JP5754682B2 - D−,l−ペプチドの立体選択的合成法 - Google Patents
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Description
(1)D−アミノ酸をN末端に、L−アミノ酸をC末端に有するジペプチド、その誘導体、またはその環化ジペプチドの製造方法であって、D−アミノ酸またはその誘導体をアシル供与体とし、L−アミノ酸またはその誘導体をアシル受容体として、ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼを用いて反応を行うことを特徴とする方法;
(2)ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼがストレプトマイセス属に属する微生物由来のものである、(1)記載の方法;
(3)ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼが独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−851として受託された微生物に由来するものである、(2)記載の方法;
(4)ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼが独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−862として受託された微生物に由来するものである、(2)記載の方法;
(5)アシル供与体が、カルボキシル基をエステル基で保護されたD−アミノ酸またはD−アミノ酸アミドであり、アシル受容体が、L−アミノ酸、カルボキシル基をエステル基で保護されたL−アミノ酸またはL−アミノ酸アミドである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法;
(6)アシル受容体がL−アミノ酸である、(5)記載の方法;
(7)独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−851として受託された微生物が産生するペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼ;
(8)独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−862として受託された微生物が産生するペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼ;
(9)独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−851として受託された微生物;
(10)独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−862として受託された微生物。
(1)土壌からのS12アミノペプチダーゼ生産菌の分離と同定
土壌から分離した2000株から、D−Phe−pNAを基質とした酵素活性測定によるスクリーニングを行って、2株のS12アミノペプチダーゼ生産菌を得た。酵素活性測定は、200mM Tris−malate(pH6.5)中で、D−Phe−pNA(1mM)を基質として25℃で反応させ、遊離したp−ニトロアニリンを405nmの吸光度にて測定することにより行った。以下の精製工程においても、上記酵素活性測定法を用いた。
82F2株を400mlの液体培地中で25℃、6日間好気的に振盪培養した。培地は0.8% K2HPO4、2.0% グルコース、0.05% MgSO4・7H2O、0.5% ポリペプトン、および0.5% 酵母エキスを含むものであった。培養上清を硫安にて45%飽和とし、45%飽和硫安を含む100mM Tris−HCl(pH8.0)にて平衡化したButyl Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)カラムに供した。カラムを20%飽和硫安で洗浄し、その後100mM Tria−HCl(pH8.0)にて酵素を溶出させた。高活性フラクションを集め、20mM Tris−HCl(pH8.0)に対して透析した。透析物を、20mM Tris−HCl(pH8.0)で平衡化したスピンカラム(Vivapure−Q; Sartorius AG)に供した。カラムを20mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄し、0.2M NaClを含む20mM Tris−HCl(pH8.0)で酵素を溶出させた。高活性フラクションを集め、20mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)に対して透析した。透析物を、20mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)で平衡化したスピンカラム(Vivapure−QS; Sartorius AG)に供した。0.1M NaClを含む20mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)でカラムを洗浄し、0.4M NaClを含む20mM 酢酸ナトリウム(pH5.5)で酵素を溶出させた。得られた酵素をアミノ酸配列決定に供した。82F2株からのS12アミノペプチダーゼの精製について、表1にまとめた。
上記のごとく精製した82F2株のS12アミノペプチダーゼを12% SDS−PAGE(変性条件下;Laemmli, U. K. 1970. Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature 227:680-685.)に供し、PVDF膜にブロットした。Coomasie Brilliant Blue染色にて蛋白を検出し、蛋白バンドを膜から切り出した。得られた蛋白試料をAPRO Life Science Institute Inc.に送付し、分析を依頼した。エドマン分解によりN末端アミノ酸配列はAla−Pro−Alaであることが判明した。2つの内部配列Ile−Thr−Val−Arg−Gln−Leu−Leu−Asn−His−Thr−Ser−Gly(配列番号:1)およびLeu−Ser−Arg−Asp−Val−Asn−Ala−Pro−Val−His(配列番号:2)も判明した。これらの情報に基づいて遺伝子のクローニングを行った。
5'-ACSGTSCGSCAGCTSCTSCAGCA-3' (配列番号:3)
5'-GTGSACSGGSGCGTTSACGTC-3' (配列番号:4)
を用いるPCRにより、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAフラグメントを得た。部分配列を決定した後、キット(PCR DIG Probe; Roche Molecular Biochemicals)を用いてジゴキシゲニン標識PCRプローブを合成した。SmaIで消化された染色体DNAフラグメントとSacIで消化された染色体DNAフラグメントをジゴキシゲニン標識PCRプローブとハイブリダイズさせた。陽性フラグメントを回収し、自己ライゲーションさせた。ライゲーション産物を、下記のプライマーセット:
5'-CGGATCATCAAGCCGCTCAAG-3' (配列番号:5)
5'-TCCTCGGTGTAGCTGTAGATG-3' (配列番号:6)
を用いてPCR増幅し、生成物を配列決定に供した。配列決定されたDNA(配列番号:7)は、DDBJデータベースの受領番号AB531389を付与された。配列決定されたヌクレオチド配列から82F2株のS12アミノペプチダーゼのアミノ酸配列を推定した(配列番号:8)。シグナル配列を除く推定分子量は37394であった。82F2株のS12アミノペプチダーゼは、公知のストレプトマイセス属あるいはバチルス属のβ−ラクタマーゼ、アルカリD−ペプチダーゼ、D,D−カルボキシペプチダーゼとは30〜60%のアミノ酸配列同一性を示した。また、82F2株のS12アミノペプチダーゼはこれらの酵素に共通する活性部位のSxTKモチーフを有していた。
D−Phe−OMeを基質として反応させ、TLC(60 F254; Merck and Co. Inc.;n−ブタノール−酢酸−水(3:1:1,vol/vol)にて約1時間展開;ニンヒドリンで検出)および質量分析(ESI−TOF MS)にて生成物を調べた。D−Pheのほかに質量分析にて[M+H]+が313の生成物も確認され、この生成物はD−Phe−D−Pheであると同定された。D−Phe−D−Phe−OMeの生成は確認されなかった。これらの結果から、82F2株のS12アミノペプチダーゼはペプチド合成反応を触媒することがわかった。82F2株のS12アミノペプチダーゼのペプチド合成反応の最適pHは8〜9あるいはそれ以上であった。
下記のプライマーセット:
5'-TGGCCATGGCGCCCGCGAAGCCGGACCACG-3' (配列番号:9)
5'-AAGCTTCTACTTCTTCGGGGCGGTGCCGCA-3' (配列番号:10)
(下線はMscI及びHindIIIの切断部位を示す。)
を用いて、82F2株の染色体DNAからS12アミノペプチダーゼをコードする遺伝子(シグナル配列を除く)を増幅した。PCR生成物を、pCR−Blunt II−TOPO中にクローニングし、配列決定により正しくクローニングされていることを確認した。82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードする遺伝子を、pET−22bのMscI−HindIIIギャップ中にサブクローニングして発現ベクターpET−82FS12を得た。
2μlのアシル供与体基質および2μlのアシル受容体基質(いずれもDMSO中約0.5M)を、44μlの0.25Mの緩衝液(Tris−HCl(pH8.5))に添加し、酵素液(0.75mg/ml)を2μl添加することにより反応を開始させた。反応は25℃で1時間行った。0.05mlの3%ギ酸を添加することにより反応を停止した。得られた反応混合物を質量分析にて分析した。
表中、基質の欄はアミノ酸の種類と誘導体化されている場合には誘導体の種類を示す。生成物の欄は、基質とD−Phe−OBzl、および基質とL−Leu−OEtとの組合せから生じた生成物の種類を示す。生成物の同定および測定は質量スペクトルにより行った。カテゴリーの欄は、ペプチド合成反応において基質がアシル供与体として作用したか(donor)、アシル受容体として作用したか(acceptor)、それらの両方として作用したか(both)を示す。n.d.は検出不可能であったことを示す。----は検討しなかったことを示す。
D−Phe−OBzlの濃度を20mM、L−Trp−OMeまたはL−Trpの濃度を0〜40mMとして、実施例3に記載したのと同様に反応を行って、ジペプチドの生成について検討した。生成物を質量分析にて分析した。L−Trp、L−Trp−OMeのいずれをアシル受容体としてもジペプチドが生成し、それぞれD−Phe−L−Trp、D−Phe−L−Trp−OMeが主生成物であった(それぞれ図3の上図、中図)。L−Trp−OMeをアシル受容体とした場合のほうが、アシル受容体が低濃度であっても所望のジペプチドの収率が高かった。さらに、L−Trp−OMeの濃度を20mM、D−Phe−OBzlの濃度を0〜40mMとして反応させた場合の生成物についても検討した(図3の下図)。この場合、D−Phe−OBzlの濃度を20mM、L−Trpの濃度を0〜40mMとして反応させた場合と同様の結果となった。
D−Pro−OBzlの濃度を20mM、L−Arg−OMeの濃度を20mMとして、実施例3に記載したのと同様に反応を行って、ジペプチドおよびその環化物の生成について検討した。反応は500分まで行い、経時的にサンプリングした。生成物を質量分析にて分析した。この反応の生成物の質量分析の結果の例を図4に、この反応の生成物の経時変化を図5に示す。反応初期(約60分まで)はD−Pro−L−Arg−OMeの生成が優勢であったが、100分を越えたあたりから、環化物であるc(D−Pro−Arg)の生成が優勢となり、D−Pro−L−Arg−OMeは徐々に減少した。480分の反応でc(D−Pro−Arg)の生成量は10.2mMであり、変換率は50%以上であった。
83D12株は受託番号NITE P−862として独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に受託された。
配列番号:2は、82F2株のS12アミノペプチダーゼの内部アミノ酸配列である。
配列番号:3は、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAフラグメントをPCRにて増幅するためのプライマーである。
配列番号:4は、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAフラグメントをPCRにて増幅するためのプライマーである。
配列番号:5は、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAをPCRにて増幅するためのプライマーである。
配列番号:6は、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAをPCRにて増幅するためのプライマーである。
配列番号:7は、82F2株のS12アミノペプチダーゼをコードするDNAの塩基配列である。1118番目〜2266番目の塩基がオープンリーディングフレームである。
配列番号:8は、82F2株のS12アミノペプチダーゼの推定アミノ酸配列である。
配列番号:9は、82F2株の染色体DNAからS12アミノペプチダーゼをコードする遺伝子(シグナル配列を除く)をPCRにて増幅するためのプライマーである。
配列番号:10は、82F2株の染色体DNAからS12アミノペプチダーゼをコードする遺伝子(シグナル配列を除く)をPCRにて増幅するためのプライマーである。
Claims (9)
- D−アミノ酸をN末端に、L−アミノ酸をC末端に有するジペプチド、その誘導体、またはその環化ジペプチドの製造方法であって、D−アミノ酸またはその誘導体をアシル供与体とし、L−アミノ酸またはその誘導体をアシル受容体として、ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼを用いて反応を行うことを特徴とし、該アミノペプチダーゼは、配列番号:3および配列番号:4のプライマーを用いてPCR増幅し、次いで、配列番号:5および配列番号:6のプライマーを用いてPCR増幅することによりクローニングされるストレプトマイセス属微生物由来のペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼであり、該誘導体は、アミノ酸のカルボキシル基がエステル基またはアミドで保護された誘導体である、方法。
- ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼが独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−851として受託された微生物に由来するものである、請求項1記載の方法。
- ペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼが独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−862として受託された微生物に由来するものである、請求項1記載の方法。
- アシル供与体が、カルボキシル基をエステル基で保護されたD−アミノ酸またはD−アミノ酸アミドであり、アシル受容体が、L−アミノ酸、カルボキシル基をエステル基で保護されたL−アミノ酸またはL−アミノ酸アミドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- アシル受容体がL−アミノ酸である、請求項4記載の方法。
- 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−851として受託された微生物が産生するペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼ。
- 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託され、受託番号NITE P−862として受託された微生物が産生するペプチダーゼファミリーS12に属するアミノペプチダーゼ。
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