JP2007326929A - エポキシ樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いたプリプレグ - Google Patents

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Abstract

【課題】電子機器に用いられるフレキシブルプリント配線基板に用いられるプリプレグにおいて、埃の発生要因となるプリプレグからの粉落ちがなく、フレキシブル性に悪影響を及ぼす樹脂の流動が極めて少なく、ポリイミド、銅との接着性、ハンダ耐熱性に優れ、かつノンハロゲン化合物による難燃化を実現できるエポキシ樹脂組成物、及びプリプレグを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤、及び硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂として(a)リン含有エポキシ樹脂、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴム、及び(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂を含有し、硬化剤として(d)フェノール樹脂、及び(e)ジシアンジアミドを含有し、難燃剤として(f)窒素を含む有機リン化合物を主成分としたエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ。
【選択図】なし

Description

本発明は、フレキシブルプリント配線基板において絶縁層、及び/又はプリント配線板同士の接着に用いるプリプレグ、及びプリプレグに用いるエポキシ樹脂樹脂組成物に関するものである。
電子機器に使用されるプリント配線板は、基板上及び/又は内部に銅を主とする導体配線が形成されたものであるが、基板材料により大きく2種に分類される。一つは、ガラスクロスなどの繊維基材と樹脂で複合材料化された基板を材料としたリジッドプリント配線基板(以下「リジッド基板」という。)であり、剛性を有し機械強度に優れる。一方は、ポリイミド等の樹脂フィルムを基板材料とするフレキシブルプリント配線基板(以下「FPC」という。)であり、柔軟性と屈曲性を有する。
リジッド基板は、その優れた機械強度を利用して電子機器のマザーボードや、ICからの配線を引き出すパッケージ等に使用され、FPCはその屈曲、柔軟性を利用して携帯電話、ビデオカメラのヒンジ部、ハードディスクのピックアップ等に使用されている。また、近年の情報端末機器やビデオカメラなどの軽薄短小化に伴い、マザーボードとヒンジ部の接合に使用していたコネクターをなくすためなどに、FPC基板上に繊維基材で強化されたリジッド基板を形成したリジッドフレキシブル配線基板(以下「リジッドフレキ基板」という。)が幅広く使用されるようになった。
リジッドフレキ基板の生産方法としては、例えば、1)FPC上にリジッド基板をプリプレグにより張り合わせる方法、2)FPC上にプリプレグを積層し導体配線を形成する方法、3)FPCとFPCをプリプレグで張り合わせる方法、等が採用されている。
ここで使用されるプリプレグは、ガラスクロスに熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂を溶剤に溶解したワニスを含浸し、加熱乾燥により溶剤を乾燥させ、エポキシ樹脂の硬化反応をある程度進行させてBステージ状態にしたものが主流である。またその張り合わせには加熱加圧成形が用いられる。ガラスクロスとエポキシ樹脂を使用したプリプレグは、耐熱性、電気絶縁性、銅等の金属との接着性、Bステージ状態での保存安定性等が優れており、古くからリジッド基板の材料として採用されている。
リジッドフレキ基板に使用するプリプレグには、リジッド基板に使用するプリプレグで要求される特性の他に、A)微細な導体配線が形成されたFPCと同じ生産工程で使用するために埃の発生要因となるプリプレグからのエポキシ樹脂脱落等による粉落ちを抑制する必要がある。また、B)加熱加圧成型時に樹脂の流動が発生しFPC上に流れた場合、FPCの屈曲性に悪影響を及ぼすために樹脂の流動を極力低減させる必要がある。また、C)FPCのポリイミド、及び微細配線のために極力粗化を抑えた銅との接着性を確保する必要がある。また、D)ハロゲン化合物による難燃化は燃焼時のダイオキシン発生が懸念されるために、ノンハロゲン化合物による難燃化が必要とされている。
しかしながら、従来のリジッド基板に使用されるプリプレグでは、A)プリプレグの粉落ちに関しては、Bステージ状態であるために皮膜性が低く、切断等によりエポキシ樹脂が粉となって剥がれ落ちやすい。また、B)加熱加圧時の流動抑制に関しては、リジッドフレキ基板に使用するプリプレグの流動はプリプレグの端部から0.1mm以下が望まれているのに対し、被着体との濡れを確保するためプリプレグの端部から1mm以上の流動が起こるように設計されている。この解決策として、プリプレグでのエポキシ樹脂の硬化反応を進める方法が挙げられるが、その場合はC)接着性が著しく低下するという弊害が生じる。
一方、上述した粉落ちと加熱加圧時の流動を抑えたプリプレグ用の樹脂組成物としては、固体エポキシ樹脂と液体エポキシ樹脂とゴムと硬化剤を含む組成物が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、D)非ハロゲン化合物による難燃化に対応したものではない。
また、D)ノンハロゲン化合物難燃剤としては、エポキシとの反応に組み込まれるリン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂、反応には組み込まれない縮合リン酸エステルなどの有機リン化合物、窒素とリンの難燃相乗効果を狙ったホスファゼン化合物、有機物の絶対量を低減するための無機充填剤(例えば、特許文献2参照)などをエポキシ樹脂に配合する試みがなされている。しかしながら、リン含有エポキシ樹脂は樹脂中のリン含有量が不十分であり単体で十分な難燃性を得ることが難しく、縮合リン酸エステルは加水分解を受けやすく樹脂架橋に組み込まれないために耐熱性低下という弊害を生じ、ホスファゼン化合物は耐加水分解性に優れ難燃効率は高いものの樹脂架橋に組み込まれないことから耐熱性が低下しやすいという問題がある。特にこれらのリン化合物による難燃化は基板吸湿後の実装工程による急加熱でプリプレグの樹脂とポリイミド、銅配線が隔離する現象(以下「ブリスター現象」という。)を生じやすく、加熱加圧時の流動を小さくする必要があるリジッドフレキ基板ではその傾向がより顕著である。
リジッドフレキ基板用の難燃性樹脂組成物としては、リン含有エポキシ樹脂とリン含有フェノキシ樹脂と硬化剤と多官能エポキシ樹脂を含む組成物が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、難燃性に相乗効果のある窒素原子を含まない樹脂組成において、リン含有量が少ないリン含有エポキシ樹脂、またはリン含有フェノキシ樹脂により十分な難燃性を確保する為には、樹脂組成物中に配合すべきリン含有エポキシ樹脂、またはリン含有フェノキシ樹脂の必要量が多くなり、接着性に寄与する樹脂の配合が難しくなり、低流動時の接着性が低下するという問題がある。
特開2005−213352号公報 特開2002−179887号公報 特開2005−290229号公報
本発明は、上述の従来技術の問題点を解決したものであり、A)プリプレグから粉落ちが発生しにくく、B)加熱加圧時の流動がほとんどなく、C)ポリイミド、及び銅との接着性に優れ、さらにD)ノンハロゲン化合物による難燃化でありながら優れたブリスター現象抑制機能をするエポキシ樹脂組成物、及びそれを用いたプリプレグを提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、(a)リン含有エポキシ樹脂が15質量部以上55質量部以下、エポキシ樹脂組成物中の有機物合計に対してリン含有率が1.2重量%以上2.5重量%以下になるように(f)窒素を含む有機リン化合物を配合することで、リンと窒素による難燃相乗効果によって少ない難燃原子の量でも高い難燃性を実現できること、エポキシ樹脂の合計100質量部に対し(b)エポキシ基を有する液状ゴムが2質量部以上15質量部以下、(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂が5質量部以上30質量部以下の配合比で、それぞれ軟化点が大きく異なる2つの樹脂を配合することにより、低流動性でありながら高接着を実現できること、硬化剤に(d)フェノール樹脂、(e)ジシアンジアミドの2種の硬化剤を配合し、(e)ジシアンジアミドの配合量をエポキシ樹脂の合計100質量部に対し0.05質量部以上0.5質量部以下にすることで高い接着性と低吸湿性の両立により優れたブリスター現象抑制機能を実現することを見い出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
即ち、本発明の一は、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤、及び硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂として(a)リン含有エポキシ樹脂、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴム、及び(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂を含有し、硬化剤として(d)フェノール樹脂、及び(e)ジシアンジアミドを含有し、難燃剤として(f)窒素を含む有機リン化合物を含有し、その配合比がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、(a)リン含有エポキシ樹脂が15質量部以上55質量部以下であり、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴムが2質量部以上15質量部以下であり、(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂が5質量部以上30質量部以下であり、(e)ジシアンジアミドが0.05質量部以上0.5質量部以下であり、エポキシ樹脂組成物中の有機物合計に対してリン含有率が1.2重量%以上2.5重量%以下になるように(f)窒素を含む有機リン化合物が配合されていることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(d)フェノール樹脂がフェノール水酸基当量で150以上400未満のフェノールノボラック樹脂であることが好ましい。また、(f)窒素を含む有機リン化合物がホスファゼン化合物であることが好ましい。また、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴムが、ポリブタジエンの分子内エポキシ化物であることが好ましい。また更に、熱可塑性樹脂として(g)フェノキシ樹脂を、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。また、エポキシ樹脂として(h)イソシアネート変性エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
本発明の二は、本発明の一のエポキシ樹脂組成物とガラスクロスからなるプリプレグである。
本発明のエポキシ樹脂組成物を使用したプリプレグは、A)プリプレグから粉落ちが発生しにくく、B)加熱加圧時の流動がほとんどなく、C)ポリイミド、及び銅との接着性に優れ、さらに本発明のプリプレグを使用したリジッドフレキ基板はD)ノンハロゲン化合物による難燃化でありながら優れたブリスター現象抑制機能をする。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の組成物は、エポキシ樹脂として(a)リン含有エポキシ樹脂、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴム(以下、「液状ゴム」ともいう。)、及び(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂(以下、「高軟化点エポキシ樹脂」ともいう。)、硬化剤として(d)フェノール樹脂、及び(e)ジシアンジアミド、難燃剤として(f)窒素を含む有機リン化合物を含有する。
(エポキシ樹脂組成物中のハロゲン含有量)
本発明の組成物に使用するエポキシ樹脂は少なくとも上記3種のエポキシ樹脂を含む混合物であるが、それぞれにおけるハロゲン原子含有量が0.5質量%未満であることが好ましい。一般的なエポキシ樹脂は原料に塩素を有するエピクロルヒドリンを使用するため、微量の塩素が樹脂中に残留する。従って、水洗などにより樹脂中のハロゲン原子を0.5質量%未満に調整したエポキシ樹脂を選択して使用することが好ましい。また、硬化剤、難燃剤、熱可塑性樹脂等についてもハロゲン原子含有量が0.5質量%未満のものを使用することが好ましい。
(難燃性を付与する成分)
本発明の組成物においては、硬化物を難燃化するために、(a)リン含有エポキシ樹脂と(f)窒素を含む有機リン化合物の配合が必要である。リンは難燃性を付与する原子でありリンをエポキシ樹脂に配合することでエポキシ樹脂の難燃性は向上する。リン含有エポキシ樹脂はエポキシ樹脂組成物の硬化物において架橋骨格に取り込まれることで成分の溶出がなく、樹脂のガラス転移点低下等の悪影響が少ない。しかし、有効な難燃性を得るためには、エポキシ樹脂組成物の全有機物合計に対して通常は3〜5質量%以上のリン含有量が必要であった。本発明の組成物では、リン原子とともにリン原子と難燃相乗効果のある窒素原子を(f)窒素を含む有機リン化合物を、(a)リン含有エポキシ樹脂に加えて含有するため、組成物中の全有機物合計に対して1.2〜2.5質量%のリン含有率で有効な難燃性を得ることができる。その結果、難燃性を付与する成分の必要量が低減でき、エポキシ樹脂、硬化剤に接着性、ブリスター抑制機能を考慮した成分の導入自由度が向上する。
本発明の組成物で使用する(a)リン含有エポキシ樹脂は、1分子内にリン原子と2個以上のエポキシ基を有するものである。本発明における(a)リン含有エポキシ樹脂の配合量としては、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、15質量部以上55質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以上50質量部以下である。架橋に取り込まれることによりリンの悪影響を抑制できるリン含有エポキシ樹脂は15質量部以上の配合が好ましく、接着力向上に有効な他の成分を必要量配合するために、55質量部以下であることが好ましい。
また、本発明の組成物で使用する(f)窒素を含む有機リン化合物は、1分子内にリン原子と窒素原子を有する化合物であり、エポキシ樹脂と反応する有機官能基を有さないもの、ジシアンジアミドのアミノ基と反応する不飽和2重結合基を有するもの、およびエポキシ基と反応する有機官能基、例えばアミノ基、またはフェノール基を有するものが使用可能である。特に(f)窒素を含む有機リン化合物として、リン原子と窒素原子をほぼ同モル量含有し、縮合リン酸エステルに比較して耐加水分解性に優れる、ホスファゼン化合物、例えばフェノキシシクロホスファゼン、を使用することが好ましい。本発明における(f)窒素を含む有機リン化合物の配合量としては、組成物中の有機物合計に対して、(a)リン含有エポキシから供給されるリンも含めてリン含有率が1.2質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。該組成物中の有機物合計に対して、リン含有率が1.2質量%以上であれば難燃性が向上し、2.5質量%以下であれば特性への副作用が少ない。
(リンを含まないエポキシ樹脂成分)
本発明では、(b)液状ゴムと、(c)高軟化点エポキシ樹脂という、それぞれの軟化点が大きく異なる2種類のエポキシ樹脂を配合する必要がある。流動性を有し被着体を濡らしやすい液状ゴムと、プリプレグによる接着の加熱加圧成型時に溶融しにくく流動を抑制する軟化点の高いエポキシ樹脂とを配合することで、低流動であるにもかかわらず、エポキシ基を有する液状ゴムがプリプレグからしみ出してポリイミド、銅などの被着体との濡れが確保され、接着力が発現する。
(b)液状ゴムは、融点が20℃未満であり、1分子内に2個以上のエポキシ基を有しているものである。具体的には、液状ポリブタジエンの末端エポキシ化物、液状ポリブタジエンの分子内エポキシ化物、液状イソプレンゴムのエポキシ化物、等が例示される。特に、柔軟性に優れ、かつエポキシ基の含有量が高い液状ポリブタジエンの分子内エポキシ化物(エポキシ化ポリブタジエン)を使用することが好ましい。液状ゴムの融点が20℃未満の場合、しみ出し効果が大きく有効な接着力を得ることが可能となる。
本発明の組成物における(b)液状ゴムの配合量としては、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。しみ出しによる濡れを得るために2質量部以上が好ましく、プリプレグとしての低流動性を確保するために15質量部以下の配合比が好ましい。
(c)高軟化点エポキシ樹脂は、硬化する前の軟化点がJIS−K−7234で規定されるエポキシ樹脂の軟化点試験方法で100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、並びにそれらの混合物が例示される。軟化点が100℃以上の場合には、流動抑制効果を有し(b)液状ゴムとの相乗効果が発現する。また、軟化点が160℃未満の場合は、加熱加圧成型時に樹脂の溶融が十分で未反応のエポキシ樹脂が残留しにくく、接着性がよい。
本発明の組成物における高軟化点エポキシ樹脂の配合量としては、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。加熱加圧成型時の流動抑制効果を得るためには5質量部以上の配合が好ましく、ガラスクロスへの樹脂含浸確保には高軟化点であるために含浸しにくい本成分を30質量部以下の配合にすることが好ましい。
(硬化剤)
本発明の組成物においては、硬化剤として(d)フェノール樹脂と(e)ジシアンジアミドを使用する。(d)フェノール樹脂で硬化させたエポキシ樹脂は(e)ジシアンジアミドで硬化させたエポキシ樹脂に比較して金属との接着性が劣るが、硬化物の吸湿性が少なくFPCのブリスター現象を抑制できる。一方、(e)ジシアンジアミドで硬化したエポキシ樹脂は、(d)フェノール樹脂で硬化したエポキシ樹脂に比較して金属との接着性に優れるが、硬化物の吸湿性が多い。本発明では、(d)フェノール樹脂と(e)ジシアンジアミドの2種類の硬化剤を使用することで、吸湿性が少なく、金属との接着性に優れる硬化物を得ることが可能である。
本発明の組成物における(e)ジシアンジアミドの配合量は、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下にする必要がある。金属との接着性を発現するためには0.05質量部以上が必要であり、吸湿を少なくするためには0.5質量部以下の配合にする必要がある。
(d)フェノール樹脂は、1分子内にフェノール水酸基を2個以上有する樹脂が使用できる。例えば、フェノール化合物と、アルデヒド類又は架橋モノマーの縮合反応により得られるフェノールノボラック樹脂や、パラビニルフェノール、単独又は架橋性モノマーとの重合により得られる樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤として(d)フェノール樹脂を配合した場合は、アミン化合物、または(e)ジシアンジアミドを配合した場合に比較して金属との接着性が劣るが、硬化物の吸湿性が低く、FPCのブリスター現象を抑制できる。
また、(d)フェノール樹脂はフェノール水酸基の当量値が大きいほど硬化物の弾性率が低下して接着力が向上する傾向があり、反面、硬化物のガラス転移温度が低下して耐熱性が低下する傾向がある。本発明の組成物ではフェノール水酸基当量で150以上400未満のフェノールノボラック樹脂を使用することが好ましい。フェノール水酸基当量で150以上400未満のフェノールノボラック樹脂としては、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンノボラック、キシリレンノボラック、等が例示される。
本発明の組成物における(d)フェノール樹脂の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数からジシアンジアミドの活性水素当量数の4倍を引いた当量数の、80%以上100%未満のフェノール水酸基当量数になるように配合することが好ましい。
(その他の成分)
本発明の組成物において、プリプレグ切断時の粉落ち抑制や、接着性改良のために、熱可塑性樹脂を添加することもできる。特に、熱可塑性樹脂としてエポキシ樹脂と相溶性の良い(g)フェノキシ樹脂を、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下配合することが好ましい。
また、本発明の組成物において、前述した(a)、(b)、(c)以外のエポキシ樹脂を配合することも可能である。特に、(h)イソシアネート変性エポキシ樹脂は、接着性、難燃性等に悪影響を及ぼさずに硬化物のガラス転移温度を向上させることができるため、配合することが好ましく、配合量としてはエポキシ樹脂の合計100質量部に対して5質量部以上50質量部以下が好ましい。イソシアネート変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、メタフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の1分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を反応させたエポキシ樹脂が例示される。
また本発明の組成物に、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する硬化促進剤を添加してもよい。好ましい硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、3級アミン化合物、トリフェニルホスフィンが挙げられる。さらに、本発明の組成物に、シランカップリング剤、無機物粒子などを加えることも可能である。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、ガラスクロスに本発明の組成物を有機溶剤に溶解、又は分散させた樹脂溶液(以下、「樹脂ワニス」という。)を含浸させた後、加熱により樹脂ワニス中の溶剤を乾燥し、該組成物をBステージ化することで製造することができる。
樹脂ワニスを作るための有機溶剤は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン、等の芳香族溶剤、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等の含窒素系溶剤が例示される。樹脂ワニス中の有機溶剤の含有量は、ガラスクロスへの樹脂ワニス含浸を考慮して、25質量%以上75質量%未満が好ましい。
ガラスクロスに樹脂ワニスを含浸させる方法としては、(ア)樹脂ワニスをバスに溜め、ガラスクロスを浸漬させながら通過させた後、ガラスクロスに樹脂ワニスが所定量含浸されるようにスリット、又はマングルで余剰樹脂ワニスを掻き落とす方法、(イ)ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等でガラスクロスに直接所定量の樹脂ワニスを塗工することで含浸させる方法が好ましい。
また、ガラスクロスに該樹脂ワニスを含浸させた後、溶剤を加熱乾燥させ、及び樹脂をBステージ状態化させる方法としては、公知の方法、例えば熱風または電磁波、が使用可能である。加熱乾燥時の温度は、組成物に配合したc)高軟化点エポキシ樹脂の軟化点よりも高い温度に加熱することでプリプレグの表面が平坦に仕上がるために、110℃以上で加熱乾燥することが好ましく、組成物の蒸発、揮発、熱分解、熱劣化を抑制するため、200℃以下にすることが好ましい。また、その加熱時間は20秒以上20分未満が好ましく、より好ましくは30秒以上15分未満である。また、一連の工程で作ったプリプレグの流動性を調整するために、プリプレグをバッチ式オーブンなどで加熱することや、再度連続加熱装置で連続的に加熱することも可能である。また、樹脂ワニスをガラスクロスに含浸させる前に有機溶剤をガラスクロスにあらかじめ含浸する方法等の前処理を行うことも可能である。
プリプレグの状態でプリプレグ中のガラスクロスの重量含有率(以下「ガラスコンテント」という。)は80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下である。その下限は積層板の寸法安定性の観点から制限され、通常には20質量%以上が良い。プリプレグのガラスコンテントが80%を越えるとガラス繊維織物の糸束部分にしか樹脂が存在しないプリプレグとなり積層板にすることが困難になる。
本発明のプリプレグに使用するガラスクロスは、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等のいずれのガラスクロスでも良い。また、ガラスクロスとしては、織り密度は10〜200本/25mm、好ましくは15〜100本/25mmであり、質量は5〜400g/m2 、好ましくは8〜300g/m2 であり、織り方は平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が使用できる。また、たて糸とよこ糸の双方または一方がテクスチャード加工を施されたガラス糸で製織されたガラスクロスであっても良い。また、製織に必要な集束剤が付着している段階のガラスクロスや集束剤を除去した段階のガラスクロス、あるいは公知の表面処理法でシランカップリング剤などが既に処理されている段階のガラスクロスのいずれでも良い。また、柱状流、高周波振動法による水流で開繊、扁平化等の物理加工を施したガラスクロスであっても良い。
以下の実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
[リン含有エポキシ樹脂の合成]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ株式会社製、製品名:エピクロン830、エポキシ当量:173)100質量部と、2−(6−オキシド−6H−ベンズ〈c,e〉オキサホスホリン−6−イル)−1,4−ベンゼンジオール(三光株式会社製、商品名:HCA−HQ、水酸基当量:162)(以下「ODOPB」という。)37.6質量部をトリフェニルホスフィン(試薬)0.01質量部を触媒として、190℃で8時間加熱し、ODPBが有するフェノール基とビスフェノールF型エポキシ樹脂のエポキシ基が反応した、リン含有量:2.6質量%、エポキシ当量:441のリン含有エポキシ樹脂を得た。
[実施例1〜24]
〈樹脂ワニス調整〉
表1、表2、表3に示す配合で固形分が50質量%の樹脂ワニスを調整した。有機溶剤としては、メチルエチルケトン50質量%と2−メトキシエタノール50質量%の混合溶媒を用いた。
〈プリプレグ作成〉
樹脂ワニスのそれぞれをバスに溜め、厚さ30ミクロンのガラスクロス(旭シュエーベル株式会社製:1037/AS891MSW)を浸漬させながら連続的に通過させ、120ミクロン幅のスリットで余剰の樹脂ワニスを掻き落とした後、165℃に調整した連続乾燥炉で2分間乾燥させ、本発明のプリプレグを得た。
[比較例1〜20]
表4、表5、表6に示す配合で固形分が50質量%の樹脂ワニス及びプリプレグを、実施例と同じ方法で作成した。
〔配合物詳細〕
実施例1〜24、及び比較例1〜20に使用した配合物の詳細は表7の通りである。
〔エポキシ樹脂組成物中のリン含有率〕
実施例、及び比較例では、無機物を配合していないため、リン含有エポキシ樹脂、フェノキシシクロホスファゼン、縮合リン酸エステルから供給されたリン重量のエポキシ樹脂組成物合計重量に対する比率とした。
〔樹脂流動幅評価〕
3MPaの圧力をかけながら、30℃から180℃まで4℃/分の速度で加熱し、180℃で1時間保持後、30分で30℃まで温度を下げる条件の熱板成型した25cm角のプリプレグの端部を光学顕微鏡で観察し、プリプレグ端部から外側に流動した樹脂の幅を測定した。
〔ボイド残留評価〕
樹脂流動幅を評価した成型後のプリプレグの中央部を倍率10倍の光学顕微鏡で観察し、一視野におけるプリプレグ成型物に残留するボイド(気泡)の有無を確認した。ボイドがないものを「○」、ボイドが確認されたものを「×」で表記した。
〔プリプレグの粉落ち試験〕
プリプレグをカッターナイフで切断した端面を光学顕微鏡で観察し、プリプレグの樹脂がプリプレグから粉状に剥がれているか否かを観察し、剥がれていないものを「○」、剥がれているものを「×」で表記した。
〔特性測定用積層板作成〕
8枚のプリプレグを重ねたものを厚さ18ミクロンの銅箔で挟み、圧力3MPaの圧力をかけながら、30℃から180℃まで4℃/分の速度で加熱し、180℃で1時間保持後、30分で30℃まで温度を下げる条件で熱板成型して、両面銅張り積層板を作成し、エッチングにより銅箔を全面除去した。
〔難燃性評価〕
特性測定用積層板をUL規格における94V−0垂直燃焼試験を実施し、合格する難燃性を有するものを「○」、不合格相当の難燃性であるものを「×」で表記した。
〔ガラス転移点測定〕
特性測定用積層板のガラス転移点(Tg)を動的粘弾性測定装置(ARSレオメーター、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、10Hz周波数にて測定した。
〔吸湿率〕
特性測定用積層板について、130℃で3時間加熱後の重量ア)と、その後40℃、相対湿度95%で96時間暴露した後の重量イ)を測定し、重量ア)に対する、重量ア)と重量イ)の差を百分率で示した。
〔銅との接着力〕
片面銅張りポリイミド基板(ポリイミド厚さ25ミクロン、銅厚さ18ミクロン)の銅表面に1ミクロンのマイクロエッチングを施した。該ポリイミド基板の銅面と、厚さ2mmの黒化処理銅張り積層板でプリプレグをはさみ、30℃から180℃まで4℃/分の速度で加熱し、180℃で1時間保持後、30分で30℃まで温度を下げる条件の熱板成型で接着し、ポリイミド基板の銅面とプリプレグ間の90度剥離強度を、JIS−C−6481の銅張り積層板用の評価方法に準拠して測定した。
〔ポリイミドとの接着力〕
片面銅張りポリイミド基板(ポリイミド厚さ25ミクロン、銅厚さ18ミクロン)のポリイミド面と、厚さ2mmの黒化処理銅張り積層板でプリプレグをはさみ、30℃から180℃まで4℃/分の速度で加熱し、180℃で1時間保持後、30分で30℃まで温度を下げる条件の熱板成型で接着し、ポリイミド基板の銅面とプリプレグ間の90度剥離強度を、JIS−C−6481の銅張り積層板用の評価方法に準拠して測定した。
〔ハンダ耐熱性評価〕
ブリスター抑制機能を以下の方法により評価した。
〈基板作成〉
両面銅張りポリイミド基板(ポリイミド厚さ25ミクロン、銅厚さ18ミクロン)の銅表面に1ミクロンのマイクロエッチングを施し、片面銅張りポリイミド基板(ポリイミド厚さ25ミクロン、銅厚さ18ミクロン)のポリイミド面と、両面銅張りポリイミド基板とでプリプレグをはさみ、30℃から180℃まで4℃/分の速度で加熱し、180℃で1時間保持後、30分で30℃まで温度を下げる条件の熱板成型で接着し、片面銅張りポリイミド基板の銅をエッチングにより全面除去した。
〈基板吸湿〉
作成した基板を4cm角に切断し、130℃で3時間乾燥させたあと、40℃、相対湿度95%で96時間暴露した。
〈ハンダ耐熱性試験〉
吸湿した基板を銅箔が全面除去された面を上にして、溶融ハンダ上に1分間浮かべ、フクレ等を観察した。溶融ハンダ温度は220℃から10℃ずつ高い温度で調整し、それぞれの温度で各5枚について試験し、5枚のサンプルでフクレ等の欠点が生じない最高温度を示し、220℃でもフクレが発生したものは「NG」で表記した。
<表1〜表6の説明>
表1、表2、表3の実施例について説明する。
実施例1から16は、エポキシ樹脂組成物中のリン含有量を1.5質量%にし、(a)リン含有エポキシ樹脂、(b)液状ゴムとしてエポキシ化ポリブタジエン、(c)高軟化点エポキシ樹脂として軟化点が145℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂、(d)フェノール樹脂としてビフェニルノボラック、(e)ジシアンジアミド、(f)窒素を含む有機リン化合物としてフェノキシシクロホスファゼンを使用し、各配合比の最大値と最小値とに設定された組成物である。
さらに、実施例3〜16については、エポキシ樹脂の合計を100質量部にするために本発明の必須成分であるエポキシ樹脂(a)から(c)以外に、軟化点65℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合した組成物である。
実施例17は、(a)から(f)の各成分が最大値と最小値のほぼ中間に設定されたエポキシ樹脂組成物である。実施例18、19は実施例17とエポキシ基を有する樹脂の配合比が同じで、(d)フェノール樹脂としてビスフェノールAノボラック、ポリパラビニルフェノールを使用したエポキシ樹脂組成物である。実施例20は実施例17とエポキシ基を有する樹脂の配合比が同じで(g)フェノキシ樹脂を、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、5質量部配合したものである。
実施例21は、実施例17の(a)から(f)以外の成分として配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂を(h)イソシアネート変性エポキシ樹脂に置き換えたものである。実施例22は実施例21に(g)フェノキシ樹脂を、エポキシ基を有する樹脂の合計100質量部に対して、5質量部配合したものである。実施例23、24は、実施例17と(a)から(e)の配合は同じで、エポキシ樹脂組成物中のリン含有量を最大値の2.5質量%と最小値の1.2質量%になるように、フェノキシシクロホスファゼンの配合量を設定したものである。
表4、表5、表6の比較例について説明する。
比較例1、2はエポキシ樹脂組成物中のリン含有量を1.5質量%にし、実施例17と(b)から(f)の設定を同じにして、(a)リン含有エポキシ樹脂の配合量について、最小値、及び最大値の範囲から外れたエポキシ樹脂組成物である。比較例3は比較例2と同じ(a)から(e)の配合でエポキシ樹脂組成物中のリン含有量を2.5質量%になるようにフェノキシシクロホスファゼンの配合量を設定したものである。比較例4、5、6は、実施例17と(a)、及び(c)から(f)の設定を同じにして、(b)液状ゴムの配合量について、最小値、及び最大値の範囲から外れたエポキシ樹脂組成物であり、比較例6に関しては硬化促進剤の量を調整して樹脂流動幅を0.10mm以下にしたものである。比較例7、8、9は、実施例17と(a)、(b)及び(d)から(f)の設定を同じにして、(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂の配合量について、最小値、及び最大値の範囲から外れたエポキシ樹脂組成物であり、比較例8に関しては硬化促進剤の量を調整して樹脂流動幅を0.10mm以下にしたものである。
比較例10、11は、実施例17と(a)から(d)、及び(f)の設定を同じにして、(e)ジシアンジアミドの配合量について最小値、及び最大値の範囲から外れたエポキシ樹脂組成物である。比較例12、13は、実施例17と(a)、(b)及び(d)から(f)の設定を同じにして、(c)高軟化点エポキシ樹脂を配合せず、その代わりに軟化点が100℃未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合したエポキシ樹脂組成物であり、比較例13に関しては硬化促進剤の量を調整して樹脂流動幅を0.10mm以下にしたものである。比較例14は、実施例17と(a)、(b)及び(d)から(f)の設定を同じにして、(c)高軟化点エポキシ樹脂を配合せず、その代わりに軟化点が160℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合したエポキシ樹脂組成物である。比較例15は、実施例17と(a)、及び(c)から(f)の設定を同じにして、(b)液状ゴムを添加せずに、その同量をエポキシ基を有する固形ゴムに置き換えたエポキシ樹脂組成物である。
比較例16は実施例17と(a)から(e)の設定を同じにして、(f)窒素を含む有機リン化合物であるフェノキシシクロホスファゼンの代わりに、窒素を含まない有機リン化合物である縮合リン酸エステルを配合したエポキシ樹脂組成である。比較例17、18は、実施例17と(a)から(e)の配合は同じで、(f)フェノキシシクロホスファゼンの配合量が、エポキシ樹脂組成物中のリン含有量の範囲が最小値、及び最大値の範囲から外れたエポキシ樹脂組成物である。比較例19、20はハロゲンによる難燃処方を施されたエポキシ樹脂組成物であり、比較例20に関しては硬化促進剤の量を調整して樹脂流動幅を0.10mm以下にしたものである。
表1、表2、表3によれば、エポキシ樹脂組成物を(a)から(f)、及び(g)、(h)の各樹脂を実施例で設定した配合比に設定することで、このエポキシ樹脂組成物によるプリプレグはボイドの残留がなく、A)プリプレグからの粉落ちがなく、B)樹脂の流動が0.1mm以下と極めて小さく、その上でC)ポリイミド、銅との接着性に優れ、かつD)ノンハロゲン化合物による難燃化を実現できることが確認された。
表4、表5、表6によれば、比較例1の(a)リン含有エポキシ樹脂の配合量について、最小値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例2の(a)リン含有エポキシ樹脂の配合量について、最大値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、難燃性が不十分であることが確認された。比較例3のリン含有エポキシ樹脂の配合量について、最大値から外れ、リン含有量をエポキシ樹脂組成物中のリン含有量を2.5重量%にしたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例4の(b)エポキシ基を有する液状ゴムの配合量について最小値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。
比較例5、6の(b)エポキシ基を有する液状ゴムの配合量について最大値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、比較例5では銅、ポリイミドとの接着力、及びハンダ耐熱性が低下し、樹脂流動幅が大きい傾向が認められ、比較例6の流動幅を0.10mmに調整した場合、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例7、8の(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂の配合量について、最小値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、比較例7では銅、ポリイミドとの接着力、及びハンダ耐熱性が低下し、樹脂流動幅が大きく、粉落ちが生じる傾向が認められ、比較例8の流動幅を0.10mmに調整した場合、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例9の(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂の配合量について、最大値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、プリプレグにボイド残留が認められ、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が低下することが認められた。
比較例10の(e)ジシアンジアミドの配合量が最小値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が低下することが確認された。比較例11の(e)ジシアンジアミドの配合量が最大値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは、銅、ポリイミドとの接着力が低く、吸湿率が大きくなりハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例12、13の(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂について、軟化点の範囲が最小値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、銅、ポリイミドとの接着力、及びハンダ耐熱性が低下し、樹脂流動幅が大きく、粉落ちが生じる傾向が認められ、比較例13の流動幅を0.10mmに調整した場合、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。
比較例14の(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂について、軟化点の範囲が最大値から外れたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、プリプレグにボイド残留が認められ、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が低下することが確認された。比較例15の(b)エポキシ基を有する液状ゴムを、エポキシ基を有する固形ゴムに置き換えたエポキシ樹脂組成によるプリプレグにおいて、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。比較例16の(f)窒素を含む有機リン化合物であるフェノキシシクロホスファゼンの代わりに、窒素を含まない有機リン化合物である縮合リン酸エステルを配合したエポキシ樹脂組成によるプリプレグおいて、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が大きく低下することが確認された。
比較例17のリン含有量範囲が最小値から外れるエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、難燃性が不十分であることが確認された。比較例18のリン含有量範囲が最大値から外れるエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、銅、ポリイミドとの接着力、ハンダ耐熱性が低下することが確認された。比較例19、20のハロゲンによる難燃処方を施されたエポキシ樹脂組成物によるプリプレグにおいて、銅、ポリイミドに対する接着力、ハンダ耐熱性が低く、低流動化させた場合はさらに接着力が低下し、ハンダ耐熱性も低下することが確認された。これにより、エポキシ樹脂組成物の各樹脂を実施例で設定した配合比に設定することで、このエポキシ樹脂組成物によるプリプレグは本実施例の効果を確実に発揮できるといえる。
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本発明のエポキシ樹脂組成物は電子機器分野で使用されるリジッドフレキ基板に使用するプリプレグの製造に好適に使用できる。

Claims (7)

  1. エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤、及び硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂として(a)リン含有エポキシ樹脂、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴム、及び(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂を含有し、硬化剤として(d)フェノール樹脂、及び(e)ジシアンジアミドを含有し、難燃剤として(f)窒素を含む有機リン化合物を含有し、その配合比がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、(a)リン含有エポキシ樹脂が15質量部以上55質量部以下であり、(b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴムが2質量部以上15質量部以下であり、(c)軟化点が100℃以上160℃未満のエポキシ樹脂が5質量部以上30質量部以下であり、(e)ジシアンジアミドが0.05質量部以上0.5質量部以下であり、エポキシ樹脂組成物中の有機物合計に対してリン含有率が1.2質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. (d)フェノール樹脂がフェノール水酸基当量で150以上400未満のフェノールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. (f)窒素を含む有機リン化合物がホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. (b)エポキシ基を有する20℃で液状のゴムが、ポリブタジエンの分子内エポキシ化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 更に、熱可塑性樹脂として(g)フェノキシ樹脂を、エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂として(h)イソシアネート変性エポキシ樹脂をエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、5質量部以上50質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物とガラスクロスからなるプリプレグ。
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