JP5725486B1 - H型鋼柱の補強構造 - Google Patents
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Abstract
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例えば、既存のH型鋼柱の周囲に、軸方向筋及びフープ筋を配置し、これらをコンクリートに埋め込んで一体化した構造などが知られている(特許文献1の図10参照)。このような補強構造は、コンクリートによってH型鋼柱と、軸方向筋及びフープ筋とが一体化されることによって、柱の強度が向上するものである。
特に、柱の軸線に沿った上記軸方向筋を設けることによって、H型鋼柱の曲げ耐力を補強することができる。しかし、上記した従来の補強構造では、補強されたH型鋼柱の曲げ強度が曲げ方向によって異なってしまうことがある。
なぜなら、H型鋼柱は、もともと曲り易さに方向性があるのに、上記従来の補強構造では、その方向性を考慮していないからである。
なお、上記弱軸aは、柱の上下方向である軸線に直交するとともにウエブ4の厚み方向中心を通過する直線であり、上記強軸bは、柱の軸線に直交するとともに上記弱軸aに直交する直線である。
そのため、補強後の柱も、H型鋼柱1の方向性をそのまま引き継いだものとなり、曲げに対するバランスが悪くなってしまうことがあった。
この発明の目的は、曲げ方向によらず、全方向において均等な曲げ耐力を備えた補強柱を構成できるH型鋼柱の補強構造を提供することである。
なお、上記H型鋼柱を構成するH型鋼は、一対のフランジとウエブからなる鋼材からなるものであれば、フランジとウエブとの寸法関係は特に限定されない。例えば、ウエブに比べてフランジの幅が小さく、断面形状がI型の所謂I型鋼も、上記H型鋼に含むものとする。
また、補強された柱を「補強柱」ということにする。
しかも、H型鋼柱は、グラウト材に囲まれることによって、座屈しにくくなるために曲げ強度が上がるとともに、グラウト材によって柱の断面積を大きくすることができるので、補強柱はせん断耐力や軸耐力も向上する。また、上記グラウト材を囲う囲い鋼板は、グラウト材の崩壊を防止して、断耐力がさらに向上する。
上記囲い鋼板5は、図1に示すように断面形状をL字状にした4つの単位鋼板5a〜5dからなり、単位鋼板5a〜5dの先端同士を重ね合わせて上記H型鋼柱1の周囲を長方形に囲んでいる。ただし、上記囲い鋼板5は、L字状の単位鋼板で構成される必要はなく、上記H型鋼柱1を囲むことができればどのような構成であっても構わない。例えば、断面コの字状の単位鋼板2つで構成することもできる。
また、上記囲い鋼板5の軸方向長さを、H型鋼柱1の軸方向長さより短くして、複数の囲い鋼板5を上下に積み重ねて上記H型鋼柱1を囲うようにしている。
ただし、上記囲い鋼板5は軸方向長さを分割していないものでもよい。
また、囲い鋼板5の外周に引張強度の大きな帯状シートを接着すれば、帯状シートの引張強度を上記囲い鋼板5の強度に付加することができる。
ただし、上記単位鋼板5a〜5dは、上記帯状シートの接着ではなく、溶接やボルトなどを用いて連結するようにしてもよい。
図2では、上記囲い鋼板5を長方形で表し、上記長方形の各辺のうち、ウエブ4に平行な辺側を、この発明のウエブ4に平行な面8,9側とし、フランジ2,3に平行な辺側をフランジ2,3に平行な面10,11側とする。
また、図中、一点鎖線で示したフランジ2,3に直交する直線は上記弱軸aであり、これに直交する一点鎖線の直線は上記強軸bである(図6参照)。
なお、上記軸方向筋が、ウエブ4に平行な面側に配置されているとは、その軸方向筋がフランジ2,3に平行な面10,11よりも、ウエブ4に平行な面8,9に近い位置に配置されているということである。
同様に、上記軸方向筋が、フランジ2,3に平行な面側に配置されているとは、その軸方向筋がウエブ4に平行な面8,9よりも、フランジ2,3に平行な面10,11に近い位置に配置されているということである。
つまり、この第1実施形態ではウエブ4に平行な面8,9側に配置した軸方向筋6a〜6dによって、弱い方向の曲げ耐力を補強し、補強柱の曲げ耐力を全方向において均等にすることができる。
このように、上記弱い方向の曲げ耐力を補強することによって、全体としてバランスよく補強された補強柱を構成することができる。
この第2実施形態において第1実施形態と同じ構成要素には、図2と同じ符号を用いるとともに、第1実施形態と同じ構成についての説明は省略する。
この第2実施形態では、ウエブ4に平行な面8,9側それぞれに、太い軸方向筋12a.12bを1本ずつ配置するとともに、フランジ2,3に平行な面10,11側には上記軸方向筋12a,12bよりも細い軸方向筋13a,13bを1本ずつ配置している。
すなわち、太い軸方向筋12a,12bを配置したウエブ4に平行な面8,9側の総合曲げ耐力の方が、細い軸方向筋13a,13bを配置したフランジ2,3に平行な面10,11側の総合曲げ耐力よりも強くなる。
また、上記したように補強前のH型鋼柱は、上記弱軸a周りの曲げに弱いが、上記のように、上記ウエブ4に平行な面8,9側に配置された太い軸方向筋12a,12bによる総合曲げ耐力で、上記弱い方向の曲げ耐力をより強く補強することができる。
この第3実施形態において第1実施形態と同じ構成要素には、図2と同じ符号を用いるとともに、第1実施形態と同じ構成についての説明は省略する。
この第3実施形態では、軸方向筋6a〜6dそれぞれが、上記ウエブ4に平行な面8,9とフランジ2,3に平行な面10,11の両方から等距離に配置されている。そのため、上記各軸方向筋6a〜6dは、ウエブ4に平行な面側8,9に配置される軸方向筋であるとともに、フランジ2,3に平行な面10,11側に配置される軸方向筋としても機能する。
上記ウエブ4に平行な面8,9側に配置された軸方向筋6a〜6dは、上記弱軸aを中心にした曲げに対する曲げ耐力を発揮するものである。そして、これら軸方向筋6a〜6dは、曲げの中心軸となる弱軸aからの距離L1が大きければ大きいほど、大きな耐力を発揮することになる。
このように、上記距離L1やL2が大きくなればなるほど、上記軸方向筋6a〜6dによる曲げ耐力が向上するが、この第3実施形態では、距離L1>L2としているので、ウエブ4に平行な面8,9側に配置された軸方向筋の総合曲げ耐力の方が、フランジ2,3に平行な面10,11側に配置した軸方向筋の総合曲げ耐力よりも強くなる。
その結果、補強前のH型鋼柱1において弱い方向である弱軸a周りの曲げに対する総合曲げ耐力が、強軸b周りの曲げに対する総合曲げ耐力より強くなって、補強柱の曲げ耐力を全方向において等しくすることができる。
この第3実施形態では、囲い鋼板5で囲まれたグラウト材7内に配置される軸方向筋6a〜6dの太さや本数ではなく、軸方向筋の位置を調整することによって補強柱の全方向の曲げ耐力を均等にすることができる。
そして、その他の構成は上記第3実施形態と同じである。
この第4実施形態において第3実施形態と同じ構成要素には、図4と同じ符号を用いるとともに、第3実施形態と同じ構成についての説明は省略する。
また、ウエブ4に平行な面8,9側に配置される軸方向筋の本数を2本ずつにしているのに対し、フランジ2,3に平行な面10,11側に配置される軸方向筋の本数を1本ずつとして、ウエブ4に平行な面8,9側に配置される軸方向筋の本数を多くしている。
このように、第4実施形態では、面8,9側に配置される軸方向筋6a〜6dと弱軸aとの距離L1と面10,11側に配置される軸方向筋14a,14bと強軸bとの距離L2について、距離L1>L2とするとともに、各面側に配置する軸方向筋の本数にも差をつけている。
それにより、この第4実施形態も、弱い方向の曲げ耐力の補強強度をより大きくして、補強柱の全方向の曲げ耐力を均等にすることができる。
また、上記総合曲げ耐力は、軸方向筋の本数、太さ、あるいは配置のいずれの要素によっても設定可能であるが、上記各要素を単独で調整してもよいし、いずれか複数を組み合わせて調整するようにしてもよい。
さらに、上記囲い鋼板5の外周に、引張強度が大きな帯状シートを接着した場合には、帯状シートの引張強度が上記囲い鋼板5の強度に付加されて、より一層のせん断耐力向上が期待できる。
2、3 フランジ
4 ウエブ
5 囲い鋼板
5a〜5d 単位鋼板
6a〜6d 軸方向筋
7 グラウト材
8,9 (ウエブに平行な)面
10,11 (フランジに平行な)面
12a,12b 軸方向筋
13a,13b 軸方向筋
14a,14b 軸方向筋
a 弱軸
b 強軸
L1 (弱軸までの)距離
L2 (強軸までの)距離
Claims (4)
- 対向する一対のフランジと、その対向間隔内に設けたウエブとによって断面形状をH型としたH型鋼柱の外周を囲い鋼板で囲み、この囲い鋼板で囲んだ内側にグラウト材を充填するとともに上記グラウト材に軸方向筋を埋設して補強柱を構成するH型鋼柱の補強構造において、
上記ウエブに平行な面側に配置する軸方向筋の総合曲げ耐力を、フランジに平行な面側に配置する軸方向筋の総合曲げ耐力よりも強くして、補強柱の全方向における曲げ耐力を均等にしたH型鋼柱の補強構造。 - 上記ウエブに平行な面側に配置する軸方向筋の本数を、フランジに平行な面側に配置する軸方向筋の本数よりも多くした請求項1に記載のH型鋼柱の補強構造。
- 上記ウエブに平行な面側に配置する各軸方向筋の太さを、フランジに平行な面側に配置する各軸方向筋の太さよりも太くした請求項1又は2に記載のH型鋼柱の補強構造。
- 当該H型鋼柱の軸線に直交するとともに上記ウエブの厚み方向中心を通る直線を弱軸とするとともに、この弱軸及び上記柱の軸線に直交する直線を強軸とし、
上記ウエブに平行な面側に配置する軸方向筋と上記弱軸との距離を、上記フランジに平行な面側に配置する軸方向筋と上記強軸との距離よりも大きくした請求項1〜3のいずれか1に記載のH型鋼柱の補強構造。
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