JP2000078971A - D−、l−アミノ酸エステルよりオリゴペプチドを合成する新規酵素およびこれを生産する微生物 - Google Patents

D−、l−アミノ酸エステルよりオリゴペプチドを合成する新規酵素およびこれを生産する微生物

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Akio Sugihara
耿雄 杉原
Yoshio Tominaga
嘉男 富永
Shigeyuki Takenishi
繁行 竹西
Yuji Shimada
裕司 島田
Tetsuo Muro
哲雄 室
Hisahiro Nagao
寿浩 永尾
Yoshi Watanabe
嘉 渡辺
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 医薬分野で広く利用されている抗生物質およ
びホルモン類に使用され得るオリゴペプチドを合成する
酵素、その酵素を生産する微生物、およびその酵素また
は微生物を用いるオリゴペプチド合成方法を提供するこ
と。 【解決手段】 D−アミノ酸エステルおよびL−アミノ
酸エステルのいずれをも基質としてオリゴペプチド合成
反応を触媒する新規酵素およびこの酵素を生産する微生
物、およびこの酵素または微生物を用いるオリゴペプチ
ド合成方法。微生物は、好ましくはバチルス ミコイデ
ス(Bacillus mycoides)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、D−アミノ酸エス
テルもしくはL−アミノ酸エステルを基質としてオリゴ
ペプチド合成反応を触媒する新規酵素およびこの酵素を
生産する微生物、およびこの酵素または微生物を用いる
オリゴペプチド合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで、D−アミノ酸エステルおよび
L−アミノ酸エステルのいずれをも基質としてオリゴペ
プチド合成反応を触媒し、かつペプチド加水分解活性を
示さない酵素、およびこのような酵素を生産し得る微生
物は知られていなかった。本発明者らは、D−アミノ酸
のみに作用してオリゴペプチド合成反応を触媒する酵素
を見出し、特開平9−173062号公報に詳細を開示
した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、医薬分野で
広く利用されている抗生物質およびホルモン類に使用さ
れ得るオリゴペプチドの合成に有用なものであり、その
目的とするところは、オリゴペプチドを合成する酵素、
その酵素を生産する微生物、およびその酵素または微生
物を用いるオリゴペプチド合成方法を提供することであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討を行った結果、新たに単離し
たバチルス(Bacillus)属に属する細菌からD
−、またはL−アミノ酸エステルからオリゴペプチドを
合成する新規酵素を単離し、これに基づいて、本発明を
完成するに至った。
【0005】本発明は、アミノ酸エステルとアミン成分
とを基質とするオリゴペプチド合成反応を触媒する酵素
であって、該アミノ酸エステルとして、D−アミノ酸エ
ステルおよびL−アミノ酸エステルのいずれをも利用し
得る酵素を提供する。
【0006】本明細書において「アミノ酸エステル」と
は、アミノ酸のアルキルエステルをいう。アルキルエス
テルは、好ましくは炭素数が4個以下の低級アルキルエ
ステルであり、より好ましくはメチルエステルまたはエ
チルエステルであり、もっとも好ましくはメチルエステ
ルである。他に特定されない限り「アミノ酸エステル」
には、当該アミノ酸エステルをC末端に有するオリゴペ
プチドも含まれる。
【0007】なお、本発明の酵素が作用する基質は、必
ずしもアミノ酸エステルのみに限定されることはなく、
任意の適切なカルボキシル基誘導体を有するアミノ酸も
また基質となり得る。
【0008】本明細書において「オリゴペプチド」と
は、天然型L−アミノ酸および/またはD−アミノ酸、
および/または非天然型アミノ酸が、任意の順序でアミ
ド結合により縮合したものをいう。非天然型アミノ酸
は、フェニルグリシン、p−ヒドロキシフェニルグリシ
ンなどの公知化合物を含むが、これらには限定されず、
例えば、アミノ酸から誘導されるアミノ基およびカルボ
キシル基を有する任意の化合物を含み得る。「オリゴペ
プチド」の重合度(アミノ酸残基の数)は、代表的には
2〜10、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜4で
あるが、これらに限定はされない。
【0009】本明細書において「アミン成分」とは、ア
ミノ基を有する任意の化合物を指し、代表的にはD−ア
ミノ酸またはL−アミノ酸である。他に特定されない限
り、アミン成分としての「アミノ酸」には、当該アミノ
酸をN末端に有するオリゴペプチドも含まれる。
【0010】本発明の酵素(以下「本酵素」ともいう)
は次の特性により特定され得る。 (1)D−アミノ酸エステルおよびL−アミノ酸エステ
ルのいずれに対しても作用して、オリゴペプチド合成反
応を触媒する。 (2)オリゴペプチド合成反応の基質であるアミン成分
は、D−アミノ酸およびL−アミノ酸のいずれであって
もよい。 (3)プロテアーゼ活性、ペプチダーゼ活性、およびエ
ステラーゼ活性のいずれをも有しない。 (4)反応液のpHが4〜9の範囲で活性を有し、特に
pHが6〜7の範囲で活性が高く、至適pHは6.5±
0.5である。 (5)0〜60℃の反応温度で活性を示し、特に反応温
度が30〜40℃の範囲で活性が高く、至適温度は35
±5℃である。 (6)ゲル濾過クロマトグラフィーによる分子量が29
±3kDaである。
【0011】本酵素は、少なくとも上記(1)の特性を
有し、好ましくは上記(1)および(2)の特性を有す
る。本酵素は、上記(1)に加えて、上記(2)から
(6)までの特性の少なくとも1つを有し得、またはこ
れらの2つ以上を組み合せて有し得る。最も好ましく
は、本酵素は上記(1)から(6)までの特性の全てを
有する。
【0012】なお、本明細書において、プロテアーゼ活
性を有しないとは、30℃に保温した0.6%ミルクカ
ゼイン溶液(pH7.2)に、当該酵素を加えて、10
分間インキュベートしたとき、プロテアーゼ反応の進行
が検出し得ないことをいう。ペプチダーゼ活性を有しな
いとは、0.02MのD−フェニルアラニル−D−フェ
ニルアラニン(D−Phe−D−Phe)、D−Phe
−L−Phe、L−Phe−D−Phe、およびL−P
he−L−Pheをそれぞれ含む、pH6.5の0.1
Mリン酸緩衝液に、当該酵素を加えて、30℃で、5時
間放置したとき、4種類のいずれのペプチドについて
も、検出し得る遊離のフェニルアラニンを生成しないこ
とをいう。エステラーゼ活性を有しないとは、0.5m
lのプロピオン酸メチルまたは酪酸メチル、2mlの
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)および当該酵素を
含む混合溶液を25℃で30分間インキュベートしたと
き、検出し得る遊離した酸を生成しないことをいう。
【0013】本酵素はまた、その極めて広い基質特異性
によって特徴付けられ得る。すなわち、オリゴペプチド
合成反応におけるアミノ酸エステルおよびアミン成分と
して、それぞれ、親水性アミノ酸(酸性アミノ酸および
塩基性アミノ酸を含む)および疎水性アミノ酸のいずれ
をも利用し得る。
【0014】当業者には明らかなように、本酵素をプロ
テアーゼなどで処理して、本酵素の活性を維持したより
低分子量の活性フラグメントを得ることも可能である。
そのような活性フラグメントおよびその利用もまた、本
発明の範囲に含まれ得る。同様に、公知のタンパク質修
飾技術によって本酵素に適当な修飾を施して、酵素の機
能、理化学的性質などをさらに改善することも可能であ
る。そのような修飾タンパク質およびその利用もまた、
本発明の範囲に含まれ得る。
【0015】本発明はまた、本酵素を生産する微生物を
提供する。本発明の微生物は、好ましくは、平成10年
8月28日に工業技術院生命工学工業技術研究所(生命
研と略称する)に寄託したバチルス ミコイデス AS
−1(Bacillus mycoides AS−
1)(生命研菌寄第16969号;FERM P−16
969)である。
【0016】本発明の微生物には、上記バチルス ミコ
イデス株と分類学上近縁の微生物(代表的には同一の
属、好ましくは同一または近縁の種)であって、本酵素
を生産し得る微生物も含まれ得る。そのような微生物
は、例えば、上記(1)の特性を基準としたスクリーニ
ングによって得ることができる。
【0017】上記特性を有するD−あるいはL−アミノ
酸オリゴペプチド合成酵素およびこれを生産する微生物
はこれまで知られていない。
【0018】本発明はまた、本酵素または本酵素を生産
する微生物をオリゴペプチド合成反応に使用する工程を
含むオリゴペプチドの合成方法を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】本発明の酵素は、生産菌は限定されるもの
ではないが例えば、バチルス ミコイデス AS−1
(Bacillus mycoides AS−1)
(生命研菌寄第16969号;FERM P−1696
9)により生産される。この微生物は本発明者らが、土
壌から、アミノ酸エステルを基質としてオリゴペプチド
合成反応を触媒する酵素の生産菌をスクリーニングした
結果、分離された微生物である。以下、この微生物の性
状について述べる。
【0021】(1)形態および培養 本微生物は、脂肪酸定量その他の同定試験の結果から、
乾燥その他のストレスに抵抗性のある内生胞子を形成す
る枯草菌バチルス ミコイデス(Bacillus m
ycoides)に属することが示された。
【0022】次に、本微生物から本発明の酵素を生産す
るための条件について説明する。本微生物は液体培養に
より当該酵素を生産し得る。本細菌を生育させる培地と
しては特に限定されず、通常の液体培地が用いられる。
炭素源としてはグルコースが用いられ得る。窒素源とし
てはペプトン、肉エキスを使用し得る。これらの培地成
分は本細菌の生育を阻害しない濃度であればよく、炭素
源は通常0.5%〜5重量%、好ましくは1〜3重量
%、窒素源は通常1〜5%、好ましくは1〜2重量%で
ある。培地は、通常pHを6〜8に調整し、滅菌して使
用する。培養温度は本細菌が生育し得る温度であればよ
く、通常20〜35℃、好ましくは25〜30℃であ
る。本細菌を液体培養する場合は、通気培養または振と
う培養が好ましい。培養時間は、種々の培養条件によっ
て異なるが、通気培養または振とう培養の場合は通常3
〜5日間が好ましい。
【0023】(2)培養液からの本酵素の分離精製 本細菌の培養液から本発明の酵素を分離精製するには、
既知の精製法、例えば脱塩、透析、塩析、各種クロマト
グラフィー、電気泳動が単独もしくは併用して利用され
得る。
【0024】培養後、菌体などの不溶物を遠心分離、ま
たは濾紙または濾布などによる濾過などにより除去し、
本酵素を含む粗酵素液を回収する。硫安による分画(塩
析)、透析、各種クロマトグラフィーなどの一般に用い
られる酵素の精製法により、得られた粗酵素液から本酵
素が精製され得る。例えば、上記粗酵素液を塩析、イオ
ン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水クロマトグ
ラフィーに順次供することにより、精製された高活性の
本酵素を含む画分が得られる。
【0025】(3)本酵素の活性の測定 本発明の酵素の活性は、例えば、0.4MのD−フェニ
ルアラニンメチルエステル(D−PheOMe)を基質
として用い、50mMリン酸緩衝液中、30℃で5時間
反応させることにより測定し得る。反応生成物は、反応
液をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)によ
って分析することにより確認し得る。
【0026】本酵素の活性は、D−PheOMeを基質
として用い、1時間に1μmolのD−Phe−D−P
heOMeを生成する酵素量を、1単位(U;ユニッ
ト)と定義した。
【0027】(4)酵素反応物の同定 酵素反応(オリゴペプチド合成反応)による生成物は、
例えば、逆相カラムを用いる高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)での分取後、アミノ酸分析および/また
は質量分析に付すことにより同定し得る。従って、当業
者は、所望のオリゴペプチド生成物を得るための適切な
反応条件(基質の比率および濃度、反応時間など)を容
易に設定し得る。
【0028】以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に
説明するが、これらはなんら本発明を限定するものでは
ない。
【0029】
【実施例】実施例において、培地成分、アミノ酸、およ
びその他の試薬は、いずれも市販品を使用した。TLC
では、反応液約1μlをシリカゲル薄層プレート(メル
ク社製)にスポットし、n−ブタノール:酢酸:水
(4:1:1)混合液で展開し、ニンヒドリン試薬を噴
霧した後、約120℃で、5分間加熱して発色させた。
逆相HPLCには島津製LC−9Aを、アミノ酸分析に
は島津製ALC−1000を、そして質量分析には日本
電子JMS−DX303H(FAB−MS分析)を、そ
れぞれ使用した。
【0030】(実施例1)バチルス ミコイデスの培養 100mlのブイヨン培地(2%ポリペプトン、1%肉
エキス、0.3%食塩、pH7.0)を含む500ml
の振とうフラスコに、本細菌(Bacillus my
coides AS−1(生命研菌寄第16969号;
FERM P−16969))を接種し、28℃で、4
日間振とう培養した。
【0031】(実施例2)本酵素の精製 実施例1で得られた培養液を遠心分離(10,000r
pm、10分間)して得られた上清を粗酵素液とした。
この粗酵素液に80%飽和となるように硫安(硫酸アン
モニウム)を添加し、生じた沈殿を10mMリン酸緩衝
液(pH6.0)に溶解し、同緩衝液に対して透析し
た。この透析液を同緩衝液で平衡化したDEAE−トヨ
パール650Mカラム(東ソー社製)にアプライし、同
緩衝液で洗浄後、0Mから1Mまでの食塩(NaCl)
の濃度勾配をかけて、カラムに吸着された本酵素を溶出
した。活性画分を集めて限外濾過膜を用いて濃縮した。
この濃縮物を、Sephacryl S−100(ファ
ルマシア社製)カラムを用いて、50mMリン酸緩衝液
(pH7.0)を含む0.2M NaCl水溶液を溶離
液として、ゲル濾過に付した。活性画分を集めて限外濾
過膜を用いて濃縮後、終濃度が20%飽和となるよう硫
安を添加した。この酵素液を20%飽和の硫安で平衡化
したブチルトヨパール650Mカラム(東ソー社製)に
アプライし、20%飽和から0%飽和までの硫安濃度勾
配をかけて、カラムに吸着された本酵素を溶出し、精製
された酵素を得た。上記の精製工程全体を通じての、活
性酵素の回収率は8%、精製度は約200倍であった。
【0032】(実施例3)本酵素の分子量測定 実施例2で得られた精製酵素の分子量は、Superd
ex 200 HR10/30カラム(1×30cm)
(ファルマシア社製)を用いるゲル濾過により測定し
た。分子量既知の標準蛋白質としてファルマシア社製ア
ルドラーゼ(150kD)、牛血清アルブミン(68k
D)、オボアルブミン(45kD)、カルボニックアン
ヒドラーゼ(32kD)およびリゾチーム(14.5k
D)を用いて検量線を作成した。その結果、本酵素の分
子量は29±3kDaであった。
【0033】(実施例4)本酵素の酵素活性のpH依存
性 酵素活性のpH依存性は、ブリットン−ロビンソン(B
ritton−Robinson)の広域緩衝液を用い
て30℃で測定した。基質として0.02Mのアセチル
−D−フェニルアラニンメチルエステルと0.2MのL
−ロイシンアミドとを用い、ジペプチドであるアセチル
−D−フェニルアラニル−L−ロイシンアミドの生成量
を逆相HPLCで測定した。その結果、少なくともpH
4〜9の範囲では活性が認められ、最適pHは6.5±
0.5であった。本酵素のpH特性を図1に示す。
【0034】(実施例5)本酵素の酵素活性の温度依存
性 酵素活性の温度依存性は、0.2MのD−フェニルアラ
ニンメチルエステルを基質としてpH6.5の50mM
リン酸緩衝液中、0〜60℃の温度範囲で5時間作用さ
せて測定した。その結果、この温度範囲全体にわたって
活性が認められ、最適温度は35±5℃であった。本酵
素の温度特性を図2に示す。
【0035】(実施例6)本酵素のプロテアーゼ活性 30℃に保温した0.6%ミルクカゼイン溶液(pH
7.2)2mlに、本酵素の酵素液0.4ml(30
U)を加えて、10分間インキュベートした後、トリク
ロロ酢酸溶液2mlを加えて、10分間放置した。混合
物を濾紙で濾過した後、濾液の275nmでの吸光度を
測定することにより、プロテアーゼ反応の有無を調べ
た。その結果、本酵素には検出し得るプロテアーゼ活性
のないことが示された。
【0036】(実施例7)本酵素のペプチダーゼ活性 0.02MのD−フェニルアラニル−D−フェニルアラ
ニン(D−Phe−D−Phe)、D−Phe−L−P
he、L−Phe−D−Phe、およびL−Phe−L
−Pheをそれぞれ含む、pH6.5の0.1Mリン酸
緩衝液に、本酵素の酵素液0.1mlを加えた後、30
℃で、5時間放置した。アミノ酸分析計でフェニルアラ
ニンの生成量を調べた。その結果、本酵素は、上記4種
類のいずれのペプチドについても遊離のフェニルアラニ
ンを生成せず、検出し得るペプチダーゼ活性のないこと
が示された。
【0037】(実施例8)本酵素のエステラーゼ活性 0.5mlのプロピオン酸メチルまたは酪酸メチル、2
mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)および本酵
素の酵素液0.1mlを含む混合溶液を25℃で30分
間インキュベートした後、20mlのエタノールを加
え、0.05Nの水酸化カリウムで遊離した酸を滴定し
た。その結果、本酵素は、上記2種類のいずれのエステ
ルについても遊離の酸を生成せず、検出し得るエステラ
ーゼ活性のないことが確認された。
【0038】(実施例9)本酵素の基質特異性 実施例2で精製された本酵素を種々の0.2MのD−ア
ミノ酸メチルエステルに30℃、pH6.5で5時間作
用させ、その反応液をシリカゲルTLCおよび逆相HP
LCに供した。TLC分析の結果を図3に示す。図3の
下欄は、アミノ酸の種類を通常の1文字記号で示す。R
(NO2)はニトロアルギニンである。本酵素が、極め
て広い基質特異性を示すことが理解される。
【0039】D−フェニルアラニンメチルエステル(D
−PheOMe)を基質とした場合の、出発物および5
時間後の反応液の逆相HPLCのクロマトグラムを図4
に示す。逆相カラムとしてケムコソルブ(ケムコ社製)
を用い、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む1
0%から70%までのアセトニトリルの濃度勾配により
溶出した。反応生成物は、アミノ酸分析および質量分析
により、D−フェニルアラニンのオリゴペプチド(重合
度2〜6)であることが確認された。
【0040】上記と同様に、本酵素を種々のL−アミノ
酸メチルエステルに作用させた場合のシリカゲルTLC
分析の結果を図5に示す。図3および図5の結果から、
本酵素はD−アミノ酸エステルおよびL−アミノ酸エス
テルのいずれをも基質としてオリゴペプチド合成反応を
触媒し得ることが理解される。
【0041】(実施例10)本酵素を用いる用いるオリ
ゴペプチド合成 実施例2で精製された本酵素(40U)を、0.02M
のアセチル−D−フェニルアラニンメチルエステル(A
c−D−PheOMe)と0.2MのL−ロイシンアミ
ド(L−LeuNH2)とを含む水溶液(pH6.5)
に、30℃で5時間作用させた。反応生成物を、逆相H
PLCで分取した。逆相カラムとしてケムコソルブ(ケ
ムコ社製)を用い、実施例9と同じ条件で溶出した。逆
相HPLCのクロマトグラムを図6に示す。分取した生
成物を質量分析に供することにより、生成物がアセチル
−D−フェニルアラニル−L−ロイシンアミド(Ac−
D−Phe−L−LeuNH2)であることが確認され
た。質量スペクトルを図7に示す。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、種々のアミノ酸オリゴ
ペプチドを合成する酵素、およびこの酵素を生産する微
生物が提供される。そのため、本酵素は、医療分野で広
く利用されているペプチド性抗生物質、ホルモンなどの
製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本酵素のpH特性を示す。
【図2】 本酵素の温度特性を示す
【図3】 本酵素を0.2Mの各種D−アミノ酸メチル
エステルと、pH6.5、30℃で5時間インキュベー
トした後のシリカゲル薄層クロマトグラムを示す。
【図4】 本酵素を0.2MのD−フェニルアラニンメ
チルエステルと、pH6.5、30℃で5時間インキュ
ベートした場合の(a)出発物および(b)5時間後の
反応液の逆相高速液体クロマトグラムを示す。
【図5】 本酵素を0.2Mの各種L−アミノ酸メチル
エステルと、pH6.5、30℃で5時間インキュベー
トした後のシリカゲル薄層クロマトグラムを示す。
【図6】 本酵素を0.02Mのアセチル−D−フェニ
ルアラニンメチルエステルと0.2MのL−ロイシンア
ミドとを含む水溶液(pH6.5)に、30℃で5時間
作用させた後の反応液の逆相高速液体クロマトグラムを
示す。
【図7】 本酵素を0.02Mのアセチル−D−フェニ
ルアラニンメチルエステルと0.2MのL−ロイシンア
ミドとを含む水溶液(pH6.5)に、30℃で5時間
作用させた後の生成物の質量スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12N 1/20 C12R 1:07) (C12P 21/02 C12R 1:07) (72)発明者 竹西 繁行 奈良県奈良市神功1丁目6番地平城第1団 地19−302 (72)発明者 島田 裕司 大阪府大阪市東住吉区北田辺4丁目6番13 号 (72)発明者 室 哲雄 京都府宇治市五ヶ庄西川原32番地の8 ユ ニライフ宇治A棟 310号 (72)発明者 永尾 寿浩 大阪府大阪市生野区生野西4丁目18番6号 (72)発明者 渡辺 嘉 大阪府大阪市城東区森之宮2丁目7番809 号 Fターム(参考) 4B050 CC01 DD02 FF03E FF04E FF05E FF11E FF12E LL01 LL05 4B064 AG01 CA02 CA21 CB30 CD13 CE03 CE04 CE06 CE07 CE10 CE11 DA01 DA16 4B065 AA15X AC14 AC15 BB01 BC01 BC03 BC26 BD14 BD15 BD17 BD18 BD33 BD50 CA27 CA29 CA44

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノ酸エステルとアミン成分とを基質
    とするオリゴペプチド合成反応を触媒する酵素であっ
    て、該アミノ酸エステルとして、D−アミノ酸エステル
    およびL−アミノ酸エステルのいずれをも利用し得る、
    酵素。
  2. 【請求項2】 前記アミン成分として、D−アミノ酸お
    よびL−アミノ酸のいずれをも利用し得る、請求項1に
    記載の酵素。
  3. 【請求項3】 プロテアーゼ活性、ペプチダーゼ活性、
    およびエステラーゼ活性のいずれをも有しない、請求項
    1または2に記載の酵素。
  4. 【請求項4】 pHが4〜9の範囲でオリゴペプチド合
    成反応を触媒し、至適pHが6.5±0.5である、請
    求項1から3のいずれかに記載の酵素。
  5. 【請求項5】 0〜60℃の温度範囲でオリゴペプチド
    合成反応を触媒し、至適温度が35±5℃である、請求
    項1から3のいずれかに記載の酵素。
  6. 【請求項6】 ゲル濾過クロマトグラフィーによる分子
    量が29±3kDaである、請求項1から3のいずれか
    に記載の酵素。
  7. 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の酵素
    を生産する微生物。
  8. 【請求項8】 バチルス ミコイデス AS−1(Ba
    cillus mycoides AS−1)(生命研
    菌寄第16969号;FERM P−16969)であ
    る、請求項7に記載の微生物。
  9. 【請求項9】 請求項1から6のいずれかに記載の酵
    素、または請求項7または8に記載の微生物をオリゴペ
    プチド合成反応に使用する工程を包含する、オリゴペプ
    チドの合成方法。
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