JP2007275713A - 液体中の金属の酸化除去方法 - Google Patents

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典久 土岐
Kenji Takeda
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Abstract

【課題】 2価鉄などの金属イオンを含む液体中に効率的に酸素を溶存させ、短時間で金属イオンを酸化させて、効率的に分離する方法を提供する。
【解決手段】 剪断場において気泡を細分化する微小バブル発生装置を用いることにより、空気などの酸素を含む気体を液体中において気泡径100μm以下に微小バブル化させ、微小バルブから液体中に溶解した溶存酸素により液体中の金属を酸化させる。特に2価の鉄イオンを含む液体に、酸素を含む気体を微小バルブ化させて吹き込むと共に、その液体のpHを4〜10に調整することにより、液体中の2価の鉄イオンを3価に酸化させ、水酸化第2鉄として沈澱させることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液体中に含まれる鉄などの金属を、酸素により酸化して分離除去する方法に関する。
製鉄所や金属精練工場などから発生する排水中には、主に2価の鉄などの金属が含まれている。例えば、鋼板表面のスケール、汚れ、酸化膜、錆などを除去するために、硫酸または塩酸による鋼板の洗浄が行なわれているが、その排水中には多量の2価の鉄イオンが含まれている。また、鋼板や金属板にはメッキやエッチングなどの表面処理が施されることがあるが、これらの排水には2価の鉄、亜鉛、錫、クロムなどの金属イオンが含まれている。
このような排水は、2価の鉄などの金属を多量に含むうえ、pHが2〜3程度と低いため、そのまま公共用水域に放流することはできない。このような排水を公共用水域に放流するためには、含有されている2価の鉄などの金属を分離除去する必要がある。
従来から、水溶液中の2価の鉄イオンを分離除去する方法として、2価の鉄イオンを3価まで空気酸化し、水酸化第2鉄として除去する方法が知られている。ところが、2価鉄から3価鉄への酸化速度はpHが4以下では極めて遅く、ほとんど反応が進行しない。そのため、通常のpHが2〜3程度と低い排水から、曝気によって2価鉄を3価鉄まで酸化して水酸化第2鉄として回収する方法は、処理速度が極めて遅く、実用化はほとんど不可能である。
そこで、通常は、2価の鉄を含む排水に、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ剤を添加してpHを9〜9.5に維持し、大量の空気を吹き込むことによって、2価鉄を3価鉄まで空気酸化した後、水酸化第2鉄として除去している。なお、水酸化第2鉄は、pHを4以上にすれば溶解度が5.6mg/l以下と小さく、また沈降性も良好なため、容易に沈澱として分離することができる。しかし、水酸化第1鉄は、pHを9以上にしなければ溶解度が5.6mg/l以下とならず、また沈降速度も遅いため、鉄の分離にはほとんど用いられない。
上記のごとく2価の鉄を含む排水に対し、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ剤を添加してpHを9〜9.5に維持し、空気を吹き込んで2価鉄を3価鉄まで空気酸化した後、水酸化第2鉄として鉄を回収する方法は、水酸化第2鉄の溶解度が5.6mg/l以下と小さく且つ沈降性も良好なため、鉄などが処理水中に流出することが少ないという利点がある。しかし、従来の空気の吹き込みによる方法では、2価鉄を3価鉄まで酸化するために非常に長い時間を必要とするため、処理効率が極めて悪かった。
また、排水に含まれている2価鉄を3価鉄まで酸化する方法として、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素などの酸化剤を用いて酸化し、水酸化第2鉄として処理する方法も広く知られている。しかしながら、2価鉄を次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素などの酸化剤で酸化する方法は、酸化剤の添加量の制御が難しく、処理された排水の水質が安定しないという問題がある。また、2価鉄の濃度が高い場合には、酸化剤の処理コストが極めて高くなるという欠点がある。
更に、2価鉄を含む排水の処理方法として、特開平8−173990号公報には、処理槽の中央部に設けた曝気部で鉄酸化細菌により2価鉄を3価鉄に酸化した後、処理槽の周辺部に設けた沈澱部で処理水と鉄酸化菌を沈降分離する方法が記載されている。しかし、この方法は、生物学的な方法であるため排水処理に長い時間を要し、処理効率が低いという欠点があった。また、曝気部における空気の吹き込みにも、通常のボールフィルターを用いているに過ぎない。
特開平8−173990
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、2価鉄などの金属イオンを含む液体中に効率的に酸素を溶存させ、短時間で金属イオンを酸化させて効率的に分離除去する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明が提供する液体中に含まれる金属を酸化分離する方法は、酸素を含む気体を液体中において気泡径100μm以下に微小バブル化させ、微小バルブから液体中に溶解した溶存酸素により液体中の金属を酸化させることを特徴とする。
また、上記本発明による金属の酸化除去方法は、剪断場において気泡を細分化する微小バブル発生装置を用いることにより、酸素を含む気体を液体中において微小バブル化させることを特徴とするものである。
上記本発明による金属の酸化除去方法においては、前記液体中に含まれる金属が2価の鉄イオンであることが望ましい。その場合、前記酸素を含む気体を液体中において微小バルブ化させると共に、その液体のpHを4〜10に調整することにより、液体中の2価の鉄イオンを3価に酸化させ、水酸化第2鉄として沈澱させることができる。
本発明によれば、酸素を含む気体を微小バブル化することで気体中の酸素を溶存酸素として液体中に溶解させ、その溶存酸素によって液体中の金属イオンを効率よく酸化させることが可能である。従って、空気などの酸素を含む気体を従来に比べて少量使用するだけで、短時間で液体中の金属イオンを酸化させ、特に2価鉄を3価鉄まで酸化させて、沈澱として容易に分離除去することができる。
本発明で用いる微小バブルは、バブル発生時の気泡径が100μm以下と非常に小さい微細な気泡からなる。このような微小バブルは、剪断場において気泡を細分化する方法、例えば、気液2相の流体を高速旋回させることで起こる遠向心分離を応用することにより発生させることができる。
更に具体的には、例えば、(有)バブルタンクから市販されている微小バブル発生装置(商品名:ミクロバブル発生器)を使用して、まず、装置の中央部とその周辺部にそれぞれ旋回する気体部と液体部を形成させ、次に、その旋回気体部を装置出口付近の圧力制御によって切断・粉砕することによって、気泡径が100μm以下の微小バブルを発生させることが可能である。
使用する酸素を含む気体としては、純酸素、酸素富化空気、通常の空気などを使用することができ、当然オゾンでも同様の効果が期待できる。これらの酸素を含む気体は、気泡径100μm以下の微小バブルとして液体中に放出させることにより、効率よく液体に溶解して溶存酸素となる。このような微小バブルの挙動の詳細は解明されていないが、圧壊挙動と比表面積の大きさにより、効率よく液体中に溶解して溶存酸素となるものと考えられる。
上記微小バルブが液体中に溶解した溶存酸素は、通常のパイプやボールフィルターを用いて空気や酸素を吹き込んだ場合に比べて、はるかに効率よく液体中の金属イオンを酸化すること、例えば、2価の鉄イオン(Fe2+)を3価の鉄イオン(Fe3+)に酸化することができる。特に液体のpHを4〜10に調整することにより、液体中の2価の鉄イオンを容易に3価に酸化させ、水酸化第2鉄として沈澱させることができる。
[従来例]
溶存酸素濃度7mg/lの水20リットルに、内径10mmの直管から空気を流量1リットル/分で吹き込むことにより、水中の溶存酸素濃度が7mg/lから8mg/lに上昇するまでの時間を測定したところ、30分を要した。また、このときの酸素効率は0.23%であった。
また、ボールフィルター(規格503G、気孔径100〜120μm)を用いて空気を吹き込んだ以外は上記と同様にして、水中の溶存酸素濃度が7mg/lから8mg/lに上昇するまでの時間を測定したところ、9分を要した。また、このときの酸素効率は0.78%であった。
[実施例1]
溶存酸素濃度が7mg/lの水20リットルに、(有)バブルタンク製の微小バブル発生装置(商品名:ミクロバブル発生器、型式BT−50F)を用いて、空気を流量0.1リットル/分で吹き込んで、循環させた水中に平均気泡径40〜60μmの微小バブルを発生させた。その際、循環させた水中の溶存酸素濃度が7mg/lから8mg/lに上昇するまでの時間を測定した結果、4分間を要した。また、このときの酸素効率は17.5%であった。
この実施例1の実験結果から、微小バブルで吹き込みを行った場合、上記従来例における直管あるいはボールフィルターで吹き込みを行った場合に比較して、空気の流量が1/10であるにもかかわらず、半分以下の時間で水中の溶存酸素量を1mg/l高めることが可能であった。
[実施例2]
硫酸鉄(II)を水に溶解して、Fe濃度1g/l、初期pH2.0及びORP400mV(Ag/AgCl電極)の水溶液20リットルを調整した。このFe含有水溶液のpHを200g/lの消石灰スラリーを用いて4.5に調整した後、その水溶液を循環させながら、上記実施例1と同じ微小バブル発生装置を用いて、流量0.1リットル/分で空気を平均粒径30〜70μmの微小バブルとして吹き込むことにより、2価鉄を3価鉄に酸化させた。
その結果、微小バブルの吹き込み開始から、4時間でORPが125mV及びFe濃度が30mg/lとなり、5時間でORPが162mV及びFe濃度が10mg/l以下となり、6時間でORPが250mVを越えて上昇し、Fe濃度は10mg/l未満となった。このときの酸素効率は、水酸化第2鉄として沈澱したFe除去量と吹き込み酸素量から算出すると、30.77%であった。
[比較例]
上記実施例1と同様に、Fe濃度1g/l、初期pH2.0及びORP400mV(Ag/AgCl電極)の水溶液20リットルを調整した。このFe含有水溶液のpHを200g/lの消石灰スラリーを用いて4.5に調整した後、その水溶液を循環させながら、ボールフィルター(規格503G、気孔径100〜120μm)を用いて、流量0.9リットル/分で空気を吹き込むことにより、2価鉄を3価鉄に酸化させた。
その結果、空気の吹き込み開始から、4時間でORPが97mV及びFe濃度が40mg/lとなり、5時間でORPが147mV及びFe濃度が10mg/lとなり、6時間でORPが178mV及びFe濃度が10mg/l以下となった。7時間を越えたあたりで、ORPは220mV付近まで上昇して止まり、Fe濃度は10mg/l未満となった。このときの酸素効率は、Fe除去量と吹き込み酸素量から算出すると、3.1%であった。
上記の実施例2と比較例の実験結果から、本発明により空気の微小バブルを吹き込んだ場合、従来のボールフィルターで空気を吹き込んだ場合に比べて、空気の流量が1/9であるにもかかわらず、短い時間で且つ約10倍高い酸素効率で液体中の鉄を除去することができた。これは、微小バルブの気泡径がボールフィルターのバブルに比べて格段に小さいため比表面積が大きく、酸化反応の反応性が向上したためと思われる。また、空気を微小バブルとして吹き込みを行った場合に、ボールフィルターの場合よりもORPが高く上昇したのは、酸素活量が高いためであると思われる。


Claims (4)

  1. 液体中に含まれる金属を酸化除去する方法であって、酸素を含む気体を液体中において気泡径100μm以下に微小バブル化させ、微小バルブから液体中に溶解した溶存酸素により液体中の金属を酸化させることを特徴とする金属の酸化除去方法。
  2. 剪断場において気泡を細分化する微小バブル発生装置により、酸素を含む気体を液体中において微小バブル化させることを特徴とする、請求項1に記載の金属の酸化除去方法。
  3. 前記液体中に含まれる金属が2価の鉄イオンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属の酸化除去方法。
  4. 前記酸素を含む気体を液体中において微小バルブ化させると共に、その液体のpHを4〜10に調整することにより、液体中の2価の鉄イオンを3価に酸化させ、水酸化第2鉄として沈澱させることを特徴とする、請求項3に記載の金属の酸化除去方法。


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