JP2007332413A - 加工性に優れる高強度Co系金属ガラス合金 - Google Patents

加工性に優れる高強度Co系金属ガラス合金 Download PDF

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Abstract


【課題】良好な加工性及び高強度を兼ね備え、かつ高いガラス形成能を有するCo系金属
ガラス合金の提供。
【解決手段】(Co1-xFex)100-a-b-c-dabcd(ただし、Mは、Mo, Crから選
択される1種又は2種、Lは、Y、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択される一種以
上の元素である。また、0≦x≦0.7、a,b,c,dは、それぞれ原子%であり、2
2≦a≦35、6≦b≦20、1≦c≦11、10≦b+c≦26、0.5≦d≦4であ
る)で示される組成からなるCo系金属ガラス合金。過冷却液体領域の温度幅(ΔTx)
が50K以上、室温における圧縮強度が4000MPa以上である。肉厚が最大14mm
で、ガラス相の体積分率が100%である金属ガラス合金を提供できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、良好な加工性及び高強度を兼ね備え、かつ、高いガラス形成能を有するCo
系金属ガラス合金に関するものである。
金属ガラス合金は、原子配列がランダムな構造をもつ金属であり、その原子配列の特異
性から生じる種々の優れた特性を有する。例えば、低ヤング率、高強度、高耐食性などの
特色を有する。また、従来のアモルファス合金はガラス形成能が低いために、10K/
sec以上の高い冷却速度で溶湯を凝固しなければならず、そのため作製できる形状は数
十μmの厚さのリボン形状、細線状又は粉末状の形状に限られていた。
しかし、金属ガラス合金は、その高いガラス形成能により遅い冷却速度で溶湯を凝固し
て、厚みが数十mmのバルク状の金属ガラス合金も作製が可能となっており、種々の形状
の金属ガラス合金が作製できるようになっている。このため、金属ガラス合金の優れた特
性を利用した製品の開発が近年、積極的に行なわれている。このようなバルク状の金属ガ
ラス合金は、Mg系、ランタノイド(Ln)系、Zr系、(Fe、Co)系、Pd−Cu
系、又はTi系合金など種々の合金があり、その中でも(Fe、Co)系金属ガラス合金
は、良好な軟磁気的特性のみならず、高強度であるという特色を有しており、機械構造部
品への応用が図られている。
本発明者らは、これまで、(Fe、Co)基金属ガラス合金を高強度材料として用いる
べく、種々の開発を行なってきた。例えば、高強度な(Fe、Co)系金属ガラス合金に
関して本発明者らは、先に、過冷却液体領域の温度幅が60K以上であり、式(Fe1-a-
bCoaNib100-x-y-zxyz[式中、Mは、Zr,Nb,Ta,Hf,Mo,W
,Crのうちの1種又は2種以上からなる元素であり、Tは、Ru,Rh,Pd,Os,
Ir,Pt,Al,Si,Ge,C,Pのうちの1種又は2種以上の元素であり、かつ0
≦a≦0.29、0≦b≦0.43、5原子%≦x≦15原子%、17原子%≦y≦22
原子%、0原子%≦z≦5原子%である]からなる高硬度金属ガラス合金を発明し、特許
出願した(特許文献1)。
また、Fe−Co−B−Si−Nb系金属ガラス合金が高強度と高ガラス形成能を兼ね
備えた合金であることを見出し、該合金に係わる発明について特許出願した(特許文献2
)。一方、特許文献1記載の合金のガラス形成能を改善した合金のFe−Y−Mn−Mo
−Cr−C−Bからなる金属ガラス合金に係わる発明が本発明者以外によりなされ、特許
出願されている(特許文献3)。特許文献1と3記載の合金の違いはY添加の有無だけで
あり、特許文献3には、Yの添加によりガラス形成能が上昇し、金型鋳造により直径12
mmの金属ガラス合金の鋳造材が作製できることが記載されている。
また、Fe−Y−Mo−Cr−C−B系合金においても金型鋳造により直径12mmの
金属ガラス合金の鋳造材が作製できることが、非特許文献1に開示されている。特許文献
3記載の合金の組成のように、希土類金属が添加されている合金系として、本発明者らは
、Feを主成分として、希土類金属を2〜15原子%添加した金属ガラス合金粉末の焼結
体に係わる発明を特許出願している(特許文献4)。
また、特許文献4に記載された合金に近い合金として、非特許文献2において、金型鋳
造法で直径1.2mmの金属ガラス合金鋳造材を作製できることを開示している。
さらに、金属ガラス合金は加熱により生じるガラス遷移により、材料の粘性が急激に減
少し塑性流動加工を行なうことが可能であり、材料加工が容易であるという特長を有して
いる。その加工方法については特許文献5、6等に開示されている。
金属ガラス合金は粘性低下に伴い塑性流動が生じやすくなるので、ガラス遷移温度以上
に加熱し、材料の粘性を下げることが加工を容易にすることになる。しかし、ガラス遷移
温度を越えて加熱を続けると金属ガラス合金は結晶化のために脆化し、実用することがで
きないという問題点も有する。よって、材料の加工を行なう場合、結晶化しない範囲でガ
ラス遷移温度以上の温度に上げることが必要で、その金属ガラス合金のガラス遷移温度(
Tg)から結晶化開始温度(Tx)までの間の温度幅、すなわち過冷却液体領域の温度幅
(以下、「ΔTx」と記す。)(ΔTx=Tx−Tg)が広いことが粘性流動加工を実施
するにあたり重要となる。そのため、近年、ΔTxが広い金属ガラス合金が非常に注目さ
れている。
特開平10−265917 特開2005−256038 WO2005017223 特開平11−71645号公報 特開平6−93395号公報 特開2005−201789号公報 V. Ponnambalam, S. J. Poonand G.J. Shiflet; "Fe-based bulk metallic glasses with diameter thickness larger than one centimeter", J. Mater. Res. 19(2004), 1320-1323 Itoi T and Inoue A; "Thermal stability and soft magnetic properties of Co-Fe-M-B(M=Nb, Zr) amorphous alloys with large supercooled liquid region", Mater. Trans., JIM 41(2000), 1256-1262
金属ガラス合金は通常の結晶金属と異なり、引張試験において塑性伸びを示さない合金
が大半を占め、塑性伸びを示す組成においても、2、3%程度の伸びしか示さず、単軸応
力下では延性が非常に少ない。そのため、通常の結晶金属のように圧延や鍛造などの塑性
加工が困難である。さらに、金属ガラス合金は通常の金属に比べて強度が高く、最大で5
000MPaに達する合金さえあり、鋼材などに比べて切削加工性が良好であるといえな
い。しかし、金属ガラス合金はガラス遷移温度以上で材料の粘性が急激に低下する特徴が
あり、このことを利用して、過冷却液体領域での種々の加工(粘性流動加工)を施すこと
ができ、粘性流動を利用することにより加工性に優れた材料となり得る。
また、通常の結晶金属であっても数十ナノメートルの微細加工を行なうためには特殊な
方法で機械加工を行なう必要があり、その特殊な加工を個々に行なわなければならないた
め、微細加工をした加工品は非常に高価であった。しかし、金属ガラス合金の場合、粘性
流動加工により数十ナノメートルの微細表面加工した金型でもその表面形状を転写するこ
とができるために、過冷却液体領域において、金型を利用して鍛造又は転写することによ
りナノメートルレベルの加工品を容易に作製できる。すなわち、金属ガラス合金はナノレ
ベルの加工が容易であり、加工性が高いといえる。
このように、金属ガラス合金は粘性流動を用いることにより種々の加工を容易になし得
るが、その加工性について良否が存在する。一般に、金属ガラス合金のΔTxが狭いと、
過冷却液体領域の温度に保持しても短時間で結晶化が生じてしまう。金属ガラス合金は結
晶化すると過冷却液体でなくなるために、粘性流動加工できなくなる。また、結晶化前に
加工されていた部位も析出した結晶に起因して脆化しており、実用できなくなる。このよ
うに、金属ガラス合金の加工性を高めるためには、ΔTxが広いことが必要である。
粘性流動による加工性が高い金属ガラス合金を得るために、ΔTxとガラス形成能の観
点から上述の文献を見ると、例えば、特許文献1に開示されている金属ガラス合金では、
Fe56Co7Ni7Zr8Ta220組成においてΔTxが88Kであることが実施例に記載
されており、ΔTxが広い。しかし、結晶相の析出が認められない直径5mmの金属ガラ
ス合金棒材を作製できると記載されている合金はFe61Co7Zr10Mo5215の組成
であるが、この組成の合金のΔTxは64Kであり、高いガラス形成能と広いΔTxを兼
ね備えた合金であるとはいえない。
特許文献2においても、ΔTxが60Kである金属ガラス合金が実施例において記載さ
れている。しかし、直径5mmの金属ガラス合金棒材が作製できる組成においては、ΔT
xは55Kにすぎないため、高いガラス形成能と広いΔTxを兼ね備えた合金であるとは
いえなかった。
特許文献3については、直径12mmに達する金属ガラス合金棒材が作製できることが
記載されており、ガラス形成能はFe基金属ガラス合金の中では最も高い合金であるとい
える。しかし、特許文献3中に記載されているDSCからΔTxを読み取ると、ΔTxは
、40Kにすぎない。さらに、非特許文献1は特許文献3の発明者と同一の者が著者であ
り、非特許文献1には、特許文献3と同一組成の金属ガラス合金棒材の外観写真が掲載さ
れているが、外観写真は鋳造材上部が破壊しており、脆い材料であることが写真からも判
断できる。
非特許文献2には、ΔTxが98Kに達するCo40Fe22Nb6Zr230組成のCo基
金属ガラス合金が記載されているが、金型鋳造法によって直径1.5mmの金属ガラス合
金棒材しか得ることができず、広いΔTxと高いガラス形成能を兼ね備えた合金であると
いえなかった。以上のように、(Co、Fe)基金属ガラス合金に高いガラス形成能と広
いΔTxを兼ね備え、さらに機械的特性に優れる金属ガラス合金は見出されていなかった
本発明者らは、上述の課題を解決することを目的として、種々の合金組成及び元素の組
合せについて探索した結果、Co−(Cr,Mo)−C−B系合金にランタノイド系の特
定の元素を微量添加することにより広いΔTx・良好な機械的特性・高ガラス形成能の3
種の特性を兼ね備えた合金が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、(Co1-xFex)100-a-b-c-dabcd(ただし、Mは、Mo,
Crから選択される1種又は2種、Lは、Y、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択さ
れる一種以上の元素である。また、0≦x≦0.7、a,b,c,dは、それぞれ原子%
であり、22≦a≦35、6≦b≦20、1≦c≦11、10≦b+c≦26、0.5≦
d≦4である)で示される組成からなることを特徴とするCo系金属ガラス合金である。
この合金は、ΔTxが50K以上、圧縮強度が4000MPa以上である。
本発明の金属ガラス合金は、銅鋳型鋳造法により製造して、ガラス相の体積分率が10
0%である直径6mm以上の棒材を得ることができる高いガラス形成能を有し、ガラス相
の体積分率が100%である最大直径約14mmの棒材の作製が可能であり、従来のCo
系金属ガラスで達成されているガラス形成能のレベルを大きく上回る。したがって、本発
明により、肉厚が1mm程度よりも大きいバルクの合金材料を提供できるが、当然、10
0μm〜1mm程度の厚さや直径の薄帯や細線を提供することも容易である。
また、本発明のCo系金属ガラス合金は、粘性流動加工により製造される機械部品用材
料として好適である。
本発明のCo系金属ガラス合金は、ΔTxが50K以上を示すので、粘性流動加工をす
ることが容易である。また、金型鋳造法でガラス相単相からなる厚さ又は直径1mm以上
の板材又は棒材を容易に作製でき、最大14mmでもガラス相単相の合金を作製できる優
れたガラス形成能を有している。
本発明のCo系金属ガラス合金は、式(Co1-xFex)100-a-b-c-dabcd(ただし
、Mは、Mo, Crから選択される1種又は2種、Lは、Y、Dy、Ho、Er、Tm、
Ybから選択される一種以上の元素である。また、0≦x≦0.7、a,b,c,dは、
それぞれ原子%であり、22≦a≦35、6≦b≦20、1≦c≦11、10≦b+c≦
26、0.5≦d≦4である)で示される組成からなる。
本発明において、式中の(Co1-xFex)のxで示すCoに対するFeの置換濃度は0以
上0.7以下である。Fe含有量が少ない組成の合金はΔTxが広く、加工性に優れるが
、ガラス形成能はFeの含有量が多い組成が高い傾向にある。Coに対するFeの置換濃
度が0.7を越えると、ΔTxが、50K未満となり加工性に優れた合金とはいえない。
ΔTxの観点からは、好ましくはxの値は、0.5以下、さらに好ましくは0.2以下で
ある。
また、式中のMaで示すMo及びCrから選択される1種又は2種の元素は、22原子
%以上、35原子%以下であり、好ましくは、25原子%以上、33原子%以下である。
さらに好ましくは、Mo及びCrの2種からなりCrが13原子%以上、17原子%以下
及びMoが12原子%以上、16原子%以下であることが望ましい。Mo及びCrから選
択される1種又は2種の元素が22原子%未満又は35原子%を越えるとガラス形成能が
急激に低下するために、そのような組成の合金は種々の製造プロセスに供することができ
なくなる。
さらに、式中のC(炭素)は6原子%以上20原子%以下であり、好ましくは、10原
子%以上、17原子%以下である。また、B(ホウ素)は、1原子%以上、11原子%以
下であり、好ましくは、3原子%以上、9原子%以下である。また、CとBの含有量の合
計は10原子%以上、26原子%以下であり、好ましくは、15原子%以上、23原子%
未満である。C及びBを本発明の合金組成範囲より多く含有すると脆化するために実用に
供することができない。
また、C及びBが本発明の合金組成範囲より少ない場合は、ガラス形成能が低下するた
めに、種々のプロセスに供することができなくなり、またΔTxが低下するために粘性流
動加工が困難になる。また、C及びBから選択される1種又は2種の元素が26原子%を
越えると冷却速度が低い作製プロセスで作製した場合、ガラス相であっても金属ガラス合
金自体が脆くなる傾向にある。
式中のLdで示されるY、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択される1種以上の元
素は、ガラス形成能を高めるために必須な元素である。その含有量は0.5原子%以上、
4原子%以下であり、好ましくは、1原子%以上、3原子%以下である。さらに、ガラス
形成能の観点から、好ましくは、Y、Er、Tmから選択される1種以上の元素が1原子
%以上、3原子%以下である。ランタノイド元素にはY、La、Ce、Ndなどが存在す
るが、La、Ce、Ndなどは、ガラス形成能を殆ど高めないために、含有されるランタ
ノイド元素は、Y、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの元素群から選択されなければならな
い。Y、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択される1種以上の元素は0.5原子%未
満又は4原子%を越えると、ガラス形成能が低下し結晶が析出するために合金が脆化し実
用に供せない。
本発明の合金において、ΔTxは50K以上であり、好ましくは60K以上、さらに好
ましくは80K以上である。ΔTxは、昇温速度40K/minで合金を加熱し、示差走査熱量
計によりガラス遷移に伴う吸熱反応が生じ始める温度(Tg)と結晶化に伴う発熱反応が生
じ始める温度(Tx)との温度差(Tx−Tg)である。熱処理等で一部結晶化している場
合などは、ΔTxが狭くなり、材料を加熱して塑性流動加工することが困難になるため、
本発明ではΔTxを50K以上と規定した。このΔTxは最大で90K程度になる。
さらに、本発明の合金の特徴は4000MPa以上の圧縮強度である。ガラス相が得ら
れる作製プロセスによれば、通常、本発明の合金組成範囲内であれば、4000MPa以
上の圧縮強度を示す。しかし、C及びBから選択される元素が合計で23原子%を超える
金属ガラス合金に熱処理を施した際など、材料が脆化するために4000MPa以上にな
らない場合がある。本発明の合金は高強度であることも特徴であり、強度を4000MP
a以上と限定した。この圧縮強度は最大で4200MPa程度になる。
本発明の合金はガラス相を有していなければならない。そのガラス相の量(体積分率)
は80%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、90%以上である。80%未満
であると合金は急激に脆化する傾向にある。上記のガラス相の量は、示差走査熱量計によ
り結晶化の発熱量を測定し、リボン材などの10K/s以上の高冷却速度で作製した金
属ガラス合金の結晶化の発熱量と比較することにより容易に測定できる。
本発明において、ガラス相とはX線回折法により試料を測定したプロファイルに結晶相
に起因する鋭いピークが存在せず、ガラス相のブロードなピークのみが存在する状態を示
している。
本発明の金属ガラス合金の構成元素を含有している合金はこれまでに特許文献3及び特
許文献4に開示されているが、特許文献3記載の合金はガラス形成能については本発明の
合金と同程度であるがΔTxについては、40K以下であるので、金属ガラス合金鋳造材
を作製しても、粘性流動加工が困難である。また、Feを主体としたFe−Cr−Mo−
C−B−Y系合金は、脆いために構造部品として実用することはできない。
一方、特許文献4は、実施例に希土類金属としてNdを用いた場合を記載しているのみ
で、それ以外の希土類元素について実施例は開示されておらず、またガラス形成能につい
ても一切開示されていない。また、特許文献4記載の合金組成は、B(ホウ素)の含有量
が本発明の合金組成から大きく逸脱しておりガラス形成能が低く、バルク状の構造部品と
して実用することができない。本発明は、特許文献1に開示された合金に基づいて改良を
重ね、Fe:Co比でCo含有比が多い組成でΔTxが広く、また、希土類金属の中でも
、特にY及びDy、Ho、Er、Tm、Ybを添加することによりガラス形成能が急激に
向上するという発見に基づいており、特許文献1、3及び4に開示された合金とは異なる
ものである。
本発明の金属ガラス合金は、銅鋳型鋳造法の他、公知の種々の方法で作製が可能である
。薄板形状の材料であれば、単ロール法や双ロール法により作製できる。また、微細な部
材であれば射出成形法を用いることができる。細線形状であれば、回転液中紡糸法や溝急
冷法により作製できる。また、石英ガラス製などのるつぼ中で溶解した後に水中で急冷す
る方法も用いることが可能である。さらに、ガスアトマイズ法などの方法により金属ガラ
ス合金粉末を作製した後、固化成形することも可能である。いずれの方法によって作製し
ても、本発明の金属ガラス合金は粘性流動を利用した2次加工が可能であり、また粉末の
固化成形も容易である。
[実施例1〜15、比較例1,2]
所定割合の純物質をArガス雰囲気中で混合し、アーク溶解により母合金を作製した。
次に銅鋳型を用いた射出鋳造法により棒状の試料を作製し、作製した試料の断面をX線回
折法により相の同定を行なった。
図3に、銅鋳型鋳造法により直径2〜16mmの合金試料を作製するのに用いた装置を
側面から見た概略構成を示す。母合金を作り、これを先端に小孔(孔径0.5〜4mm)を有す
る石英管3に充填した後、垂直な孔5を鋳込み空間として設けた銅製鋳型6の直上に石英
管3を設置した。その後、高周波発生コイル4により母合金を加熱溶融した。次いで、石
英管3内の溶融金属1をアルゴンガスの加圧(0.1〜1.0 Kg/cm2)により石英管3の小孔
2から噴出し、銅製鋳型6の孔に注入してそのまま放置して凝固させて棒状の試料を得た

Figure 2007332413
表1に作製した試料の組成とガラス相が得られる臨界直径の結果を示す。臨界直径は、
各直径の鋳造材をX線回折法により相の同定を行い、ガラス相の体積分率100%が得ら
れる最大直径を臨界直径とした。また、相の同定においては、図1に示す実施例1の棒材
のX線図形のように、結晶から生じる鋭いピークが無く、かつブロードなピークのみが存
在する試料をガラス相と判断し、結晶から生じる鋭いピークがある試料を結晶と判断した
また、ガラス相からなる試料は、ガラス遷移温度及び結晶化温度の測定も行なった。ガ
ラス遷移温度及び結晶化温度は、示差走査熱量計(TA社製DSC2910)を用いて、
40K/minの昇温速度で測定を行なった。また、図2に示す実施例1のDSC測定結
果のように、ガラス遷移に起因する吸熱反応が生じるオンセット温度をガラス遷移温度と
し、結晶化に起因する発熱反応が生じるオンセット温度を結晶化温度とした。
表1に示すように、本発明の合金は全て6mm以上の臨界直径を示す。実施例5,6で
は最大14mmである。金型内に鋳込み空間として設けた垂直な孔の直径に棒状の試料の
直径は相当し、この直径が大きいほど冷却速度が低下するので、本発明の合金は従来の合
金に比べて低い冷却速度でガラス相を得ることができることがわかる。すなわち、ガラス
形成能が高いといえる。しかし、比較例1、2に示すように、本発明の合金組成範囲から
逸脱した合金は、直径2mmでガラス相単相を得ることができず合金が脆化するため実用
に供せない。また、本発明の合金はΔTxが50K以上と広いため、ガラス遷移を利用し
た粘性流動加工を行なうことが可能である。
[実施例16、比較例3,4]
表2に示す組成のガラス相からなる直径2mmの棒材(実施例16)を実施例1と同様
に金型鋳造法で作製した。同様に、比較例3,4の棒材を作製した。これらの棒材のガラ
ス遷移を利用した粘性流動加工の良否について、熱機械測定を行なった。これらの棒材か
ら切り出し、直径2mm、長さ4mmの試験片とした。熱機械測定においては、昇温速度
10K/min、圧縮荷重0.64MPaで試験を行ない、ガラス遷移に伴う粘性低下で
長さが変化する変化量を時間当たりの変化量として変化量を比較した。
Figure 2007332413
また、本発明の合金の機械的性質についても測定を行なった。試験片は表2に示す組成
の直径2mm、長さ50mmの鋳造棒を金型鋳造法で作製し、長さ4mmに切出して作製
した。圧縮試験はインストロン万能試験機により、歪み速度5×10−4の速度で、室温
で圧縮を行い、破壊時の応力を圧縮強度として測定した。表2に結果を示す。
本発明の合金はΔTxが広いので、ガラス遷移温度(Tg)よりも50K以上高い高温
で加工を行なうことができる。そのため、表2の実施例16に示すように、粘性の低下も
顕著になり0.64MPaの小さな応力でも変形する。その変形速度は、金属ガラス合金
で粘性流動加工が行なえる比較例4と同等の値を示す。
一方、比較例3に示すように、ΔTxが狭い合金は最大変形速度は本発明の合金と比べ
て一桁以上も遅く、実用的に加工ができない。また、ΔTxが広いZr基合金は、本発明
の合金と同等の加工速度を得ることができるが、室温での強度が約2000MPaであり
、本発明の金属ガラス合金の強度の1/2にしか満たない。
[実施例17]
実施例1の組成を有する厚さ0.1mmの金属ガラス合金のリボン材を単ロール液体急
冷法により作製した。深さ0.25μm、幅1μmの三角溝を複数個有する金型をこのリ
ボン材に10MPaの圧力でプレスを行ないながら、アルゴン雰囲気中で900Kまで昇
温し10分保持後、急速に冷却を行った。次いで、プレスしたリボン材表面の状態をコー
ンフォーカル顕微鏡により観察した。リボン材表面は、金型の表面を転写し、深さ0.5
μm、幅1μmの三角溝を有しており、転写性も良好であった。
本発明のCo系金属ガラス合金は、良好な加工性及び高強度を兼ね備え、かつ銅鋳型鋳
造法により直径が最大14mmのガラス相単相の金属ガラス合金棒材を製造できる程の高
いガラス形成能を有するので、種々の精密部品を作製できる。さらに、本発明の合金は4
000MPa以上の圧縮強度を有するので、高い強度が要求される種々の機械部品や耐摩
耗性が必要な部品を提供することができる。特に、精密で耐摩耗性が必要な部品として、
マイクロギヤや軸受け等の複雑形状を有する精密小型部品や、精密樹脂部品用の金型とし
て本発明のCo系金属ガラス合金を好適に用いることができる。
実施例1の棒材試料の断面のX線回折図形である。 実施例1の棒材試料のDSC測定結果を示すグラフである。 実施例及び比較例の合金試料を作製するのに用いた装置の概略側面図である。

Claims (4)

  1. (Co1-xFex)100-a-b-c-dabcd(ただし、Mは、Mo, Crから選択される1種
    又は2種、Lは、Y、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選択される一種以上の元素であ
    る。また、0≦x≦0.7、a,b,c,dは、それぞれ原子%であり、22≦a≦35
    、6≦b≦20、1≦c≦11、10≦b+c≦26、0.5≦d≦4である)で示され
    る組成からなるCo系金属ガラス合金。
  2. 過冷却液体領域の温度幅(ΔTx=Tx−Tg;ただし、Txは、結晶化開始温度、Tg
    は、ガラス遷移温度)が50K以上、室温における圧縮強度が4000MPa以上である
    ことを特徴とする請求項1記載のCo系金属ガラス合金。
  3. 厚さ又は直径が1mm〜14mmの板材又は棒材であり、ガラス相の体積分率が100%
    であることを特徴とする請求項1又は2記載のCo系金属ガラス合金。
  4. 請求項1又は2に記載のCo系金属ガラス合金からなる、粘性流動加工により製造される
    機械部品用材料。
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