JP2007309838A - 管路検査方法及びこれに用いる管路検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 管路を破壊することなく、安全且つ安価に管路の異常を正確に判定することが可能な管路検査方法及び管路検査装置を提供すること。
【解決手段】 管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、同じくその管の一端に取り付けた受信子により管内で反射した反射信号を受信する。受信した反射信号により管路の異常を判定する。反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出する。抽出した異常信号の位相と参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】 管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、同じくその管の一端に取り付けた受信子により管内で反射した反射信号を受信する。受信した反射信号により管路の異常を判定する。反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出する。抽出した異常信号の位相と参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、管路検査方法及びこれに用いる管路検査装置に関する。さらに詳しくは、管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、同じくその管の一端に取り付けた受信子により管内で反射した反射信号を受信し、受信した反射信号により管路の異常を判定する管路検査方法及びこれに用いる管路検査装置に関する。
地中に埋設される電力ケーブルは管路と呼ばれるパイプの中を通されている。この管路には、経年劣化や地盤変動等により、割れ、段差、異物の混入、継手部のずれ等の異常が発生する。そのため、電力ケーブルを管路に敷設する際には、管路内に異常が無いか確認する必要があり、従来、ロッドや金属球を管路内に挿入することにより異常の有無を機械的に判断する導通検査やビデオカメラ等による目視検査が行われていた。
しかし、これらの導通検査においては、管路の両側に人員を配置する必要があり、且つ検査に時間が掛かるため、検査コストが高くなっていた。また、ロッドや金属球により、管路を破壊するおそれも生じていた。また、目視検査の場合、検査員の技量や管路の状態によって検査精度が大きく左右されるため、正確な検査が困難であった。さらに、長尺管路の場合、検査員に掛かる負担が大きくなっていた。
また、ロッドや金属球によらない音波を用いた検査方法として特許文献1に記載の如き管内状況調査方法が知られている。本調査方法は、照射波と反射波の位相を比較することにより反射波発生位置で管路空断面積が大きくなっているか、小さくなっているかを判定している。しかし、実際の管路においては、図17に示すように受信子により受信される反射波は、反射波同士の複合や雑音の重畳により各異常信号の位相を判定することは困難であった。
一方、相互相関関数を利用した検査装置として特許文献2に記載の如き管路内検査装置が知られている。本検査装置では、反射源位置の測定精度を向上させるために送信信号と受信信号との相関処理を行っており、位相判定を目的としているものではない。
特公平7−1168号公報
特開2002−196074号公報
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、管路を破壊することなく、安全且つ安価に管路の異常を正確に判定することが可能な管路検査方法及び管路検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る管路検査方法の特徴は、管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、同じくその管の一端に取り付けた受信子により管内で反射した反射信号を受信し、受信した反射信号により管路の異常を判定する管路検査方法において、前記反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出し、抽出した異常信号の位相と前記参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定することにある。
また、前記音響信号は複数の周波数帯域の信号を有し、各周波数帯域における反射信号から異常信号を抽出し、前記位相判定を行うと共に前記周波数帯域の変化に対する異常信号の特徴値の変動により管路の異常を判定しても構わない。
前記管の一端近傍の管路の異常を判定する場合において、前記一端近傍以外の部分の異常を判定する場合よりも高周波帯域の音響信号を送信することが望ましい。管の一端近傍では、音響信号の影響により異常信号の検出が困難な不感帯が存在し、音響信号の周波数が影響を与える。図16(a)に示す低周波数での不感帯の幅Lに比べ、(b)に示す高周波数での不感帯の幅L’は短くなる。よって、上記構成により、不感帯の幅が狭めて異常信号の検出精度を向上させ、管の一端近傍における管路の異常をより正確に判定することができる。
さらに、前記管における音響信号の減衰率をあらかじめ測定しておき、その減衰率により受信した反射信号を補正することが望ましい。係る特徴構成において、前記減衰率に基づいて前記管の反射信号の検量線を生成し、前記検量線により前記異常の程度を推定してもよい。また、前記検量線は送信子より送信される音響信号の周波数毎に生成することが望ましい。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の管路検査方法の特徴は、管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、前記管の他端に前記送信子と対向するよう取り付けた受信子により管路内を伝搬した音響信号を受信し、受信した音響信号により管路の異常を判定することにある。
また、前記管内部にケーブルが敷設されており、前記送信子及び前記受信子は前記管外部の前記ケーブルを覆う治具に取り付けられ、前記送信子及び前記受信子と前記管内部とが連通することが望ましい。また、前記治具と前記管の一端との接触部に遮音材が充填してもよい。
また、前記送信子及び前記受信子が水中センサであってもよい。ここで、前記異常は開口異常及び/又は閉塞異常である。
上記目的を達成するため、本発明に係る管路検査装置の特徴は、上記のいずれかに記載の管路検査方法に用いる管路検査装置において、前記反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出し、抽出した異常信号の位相と前記参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定することにある。
また、上記目的を達成するため、本発明に係る他の管路検査装置の特徴は、上記のいずれかに記載の管路検査方法に用いる管路検査装置において、管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、前記管の他端に前記送信子と対向するよう取り付けた受信子により管路内を伝搬した音響信号を受信し、受信した音響信号により管路の異常を判定することにある。
上記本発明に係る管路検査方法及び管路検査装置の特徴によれば、管路を破壊することなく、安全且つ安価に管路の異常を正確に判定することが可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本発明に係る管路検査装置1は、大略、管100の一端101に取り付けられるセンサ2と、制御部となるパーソナルコンピュータ3と表示装置4とよりなる表示手段5と、発振器6よりなる。パーソナルコンピュータ3は、汎用品にソフトウェアを組み込むことにより、以下の各種機能を実現するように構成してある。
図1に示すように、本発明に係る管路検査装置1は、大略、管100の一端101に取り付けられるセンサ2と、制御部となるパーソナルコンピュータ3と表示装置4とよりなる表示手段5と、発振器6よりなる。パーソナルコンピュータ3は、汎用品にソフトウェアを組み込むことにより、以下の各種機能を実現するように構成してある。
センサ2は、ケース10の内部に設けた開口部を有する仕切り板11に送信子となるスピーカー12を支持してある。また、スピーカー12の中心部近傍の仕切り板11から音響信号の送信側に向かって突出する支持具11aに、受信子となるマイクロフォン13を設けてある。このセンサ2は管100の一端101に取り付けられる。スピーカー12から送信される音響信号は、管100内の隙間103a、段差103bや異物103c等の異常部103で反射され、この反射信号がマイクロフォン13により受信される。
パーソナルコンピュータ3は、大略、入力部21と、相関処理部24と、参照波形記憶部25と、判定部26とからなる。相関処理部24は、参照波形記憶部25に記憶されている参照波形と受信した反射信号から後述する相互相関関数により異常信号を抽出する。判定部26は、相関処理部24により抽出された異常信号の位相と参照波形の位相を比較して、その異常の原因が開口異常か閉塞異常かを判定する。
図2に示すように、管100の開口部104からの反射信号は、入射される入射波Pの位相と同位相となるのに対し、閉塞部105からの反射信号は、入射波Pの位相と逆位相となる。よって、異常信号の位相と参照波形の位相を比較して位相判定を行うことで、異常の形態が開口異常か閉塞異常かを判定することができる。
なお、本明細書において、開口異常とは、健全管路の空断面積に対し異常部103での管路の空断面積が大きいものをいい、例えば、図1の符号103aに示す隙間や管路の分岐、継手部及び入孔との接続部等が挙げられる。また、閉塞異常とは、健全管路の空断面積に対し異常部103での管路の空断面積が小さいものを指し、管路100が完全に閉塞している異常のみならず、一部分が閉塞しているものも含まれる。例えば、図1の符号103b、103cに示す段差や異物等が挙げられる。
パーソナルコンピュータ3は、入力部21からの入力により、ドライバ22を介して発振器6を駆動させる。発振器6は入力部21により入力された管路長や管路径等により周波数を調整した音波を生成し、送信アンプ6aにより増幅されスピーカー12を駆動させる。一方、マイクロフォン13により受信され且つ受信アンプ7により増幅された反射信号はA/Dコンバータ23を介して相関処理部24に蓄積される。また、入力部21からあらかじめ閾値を設定することもできる。
この相関処理部24は、蓄積された反射信号と参照波形記憶部25に記憶されている参照波形との相互相関関数を求め、反射信号から異常信号を抽出すると共に、その異常信号の位置、大きさ、位相を求める。この相互相関関数は次式1で表される。ここで、x(n)は受信される反射信号の波形であり、y(n)は相関を取るための参照波形である。
式1からも明らかなように、相互相関関数の相関値は両波形の相対位置をずらしながら計算した受信された反射信号と参照波形との積和である。よって、相関値が大きい場合には、反射信号と参照波形の類似している又は、反射信号又は参照信号の振幅が大きいことが分かる。また、相関値が正の値である場合には、反射波形と参照波形とは同位相であり、負の値である場合には、反射波形と参照波形とは逆位相であることが分かる。
また、相互相関処理を行うために用いる参照波形は、参照波形記憶部25に記憶されている。この参照波形には種々の波形が適用可能であり、例えば、送信アンプ6aに通す前の波形、スピーカー12から送信された直後に受信した受信波形、管路100の他端からの反射波形、人工反射源からの反射波形等が挙げられる。また、仮にある異常について特徴的な波形形状が観測される場合には、その波形を参照波形とすることにより特定の異常の検出性を向上させることも可能である。
次に、相互相関関数を用いた異常信号の抽出ついて説明する。
相関処理部24は、まず、図3(a)に示すように、受信された反射信号Qと参照波形記憶部25から選択された参照波形Rの相互相関関数Fを計算し、絶対値での最大値を検索して、その最大値の位置及び大きさを(t1,a1)とする。なお、最大値(t1,a1)は異常信号E1の相関値となる。次に、同図(b)に示すように、参照波形Rをt1分シフトさせると共に参照波形Rの大きさをa1倍に拡大し、反射信号Qから拡大された参照波形R’を減算する。減算後の波形Q’では、異常信号E1が消滅し、異常信号E2,E3のみが残存することになる。そして、減算された波形Q’について、同図(a)の如く、参照波形Rとの相互相関関数を計算し、絶対値での最大値を検索する。この手順を異常信号の相関値が所定の設定値となるまで繰り返し行う。相関値はそれぞれ、(t2,a2)(t3,a3)・・・(ti,ai)として記憶される。これにより、反射信号から異常信号を的確に抽出することができる。なお、設定値は入力部21を介して設定される。
相関処理部24は、まず、図3(a)に示すように、受信された反射信号Qと参照波形記憶部25から選択された参照波形Rの相互相関関数Fを計算し、絶対値での最大値を検索して、その最大値の位置及び大きさを(t1,a1)とする。なお、最大値(t1,a1)は異常信号E1の相関値となる。次に、同図(b)に示すように、参照波形Rをt1分シフトさせると共に参照波形Rの大きさをa1倍に拡大し、反射信号Qから拡大された参照波形R’を減算する。減算後の波形Q’では、異常信号E1が消滅し、異常信号E2,E3のみが残存することになる。そして、減算された波形Q’について、同図(a)の如く、参照波形Rとの相互相関関数を計算し、絶対値での最大値を検索する。この手順を異常信号の相関値が所定の設定値となるまで繰り返し行う。相関値はそれぞれ、(t2,a2)(t3,a3)・・・(ti,ai)として記憶される。これにより、反射信号から異常信号を的確に抽出することができる。なお、設定値は入力部21を介して設定される。
相関処理部24にて抽出した異常信号の相関値(ti,ai)は、判定部26に送られ異常の判定がなされる。判定部26は、図3(c)に示すように、相関値(ti,ai)をプロットしていき、そのプロットされた相関値から各異常信号の位置及び位相を読み取る。すなわち、tiから異常信号の位置を判定すると共に、aiから異常信号の位相を判別して、その異常が開口異常か閉塞異常を判定する。そして、判定結果を例えば、図4に示すように、一覧表にて表示すると共に、異常信号値に閾値を超える値がある場合に判定結果を不合格として表示装置4に表示させる。さらに、その判定結果は適宜記憶部27に記憶される。
図5(d)に模擬反射信号Q1を示す。この模擬反射信号Q1は、同図(a)に示す雑音成分N、同図(b)に示す模擬異常信号Ei1及び同図(c)に示す模擬異常信号Ei2を合成して生成した信号である。雑音成分Nは、30〜300Hzの正弦波である。模擬異常信号Ei1は周波数150Hzであり、出現位置が0.2sec付近となる信号である。また、模擬異常信号Ei2は周波数150Hzであり、出現位置が0.5sec付近となる信号である。また、同図(e)に参照波形R1を示す。この参照波形R1と模擬異常信号Ei1とは同位相である。
同図(d)の模擬反射信号Q1と同図(e)の参照波形R1の相互相関関数を算出し、模擬反射信号Q1から異常信号の抽出及び位相判定を行った結果を図6に示す。同図に示すように、0.2sec及び0.5sec付近に模擬異常信号Ei1,Ei2に由来する相関値が確認された。さらに、前者は正の値であり、参照波形R1と模擬異常信号Ei1とは同位相で有ることを示し、負の値である後者は参照波形R1との位相が逆位相であることを示した。また、相関値の大きさは異常信号の振幅を反映している。図中複数箇所に見られる相関値の低い値は雑音成分Nに起因する疑似的な相関値であり、適切な閾値を設定することで除去することが可能である。また、実管路においても上述の如く、図7(a)に示す受信された反射信号から異常信号の抽出及び位相判定を行い、その結果を図7(b)に示す。図7(a)と図7(b)とを比較すると、模擬反射信号Q1の場合と同様に、異常信号に由来する相関値が確認され、実管路においても異常信号の位相判定により、正確に異常の判定が可能であることが判明した。なお、閾値の設定は入力部21より行われる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
図8に示す第二実施形態において、上記実施形態と異なり、パーソナルコンピュータ3はプロファイル生成部28をさらに備えている。上記実施形態では、単一の周波数の送信波を用いたが、本実施形態では、送信波周波数を変化させながら反射信号を受信し、異常を判定する。
図8に示す第二実施形態において、上記実施形態と異なり、パーソナルコンピュータ3はプロファイル生成部28をさらに備えている。上記実施形態では、単一の周波数の送信波を用いたが、本実施形態では、送信波周波数を変化させながら反射信号を受信し、異常を判定する。
発明者らの実験によれば、送信波周波数をスイープさせて異常信号を観測した場合、図9の汎例に示す開口異常の場合には、送信波周波数の増加に伴い振幅が低下するのみであるが、閉塞異常の場合には、ある周波数で振幅のピークが出現し、開口異常と閉口異常とは周波数の変化に伴う振幅の変化の振る舞い(振幅プロファイル)が異なることが判明した。よって、この振幅プロファイルによっても異常の形態を判定することが可能となり、特に、上記実施形態の異常信号の抽出及び位相判定と組み合わせることにより、より精度の高い異常の形態の判定を行うことができる
ここで、本実施形態における異常の判定について説明する。図8に示すように、まず、入力部21により送信波周波数の変化を指示し、発振器6を介してスピーカー12を駆動させると共に、送信された各周波数の反射信号を受信する。次に、各周波数の反射信号について上記実施形態と同様に相関処理部24において相互相関関数による異常信号の抽出及び位相判定を行う。そして、プロファイル生成部28が送信波周波数から基準とする周波数を選択し、その基準周波数において、相関値が設定した閾値を超える信号を抽出する。この抽出した信号について、各周波数における相関値を算出して振幅プロファイルを生成する。そして、判定部26は、この振幅プロファイルの特徴及び異常信号の位相判定から異常の形態を判定し、判定結果を表示装置4に出力する。
なお、本実施形態においては、上記第一実施形態と組み合わせて、特徴値として相関値を用いて振幅プロファイルを生成した。しかし、特徴値は相関値に限られるものではなく、図9に示すように、特徴値として各周波数における反射信号の振幅値を用いて振幅プロファイルを生成しても構わない。
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。
図10に示すように、管路100内を伝搬する送信波Pは、音響インピーダンスが変化する箇所、すなわち管路断面積が変化する異常部103にて反射し、異常信号の大きさは異常の程度すわなち寸法を反映している。例えば、管路断面積が減少する異常部103の音圧反射率rは式2により表される。ここで、S1は健全部における断面積、S2は異常部における断面積を示す。
図10に示すように、管路100内を伝搬する送信波Pは、音響インピーダンスが変化する箇所、すなわち管路断面積が変化する異常部103にて反射し、異常信号の大きさは異常の程度すわなち寸法を反映している。例えば、管路断面積が減少する異常部103の音圧反射率rは式2により表される。ここで、S1は健全部における断面積、S2は異常部における断面積を示す。
発明者らは、閉塞異常及び開口異常について、異常箇所の寸法と振幅の関係を模擬試験により調査した。閉塞異常について、図11(a)に示すように、式2により表される理論値とほぼ一致することが判明した。また、開口異常についても、異常箇所の寸法と振幅には相関があることを確認した。よって、反射信号の振幅値により、異常の程度を例えば管の閉塞状態を示す閉塞率を用いて推定することが可能であることが分かった。
しかし、図11(b)に示すように、反射信号の振幅はその距離に応じて減衰するため、異常信号の振幅をそのまま用いると正確な閉塞率を算出することはできず、正確な閉塞率を算出するためには観測された異常信号の振幅について距離補正を行わなければならない。
そこで、図12に示す第三実施形態は、上記実施形態と異なり、パーソナルコンピュータ3は検査対象となる管路の減衰率を記憶した補正部29をさらに備えている。この補正部29は、受信した反射信号を減衰率に基づいて補正すると共に、図10(c)の如く、その減衰率により補正した管の反射信号における閉塞率と振幅との関係を示す検量線により閉塞率を算出する。また、補正された反射信号を相関処理部24に送出し、相関処理部24により異常信号を抽出し、判定部26にて位相判定を行う。これにより、異常の形態の定量評価も併せて行うことができる。
ここで、音響信号の振幅と反射信号の振幅の関係について説明する。
図13(a)に送信される音響信号の振幅と反射信号の振幅の関係を示す。同図に示すように、受信される反射信号の振幅は送信される音響信号の振幅により変動するため、送信される音響信号の振幅に応じて反射信号の振幅は異なる。そのため、より正確な閉塞率を算出するためには各送信される音響信号の振幅に応じた検量線が必要であると考えられる。
図13(a)に送信される音響信号の振幅と反射信号の振幅の関係を示す。同図に示すように、受信される反射信号の振幅は送信される音響信号の振幅により変動するため、送信される音響信号の振幅に応じて反射信号の振幅は異なる。そのため、より正確な閉塞率を算出するためには各送信される音響信号の振幅に応じた検量線が必要であると考えられる。
しかし、発明者らの実験によれば、図13(b)に示す如く、反射信号の振幅を送信される音響信号の振幅で除算して反射信号の振幅の基準化を行うと、周波数毎に音響信号の振幅が変化しても反射信号の振幅が一致することが判明した。従って、音響信号の振幅に応じた検量線ではなく、周波数毎に検量線を複数生成しておくことで、例え送信時の音響信号の振幅が相違しても、周波数に応じた検量線を適用すれば、簡便かつ正確に管路の閉塞率を算出することができる。
なお、検量線は閉塞率と振幅との関係について求めたが、振幅値に代えて上述の相関値を用いても同様の検量線を求めることができる。さらに、振幅値を用いる場合には、上記第一実施形態とは独立に、受信した反射信号の振幅から検量線により管路の閉塞率を算出して管路の異常を判定することも可能である。
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。
図14(a)に示す第四実施形態において、管路検査装置30は、制御部と表示装置よりなる表示手段31と、送信子となるスピーカー32及び受信子となるマイクロフォン33よりなり、スピーカー32とマイクロフォン33は、対向するように管100の両端に配置される。スピーカー32より送信される音波をマイクロフォン33で受信することにより、検査対象となる管路100が完全に閉塞しているか否かを判定する管路の導通検査を行うことができる。特に、長距離の管路における導通検査により好適に用いることができる。
図14(a)に示す第四実施形態において、管路検査装置30は、制御部と表示装置よりなる表示手段31と、送信子となるスピーカー32及び受信子となるマイクロフォン33よりなり、スピーカー32とマイクロフォン33は、対向するように管100の両端に配置される。スピーカー32より送信される音波をマイクロフォン33で受信することにより、検査対象となる管路100が完全に閉塞しているか否かを判定する管路の導通検査を行うことができる。特に、長距離の管路における導通検査により好適に用いることができる。
また、既に管路100内にケーブルCが敷設されている場合には、管路100の両端(管路口)101,102にスピーカー32及びマイクロフォン33を取付治具35を介して取り付ける。
図14(b)(c)に示すように、取付治具35は、両端が開口した円筒形を呈し、ケーブルCを覆うよう着脱可能な上分割体36と下分割体37とよりなる。上分割体36の上面には開口部36aが設けられ、この開口部36aから管路100の管路口101に対し後方に傾斜した取付部36bが設けられている。この取付部36bにスピーカー32又はマイクロフォン33が取付けられる。この取付治具35により、スピーカー32及びマイクロフォン33と管路100とが連通するので、音響信号の送受信が可能となる。また、取付治具35の内径は管路100の外径よりもやや大きく形成されている。
取付治具35の取付は、図14(c)に示すように、取付部36bにスピーカー32を取り付けた上分割体36と下分割体37とをケーブルCを覆って連結させ、管路口101に固定する。しかし、取付治具35と管路口101との接触部分に隙間が生じ音響信号が外部に漏れるおそれがある。そのため、その接触部分にゴムパッキン等の遮音材38を充填し、取付治具35から音響信号が漏れないようにする。さらに、取付治具35の他方端部においても、ケーブルCと取付治具35の隙間から音響信号が漏れないように遮音材を充填する。また、他方の管路口102には、スピーカー32に換えてマイクロフォン33を取り付けた取付治具をスピーカーの取付治具35とは対称に固定し、音響信号が漏れないように隙間に遮音材を充填する。そして、スピーカー32より音響信号を送信し、その音響信号をマイクロフォン33より受信することにより管路の異常の判定を行う。
これにより、ケーブルCが敷設されている管路100においても、ケーブルCを抜かずに管路100の閉塞等の異常を判定することができる。なお、取付治具35を管路口に固定した後に、ゴムパッキン等の遮音材38を充填したが、あらかじめゴムパッキン等の遮音部材を取付治具35の端部に設けても構わない。また、取付治具35の外径を管路100の内径とほぼ同一に形成し、取付治具35を管路口に挿入して固定し、その接触部分にゴムパッキン等の遮音材を充填して音響信号の漏れを防止するようにしても構わない。
最後に、本発明のさらに他の実施形態の可能性について言及する。
図15(a)に示すように、管路100が完全に水没している場合、又は同図(b)に示す如く、管路100が局部的に水没している場合において、上記各実施形態における送信子及び受信子に水中センサ40を用いることにより管路100の異常を判定することが可能である。
図15(a)に示すように、管路100が完全に水没している場合、又は同図(b)に示す如く、管路100が局部的に水没している場合において、上記各実施形態における送信子及び受信子に水中センサ40を用いることにより管路100の異常を判定することが可能である。
また、上記各実施形態において、送信する音響信号の周波数帯域は任意に選択可能である。しかし、センサ2近傍では、送信する音響信号の影響を受け、異常信号の検出が困難な不感帯が存在する場合がある。この不感帯の幅Lに影響を与えるものとして送信される音響信号の周波数が考えられる。
図16に不感帯幅Lに及ぼす音響信号の送信周波数の影響を示す。同図(a)と(b)とを比較すると、低周波数での不感帯の幅Lに比べ、同図(b)の如く送信周波数が高い程不感帯の幅L’は短くなる。よって、管100の全長検査(センサ2近傍を除く)とセンサ2近傍のみを検査する場合とで送信周波数を使い分けることにより、より正確な管路の異常の判定を行うことができる。
例えば、高周波帯域の音響信号を用いることで、周波数が高い程音響信号の減衰率が大きくなり検査可能距離は短くなるが、検査範囲をセンサ2近傍に限定することで、不感帯の幅を狭くして異常信号の検出精度を向上させ、高精度に管路の異常の判定を行うことができる。
また、上記各実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。例えば、反射信号をあらかじめ測定した減衰率により補正し、補正した観測波形と参照波形との相互相関関数により異常信号を抽出すると共に振幅プロファイルを生成し、異常信号の位相判定及び振幅プロファイルにより異常の形態を判定し、さらに、検量線により管路の異常部の閉塞率を算出しても構わない。上記各実施形態の組み合わせにより、より正確且つ詳細に管路の異常を判定することが可能となる。
また、表示装置への表示は、図4に示すように、一覧表形式で表示させた。しかし、一覧表に限られるものではなく、例えば、反射信号の波形や相関値をプロットしたグラフ等を一覧表と同時に又は別個に表示させてもよい。さらに、判定結果を記憶部に記憶させたが、判定結果のみに限られず、適宜、反射信号や補正後波形等を併せて記憶させても構わない。
本発明に係る管路検査方法及び管路検査装置は、地中に埋設された管路の導通検査に利用することができる。また、地中に埋設された管路に限られず、配管等の管状体の導通検査としても利用することができる。
1:管路検査装置、2:センサ、3,3’,3’’:制御部(パーソナルコンピュータ)、4:表示装置、5:表示手段、6:発振器、6a:送信アンプ、7:受信アンプ、10:ケース、11:仕切り板、11a:支持具、12:スピーカー(送信子)、13:マイクロフォン(受信子)、21:入力部、22:ドライバ、23:A/Dコンバータ、24:相関処理部、25:参照波形記憶部、26:判定部、27:記憶部、28:プロファイル生成部、29:補正部、30:管路検査装置、31:表示手段、32:スピーカー(送信子)、33:マイクロフォン(受信子)、35:取付治具、36:上分割体、36a:開口部、36b:取付部、37:下分割体、38:遮音材、40,40’:水中センサ、100,100’:管、101:一端(管路口)、102:他端(管路口)、103:異常部、103a:隙間、103b:段差、103c:異物、104:開口端、105:閉口端、106:人孔、C:ケーブル、E1〜3:異常信号、Ei1,Ei2:模擬異常信号、F:相互相関関数、L,L’:不感帯幅、N:雑音成分、P:入射波、Q,Q’:反射波、Q1:模擬反射波、Qo:開口端反射波、Qc:閉口端反射波、R,R’,R1:参照波形、S1,S2:管路断面積、T:透過波、W:水
Claims (13)
- 管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、同じくその管の一端に取り付けた受信子により管内で反射した反射信号を受信し、受信した反射信号により管路の異常を判定する管路検査方法であって、
前記反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出し、抽出した異常信号の位相と前記参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定することを特徴とする管路検査方法。 - 前記音響信号は複数の周波数帯域の信号を有し、各周波数帯域における反射信号から異常信号を抽出し、前記位相判定を行うと共に前記周波数帯域の変化に対する異常信号の特徴値の変動により管路の異常を判定することを特徴とする請求項1記載の管路検査方法。
- 前記管の一端近傍の管路の異常を判定する場合において、前記一端近傍以外の部分の異常を判定する場合よりも高周波帯域の音響信号を送信することを特徴とする請求項1又は2記載の管路検査方法。
- 前記管における音響信号の減衰率をあらかじめ測定しておき、その減衰率により受信した反射信号を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の管路検査方法。
- 前記減衰率に基づいて前記管の反射信号の検量線を生成し、前記検量線により前記異常の程度を推定することを特徴とする請求項4に記載の管路検査方法。
- 前記検量線は送信子より送信される音響信号の周波数毎に生成されていることを特徴とする請求項5に記載の管路検査方法。
- 管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、前記管の他端に前記送信子と対向するよう取り付けた受信子により管路内を伝搬した音響信号を受信し、受信した音響信号により管路の異常を判定する管路検査方法。
- 前記管内部にケーブルが敷設されており、前記送信子及び前記受信子は前記管外部の前記ケーブルを覆う治具に取り付けられ、前記送信子及び前記受信子と前記管内部とが連通することを特徴とする請求項7に記載の管路検査方法。
- 前記治具と前記管の一端との接触部に遮音材が充填されることを特徴とする請求項8に記載の管路検査方法。
- 前記送信子及び前記受信子が水中センサであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の管路検査方法。
- 前記異常が開口異常及び/又は閉塞異常であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の管路検査方法。
- 管の一端に取り付けた送信子及び受信子を備え、前記送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、前記受信子により管内で反射した反射信号を受信し、受信した反射信号により管路の異常を判定する請求項1〜6,10,11のいずれかに記載の管路検査方法に用いる管路検査装置であって、
前記反射信号と参照波形との相互相関関数により前記反射信号から異常信号を抽出し、抽出した異常信号の位相と前記参照波形の位相とにより位相判定を行い、管路の異常を判定することを特徴とする管路検査装置。 - 請求項7〜11のいずれかに記載の管路検査方法に用いる管路検査装置であって、
管の一端に取り付けた送信子から音響信号を管内部に送信すると共に、前記管の他端に前記送信子と対向するよう取り付けた受信子により管路内を伝搬した音響信号を受信し、受信した音響信号により管路の異常を判定することを特徴とする管路検査装置。
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