JP2007285890A - ネットワークアナライザの再校正方法、および、ネットワークアナライザ - Google Patents

ネットワークアナライザの再校正方法、および、ネットワークアナライザ Download PDF

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Abstract

【課題】測定値を保持することなく、効率的に再校正できる技術を提供する。
【解決手段】
標準器の回路パラメータを測定し、前記測定された回路パラメータに関連する誤差係数の種類を特定し、前記測定された回路パラメータを用いて、前記特定された種類の誤差係数を計算することにより、校正されたネットワークアナライザを再校正する。また、前記計算に必要な回路パラメータのうち、前記測定された回路パラメータ以外の回路パラメータを、前記回路パラメータの理論値と前記校正により得られた誤差係数とを用いて再現する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ネットワークアナライザの校正技術に係り、特に再校正技術に関する。
被測定物の網特性を表す回路パラメータを測定する装置であるネットワークアナライザ、または、ネットワークアナライザを含む測定システムは、システマティック誤差係数を測定値から除去できるように、被測定物を測定する前に、校正が施される。ネットワークアナライザの校正方法は、一般に、レスポンス校正法、1ポート校正法、TRL校正法、および、フルNポート校正法などがある。フルNポート校正法は、システマティック誤差係数の主要因の全て考慮するため、最も正確な結果を得ることができる。なお、Nは、校正対象の測定ポートの数である。
一般的なフルNポート校正方法は、オープン標準器、ショート標準器、ロード標準器、および、スルー標準器を用いて実施される(特許文献1を参照)。校正工程において、これらの標準器が、校正対象の測定ポートのそれぞれに、あるいは、測定ポート間のそれぞれに接続され、各接続時における回路パラメータが測定される。従来、フルNポート校正方法に限らず、校正失敗や校正キット変更などの理由により再校正する場合に、校正の全工程を最初からやり直していた。ちなみに、フル4ポート校正の場合、校正の全工程における、標準器の取り付けおよび取り外しの合計回数は、48回(=4×3×2+×2×2)にも及ぶ。また、同校正の全工程における測定工程数は、18工程(4×3+)にも及ぶ。これらの着脱作業および測定作業の完全なやり直しは、多大な時間と労力を要する。
そこで、校正作業中に、補正された測定値を表示し且つ操作者が所望するパラメータだけを再測定できるようにした校正方法が提案されている(特許文献2を参照)。
特開平08−043463号公報(第2頁) 特開2003−294820号公報(第4頁、図5) 特開2005−091194号公報(第4頁、図5)
この提案されている方法では、再測定を可能にするために、校正作業が完了するまで、標準器の測定値の全てが保持される。従って、測定ポート数や測定点数が増加すると、保持すべき測定値の個数が増大し、その結果、大容量のメモリが必要とされるようになる。また、この提案されている方法では、校正作業が完了すると、保持していた標準器の測定値が全て破棄される。したがって、校正完了後の再校正では、古典的な校正方法と同様に、最初から全行程をやり直す必要がある。標準器の測定値を保持し続けようとすると、やはり、大量のメモリが必要となる。
本発明は、測定値を保持することなく、従来よりも効率的に再校正できる技術を提供することを目的とする。本発明は、上記の目的を達成するべく、新たな再校正方法と、該方法の実施に必要なネットワークアナライザを提供する。すなわち、本第一の発明は、校正されたネットワークアナライザを再校正する方法であって、標準器の回路パラメータを測定するステップと、前記測定された回路パラメータに関連する誤差係数の種類を特定するステップと、前記測定された回路パラメータを用いて、前記特定された種類の誤差係数を計算するステップとを含むものである。
また、本第二の発明は、前記第一の発明の方法において、前記計算に必要な回路パラメータのうち、前記測定された回路パラメータ以外の回路パラメータを、前記回路パラメータの理論値と前記校正により得られた誤差係数とを用いて再現するステップを含むことを特徴とするものである。
さらに、本第三の発明は、前記第一の発明または前記第二の発明の方法において、前記計算により得られた誤差係数の値を、前記校正により得られた誤差係数に上書きするステップを含むことを特徴とするものである。
またさらに、本第四の発明は、校正により得られた誤差係数と、前記校正により得られた誤差係数のうち前記校正の後に得られた標準器の測定値を用いて再計算された誤差係数とに基づいて測定値を補正するネットワークアナライザである。
また、本第五の発明は、本第四の発明のネットワークアナライザにおいて、前記再計算に必要な測定値のうち、前記校正後に得られた測定値以外の測定値が、その測定値に対応する理論値と前記校正により得られた誤差係数とを用いて再現されることを特徴とするものである。
さらに、本第六の発明は、本第四の発明または本第五の発明のネットワークアナライザにおいて、前記再計算により得られた誤差係数の値が前記校正により得られた誤差係数に上書きされた場合に、前記上書きされた誤差係数に基づいて測定値を補正することを特徴とするものである。
本発明によれば、校正時の測定値を保持するためメモリが不要となる。また、本発明によれば、校正完了後の再校正にあたり、所望の標準器の測定値だけを再取得すればよくなり、標準器の着脱作業および測定作業の全てを最初からやり直す必要がなくなる。さらに、本発明によれば、異なる2以上の校正キットに属する標準器を用いて校正することが容易になる。例えば、ネットワークアナライザを電子校正キットで校正した後に、他の校正キットのスルー標準器を用いて同ネットワークアナライザを再校正することができる。
本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら、以下に説明する。本発明の実施形態は、ネットワークアナライザ10である。まず始めにネットワークアナライザ10の構成について説明し、その次にネットワークアナライザ10の再校正方法について説明する。ここで、図1を参照する。図1は、ネットワークアナライザ10の概略構成を示すブロック図である。
ネットワークアナライザ10は、図示しない被測定物を接続するための測定ポート1,2,3および4と、測定部200と、プロセッサ300と、記憶部400と、表示部500と、入出力インタフェース600とを備える。
測定部200は、測定ポート1,2,3および4に接続されている。測定部200は、信号源210と、スイッチ220を有する。信号源210は、図示しない被測定物に印加するための測定信号(刺激信号)を発生する装置である。スイッチ220は、測定ポート1,2,3および4のいずれか1つを選択し、選択した測定ポートを信号源210の出力端に電気的に接続する装置である。なお、スイッチ220において選択されなかった測定ポートは、反射防止のために終端される。また、測定部200は、方向性結合器231,232,233,234,241,242,243および244と、リファレンス・レシーバ251,252,253,254,261,262,263および264を備える。以降、リファレンス・レシーバを単にレシーバと称する。
方向性結合器231は、スイッチ220と測定ポート1との間に配置され、測定ポート1からスイッチ220へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ251は、方向性結合器231に接続され、測定ポート1における入力信号電力を測定する装置である。方向性結合器241は、スイッチ220と測定ポート1との間に配置され、スイッチ220から測定ポート1へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ261は、方向性結合器241に接続され、測定ポート1における出力信号電力を測定する装置である。なお、測定ポートにおける入力信号とは、当該測定ポートにおいて、ネットワークアナライザ10の外部からネットワークアナライザ10へ入力される信号である。また、測定ポートにおける出力信号とは、当該測定ポートにおいて、ネットワークアナライザ10からネットワークアナライザ10の外部へ出力される信号である。
方向性結合器232は、スイッチ220と測定ポート2との間に配置され、測定ポート2からスイッチ220へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ252は、方向性結合器232に接続され、測定ポート2における入力信号電力を測定する装置である。方向性結合器242は、スイッチ220と測定ポート2との間に配置され、スイッチ220から測定ポート2へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ262は、方向性結合器242に接続され、測定ポート2における出力信号電力を測定する装置である。
方向性結合器233は、スイッチ220と測定ポート3との間に配置され、測定ポート3からスイッチ220へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ253は、方向性結合器233に接続され、測定ポート3における入力信号電力を測定する装置である。方向性結合器243は、スイッチ220と測定ポート3との間に配置され、スイッチ220から測定ポート3へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ263は、方向性結合器243に接続され、測定ポート3における出力信号電力を測定する装置である。
方向性結合器234は、スイッチ220と測定ポート4との間に配置され、測定ポート4からスイッチ220へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ254は、方向性結合器234に接続され、測定ポート4における入出力信号電力を測定する装置である。方向性結合器244は、スイッチ220と測定ポート4との間に配置され、スイッチ220から測定ポート4へ向かう信号の一部を取り出す装置である。レシーバ264は、方向性結合器244に接続され、測定ポート4における出力信号電力を測定する装置である。
プロセッサ300は、プログラムを実行することにより、ネットワークアナライザ10の各構成要素を制御し、また、各種演算処理を行う装置である。プロセッサ300は、例えば、CPU、DSP、RISC、または、それらのいずれかをコアとして含むASICやFPGAなどで構成される。記憶部400は、プログラムコードやデータを格納するための装置である。記憶部400は、例えば、DRAMのような半導体メモリ、ハードディスクドライブなどで構成される。表示部500は、図示しない表示画面を有し、該表示画面を通じて、ネットワークアナライザ10の操作者に、測定結果や設定情報などの各種情報を提供する装置である。入出力インタフェース600は、ネットワークアナライザ10とネットワークアナライザ10の外部との間のデータのやりとりを仲介する装置である。入出力インタフェース600は、例えば、キーボード、マウス、バーニャノブ、ボタン、USBインタフェース、LANインタフェース、PCMCIAインタフェースであり、これらの他に、フロプティカルディスクドライブ、CD/DVDドライブなどのリムーバブルメディアドライブも含みうる。以上が、ネットワークアナライザ10の構成についての説明である。
次に、ネットワークアナライザ10における再校正の手順について説明する。本実施形態では、ネットワークアナライザ10をフル4ポート校正した後、さらにネットワークアナライザ10を部分的に再校正する手順について説明する。
まず、再校正の前提条件として、何らかの校正が少なくとも一度実施されている。本実施形態では、再校正前にフル4ポート校正されているので、方向性誤差係数Ed、アイソレーション誤差係数Ex、ソース・マッチ誤差係数Es、ロード・マッチ誤差係数El、反射トラッキング誤差係数Er、伝送トラッキング誤差係数Etが求められている。言うまでもないが、これらの誤差係数は、各標準器のSパラメータ測定値から計算により求められる。なお、これらの誤差係数は、測定値を補正するための係数として用いられ、単に誤差、または、誤差項、校正係数もしくは補正係数と称されることもある。さて、方向性誤差係数Ed、ソース・マッチ誤差係数Es、および、反射トラッキング誤差係数Erは、スティミュラス・ポート毎に存在する。また、アイソレーション誤差係数Ex、ロード・マッチ誤差係数El、伝送トラッキング誤差係数Etは、スティミュラス・ポートとレスポンス・ポートとの組み合わせ毎に存在する。つまり、全部で48種類の誤差係数が存在する。なお、スティミュラス・ポートは、測定信号が出力される測定ポートである。また、レスポンス・ポートは、測定信号を受信する測定ポートである。誤差係数は、測定周波数点ごとに求められ、誤差係数の種類ごとに数値配列として記憶部400に格納されている。誤差係数を求めるために記憶部400内に格納されていたSパラメータ測定値は、校正完了時に全て破棄されており、残存していない。
以上のような状態にあるネットワークアナライザ10を再校正する手順について、図1および図2を参照しながら、以下に説明する。図2は、フル4ポート校正の再校正の手順を示すフローチャートである。以下の各工程は、プロセッサ300自身が処理することにより、または、プロセッサ300の制御によりネットワークアナライザ10内の構成要素が単独もしくは共同で処理することにより、実施されるものである。なお、プロセッサ300は、記憶部400に格納されるプログラムを実行することにより、上記の処理または制御を行う。
まず、ステップS10において、所望の標準器に関する所望のSパラメータを測定する。測定対象のSパラメータは、特開平8−62316号公報に記載の技術などにより測定が省略されたSパラメータ、または、再校正が必要と予想される誤差係数に関するSパラメータなどである。これら測定対象のSパラメータは、例えば、表示部500で示される測定結果などに基づいて、ネットワークアナライザ10の操作者により決定される。その場合、ネットワークアナライザ10の操作者は、入出力インタフェース600を通じて、測定対象のSパラメータを指定または選択する。Sパラメータは、測定部200により測定周波数点毎に測定され、得られた測定結果は数値配列の形式で記憶部400に格納される。
次に、ステップS20において、再計算すべき誤差係数の種類を特定する。再計算すべき誤差係数の種類の特定は、表1を参照することにより行われる。表1は、後述の式1〜式6に基づいて作成されたものであり、表形式のデータとして記憶部400に格納されている。なお、当業者であれば、表形式のデータを参照する代わりに、プログラム中の条件判断命令を用いて同様の処理を実現することも容易であろう。
Figure 2007285890
表1に記されているSパラメータや誤差係数は、フル4ポート校正において周知のものであるが、念のため、それらを以下に簡単に説明する。Sパラメータの下付文字のうち右側の数字は、スティミュラス・ポートの番号を示している。また、Sパラメータの下付文字のうち左側の数字は、レスポンス・ポートの番号を示している。誤差係数Ed,Es,Erは、測定ポートiに関する誤差係数である。また、誤差係数Exji,Elji,Etjiは、測定ポートiと測定ポートjとの対に関する誤差係数である。なお、測定ポートの番号iは、スティミュラス・ポートの番号である。また、測定ポートの番号jは、レスポンス・ポートの番号である。なお、誤差係数Ed,Es,Erについてのレスポンス・ポートの番号は、スティミュラス・ポートの番号と同じである。
さて、表1は、測定ポートに接続される標準器の種類と測定するSパラメータの種類との組み合わせと、誤差係数との関係を示している。以下に、表1の見方を例示する。例えば、表1によれば、測定ポート1にオープン標準器が接続されている状態でS11を測定する時、その測定結果であるS11Moが、誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41に影響を及ぼすことが分かる。逆に言えば、それらの誤差係数を求める際に、それぞれ、S11Moが利用されているということである。従って、測定ポート1にオープン標準器が接続されている状態でS11を測定すると、誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41が再計算の対象となる。なお、反射測定において、オープン標準器、ショート標準器またはロード標準器が接続される測定ポートの番号は、Sパラメータの下付数字で特定されるので、表1中では明示されていない。
また、表1によれば、測定ポート1にスルー標準器が接続されている状態でS11を測定すると、誤差係数El21,El31,El41のいずれかが再計算の対象となる。誤差係数El21,El31,El41のいずれであるかは、スルー標準器が接続される測定ポートの対により決定される。測定ポートの対は、表1中のスルー標準器の列に記されている。例えば、スルー標準器が測定ポート1と測定ポート4との間に接続されている状態でS11を測定すると、誤差係数El41が再計算の対象となる。
さらに、表1によれば、測定ポート1と測定ポート2との間にスルー標準器が接続されている状態でS21を測定すると、誤差係数Et21が再計算の対象となる。なお、スルー標準器が接続される測定ポートの番号は、Sパラメータの下付数字で特定されるので、表1中では明示されていない。
またさらに、表1によれば、校正対象の全測定ポートにアイソレーション標準器が接続されている状態でS23を測定すると、誤差係数Ex23およびEt23が再計算の対象となる。なお、アイソレーション標準器は、校正対象の全測定ポートを個別に無反射終端する標準器であって、実際には、校正対象の全測定ポートのそれぞれに同時に接続されるロード標準器で代用される。なお、表1中の「アイソレーション測定」は、アイソレーション標準器が接続されている状態における伝送測定である。
次に、ステップS30において、ステップS20で特定された種類の誤差係数を再計算する。各誤差係数の計算は、以下の式1〜式6を用いて、プロセッサ300により行われる。ここで、測定ポートiにおけるショート標準器、オープン標準器、および、ロード標準器の測定値を、SiiMs,SiiMo,および,SiiMlとする。また、それらの測定値に対応する理論値を、SiiAs,SiiAo,SiiAlとする。理論値は、校正キットの定義値または理想標準器の特性値から得られるものである。例えば、理想スルー標準器の場合、SiiAt=SjjAt=0、SijAt=SjiAt=1、である。なお、Sパラメータ記号中の”M”および”A”に後続するアルファベットは、測定ポートiに接続される標準器の種類を示している。具体的には、”s”がショート標準器を、”o”がオープン標準器を、”l”がロード標準器を、それぞれ意味する。また、測定ポートiから測定ポートjへのクロストークを、Sjiisol、とする。さらに、測定ポートiと測定ポートjとの間に接続されたスルー標準器の測定値を、SiiMt,SijMt,SjiMt,SjjMt、とする。また、それらの測定値に対応する理論値を、SiiAt、SijAt、SjiAt、SjjAt、とする。i,jは、既に述べたとおり、レスポンス・ポートおよびスティミュラス・ポートの番号である。
Figure 2007285890
Figure 2007285890
Figure 2007285890
ただし、
Figure 2007285890
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Figure 2007285890
Figure 2007285890
なお、式6に式5を代入すると、Etの計算式からElを取り除くことができる。つまり、Etの計算においてElが不要となる。
ところで、ステップ10において、測定ポート1にオープン標準器を接続し、S11のみを再測定した場合、ステップ20では、誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41を再計算することになる。誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41の計算は、表2によれば、オープン標準器以外の標準器の測定値も必要とする。しかし、オープン標準器以外の標準器は、測定されていない。なお、表2は、表1と同様に、式1〜式6に基づいて作成されたものである。
Figure 2007285890
本ステップ(S30)では、誤差係数の計算に必要な標準器の測定値のうち、ステップ10で測定されていない値を、標準器の理論値と事前の校正で得られている誤差係数とに基づいて、計算により再現する。誤差係数は理論値と測定値とについての関数であるから、測定値を理論値と誤差係数とについての逆関数として表現できる。本ステップでは、プロセッサ300が当該逆関数を用いて理論値および誤差係数から仮想の測定値を求める。以降、計算により求められる仮想の測定値には、実測により得られた値と区別するために、末尾に”v”を付す。また、事前の校正により既に得られている誤差係数の値には、再計算により新たに得られる誤差係数の値と区別するために、末尾に”old”を付す。一方、新たな計算により得られる誤差係数の値には、末尾に”new”を付す。
まず、式5および式6のそれぞれを変形すると、スルー標準器の仮想測定値SiiMtvおよびSjiMtvを求める式7および式8を得ることができる。
Figure 2007285890
Figure 2007285890
次に、オープン標準器、ショート標準器およびロード標準器の仮想測定値SiiMov,SiiMsvおよびSiiMlvを求める。これらの仮想測定値を求める式は、図3に示される1ポート誤差モデルのシグナル・フローから導出することができる。
Figure 2007285890
Figure 2007285890
Figure 2007285890
前述の例を引用すると、ステップ10において、測定ポート1にオープン標準器を接続し、S11のみを再測定した場合、ステップ20では、誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41を再計算することになる。従来技術によれば、これらの誤差係数の計算には、オープン標準器、ショート標準器、ロード標準器およびスルー標準器の実測値が必要とされた。しかし、式10および式11を用いることにより、オープン標準器の測定値S11のみから、新たな誤差係数Esnew,Ednew,Ernewを算出することができる。また、式7および式8を用いることにより、新たな誤差係数Esnew,Ednew,Ernewから、新たな誤差係数El21new,El31new,El41new,Et21new,Et31new,Et41newを算出することができる。
最後に、ステップS40において、誤差係数の上書きを行う。具体的には、測定値の補正のために記憶部400に格納されている誤差係数に、再計算により新たに得られた誤差係数値を上書きする。例えば、測定ポート1にオープン標準器を接続し、S11のみを再測定した場合、新たな誤差係数値Esnew,Ednew,Ernew,El21new,El31new,El41new,Et21new,Et31new,Et41newが得られる。これらの新たな値を、記憶部400に格納されている誤差係数Es,Ed,Er,El21,El31,El41,Et21,Et31,Et41に上書きする。一方、上書きされない誤差係数は、校正時に得られた値のままである(図4)。
そして、図2のフローチャートには示していないが、ステップ40実施後、ネットワークアナライザ10は、補正機能が有効である間、上書き後の誤差係数(図4)を用いて測定値を補正する。
さて、本実施形態において、プロセッサ300が実施しているステップS20〜S40の処理は、ネットワークアナライザ10に外部接続されるコンピュータが実施するようにしてもよい。
また、本実施形態において、校正時と再校正時のそれぞれにおいて使用される標準器が、同じ物であるか異なる物であるか詳述していない。それは、本発明が標準器の同一性を要求しないからである。従って、例えば、ネットワークアナライザを電子校正キットでフルNポート校正した後に、他の校正キットのスルー標準器を用いて同ネットワークアナライザを再校正することができる。
さらに、本実施形態において、4ポートのネットワークアナライザにおけるフル4ポート校正の再校正方法について説明した。しかし、本発明は、1以上のポートを有するネットワークアナライザの再校正に適用可能である。また、他の校正方法に対しても適用可能である。すなわち、あらゆる校正方法において、表1のような、計算すべき誤差係数を特定するための表が作成でき、測定した回路パラメータに関連する誤差係数のみを計算するだけで再校正を行うことができる。また、既に得られている誤差係数と標準器の理論値とから仮想測定値を求めることができる。
本発明の第一の実施形態であるネットワークアナライザ10の構成を示すブロック図である。 ネットワークアナライザ10における再校正の手順を示すフローチャートである。 1ポート誤差モデルのシグナル・フローである。 記憶部400に格納される誤差係数値を示す図である。
符号の説明
1,2,3,4 測定ポート
200 測定部
210 信号源
220 スイッチ
231,232,233,234 方向性結合器
241,242,243,244 方向性結合器
251,252,253,254 リファレンス・レシーバ
261,262,263,264 リファレンス・レシーバ
400 記憶部
500 表示部
600 入出力インタフェース

Claims (6)

  1. 校正されたネットワークアナライザを再校正する方法であって、
    標準器の回路パラメータを測定するステップと、
    前記測定された回路パラメータに関連する誤差係数の種類を特定するステップと、
    前記測定された回路パラメータを用いて、前記特定された種類の誤差係数を計算するステップと、
    を含む再校正方法。
  2. 前記計算に必要な回路パラメータのうち、前記測定された回路パラメータ以外の回路パラメータを、前記回路パラメータの理論値と前記校正により得られた誤差係数とを用いて再現するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の再校正方法。
  3. 前記計算により得られた誤差係数の値を、前記校正により得られた誤差係数に上書きするステップを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の再校正方法。
  4. 校正により得られた誤差係数と、前記校正により得られた誤差係数のうち前記校正の後に得られた標準器の測定値を用いて再計算された誤差係数とに基づいて測定値を補正するネットワークアナライザ。
  5. 前記再計算に必要な測定値のうち、前記校正後に得られた測定値以外の測定値が、その測定値に対応する理論値と前記校正により得られた誤差係数とを用いて再現されることを特徴とする請求項4に記載のネットワークアナライザ。
  6. 前記再計算により得られた誤差係数の値が前記校正により得られた誤差係数に上書きされた場合に、前記上書きされた誤差係数に基づいて測定値を補正することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のネットワークアナライザ。
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