JP2007324461A - 高耐食性希土類永久磁石及びその製造方法 - Google Patents

高耐食性希土類永久磁石及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】R−Fe−B系焼結磁石を切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行い、メッキ前処理をした後、電気ニッケルメッキにより所定の厚みにメッキ処理を行い、次いで酸素分圧が1.3×103Pa以上の雰囲気下において、150〜400℃にて1〜24時間熱処理し、表層部に薄いニッケル酸化物層を形成させることを特徴とする高耐食性希土類永久磁石の製造方法。
【効果】本発明によれば、水溶性切削液の成分によらず、高い耐食性を付与することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、油性金属加工油もしくは水溶性金属加工油組成物に長時間晒される希土類永久磁石、特に工作機械用リニアモーター用として有効な高耐食性希土類永久磁石及びその製造方法に関する。
希土類永久磁石は、その優れた磁気特性と経済性のために、電気・電子機器の多くの分野で利用されており、近年その生産量は急激に増大しつつある。これらのうち希土類系永久磁石は、希土類コバルト磁石に比べて主要元素であるNdがSmより豊富に存在すること、Coを多量に使用しないことから原材料費が安価であり、磁気特性も希土類コバルト磁石をはるかに凌ぐことから、これまで希土類コバルト磁石が使用されてきた小型磁気回路だけでなく、ハードフェライトあるいは電磁石が使われていた分野にも広く応用されている。エアコンや冷蔵庫などのコンプレッサー用モーターにおいても、エネルギー効率を上げて電力消費量を少なくすることを目的に、従来の誘導電動機やフェライト磁石を使用した同期型回転機から希土類磁石を使用したDCブラシレスモーターへの転換が進みつつある。
R−Fe−B系永久磁石は、主成分として希土類元素及び鉄を含有するため、湿度をおびた空気中では短時間のうちに容易に酸化するという欠点を有している。磁気回路に組み込んだ場合には、これらの酸化腐食により磁気回路の出力を低下させたり、発生した錆等によって周辺機器を汚染するなどの問題があった。このため、一般に希土類磁石は表面処理を行って使用されている。希土類磁石における表面処理法には、電気メッキや無電解メッキ、更にはAlイオンプレーティング法や各種の塗装などを行って使用されている。このときR−Fe−B系永久磁石が晒される環境因子は、温度、あるいは湿度が主である。
一方、産業用モーターやエアコン用コンプレッサーモーターなどにおいて、希土類永久磁石は、常に切削油などの薬液、あるいは冷媒及び冷凍機油の高温・高圧下混合系などに晒されるなど、使用する雰囲気環境特有な環境因子がある。これら特有な環境に対して十分な耐食性を有するなど、高い信頼性が求められる。
例えば、希土類永久磁石を工作機械用リニアモーターに用いると、高い加速性能並びに高速回転により、従来より更なる高速機械加工が可能になると考えられる。また、圧縮ガスとしてHFCなどのフレオン類のみならず、純水素、純アンモニアなどの高い化学活性を有するガス類に産業用モーターが晒されて使用されることがある。
高速機械加工に用いるリニアモーターの場合、十分な耐切削液性を有していないと長時間の運転により、切削液と磁石との腐食反応が進行し、磁気特性の劣化が起こり、モーターとしての機能を十分に発揮できなくなることがある。同様にして、純水素あるいは純アンモニアがある分圧で存在する雰囲気で使用する場合、十分な耐食性を有していないと、長時間の運転により、磁石との腐食反応が進行し、磁気特性の劣化が起こり、モーターとしての機能を十分には発揮できない。
従って、これらの用途においては、上述の各種表面処理の適用が検討されるわけであるが、実使用環境で晒される環境で十分な耐食性を持つ表面処理方法が熱望されている。
こうした表面処理法が確立されれば、種々の産業用モーターなどの高効率化及び高信頼性化が可能となり、その意義は極めて大きい。
R−T−B系永久磁石を高効率モーターに使用する場合の暴露環境は、高温高湿度のような空気中に水分が介在するものが一般的である。また、特殊環境としてHFC又はHCFC冷媒と、鉱物油、エステル油、エーテル油等の冷凍機油を用いるエアコン用コンプレッサーなどの高効率モーターなどがある。こうした特殊雰囲気で使用する希土類永久磁石の製造方法として、特開2002−57052号公報が提案されているが、耐切削油性を与える希土類永久磁石が望まれる。
特開2002−57052号公報
本発明の目的は、上記課題に着目し、鉱油をベースにした不水溶性切削油剤のみだけでなく、優れた耐食性能を有し、かつ、地球環境や人体に対し悪影響を及ぼしにくい水溶性金属加工剤組成物に対して十分な耐切削液性を有するR−Fe−B系で代表されるR−T−B系の高耐食性希土類永久磁石及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、耐切削油性を有する希土類磁石の表面処理手法について種々検討した結果、希土類永久磁石表面にニッケルメッキを形成した後、大気組成雰囲気下、もしくは同等の酸素活量で加熱処理することにより、表面に厚さ200nm以内のNi23層を形成する表面処理方法が非常に効果的であることを知見した。
即ち、R−T−B系希土類磁石の表面に高耐食性の物質が欠陥なく形成されておれば、その物質が溶解しない限り金属分が腐食されることはない。しかし、被覆した物質に何がしかの欠陥があれば、その欠陥部分から腐食性物質が侵入して腐食が進行する。
一般に腐食反応は電気化学的に進行するため、特定の雰囲気において腐食が進行するかどうかは、反応系に存在する化学物質の電気化学的電極電位を比較することにより推定できる。従って、その腐食反応を抑制するためには、その表面上で起こる酸化還元反応を抑制し、反応界面における電極電位を不動態域に移動させればよい。
そこで、R−T−B系希土類永久磁石表面に水素還元反応を促進する金属酸化物層を所定の膜厚以上に形成し、化学活性の高い物質に対する被毒作用を保ち、かつR−T−B系希土類永久磁石表面の電極電位を不動態域に移動させればR−T−B系希土類永久磁石の腐食を抑制することができる。
通常多くの場合、R−T−B系希土類永久磁石は、耐食性を得るためにニッケルメッキが施される。
本発明では、R−T−B系希土類永久磁石にニッケルメッキを施し、この皮膜を制御された雰囲気にて熱処理を行い、かつその生成する膜厚を調整することにより、R−T−B系希土類永久磁石表面に水素還元反応を促進するニッケル酸化物を形成し、化学活性の高い物質に対する被毒作用を得るものである。
従って、本発明は、
(1)主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を鋳造し、アルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気中で粉砕した後、微粉砕、磁場中成型、焼結、時効を順次行って焼結磁石とし、その酸素濃度が0.6質量%以下で、磁気特性がBrで12.0kG以上14.8kG以下、iHcが11kOe以上35kOe以下である磁石を切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行い、次いで鉱酸などによるメッキ前処理をした後、電気ニッケルメッキにより所定の厚みにメッキ処理を行い、次いで酸素分圧が1.3×103Pa(10torr)以上の雰囲気下において、150〜400℃にて1〜24時間熱処理し、表層部に薄いニッケル酸化物層を形成させることを特徴とする高耐食性希土類永久磁石の製造方法、
(2)主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を母合金とし、R’が28〜70質量%(R’=R)、Bが0〜1.5質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mo,Al,Si,V,Cr,Ti,Cuから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜10質量%、残部がT(Tの中でCoの割合が10質量%以上でFeの割合が60質量%以下)及び不可避の不純物からなる合金を助材とし、アルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気で水素化粉砕した母合金を85〜99質量%、助材を1〜15質量%の割合で混合した後、微粉砕、磁場中成型、焼結、時効を順次行って焼結磁石とし、その酸素濃度が0.6質量%以下で、磁気特性がBrで12.0kG以上14.8kG以下、iHcが11kOe以上35kOe以下である磁石を切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行い、次いで鉱酸などによるメッキ前処理をした後、電気ニッケルメッキにより所定の厚みにメッキ処理を行い、次いで酸素分圧が1.3×103Pa(10torr)以上の雰囲気下において、150〜400℃にて1〜24時間熱処理し、表層部に薄いニッケル酸化物層を形成させることを特徴とする高耐食性希土類永久磁石の製造方法、
(3)表面にニッケルメッキ層を有し、更にその表面に厚さ200nm以内のニッケルの表面酸化物層を有する高耐食性希土類永久磁石、
(4)アミンを含有する水溶性切削油を使用する工作機械用リニアモーター用である(3)記載の永久磁石
を提供する。
本発明によれば、適当な方法でニッケルメッキを施したR−Fe−B系永久磁石表面を制御された酸素雰囲気で熱処理による水素還元反応を促進させる保護膜形成を行うことにより、水溶性切削液の成分によらず、高い耐食性を付与することができる。
例えば、自動盤、トランスファーマシン、ボール盤などを用いて行う一般旋削作業、ガンドリルなどによる深穴あけ作業、タッピングなどによるねじ切り作業、ホブ・ピニオンなどによる歯切り作業などの加工作業をするために使用されるエマルションタイプ、ソリュブルタイプ、シンセティックタイプのすべての切削液に対して、本発明のR−T−B系磁石は十分な耐食性を有するため、使用環境を選ばずに選択できる。
また、抗菌性を高めるため水溶性切削液に添加されているアミン類に対して、R−T−B系永久磁石は何ら影響をうけないことから、一般に化学反応性の高いアミン類及びアンモニアなどに対しても十分なバリアー性を持つというきわめて優れた特徴を有するR−T−B系永久磁石を簡便かつ安価に提供することができ、産業上その価値は極めて高い。
本発明の希土類永久磁石の製造方法においては、まず、主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を鋳造する。
ここで、上記R−T−B系永久磁石に用いるRは、組成の26.8〜33.5質量%を占めるが、RとしてはY又はLa,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Lu,Ybの内から選択される1種もしくは2種以上が使用され、中でもCe,La,Nd,Pr,Dy,Tbの内少なくとも1種を含むのが好ましい。Bは0.78〜1.25質量%の範囲とする。Feは50〜90質量%の範囲である。この場合、Feの一部をCoで置換することにより温度特性を改善することができる。但し、Coの添加量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、一方、15質量%を超えると保磁力が低下し、コストも上昇するので、その量は0.1〜15質量%が好ましい。また、磁気特性の改善、あるいは、コスト低減のために、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる少なくとも1種を添加することができる。このような組成の合金は合金の融点以下で溶湯化させ、金型鋳造法、ロール急冷法、アトマイズ法等の鋳造方法により得ることができる。
上記組成の合金をアルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気中で粉砕した後、好ましくは平均粒径1〜30μmに微粉砕し、磁場中配向圧縮成型あるいは非磁場中圧縮成型、焼結、溶体化、時効することによりバルク化し、研削、研磨加工して所望の実用形状を有する永久磁石が得られる。
また、上記の希土類磁石は、主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を母合金とし、R’が28〜70質量%(R’=R)、Bが0〜1.5質量%、Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mo,Al,Si,V,Cr,Ti,Cuから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜10質量%、残部がT(Tの中でCoの割合が10質量%以上でFeの割合が60質量%以下)及び不可避の不純物からなる合金を助材とし、アルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気で水素化粉砕した母合金を85〜99質量%、助材を1〜15質量%の割合で混合した後、微粉砕、磁場中成型、焼結、時効を順次行い、更に、切断及び/又は研磨して表面を加工仕上げすることにより得ることもできる。
なお、ここで得られた永久磁石は、その酸素濃度が0.6質量%以下で、磁気特性がBrで12.0kG以上14.8kG以下、iHcが11kOe以上35kOe以下である。
以上のようにして焼結磁石を作製し、切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行った後、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸を用いて常法によりメッキ前処理を行う。
本発明においては、次いで上記磁石に対して電気ニッケルメッキを行う。電気ニッケルメッキは硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を溶解させたワット浴だけでなく、スルファミン酸ニッケル浴、ウッドストライク浴など工業的に確立されたいずれのニッケルメッキ浴でもよい。ニッケルメッキをR−T−B系希土類永久磁石に析出させる方法として、引っ掛け式、バレル方式などいずれの方法を用いてもよい。R−T−B系希土類永久磁石に析出させたニッケルメッキ膜厚は5〜40μmがよく、好ましくは10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。
ニッケルメッキの最終工程である水洗工程は、メッキ液成分の残留あるいはメッキ製品のシミ発生防止のため不可欠である。水洗工程はシミなどの発生を極力抑えるために、イオン交換水が使用され、通常、数回にわたり連続した短時間での水洗が行われる。イオン交換水による洗浄の前に、場合によっては無機塩などを添加して行うことができる。
R−T−B系希土類永久磁石に所望のニッケルメッキ層を形成させた後、酸素を含む雰囲気にて熱処理を行い、これによって耐食性を向上させる。この場合、酸素濃度として1.3×103Pa(10torr)以上、好ましくは1.3×104Pa(1×102torr)〜6.5×104Pa(5×102torr)の酸素濃度、より好ましくは1.3×104Pa(1.0×102torr)〜2.6×104Pa(2.0×102torr)の酸素分圧に処理室雰囲気が制御される。熱処理温度は150〜400℃、好ましくは250〜400℃にて行い、熱処理時間は1〜24時間、好ましくは8〜24時間加熱を行うことにより、R−T−B系希土類永久磁石表面に耐食性皮膜を形成させることができる。熱処理温度が高すぎると磁気特性劣化が起こり、また低すぎると十分な耐切削液性を有しないおそれがある。
R−T−B系希土類永久磁石に対し酸素を含む所望の雰囲気で熱処理した後、10〜2×103℃/minの冷却速度で冷却してもよい。場合によっては多段にわたる熱処理を行うことも可能である。必要であれば熱処理されたR−T−B系希土類永久磁石を冷却する際に熱処理容器中でキャリアガスによる冷却あるいは炉内外で空冷させる代わりに、熱処理を施したR−T−B系希土類永久磁石を冷水あるいは冷却媒体などによるいわゆる急冷焼入れ処理を行ってもよい。急冷焼入れ処理に用いる冷却媒体は、所望する耐食性に応じて、冷水だけでなくリン酸、クエン酸、シュウ酸などを溶解させた弱酸溶液あるいは炭酸カリウムなどを溶解させた弱アルカリ溶液なども使用することができる。
なお、以上のようにして形成されるニッケルの表面酸化物層の厚さは200nm以下、特に50〜150nmであることが好ましい。薄すぎると耐食効果は十分でなく、厚すぎると磁石表面の変色が大きくなったり、色むらが生じるおそれがある。
本発明の高耐食性希土類永久磁石は、切削加工、研削加工、塑性加工等の金属加工に広く適用できる水溶性金属加工油組成物(従来の水溶性金属加工油組成物のみでなく、特に、耐腐敗性能に優れた水溶性金属加工油組成物)及びそれを用いた水溶性金属加工油剤などを使用する産業用モーターに好適に用いられる。
ここで、切削、切削加工分野に広く使用される切削油剤には、鉱油をベースにした不水溶性切削油剤と、鉱油、界面活性剤、有機アミン等を含有し、水に希釈して使用する水溶性切削油剤がある。水溶性切削油剤においては、油剤の耐腐敗性能を向上させるために、防腐効果のあるアミン類を加えることが行われている。
耐腐敗性能を向上させるために、従来の防腐剤、アミンに代わり、特定のアミンが使用される。具体的には、(1)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン及びメチルジエタノールアミンなど、(2)モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなど、(3)シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。但し、アルカノールアミンの使用量が少ないエマルジョンなどではpH維持能力に劣るため、防腐剤の添加が必要となる。フェノール系のO−フェニルフェノール、チアゾリン系のベンゾイソチアゾリン、ホルムアルデヒド放出型のトリアジン化合物などが用いられる。
また、その他の任意の添加剤として、シリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤、トリアジン系防腐剤、アルキルベンゾイミダゾール防腐剤、アルキルベンゾイミダゾール金属防食剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、カルボン酸アルカノールアミドなどのノニオン系界面活性剤、多価アルコール類、グリコール類、水などのカップリング剤、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩などの無機塩、EDTAなどのイオン封鎖剤、酸化ワックス、天然油脂、合成油脂、合成エステル、高分子ポリマーなどの油性剤を添加することができる。
これら有効成分を含む水溶性金属加工油組成物は、水で5〜200倍程度に希釈して使用するのが一般的である。
本発明の磁石は、水及び/又は潤滑油及び冷媒に長時間晒される雰囲気や、特に切削加工、研削加工、塑性加工等の金属加工に広く適用できる上記したような水溶性金属加工油組成物及びそれを用いた水溶性金属加工油などを使用する産業用各種モーター(改正省エネ法に準拠できるモーター)に使用され、その運転条件下で水溶性金属加工油や切削油に長時間晒される用途に有効である。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
Ar雰囲気の高周波溶解により質量比で32Nd−1.2B−59.8Fe−7Coなる組成の鋳塊を作製した。このインゴットをジョウクラッシャーで粗粉砕し、更に窒素ガスによるジェットミルで微粉砕を行って、平均粒径が3.5μmの微粉末を得た。次に、この微粉末を10kOe磁界が印加された金型内に充填し、1.0t/cm2の圧力で成型した。次いで真空中1,100℃で2時間焼結し、更に550℃で1時間時効処理を施して永久磁石とした。
得られた永久磁石から縦20.0mm×横20.0mm×厚さ3.0mm寸法、酸素濃度0.611質量%、Br=25.8kG、iHc=18.0kOeの磁石片を切り出し、バレル研磨処理を行った後、超音波水洗を行った。得られた磁石片を塩酸、硝酸、酢酸などの希薄鉱酸にて前処理を行い、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を溶解させたワット浴にて無光沢電気ニッケルメッキを行った。電気ニッケルメッキによるニッケル膜厚は、磁石中心部をX線膜厚計にて測定したところ、20〜22μmであった。これを酸素濃度1.95×104Pa(1.5×102torr)の雰囲気にて350℃で24時間熱処理を行った。この時、R−T−B系希土類永久磁石表面に対し熱処理により得られた主にNi酸化物で構成される耐食性皮膜厚さは、XPS分析により40〜100nm程度であった。
切削液に対するR−Fe−B系希土類永久磁石の耐食性を次のように調べた。市販の水溶性切削液5種(切削液Aから切削液E)を所定の濃度に希釈した。使用した水溶性切削液のうち、切削液D及び切削液Eは、水溶性切削液で問題となる抗菌性を改良した、いわゆるバイオスタテイック型切削液である。なお、表1に、使用した水溶性切削液5種の種類、希釈時のpH値及び抗菌性の有無等について示す。
Figure 2007324461
次に、キャップボルト式耐圧容器[容量200ml(耐圧硝子工業(株)製TPR型N2タイプ)]に所定の濃度に希釈した切削液を100ml入れ、試験片のR−Fe−B系永久磁石を入れ、容器を締結し、密封した。圧力容器を80℃±0.2℃に保持したオイルバスに入れ、切削液に対する浸漬試験を実施した。
[比較例1]
所定の寸法に加工切断した後、電気ニッケルメッキを全く施さないいわゆる表面処理レス品を試験片として用い、同様の80℃における切削液浸漬試験を実施した。
[比較例2]
熱処理を行わない以外は実施例1と同様のニッケルメッキされたR−Fe−B系永久磁石を試験片として用い、同様の80℃における切削液浸漬試験を実施した。
切削液浸漬試験の結果を図1〜3及び表2に示す。
図1は、実施例1のR−Fe−B系永久磁石を用い、水溶性切削液5種における80℃×4週間浸漬試験前後の磁気特性を示す。水溶性切削液5種すべてにおいて、浸漬試験によるR−Fe−B系永久磁石の磁気特性劣化は何ら認められない。
図2は、比較例1における水溶性切削液5種における80℃×4週間浸漬前後の磁気特性変化を示す。水溶性切削液A,D及びEにおいて明らかな磁気特性劣化が見られた。
図3は、比較例2における水溶性切削液5種における80℃×4週間浸漬前後の磁気特性変化を示す。水溶性切削液5種すべてにわたり、明らかな磁気特性劣化が見られた。
実施例1及び比較例1,2のR−Fe−B系永久磁石の表面処理方法における耐切削液浸漬試験の結果を表2に示す。明らかに実施例1は、水溶性切削液の抗菌性有無などの種類を問わず、長期にわたる浸漬試験においてR−Fe−B系永久磁石の特性を全く損なわない優れた表面処理方法である。
Figure 2007324461
以上の結果から明らかなように、ニッケルメッキされたR−Fe−B系希土類永久磁石を雰囲気制御された雰囲気で熱処理を行わない(比較例1)と、アンモニア冷媒中で水分及び潤滑油と共に高温高圧で長時間晒した場合、200℃におけるチューブテスト500時間経過後、大きく磁気特性が劣化するのが見られる。酸素濃度を制御して熱処理を行った本実施例では何ら磁気特性の劣化が見られない。
実施例1における切削液浸漬前後の磁気特性を示すグラフである。 比較例1における切削液浸漬前後の磁気特性を示すグラフである 比較例2における切削液浸漬前後の磁気特性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を鋳造し、アルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気中で粉砕した後、微粉砕、磁場中成型、焼結、時効を順次行って焼結磁石とし、その酸素濃度が0.6質量%以下で、磁気特性がBrで12.0kG以上14.8kG以下、iHcが11kOe以上35kOe以下である磁石を切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行い、次いで鉱酸などによるメッキ前処理をした後、電気ニッケルメッキにより所定の厚みにメッキ処理を行い、次いで酸素分圧が1.3×103Pa(10torr)以上の雰囲気下において、150〜400℃にて1〜24時間熱処理し、表層部に薄いニッケル酸化物層を形成させることを特徴とする高耐食性希土類永久磁石の製造方法。
  2. 主成分をR(Rは希土類元素の1種又は2種以上の組み合わせ)、T(TはFe、又はFe及びCo)、及びBとし、Rが26.8〜33.5質量%、Bが0.78〜1.25質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mn,Sn,Mo,Zn,Pb,Sb,Al,Si,V,Cr,Ti,Cu,Ca,Mgから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜3.5質量%、残部がT及び不可避の不純物からなる合金を母合金とし、R’が28〜70質量%(R’=R)、Bが0〜1.5質量%、Ni,Ga,Zr,Nb,Hf,Ta,Mo,Al,Si,V,Cr,Ti,Cuから選ばれる1種又は2種以上の元素の合計量が0.05〜10質量%、残部がT(Tの中でCoの割合が10質量%以上でFeの割合が60質量%以下)及び不可避の不純物からなる合金を助材とし、アルゴン、窒素又は真空の無酸素雰囲気で水素化粉砕した母合金を85〜99質量%、助材を1〜15質量%の割合で混合した後、微粉砕、磁場中成型、焼結、時効を順次行って焼結磁石とし、その酸素濃度が0.6質量%以下で、磁気特性がBrで12.0kG以上14.8kG以下、iHcが11kOe以上35kOe以下である磁石を切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行い、次いで鉱酸などによるメッキ前処理をした後、電気ニッケルメッキにより所定の厚みにメッキ処理を行い、次いで酸素分圧が1.3×103Pa(10torr)以上の雰囲気下において、150〜400℃にて1〜24時間熱処理し、表層部に薄いニッケル酸化物層を形成させることを特徴とする高耐食性希土類永久磁石の製造方法。
  3. 表面にニッケルメッキ層を有し、更にその表面に厚さ200nm以内のニッケルの表面酸化物層を有する高耐食性希土類永久磁石。
  4. アミンを含有する水溶性切削油を使用する工作機械用リニアモーター用である請求項3記載の永久磁石。
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