JP2007327210A - 鋼構造物の補強方法および補強構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 1)鋼構造物における棒状部材である母材2の外側を、側面の一部に開口3Xを有する鋼板製の筒形の型枠3(補強部材を兼ねたもの)にて囲み、2)母材2を巻くように上記型枠3内にコンクリート4を充填し、そのコンクリート4が固化したのちに、3)開口3Xを塞ぐFRPシート5を、上記開口3Xにおけるコンクリート4の表面および開口縁部の型枠3の表面(開口の周囲の部分)に対して隙間がないように接着する。
【選択図】 図1
Description
1) 鋼構造物における棒状部材の外側を、側面(周面)の一部に開口を有する鋼板製の筒形の型枠(補強部材を兼ねたもの)にて囲み、
2) 棒状部材を巻くように上記型枠内(つまり棒状部材との間)にコンクリートを充填し、そのコンクリートが固化したのちに、
3) 上記開口を塞ぐFRPシートを、上記開口におけるコンクリートの表面および開口縁部の型枠表面(開口の周囲の部分)に対して隙間がないように接着する
ことを特徴とする。
しかし、この補強方法はさらに、上記2)のコンクリートの充填に使用する上記1)の型枠の開口を、上記3)にしたがってFRPシートで塞ぐという特徴を有している。上記3)のように、開口から露出するコンクリートの表面と開口縁部の型枠表面とに対し隙間がないようFRPシートを接着すると、つぎのような好ましい作用がもたらされる。
a) FRPシートの機械的強度(とくに、棒状部材の幅の方向への引張強さ)に基づいて上記開口の広がることが防止され、したがって、開口をはさむ型枠間の間隔が広がることが防止される。そのため、鋼板製の型枠とコンクリートとが剥離することがなく、両者が一体の複合材として好ましい強度を発揮する。
b) 棒状部材に引張や曲げの荷重が作用するときも、FRPの機械的強度(とくに、棒状部材の長さの方向への引張強さ)に基づいて、開口部またはその付近においてもひずみが抑制され、したがってコンクリートにひび割れが発生することが防止される。
c) FRPは上記のとおり隙間がないように接着するため、開口を通して型枠やコンクリートの中に水が浸透することが防止される。こうして水の浸透が防止されると、型枠が錆びたりコンクリートが劣化したりすることが防止され、補強効果が長期間持続することとなる。
d) 以上のように、開口に起因する補強効果の低下や耐用寿命の短縮が防止されることから、開口を大きく形成しておくことが可能である。開口を大きくできると、それを通して行う型枠内へのコンクリートの充填の状況が観察されやすく、したがって当該充填作業を含む施工の容易性・確実性が向上する。
e) コンクリートや鋼板製の型枠を主に使用して補強する方法であって、特許文献1の手段に比べると特殊な材料(炭素繊維強化プラスチックやその他のFRPシート)の使用量が少ないため、補強に要するコストが低い。
そのような型枠であれば、開口が大きいため、型枠と棒状部材との間へのコンクリートの充填を、充填状況を観察しながら円滑かつ確実に行うことができる。
そのようなFRPシートを、強化繊維の方向が棒状部材の幅の方向および長さの方向と一致するように使用すると、各方向の強化繊維が効果的に、上記開口の広がりを抑えて型枠とコンクリートとの剥離を防止し、かつ、棒状部材に作用する引張や曲げに抗してコンクリートのひび割れ発生を防止する。また、FRPシートの樹脂にひび割れが発生することを防止して水の浸透防止の効果を長続きさせる、という利点もある。
このようにしてFRPシートを接着すると、あらかじめ固化したFRPシートを用いるよりも、上記開口におけるコンクリートの表面および開口縁部の型枠表面に対して隙間なく接着することが容易であり確実である。また、型枠における開口の位置によってはFRPシートの一部を折り曲げる必要が生じる場合(たとえば図1の例)もあるが、こうして接着するならそのような場合の対処も容易である。このような点から、型枠やコンクリートの内部への水の浸透が確実に防止されることにもなる。
これらの強化繊維は、高い強度やヤング係数を有し、FRPシートとしてコンクリートの表面や開口縁部の型枠表面に接着されることによって効果的な補強作用をもたらす。なお、いずれの強化繊維を使用する場合にも、FRPシートの樹脂の部分には、常温硬化型もしくは熱硬化型のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはフェノール樹脂などを、繊維間に含浸させることにより使用することができる。
棒状部材の表面各部と型枠との間は、コンクリートを隅々まで充填させる都合上、50mm程度以上の間隔があることが望ましい。棒状部材の周囲全域にこのような間隔を持たせるためには、型枠は、棒状部材に直接に接触しないよう、いわば浮かせた状態で支持する必要がある。上記のように支持部材を使用して型枠を保持するなら、コンクリートを適切に充填するうえで必要な型枠支持が可能になる。
こうした補強構造では、母材である棒状部材がコンクリートと鋼板製の型枠、および一般的には鋼以上の機械的強度(引張強さ等)を有するFRPシートによって補強されるため、図4(c)に示すSRC+S構造と同様、母材のみの場合に比べて耐力は1.7倍程度に高まるものと考えられる。
しかもこの補強構造によれば、開口部分等がFRPシートにて被覆されるため、その開口の広がることが防止されるほか、ひずみの発生が抑制され、水の浸透が防止される。そのため、前記a)〜e)の作用的メリットがもたらされることになる。
・ 母材2の外側をコンクリート4で包んでいる。コンクリートの厚さは50〜200mm程度がよいが、この例では140〜160mmとしている。
・ コンクリート4の外側は、それに密着する鋼板製の筒形の型枠3にて囲んでいる。この型枠3は、上記のコンクリート4を充填し母材2に巻き立てるための型として使用するが、コンクリート4の施工後も取り除かず、補強用部材としてそのまま使用する。筒形とはいえ、型枠3は、母材2と同じく四辺形状の横断面をもち、うち一辺の部分を開口3Xとした「コ」の字形の横断面を有するものである。各面(横断面図における各辺)が母材2の各面(横断面図上の各辺)と平行(ないしほぼ平行)になるように配置し、鉛直上方に開口3Xを位置させている。
・ 開口3Xから露出するコンクリート4の表面から、型枠3のうち開口3Xの両側縁部の表面にかけて、両者にまたがる寸法のFRPシート5を接着している。FRPシート5は、炭素繊維等の強化繊維が縦横の2方向に配置された、厚さ1.0mm以下の薄いものを使用する。また同シート5は、コンクリート4の表面と型枠3の縁部表面とに対して隙間なく接着することとし、またシート5の幅は型枠3の上面の幅よりも広くすることにより、その両端部が折り曲げられて型枠3の両側面の上端付近にも接着されるようにしている。
・ 開口3Xが大きいので、それを通して行う型枠3内へのコンクリート4の充填状況をよく観察でき、したがってコンクリート4の巻き立てを円滑かつ確実に施工できる。
・ FRPシート5の機械的強度(主として母材2の幅方向への引張強さ)に基づき、開口3Xをはさんで型枠3が幅方向に広がることが防止されるため、型枠3とコンクリート4とが剥離せず、一体の複合材として好ましい強度を発揮する。
・ FRPシート5の機械的強度(主として母材2の長さ方向への引張強さ)に基づいて、母材2の長さ方向へのひずみが抑制され、したがってコンクリート5のひび割れの発生が防止される。
・ コンクリート4と型枠3とに対して隙間なくFRPシート5を接着することから、開口3Xを通しての雨水等の浸透が防止され、型枠3の錆びやコンクリートの劣化が防止される。
i) まず、鉄骨母材2の表面全域にコンクリート用の支持金物2aを取り付ける。支持金物2aは母材2の表面にコンクリート4を固着させるための部材で、隣り合うものとの間に100〜200mm程度の間隔をおき、多数の支持金物2aについてそれぞれの軸部の端を母材2の表面に溶接する。
また、母材2の表面には取付部材2b・2cをも取り付ける。取付部材2b・2cは、コンクリート4を充填すべく母材2との間に間隔をおいた状態で型枠3を保持するための部材で、アングル材等によって形成し、母材2に溶接したスタッドボルト2d等を利用して取り付ける。図2の例では、母材2の下部に下方へ突出するように取付部材2bを取り付け(図2(c)参照)、母材2の上部に側方へ突出するように取付部材2cを取り付け(図2(b)参照)ている。
型枠3は、一体として取り付ける際には底部付近を母材2に連結することができない(たとえば取付部材2bとの結合が不可能である)ため、底部3Aと側部3B(縁部3Yを含む)とに分け、それらを連結分離可能なように構成している。したがって、型枠3の取り付けはつぎの手順で行う。すなわち、まず図2(c)のように、型枠3の底部3Aを、内側面に設けた取付部材3bと母材2上の前記取付部材2bとを連結具3dでつなぐことにより母材2に連結する。そのうえで、両側に設ける側部3Bを母材2と底部3Aとに対して連結する。側部3Bと母材2との連結は、図2(b)のように、側部3Bの内側面に設けた取付部材3cを母材2上の前記取付部材2cに対して連結具3gでつなぐことにより行い、側部3Bと底部3Aとの連結は、図2(c)のように、底部3Aの一部に溶接にて固定しておいたナット3eに外側からボルト3fをはめ付けることにより行う。
開口3Xに達するまでコンクリート4が十分に充填されると、図2(b)のように、開口3X内のコンクリート4の表面4aを平坦にするとともに、型枠3の縁部3Yとの間に段差やみぞがないように仕上げて、コンクリート4が固化するのを待つ。
まず、コンクリート4の表面および型枠3の表面(コンクリート4の表面に沿った縁部3Yとそれらに直角な側部の上方部分と)にエポキシ樹脂からなる含浸接着剤を塗り、その接着剤が固化する前に、樹脂が未含浸の強化繊維シート(厚さ0.1〜0.3mm程度の布状のもの)を重ねる。図1にしたがい、強化繊維シートは両側の2カ所で折り曲げて重ねる。そして、やはり上記の接着剤が固化する前に、強化繊維シートの上に同様の含浸接着剤を塗り、ローラ等を用いて繊維間にその着剤を浸透させる。接着剤が固化すると、先に述べた補強構造1が完成することとなる。
2 母材(棒状部材)
3 型枠
3X 開口
4 コンクリート
5 FRPシート
Claims (7)
- 鋼構造物における棒状部材の外側を、側面の一部に開口を有する鋼板製の筒形の型枠にて囲み、
棒状部材を巻くように上記型枠内にコンクリートを充填し、そのコンクリートが固化したのちに、
上記開口を塞ぐFRPシートを、上記開口におけるコンクリートの表面および開口縁部の型枠表面に対して隙間がないように接着する
ことを特徴とする鋼構造物の補強方法。 - 側面の一部に開口を有する上記筒形の型枠として、横断面が四辺形状であってその一辺に相当する部分を開口としたコの字形断面のものを使用することを特徴とする請求項1に記載した鋼構造物の補強方法。
- 上記FRPシートとして、強化繊維が2方向に配列されたものを使用することを特徴とする請求項1または2に記載した鋼構造物の補強方法。
- 上記FRPシートの接着は、コンクリートおよび型枠の表面に含浸接着剤を塗り、それが固化する前に、強化繊維のシートを重ねるとともにその上に含浸接着剤を塗ることによって行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した鋼構造物の補強方法。
- 上記FRPシートの強化繊維として、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維もしくは有機繊維が単独で、または複数種混入して配列されたものを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した鋼構造物の補強方法。
- コンクリートを充填する前の上記の型枠は、棒状部材の外部に取り付けられた支持部材によって、棒状部材の表面各部との間に間隔をおいた位置に保持することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した鋼構造物の補強方法。
- 鋼構造物における棒状部材の外側がコンクリートで包まれ、その外側が、側面の一部に開口を有する鋼板製の筒形の型枠にて囲まれていて、当該開口におけるコンクリートの表面および開口縁部の型枠表面が、当該開口を塞ぐよう接着されたFRPシートによって隙間なく被覆されていることを特徴とする鋼構造物の補強構造。
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