JP2004114617A - フィラー分散系樹脂シート、画像表示装置用基板、画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄型かつ軽量であると共に、線膨張係数が小さく、反りやカールがなく、ガスバリア性、耐衝撃性、低透湿性、耐熱性、耐薬品性に優れ、液晶セル基板や有機EL表示装置用基板等の画像表示装置用の基板等に好適なフィラー分散系樹脂シート、およびそれを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置を提供する。
【解決手段】フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有する。線膨張係数が小さく、カール・反りがないので、各種画像表示装置の基板等として用いることにより、電極形成やカラーフィルター形成が容易となる。
【選択図】 図2
【解決手段】フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有する。線膨張係数が小さく、カール・反りがないので、各種画像表示装置の基板等として用いることにより、電極形成やカラーフィルター形成が容易となる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶セル基板、エレクトロルミネッセンスディスプレイ用基板等に用いうるフィラー分散系樹脂シート、およびそれを用いた液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の各種画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置の大型化に伴い、ガラス系の基板は重くて嵩高いことから、薄型軽量化などを目的にエポキシ系樹脂等からなる樹脂シートが基板として提案され開発されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし前記樹脂シートは熱膨張や水分の出入りによる伸び縮みが起きるため、電極形成時やカラーフィルター形成時には位置ずれが生じることが問題になっていた。そこで粒径が1μm未満の無機酸化物を樹脂シートに分散して線膨張係数を抑制することが検討されてきたが、線膨張係数はせいぜい6.00E−5/℃程度であり、満足のいくレベルではなかった。
【0003】
また線膨張係数を下げるために、1〜100μm程度の大きさの粒子を樹脂シートに分散することが検討されてきたが、例えば上記粒子をエポキシ樹脂層に分散した場合、エポキシ樹脂塗工液中で上記粒子が浮遊または沈降する結果、粒子含有側と粒子不含有側とに分離し、エポキシ樹脂層中で線膨張係数が大きい部位と小さい部位に分かれるので、樹脂シートに反り、カールが発生し、作業性が悪く、表示装置を製造することが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特許第3197716号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薄型かつ軽量であると共に、線膨張係数が小さく、反りやカールがなく、ガスバリア性、耐衝撃性、低透湿性、耐熱性、耐薬品性に優れ、液晶セル基板やエレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置)用基板等の画像表示装置用の基板等に好適なフィラー分散系樹脂シート、およびそれを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、フィラーを含有するエポキシ樹脂層の両面に、フィラーを含有しないエポキシ樹脂層を積層して樹脂シート両面での線膨張のバランスを調整するとともに、内層となるフィラー含有エポキシ樹脂層にビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として配合することにより、樹脂シートの強度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有することを特徴とするフィラー分散系樹脂シートを提供するものである。
【0008】
多数のエポキシ樹脂の中でも、特にビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として配合することにより、強靭で割れにくいシートが形成され、さらにフィラーを添加することで線膨張が抑制されるため、強靭かつ寸法安定性に優れた樹脂シートが得られる。さらに、両面にフィラーを含有しないエポキシ樹脂層を設けることにより、フィラー偏在化による反りやカールを防止することができるため、電極形成やカラーフィルター形成が容易となり、液晶セル基板をはじめとする各種基板形成に好適な樹脂シートとなり得る。
【0009】
また、エポキシ樹脂層Bの組成は任意であり、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有する必要はないが、樹脂シートの更なる強度アップを図る観点より、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有することが好ましい。
【0010】
前記のフィラー分散系樹脂シートにおいて、前記エポキシ樹脂層が、さらに脂環式エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
前記のエポキシ樹脂層Aにおいて、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が3〜60重量%であることが好ましく、フィラーの比率が10〜70体積%であることが好ましい。また、フィラーの平均粒子径が1μm〜100μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは、前記のエポキシ樹脂層AとBとからなる樹脂シートに、さらに、ウレタン系樹脂よりなるハードコート層及びガスバリア層の少なくとも一方が積層されていることが好ましい。
【0013】
前記本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、前記エポキシ樹脂層Aの厚み(d1)と前記フィラー分散系樹脂シートの厚み(d2)の比(d1/d2)が、0.15以上であることが好ましい。
【0014】
また、25℃〜160℃における線膨張係数が5.00E−5(5.00×10−5)/℃以下であることが好ましく、最外層の表面粗さ(Ra)が2nm以下であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のフィラー分散系樹脂シートは、#2000のペーパーで裏面に深さ約1μmの傷をつけた樹脂シートを表面無垢平板と20mmφの穴を設けた平板の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を固定した後、前記樹脂シートが露出した20mmφのエリアの中心部分に正面垂直方向から10mmφの球形先端を有する支持棒で荷重を加えていった時の樹脂シートの破断強度が35N以上であることが好ましい。
【0016】
またさらに、本発明は、前記のフィラー分散系樹脂シートからなることを特徴とする画像表示装置用基板、太陽電池用基板、およびこれらを用いた画像表示装置を提供するものである。画像表示装置用基板としては、例えば、液晶セル基板、有機EL表示装置用基板等があげられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは、フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有するものである。フィラー含有エポキシ樹脂層Aとフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bは、線膨張係数が各々異なるが、フィラー含有エポキシ樹脂層Aが2層のフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bに挟まれた構成となることで、反りやカールを防止することが可能になる。
【0018】
前記のエポキシ樹脂層A、Bには、ガスバリア層やハードコート層が積層されているのが好ましく、当該層が形成されたエポキシ樹脂層とは反対側に、ハードコート層がもう1層積層されていてもよい。また、ハードコート層は透明粒子を含有するものでもよい。エポキシ樹脂層、ガスバリア層およびハードコート層の積層順は特に限定されないが、ガスバリア層、ハードコート層の順でエポキシ樹脂層側から積層されているのが好ましく、ガスバリア層は耐擦傷性、耐薬品性がハードコート層や基材層よりも劣ることがあるので、最外層ではなく層間に積層するのが好ましい。
【0019】
本発明において、フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚みを(d1)、フィラー分散系樹脂シートの厚み、つまりシート全体の厚みを(d2)とした場合、(d1/d2)は0.15以上、好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上がよい。(d1/d2)が0.15未満の場合は、フィラー分散系樹脂シート(すなわちシート全体)の線膨張係数が大きくなり、電極形成時やカラーフィルター形成時に位置ずれが生じる等の問題が生じる。図2にその構成例を示した。
【0020】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートの厚さは、その使用目的などに応じ100μm以上の厚さで適宜に決定することができる。一般には、フィラー含有エポキシ樹脂層Aと2層のフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bとの厚みの総計が、100〜800μmであることが好ましく、より好ましくは150〜500μmであるのがよい。全エポキシ樹脂層の厚みが100μmより小さい場合は、本樹脂シートを組み込んだ表示装置の強度低下につながり、800μmより大きい場合は、薄型、軽量の特性がなくなり、表示品位が低下する。
【0021】
本発明においては、表面平滑性や色相の点で、エポキシ樹脂層Aおよびエポキシ樹脂層Bを基材層として用いているが、該エポキシ樹脂層を構成するエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型、ビスフェノールS型やそれらの水添加の如きビスフェノール型、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型の如きノボラック型、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型の如き含窒素環型、脂環式型や脂肪族型、ナフタレン型の如き芳香族型やグリシジルエーテル型、ビフェニル型の如き低吸水率タイプやジシクロ型、エステル型やエーテルエステル型、それらの変成型などが挙げられる。これらは単独で使用してもあるいは併用してもよい。上記各種エポキシ系樹脂の中でも、変色防止性などの点よりビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型を用いることが好ましい。
【0022】
このようなエポキシ系樹脂としては、一般にエポキシ当量100〜1000、軟化点120℃以下のものが、得られる樹脂シートの柔軟性や強度等の物性などの点より好ましく用いられる。さらに塗工性やシート状への展開性等に優れるエポキシ樹脂含有液を得る点などよりは、塗工時の温度以下、特に常温において液体状態を示す二液混合型のものが好ましく用いうる。
【0023】
本発明において用いるビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の構造は(化1)の化学式で例示されるものが代表的なものである。またビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量200〜400(g/eq)、融点60〜90℃のものを用いるのが好ましく、より好ましくはエポキシ当量250〜350(g/eq)、融点70〜85℃のものがよい。
【0024】
【化1】
【0025】
本発明においてエポキシ樹脂層Aは、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが必要であるが、上述した他のエポキシ樹脂を適宜混合してエポキシ樹脂層を形成してもよい。
【0026】
他のエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型やそれらの水添加の如きビスフェノール型、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型の如きノボラック型、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型の如き含窒素環型、脂環式型や脂肪族型、ナフタレン型の如き芳香族型やグリシジルエーテル型、ビフェニル型の如き低吸水率タイプやジシクロ型、エステル型やエーテルエステル型、それらの変成型などが挙げられる。
【0027】
上記エポキシ樹脂の中では、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と組み合わせて、耐熱性と強靭性の良好なバランスを有する樹脂シート得るためには、脂環式エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシルメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等を例示することができ、塗工液の流動性や硬化後の耐熱性の点で3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく用いられる。
【0029】
エポキシ樹脂層A中におけるビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率は3〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜45重量%がよく、更に好ましくは14〜42重量%がよい。ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が3%よりも小さい場合は、十分な強靭性を有する樹脂シートを得ることができず、運搬時や液晶表示装置の組み立て時に破断する場合がある。ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が60%よりも大きい場合は、エポキシ樹脂層を形成する場合、塗工液の粘度が高くなるため、流動性が悪くなり塗工が困難になる。また硬化後の樹脂シートの耐熱性が低下する。
【0030】
上記エポキシ系樹脂には、硬化剤、硬化促進剤、および必要に応じて従来から用いられている老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の従来公知の各種添加物を適宜に配合することができる。
【0031】
前記、硬化剤についても特に限定はなく、エポキシ系樹脂に応じた適宜な硬化剤を1種または2種以上用いることができる。ちなみにその例としては、テトラヒドロフタル酸やメチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸やメチルヘキサヒドロフタル酸の如き有機酸系化合物類、エチレンジアミンやプロピレンジアミン、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクトやメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの如きアミン系化合物類が挙げられる。
【0032】
またジシアンジアミドやポリアミドの如きアミド系化合物類、ジヒドラジットの如きヒドラジド系化合物類、メチルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾールやイソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールやフェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾールやヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールの如きイミダゾール系化合物類も前記硬化剤の例として挙げられる。
【0033】
さらに、メチルイミダゾリンや2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリンやイソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリンやフェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリンやヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンの如きイミダゾリン系化合物、その他、フェノール系化合物やユリア系化合物類、ポリスルフィド系化合物類も前記硬化剤の例として挙げられる。
【0034】
加えて、酸無水物系化合物類なども前記硬化剤の例として挙げられ、変色防止性などの点より、かかる酸無水物硬化剤が好ましく用いうる。その例としては無水フタル酸や無水マレイン酸、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸、無水ナジック酸や無水グルタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物やメチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物やメチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物やドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物やベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物やクロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0035】
特に、無水フタル酸やテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物やメチルヘキサヒドロフタル酸無水物の如く無色系ないし淡黄色系で、分子量が約140〜約200の酸無水物系硬化剤が好ましく用いうる。
【0036】
前記エポキシ系樹脂と硬化剤の配合割合は、硬化剤として酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ系樹脂のエポキシ基1当量に対して酸無水物当量を0.5〜1.5当量となるように配合することが好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量がよい。酸無水物が0.5当量未満では、硬化後の色相が悪くなり、1.5当量を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられる。なお他の硬化剤を単独で又は2種以上を併用して使用する場合にも、その使用量は前記の当量比に準じうる。
【0037】
前記硬化促進剤としては、第三級アミン類、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類、有機金属塩類、リン化合物類、尿素系化合物類等が挙げられるが、特にリン化合物類を用いることが好ましい。これらは単独であるいは併用して使用することができる。
【0038】
前記硬化促進剤の配合量は、エポキシ系樹脂100重量部に対して0.05〜7.0重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0重量部がよい。硬化促進剤の配合量が0.05重量部未満では、充分な硬化促進効果が得られず、7.0重量部を超えると硬化体が変色するおそれがある。
【0039】
前記老化防止剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の従来公知のものが挙げられる。
【0040】
前記変成剤としては、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等従来公知のものが挙げられる。
【0041】
前記界面活性剤は、エポキシ系樹脂シートを流延法等によりエポキシ樹脂を空気に触れながら硬化する場合に、シートの表面を平滑にするために添加される。界面活性剤としてはシリコーン系、アクリル系、フッ素系等が挙げられるが、とくにシリコーン系が好ましい。
【0042】
本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、フィラーがエポキシ樹脂層Aに分散されている。ここで、無機酸化物が分散されているとは、無機酸化物がエポキシ樹脂層の一部に偏在することなく、エポキシ樹脂層の全域において存在している状態をいう。
【0043】
エポキシ樹脂層Aにおけるフィラーの割合は、用いるフィラーの粒子径によっても異なるが、エポキシ樹脂層Aに対して10〜70体積%とするのが好ましく、より好ましくは10〜30体積%、さらに好ましくは10〜25体積%とするのがよい。フィラーの添加量がエポキシ樹脂層Aに対して10体積%未満である場合は、フィラー分散系樹脂シートの寸法変化が大きくカラーフィルター層のパターニングや電極形成が困難になる。一方、70体積%を超えるとフィラー分散系樹脂シートの光透過率と表面平滑性が悪くなる。
【0044】
前記のフィラーとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、或いは、シリカ、二酸化チタン、酸化アンチモン、チタニア、アルミナ、ジルコニアや酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物であってもよい。
【0045】
フィラーは、平均粒径が1〜100μmであることが好ましい。より好ましくは5〜80μmがよく、更に好ましくは10〜50μmがよい。粒子径が1μm未満であると分散性が悪く光透過率が小さくなり、100μmを超えると粒子分散系樹脂シートの表面平滑性が悪くなる。
【0046】
前記のエポキシ樹脂層の形成法は、特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。例えば、所定の材料成分を配合したエポキシ樹脂塗工液を調製し、これを基材上に展開する。エポキシ樹脂塗工液の展開は、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法などの適宜な方式にてエポキシ樹脂塗工液を基材層の上に流動展開させてシート状の展開層を形成することにより行うことができる。必要に応じて加熱処理、光照射処理ないし硬化処理することで被膜化する。なお、基材層はガスバリア層等であってもよい。
【0047】
本発明におけるエポキシ樹脂層には、ハードコート層やガスバリア層が積層されていることが好ましい。ハードコート層を樹脂シートの特に最外層に形成することにより、シートの耐擦傷性等を高めることができる。また画像表示装置においては、水分や酸素が液晶セル基板を透過してセル内に侵入すると、液晶の変質や気泡の形成による外観不良、透明導電膜パターンの断線などを発生させるおそれがあるが、基材層とハードコート層の間にガスバリア層を設けることで、水分やガス透過を防止することができる。
【0048】
本発明においてハードコート層を形成する材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体の如きポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂や塩化ビニリデン系樹脂が挙げられる。
【0049】
また、ポリアリレート系樹脂、スルホン系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂やアクリロニトリル系樹脂などもハードコート層の形成に用いることができる。これらの樹脂の中ではウレタン系樹脂が好ましく、ウレタンアクリレートが特に好ましく用いられる。なおハードコート層の形成には、適宜な樹脂の2種以上のブレンド物なども用いることができる。
【0050】
ハードコート層の形成法は、特に制限されない。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法などの適宜な方式にて塗布後乾燥等させることにより形成することができる。乾燥後、必要に応じて加熱処理、光照射処理ないし硬化処理することで被膜化する。
【0051】
またハードコート層形成樹脂液に透明粒子を含有させて塗工液を調製することにより、上述と同様の方法で製膜、乾燥し、透明粒子を含有したハードコート層を形成することができる。
【0052】
ハードコート層の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には製造時の易剥離性や剥離の際にヒビ割れの生じることを防止する点などより、1〜10μm、好ましくは8μm以下、特に2〜5μmとすることが好ましい。
【0053】
本発明におけるガスバリア層の材料としては、ポリビニルアルコール及びその部分ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系ポリマーや、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン等の酸素透過が小さい材料が用いられるが、高ガスバリア性の点よりビニルアルコール系ポリマーが特に好ましい。
【0054】
ガスバリア層の形成法は、特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。また、ガスバリア層の厚みは、透明性、着色防止、ガスバリア性等の機能性、薄型化、得られるエポキシ樹脂シートのフレキシビリティーなどの点により15μm以下、好ましくは13μm以下、さらに好ましくは2〜10μm、特に好ましくは3〜5μmの厚さにするのがよい。ガスバリア層の厚みが2μm未満であると十分なガスバリア機能を付与することができず、10μmを超えると樹脂シートの黄色度指数(YI値)が大きくなる。
【0055】
本発明におけるガスバリア層としては無機ガスバリア層を積層させてもよい。無機ガスバリア層を形成する材料としては、珪素酸化物、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物や亜鉛酸化物等の透明なガスバリア材料が知られているが、ガスバリア性や基材層への密着性等から珪素酸化物が好ましく用いられる。
【0056】
珪素酸化物としては珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0であることが無機ガスバリア層のガスバリア性、透明性、表面平坦性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から好ましい。珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5よりも小さくなると屈曲性や透明性が悪くなる。珪素酸化物においては、珪素原子数に対する酸素原子数の割合の最大値が2.0となる。
【0057】
また無機ガスバリア層を形成する材料としては、珪素窒化物も好ましく用いられ、珪素原子数に対する窒素原子数の割合が1.0〜4/3のものが好ましく用いられる。
【0058】
また本発明における無機ガスバリア層の厚みは5〜200nmであることが好ましい。無機ガスバリア層の厚みが5nmより薄くなると良好なガスバリア性が得られず、無機ガスバリア層の厚みが200nmより厚くなると透明性、屈曲性、膜応力、コストの点で問題がある。
【0059】
本発明のフィラー分散系樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、ハードコート層が形成された支持体上に、逐次塗工でフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、次にフィラーを含有するエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、最後にフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化することにより形成することができる。またハードコート層が形成された支持体上に、逐次塗工でフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、次にフィラー含有エポキシ樹脂塗工液を塗布し、フィラーを沈降させることで見かけ上、フィラー含有エポキシ樹脂層とフィラーを含有しないエポキシ樹脂層を同時に形成し硬化してもよい。またハードコート層とエポキシ樹脂層の間にガスバリア層形成樹脂液を塗布後硬化させ、ガスバリア層を形成することもできる。
【0060】
本発明の樹脂シートは、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上であることが好ましく、より好ましくは190℃以上がよく、更に好ましくは200℃以上がよい。樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が170℃より小さい場合は、無機ガスバリア層の積層時に反りや変形するという問題が生じる。
【0061】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートは、その光透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上であるのがよい。光透過率が80%未満であると、この樹脂シートを用いて液晶表示装置等の画像表示装置を組み立てた時の表示が暗くなり、表示品位が低下する。光透過率の測定方法は、高速分光光度計を用いてλ=550nmの透過率を測定する。
【0062】
また、フィラー分散系樹脂シートの25℃〜160℃における線膨張係数は5.00E−5/℃以下であることが好ましく、より好ましくは4.00E−5/℃以下、さらに好ましくは3.00E−5/℃以下がよい。線膨張係数が5.00E−5/℃を超えるとカラーフィルターを積層する時、パターニングの位置ずれが発生しやすくなる。またフィラー分散系樹脂シート上への電極の形成が困難になる。線膨張係数は、JIS規格K−7197に記載のTMA法により測定し、下記式により算出することができる。式中、△Is(T1)、△Is(T2)はサンプル測定時の温度T1、T2(℃)におけるTMA測定値(μm)のことであり、 L0は室温においてのサンプルの長さ(mm)のことである。
【0063】
【数1】
【0064】
本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいて、当該樹脂シートの最外層はJIS B0601に記載の中心線平均粗さ(Ra)が2nm以下、より好ましくは1nm以下であるのがよい。中心線平均粗さ(Ra)が2nmよりも大きい場合は、配向膜の形成や電極の形成が困難になる。本発明においては、耐擦傷性や耐薬品性が良好である点から、ハードコート層やエポキシ樹脂層Bが最外層にあることが好ましい。
【0065】
したがって、本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、フィラー含有エポキシ樹脂層Aと2層のフィラー不含有エポキシ樹脂層Bに挟まれたエポキシ樹脂層を少なくとも有し、さらにハードコート層とガスバリア層が積層されており、フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚み(d1)とフィラー分散系樹脂シートの厚み(d2)の比(d1/d2)が0.15以上であり、フィラーの平均粒径が1〜100μmであり、25℃〜160℃における線膨張係数は5.00E−5/℃以下であり、かつ、最外層の表面粗さが2nm以下であるものが最も好ましい。
【0066】
また前記のフィラー分散系樹脂シートは、#2000のペーパーで裏面に深さ約1μmの傷をつけた樹脂シートを表面無垢平板と20mmφの穴を設けた平板の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を固定した後、正面垂直方向から樹脂シートが露出した20mmφのエリアの中心部分に10mmφのステンレス球を有する支持棒で荷重を加えていった時の樹脂シートの破断強度が35N以上であることが好ましい。
【0067】
ここで、破断強度の測定方法について、図3に基づいて説明する。まず約30mm×30mmの大きさの樹脂シートを準備し、下方の表面無垢平板(15)と上方の20mmφの穴を有する平板(14)の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を止め具(13)で固定する。表面無垢平板や20mmφの穴を有する平板の厚みは特に限定されないが、5mm〜30mm程度のものを好ましく用いることができる。測定条件については、10mmφのステンレスよりなる球(11)を有する支持棒(12)を、20mmφの穴の中央部に100mm/minの速度で押し当てるように設定を行う。破断強度とは樹脂シートが破断した時の力のことである。
【0068】
破断強度測定時の断面図を図4に例示する。樹脂シート(16)を図3に例示の装置にセッティングする前に、樹脂シートの下方面つまり表面無垢平面と接触する側を、#2000のペーパーで擦る必要がある。具体的には図5に例示のように約15mm×15mmの範囲(18)を#2000のペーパーで擦ることで、深さ約1μmの傷をつけることができる。破断強度の測定は、傷の深さを表面粗さ計等で確認後、部位(17)にステンレス球を押し当てて測定する。
【0069】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートは、その表面に電極を形成することで、電極付きのフィラー分散系樹脂シートとすることができる。前記電極としては、透明電極膜が好ましく用いられる。透明電極膜は、例えば酸化インジウム、酸化スズ、インジウム・錫混合酸化物、金、白金、パラジウム、透明導電塗料などの適宜な形成材を用いて、真空蒸着法やスパッタリング法や塗工法等により付設ないし塗布する方式などの従来に準じた方式にて行うことができ、透明導電膜を所定の電極パターン状に直接形成することも可能である。また透明導電膜上に必要に応じて設けられる液晶配列用の配向膜も、従来に準じた方式にて付加することもできる。この電極付きのフィラー分散系樹脂シートを用いて、例えばTN型、STN型、TFT型、および強誘電性液晶型等の液晶セルを形成することができる。
【0070】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは各種の用途に用いることができ、液晶セル基板やエレクトロルミネッセンスディスプレイ用基板や太陽電池用基板としても好ましく用いられる。
【0071】
液晶表示装置は一般に、偏光板、液晶セル、反射板又はバックライト、及び必要に応じて光学部品等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。本発明においては、上記した樹脂シートを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じて形成することができる。従って、本発明における液晶表示装置の形成に際しては、例えば視認側の偏光板の上に設ける光拡散板、アンンチグレア層、反射防止膜、保護層、保護板、あるいは液晶セルと視認側の偏光板の間に設ける補償用位相差板などの適宜な光学部品を前記樹脂シートに適宜に組み合わせることができる。
【0072】
一般に、エレクトロルミネセンス表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層,発光層,および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0073】
有機エレクトロルミネセンス装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0074】
有機エレクトロルミネセンス装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0075】
このような構成の有機エレクトロルミネセンス装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機エレクトロルミネセンス装置の表示面が鏡面のように見える。
【0076】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相板を設けることができる。
【0077】
位相板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光させる作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0078】
すなわち、この有機エレクトロルミネセンス装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相板が1/4波長板でしかも偏光板と位相板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0079】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
(化2)の化学式で示される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート26.6部(重量部、以下同じ)、(化1)の化学式で示されるビスフェノールS型エポキシ樹脂26.6部、(化3)の化学式で示されるメチルヘキサヒドロフタル酸無水物45.8部、(化4)の化学式で示されるテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオエート1.0部を攪拌混合し、エポキシ樹脂液を調製した。このエポキシ樹脂液A840部に、フィラーとして平均粒子径が30μmのガラスビーズ(比重2.5)を340部配合して、フィラー含有エポキシ樹脂液を調製した。
【0082】
【化2】
【化3】
【化4】
【0083】
また、フィラーを添加しないこと以外は、上記と同様にしてビスフェノールS型エポキシ樹脂を含みフィラーを含有しないエポキシ樹脂液を調製した。
【0084】
図1に例示した製造工程に従い、まず(化5)の化学式で示されるウレタンアクリレートの17重量%のトルエン溶液を、ダイ(21)より、駆動ドラム(42),従動ドラム(43)間に張架されたステンレス製エンドレスベルト(41)に走行速度0.3m/分で流延塗布し、風乾してトルエンを揮発させた後、UV硬化装置(31)を用いて硬化し、膜厚2.0μmのハードコート層(1)を形成した。続いて、前記フィラー不含有エポキシ樹脂液を、ダイ(22)よりハードコート層の上に0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(32)を用いて硬化させ、膜厚50μmのフィラー不含有エポキシ樹脂層B(2)を形成した。次に、フィラー含有エポキシ樹脂液をダイ(23)より0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(33)を用いて硬化させ、膜厚300μmのフィラー含有エポキシ系樹脂層A(3)を形成した。次に、フィラー不含有エポキシ樹脂液Bをダイ(24)より0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(34)を用いて硬化させ、膜厚50μmのフィラー不含有エポキシ系樹脂層B(4)を形成した。
【0085】
【化5】
【0086】
作製されたフィラー分散系樹脂シートの構成を図2に示した。1がハードコート層、3がフィラー含有エポキシ樹脂層A、2と4がフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bである。
【0087】
次に、ハードコート層、フィラー不含有エポキシ系樹脂層、フィラー含有エポキシ樹脂層、フィラー不含有エポキシ系樹脂層からなる積層体をエンドレスベルトから剥離し、窒素置換により酸素濃度が0.5%の雰囲気下でガラス板上に180℃×0.5時間放置しアフターキュアを行った。
【0088】
(実施例2)
フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚みを200μm、フィラー不含有エポキシ樹脂層Bの厚みを100μmとした以外は、実施例1と同様にしてフィラー分散系樹脂シートを作製した。
【0089】
(実施例3〜9、比較例1)
エポキシ樹脂液を調製する過程において、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオエートの比率を表1のように変えた以外は実施例1と同様にフィラー分散系樹脂シートを作製した。
【0090】
(実施例10,11)
ガラスビーズの添加量をそれぞれ560部、1260部とした以外は実施例1と同様にして粒子分散系樹脂シートを作製した。
【0091】
【0092】
(比較例2)
実施例1と同様にしてフィラー含有エポキシ樹脂液、フィラー不含有エポキシ樹脂液を調製した。次にハードコート層により被覆されたステンレス製エンドレスベルト上にフィラー含有エポキシ樹脂液を塗布後硬化させ、続いてフィラー不含有エポキシ樹脂液を塗布後硬化させた。次にハードコート層、フィラー含有エポキシ系樹脂層、フィラー不含有エポキシ樹脂層からなる積層体をエンドレスベルトから剥離し、窒素置換により酸素濃度が0.5%の雰囲気下でガラス板上に180℃×1時間放置しアフターキュアを行った。この場合、フィラー含有エポキシ樹脂層の厚みは200μm、フィラー不含有エポキシ樹脂層の厚みは200μmであった。
【0093】
実施例、比較例で得た樹脂シートを以下の方法にて評価した。その結果を表2に示した。
【0094】
(ガラス転移温度(Tg))
レオメトリックサイエンティフィック社製Aresを用いて測定し、tanδのピーク値をTgとした。
【0095】
(光透過率(%))
高速分光光度計(島津製作所MPS−2000)を用いてλ=550nmの透過率を測定した。
【0096】
(線膨張係数(/℃))
TMA/SS150C(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、25℃および160℃におけるTMA値(μm)を測定し、算出した。
【0097】
(カール・反り)
カール・反りは目視により、以下の基準で判断した。
○:平板上に1辺10cmの正方形のサンプルを置いた時、平板とサンプルの距離の最大値が2mm以下の場合。
×:平板上に1辺10cmの正方形のサンプルを置いた時、平板とサンプルの距離の最大値が2mmより大きい場合。
【0098】
(破断強度)
オートグラフ(島津製作所製)を用いて、図3に例示の方法で樹脂シートが破断した時の力を測定した。表面無垢平板、20mmφの穴を有する平板の厚みはいずれも30mmであり、材質はいずれもステンレスであった。また♯2000のペーパーで擦った後の裏面の傷の深さはランダムに5点粗さ計で測定したところいずれも1.0μmであった。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1〜4のフィラー分散系樹脂シートは、フィラー含有層が2層のフィラー不含有層に挟まれた構成のエポキシ樹脂層を有し、線膨張係数、寸法変化率ともに小さく、高い光透過率を示した。また反りやカールは小さく、作業性が良好なフィラー分散系樹脂シートを得ることができた。また、破断強度はいずれも35N以上であり、実用面で割れない強度を有する粒子分散系樹脂シートであり、ガラス転移温度(Tg)も高かった。
【0101】
実施例5,6,9においてビスフェノールS型エポキシ樹脂の比率が小さい場合は、高いガラス転移温度が得られたが、強度面でやや劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0102】
実施例7,8においてビスフェノールエポキシ樹脂の比率が高い場合は、強度が高い粒子分散系樹脂シートとなったが、ガラス転移温度がやや低い値となった。
【0103】
実施例10,11において無機酸化物(ガラスビーズ)の添加量を増やした場合は、低い線膨張係数が得られたが、強度面で劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0104】
比較例1においてビスフェノールS型エポキシ樹脂を添加しなかった場合は、4×10−5/℃の線膨張係数が得られたが、強度面で劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0105】
比較例2のフィラー分散系樹脂シートは、エポキシ樹脂層がフィラー含有層とフィラー不含有層の2層からなり、線膨張係数、寸法変化率ともに小さく、高い光透過率を示したが、大きな反りやカールが見られ、作業性が悪かった。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂層を内層に用いているため強度が高く、また前記樹脂層にフィラーが分散されているため、線膨張係数が低く、しかも反りやカールの見られない、薄型かつ軽量のフィラー分散系樹脂シートが得られる。
【0107】
このフィラー分散系樹脂シートを、液晶セル基板、有機EL表示装置用基板等の各種画像表示装置用基板として用いた場合、運搬時や表示装置組み立て時に割れることがないため、表示装置の生産効率を向上させることができる。また、ガラス系基板に比べて薄型かつ軽量であり、しかも光透過率が高く、強度に優れた基板となる。また、線膨張率が小さく寸法安定性に優れることより、作業性が良好で、シート上への電極の形成や配向膜の形成、カラーフィルター層の形成が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフィラー分散系樹脂シートの製造工程の一例を示す図である。
【図2】本発明によるフィラー分散系樹脂シート例の断面模式図である。
【図3】本発明で用いる強度測定装置の斜視図である。
【図4】強度測定時の断面図である。
【図5】強度測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1:ハードコート層
2:フィラーを含有しないエポキシ樹脂層B
3:フィラーを含有するエポキシ樹脂層A
4:フィラーを含有しないエポキシ樹脂層B
11:10mmφのステンレス球
12:支持棒
13:止め具
14:20mmφの穴を有する平板
15:表面無垢平板
16:サンプル(樹脂シート)
17:ステンレス球が接触する部位
18:裏面に約1μmの傷を有する部位
21:ハードコート層塗布用ダイ
22:エポキシ樹脂層B塗布用ダイ
23:エポキシ樹脂層A塗布用ダイ
24:エポキシ樹脂層B塗布用ダイ
31:UV硬化装置
32:乾燥機
33:乾燥機
34:乾燥機
41:ステンレス製エンドレスベルト
42:駆動ドラム
43:従動ドラム
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶セル基板、エレクトロルミネッセンスディスプレイ用基板等に用いうるフィラー分散系樹脂シート、およびそれを用いた液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の各種画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置の大型化に伴い、ガラス系の基板は重くて嵩高いことから、薄型軽量化などを目的にエポキシ系樹脂等からなる樹脂シートが基板として提案され開発されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし前記樹脂シートは熱膨張や水分の出入りによる伸び縮みが起きるため、電極形成時やカラーフィルター形成時には位置ずれが生じることが問題になっていた。そこで粒径が1μm未満の無機酸化物を樹脂シートに分散して線膨張係数を抑制することが検討されてきたが、線膨張係数はせいぜい6.00E−5/℃程度であり、満足のいくレベルではなかった。
【0003】
また線膨張係数を下げるために、1〜100μm程度の大きさの粒子を樹脂シートに分散することが検討されてきたが、例えば上記粒子をエポキシ樹脂層に分散した場合、エポキシ樹脂塗工液中で上記粒子が浮遊または沈降する結果、粒子含有側と粒子不含有側とに分離し、エポキシ樹脂層中で線膨張係数が大きい部位と小さい部位に分かれるので、樹脂シートに反り、カールが発生し、作業性が悪く、表示装置を製造することが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特許第3197716号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薄型かつ軽量であると共に、線膨張係数が小さく、反りやカールがなく、ガスバリア性、耐衝撃性、低透湿性、耐熱性、耐薬品性に優れ、液晶セル基板やエレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置)用基板等の画像表示装置用の基板等に好適なフィラー分散系樹脂シート、およびそれを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、フィラーを含有するエポキシ樹脂層の両面に、フィラーを含有しないエポキシ樹脂層を積層して樹脂シート両面での線膨張のバランスを調整するとともに、内層となるフィラー含有エポキシ樹脂層にビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として配合することにより、樹脂シートの強度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有することを特徴とするフィラー分散系樹脂シートを提供するものである。
【0008】
多数のエポキシ樹脂の中でも、特にビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として配合することにより、強靭で割れにくいシートが形成され、さらにフィラーを添加することで線膨張が抑制されるため、強靭かつ寸法安定性に優れた樹脂シートが得られる。さらに、両面にフィラーを含有しないエポキシ樹脂層を設けることにより、フィラー偏在化による反りやカールを防止することができるため、電極形成やカラーフィルター形成が容易となり、液晶セル基板をはじめとする各種基板形成に好適な樹脂シートとなり得る。
【0009】
また、エポキシ樹脂層Bの組成は任意であり、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有する必要はないが、樹脂シートの更なる強度アップを図る観点より、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有することが好ましい。
【0010】
前記のフィラー分散系樹脂シートにおいて、前記エポキシ樹脂層が、さらに脂環式エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
前記のエポキシ樹脂層Aにおいて、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が3〜60重量%であることが好ましく、フィラーの比率が10〜70体積%であることが好ましい。また、フィラーの平均粒子径が1μm〜100μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは、前記のエポキシ樹脂層AとBとからなる樹脂シートに、さらに、ウレタン系樹脂よりなるハードコート層及びガスバリア層の少なくとも一方が積層されていることが好ましい。
【0013】
前記本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、前記エポキシ樹脂層Aの厚み(d1)と前記フィラー分散系樹脂シートの厚み(d2)の比(d1/d2)が、0.15以上であることが好ましい。
【0014】
また、25℃〜160℃における線膨張係数が5.00E−5(5.00×10−5)/℃以下であることが好ましく、最外層の表面粗さ(Ra)が2nm以下であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のフィラー分散系樹脂シートは、#2000のペーパーで裏面に深さ約1μmの傷をつけた樹脂シートを表面無垢平板と20mmφの穴を設けた平板の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を固定した後、前記樹脂シートが露出した20mmφのエリアの中心部分に正面垂直方向から10mmφの球形先端を有する支持棒で荷重を加えていった時の樹脂シートの破断強度が35N以上であることが好ましい。
【0016】
またさらに、本発明は、前記のフィラー分散系樹脂シートからなることを特徴とする画像表示装置用基板、太陽電池用基板、およびこれらを用いた画像表示装置を提供するものである。画像表示装置用基板としては、例えば、液晶セル基板、有機EL表示装置用基板等があげられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは、フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有するものである。フィラー含有エポキシ樹脂層Aとフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bは、線膨張係数が各々異なるが、フィラー含有エポキシ樹脂層Aが2層のフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bに挟まれた構成となることで、反りやカールを防止することが可能になる。
【0018】
前記のエポキシ樹脂層A、Bには、ガスバリア層やハードコート層が積層されているのが好ましく、当該層が形成されたエポキシ樹脂層とは反対側に、ハードコート層がもう1層積層されていてもよい。また、ハードコート層は透明粒子を含有するものでもよい。エポキシ樹脂層、ガスバリア層およびハードコート層の積層順は特に限定されないが、ガスバリア層、ハードコート層の順でエポキシ樹脂層側から積層されているのが好ましく、ガスバリア層は耐擦傷性、耐薬品性がハードコート層や基材層よりも劣ることがあるので、最外層ではなく層間に積層するのが好ましい。
【0019】
本発明において、フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚みを(d1)、フィラー分散系樹脂シートの厚み、つまりシート全体の厚みを(d2)とした場合、(d1/d2)は0.15以上、好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上がよい。(d1/d2)が0.15未満の場合は、フィラー分散系樹脂シート(すなわちシート全体)の線膨張係数が大きくなり、電極形成時やカラーフィルター形成時に位置ずれが生じる等の問題が生じる。図2にその構成例を示した。
【0020】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートの厚さは、その使用目的などに応じ100μm以上の厚さで適宜に決定することができる。一般には、フィラー含有エポキシ樹脂層Aと2層のフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bとの厚みの総計が、100〜800μmであることが好ましく、より好ましくは150〜500μmであるのがよい。全エポキシ樹脂層の厚みが100μmより小さい場合は、本樹脂シートを組み込んだ表示装置の強度低下につながり、800μmより大きい場合は、薄型、軽量の特性がなくなり、表示品位が低下する。
【0021】
本発明においては、表面平滑性や色相の点で、エポキシ樹脂層Aおよびエポキシ樹脂層Bを基材層として用いているが、該エポキシ樹脂層を構成するエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型、ビスフェノールS型やそれらの水添加の如きビスフェノール型、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型の如きノボラック型、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型の如き含窒素環型、脂環式型や脂肪族型、ナフタレン型の如き芳香族型やグリシジルエーテル型、ビフェニル型の如き低吸水率タイプやジシクロ型、エステル型やエーテルエステル型、それらの変成型などが挙げられる。これらは単独で使用してもあるいは併用してもよい。上記各種エポキシ系樹脂の中でも、変色防止性などの点よりビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型を用いることが好ましい。
【0022】
このようなエポキシ系樹脂としては、一般にエポキシ当量100〜1000、軟化点120℃以下のものが、得られる樹脂シートの柔軟性や強度等の物性などの点より好ましく用いられる。さらに塗工性やシート状への展開性等に優れるエポキシ樹脂含有液を得る点などよりは、塗工時の温度以下、特に常温において液体状態を示す二液混合型のものが好ましく用いうる。
【0023】
本発明において用いるビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の構造は(化1)の化学式で例示されるものが代表的なものである。またビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量200〜400(g/eq)、融点60〜90℃のものを用いるのが好ましく、より好ましくはエポキシ当量250〜350(g/eq)、融点70〜85℃のものがよい。
【0024】
【化1】
【0025】
本発明においてエポキシ樹脂層Aは、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが必要であるが、上述した他のエポキシ樹脂を適宜混合してエポキシ樹脂層を形成してもよい。
【0026】
他のエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型やそれらの水添加の如きビスフェノール型、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型の如きノボラック型、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型の如き含窒素環型、脂環式型や脂肪族型、ナフタレン型の如き芳香族型やグリシジルエーテル型、ビフェニル型の如き低吸水率タイプやジシクロ型、エステル型やエーテルエステル型、それらの変成型などが挙げられる。
【0027】
上記エポキシ樹脂の中では、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と組み合わせて、耐熱性と強靭性の良好なバランスを有する樹脂シート得るためには、脂環式エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシルメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等を例示することができ、塗工液の流動性や硬化後の耐熱性の点で3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく用いられる。
【0029】
エポキシ樹脂層A中におけるビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率は3〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜45重量%がよく、更に好ましくは14〜42重量%がよい。ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が3%よりも小さい場合は、十分な強靭性を有する樹脂シートを得ることができず、運搬時や液晶表示装置の組み立て時に破断する場合がある。ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が60%よりも大きい場合は、エポキシ樹脂層を形成する場合、塗工液の粘度が高くなるため、流動性が悪くなり塗工が困難になる。また硬化後の樹脂シートの耐熱性が低下する。
【0030】
上記エポキシ系樹脂には、硬化剤、硬化促進剤、および必要に応じて従来から用いられている老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の従来公知の各種添加物を適宜に配合することができる。
【0031】
前記、硬化剤についても特に限定はなく、エポキシ系樹脂に応じた適宜な硬化剤を1種または2種以上用いることができる。ちなみにその例としては、テトラヒドロフタル酸やメチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸やメチルヘキサヒドロフタル酸の如き有機酸系化合物類、エチレンジアミンやプロピレンジアミン、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクトやメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの如きアミン系化合物類が挙げられる。
【0032】
またジシアンジアミドやポリアミドの如きアミド系化合物類、ジヒドラジットの如きヒドラジド系化合物類、メチルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾールやイソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールやフェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾールやヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールの如きイミダゾール系化合物類も前記硬化剤の例として挙げられる。
【0033】
さらに、メチルイミダゾリンや2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリンやイソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリンやフェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリンやヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンの如きイミダゾリン系化合物、その他、フェノール系化合物やユリア系化合物類、ポリスルフィド系化合物類も前記硬化剤の例として挙げられる。
【0034】
加えて、酸無水物系化合物類なども前記硬化剤の例として挙げられ、変色防止性などの点より、かかる酸無水物硬化剤が好ましく用いうる。その例としては無水フタル酸や無水マレイン酸、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸、無水ナジック酸や無水グルタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物やメチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物やメチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物やドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物やベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物やクロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0035】
特に、無水フタル酸やテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物やメチルヘキサヒドロフタル酸無水物の如く無色系ないし淡黄色系で、分子量が約140〜約200の酸無水物系硬化剤が好ましく用いうる。
【0036】
前記エポキシ系樹脂と硬化剤の配合割合は、硬化剤として酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ系樹脂のエポキシ基1当量に対して酸無水物当量を0.5〜1.5当量となるように配合することが好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量がよい。酸無水物が0.5当量未満では、硬化後の色相が悪くなり、1.5当量を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられる。なお他の硬化剤を単独で又は2種以上を併用して使用する場合にも、その使用量は前記の当量比に準じうる。
【0037】
前記硬化促進剤としては、第三級アミン類、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類、有機金属塩類、リン化合物類、尿素系化合物類等が挙げられるが、特にリン化合物類を用いることが好ましい。これらは単独であるいは併用して使用することができる。
【0038】
前記硬化促進剤の配合量は、エポキシ系樹脂100重量部に対して0.05〜7.0重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0重量部がよい。硬化促進剤の配合量が0.05重量部未満では、充分な硬化促進効果が得られず、7.0重量部を超えると硬化体が変色するおそれがある。
【0039】
前記老化防止剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の従来公知のものが挙げられる。
【0040】
前記変成剤としては、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等従来公知のものが挙げられる。
【0041】
前記界面活性剤は、エポキシ系樹脂シートを流延法等によりエポキシ樹脂を空気に触れながら硬化する場合に、シートの表面を平滑にするために添加される。界面活性剤としてはシリコーン系、アクリル系、フッ素系等が挙げられるが、とくにシリコーン系が好ましい。
【0042】
本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、フィラーがエポキシ樹脂層Aに分散されている。ここで、無機酸化物が分散されているとは、無機酸化物がエポキシ樹脂層の一部に偏在することなく、エポキシ樹脂層の全域において存在している状態をいう。
【0043】
エポキシ樹脂層Aにおけるフィラーの割合は、用いるフィラーの粒子径によっても異なるが、エポキシ樹脂層Aに対して10〜70体積%とするのが好ましく、より好ましくは10〜30体積%、さらに好ましくは10〜25体積%とするのがよい。フィラーの添加量がエポキシ樹脂層Aに対して10体積%未満である場合は、フィラー分散系樹脂シートの寸法変化が大きくカラーフィルター層のパターニングや電極形成が困難になる。一方、70体積%を超えるとフィラー分散系樹脂シートの光透過率と表面平滑性が悪くなる。
【0044】
前記のフィラーとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、或いは、シリカ、二酸化チタン、酸化アンチモン、チタニア、アルミナ、ジルコニアや酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物であってもよい。
【0045】
フィラーは、平均粒径が1〜100μmであることが好ましい。より好ましくは5〜80μmがよく、更に好ましくは10〜50μmがよい。粒子径が1μm未満であると分散性が悪く光透過率が小さくなり、100μmを超えると粒子分散系樹脂シートの表面平滑性が悪くなる。
【0046】
前記のエポキシ樹脂層の形成法は、特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。例えば、所定の材料成分を配合したエポキシ樹脂塗工液を調製し、これを基材上に展開する。エポキシ樹脂塗工液の展開は、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法などの適宜な方式にてエポキシ樹脂塗工液を基材層の上に流動展開させてシート状の展開層を形成することにより行うことができる。必要に応じて加熱処理、光照射処理ないし硬化処理することで被膜化する。なお、基材層はガスバリア層等であってもよい。
【0047】
本発明におけるエポキシ樹脂層には、ハードコート層やガスバリア層が積層されていることが好ましい。ハードコート層を樹脂シートの特に最外層に形成することにより、シートの耐擦傷性等を高めることができる。また画像表示装置においては、水分や酸素が液晶セル基板を透過してセル内に侵入すると、液晶の変質や気泡の形成による外観不良、透明導電膜パターンの断線などを発生させるおそれがあるが、基材層とハードコート層の間にガスバリア層を設けることで、水分やガス透過を防止することができる。
【0048】
本発明においてハードコート層を形成する材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体の如きポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂や塩化ビニリデン系樹脂が挙げられる。
【0049】
また、ポリアリレート系樹脂、スルホン系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂やアクリロニトリル系樹脂などもハードコート層の形成に用いることができる。これらの樹脂の中ではウレタン系樹脂が好ましく、ウレタンアクリレートが特に好ましく用いられる。なおハードコート層の形成には、適宜な樹脂の2種以上のブレンド物なども用いることができる。
【0050】
ハードコート層の形成法は、特に制限されない。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法などの適宜な方式にて塗布後乾燥等させることにより形成することができる。乾燥後、必要に応じて加熱処理、光照射処理ないし硬化処理することで被膜化する。
【0051】
またハードコート層形成樹脂液に透明粒子を含有させて塗工液を調製することにより、上述と同様の方法で製膜、乾燥し、透明粒子を含有したハードコート層を形成することができる。
【0052】
ハードコート層の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には製造時の易剥離性や剥離の際にヒビ割れの生じることを防止する点などより、1〜10μm、好ましくは8μm以下、特に2〜5μmとすることが好ましい。
【0053】
本発明におけるガスバリア層の材料としては、ポリビニルアルコール及びその部分ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系ポリマーや、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン等の酸素透過が小さい材料が用いられるが、高ガスバリア性の点よりビニルアルコール系ポリマーが特に好ましい。
【0054】
ガスバリア層の形成法は、特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。また、ガスバリア層の厚みは、透明性、着色防止、ガスバリア性等の機能性、薄型化、得られるエポキシ樹脂シートのフレキシビリティーなどの点により15μm以下、好ましくは13μm以下、さらに好ましくは2〜10μm、特に好ましくは3〜5μmの厚さにするのがよい。ガスバリア層の厚みが2μm未満であると十分なガスバリア機能を付与することができず、10μmを超えると樹脂シートの黄色度指数(YI値)が大きくなる。
【0055】
本発明におけるガスバリア層としては無機ガスバリア層を積層させてもよい。無機ガスバリア層を形成する材料としては、珪素酸化物、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物や亜鉛酸化物等の透明なガスバリア材料が知られているが、ガスバリア性や基材層への密着性等から珪素酸化物が好ましく用いられる。
【0056】
珪素酸化物としては珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0であることが無機ガスバリア層のガスバリア性、透明性、表面平坦性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から好ましい。珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5よりも小さくなると屈曲性や透明性が悪くなる。珪素酸化物においては、珪素原子数に対する酸素原子数の割合の最大値が2.0となる。
【0057】
また無機ガスバリア層を形成する材料としては、珪素窒化物も好ましく用いられ、珪素原子数に対する窒素原子数の割合が1.0〜4/3のものが好ましく用いられる。
【0058】
また本発明における無機ガスバリア層の厚みは5〜200nmであることが好ましい。無機ガスバリア層の厚みが5nmより薄くなると良好なガスバリア性が得られず、無機ガスバリア層の厚みが200nmより厚くなると透明性、屈曲性、膜応力、コストの点で問題がある。
【0059】
本発明のフィラー分散系樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、ハードコート層が形成された支持体上に、逐次塗工でフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、次にフィラーを含有するエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、最後にフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化することにより形成することができる。またハードコート層が形成された支持体上に、逐次塗工でフィラーを含有しないエポキシ樹脂塗工液を塗布後硬化し、次にフィラー含有エポキシ樹脂塗工液を塗布し、フィラーを沈降させることで見かけ上、フィラー含有エポキシ樹脂層とフィラーを含有しないエポキシ樹脂層を同時に形成し硬化してもよい。またハードコート層とエポキシ樹脂層の間にガスバリア層形成樹脂液を塗布後硬化させ、ガスバリア層を形成することもできる。
【0060】
本発明の樹脂シートは、ガラス転移温度(Tg)が170℃以上であることが好ましく、より好ましくは190℃以上がよく、更に好ましくは200℃以上がよい。樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が170℃より小さい場合は、無機ガスバリア層の積層時に反りや変形するという問題が生じる。
【0061】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートは、その光透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上であるのがよい。光透過率が80%未満であると、この樹脂シートを用いて液晶表示装置等の画像表示装置を組み立てた時の表示が暗くなり、表示品位が低下する。光透過率の測定方法は、高速分光光度計を用いてλ=550nmの透過率を測定する。
【0062】
また、フィラー分散系樹脂シートの25℃〜160℃における線膨張係数は5.00E−5/℃以下であることが好ましく、より好ましくは4.00E−5/℃以下、さらに好ましくは3.00E−5/℃以下がよい。線膨張係数が5.00E−5/℃を超えるとカラーフィルターを積層する時、パターニングの位置ずれが発生しやすくなる。またフィラー分散系樹脂シート上への電極の形成が困難になる。線膨張係数は、JIS規格K−7197に記載のTMA法により測定し、下記式により算出することができる。式中、△Is(T1)、△Is(T2)はサンプル測定時の温度T1、T2(℃)におけるTMA測定値(μm)のことであり、 L0は室温においてのサンプルの長さ(mm)のことである。
【0063】
【数1】
【0064】
本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいて、当該樹脂シートの最外層はJIS B0601に記載の中心線平均粗さ(Ra)が2nm以下、より好ましくは1nm以下であるのがよい。中心線平均粗さ(Ra)が2nmよりも大きい場合は、配向膜の形成や電極の形成が困難になる。本発明においては、耐擦傷性や耐薬品性が良好である点から、ハードコート層やエポキシ樹脂層Bが最外層にあることが好ましい。
【0065】
したがって、本発明のフィラー分散系樹脂シートにおいては、フィラー含有エポキシ樹脂層Aと2層のフィラー不含有エポキシ樹脂層Bに挟まれたエポキシ樹脂層を少なくとも有し、さらにハードコート層とガスバリア層が積層されており、フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚み(d1)とフィラー分散系樹脂シートの厚み(d2)の比(d1/d2)が0.15以上であり、フィラーの平均粒径が1〜100μmであり、25℃〜160℃における線膨張係数は5.00E−5/℃以下であり、かつ、最外層の表面粗さが2nm以下であるものが最も好ましい。
【0066】
また前記のフィラー分散系樹脂シートは、#2000のペーパーで裏面に深さ約1μmの傷をつけた樹脂シートを表面無垢平板と20mmφの穴を設けた平板の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を固定した後、正面垂直方向から樹脂シートが露出した20mmφのエリアの中心部分に10mmφのステンレス球を有する支持棒で荷重を加えていった時の樹脂シートの破断強度が35N以上であることが好ましい。
【0067】
ここで、破断強度の測定方法について、図3に基づいて説明する。まず約30mm×30mmの大きさの樹脂シートを準備し、下方の表面無垢平板(15)と上方の20mmφの穴を有する平板(14)の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を止め具(13)で固定する。表面無垢平板や20mmφの穴を有する平板の厚みは特に限定されないが、5mm〜30mm程度のものを好ましく用いることができる。測定条件については、10mmφのステンレスよりなる球(11)を有する支持棒(12)を、20mmφの穴の中央部に100mm/minの速度で押し当てるように設定を行う。破断強度とは樹脂シートが破断した時の力のことである。
【0068】
破断強度測定時の断面図を図4に例示する。樹脂シート(16)を図3に例示の装置にセッティングする前に、樹脂シートの下方面つまり表面無垢平面と接触する側を、#2000のペーパーで擦る必要がある。具体的には図5に例示のように約15mm×15mmの範囲(18)を#2000のペーパーで擦ることで、深さ約1μmの傷をつけることができる。破断強度の測定は、傷の深さを表面粗さ計等で確認後、部位(17)にステンレス球を押し当てて測定する。
【0069】
本発明によるフィラー分散系樹脂シートは、その表面に電極を形成することで、電極付きのフィラー分散系樹脂シートとすることができる。前記電極としては、透明電極膜が好ましく用いられる。透明電極膜は、例えば酸化インジウム、酸化スズ、インジウム・錫混合酸化物、金、白金、パラジウム、透明導電塗料などの適宜な形成材を用いて、真空蒸着法やスパッタリング法や塗工法等により付設ないし塗布する方式などの従来に準じた方式にて行うことができ、透明導電膜を所定の電極パターン状に直接形成することも可能である。また透明導電膜上に必要に応じて設けられる液晶配列用の配向膜も、従来に準じた方式にて付加することもできる。この電極付きのフィラー分散系樹脂シートを用いて、例えばTN型、STN型、TFT型、および強誘電性液晶型等の液晶セルを形成することができる。
【0070】
本発明のフィラー分散系樹脂シートは各種の用途に用いることができ、液晶セル基板やエレクトロルミネッセンスディスプレイ用基板や太陽電池用基板としても好ましく用いられる。
【0071】
液晶表示装置は一般に、偏光板、液晶セル、反射板又はバックライト、及び必要に応じて光学部品等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。本発明においては、上記した樹脂シートを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じて形成することができる。従って、本発明における液晶表示装置の形成に際しては、例えば視認側の偏光板の上に設ける光拡散板、アンンチグレア層、反射防止膜、保護層、保護板、あるいは液晶セルと視認側の偏光板の間に設ける補償用位相差板などの適宜な光学部品を前記樹脂シートに適宜に組み合わせることができる。
【0072】
一般に、エレクトロルミネセンス表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層,発光層,および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0073】
有機エレクトロルミネセンス装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0074】
有機エレクトロルミネセンス装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0075】
このような構成の有機エレクトロルミネセンス装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機エレクトロルミネセンス装置の表示面が鏡面のように見える。
【0076】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相板を設けることができる。
【0077】
位相板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光させる作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0078】
すなわち、この有機エレクトロルミネセンス装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相板が1/4波長板でしかも偏光板と位相板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0079】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
(化2)の化学式で示される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート26.6部(重量部、以下同じ)、(化1)の化学式で示されるビスフェノールS型エポキシ樹脂26.6部、(化3)の化学式で示されるメチルヘキサヒドロフタル酸無水物45.8部、(化4)の化学式で示されるテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオエート1.0部を攪拌混合し、エポキシ樹脂液を調製した。このエポキシ樹脂液A840部に、フィラーとして平均粒子径が30μmのガラスビーズ(比重2.5)を340部配合して、フィラー含有エポキシ樹脂液を調製した。
【0082】
【化2】
【化3】
【化4】
【0083】
また、フィラーを添加しないこと以外は、上記と同様にしてビスフェノールS型エポキシ樹脂を含みフィラーを含有しないエポキシ樹脂液を調製した。
【0084】
図1に例示した製造工程に従い、まず(化5)の化学式で示されるウレタンアクリレートの17重量%のトルエン溶液を、ダイ(21)より、駆動ドラム(42),従動ドラム(43)間に張架されたステンレス製エンドレスベルト(41)に走行速度0.3m/分で流延塗布し、風乾してトルエンを揮発させた後、UV硬化装置(31)を用いて硬化し、膜厚2.0μmのハードコート層(1)を形成した。続いて、前記フィラー不含有エポキシ樹脂液を、ダイ(22)よりハードコート層の上に0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(32)を用いて硬化させ、膜厚50μmのフィラー不含有エポキシ樹脂層B(2)を形成した。次に、フィラー含有エポキシ樹脂液をダイ(23)より0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(33)を用いて硬化させ、膜厚300μmのフィラー含有エポキシ系樹脂層A(3)を形成した。次に、フィラー不含有エポキシ樹脂液Bをダイ(24)より0.3m/分で流延塗布し、加熱装置(34)を用いて硬化させ、膜厚50μmのフィラー不含有エポキシ系樹脂層B(4)を形成した。
【0085】
【化5】
【0086】
作製されたフィラー分散系樹脂シートの構成を図2に示した。1がハードコート層、3がフィラー含有エポキシ樹脂層A、2と4がフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bである。
【0087】
次に、ハードコート層、フィラー不含有エポキシ系樹脂層、フィラー含有エポキシ樹脂層、フィラー不含有エポキシ系樹脂層からなる積層体をエンドレスベルトから剥離し、窒素置換により酸素濃度が0.5%の雰囲気下でガラス板上に180℃×0.5時間放置しアフターキュアを行った。
【0088】
(実施例2)
フィラー含有エポキシ樹脂層Aの厚みを200μm、フィラー不含有エポキシ樹脂層Bの厚みを100μmとした以外は、実施例1と同様にしてフィラー分散系樹脂シートを作製した。
【0089】
(実施例3〜9、比較例1)
エポキシ樹脂液を調製する過程において、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオエートの比率を表1のように変えた以外は実施例1と同様にフィラー分散系樹脂シートを作製した。
【0090】
(実施例10,11)
ガラスビーズの添加量をそれぞれ560部、1260部とした以外は実施例1と同様にして粒子分散系樹脂シートを作製した。
【0091】
【0092】
(比較例2)
実施例1と同様にしてフィラー含有エポキシ樹脂液、フィラー不含有エポキシ樹脂液を調製した。次にハードコート層により被覆されたステンレス製エンドレスベルト上にフィラー含有エポキシ樹脂液を塗布後硬化させ、続いてフィラー不含有エポキシ樹脂液を塗布後硬化させた。次にハードコート層、フィラー含有エポキシ系樹脂層、フィラー不含有エポキシ樹脂層からなる積層体をエンドレスベルトから剥離し、窒素置換により酸素濃度が0.5%の雰囲気下でガラス板上に180℃×1時間放置しアフターキュアを行った。この場合、フィラー含有エポキシ樹脂層の厚みは200μm、フィラー不含有エポキシ樹脂層の厚みは200μmであった。
【0093】
実施例、比較例で得た樹脂シートを以下の方法にて評価した。その結果を表2に示した。
【0094】
(ガラス転移温度(Tg))
レオメトリックサイエンティフィック社製Aresを用いて測定し、tanδのピーク値をTgとした。
【0095】
(光透過率(%))
高速分光光度計(島津製作所MPS−2000)を用いてλ=550nmの透過率を測定した。
【0096】
(線膨張係数(/℃))
TMA/SS150C(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、25℃および160℃におけるTMA値(μm)を測定し、算出した。
【0097】
(カール・反り)
カール・反りは目視により、以下の基準で判断した。
○:平板上に1辺10cmの正方形のサンプルを置いた時、平板とサンプルの距離の最大値が2mm以下の場合。
×:平板上に1辺10cmの正方形のサンプルを置いた時、平板とサンプルの距離の最大値が2mmより大きい場合。
【0098】
(破断強度)
オートグラフ(島津製作所製)を用いて、図3に例示の方法で樹脂シートが破断した時の力を測定した。表面無垢平板、20mmφの穴を有する平板の厚みはいずれも30mmであり、材質はいずれもステンレスであった。また♯2000のペーパーで擦った後の裏面の傷の深さはランダムに5点粗さ計で測定したところいずれも1.0μmであった。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1〜4のフィラー分散系樹脂シートは、フィラー含有層が2層のフィラー不含有層に挟まれた構成のエポキシ樹脂層を有し、線膨張係数、寸法変化率ともに小さく、高い光透過率を示した。また反りやカールは小さく、作業性が良好なフィラー分散系樹脂シートを得ることができた。また、破断強度はいずれも35N以上であり、実用面で割れない強度を有する粒子分散系樹脂シートであり、ガラス転移温度(Tg)も高かった。
【0101】
実施例5,6,9においてビスフェノールS型エポキシ樹脂の比率が小さい場合は、高いガラス転移温度が得られたが、強度面でやや劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0102】
実施例7,8においてビスフェノールエポキシ樹脂の比率が高い場合は、強度が高い粒子分散系樹脂シートとなったが、ガラス転移温度がやや低い値となった。
【0103】
実施例10,11において無機酸化物(ガラスビーズ)の添加量を増やした場合は、低い線膨張係数が得られたが、強度面で劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0104】
比較例1においてビスフェノールS型エポキシ樹脂を添加しなかった場合は、4×10−5/℃の線膨張係数が得られたが、強度面で劣る粒子分散系樹脂シートとなった。
【0105】
比較例2のフィラー分散系樹脂シートは、エポキシ樹脂層がフィラー含有層とフィラー不含有層の2層からなり、線膨張係数、寸法変化率ともに小さく、高い光透過率を示したが、大きな反りやカールが見られ、作業性が悪かった。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂層を内層に用いているため強度が高く、また前記樹脂層にフィラーが分散されているため、線膨張係数が低く、しかも反りやカールの見られない、薄型かつ軽量のフィラー分散系樹脂シートが得られる。
【0107】
このフィラー分散系樹脂シートを、液晶セル基板、有機EL表示装置用基板等の各種画像表示装置用基板として用いた場合、運搬時や表示装置組み立て時に割れることがないため、表示装置の生産効率を向上させることができる。また、ガラス系基板に比べて薄型かつ軽量であり、しかも光透過率が高く、強度に優れた基板となる。また、線膨張率が小さく寸法安定性に優れることより、作業性が良好で、シート上への電極の形成や配向膜の形成、カラーフィルター層の形成が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフィラー分散系樹脂シートの製造工程の一例を示す図である。
【図2】本発明によるフィラー分散系樹脂シート例の断面模式図である。
【図3】本発明で用いる強度測定装置の斜視図である。
【図4】強度測定時の断面図である。
【図5】強度測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1:ハードコート層
2:フィラーを含有しないエポキシ樹脂層B
3:フィラーを含有するエポキシ樹脂層A
4:フィラーを含有しないエポキシ樹脂層B
11:10mmφのステンレス球
12:支持棒
13:止め具
14:20mmφの穴を有する平板
15:表面無垢平板
16:サンプル(樹脂シート)
17:ステンレス球が接触する部位
18:裏面に約1μmの傷を有する部位
21:ハードコート層塗布用ダイ
22:エポキシ樹脂層B塗布用ダイ
23:エポキシ樹脂層A塗布用ダイ
24:エポキシ樹脂層B塗布用ダイ
31:UV硬化装置
32:乾燥機
33:乾燥機
34:乾燥機
41:ステンレス製エンドレスベルト
42:駆動ドラム
43:従動ドラム
Claims (15)
- フィラーを含有するエポキシ樹脂層Aと、その両面に積層されたフィラーを含有しないエポキシ樹脂層Bと、を少なくとも有するフィラー分散系樹脂シートであって、前記エポキシ樹脂層Aが、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂を必須成分として含有することを特徴とするフィラー分散系樹脂シート。
- 前記エポキシ樹脂層Aが、さらに脂環式エポキシ樹脂を含む請求項1に記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 前記エポキシ樹脂層Aにおいて、ビスフェノールS型骨格を有するエポキシ樹脂の比率が3〜60重量%である請求項1または2に記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 前記エポキシ樹脂層Aにおいて、フィラーの比率が10〜70体積%である請求項1〜3のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 前記フィラーの平均粒子径が1μm〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- さらに、ウレタン系樹脂よりなるハードコート層が積層されてなる請求項1〜5のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- さらに、ガスバリア層が積層されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 前記エポキシ樹脂層Aの厚み(d1)と前記フィラー分散系樹脂シートの厚み(d2)の比(d1/d2)が、0.15以上である請求項1〜7のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 25℃〜160℃における線膨張係数が、5.00E−5/℃以下である請求項1〜8のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 最外層の表面粗さ(Ra)が、2nm以下である請求項1〜9のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- ガラス転移温度(Tg)が170℃以上である請求項1〜10のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- #2000のペーパーで裏面に深さ約1μmの傷をつけた樹脂シートを表面無垢平板と20mmφの穴を設けた平板の間に挟んで水平方向に設置し、四隅を固定した後、前記樹脂シートが露出した20mmφのエリアの中心部分に正面垂直方向から10mmφの球形先端を有する支持棒で荷重を加えていった時の樹脂シートの破断強度が35N以上である請求項1〜11のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シート。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シートからなることを特徴とする画像表示装置用基板。
- 請求項13に記載の画像表示装置用基板を用いたことを特徴とする画像表示装置。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のフィラー分散系樹脂シートからなることを特徴とする太陽電池用基板。
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JP2002284235A JP2004114617A (ja) | 2002-09-27 | 2002-09-27 | フィラー分散系樹脂シート、画像表示装置用基板、画像表示装置 |
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---|---|---|---|---|
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-
2002
- 2002-09-27 JP JP2002284235A patent/JP2004114617A/ja not_active Withdrawn
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