JP2007269966A - セルロースエステル組成物および繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】 セルロースエステル組成物から得られる成形品の染色性を維持しつつ、耐摩耗性、熱安定性の改善されたセルロースエステル組成物および繊維を提供する。
【解決手段】 ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上の無機粒子を0.05〜20重量%含有するセルロースエステル組成物。
【選択図】なし
【解決手段】 ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上の無機粒子を0.05〜20重量%含有するセルロースエステル組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、セルロースエステル組成物およびそれからなる繊維に関する。より詳しくは、セルロースエステルを主成分とし特定無機粒子を含んでなる耐摩耗性に優れたセルロースエステル組成物およびそれから得られる繊維に関する。
セルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料として、また自然環境下にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。
セルロースエステルフィルムは透明性、屈折率、難燃性に優れており偏光フィルムの保護フィルムとして用いられている。また、セルロースエステル系繊維は、良好な光沢や吸放湿性を有しており、セルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維などが用いられている。しかしながら、これらセルロースエステル系成形物は優れた性能を有する半面、その表面の硬度や耐摩耗性が不足しているために、接触、衝撃、引っ掻きなどの作用によって表面が損傷しやすいという問題点がある。、セルロースエステル組成物繊維に特定粒子を添加することによって工程通過性を改良することは可能であるが、繊維化後の耐摩耗性の改良には至っていないのが現状である(特許文献1)。
セルロースアセテートなどの耐摩耗性を改良する目的で、例えば三酢酸セルロースなどのセルロースエステルフィルムの表面にアクリレートやエポキシ基含有化合物とカチオン重合開始剤を含む紫外線硬化性組成物を塗布して塗膜を形成するコーティング技術が開示されている。しかしながらセルロースエステル自体の耐摩耗性は改良されないこと、塗布工程、紫外線硬化の工程が必要となり工程数が増えること、フィルムなどの平面には塗布が容易だが繊維などの表面積の大きな物への加工が難しいなどの問題があった(特許文献2、3)。
他方、ポリエステル分野では耐摩耗性を向上するためにモース硬度の高い無機粒子を添加する手法が提案されている。ポリエステルは強度が高く優れた物性を有し産業資材用としては好適に用いられるが、衣料用途などでは染色性や吸放湿性が劣っている問題を有している(特許文献4)。
染色性、吸放湿性、耐摩耗性の特性に優れたセルロースエステル繊維はこれまでに存在していなかった。
特開2004−196980号公報(第1頁)
特開平06−123807号公報(第2頁)
特開平09−016930号公報(第1頁)
特開平04−065519号公報(第2頁)
本発明の課題は上記の問題点を克服し、バイオマス系材料であるセルロースエステルを主成分とするセルロースエステル組成物から得られる成形品の染色性を維持しつつ、耐摩耗性、熱安定性の改善されたセルロースエステル組成物および繊維を提供することにある。
上述した本発明の課題は、ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上の無機粒子を0.05〜20重量%含有するセルロースエステル組成物によって解決が可能である。
また、繊維の強度が0.5〜2cN/dtex、伸度が2〜50%、U%が2%以下であることも好適に採用できる。
本発明により、成形品の耐摩耗性、熱安定の低下を抑制することが可能となる。さらには成形品の染色性、工程通過時のガイド等による摩耗も抑制されるため品位良好な繊維を提供することが可能となる。得られる組成物および繊維は、写真用、光学用フィルム、農業用資材、林業用資材、水産資材、土木資材、衛生資材、日用品、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして好適に用いることができる。
本発明におけるセルロースエステルは、セルロースの水酸基がエステル結合によって封鎖されたものをいい、具体的には、セルロースエステルのアシル基がアセチル基で置換された酢化度56.3%〜62.5%のセルローストリアセテート、酢化度48.8%〜56.2%のセルロースジアセテート、セルロースエステルのアシル基の少なくとも一部が、炭素数3以上のもので置換されたセルロースエステルが挙げられる。
本発明のセルロースエステルは、好ましくはアシル基が炭素数3以上のものを少なくとも一部含んでなるセルロースエステルであり、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースプロピオネートブチレートなどのセルロース混合エステルや、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースエステルが挙げられる。より好ましくはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースプロピオネートブチレートなどのセルロース混合エステルである。炭素数3のアシル基であるプロピオニル基を有するセルロースエステルを用いた場合には、耐摩耗性が良好となるばかりか熱流動性を有するために熱可塑性をも発現することが可能となるという大きな利点を有しているので特に好ましい。
本発明のセルロースエステル組成物は、ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上である無機粒子を0.05〜20重量%含んでいることが重要である。ゼータ電位をプラスチャージとすることでセルロースエステルと相互作用により添加される無機粒子の脱落抑制、成形品の熱安定性に効果を発現する。無機粒子のゼータ電位は、好ましくは30以上であり、より好ましくは50以上である。チャージとしては大きい方が良いが現状の上限は100である。本発明におけるゼータ電位は、純水中に無機粒子を添加して稀薄スラリーとし、通常の電気泳動法によって測定した値であり、具体的には無機粒子を純水中に分散した後、大塚電子(株)製ELS−800を用いて測定することができる。無機粒子の濃度はゼータ電位に直接関係ないが無機粒子を純水中に分散させる場合、通常、無機粒子を純水に対して1〜100ppmの濃度とするのが好ましい。
モース硬度の高い無機粒子の添加によってセルロースエステル組成物および成形品の耐摩耗性改善効果が発現する。モース硬度は高いほど耐摩耗性に効果があるが現状の上限は10である。無機粒子のモース硬度は、好ましくは7.5以上であり、より好ましくは8以上である。
ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上である無機粒子としては、アルミナ、ジルコニア、スピネルなどが挙げられる。中でもアルミナ、ジルコニアは得られる組成物の着色を防止でき好ましい。より好ましい例はアルミナである。無機粒子のゼータ電位とモース硬度は本発明の範囲の場合に粒子の脱落、熱安定性、耐摩耗性を満足できるものとなる。ゼータ電位がマイナスであったり、モース硬度が低い場合、粒子が脱落したり、耐摩耗性の効果が発現しない。ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上である無機粒子のセルロースエステル組成物中の含有量は0.05〜20重量%であることが好ましい。無機粒子の含有量を0.05重量%以上とすることによって耐摩耗性、熱安定性向上効果が発現する。より好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.2重量%以上である。また、組成物の着色、繊維化時の糸切れなどの点から20重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmであることが好ましい。無機粒子の平均粒子径を0.005μm以上とすることで成形時の摩擦低減、表面品位の良好な成形品となる。より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.2μm以上である。また、成形品の表面品位、工程通過性、発色性から5μm以下であることが好ましい。より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは、1.0μm以下である。
本発明で用いられるセルロースエステル組成物は、使用するセルロースエステルに応じて可塑剤を例えば、5〜30重量%含有することができる。5重量%以上の可塑剤を含有することで、組成物の熱流動性が良好となり、溶融成形を行った場合の生産性を向上することが可能となる。また、30重量%以下の可塑剤量とすることで、成形品表面への可塑剤のブリードアウトを抑制することができ、室温での膠着などのトラブルを回避することができる。セルロースエステル組成物の可塑剤含有量は、溶融成形の生産性の観点から、8重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。また、ブリードアウトを抑制する観点からは、25重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。
可塑剤は、本発明のセルロースエステルに混和するものであれば用いることができる。例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、グリセリン混合エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類などを挙げることができる。
また高分子量の可塑剤として、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類などを挙げることができる。これらの高分子量可塑剤は共重合体であってもよいし、重合体の一部が修飾されているものであってもよい。
さらには水溶性の可塑剤として、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、一般式(1)で示されるポリエーテル類などを挙げることができる。ここで水溶性とは、20〜100℃の温度の水にその10重量%以上が溶解可能であることをいう。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1とR2は、H、アルキル基およびアシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数。)
上記の化学一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は、セルロースエステルとの相溶性が優れているため好適に採用することができる。具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などを挙げることができる。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1とR2は、H、アルキル基およびアシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数。)
上記の化学一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は、セルロースエステルとの相溶性が優れているため好適に採用することができる。具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などを挙げることができる。
ポリエーテル化合物の分子量としては、200〜1000であることでポリエーテル化合物の揮発が抑えられ、セルロースエステルとの相溶性も良好となるため好ましい。300〜800がより好ましい。なお、分子量は数平均分子量を示す。
本発明におけるセルロースエステル組成物は、必要に応じて、着色防止用の安定剤を含有することができる。着色防止剤は、ホスファイト化合物、ヒンダードフェノール化合物などを用いることができる。また、その他、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、抗菌剤、潤滑剤、艶消剤、生分解促進剤等の添加剤についても、これらを単独もしくは併用して含有することができる。可塑剤以外の添加剤の含有量については、セルロースエステル成形品の特性を損なわないため、組成物全体に対して0.5重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下であることがより好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルと、ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上である無機粒子あるいは各種添加剤との混合に際しては、エクストルーダー、ニーダー、ロールミルおよびバンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の通常使用されている公知の混合機を特に制限無く用いることができる。なお、混合する場合には混合を容易にするために粉砕機により予めセルロースエステルを50メッシュ以上に細かく粉砕しておいても良い。また、セルロースエステルの製造と同時に無機粒子を含むセルロースエステルを得ても良いし、混合機に投入する前にセルロースエステル、無機粒子を混合しても良い。
本発明のセルロースエステル組成物の製造方法としては、粒子分散性を高度に満足させるため、無機粒子と溶媒あるいは可塑剤をあらかじめ分散処理したスラリーとしてセルロースエステルに添加、混合することが好ましい。添加、混合する方法としては上記した混合機を用いセルロースエステルと無機粒子と溶媒あるいは可塑剤を個別に添加する方法、全てを混合して添加する方法などが挙げられる。溶媒、可塑剤への無機粒子の分散方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、サンドミル、ボールミル、高速撹拌型分散機、超音波分散機などを挙げることができ、中でもサンドミル、高速撹拌型分散機が短時間で均一に無機粒子を分散でき好ましい。製造方法としてはセルロースエステルへの熱履歴を抑制し、粒子分散性に優れる二軸混練機、ニーダーを用いることが好ましい。
本発明のセルロースエステル組成物からなる繊維は、乾式、湿式、溶融など主成分のセルロースエステル、組成に応じた方式で成形することができる。例えば溶融紡糸をする場合は、、公知の溶融紡糸機を用いて加熱溶融した後、口金から紡出し、紡出糸を回転ローラーによって引き取ることができる。この際、紡糸温度は180℃〜280℃の範囲が好ましく、より好ましくは230℃〜270℃の範囲であり、さらに好ましくは240〜260℃である。紡糸温度を180℃以上とすることにより、溶融粘度が低くなり溶融紡糸における曳糸性が向上する。また、紡糸温度を280℃以下にすることにより、組成物の熱劣化が抑制され、繊維の着色が少なくなる。
本発明のセルロースエステル組成物からなる繊維の強度は、0.5〜2cN/dtexであることが好ましい。強度を0.5cN/dtex以上とすることで、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがないので好ましい。また、2cN/dtex以下では伸度が低下せず、毛羽立ちを抑えられ糸切れが少ないため好ましい。良好な強度特性の観点から、強度は0.7cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましい。
本発明のセルロースエステル組成物からなる繊維の伸度は、2〜50%である。伸度が2%以上であることによって、製織や製編時などの高次加工工程における糸切れが少なくなるため好ましい。50%以下であることによって、低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどにより最終製品の染色欠点を生じることがないため好ましい。伸度は5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。また、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
本発明におけるセルロースエステル組成物からなる繊維の繊度変動値(U%)は2.0%以下である。繊度変動値(U%)は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、ツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めることができる。繊度変動値(U%)が2.0%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れていることを指し、織編物に加工する際、毛羽や糸切れが発生せず、また染色を行っても、部分的に強い染め斑、染め筋などの欠点が発生せず、高品位な織編物となる。繊度変動値(U%)は小さい程良いが、現状の下限は0.2%である。繊度変動率は、好ましくは0.2〜1.5%、より好ましくは0.2〜1.0%である。なお繊度変動値(U%)の測定条件に関しては、実施例にて詳細に説明する。
繊維断面形状に関しては特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形および中空などの異形断面糸でも良い。異形断面とすることによって光沢付与、吸水性付与などを図ることが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお各特性については、下記の方法で測定、評価を行った。
(1)セルロースエステルの平均置換度
セルロースエステルの平均置換度の算出方法については下記の通りである。
セルロースエステルの平均置換度の算出方法については下記の通りである。
80℃で8時間の乾燥したセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
(2)無機粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無機粒子粉末をエポキシ樹脂に分散し超薄切片法にて観察、50個の粒子を測定し、平均粒子径とした。
(3)溶融粘度保持率
キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製キャピログラフ1B、L=10mm、D=1.0mmのダイ使用)を用い、測定温度250℃にて、得られたポリマーをバレル内に5分または30分貯留し、剪断速度1000sec−1における粘度を求め下記式により溶融粘度保持率を求めた。80%以上を合格とした。
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
(2)無機粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無機粒子粉末をエポキシ樹脂に分散し超薄切片法にて観察、50個の粒子を測定し、平均粒子径とした。
(3)溶融粘度保持率
キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製キャピログラフ1B、L=10mm、D=1.0mmのダイ使用)を用い、測定温度250℃にて、得られたポリマーをバレル内に5分または30分貯留し、剪断速度1000sec−1における粘度を求め下記式により溶融粘度保持率を求めた。80%以上を合格とした。
{1−(5分貯留時の粘度−30分貯留時の粘度)/5分貯留時の粘度}×100
(4)引張強度および引張伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とし、破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
(5)繊度変動値(U%:ウースターノーマル%)
U%測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。
(4)引張強度および引張伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とし、破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
(5)繊度変動値(U%:ウースターノーマル%)
U%測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。
測定速度 :200m/分
測定時間 :2.5分
測定繊維長:500m
撚り :S撚り、12000/分
なお測定回数は5回であり、その平均値をU%とした。
(6)摩耗強さ
JIS L 1096(1999年)「一般織物試験法」A法「平面法」により算出した。30回以上を合格とした。
測定時間 :2.5分
測定繊維長:500m
撚り :S撚り、12000/分
なお測定回数は5回であり、その平均値をU%とした。
(6)摩耗強さ
JIS L 1096(1999年)「一般織物試験法」A法「平面法」により算出した。30回以上を合格とした。
(合成例1)
セルロース(日本製紙ケミカル(株)製溶解パルプ)1.0kgに、酢酸5.0kgとプロピオン酸1.0kgを加え、50℃で30分間攪拌した。混合物を20℃まで冷却した後、無水酢酸0.7kg、無水プロピオン酸4.3kgおよび硫酸を0.10kg加えてエステル化反応を行った。120分間攪拌を行った後、酢酸3.3kgと水1.7kgの混合溶液を60分間かけて添加し、反応を停止させた。続いて40℃で12時間攪拌を継続し、加水分解処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル(株)製溶解パルプ)1.0kgに、酢酸5.0kgとプロピオン酸1.0kgを加え、50℃で30分間攪拌した。混合物を20℃まで冷却した後、無水酢酸0.7kg、無水プロピオン酸4.3kgおよび硫酸を0.10kg加えてエステル化反応を行った。120分間攪拌を行った後、酢酸3.3kgと水1.7kgの混合溶液を60分間かけて添加し、反応を停止させた。続いて40℃で12時間攪拌を継続し、加水分解処理を行った。
その後、ドープに大過剰の水を添加して、セルロースアセテートプロピオネートを析出させた。析出した粉体は濾過した後、水洗、濾過を繰り返し、さらに0.02%の希硫酸中で50℃、1時間の処理を行い、水洗、濾過を行った。
得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度は0.2、プロピオニル置換度は2.4であった。
(合成例2)
セルロース(日本製紙ケミカル(株)製溶解パルプ)1.0kgに、酢酸4.0kgとプロピオン酸2.0kgを加え、50℃で30分混合した。混合物を20℃まで冷却した後、無水酢酸2.0kg、無水プロピオン酸3.0kg、および硫酸を0.10kg加えてエステル化反応を行った。120分間攪拌を行った後、酢酸3.3kgと水1.7kgの混合溶液を60分間かけて添加し、反応を停止させた。続いて40℃で12時間攪拌を継続し、加水分解処理を行った。
セルロース(日本製紙ケミカル(株)製溶解パルプ)1.0kgに、酢酸4.0kgとプロピオン酸2.0kgを加え、50℃で30分混合した。混合物を20℃まで冷却した後、無水酢酸2.0kg、無水プロピオン酸3.0kg、および硫酸を0.10kg加えてエステル化反応を行った。120分間攪拌を行った後、酢酸3.3kgと水1.7kgの混合溶液を60分間かけて添加し、反応を停止させた。続いて40℃で12時間攪拌を継続し、加水分解処理を行った。
その後、ドープに大過剰の水を添加して、セルロースアセテートプロピオネートを析出させた。析出した粉体は濾過した後、水洗、濾過を繰り返し、さらに0.02%の希硫酸中で50℃、1時間の処理を行い、水洗、濾過を行った。
得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基置換度は1.9、プロピオニル基置換度は0.7であった。
(合成例3)
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)50gに酢酸700gを加え50℃で30分間撹拌した。混合物を20℃まで冷却した後、900gの酢酸と0.9gの硫酸を加え撹拌した。これに180gの無水酢酸を加え、温度が40℃をこえないように水浴で冷却しながら60分撹拌した。反応終了後、酢酸水溶液をゆっくり添加後、室温で一晩撹拌をした。その後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートは80.1gであり、セルロースアセテートの置換度は2.5であった。
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)50gに酢酸700gを加え50℃で30分間撹拌した。混合物を20℃まで冷却した後、900gの酢酸と0.9gの硫酸を加え撹拌した。これに180gの無水酢酸を加え、温度が40℃をこえないように水浴で冷却しながら60分撹拌した。反応終了後、酢酸水溶液をゆっくり添加後、室温で一晩撹拌をした。その後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートは80.1gであり、セルロースアセテートの置換度は2.5であった。
実施例1
合成例1により得られたセルロースアセテートプロピオネート90重量%と、可塑剤のポリエチレングリコール(三洋化成(株)製、PEG600)9.5重量%と無機粒子としてアルミナ(昭和電工(株)製UA−5055、平均粒子径0.2μm、モース硬度=9、ゼータ電位=+70mV)0.5重量%を、30mmφエクストルーダーを用いて混合し、セルロースエステル組成物のペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度保持率は93%と良好であった。
合成例1により得られたセルロースアセテートプロピオネート90重量%と、可塑剤のポリエチレングリコール(三洋化成(株)製、PEG600)9.5重量%と無機粒子としてアルミナ(昭和電工(株)製UA−5055、平均粒子径0.2μm、モース硬度=9、ゼータ電位=+70mV)0.5重量%を、30mmφエクストルーダーを用いて混合し、セルロースエステル組成物のペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度保持率は93%と良好であった。
続いてペレットを真空乾燥した後、プレッシャーメルター式溶融紡糸機で、紡糸温度250℃にて溶融し、0.20mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出した。
紡出糸は25℃のチムニー風により冷却した後、油剤を付与して集束し、1000m/minで回転するゴデットローラーにより引き取り、ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維は、強度が1.1cN/dtex、伸度が23%、U%は1.1%と良好な機械的特性、繊維長手方向における繊度の均一性に優れていた。得られた繊維を用いてツイル織物(2/2)を作成した。織物の摩耗強さは40回であり耐摩耗性に優れていた。
実施例2〜6
表1に示したポリマー(セルロースアセテートブチレートはイーストマンケミカル社製CAB−381−20を用いた)、可塑剤、無機粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてセルロースエステル繊維を得た。
表1に示したポリマー(セルロースアセテートブチレートはイーストマンケミカル社製CAB−381−20を用いた)、可塑剤、無機粒子を用いた以外は実施例1と同様にしてセルロースエステル繊維を得た。
なお、ジルコニアは第一稀元素化学工業株式会社製UEP、スピネルはBaikouski社製S50CRを用いた。
これら得られた繊維の評価結果を表1に示す。いずれの場合においても溶融粘度保持率、摩耗強さに優れていた。
実施例7
合成例3により得られたセルロースアセテート(ジアセ)19重量%、アルミナ(昭和電工(株)製A50K、平均粒子径1.2μm、モース硬度=9、ゼータ電位=+67mV)1重量%をアセトンと水の混合溶剤(9:1)に溶解し濃度20重量%の紡糸原液を調整した。紡速500m/分で乾式紡糸し、83dtex36フィラメントの繊維を得た。
合成例3により得られたセルロースアセテート(ジアセ)19重量%、アルミナ(昭和電工(株)製A50K、平均粒子径1.2μm、モース硬度=9、ゼータ電位=+67mV)1重量%をアセトンと水の混合溶剤(9:1)に溶解し濃度20重量%の紡糸原液を調整した。紡速500m/分で乾式紡糸し、83dtex36フィラメントの繊維を得た。
得られた繊維は、強度が1.0cN/dtex、伸度が23%、U%1.0%であり繊維特性に優れていた。得られた繊維を用いてツイル織物(2/2)を作成して摩耗強さを測定したと38回と優れていた。
比較例1
無機粒子(アルミナ)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度保持率を測定した。溶融粘度保持率78%。得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸、製織を行い摩耗強さを測定したところ20回と耐摩耗性の劣るものであった。結果を表2に示す。
無機粒子(アルミナ)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度保持率を測定した。溶融粘度保持率78%。得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸、製織を行い摩耗強さを測定したところ20回と耐摩耗性の劣るものであった。結果を表2に示す。
比較例2〜4
表2に示す無機粒子を添加すること以外は、実施例1と同様にしてペレット、繊維を得た。モース硬度、ゼータ電位が本願発明の範囲外の場合、溶融粘度保持率が悪化し摩耗強さも悪化した。
表2に示す無機粒子を添加すること以外は、実施例1と同様にしてペレット、繊維を得た。モース硬度、ゼータ電位が本願発明の範囲外の場合、溶融粘度保持率が悪化し摩耗強さも悪化した。
Claims (6)
- ゼータ電位がプラスチャージ、モース硬度が7.5以上の無機粒子を0.05〜20重量%含有するセルロースエステル組成物。
- セルロースエステルが、少なくとも一部のアシル基が炭素数3以上のものであることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル組成物。
- セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項2記載のセルロースエステル組成物。
- 無機粒子がアルミナ、またはジルコニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のセルロースエステル組成物。
- アルミナ、ジルコニアの平均粒子径が0.005〜5μmであることを特徴とする請求項4記載のセルロースエステル組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のセルロースエステル組成物からなる、強度が0.5〜2cN/dtex、伸度が2〜50%、U%が2%以下であることを特徴とするセルロースエステル繊維。
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JP2013209788A (ja) * | 2012-02-29 | 2013-10-10 | Toray Ind Inc | セルロースエステル系繊維および繊維構造物 |
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2006
- 2006-03-31 JP JP2006097101A patent/JP2007269966A/ja active Pending
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