JP2007314435A - テトラカルボン酸類またはこれらから誘導されるポリエステルイミド及びその製造方法 - Google Patents
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高分子討論会予稿集,53,4115(2004) Macromolecules,24,5001(1991) Macromolecules,32,4933(1999)
すなわち本発明は以下を要旨とするものである。
すなわち、本発明のポリエステルイミドの原料であるエステル結合と脂環構造とを含有する無水物において、2つの酸無水物基のうちの1つがシクロヘキサン環上に結合していることに由来して、得られるエステル結合と脂環構造とを含有するポリエステルイミドにおけるπ電子共役および分子内・分子間電荷移動相互作用を部分的に抑制することで、透明性を高め、且つ誘電率を低下することが可能となる。またこのポリエステルイミド中のエステル結合により、汎用のアルカリ水溶液によるエッチングが可能となる。
本発明のエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二酸無水物またはそのテトラカルボン酸類は、下記一般式(1)または(2)のいずれかで表される。この中でも、重合反応性が高い点で一般式(1)で表されるエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二酸無水物が好ましい。
本発明のエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二酸無水物またはそのテトラカルボン酸類は、芳香環が水素化されたトリメリット酸無水物(以下、「核水素化トリメリット酸無水物」と称す)と4−ヒドロキシフタル酸無水物を原料として製造できる。なお、下記に製造方法を記載するが、エステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二酸無水物またはそのテトラカルボン酸類を製造できればよく、その製法は限定されない。
核水素化トリメリット酸無水物の製造方法の具体例としては、トリメリット酸、トリメリット酸無水物を水素化する方法が挙げられる。あるいは、トリメリット酸のエステルを核水素化し、その後エステル部分を加水分解、分子内脱水して酸無水物化することでも製造することができる。具体的には、米国特許出願公開第5412108号明細書に開示されるトリメリット酸無水物の核水素化により製造することができる。該米国出願公開明細書においては、核水素化に使用可能な水素化触媒として、Rh金属がある特定の担体に担持されたRh触媒が有効であるとされているが、この他にもPd,Ru,Ni,Ptなどの芳香核を水素化できる金属を使用した触媒であれば特に制限なく使用することができる。これら金属触媒は、担体に担持されていてもよく、また、金属単独で使用することも可能であり、さらにはこれら金属に必要に応じて他の成分を添加して用いてもよい。
また、その際採用される温度は、下限が通常30℃、好ましくは50℃、上限が通常200℃、好ましくは150℃である。
なお、以下において、酸ハライド化の具体例として、酸クロリド化を例示して説明するが、酸ブロミド化等の他の酸ハライド化についても、同様に、対応する酸ハライド化剤を用いて実施することができる。
この反応における試剤の添加の方法には特に制限がなく任意の添加法が採用できる。例えば、4−ヒドロキシフタル酸無水物と塩基を溶媒に溶解し、これに同一の溶媒に溶解した実質的に等モルの上記核水素化トリメリット酸無水物の酸クロリドをゆっくりと滴下する方法、あるいは、逆に必要に応じて溶媒に溶解した上記の核水素化トリメリット酸無水物の酸クロリド中に4−ヒドロキシフタル酸無水物と塩基の混合溶液を滴下する方法、さらには、核水素化トリメリット酸無水物の酸クロリドと4−ヒドロキシフタル酸無水物の混合溶液の中へ塩基を滴下する方法、などが採用可能である。
本発明の脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体(本発明では、「脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体」ともいう。)は、下記一般式(3A)〜(3D)のいずれかで表される構成単位を含むものである。具体的には、下記一般式(3A)で表される構成単位と、下記一般式(3B)で表される構成単位と、下記一般式(3C)で表される構成単位と、下記一般式(3D)で表される構成単位とがランダムに配列した共重合体である。
本発明のポリエステルイミド前駆体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。通常、重合溶媒中で、本発明のエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二無水物またはそのテトラカルボン酸類を、実質的に等モルのジアミンと反応させることで、本発明の脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体を容易に製造することができる。
本発明のポリエステルイミド(本発明では「脂環構造含有ポリエステルイミド」ともいう。)は、下記一般式(4)で表される構成単位を含むものである。
この重量平均分子量は、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析で求めることができる。
このガラス温度は、動的粘弾性測定により求めることができる。
このカットオフ波長は、通常、紫外可視光吸収スペクトルを測定することで求めることができる。
この線熱膨張係数は、通常、熱機械分析を行うことにより測定することができる。
本発明の脂環構造含有ポリエステルイミドは、前述の方法で得られた脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。この際脂環構造含有ポリエステルイミドの使用可能な形態は、フィルム、粉末、成型体および溶液である。
すなわち、まず、前記脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中で乾燥する。その際に採用される乾燥の温度は、下限が通常40℃、好ましくは50℃、さらに好ましくは60℃である。一方、上限は通常200℃、好ましくは150℃、さらに好ましくは100℃である。乾燥の時間は、溶媒が十分に除去されるならば特に制限なく採用できるが、下限が通常10分、好ましくは30分、さらに好ましくは1時間、上限は特に制限はないが、通常50時間、好ましくは30時間、さらに好ましくは10時間が採用される。
また、強度向上、耐熱性の増強、吸水性の低下など樹脂に要求される物性を達成するために、本発明の脂環構造含有ポリエステルイミドに他の樹脂を混合することも可能である。その際に使用される樹脂は、本発明の脂環構造含有ポリエステルイミドと均一に混合することができれば問題なく、特に制限はされない。
本発明の脂環構造含有ポリエステルイミドは、高ガラス転移温度、高透明性、有機溶媒溶解性およびアルカリエッチング特性を併せ持つため、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜およびフレキシブルプリント配線回路用基材、テープオートメーションボンディング用基材、液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、感光材料、半導体素子の保護膜および層間絶縁膜、ハードディスクドライブ(HDD)の回路付サスペンション用絶縁膜等に利用できる。
なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
日本分光社製フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR5300)を用い、透過法にてエステル基含有脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体およびその硬化薄膜(5μm厚)の赤外吸収スペクトルを測定した。また、合成したエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二酸無水物等の分子構造を確認するためにKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
合成したエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸類の分子構造を確認するために、日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用いて、ジメチルスルホキシド(DMS)中で合成物のプロトンNMRスペクトルを測定した。
合成したエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸類の融点および融解曲線は、ブルカーエイエックス社製示差走査熱量分析装置(DSC3100)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度2℃/分で測定した。
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体溶液について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリエステルイミドフィルム(20μm厚)のガラス転移温度を求めた。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の線熱膨張係数を求めた。
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)(ナトリウムランプ使用、波長589nm)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率を測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。この値が高いほど、ポリマー鎖の面内配向度が高いことを意味する。
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルムの平均屈折率〔nav=(2nin下付+nout)/3〕に基づいて、次式:εcal=1.1×nav 2により1MHzにおけるポリエステルイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。
50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィルム(膜厚20〜30μm)を24℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。殆どの用途においてこの値が低いほど好ましい。
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力−歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを意味する。
<エステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成>
以下の方法で、まず核水素化トリメリット酸無水物の塩素化を行った。
窒素導入菅およびコンデンサー付反応容器中に、核水素化トリメリット酸無水物7.93g(40mmol)を入れ、これに塩化チオニル80mL(1.1mol)を加え、窒素雰囲気中、80℃で2時間還流した。その後、反応溶液に無水ベンゼン加え、オイルバス中で溶媒を減圧留去した。さらに、無水ベンゼンを加えて留去し、残留塩化チオニルを完全に除去した。生成物を室温で15時間真空乾燥し、核水素化トリメリット酸無水物の酸クロリドの白色針状結晶を定量的に得た。
<脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体の重合、製膜、イミド化および物性評価>
よく乾燥した撹拌機付密閉反応容器中に4,4’−オキシジアニリン10mmolをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、この溶液に実施例1で合成したエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加えた(モノマー濃度:30重量%)。溶液粘度が増加したため、同一の重合溶媒を用いて最終的にモノマー濃度を12.6重量%まで希釈した。
ジアミンとして4,4’−オキシジアニリンの代わりにp−フェニレンジアミンを使用した以外は実施例2に記載した方法に従って脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体を得た。得られた脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.18dL/gであり、高重合体が得られた。また、この脂環構造含有ポリエステルイミド前駆体溶液を用いて実施例2と同様にしてガラス基板に塗布することにより、靭性のあるポリエステルイミド膜が得られた。
よく乾燥した撹拌機付密閉反応容器中に、p−フェニレンジアミン1.08g(10mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド15mLに溶解した後、この溶液に実施例1で合成したエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二無水物に対応する、下記構造式(1X)で表されるエステル基含有芳香族テトラカルボン酸二無水物粉末4.58g(10mmol)を徐々に加えた。
Claims (7)
- 下記一般式(1)および(2)のいずれかで表されるエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸無水物またはそのテトラカルボン酸類。
- 核水素化トリメリット酸無水物を酸ハライドに変換し、得られた酸ハライドと4−ヒドロキシフタル酸無水物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする請求項1に記載のエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸無水物またはそのテトラカルボン酸類の製造方法。
- 固有粘度が0.1〜5.0dL/gの範囲である、請求項3に記載のポリエステルイミド前駆体。
- 請求項3または4に記載のポリエステルイミド前駆体を、加熱あるいは脱水試薬を用いて環化反応(イミド化)させることを特徴とする、請求項5に記載のポリエステルイミドの製造方法。
- 請求項3または4に記載のポリエステルイミド前駆体を経由することなしに、請求項1に記載のエステル基含有半脂環式テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中、高温下で重縮合反応させることを特徴とする、請求項5に記載のポリエステルイミドの製造方法。
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