JP2007319063A - ジペプチドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多種類のジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド又はその誘導体を簡便に製造すること、高い反応速度でジペプチド又はその誘導体を製造すること、高い収率でジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド誘導体の構造を制御すること、疎水性の高いアミノ酸を含むジペプチド又はその誘導体を製造すること等の少なくとも1つを可能にするジペプチド又はその誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なう、ジペプチド又はその誘導体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なう、ジペプチド又はその誘導体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、ジペプチド又はその誘導体の製造方法に関する。
近年、生理活性を示す様々なジペプチドが、食品や医薬品等の原料素材として注目を集めている。かかるジペプチドとしては、例えば、強力な甘味料であるアスパルチル−フェニルアラニンメチルエステル(AspPhe−OMe)、アンジオテンシンI変換酵素活性を阻害するバリル−チロシン(ValTyr)等が挙げられる。また、アラニル−チロシン(AlaTyr)は、水への溶解度が低いチロシンの有力な供給源になる。
ジペプチドの製造方法は、化学合成法と酵素合成法とに大別され、酵素合成法は、温和な反応条件での合成が可能であること、副生成物が少ないこと等の利点を有する。酵素合成法としては、例えば、サーモリシン等のメタロペプチダーゼ、アミノアシル-tRNA合成酵素、アラニンリガーゼ、又は非リボソームペプチド合成酵素を用いる方法等が既に開発されている。中でも、エステル結合のアミノ分解反応を含む酵素合成法(特許文献1)は、サーモリシン等を用いる酵素合成法と異なり、基質として化学的N-保護アミノ酸を必要とせず、遊離アミノ酸とアミノアシルメチルエステルとからジペプチドを合成し得る。
国際公開第03/010307号パンフレット
しかし、従来使用されている酵素の中には、コストの観点から、食品、医薬品等の工業的生産における使用に適さないものがある。さらに、従来の酵素合成法では、使用する酵素の基質特異性に偏りがあるため、前記AlaTyr、ValTyr等の生理活性を示すジペプチドを工業的レベルで合成することができない。従って、これらの生理活性を示すジペプチドを含む多種類のジペプチドを簡便に合成し得る新しい酵素合成法の開発が求められている。
本発明の課題は、多種類のジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド又はその誘導体を簡便に製造すること、高い反応速度でジペプチド又はその誘導体を製造すること、高い収率でジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド誘導体の構造を制御すること、疎水性の高いアミノ酸を含むジペプチド又はその誘導体を製造すること等の少なくとも1つを可能にするジペプチド又はその誘導体の製造方法を提供することである。
本発明者らは、これまでジペプチド合成活性を有することが知られていなかった特定の性質を有する酵素を用いることにより、上記課題が解決され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なう、ジペプチド又はその誘導体の製造方法に関する。
本発明により、多種類のジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド又はその誘導体を簡便に製造すること、高い反応速度でジペプチド又はその誘導体を製造すること、高い収率でジペプチド又はその誘導体を製造すること、ジペプチド誘導体の構造を制御すること、疎水性の高いアミノ酸を含むジペプチド又はその誘導体を製造すること等の少なくとも1つが可能になるという優れた効果が奏され得る。
本明細書において、アミノ酸の表記を、3文字又は1文字で表記する場合がある。すなわち、アラニンは、Ala又はA、アルギニンは、Arg又はR、アスパラギンは、Asn又はN、アスパラギン酸は、Asp又はD、システインは、Cys又はC、グルタミン酸は、Glu又はE、グルタミンは、Gln又はQ、グリシンは、Gly又はG、ヒスチジンは、His又はH、イソロイシンは、Ile又はI、ロイシンは、Leu又はL、リジンは、Lys又はK、メチオニンは、Met又はM、フェニルアラニンは、Phe又はF、プロリンは、Pro又はP、セリンは、Ser又はS、スレオニンは、Thr又はT、トリプトファンは、Trp又はW、チロシンは、Tyr又はY、バリンは、Val又はVで表される。また、本明細書においては、特に明記されない限り、L体のアミノ酸を意味する。
本明細書において、アシル供与体とは、ペプチド結合の形成においてアシル基を提供する化合物をいい、アシル受容体とは、ペプチド結合の形成においてアシル基を受容する化合物をいう。例えば、下記の反応式(1)において、アシル供与体はアラニンであり、アシル受容体はグリシンである。
本発明は、ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なうことを特徴とする、ジペプチド又はその誘導体の製造方法に関する。
前記特徴を有する本発明の製造方法によれば、前記アミノペプチダーゼが広い基質特異性と逆反応活性とを示すため、種々のアミノ酸等をアシル供与体又はアシル受容体として使用することにより、従来の酵素合成法では製造することが困難であったジペプチドを含む多種類のジペプチド又はその誘導体を製造し得るという優れた効果が奏される。
また、前記特徴を有する本発明の製造方法において、アシル供与体及びアシル受容体は化学的に保護される必要がないため、脱保護工程を要しない。従って、該製造方法によれば、ジペプチド又はその誘導体を簡便に製造し得るという優れた効果が奏される。
また、前記特徴を有する本発明の製造方法においては、アミノアシルアルキルエステルが優れたアシル受容体として機能し得る。従って、アシル受容体としてアミノアシルアルキルエステルを用いることにより、ジペプチド合成反応の速度及び/又は収率が顕著に向上するため、高い反応速度及び/又は高い収率でジペプチド誘導体を製造し得るという優れた効果が奏される。
また、前記特徴を有する本発明の製造方法によれば、アシル供与体とアシル受容体との組合せとして、アミノ酸とアミノアシルアルキルエステルとを用いた場合に、エステル結合のアミノ分解反応が実質的に生じないため、該アミノ酸由来のアミノ酸残基がN末端側、該アミノアシルアルキルエステル由来のアミノ酸残基がC末端側に存在するジペプチド誘導体が製造される。即ち、ジペプチド誘導体の構造を制御し得るという優れた効果が奏される。
また、前記特徴を有する本発明の製造方法によれば、熱安定性であるアミノペプチダーゼは高い有機溶媒耐性を示し得るため、有機溶媒の存在下で疎水性の高いペプチドを含むジペプチド又はその誘導体を効率的に製造し得るという優れた効果が奏される。
本発明において使用されるアミノペプチダーゼは、ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼである。
ペプチダーゼファミリーM28に属するアミノペプチダーゼとは、活性部位に共触媒性の2つの亜鉛イオンを有するメタロペプチダーゼである(Rawlingsら、1995、Methods Enzymol. 248:183−228参照)。
本明細書において、熱安定性アミノペプチダーゼとは、至適温度でのアミノペプチダーゼ活性の50%熱不活性化温度が60℃以上であるアミノペプチダーゼをいう。なお、該熱安定性は、アミノペプチダーゼの活性測定に先立って、種々の温度で、30分間、アミノペプチダーゼをインキュベーションし、得られたアミノペプチダーゼを用いて、活性を測定することにより評価され得る。
本明細書において、アミノペプチダーゼの活性測定、具体的には、加水分解活性の測定は、例えば、測定対象の酵素を含む反応液〔組成:100mM Tris−HCl、pH8.0〕に、最終濃度 3.2mMとなるように基質としてアミノアシル−p−ニトロアニリドを添加し、37℃で、405nmでの連続光学測定を行なって、p−ニトロアニリンの遊離を検出することにより行なわれ得る。酵素反応の初速度は、光学密度プロファイルの直線部分から決定され得る。なお、本明細書において、アミノペプチダーゼ活性の1単位は、1分あたり1μmolのp−ニトロアニリンを遊離させる酵素量として定義される。
また、本明細書中において、アミノペプチダーゼの逆反応とは、アミノ酸のカルボキシル基とアミノ酸又はアミノ酸誘導体のアミノ基とを脱水縮合し、ペプチド結合を形成する反応をいう。また、アミノペプチダーゼの逆反応活性(以後、「ジペプチド合成活性」と称することがある)は、例えば、後述の実施例の通り、測定対象のアミノペプチダーゼとアシル受容体とアシル供与体とを溶媒中でインキュベートして得られる試料を薄層クロマトグラフィー(TLC)等で分析し、ジペプチド又はその誘導体の生成を検出することにより確認され得る。
本発明において使用されるアミノペプチダーゼとしては、例えば、ストレプトマイセス属、アエロモナス属、シュードモナス属、又はバシラス属等に属する微生物由来のアミノペプチダーゼ(例えば、シュードモナス アエルギノサ由来アミノペプチダーゼ、Cahanら、2001、J. Biol. Chem. 276:43645−43652参照)が挙げられる。
さらに、本発明において使用されるアミノペプチダーゼの具体例としては、
(A)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において63位のアラニン残基から345位のセリン残基までのアミノ酸配列(配列A)からなるポリペプチド、
(A’)配列Aにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において46位のアラニン残基から329位のスレオニン残基までのアミノ酸配列(配列B)からなるポリペプチド、(B’)配列Bにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号:5に示されるアミノ酸配列において26位のメチオニン残基から325位のグリシン残基までのアミノ酸配列(配列C)からなるポリペプチド、又は(C’)配列Cにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
が挙げられる。
(A)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において63位のアラニン残基から345位のセリン残基までのアミノ酸配列(配列A)からなるポリペプチド、
(A’)配列Aにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において46位のアラニン残基から329位のスレオニン残基までのアミノ酸配列(配列B)からなるポリペプチド、(B’)配列Bにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号:5に示されるアミノ酸配列において26位のメチオニン残基から325位のグリシン残基までのアミノ酸配列(配列C)からなるポリペプチド、又は(C’)配列Cにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
が挙げられる。
なお、本明細書中において、「少なくとも1つ」とは、1若しくは複数個、又はそれ以上、好ましくは1個又は数個をいう。
前記のアミノペプチダーゼ(A)としては、例えば、ストレプトマイセス属に属する微生物等により産生されるアミノペプチダーゼが挙げられ、具体的には、ストレプトマイセス セプタタス TH−2より産生されるアミノペプチダーゼ(以下、「SSAP」と称することがある)が挙げられる。なお、ストレプトマイセス セプタタス TH−2は、Streptomyces sp. TH−2と命名・表示され、寄託番号:FERM P−17329(寄託日:1999年3月24日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている。
前記ストレプトマイセス セプタタス TH−2より産生されるアミノペプチダーゼは、特に限定されないが、例えば、4℃で、下記ステップ:
− 前記ストレプトマイセス セプタタス TH−2を、培地〔組成:0.5重量% グルコース、0.5重量% クエン酸、0.2重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.5重量% ポリペプトン及び0.5重量% 酵母エキス〕中28℃で72時間、定常期になるまで、好気的に培養し、
− 得られた培養物を、40000×g、10分間の遠心分離若しくは濾紙で濾過して、培地濾過物(上清)を得、
− 得られた培地濾過物を、撹拌しながら、65℃で30分間加熱し、生じた沈殿を除去し、
− 得られた溶液を、緩衝液A〔組成:10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.0〕に対して透析し、
− 透析後の溶液を緩衝液Aで平衡化した陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、具体的には、DEAE−セファロース(Amersham社製)カラム(内径1.6×10cm、20mL)に負荷し、結合したタンパク質を、緩衝液0−0.5M NaClのリニアグラジェントで平均流速2mL/分で溶出させ、
− 得られた溶出画分のうち、高比活性を示す画分を集め、80% 飽和硫酸アンモニウムによる塩析でタンパク質を沈殿させ、
− 得られた沈殿物を、200mM NaClを含む緩衝液Aに溶解させ、得られた溶液を、200mM NaClを含む緩衝液Aに対して透析し、
− 透析後に得られた溶液を、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、具体的には、商品名:Superdex 200ゲル濾過カラム〔ファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech)社製、内径1.6×60cm、60mL〕に負荷し、200mM NaClを含む緩衝液Aにより、平均流速1mL/分でタンパク質を溶出させること
を行なうことにより得られ得る。
− 前記ストレプトマイセス セプタタス TH−2を、培地〔組成:0.5重量% グルコース、0.5重量% クエン酸、0.2重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.5重量% ポリペプトン及び0.5重量% 酵母エキス〕中28℃で72時間、定常期になるまで、好気的に培養し、
− 得られた培養物を、40000×g、10分間の遠心分離若しくは濾紙で濾過して、培地濾過物(上清)を得、
− 得られた培地濾過物を、撹拌しながら、65℃で30分間加熱し、生じた沈殿を除去し、
− 得られた溶液を、緩衝液A〔組成:10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.0〕に対して透析し、
− 透析後の溶液を緩衝液Aで平衡化した陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、具体的には、DEAE−セファロース(Amersham社製)カラム(内径1.6×10cm、20mL)に負荷し、結合したタンパク質を、緩衝液0−0.5M NaClのリニアグラジェントで平均流速2mL/分で溶出させ、
− 得られた溶出画分のうち、高比活性を示す画分を集め、80% 飽和硫酸アンモニウムによる塩析でタンパク質を沈殿させ、
− 得られた沈殿物を、200mM NaClを含む緩衝液Aに溶解させ、得られた溶液を、200mM NaClを含む緩衝液Aに対して透析し、
− 透析後に得られた溶液を、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、具体的には、商品名:Superdex 200ゲル濾過カラム〔ファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech)社製、内径1.6×60cm、60mL〕に負荷し、200mM NaClを含む緩衝液Aにより、平均流速1mL/分でタンパク質を溶出させること
を行なうことにより得られ得る。
前記のアミノペプチダーゼ(B)としては、例えば、ストレプトマイセス属に属する微生物等により産生されるアミノペプチダーゼが挙げられ、具体的には、ストレプトマイセス グリセウスより産生されるアミノペプチダーゼ(以下、「SGAP」と称することがある)が挙げられる。SGAPは、特に限定されないが、例えば、Spunginら、1989、Eur.J.Biochem.183:471−477に記載される方法により得られ得る。
前記のアミノペプチダーゼ(C)としては、例えば、アエロモナス属に属する微生物等により産生されるアミノペプチダーゼが挙げられ、具体的には、アエロモナス プロテオライティカより産生されるアミノペプチダーゼ(以下、「AAP」と称することがある)が挙げられる。AAPは、特に限定されないが、例えば、Prescottら、1976、Methods Enzymol.45B:530−543に記載される方法により得られ得る。
アミノペプチダーゼ(A’)は、好ましくはアミノペプチダーゼ(A)と、同等又はそれ以上のアミノペプチダーゼ活性及びその逆反応活性を示す。例えば、アミノペプチダーゼ(A)とアミノペプチダーゼ(A’)とを同条件のアミノペプチダーゼ活性測定及びジペプチド合成反応に供した場合、アミノペプチダーゼ(A’)は、アミノペプチダーゼ(A)の10%以上、好ましくは50%以上のアミノペプチダーゼ活性及びその逆反応活性を示す。
アミノペプチダーゼ(B’)とアミノペプチダーゼ(B)との酵素活性の関係、及びアミノペプチダーゼ(C’)とアミノペプチダーゼ(C)との酵素活性の関係もまた、前記のアミノペプチダーゼ(A’)とアミノペプチダーゼ(A)との酵素活性の関係と同様であれば良い。
また、前記アミノペプチダーゼ(A)〜(C’)は、該酵素をコードする核酸を公知の遺伝子工学的手法を用いて、大腸菌、放線菌、酵母、カビ、植物細胞、動物細胞等の当該分野で公知の宿主に導入し、発現させることによっても得られ得る。かかる場合、アミノペプチダーゼ(A)〜(C’)は、精製を容易にするための因子、例えば、細胞外分泌シグナル、融合パートナー(Hisタグ、pelBシグナル等)等を付加されてもよい。また、アミノペプチダーゼ(A)〜(C’)は、シグナル配列やプロペプチド配列を伴った状態で発現されてもよい。
アミノペプチダーゼ(A)又は(A’)をコードする核酸としては、例えば、
(i)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において63位のアラニン残基から345位のセリン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(ii)配列番号:2に示される塩基配列において塩基番号187〜1038までの塩基配列、
(iii)前記(i)又は(ii)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(iv)前記(i)又は(ii)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列
等が挙げられる。
(i)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において63位のアラニン残基から345位のセリン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(ii)配列番号:2に示される塩基配列において塩基番号187〜1038までの塩基配列、
(iii)前記(i)又は(ii)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(iv)前記(i)又は(ii)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列
等が挙げられる。
前記(iv)において、「ストリンジェントな条件」とは、中ストリンジェンシーの条件、好ましくは、高ストリンジェンシーの条件をいい、具体的には、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行、ザンブルーク(Sambrook)ら、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第3版及び第2版(Molecular Cloning : A Laboratory Manual 3rd ed.(2001年発行)、2nd ed.(1989年発行))等に記載された条件が挙げられる。具体的には、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5% SDSと5×デンハルトと100mg/mL ニシン精子DNAとを含む溶液中、プローブとともに65℃で一晩インキュベーションするという条件が挙げられる。
なお、前記「ストリンジェントな条件」下におけるハイブリダイゼーションにおいて、より精度を高める観点から、より低イオン強度、例えば、5×SSC、よりストリンジェントには、2×SSC等の条件及び/又はより高温、例えば、前記(i)又は(ii)の塩基配列を含有した核酸のTm値(80〜90)の25℃下、よりストリンジェントには、22℃下、さらにストリンジェントには、20℃下、よりさらにストリンジェントには、10℃下、特にストリンジェントには、5℃下等の条件下でのハイブリダイゼーション;より厳しい洗浄条件、具体的には、低イオン強度の緩衝液、例えば、6×SSC、よりストリンジェントには、5×SSC、よりストリンジェントには、2×SSC等を使用し、より高い温度、例えば、前記Tm値の55℃下、よりストリンジェントには、50℃下、さらにストリンジェントには、30℃下、よりさらにストリンジェントには、25℃下等の条件下での洗浄等を行なうことにより、例えば、前記配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも75%、よりストリンジェントには、80%以上、さらにストリンジェントには、85%以上、よりさらにストリンジェントには、90%以上、より一層ストリンジェントには、95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を得ることが可能になる。
アミノペプチダーゼ(B)又は(B’)をコードする核酸としては、例えば、
(v)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において46位のアラニン残基から329位のスレオニン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(vi)配列番号:4に示される塩基配列において塩基番号136〜987までの塩基配列、(vii)前記(v)又は(vi)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(viii)前記(v)又は(vi)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列等が挙げられる。
(v)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において46位のアラニン残基から329位のスレオニン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(vi)配列番号:4に示される塩基配列において塩基番号136〜987までの塩基配列、(vii)前記(v)又は(vi)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(viii)前記(v)又は(vi)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列等が挙げられる。
アミノペプチダーゼ(C)又は(C’)をコードする核酸としては、例えば、
(ix)配列番号:5に示されるアミノ酸配列において26位のメチオニン残基から325位のグリシン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(x)配列番号:6に示される塩基配列において塩基番号76〜975までの塩基配列、
(xi)前記(ix)又は(x)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(xii)前記(ix)又は(x)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列
等が挙げられる。
(ix)配列番号:5に示されるアミノ酸配列において26位のメチオニン残基から325位のグリシン残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(x)配列番号:6に示される塩基配列において塩基番号76〜975までの塩基配列、
(xi)前記(ix)又は(x)の塩基配列において、少なくとも1つのヌクレオチド残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列、又は
(xii)前記(ix)又は(x)の塩基配列からなる核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸の塩基配列であり、かつコードされるポリペプチドが、アミノペプチダーゼの逆反応活性を示すものである塩基配列
等が挙げられる。
なお、前記(viii)及び(xii)における「ストリンジェントな条件」とは、前記(iv)における「ストリンジェントな条件」と同様である。
また、前記核酸は、例えば、ストレプトマイセス セプタタス TH−2、ストレプトマイセス グリセウス、アエロモナス プロテオライティカのゲノムDNAから、慣用の手段、例えば、適切なプローブを用いたハイブリダイゼーション、適切なプライマー対を用いたPCR等により単離することができる。
前記アミノペプチダーゼは、精製物、粗精製物、未精製物のいずれであってもよい。従って、例えば、前記核酸を導入された組換え体、ストレプトマイセス セプタタス TH−2、ストレプトマイセス グリセウス、アエロモナス プロテオライティカ等の前記アミノペプチダーゼを産生する細胞、該細胞破砕物、該細胞抽出物、培養上清等もまた、ジペプチド合成活性を示す限り、アミノペプチダーゼとして使用され得る。
前記アミノペプチダーゼは、広い基質特異性を示すため、多種類のアシル供与体及びアシル受容体を基質としてジペプチドを合成し得る。従って、本発明の製造方法によれば、多種類のジペプチド又はその誘導体を製造することができる。
本発明において使用されるアシル供与体としては、前記アミノペプチダーゼのジペプチド合成反応におけるアシル供与体として機能する限り、特に制限はない。該アシル供与体としては、例えば、天然型アミノ酸又は非天然型アミノ酸が使用され得る。
アシル供与体として機能する天然型アミノ酸としては、高い反応速度を得る観点から、好ましくは、Met、Phe、Leu、Val、Ala、Asn、Ile、Lys、Trp、Pro、Gly、Ser、Glu、Thr、Arg、Gln、Asp、His、及びTyrからなる群より選択されるアミノ酸、より好ましくは、Met、Phe、Leu、Val、Ala、Asn、Ile、Lys、Trp、Pro、Gly、Ser、Glu、Thr、Arg、Gln、及びAspからなる群より選択されるアミノ酸が使用され得る。
アシル供与体として機能する非天然型アミノ酸としては、例えば、アミノ酸側鎖が修飾されたアミノ酸、アミノ酸側鎖が他のアミノ酸と結合したアミノ酸等が使用され得る。かかる非天然型アミノ酸の具体例としては、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、パラヒドロキシフェニルグリシン、ホモフェニルアラニン、ホモアルギニン、ノルバリン、ノルロイシン、アゼチジン、アジリジン、シスチン、ε‐オリゴリジン、等が挙げられる。
本発明において使用されるアシル受容体としては、前記アミノペプチダーゼのジペプチド合成反応におけるアシル受容体として機能する限り、特に制限はない。該アシル受容体としては、例えば、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸、アミノ酸誘導体が使用され得る。
アシル受容体として機能する天然型アミノ酸及び非天然型アミノ酸としては、アシル供与体として例示したものと同様のものが使用され得る。
アシル受容体として機能するアミノ酸誘導体としては、例えば、アミノアシルメチルエステル、アミノアシルエチルエステル等のアミノアシルアルキルエステル及びアミノアシルアミドが好ましく使用され得る。
中でも、ジペプチド合成反応の高速化及び高収率化の観点から、好ましくはアミノアシルアルキルエステル及びアミノアシルアミド、より好ましくはアミノアシルメチルエステルがアシル受容体として使用され得る。アミノアシルアルキルエステルとしては、Trp、Met、Phe、Tyr、Val、Ala、Leu、Ser、Thr、Gly、Cys、Ile、Asn、Arg、及びLysからなる群より選択されるアミノ酸のアミノアシルアルキルエステルが好ましく、Trp、Met、Phe、Tyr、Val、Ala、Leu、Ser、Thr、Gly、Cys、Ile、及びAsnからなる群より選択されるアミノ酸のアミノアシルアルキルエステルがより好ましい。
前記アミノペプチダーゼによるジペプチド合成反応においては、基質としてアミノ酸とアミノアシルアルキルエステルとを使用すると、エステル結合のアミノ分解反応が実質的に生じないため、アミノ酸由来のアミノ酸残基がジペプチドのN末端側、アミノアシルアルキルエステル由来のアミノ酸残基がC末端側に配置される。従って、本発明の製造方法によれば、ジペプチド誘導体の配列を制御し得るという優れた効果が奏される。
本発明において使用される溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。生成したジペプチド等が、前記アミノペプチダーゼのアミノペプチダーゼ活性によって消化されるのを防ぎ、かつ、前記アミノペプチダーゼのジペプチド合成活性を十分に発揮させる観点から、水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく使用される。
前記の有機溶媒としては、ジペプチド合成反応が進行する限り、特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等の水混和性有機溶媒が挙げられる。中でも、ジペプチド合成効率の観点から、メタノールが好ましい。
溶媒として、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合、生成したジペプチド等が、前記アミノペプチダーゼのアミノペプチダーゼ活性によって消化されるのを防ぎ、かつ、前記アミノペプチダーゼのジペプチド合成活性を十分に発揮させる観点から、水と水混和性有機溶媒の混合比(水:水混和性有機溶媒;体積比)は、好ましくは0.2:99.8〜30:70、より好ましくは1:99〜20:80、さらに好ましくは2:98〜10:90である。
本発明の製造方法においては、前記アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、前記アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なう。
反応させる条件としては、前記アミノペプチダーゼが発揮するジペプチド合成活性により、ジペプチド合成反応が進行する限り、特に制限はないが、好ましくは下記の条件が挙げられる。
反応温度としては、高い反応速度を得る観点から、好ましくは4〜60℃、より好ましくは18〜55℃である。
反応時間としては、トリペプチド等の副生成物の合成を低減する観点から、好ましくは20分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、さらに好ましくは1時間〜6時間である。
反応pHとしては、好ましくは6.0〜9.0、より好ましくは7.5〜8.5である。
使用する酵素量としては、アミノペプチダーゼ活性として、好ましくは1〜300unit/mL、より好ましくは2〜100unit/mL、さらに好ましくは5〜30unit/mLである。
反応時のアシル供与体又はアシル受容体の濃度としては、高い反応速度を得る観点から、天然型又は非天然型アミノ酸を使用する場合は、好ましくは1〜100mM、より好ましくは5〜50mM、さらに好ましくは6〜35mMである。また、アミノアシルアルキルエステルを使用する場合の濃度としては、同様の観点から、好ましくは10〜200mM、より好ましくは40〜160mM、さらに好ましくは50〜100mMである。
上記の本発明の製造方法により、多種類のジペプチド又はその誘導体が簡便に製造され得る。また、得られたジペプチド又はその誘導体は、当該分野で公知の方法により回収され、精製され得る。
以下、実施例等により本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。本明細書において、特に明記しない限り、各種操作は、モレキュラークローニング ア ラボラトリー マニュアル第2版〔ザンブルーク(Sambrook,J)ら、Molecular Cloning A Laboratory Manual 2nd Edition、(1989年)〕に従って行なった。また、遊離のアミノ酸はナカライテスク(株)から購入した。アミノアシルメチルエステル(−OMe)及びLeu p-ニトロアニリドは、Sigma Chemicals(株)から購入した。ジペプチド標品及びトリペプチド標品は、Sigma Chemicals(株)及びBachem社から購入した。
[アミノペプチダーゼ SSAPの調製]
SSAPの発現プラスミドであるpET−SSAP:Hisを以下のようにして構築した。即ち、SSAPをコードする遺伝子配列の情報を元に2種のプライマー(5’−GCGCCGGATCCGACGTGGCGCTGCCGCTCA−3’(配列番号7)及び、5’−CAAGGGCCACGTCAGGACCATGGCCGGCGC−3’(配列番号8))を設計した。次にストレプトマイセス セプタタス TH−2のゲノムDNAを鋳型とし、前記プライマーとGC−Rich PCR System(Roche Molecular Biochemicals社製)を用いて、目的とする断片をPCRで増幅した。PCR条件は、96℃3分 1サイクル、96℃30秒と60℃30秒と72℃1分とを1サイクルとして35サイクル、72℃7分 1サイクルであった。得られたPCR増幅断片についてpGEM−T Easy(Promega社製)を用いたTAクローニングを行ない、次いで、シークエンスにより変異が入っていないことを確認した。得られたプラスミドから、NcoI及びBamHI消化及びゲルカット抽出によりインサート断片を取り出し、同様にNcoI及びBamHI消化した発現用ベクター:pET−KmS2(Mishimaら、1997、Biotecnol.Prog.13:864−868)とライゲーションすることでSSAPの発現プラスミドpET−SSAP:Hisを得た。
SSAPの発現プラスミドであるpET−SSAP:Hisを以下のようにして構築した。即ち、SSAPをコードする遺伝子配列の情報を元に2種のプライマー(5’−GCGCCGGATCCGACGTGGCGCTGCCGCTCA−3’(配列番号7)及び、5’−CAAGGGCCACGTCAGGACCATGGCCGGCGC−3’(配列番号8))を設計した。次にストレプトマイセス セプタタス TH−2のゲノムDNAを鋳型とし、前記プライマーとGC−Rich PCR System(Roche Molecular Biochemicals社製)を用いて、目的とする断片をPCRで増幅した。PCR条件は、96℃3分 1サイクル、96℃30秒と60℃30秒と72℃1分とを1サイクルとして35サイクル、72℃7分 1サイクルであった。得られたPCR増幅断片についてpGEM−T Easy(Promega社製)を用いたTAクローニングを行ない、次いで、シークエンスにより変異が入っていないことを確認した。得られたプラスミドから、NcoI及びBamHI消化及びゲルカット抽出によりインサート断片を取り出し、同様にNcoI及びBamHI消化した発現用ベクター:pET−KmS2(Mishimaら、1997、Biotecnol.Prog.13:864−868)とライゲーションすることでSSAPの発現プラスミドpET−SSAP:Hisを得た。
得られた発現プラスミドpET−SSAP:Hisを用いて、大腸菌BL21 DE3を形質転換した。
pET−SSAP:Hisを保持するE.coli BL21 DE3を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地〔1% NaCl、1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス〕3mL中、37℃で12時間培養した。次いで、得られた菌体を合成培地〔0.5% KH2PO4、0.5% K2HPO4、0.44% Na2HPO4、0.3% (NH4)2SO4、0.5% グルコース、0.3% MgSO4・7H2O、0.004% FeSO4・7H2O、0.004% CaCl2、0.00029% CoCl2・6H2O、0.0003% CuSO4・5H2O、0.000036% Na2MoO・2H2O、0.001% H3BO3、0.001% ZnSO4・7H2O、0.2% グリセロール、50 μg/mL カナマイシン;重量%〕100mLに播種し、22℃で12時間培養した。終濃度が0.5mMとなるようにイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを加え、同じ条件でさらに24時間培養を続けた。得られた培養物を遠心分離(7,000×g、10分)して菌体を除去し、粗酵素液として培養上清を得た。
得られた培養上清に、80% 飽和硫酸アンモニウムとなるように、硫酸アンモニウムを添加して、タンパク質を沈殿させた。得られた沈殿物を1mM CaCl2を含む10mM Tris−HCl(pH8.0)に溶解し、必要により攪拌しながら65℃で30分間加熱した。次いで、遠心分離により、沈殿物を除去し、得られた溶液を20mM リン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した。透析後の溶液を、予め20mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したヒドロキシアパタイトカラム(Bio−Rad社製)に通し、得られた溶液を緩衝液A(組成:10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.0)に対して透析した。透析後の溶液を、予め緩衝液Aで平衡化した商品名:Vivapure−Q spin−column(Millipore社製)に負荷し、結合したタンパク質を200mM NaClを含む緩衝液Aによって溶出させた。得られた溶出液を緩衝液Aに対して透析することにより、精製SSAPを得た。
[アミノペプチダーゼ活性測定]
アミノペプチダーゼ活性測定は、37℃で、測定対象の酵素を含む100mM Tris−HCl(pH8.0) 0.9mLに、基質として32mM Leu−pNAを0.1mL加え、p-ニトロアニリンの遊離による吸光度の毎分上昇度を405nmで測定することにより行なった。酵素反応は、基質の添加により開始させ、吸光度の測定には、U28000 分光光度計(日立製作所製)を用いた。初速度は、光学密度プロファイルの直線部分から決定した。
アミノペプチダーゼ活性測定は、37℃で、測定対象の酵素を含む100mM Tris−HCl(pH8.0) 0.9mLに、基質として32mM Leu−pNAを0.1mL加え、p-ニトロアニリンの遊離による吸光度の毎分上昇度を405nmで測定することにより行なった。酵素反応は、基質の添加により開始させ、吸光度の測定には、U28000 分光光度計(日立製作所製)を用いた。初速度は、光学密度プロファイルの直線部分から決定した。
[薄層クロマトグラフィー(TLC)によるペプチドの分析]
3μLの試料をTLCプレート(60 F254、Merck社製)にスポットし、n−ブタノール/酢酸/水(7:2:1、v/v)を展開液として約1時間展開させた。アセトン/水(1:1、v/v)に溶解した2.5%ニンヒドリン溶液を噴霧してジペプチド、アミノアシルメチルエステル及びアミノ酸等を検出した。
3μLの試料をTLCプレート(60 F254、Merck社製)にスポットし、n−ブタノール/酢酸/水(7:2:1、v/v)を展開液として約1時間展開させた。アセトン/水(1:1、v/v)に溶解した2.5%ニンヒドリン溶液を噴霧してジペプチド、アミノアシルメチルエステル及びアミノ酸等を検出した。
[逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるペプチドの分析]
C18逆相カラム(Hydrosphere C 18、(株)YMC製)を装備したHPLC装置(Waters 2690 Separation Module、Waters(株)製)を用いてペプチドの定量を行なった。具体的には、フィルター(型番:マイショリディスクH−3−2、東ソー社製)でろ過された10μLの試料を上記カラムに負荷し、溶媒A:溶媒B=75:25から溶媒A:溶媒B=0:100への15分以内の勾配で、流速1mL/分で溶出した。検出は、Waters 490E Programmable Multiwavelength Detector(Waters(株)製)を用いて、210及び280nmの吸光度を測定することによって行なった。溶媒Aとして、20mM KH2PO4を、溶媒Bとして、100%メタノールを用いた。得られたデータをMillennium 32コンピュータプログラム(Waters Chromatographic Division)を用いて処理した。基質のピーク面積の減少と生成物のピーク面積の増加とに基づき、ジペプチド合成の初速度及びアミノ酸からジペプチドへの変換速度を測定した。
C18逆相カラム(Hydrosphere C 18、(株)YMC製)を装備したHPLC装置(Waters 2690 Separation Module、Waters(株)製)を用いてペプチドの定量を行なった。具体的には、フィルター(型番:マイショリディスクH−3−2、東ソー社製)でろ過された10μLの試料を上記カラムに負荷し、溶媒A:溶媒B=75:25から溶媒A:溶媒B=0:100への15分以内の勾配で、流速1mL/分で溶出した。検出は、Waters 490E Programmable Multiwavelength Detector(Waters(株)製)を用いて、210及び280nmの吸光度を測定することによって行なった。溶媒Aとして、20mM KH2PO4を、溶媒Bとして、100%メタノールを用いた。得られたデータをMillennium 32コンピュータプログラム(Waters Chromatographic Division)を用いて処理した。基質のピーク面積の減少と生成物のピーク面積の増加とに基づき、ジペプチド合成の初速度及びアミノ酸からジペプチドへの変換速度を測定した。
[マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型−質量分析(MALDI-TOF/MS分析)によるペプチドの分析]
溶媒Aを超純水に変えた以外は上記「HPLCによるペプチド分析」と同様にして、HPLCによってペプチドを分離、脱塩した。得られたペプチドをロータリーエバポレーター(型番:CC105、トミー(株)製)を用いて、2時間真空乾燥した。得られた乾燥物を試料として、Autoflex II TOF/TOF(Bruker Daltonics製)を用いて、ペプチドの質量分析を行なった。MALDIマトリクスとして、2,5−ジヒドロキシ−安息香酸を用いた。
溶媒Aを超純水に変えた以外は上記「HPLCによるペプチド分析」と同様にして、HPLCによってペプチドを分離、脱塩した。得られたペプチドをロータリーエバポレーター(型番:CC105、トミー(株)製)を用いて、2時間真空乾燥した。得られた乾燥物を試料として、Autoflex II TOF/TOF(Bruker Daltonics製)を用いて、ペプチドの質量分析を行なった。MALDIマトリクスとして、2,5−ジヒドロキシ−安息香酸を用いた。
実験例1 ジペプチドの合成及びTLC分析
前記のように調製した精製SSAPを終濃度1mg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)に溶解してSSAP溶液(アミノペプチダーゼ活性: 約100 unit/mL)を得た。得られたSSAP溶液 20μLを必要に応じて所定量のアミノ酸を含有する10μLの1M Tris−HCl(pH8.0)に懸濁した。得られた懸濁液を1.5mL容マイクロ試験管に入れ、液体窒素に浸漬して凍結させた後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を必要に応じて所定量のアミノアシルメチルエステルを含有する100μLの98%メタノールに加えて表1記載の反応混合物1〜3を調製し、25℃で反応を開始させた。反応混合物を300rpmで振盪しながら、反応時間を4時間とした後、1.9mLの100%メタノールを反応混合物に加えることによって反応を停止させた。また、SSAPを含まない反応混合物3を前記と同様に調製し、反応を行なった。反応後の反応混合物1〜3について、上記の通りTLC分析を行なった。TLC分析の結果を図1に示す。なお、凍結乾燥後のSSAPのアミノペプチダーゼ活性は、凍結乾燥前の約78%であった。
前記のように調製した精製SSAPを終濃度1mg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)に溶解してSSAP溶液(アミノペプチダーゼ活性: 約100 unit/mL)を得た。得られたSSAP溶液 20μLを必要に応じて所定量のアミノ酸を含有する10μLの1M Tris−HCl(pH8.0)に懸濁した。得られた懸濁液を1.5mL容マイクロ試験管に入れ、液体窒素に浸漬して凍結させた後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を必要に応じて所定量のアミノアシルメチルエステルを含有する100μLの98%メタノールに加えて表1記載の反応混合物1〜3を調製し、25℃で反応を開始させた。反応混合物を300rpmで振盪しながら、反応時間を4時間とした後、1.9mLの100%メタノールを反応混合物に加えることによって反応を停止させた。また、SSAPを含まない反応混合物3を前記と同様に調製し、反応を行なった。反応後の反応混合物1〜3について、上記の通りTLC分析を行なった。TLC分析の結果を図1に示す。なお、凍結乾燥後のSSAPのアミノペプチダーゼ活性は、凍結乾燥前の約78%であった。
図1に示されるとおり、反応混合物1ではPhePheジペプチド標品と同じ位置に生成物のものと推測されるスポットが確認された。このことから、反応混合物1ではPhePheジペプチドが合成されたことがわかる。また、反応混合物2ではPhePheジペプチド標品と少し異なる位置に生成物のものと推測されるスポットが確認された。反応混合物2では基質としてPheとPhe−OMeとを用いていることから、該スポットはPhePhe−OMeジペプチド誘導体のものであると推測された。一方、SSAPが添加されていない反応混合物3では、新たなスポットは確認されなかった。
実験例2 ジペプチドの合成及びHPLC分析
実験例1と同様にして表2の反応混合物を調製し、反応時間を8時間にする以外は実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物4〜5について、上記の通りHPLC分析を行なった。HPLC分析の結果を図2に示す。
実験例1と同様にして表2の反応混合物を調製し、反応時間を8時間にする以外は実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物4〜5について、上記の通りHPLC分析を行なった。HPLC分析の結果を図2に示す。
図2に示されるとおり、反応混合物4では、PhePheジペプチド標品と同じ溶出時間に生成物のものと推測されるピークが検出された。このことから、反応混合物4においては、PhePheジペプチドが合成されたことがわかる。また、反応混合物5ではPhePheジペプチド標品及びPhePhePheトリペプチド標品と異なる溶出時間に生成物のものと推測されるピークが検出された。
反応混合物5において生成物のものと推測されるピークを分取して吸引乾燥した。得られた乾燥試料に、1μg/mLのSSAPを含有する100μLの0.1M Tris-HCl(pH8.0)又は100μLの0.1N水酸化ナトリウムを添加して溶解させた。次いで、溶解した試料を室温で30分間放置することにより、それぞれSSAP処理又はアルカリ処理を行なった。前記処理により得られた試料について、上記の通りHPLC分析を行なった。HPLC分析の結果を図3に示す。
図3に示されるとおり、アルカリ処理により得られた試料では、PhePheジペプチド標品と同じ溶出時間にピークが検出された。また、SSAP処理により得られた試料では、Phe標品及びPhe−OMe標品と同じ溶出時間にピークが検出された。このことから、反応混合物5においては、PhePhe−OMeジペプチド誘導体が合成されたことがわかる。
さらに、分取された反応混合物5の生成物について、MALDI-TOF/MS分析を行ない、生成物のモル質量を測定した。結果を図4に示す。
図4に示されるとおり、生成物の実測質量は327.2であり、PhePhe−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。
実験例3 ジペプチド配列の検討
実験例1と同様にして表3の反応混合物を調製し、実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物6及び7について、上記の通りHPLC分析を行なった。反応混合物6のHPLC分析の結果を図5Aのパネル(a)に示し、反応混合物7のHPLC分析の結果を図5Bのパネル(a)に示す。
実験例1と同様にして表3の反応混合物を調製し、実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物6及び7について、上記の通りHPLC分析を行なった。反応混合物6のHPLC分析の結果を図5Aのパネル(a)に示し、反応混合物7のHPLC分析の結果を図5Bのパネル(a)に示す。
図5Aのパネル(a)及び図5Bのパネル(a)に示されるとおり、反応混合物6及び7では生成物のものと推測されるピークが検出された。該ピークを分取して、MALDI-TOF/MS分析を行ない、生成物のモル質量を測定した。結果を図6に示す。
図6Aに示されるとおり、反応混合物6の生成物の実測質量は366.3であり、PheTrp−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。また、図6Bに示されるとおり、反応混合物7の生成物の実測質量は366.3であり、TrpPhe−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。
さらに、前記で分取したピークのそれぞれについて、実験例2と同様にしてSSAP処理を行なった。次いで、SSAP処理により得られた試料について、上記の通りHPLC分析を行なった。反応混合物6の生成物の分析結果を図5Aのパネル(b)に示し、反応混合物7の生成物の分析結果を図5Bのパネル(b)に示す。
図5Aのパネル(b)に示されるとおり、反応混合物6の生成物のSSAP処理により得られた試料では、Phe標品及びTrp−OMe標品と同じ溶出時間にピークが検出された。このことから、反応混合物6においては、PheTrp−OMeジペプチド誘導体が合成されたことがわかる。また、図5Bのパネル(b)に示されるとおり、反応混合物7の生成物のSSAP処理により得られた試料では、Trp標品及びPhe−OMe標品と同じ溶出時間にピークが検出された。このことから、反応混合物7においては、TrpPhe−OMeジペプチド誘導体が合成されたことがわかる。
このことから、ジペプチド合成反応の基質として、アミノ酸とアミノアシルアルキルエステルを使用した場合、アミノ酸がアシル供与体として機能し、アミノアシルアルキルエステルがアシル受容体として機能することがわかる。即ち、本発明のジペプチドの製造方法によれば、ジペプチド誘導体の配列を制御し得ることがわかる。
実験例4 生理活性を示すジペプチドの合成
実験例1と同様にして表4の反応混合物を調製し、反応時間を12時間にする以外は実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物8〜15について、上記の通りHPLC分析を行なった。HPLC分析の結果を図7A〜Dに示す。
実験例1と同様にして表4の反応混合物を調製し、反応時間を12時間にする以外は実験例1と同様にして反応を行なった。反応後の反応混合物8〜15について、上記の通りHPLC分析を行なった。HPLC分析の結果を図7A〜Dに示す。
図7A〜Dに示されるとおり、SSAPを含有する反応混合物では、生成物のものと推測されるピークが検出された。該ピークを分取して、MALDI-TOF/MS分析を行ない、生成物のモル質量を測定した。結果を図7A’〜D’に示す。
図7A’に示されるとおり、反応混合物8の生成物の実測質量は、295.2であり、AspPhe−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。また、図7B’に示されるとおり、反応混合物10の生成物の実測質量は、295.2であり、ValTyr−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。また、図7C’に示されるとおり、反応混合物12の生成物の実測質量は、267.2であり、AlaTyr−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。また、図7D’に示されるとおり、反応混合物14の生成物の実測質量は、283.2であり、AlaDOPA−OMeジペプチド誘導体の理論値とほぼ同じであった。
なお、反応混合物8、10、12及び14においては、アミノ酸からジペプチド誘導体への変換率は25%以上、中でも反応混合物10における変換率は37%以上の高効率であった。
実験例5 SGAP、AAPを用いたジペプチド合成
SGAP(リコンビナント大腸菌から菌体外に生産させ、精製)及びAAP(シグマより購入)を終濃度1mg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)に溶解して酵素溶液(アミノペプチダーゼ活性: 100〜300 unit/mL)を得た。得られた各酵素溶液20μLを必要に応じて所定量のアミノ酸を含有する10μLの1M Tris−HCl(pH8.0)に懸濁した。得られた懸濁液を1.5mL容マイクロ試験管に入れ、液体窒素に浸漬して凍結させた後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を必要に応じて所定量のアミノアシルメチルエステルを含有する100μLの98%メタノールに加えて表5記載の反応混合物17〜18を調製し、25℃で反応を開始させた。反応混合物を300rpmで振盪しながら、反応時間を4時間とした後、1.9mLの100%メタノールを反応混合物に加えることによって反応を停止させた。また、酵素を含まない反応混合物16を前記と同様に調製し、反応を行なった。反応後の反応混合物16〜18について、上記の通りTLC分析を行なった。TLC分析の結果を図8に示す。
SGAP(リコンビナント大腸菌から菌体外に生産させ、精製)及びAAP(シグマより購入)を終濃度1mg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)に溶解して酵素溶液(アミノペプチダーゼ活性: 100〜300 unit/mL)を得た。得られた各酵素溶液20μLを必要に応じて所定量のアミノ酸を含有する10μLの1M Tris−HCl(pH8.0)に懸濁した。得られた懸濁液を1.5mL容マイクロ試験管に入れ、液体窒素に浸漬して凍結させた後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を必要に応じて所定量のアミノアシルメチルエステルを含有する100μLの98%メタノールに加えて表5記載の反応混合物17〜18を調製し、25℃で反応を開始させた。反応混合物を300rpmで振盪しながら、反応時間を4時間とした後、1.9mLの100%メタノールを反応混合物に加えることによって反応を停止させた。また、酵素を含まない反応混合物16を前記と同様に調製し、反応を行なった。反応後の反応混合物16〜18について、上記の通りTLC分析を行なった。TLC分析の結果を図8に示す。
図8に示されるとおり、反応混合物17と18ではPhePhe−OMeジペプチド誘導体のスポットが確認された。一方、酵素が添加されていない反応混合物16では、新たなスポットは確認されなかった。
以上より、本発明の製造方法により、従来の製造方法では合成することが困難であった生理活性を示すジペプチドを含む多種類のジペプチド又はその誘導体が製造され得ることがわかる。
参考例1 熱安定性測定
酵素(SSAP、SGAP、AAP)を終濃度2μg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)(SGAPの場合は10mM Tris−HCl 1mM 塩化カルシウム)に溶解して酵素溶液を得た。得られた酵素溶液 200μLを50℃から90℃の範囲で30分間加熱処理し、処理後即座に氷中に移し冷却した。加熱処理後の酵素液100μLを使用し、前記に示したアミノペプチダーゼ活性測定法の通りに熱処理後の酵素の残存活性を測定した。また、熱処理を行っていない酵素の活性値を100として処理後の酵素の相対活性値を求め、各酵素の50%熱不活性温度を測定した。結果を表6に示す。
酵素(SSAP、SGAP、AAP)を終濃度2μg/mLとなるよう10mM Tris−HCl (pH8.0)(SGAPの場合は10mM Tris−HCl 1mM 塩化カルシウム)に溶解して酵素溶液を得た。得られた酵素溶液 200μLを50℃から90℃の範囲で30分間加熱処理し、処理後即座に氷中に移し冷却した。加熱処理後の酵素液100μLを使用し、前記に示したアミノペプチダーゼ活性測定法の通りに熱処理後の酵素の残存活性を測定した。また、熱処理を行っていない酵素の活性値を100として処理後の酵素の相対活性値を求め、各酵素の50%熱不活性温度を測定した。結果を表6に示す。
表6に示されるように、上記参考例で使用したアミノペプチダーゼは、いずれも熱安定性であった。
本発明の製造方法により、種々のジペプチド又はジペプチド誘導体を効率的に製造することができる。
配列番号:7は、SSAP遺伝子増幅用のPCRプライマーである。
配列番号:8は、SSAP遺伝子増幅用のPCRプライマーである。
Claims (5)
- ペプチダーゼファミリーM28に属し、逆反応活性を有する熱安定性アミノペプチダーゼ及び溶媒の存在下で、アシル供与体とアシル受容体とを反応させてジペプチド又はその誘導体の合成を行なう、ジペプチド又はその誘導体の製造方法。
- アミノペプチダーゼが、ストレプトマイセス属、アエロモナス属、シュードモナス属又はバシラス属のいずれかに属する微生物由来である、請求項1記載の製造方法。
- アミノペプチダーゼが、
(A)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において63位のアラニン残基から345位のセリン残基までのアミノ酸配列(配列A)からなるポリペプチド、
(A’)配列Aにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において46位のアラニン残基から329位のスレオニン残基までのアミノ酸配列(配列B)からなるポリペプチド、(B’)配列Bにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号:5に示されるアミノ酸配列において26位のメチオニン残基から325位のグリシン残基までのアミノ酸配列(配列C)からなるポリペプチド、又は(C’)配列Cにおいて少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を含有し、かつアミノペプチダーゼの逆反応活性を有するポリペプチド
である、請求項1又は2記載の製造方法。 - 溶媒が有機溶媒を含む、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
- アシル受容体がアミノアシルアルキルエステルである、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
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