsの可変範囲Δfsは、20.7kHzとなる結果が得られた。また、入力交流電圧VACの値が230Vのときの、AC→DC電力変換効率は、94.0%に達し、スイッチング周波数fsの範囲は、132.2kHzから147kHz、スイッチング周波数fsの可変範囲Δfsは、14.8kHzとなる結果が得られた。入力交流電圧VACの値が100V、230Vいずれの場合にも、図12に背景技術として示す回路に較べてスイッチング周波数fsの可変範囲Δfsは小さくなっている。その理由は、絶縁コンバータトランス補助巻線Ngを絶縁コンバータトランスPITに施すことによって、負荷電力、入力交流電圧VACの変動に対してスイッチング素子Q1と補助スイッチ素子Q2との時比率(期間TON/期間TOFF)が変化することによって、可変範囲Δfsを狭くすることができるためである。
図8に示すように、300Wの負荷電力を供給時においては、入力交流電圧VACの上昇にしたがいスイッチング周波数fsは上昇している。また、入力交流電圧VACが170Vから220Vの範囲でAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、94.5%の高効率となっている。このAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の値は、図12に背景技術として示す回路におけるものと較べて広範囲な交流入力電圧範囲で高効率となっている。
先に従来例として図12に示した電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I2となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図12の電源回路の構成で、本実施形態と同等の最大負荷電力Pomax=300Wに対応させる場合には、1000μF程度を選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
これに対して図4に示した本実施形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイル巻線N10−一次巻線N1の直列接続を介してスイッチング素子Q1側に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図6(a)の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無い。また、これに伴って、直流入力電圧Eiにおける商用交流電源周期のリップルも低減される。このようなことから、本実施形態としては、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、リップル電圧が小さいので、図12の回路の場合よりも低い値を選定できる。このようにして、本実施形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。また、入力電流I1の波形は、正弦波状となっているが、これによる高周波ノイズの低減効果も得られる。
また、一次側スイッチングコンバータにE級スイッチングコンバータを適用した図4の回路では、二次側直列共振回路の有無にかかわらず、中間負荷時における異常動作は解消される。そして、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図14(b)に示したように、ターンON(期間TONの開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がONとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
また、図6(a)と図14(a)のスイッチング電流IQ1を比較して分かるように、本実施形態に対応する図6(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、期間TONの終了時以前のタイミングでピークが得られる波形となっている。この図6に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンOFF時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンOFF時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンOFF時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、一次側スイッチングコンバータについてE級スイッチング動作としたことで得られるものである。また、本実施形態では、入力電流I1の波形は、脈流となっているが、これによる高周波ノイズの低減効果も得られる。
さらに、補助スイッチ素子Q2およびクランプ用コンデンサC3を設け補助スイッチ電流IQ2を、スイッチング素子Q1のOFFに同期させて流すことによって、スイッチング素子Q1に加わる電圧の最高電圧値を入力交流電圧VACの値が230Vのときであっても、660V程度として、スイッチング素子Q1に要求される耐電圧を大幅に低くして、スイッチング素子Q1の選択を容易とするとともに、スイッチング電源回路のコストを安いものとできる。例えば、補助スイッチ素子Q2およびクランプ用コンデンサC3を設けない場合には、スイッチング素子Q1の耐電圧としては、1800V程度必要となり、この場合に、MOSFETを用いると、ON抵抗の値は7Ω程度である。一方、補助スイッチ素子Q2およびクランプ用コンデンサC3を設ける場合には、スイッチング素子Q1の耐電圧としては、900Vとすれば、十分であり、このときのON抵抗の値は、1.2Ω程度となり、ON抵抗による損失も軽減され、AC→DC電力変換効率が向上するとともに、スイッチング素子Q1の選択が容易でコストも安いものとなる。なお、補助スイッチ素子Q2における電力消費は小さく、ゲートドライブ回路は、抵抗Rg1、抵抗Rg2および絶縁コンバータトランス補助巻線Ngの追加のみであり、コスト的な上昇は、スイッチング素子Q1の耐電圧を低くすることによるコスト低下分を勘案すると、全くなく、逆に装置全体のコストは低減している。
(他の変形例について)
図9、図10に二次側回路の変形例、図11に一次側回路の変形例を示す。図9に示す回路は、2倍電圧半波整流回路であり、上述の実施形態と同様な効果が得られるが、特に、倍電圧の整流電圧が得られる利点がある。また、図10は、二次巻線N2と二次巻線N2’とを設ける中点タップ付き巻線による全波整流回路であり上述の実施形態と同様な効果が得られるものであるが、特に、整流ダイオード2個で全波整流ができる利点がある。
また、図11に示す回路は、補助スイッチ素子Q2の駆動電圧を発生するための絶縁コンバータトランスPITの絶縁コンバータトランス補助巻線Ngに代えてチョークコイルPCCに追加のチョークコイル補助巻線Ng’を配し、抵抗Rg3と抵抗Rg4とで分圧した電圧を補助スイッチ素子Q2のゲート電圧として印加して、上述の実施形態と同様な効果が得られるものであが、特に、チョークコイルPCCと補助スイッチ素子Q2に関係する回路部とを接近して配置できる利点がある。また、抵抗Rg3、抵抗Rg4については、Rg3=68Ω、Rg4=100Ωとした。
また、本発明としては、上記各実施形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transisitor)、バイポーラトランジスタなど、MOSFET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、C3 クランプ用コンデンサ、Ci 平滑コンデンサ、C11 一次側直列共振コンデンサ、Cr 一次側並列共振コンデンサ、Do1、Do2、Do3、Do4、 (二次側)整流ダイオード、Co(二次側)平滑コンデンサ、Di ブリッジ整流回路、L1、L2 リーケージ(漏れ)インダクタ、N10 チョークコイル巻線、L10 インダクタ、N1 一次巻線、N2 二次巻線、Ng 絶縁コンバータトランス補助巻線、Ng’ チョークコイル補助巻線、PIT 絶縁コンバータトランス、PCC チョークコイル、Q1 スイッチング素子、Q2 補助スイッチ素子
Claims (6)
- 商用交流電源を整流平滑化して整流平滑電圧を生成する一次側整流素子及び一次側平滑コンデンサを有する一次側整流平滑回路と、
上記整流平滑電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング素子と、
上記交流電圧を一次巻線に入力し、二次巻線に交流電圧を生成するコンバータトランスと、
上記二次巻線に生じる交流電圧を整流平滑して出力直流電圧を生成する二次側整流素子及び二次側平滑コンデンサを有する二次側整流平滑回路と、
上記出力直流電圧に基づいて上記スイッチング素子を制御するスイッチング素子制御手段と、
を備えるスイッチング電源回路において、
上記一次側整流平滑回路の出力端と上記コンバータトランスの一次巻線の一方の巻線端及び上記スイッチング素子の一方の端子との間に介在するチョークコイルと、
上記コンバータトランスの一次巻線の他方の巻線端と上記スイッチング素子の他方の端子との間に一次側直列共振コンデンサを接続して形成され、上記コンバータトランスの上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスと上記一次側直列共振コンデンサとで共振周波数が支配を受ける一次側直列共振回路と、
上記スイッチング素子に並列に一次側並列共振コンデンサを接続して形成され、上記一次巻線に生じる漏れインダクタンスと上記一次側並列共振コンデンサとで共振周波数が支配を受ける一次側並列共振回路と、
上記チョークコイルに並列接続されるクランプ用コンデンサと補助スイッチ素子の直列回路と、を具備し、
上記補助スイッチ素子は、上記スイッチング素子が非導通のときに導通することを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記補助スイッチ素子は、上記コンバータトランスに巻かれるコンバータトランス補助巻線によって導通および非導通が制御されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 上記補助スイッチ素子は、上記チョークコイルに巻かれるチョークコイル補助巻線によって導通および非導通が制御されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 上記二次側整流平滑回路は、上記コンバータトランスの二次巻線に並列に接続される部分共振コンデンサを有するダイオードブリッジ整流回路を具備することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 上記二次側整流平滑回路は、上記コンバータトランスの二次巻線に並列に接続される部分共振コンデンサを有する2倍電圧整流回路を具備することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
- 上記二次側整流平滑回路は、上記コンバータトランスの二次巻線に並列に接続される部分共振コンデンサを有する中間タップ方式全波整流回路を具備することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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