JP2007298732A - 透明多層シート及びそれを用いた光学基板 - Google Patents

透明多層シート及びそれを用いた光学基板 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さい、各種の光学基板として好適に使用可能な透明多層シートを提供する。
【解決手段】有機材料を含有し、平均線膨張率が50ppm/K以下である層(A層)と、有機材料を含有し、引っ張り弾性率が1GPa以下である層(B層)とを少なくとも備えてなるとともに、100μm厚換算での全光線透過率が60%以上であり、ヘーズが20%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明多層シート並びにそれを用いた光学基板に関する。より詳しくは、各種の表示装置や照明装置等の光学素子の基板として用いられる透明多層シートと、その透明多層シートからなる光学基板に関する。
従来、例えば、液晶表示パネル等の基板にはガラス基板が用いられてきた。現在、液晶表示パネル等では軽量薄型化が求められている。しかし、ガラス基板は、密度を低くすることが難しいことや、機械的強度を向上させることが難しいため、ガラス基板を用いた液晶表示パネルでは軽量薄型化に充分対応できないという課題がある。更に、ガラス基板は脆弱なため、成形性、加工性の面で生産性を向上させることも難しいという課題もある。
そこで、ガラス基板の代わりに、より可撓性のある樹脂材料等の有機材料を含む基板を用いることが提案されている。ディスプレイパネルの基板に求められる性能としては、低複屈折、高耐熱性、高耐薬品性、高機械的強度(剛性)等が挙げられ、更には、生産性を向上させるためのロール(紙管)への巻き取りが可能で、いわゆるロール トゥ ロールの生産・処理が出来ること等も求められている。また、ディスプレイ製造工程において受ける熱履歴に対し基板の寸法の変動が小さいこと、即ち基板の熱膨張率が小さいことも求められる。
例えば特許文献1には、ビス(メタ)アクリレートと、分子内に2個以上チオール基を有する多官能メルカプト化合物とを含んでなる組成物を光重合硬化させてなる低複屈折基板が記載されている。かかる基板は、低複屈折性と耐熱性を有しているが、高度に架橋された高分子構造のため、機械強度が低下し、可撓性や割れ難さが低下しているという課題がある。
また、例えば特許文献2、特許文献3には、基板自体の線膨張係数を低減させる試みとして、ガラス繊維と樹脂の複合により線膨張係数を低減する試みが記載されているが、ガラス繊維と樹脂の屈折率が異なると複合体の透明性が低下してしまう等の課題がある。
また、例えば特許文献4には、特定の樹脂と無機フィラーとを組み合わせることにより線膨張係数を低減する技術が記載されているが、透明性等の面で不十分である。
一般に、線膨張率を低減するために、材料そのものを「硬く」する、もしくは、線膨張率の小さな物質を混合して総体として線膨張率を低下させる、等の試みがなされている。しかしながら、こういった手法はある程度、線膨張率を低減させることはできるが、それと同時に材料自体の弾性率を必要以上に上昇させてしまい、柔軟性に乏しい材料になってしまったり、透明性が低下してしまう等、光学的な特性も損ねてしまうということが多かった。
特開平9−152510号公報 特開2004−252432号公報 特開2004−307845号公報 特開2005−292420号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さい、各種の光学基板として好適に使用可能な透明多層シートと、それを用いた光学基板を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、平均熱線膨張係数が比較的小さい層(A層)と、引っ張り弾性率が比較的小さい層(B層)とを組み合わせることによって、透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さい、各種の光学素子用の基板として好適に使用可能な透明多層シートを実現することが可能となり、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は、有機材料を含有し、平均線膨張率が50ppm/K以下である層(これを「A層」という。)と、有機材料を含有し、引っ張り弾性率が1GPa以下である層(これを「B層」という。)とを少なくとも備えてなるとともに、100μm厚換算での全光線透過率が60%以上であり、ヘーズが20%以下であることを特徴とする、透明多層シートに存する(請求項1)。
ここで、複屈折が20nm以下であることが好ましい(請求項2)。
また、曲率半径が40mm以下の可撓性を有することが好ましい(請求項3)。
また、平均線膨張率が50ppm/K以下であることが好ましい(請求項4)。
また、前記のA層及びB層のうち一方の層の両側に他方の層を配したことが好ましい(請求項5)。
また、前記A層が少なくとも、無機フィラーを含有する樹脂からなることが好ましい(請求項6)。
また、前記無機フィラーのアスペクト比が5以上であることが好ましい(請求項7)。
また、前記無機フィラーの長径が1μm以下であることが好ましい(請求項8)。
また、前記のA層及びB層のうち少なくとも一方が、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含有することが好ましい(請求項9)。
また、導電性薄膜を更に備えることも好ましい(請求項10)。
また、ガスバリア層を更に備えることも好ましい(請求項11)。
また、表面に薄膜トランジスタが形成されることも好ましい(請求項12)。
また、本発明の別の要旨は、上述の透明多層シートからなることを特徴とする、光学基板に存する(請求項13)。
この光学基板は、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、タッチパネル、カラーフィルター、バックライト、フレネルレンズ、太陽電池及び情報記録媒体からなる群のうち、少なくとも何れかに用いられることが好ましい(請求項14)。
本発明の透明多層シートは、透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さいという利点を有する。従って、各種の光学基板の用途に好適に使用可能である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
なお、以下の記載中「(メタ)アクリル樹脂」という記載は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂とを総称して指す記載である。
[I.透明多層シート]
本発明の透明多層シートは、有機材料を含有し、比較的低い平均線膨張率を有する層(これを以下「A層」という。)と、有機材料を含有し、比較的低い引っ張り弾性率を有する層(これを以下「B層」という。)とを少なくとも備えたものである。
〔I−1.A層の物性〕
A層は、その平均線膨張率が通常50ppm/K以下、好ましくは30ppm/K以下である。A層の平均線膨張率が高過ぎると、多層シート全体の線膨張率が大きくなってしまい、多層シートの温度変化に対する寸法変化も大きくなるおそれがある。下限は特に制限されないが、通常は1ppm/K以上である。
なお、平均線膨張率は、以下の手順で測定することができる。
まず、熱的機械物性分析装置(例えばSIIナノテクノロジーズ社製TMA−SS−120等)を使用し、下記の条件にてサンプルの寸法変化(ΔL)を測定する。
・サンプルサイズ: 3mm×20mm
・測定モード: 引っ張りモード
・測定温度域: 50℃〜150℃
・昇温速度: 毎分5℃
・測定雰囲気: 窒素雰囲気下
上記測定により得られた50℃〜150℃の間でのサンプルの寸法変化(ΔL)から、下記式により平均線膨張率を算出する。
平均線膨張率=ΔL/(L0×ΔT)
但し、ΔL:サンプルの寸法変化量
L0:元のサンプル長さ
ΔT:測定温度幅
A層は、その平均線膨張率が上記範囲内にあるものであれば、その他の物性は特に限定されないが、以下の物性を満たしていることが好ましい。
A層の引っ張り弾性率は、特に制限されないが、通常0.01GPa以上、10GPa以下の範囲である。なお、引っ張り弾性率の測定方法については後述する。
また、A層の全光線透過率は、通常50%以上、中でも60%以上の範囲であることが好ましい。A層の全光線透過率が低過ぎると、多層シート全体の光線透過率が低くなる傾向がある。上限は特に制限されないが、通常は96%以下である。なお、全光線透過率の測定方法については後述する。
また、A層のヘーズは、通常30%以下、中でも20%以下の範囲であることが好ましい。A層のヘーズが高過ぎると、多層シート全体のヘーズが高くなる傾向がある。下限は特に制限されないが、通常は0.1%以上である。なお、ヘーズの測定方法については後述する。
また、A層の複屈折は、通常20nm以下、中でも10nm以下の範囲であることが好ましい。A層の複屈折が高過ぎると、多層シート全体の複屈折が低くなる傾向がある。下限は特に制限されないが、通常は0.1nm以上である。なお、複屈折の測定方法については後述する。
〔I−2.B層の物性〕
B層は、その引っ張り弾性率が通常1GPa以下、好ましくは800MPa以下、より好ましくは500MPa以下である。B層の引っ張り弾性率が高過ぎると、多層シート全体の弾性率が高くなってしまい、可撓性を損なうおそれがあり、また、A層の持つ低線膨張率という特性を、多層シート全体で発現させ難くなるおそれがある。下限は特に制限されないが、通常は10MPa以上である。
なお、引っ張り弾性率は、以下の手法により測定することが可能である。
即ち、引っ張り弾性率を測定可能な試験機(例えば、島津製作所社製 小型卓上試験機 EZTest)を用い、これに引っ張り治具を装着し、下記条件でサンプルの引っ張り弾性率を測定する。
・サンプルサイズ: 幅10mm×長さ100mm
・引っ張り速度: 5mm/min.
・測定温度雰囲気: 25℃
B層は、その平均線膨張率が上記範囲内にあるものであれば、その他の物性は特に限定されないが、以下の物性を満たしていることが好ましい。
B層の平均線膨張率は、特に制限されないが、通常50ppm以上、300ppm以下の範囲のものが用いられる。なお、平均線膨張率の測定方法については上述した通りである。
また、B層の全光線透過率は、通常50%以上、中でも60%以上の範囲であることが好ましい。B層の全光線透過率が低過ぎると、多層シート全体の光線透過率が低くなる傾向がある。上限は特に制限されないが、通常は96%以下である。なお、全光線透過率の測定方法については後述する。
また、B層のヘーズは、通常30%以下、中でも20%以下の範囲であることが好ましい。B層のヘーズが高過ぎると、多層シート全体のヘーズが高くなる傾向がある。下限は特に制限されないが、通常は0.1%以上である。なお、ヘーズの測定方法については後述する。
また、B層の複屈折は、通常20nm以下、中でも10nm以下の範囲であることが好ましい。B層の複屈折が高過ぎると、多層シート全体の複屈折が大きくなってしまう傾向がある。下限は特に制限されないが、通常は0.1nm以上である。なお、複屈折の測定方法については後述する。
また、B層は、その曲率半径が通常40mm以下の可撓性を有することが好ましい。B層の曲率半径が大き過ぎると、多層シート全体の可撓性が損なわれ、ロールに巻き取った際に破損し易くなる傾向がある。下限は特に制限されないが、通常は10mm以上である。なお、曲率半径の評価方法については後述する。
〔I−3.透明多層シートの物性〕
本発明の透明多層シートは、上述のA層及びB層を少なくとも備えてなるとともに、以下の物性を有する。
本発明の透明多層シートは、100μm厚換算での全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」という場合には、この「100μm厚換算での全光線透過率」を指すものとする。)が、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。透明多層シートの全光線透過率が低過ぎると、ディスプレイ用部材、レンズ等の光学部品に用いられる場合、映像が不鮮明になったり、像が暗くなったりするおそれがある。上限は特に制限されないが、通常は96%以下である。
なお、全光線透過率は、JIS−K7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に従い、公知の測定装置(例えば、スガ試験機社製 自動ヘーズコンピューター HZ−2等)を用いて、ダブルビーム法により測定される。
また、本発明の透明多層シートは、そのヘーズが、通常20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。透明多層シートのヘーズが高過ぎると、ディスプレイ用部材、レンズ等の光学部品に使用される場合、映像が不鮮明となったり、像が暗くなったりするおそれがある。
なお、ヘーズは、JIS−K7136(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に従い、公知の測定装置(例えば、スガ試験機社製 自動ヘーズコンピューター HZ−2等)を用いて、ダブルビーム法により測定される。
本発明の透明多層シートは、その全光線透過率及びヘーズが上記範囲内にあるものであれば、その他の物性は特に限定されないが、以下の物性を満たしていることが好ましい。
即ち、本発明の透明多層シートは、その複屈折が通常20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下であることが好ましい。透明多層シートの複屈折が高過ぎると、ディスプレイ用部材等に使用される場合、画像が正常に表示されない等の不具合が生ずる場合がある。
なお、複屈折は、従来公知の各種の測定装置(例えば、ORC(オーク製作所)社製 自動複屈折測定装置 ADR−150N等)により測定することができる。
また、本発明の透明多層シートは、その可撓性を曲率半径で表わした場合に、通常40mm以下の曲率半径を有することが好ましい。多層シートをシートロールに巻き取りいわゆるロールトゥロール生産を行なう場合、ロールに巻きつけてもシートの破損がないことが必要である。その為に曲率半径は40mm以下であることが好ましい。
なお、曲率半径は、以下の手順により評価することが可能である。
即ち、サンプルを室温にて、所定の半径を有する円筒(例えば、円筒状紙管等)に密着するように巻きつけ、サンプルの破損の有無を目視により確認する。その結果、サンプルの破損が無ければ、サンプルは当該円筒の半径以下の曲率半径を有すると判断される一方、サンプルに破損が見られれば、サンプルの曲率半径は当該円筒の半径よりも大きいものと判断される。
また、本発明の透明多層シートの平均線膨張率は、通常50ppm/K以下、中でも30ppm/K以下の範囲であることが好ましい。透明多層シートの平均線膨張率を上記範囲内とすることにより、多層シートの温度変化に対する寸法変化を小さくすることができる。なお、平均線膨張率の測定方法については前述した通りである。
また、本発明の透明多層シートの引っ張り弾性率は、通常10GPa以下、中でも2GPa以下の範囲であることが好ましい。透明多層シートの引っ張り弾性率を上記範囲内とすることにより、シート自体が割れ易くなったり、ロールへの巻き取りが困難になるのを防ぐことができる。下限は特に制限されないが、通常は100MPa以上である。なお、引っ張り弾性率の測定方法については前述した通りである。
〔I−4.透明多層シートの構成〕
本発明の透明多層シートは、上述のA層及びB層を備えるとともに、上述の物性を有するものであれば、その構成は特に制限されない。
例えば、本発明の透明多層シートが有するA層及びB層の層数は、それぞれ独立に、一層のみでもよく、二層以上であってもよい。また、A層の層数とB層の層数とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。A層及び/又はB層が複数形成される場合、複数のA層及び/又はB層の組成や厚さ等の条件は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、本発明の透明多層シートは、A層及びB層以外に、一又は二以上の任意の層を有していてもよい。A層及びB層以外の層の例としては、接着層、保護層等が挙げられる。また、後述するように、導電性薄膜やガスバリア層を設けてもよく、更には、表面に薄膜トランジスタを形成してもよい。
また、本発明の透明多層シートにおける各層の積層順も任意である。例えば、A層とB層とが直接接していてもよく、A層とB層との間にその他の層(例えば接着層等)が介在していてもよい。また、A層及び/又はB層が複数存在する場合には、A層とB層とが交互に配置されていてもよい。
但し、物性の異なるA層、B層各一層ずつの二層のみで構成される多層シートは、複合した際に反りやうねりが生じる可能性があることから、本発明の透明多層シートは三層以上から構成されることが好ましい。特に、A層及びB層のうち少なくとも一方が複数存在し、これらが他方の層の両側に配置されていることが好ましい。こうした層構成の最も簡素な例としては、A層/B層/A層の順に積層された三層構造(これを以下適宜「A/B/A構造」という。)と、B層/A層/B層の順に積層された三層構造(これを以下適宜「B/A/B構造」という。)とが挙げられる。また、これらのA/B/A構造又はB/A/B構造に対して、更に他の層(A層、B層、又はそれ以外の層)が一層以上追加されてなる構造も好ましい。
A層の厚さは、本発明の透明多層シートの用途や層構成等によっても異なるが、一般的には、透明多層シート全体の厚さに対して、通常1%以上、中でも5%以上、また、通常95%以下、中でも80%以下の範囲であることが好ましい。A層が薄過ぎると、多層シート全体の線膨張係数が大きくなる場合があり、逆に厚過ぎると、多層シートが脆くなったり割れ易くなる場合がある。
B層の厚さは、本発明の透明多層シートの用途や層構成等によっても異なるが、一般的には、透明多層シート全体の厚さに対して、通常5%以上、中でも20%以上、また、通常99%以下、中でも95%以下の範囲であることが好ましい。B層が薄過ぎると、充分な可撓性が確保できなくなる場合があり、逆に厚過ぎると、線膨張係数が充分低下しなくなる場合がある。
A層とB層との厚さの比は、{(A層の厚さ)/(B層の厚さ)}の比の値で、通常0.01以上、中でも0.05以上、また、通常19以下、中でも10以下の範囲であることが好ましい。上記の厚さの比が小さ過ぎると、多層シート全体の線膨張係数が大きくなる場合があり、逆に大き過ぎると、多層シートが脆くなったり割れ易くなる場合がある。なお、A層及びB層のうち一方又は双方が複数存在する場合には、A層の合計の厚さとB層の合計の厚さとの比が、上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明の透明多層シートの厚さは、その用途や層構成等によっても異なるが、一般的には、通常10μm以上、中でも50μm以上、また、通常3mm以下、中でも1mm以下の範囲であることが好ましい。特に、ディスプレイ用基板等の用途に用いられる場合には、現行のガラス基板の厚さより薄い方が好ましく、具体的には、通常400μm以下、好ましくは300μm以下の厚みで用いられる。
〔I−5.その他〕
本発明の透明多層シートは、有機材料を含有し、比較的低い平均線膨張率を有する層(A層)と、有機材料を含有し、比較的低い引っ張り弾性率を有する層(B層)とを組み合わせるという極めて簡単な構成により、透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さく、更には複屈折が低いという効果が得られる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
即ち、A層は温度に対する寸法変化が小さいが、それに物性の異なるB層を複合させてもB層の弾性率が低いことからA層への追従性が大きく、結果としてA層の温度に対する寸法安定性が複合シートにしても損なわれないものと推測される。B層には弾性率が所定の数値以下の素材を選択すればよいため、透明性の高い素材を使用することが容易である。一方、A層には、線膨張係数を低減するために、フィラー等を充填してもよい。A層の効果を発現させる為には、上述のように、A層の厚みは多層シートの全厚みの通常1%〜95%程度あればよい。A層そのものの透明性がやや不足していても、A層自体の厚みを抑えることにより、多層シート全体の透明性を確保することが可能となる。
また、上述の特許文献4記載の技術では、シートの材料として特定の樹脂と特定の無機フィラーとを組み合わせて使用する必要があるため、材料の選択に制限がある。これに対し、本発明の透明多層シートにおいては、上述の物性を実現できるものであれば、A層及びB層の材料として、任意の材料を使用することが可能である。従って、本発明の透明多層シートは、材料選択の幅が広いという利点もある。なお、本発明におけるA層及びB層の材料の例については、続く[II.透明多層シートの製造方法]の欄で詳述する。
[II.透明多層シートの製造方法]
本発明の透明多層シートの製造方法は特に制限されず、上述の特徴が満たされる限り、任意の方法を用いて製造することが可能である。以下、好ましい製造方法について説明する。
〔II−1.A層の組成〕
A層は、少なくとも有機材料を含有してなる。有機材料としては、通常は樹脂が用いられる。また、樹脂以外の有機材料や、無機材料を含有していてもよい。
・樹脂:
樹脂としては、通常は合成樹脂が用いられる。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂と、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)とが挙げられる。これらは何れを用いることも可能であり、二種以上を併用することも可能である。中でも、透明多層シートの複屈折を低減するという観点からは、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)を用いることが好ましい。但し、好ましい樹脂の種類は、透明多層シートの層構成や用途によっても異なる。
具体的に、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6I、ケブラー等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジカルボン酸との縮合物、ポリアリレート類等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール系骨格を有するポリカーボネート、脂環骨格を有するポリカーボネート等が挙げられる。
これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、スチレン系樹脂等のエチレン性不飽和結合を有する化合物、エポキシ樹脂、エピスルフィド樹脂、オキセタン等のヘテロ原子を含む環構造を有する化合物などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、
メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環を含む(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;
スチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等の単官能ビニル化合物;
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール単位を有するジ(メタ)アクリレート類;
エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート類、グリセリンジ(メタ)アクリレート、各種ウレタン(メタ)アクリレート、各種エポキシ(メタ)アクリレート、各種ポリエステル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
p−ビス(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオメチル)ベンゼン等の硫黄含有(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、A層の平均線膨張率を上記範囲内とする観点からは、A層に使用する樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアリレート樹脂、多官能(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂等を硬化させたものが好ましい。これらの樹脂を用いてA層を形成することによって、その他の成分を特に併用しなくとも、A層の平均線膨張率を上記範囲内とすることができるので好ましい。但し、上記以外の樹脂を使用する場合でも、例えば後述する充填材(フィラー)等を併用することにより、A層の平均線膨張率を上記範囲内に調整することは可能である。
・充填材:
A層は、充填材(フィラー)を含有していてもよい。特に、平均線膨張率が上記範囲を満たさない樹脂を用いる場合には、A層の平均線膨張率を上記範囲内に収めるために、通常は充填材が用いられる。
充填材の例としては、有機充填材と無機充填材とが挙げられる。有機充填材の例としては、樹脂繊維等が挙げられる。無機充填材の例としては、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物類;鉄、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属類;アルミナ、酸化チタン、酸化すず、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素(シリカ)等の酸化金属類;ベーマイト、ガラス繊維等のその他の無機充填材が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、繊維径やフィラーの大きさをより小さくできるという理由から、無機充填材が好ましく、具体的には、タルク、シリカ、ベーマイト、アルミナ、酸化チタン等が好ましい。
充填材の形状は特に制限されない。例としては、粒状、針状、棒状、不定形状等が挙げられる。中でも、充填材の使用による平均線膨張率の低減効果がより顕著に発揮されるという観点からは、針状又は棒状であることが好ましい。
充填材のアスペクト比は、特に制限されないが、上述のように、充填材の使用による平均線膨張率の低減効果がより顕著に発揮されるという観点からは、通常5以上、中でも10以上であることが好ましい。
また、充填材の大きさも特に制限されないが、一般的にはその長径が、通常1nm以上、また、通常1μm以下、中でも500nm以下、特に200nm以下の範囲であることが好ましい。充填材のサイズが大き過ぎると、A層の透明性を低下させる場合がある。
充填材の含有量は、A層全体に対する比率で、通常0重量%以上、また、通常90重量%以下、中でも50重量%以下の範囲であることが好ましい。充填材の含有量が多過ぎると、A層の形状の保持が難しくなり、A層の透明度が低下する場合がある。
・その他の成分:
A層は、上述の樹脂及び充填材以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、色素等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔II−2.B層の組成〕
B層は、少なくとも有機材料を含有してなる。有機材料としては、通常は樹脂が用いられる。また、樹脂以外の有機材料や、無機材料を含有していてもよい。
・樹脂:
樹脂としては、通常は合成樹脂が用いられる。
合成樹脂としては、上述のように、熱可塑性樹脂と、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)とが挙げられる。これらは何れを用いることも可能であり、二種以上を併用することも可能である。中でも、透明多層シートの複屈折を低減するという観点からは、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)を用いることが好ましい。但し、好ましい樹脂の種類は、透明多層シートの層構成や用途によっても異なる。
熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)の具体例は、何れも上述の〔II−1.A層の組成〕で例示した通りである。これらの熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、B層の引っ張り弾性率を上記範囲内とする観点からは、B層に使用する樹脂として、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れを用いることもできるが、その中でも(メタ)アクリル樹脂、弾性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が好ましい。これらの樹脂の構造を適宜選択してB層を形成することによって、その他の成分を特に併用しなくとも、B層の引っ張り弾性率を上記範囲内とすることができるので好ましい。但し、上記以外の樹脂を使用する場合でも、例えば後述する可塑剤等を併用することにより、B層の引っ張り弾性率を上記範囲内に調整することは可能である。
・その他の成分:
B層は、上述の樹脂以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、可塑剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特に、上述の引っ張り弾性率の範囲を満たさない樹脂を使用する場合には、B層の引っ張り弾性率を上記範囲内になるよう調整する観点から、可塑剤が用いられる。可塑剤の種類としては、フタル酸、アジピン酸、リン酸等とアルコール類とのエステル化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、充填材の具体例は、上述の〔II−1.A層の組成〕で例示した通りである。これらの充填材は何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
B層が樹脂以外の成分(可塑剤等)を含有する場合、それらの成分の合計の含有量は、B層全体に対する重量比で通常60重量%以下、中でも50重量%以下の範囲であることが好ましい。樹脂以外の成分の含有量が多過ぎると、可塑剤がブリードしたり、多層シートの汚染が著しくなる等の不具合が生じる場合がある。
〔II−3.A層及びB層の形成方法〕
A層及びB層の各々の形成方法は特に制限されない。主な方法としては、(i)上述の樹脂をその他の材料と混合して直接成形する方法(以下「直接成形法」という。)、(ii)上述の樹脂及びその他の材料を溶媒に溶解又は分散させた液を用い、溶媒を除去して硬化させる方法(以下「溶媒法」という。)、(iii)上述の樹脂の原料(モノマー、オリゴマー等)をその他の材料と混合した液を用い、熱や光等の刺激により樹脂の原料を重合させて硬化させる方法(以下「重合法」という。)等が挙げられる。
(i)直接成形法:
上述のA層又はB層の材料となる樹脂をその他の材料と混合し、そのまま成形する。
成形の手法は特に制限されないが、押し出し成形、射出成形、プレス成形等が挙げられる。中でも押し出し成形が好ましい。押し出し成形は公知の押し出し成形機を用いて行なうことができる。
(ii)溶媒法:
上述のA層又はB層の材料となる樹脂を、その他の材料とともに、適切な溶媒に溶解又は分散させ、得られた液から溶媒を除去することにより成形する方法である。
溶媒としては、上述の樹脂及びその他の材料を好適に分散又は溶解させることができるとともに、好ましからぬ反応等を生じるおそれのないものであれば、適宜選択することが可能である。例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
樹脂及びその他の材料を溶媒に溶解又は分散させて得られた液(これを適宜「原料液」という。)を、基板やその他の層の上に塗布し、或いはスペーサ等の型を用いて所望の形状に成型した状態で、溶媒を除去する。溶媒の除去の手法は特に制限されない。自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥等が挙げられる。特に加熱を行なう場合、用いる樹脂の分解、変質等が生じる温度よりも低い温度で加熱することが好ましい。
(iii)重合法:
上述のA層又はB層の材料となる樹脂の原料(モノマー、オリゴマー等)を、その他の材料とともに混合し、熱や光等の刺激により樹脂の原料を重合させて硬化させる方法である。
樹脂原料としては、重合反応により樹脂を形成可能なモノマー、オリゴマー等が使用される。その種類は、目的とする樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。樹脂原料の性状も特に制限されないが、その他の材料を分散させたり、所望の形状とする観点からは、液状であることが好ましい。また、上述の溶媒を併用して液状にすることも可能である。また、樹脂原料の重合形式も特に制限されず、ラジカル重合、イオン重合、エポキシ開環重合等、任意の重合形式の樹脂原料を使用することができる。樹脂原料は何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤の種類は特に制限されず、樹脂原料の種類及び重合の手法に応じて適宜選択すればよい。例としては光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
熱重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)吉草酸、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクメンパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカン酸、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ安息香酸等の過酸化物などが挙げられる。また、樹脂によっては、ラウリン酸ジブチルスズ、ラウリン酸ジオクチルスズ等のスズ触媒や、アミン類、酸無水物、スルホニウム塩類なども用いられる。
これらの重合開始剤は何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
樹脂原料及びその他の材料並びに重合開始剤を混合した液(これを適宜「原料液」という。)を、基板やその他の層の上に塗布し、或いはスペーサ等の型を用いて所望の形状に成型した状態で、樹脂原料を重合させることにより硬化させる。なお、原料液の調製時に必要に応じて溶媒を用いてもよい。
樹脂原料を重合させる手法は特に制限されず、樹脂原料の種類や重合開始剤の種類に応じて選択すればよいが、主な手法としては、熱による重合や、エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線等)の照射による重合などが挙げられる。
熱による重合の場合、加熱の温度は、樹脂原料の種類や重合開始剤の種類によってもと異なるが、通常室温以上、中でも40℃以上、また、通常250℃以下、中でも200℃以下の範囲が好ましい。
エネルギー線の照射による重合の場合、エネルギー線の種類やその光源の種類は特に制限されず、高圧/低圧水銀灯を光源とする光、メタルハライドランプを光源とする光、電子線、可視光等の中から、樹脂原料や重合開始剤の種類に応じて選択することができる。
エネルギー線照射時の雰囲気も特に制限されないが、通常は空気中又は不活性ガス雰囲気下で行なわれる。
エネルギー線照射時の温度も特に制限されないが、通常室温以上、150℃以下の範囲で実施される。
また、エネルギー線照射後に、更に加熱処理を行なってもよい。その場合、加熱の温度は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の範囲である。
〔II−4.A層及びB層の積層方法〕
A層及びB層を積層する手法も特に制限されず、任意の手法により積層すればよいが、主に以下のような手法が挙げられる。
(a)A層及びB層を共に(i)直接成形法で形成する場合:
A層及びB層を共に上述の直接成形法で形成する場合、これらを積層する手法としては、A層及びB層を押し出し成形等の手法で独立に形成した上で、これらを互いに接着することにより積層する手法、A層及びB層を共押し出し成形等の手法で同時に積層形成する手法等を挙げることができる。
A層及びB層を独立に形成し、互いに接着する場合、接着の手段としては特に制限されないが、シランカップリング剤、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
A層及びB層を共押し出し成形で同時に積層形成する場合には、A層の材料及びB層の材料をそれぞれ押し出し機ホッパーに供給し、押し出し機先端に設置した多層Tダイで共押し出しすればよい。
(b)A層及びB層のうち一方を(i)直接成形法で形成し、他方を(ii)溶媒法又は(iii)重合法で形成する場合:
A層及びB層のうち一方(例えばA層)を直接成形法で形成し、他方(例えばB層)を溶媒法又は重合法で形成する場合には、まずA層を予め押し出し成形等でシート化しておき、B層の原料液をA層シート上に塗布した後、原料液の種類に適した方法(乾燥等による溶媒の除去、加熱又はエネルギー線照射による重合等)によって原料液を硬化させることにより、B層を形成すればよい。
(c)A層及びB層を共に(ii)溶媒法又は(iii)重合法で形成する場合:
A層及びB層を共に溶媒法又は重合法で形成する場合には、例えば以下の2つの手法が挙げられる。
第1の手法としては、まず、A層及びB層のうち一方(例えばA層)の原料液を、適当な型内で硬化させ、或いは、適当な基板上に塗布した後に硬化させることにより、A層を形成する。続いて、このA層の上に、他方の層(この場合はB層)の原料液を塗布し、同様に硬化させることにより、B層を形成する。この際、硬化前のA層及び/又はB層を二枚の基板(例えば、ガラス基板、平滑面を有する樹脂基板等)で挟み込み、硬化工程を実施してもよい。
第2の手法としては、ギアポンプ、プランジャーポンプ等の押し出し機構に多層ダイを設置し、これにA層及びB層の原料液を各々独立に供給し、ダイ内で両層の原料を合わせ多層状態で適当な基板上に供給し、そのまま硬化させる。この際、硬化前のA層及び/又はB層を二枚の基板(例えば、ガラス基板、平滑面を有する樹脂基板等)で挟み込み、硬化工程を実施してもよい。
なお、A層及び/又はB層を複数形成する場合には、上述の(a)〜(c)の手法を繰り返し、又は二以上の手法を組み合わせて実施すればよい。
〔II−5.その他〕
本発明の透明多層シートは、上述のように、A層及びB層以外の任意の層を備えていてもよい。A層及びB層以外の層を形成する手法も特に制限されず、任意の手法により形成することが可能である。
例えば、保護層は、樹脂、金属、金属酸化物等の材料を用いて、コーティング、蒸着、スパッタリング等の手法により形成することが可能である。
その他、導電性薄膜やガスバリア層の形成法や、薄膜トランジスタの形成法については後述する。
[III.透明多層シートの用途]
本発明の透明多層シートは、上述のように透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化が小さいという利点を有することから、各種の光学基板の用途に好適に使用することができる。
本発明の透明多層シートを用いた光学基板の用途として、具体的には、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、タッチパネル、カラーフィルター、バックライト、フレネルレンズ、太陽電池、情報記録媒体等が挙げられる。
なお、中でも、ディスプレイ用基板やタッチパネル等の用途に使用する場合には、A層及びB層以外の層として導電性薄膜やガスバリア層を形成したり、透明多層シートの表面に薄膜トランジスタを形成することも好ましい。
導電性薄膜を形成する場合、その素材としては、ポリピロール等の導電性高分子やITO等の無機物等が挙げられる。その形成手法としては、コーティング、電解重合、蒸着等の手法が挙げられる。
ガスバリア層を形成する場合、その素材としては、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンクロライド等の高分子素材、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカ、アルミナ等の無機材料、並びにそれらの二種以上の複合物などが挙げられる。その形成手法としては、コーティング、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマ重合等の手法が挙げられる。また、無機材料膜と有機材料膜を交互に積層してバリア層とすることもできる。その厚みは、用途等によっても異なるが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。その気密性は、用途等によっても異なるが、例えば、酸素透過率では、通常0.1ml/m2・日以下、好ましくは0.01ml/m2・日以下、更に好ましくは10-4ml/m2・日以下の範囲である。また、水蒸気透過率では、好ましくは0.1g/m2・日以下、更に好ましくは10-4g/m2・日以下の範囲である。
薄膜トランジスタを形成する場合、多層シート上に直接、回路形成を行なってもよいし、一旦ガラス基板等の上に回路形成を行なった後、得られた回路を多層シート表面に転写する方法で形成してもよい。
基板上に薄膜トランジスタを回路形成する手順としては、まず、電極用金属膜を基板上に形成しレジスト塗布、エッチングなどの工程を経て金属膜による回路形成を行なう。その後、ゲート酸化膜に相当する層の形成を行なう。この工程には、CVD(化学的気相成長)法などが用いられる。次に、同様にCVD法などを用いて半導体膜(アモルファスシリコン)の蒸着を行なう。この時、リンのドープなどを行なってもよい。このようにして得られた半導体をパターニングし半導体層とする。続いて、透明電極膜であるITOをスパッタし画素電極を形成する。更に、キャパシタの電極部を形成するため、ゲート酸化膜の一部をパターニングし、除去する。次に、ソース電極になる部分にアルミニウム、チタンなどの金属をスパッタし、パターニングし、さらに素子の保護のために窒化膜などをCVDにより形成しパターニングして、薄膜トランジスタを形成する。なお、ガラス基板上にこれとは逆の手順で回路を形成し、その後多層シートに転写する手法を採ってもよい。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[物性の測定・評価方法]
後述の各実施例及び比較例で得られた多層透明フィルムのサンプルの各種物性の測定及び評価は、以下の手順により行なった。
〔平均線膨張率の測定〕
SIIナノテクノロジーズ社製 熱的機械物性分析装置 TMA−SS−120を使用し、下記条件にてサンプルの寸法変化(ΔL)を測定した。
・サンプルサイズ: 3mm×20mm
・測定モード: 引っ張りモード
・測定温度域: 50℃〜150℃
・昇温速度: 毎分5℃
・測定雰囲気: 窒素雰囲気下
上記測定により得られた50℃〜150℃の間でのサンプルの寸法変化(ΔL)から、下記式により平均線膨張率を算出した。
平均線膨張率=ΔL/(L0×ΔT)
但し、ΔL:サンプルの寸法変化量
L0:元のサンプル長さ
ΔT:測定温度幅
〔引っ張り弾性率の測定〕
島津製作所社製 小型卓上試験機 EZTestを用い、これに引っ張り治具を装着して、下記条件でサンプルの引っ張り弾性率を測定した。
・サンプルサイズ: 幅10mm×長さ100mm
・引っ張り速度: 5mm/min.
・測定温度雰囲気: 25℃
〔全光線透過率及びヘーズの測定〕
基本的には、JIS−K7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)、及び、JIS−K7136(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に従い、スガ試験機社製 自動ヘーズコンピューター HZ−2を用いて、ダブルビーム法により、サンプルの100μm厚換算での波長400nm〜700nmにおける全光線透過率及びヘーズを測定した。
〔複屈折の測定〕
ORC(オーク製作所)社製 自動複屈折測定装置 ADR−150Nを用い、25℃の条件で複屈折を測定した(実施例1及び比較例2のみ)。
〔可撓性の評価〕
サンプルを室温にて直径40mmの円筒状紙管に密着するよう巻きつけ、サンプルの破損の有無を目視により確認した。
[実施例及び比較例]
以下の各実施例及び各比較例に記載の手順により透明多層シートを作製し、その物性を測定した。
〔実施例1〕
・A層原料の調製:
硬化性樹脂であるジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート60gと、無機フィラーであるコロイダルシリカ溶液(日産化学社製 スノーテックMEK−SP・固形分30%)300gと、光重合開始剤であるLucirin TPO(BASF社製)0.075gとを混合し、A層原料とした。
・B層原料の調製:
硬化性樹脂であるポリエステル系ジアクリレート(日本化薬社製 KAYARAD・HX−220)95gと、連鎖移動剤であるQX−40(ジャパンエポキシレジン社製)5gと、光重合開始剤であるLucirin TPO(BASF社製)0.05g及びベンゾフェノン0.05gとを混合し、B層原料とした。
・透明多層シートの製造:
イエロールーム内で、0.2mm厚のスペーサを備えたガラス基板の上に、上述のA層原料をバーコータにて塗布し、80℃で10分間加熱して溶媒を除去し、膜厚が約0.05mmのA層を作製した。得られたA層の上に、上述のB層原料を流延し、その上からスペーサを介して別のガラス基板を被せ、B層原料をA層上に押し広げ、そのまま2枚のガラス板を両側から挟みこみ固定した。この状態で、ガラス面の上部から高圧水銀ランプにより25J相当のエネルギーで紫外線を照射し、原料を硬化させた。ガラス板を取り去り、更に真空中で190℃、4時間に亘って加熱処理することにより、A層/B層の2層構成からなるシート(実施例1の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は93%、ヘーズは2.2%、平均線膨張率は45ppm/K、複屈折は5nmであった。直径40mmの円筒状紙管に巻きつけた場合も、破損は見られなかった。
また、イエロールーム内で、上述のA層原料を、厚さ0.2mmのスペーサを備えたガラス基板の上に流延し、その上からスペーサを介して別のガラス基板を被せ、そのまま2枚のガラス板を両側から挟みこみ固定した。この状態で、ガラス面の上部から高圧水銀ランプにより25J相当のエネルギーで紫外線を照射し、原料を硬化させた。ガラス板を取り去り、更に真空中で190℃、4時間に亘って加熱処理することにより、A層のシートを作製した。その平均線膨張率を上述の手順で測定したところ、40ppm/Kであった。
また、上述のB層原料を用い、上述のA層のシートの製造と同様の手順で、B層のシートを作製した。上述の手順でその弾性率を測定したところ、0.7GPaであった。
〔実施例2〕
・A層原料の調製:
実施例1と同様の組成でA層原料を調製した。
・B層原料の調製:
硬化性樹脂であるエトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製NK−1206PE)100gと、光重合開始剤であるLucirin TPO(BASF社製)0.05g及びベンゾフェノン0.05gとを混合し、B層原料とした。
・透明多層シートの製造:
上述のA層原料及びB層原料を用い、実施例1と同様の手順によって、A層/B層の2層構成からなるシート(実施例2の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は92%、ヘーズは1.9%、平均線膨張率は45ppm/Kであった。また、直径40mmの円筒状紙管に巻きつけた場合も、破損は見られなかった。
また、上述のB層原料を用い、実施例1と同様の手順でB層のシートを作製し、上述の手順でその弾性率を測定したところ、0.5GPaであった。
〔実施例3〕
・A層原料の調製:
硬化性樹脂であるポリシクロオレフィン系ポリマー(JSR社製アートン)20gを、溶媒であるテトラヒドロフラン200gに溶解させ、更に無機フィラーである微細ベーマイト粒子(サソール社製X25)20gを加えて十分に混合し、A層原料とした。
・B層原料の調製:
実施例1と同様の組成でB層原料を調製した。
・透明多層シートの製造:
上述のA層原料及びB層原料を用い、A層の加熱後の膜厚を約0.1mmとした他は、実施例1と同様の手順によって、A層/B層の2層構成からなるシート(実施例3の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は92%、ヘーズは5%、平均線膨張率は48ppm/Kであった。また、直径40mmの円筒状紙管に巻きつけた場合も、破損は見られなかった。
また、上述のA層原料を用い、実施例1と同様の手順でA層のシートを作製し、上述の手順でその平均線膨張率を上述の手順で測定したところ、45ppm/Kであった。
〔実施例4〕
・A層原料の調製:
実施例1と同様の組成でA層原料を調製した。
・B層原料の調製:
実施例1と同様の組成でB層原料を調製した。
・透明多層シートの製造:
イエロールーム内で、厚さ0.07mmのスペーサを備えたガラス基板上に、上述のB層原料を流延し、上から別のガラス板を載せて全体に押し広げた。その状態で、ガラス面の上部から高圧水銀ランプにより25J相当のエネルギーで紫外線を照射し、原料を硬化させた。上方のガラス板を取り外し、硬化したB層の上に上述のA層原料をバーコータで塗布し、80℃で10分間加熱乾燥することにより、約0.05mmのA層の膜を作製した。ガラス板のスペーサを厚さ0.2mmのものに替え、A層の上に更に上述のB層原料を流延し、その上からガラス板を載せて押し広げ、そのまま2枚のガラス板を両側から挟みこみ固定した。この状態で、実施例1と同様の手順により紫外線照射及び加熱処理を行なうことにより、B層/A層/B層の3層構成からなるシート(実施例4の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は91%、ヘーズは1.5%、平均線膨張率は43ppm/Kであった。また、直径40mmの円筒状紙管に巻きつけた場合も、破損は見られなかった。
〔実施例5〕
・A層原料の調製:
硬化性樹脂であるジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート14.4g及びペンタエリスリトールトリアクリレート9.6gと、無機フィラーであるコロイダルシリカ溶液(日産化学社製スノーテックMEK−SP・固形分30%)120gとを混合し、それに光重合開始剤であるLucirin TPO(BASF社製)0.012g及びベンゾフェノン0.012gを加え、A層原料とした。
・B層原料の調製:
実施例1と同様の組成でB層原料を調製した。
・透明多層シートの製造:
上述のA層原料及びB層原料を用い、実施例1と同様の手順によって、A層/B層の2層構成からなるシート(実施例5の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は90%、ヘーズは2%、平均線膨張率41ppm/Kであった。また、直径40mmの円筒状紙管に巻きつけた場合も、破損は見られなかった。
また、上述のA層原料を用い、実施例1と同様の手順でA層のシートを作製し、上述の手順でその平均線膨張率を上述の手順で測定したところ、38ppm/Kであった。
〔比較例1〕
・A層原料の調製:
実施例1と同様の組成でA層原料を調製した。
・B層原料の調製:
硬化性樹脂であるジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート100gと、光重合開始剤であるLucirin TPO(BASF社製)0.05g及びベンゾフェノン0.05gとを混合して、B層原料とした。
・透明多層シートの製造:
上述のA層原料及びB層原料を用い、実施例1と同様の手順によって、A層/B層の2層構成からなるシート(比較例1の透明多層シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は92%、ヘーズは1.5%、平均線膨張率は78ppm/Kであった。また、直径40mmの円筒状紙管に巻きつけたところ、破損が見られた。
なお、上述のB層原料を用い、実施例1と同様の手順でB層のシートを作製し、その弾性率を上述の手順で測定したところ、2.2GPaであった。
〔比較例2〕
特開2005−60680号公報の[製造例1]及び[実施例2]の記載に従って、バクテリアセルロース(以下「BC」と略する。)と樹脂との複合シート(比較例2の透明シート)を製造し、その物性を測定した。具体的な手順は以下の通りである。
・樹脂複合BCシートの製造:
まず、凍結乾燥保存状態の酢酸菌の菌株に培養液を加え、1週間静置培養した(25〜30℃)。培養液表面に生成したバクテリアセルロースのうち、厚さが比較的厚いものを選択し、その株の培養液を少量分取して新しい培養液に加えた。そして、この培養液を大型培養器に入れ、25〜30℃で7〜30日間の静地培養を行った。培養液には、グルコース2重量%、バクトイーストエクストラ0.5重量%、バクトペプトン0.5重量%、リン酸水素二ナトリウム0.27重量%、クエン酸0.115重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.1重量%とし、塩酸によりpH5.0に調整した水溶液(SH培地)を用いた。
このようにして産出させたBCを培養液中から取り出し、2重量%のアルカリ水溶液で2時間煮沸し、その後、アルカリ処理液からBCを取り出し、十分水洗し、アルカリ処理液を除去し、BC中のバクテリアを溶解除去した。次いで、得られた含水BC(含水率95〜99重量%のBC)を、120℃、2MPaで3分ホットプレスし、厚さ約50μmのBCシート(含水率0重量%)を得た。
上記BCシートを、アクリル樹脂(ジメチロールトリシクロデカンメタクリレート)に減圧下(0.08MPa)で12時間浸漬処理した後、取り出したシートをガラス板の間に挟み、ガラス面上部から25J相当のエネルギーで紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、樹脂複合BCシート(比較例2の透明シート)を得た。
・物性の評価:
得られたシートについて、上述の手順で物性を測定したところ、その全光線透過率は86%、ヘーズは6.7%であったが、複屈折が70nmを超える高い値を示した。
本発明の透明多層シートは、各種の光学基板の用途に使用される。具体的には、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、タッチパネル、カラーフィルター、バックライト、フレネルレンズ、太陽電池、情報記録媒体等の基板の用途に好適に使用される。

Claims (14)

  1. 有機材料を含有し、平均線膨張率が50ppm/K以下である層(これを「A層」という。)と、有機材料を含有し、引っ張り弾性率が1GPa以下である層(これを「B層」という。)とを少なくとも備えてなるとともに、
    100μm厚換算での全光線透過率が60%以上であり、ヘーズが20%以下である
    ことを特徴とする、透明多層シート。
  2. 複屈折が20nm以下である
    ことを特徴とする、請求項1記載の透明多層シート。
  3. 曲率半径が40mm以下の可撓性を有する
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の透明多層シート。
  4. 平均線膨張率が50ppm/K以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の透明多層シート。
  5. 前記のA層及びB層のうち一方の層の両側に他方の層を配した
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の透明多層シート。
  6. 前記A層が少なくとも、無機フィラーを含有する樹脂からなる
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の透明多層シート。
  7. 前記無機フィラーのアスペクト比が5以上である
    ことを特徴とする、請求項6記載の透明多層シート。
  8. 前記無機フィラーの長径が1μm以下である
    ことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の透明多層シート。
  9. 前記のA層及びB層のうち少なくとも一方が、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含有する
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の透明多層シート。
  10. 導電性薄膜を更に備えた
    ことを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の透明多層シート。
  11. ガスバリア層を更に備えた
    ことを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載の透明多層シート。
  12. 表面に薄膜トランジスタが形成された
    ことを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載の透明多層シート。
  13. 請求項1〜12の何れか一項に記載の透明多層シートからなる
    ことを特徴とする、光学基板。
  14. 液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、タッチパネル、カラーフィルター、バックライト、フレネルレンズ、太陽電池及び情報記録媒体からなる群のうち、少なくとも何れかに用いられる
    ことを特徴とする、請求項13記載の光学基板。
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