JP2004182979A - 熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれからなる繊維 - Google Patents

熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれからなる繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 バイオマス系材料であるセルロースアセテートプロピオネートを主成分とする環境負荷の少ない成分からなる熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物と、それらからなる溶融紡糸性に優れ、強伸度特性のみならず繊度の均一性にも優れた熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物繊維を提供すること。
【解決手段】 セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、特定のポリエーテル化合物5〜20重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とする熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれからなる繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれらを溶融紡糸して得られる繊維に関するものである。
セルロースおよびセルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また、環境中にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。現在商業的に利用されているセルロースエステルの代表例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等が挙げられ、プラスチック、フィルター、塗料など幅広い分野に利用されている。
セルロースの繊維としての利用に関しては、自然界中で産生する綿や麻などの短繊維をそのまま紡績して使用することが古くから行われてきた。短繊維ではなく、フィラメント材料を得るためには、レーヨンの様にセルロースを二硫化炭素等の特殊な溶媒系で溶解させ湿式紡糸法での製糸を行うか、セルロースアセテートの様にセルロースを誘導体化して、塩化メチレンやアセトン等の有機溶媒に溶解させた後、この溶媒を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法での製糸を行うしか方法がなかった。
しかし、これらの湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法では、紡糸速度が遅いため生産性が低いという問題があるだけでなく、使用する二硫化炭素、アセトン、塩化メチレン等の有機溶剤が環境に対して悪影響を及ぼす懸念が強いため、環境との調和を考える場合には、決して良好な製糸方法とは言えない。
溶融紡糸法を用いる方法としては、セルロースアセテートにポリエチレングリコールのような水溶性可塑剤を配合して溶融紡糸を行い、中空糸用の繊維を製造するものが開示されている(特許文献1参照)。しかし、平均分子量200〜1000のポリエチレングリコールを多量に使用した場合、紡糸の際の断糸率の点から、低い紡糸ドラフトでないと溶融紡糸は困難である。さらに、可塑剤を多量に使用することは溶融紡糸時に可塑剤が激しく揮発する問題がある。
セルロースエステル樹脂は、汎用合成樹脂のように熱可塑成形によって溶融加工し成型品を得るにはいくつかの問題を有している。例えば、セルロースアセテート樹脂の融点は、分解点より高い280℃近傍であり、融点を下げて溶融加工に適した温度とするために可塑剤を混合しなければならない。
そこで、押出、射出成形用に用いられているセルロースエステルの可塑剤として、フタル酸エステルであるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等、トリメリット酸エステルであるトリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が知られている。前記可塑剤を含有した脂肪酸セルロースエステル系組成物は、軟化温度が低下して加工しやすくなり、例えばシート、フィルム、パルプ、棒、印材、装飾品、眼鏡枠、工具柄、食器具柄、玩具、雑貨等に広範囲に使用されている。
しかしながら、これらの可塑剤を用いたセルロース脂肪酸エステル組成物では、例えば溶融紡糸のように長時間にわたる連続成形加工を行う場合には可塑剤の揮発が激しいという問題が発生する。このことによる具体的な弊害として作業環境の悪化および得られた糸から可塑剤が揮発して表面に付着することによって布帛にしたときに風合いが低下することが挙げられる。また、フタル酸エステルに代表される化合物は環境ホルモンのおそれがあり、可塑剤の揮発は重大な問題を引き起こすことになる。
このように、セルロースアセテートと既存の可塑剤を用いた組み合わせでは、溶融紡糸可能な流動性と得られる熱可塑化効果を十分に満足できないというのが現状である。
また、セルロースエステルはリンター、パルプ等の天然物を原料としているため、加熱時の着色原因となる多くの不純物を含んでいる。その着色原因物質を除去するためリンター、パルプの精製時、またはセルロースエステル製造時に漂白、高温加熱、濾過といった各種の処理が行われる。しかし、構成原料の純度・品質のみで着色を解決するのは技術的・経済的に限界がある。そこで、これを解決するためにセルロースエステルに熱安定剤として亜リン酸エステルを添加することが知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
しかし、セルロースエステルと既存の可塑剤と亜リン酸エステルの組み合わせでは溶融紡糸可能な流動性を与える成形条件においては、着色防止効果が十分得られないというのが現状である。
特開昭51−70316号公報(第2頁) 特開平10−306175号公報(第2頁) 特開昭57−78431号公報(第2頁) 特開昭54−157159号公報(第2頁) 特開昭55−13765号公報(第2頁)
本発明の課題は上記のような問題点を克服し、バイオマス系材料であるセルロースアセテートプロピオネートおよび生分解性を有するポリエーテル化合物を主成分とする環境負荷の小さい成分からなる熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物と、それらからなる溶融紡糸性に優れ、強伸度特性のみならず繊度の均一性にも優れた熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維を提供することにある。
上述した本発明の課題は、セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物5〜20重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とする熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物によって解決することができる。
R1−O−[(CH2)nO]m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
本発明により、可塑剤を添加したバイオマス系材料であるセルロースアセテートプロピオネートを主成分とする環境負荷の小さい成分からなる熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物が得られ、それからなる溶融紡糸性に優れた繊維を提供することが可能となる。得られる組成物および繊維は、生分解性を活かした分野、すなわち、農業用資材、林業用資材、水産資材、土木資材、衛生資材、日用品、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして好適に用いることができる。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートとは、セルロースの水酸基の少なくとも一部がアセチル基およびプロピオニル基によって置換されているものを言う。具体的なアシル化剤としては、酸塩化物、酸無水物、カルボン酸化合物、カルボン酸化合物誘導体などが挙げられるが特に限定されない。本発明において用いられるセルロースエステルの製造方法に関しては、従来公知の方法にて行えばよく、特に限定されない。アセチル基のみで置換されたセルロースアセテートはそれ自身の熱可塑性が不十分であるため、良好な熱流動性を有するためには多量の可塑剤を添加する必要がある。プロピオニル基によりセルロースをアシル化することにより、セルロースエステルの製造時にブチリル基より長鎖のアシル基によってアシル化するよりも反応性が高いため生産性が良い。
セルロースエステルの置換度(DSac+DSpr)は、グルコース単位あたり1.6〜3.0であることが好ましい。また、置換度が1.6以上であれば、ポリエーテル化合物の添加によって熱可塑成形が可能となる。
ポリエーテル化合物との相溶性、得られる繊維の強度の点からアセチル基の置換度(DSac)、プロピオニル基の置換度(DSpr)は下記の式を満たすことが好ましい。
(I) 1.6≦DSac+DSpr≦3.0
(II) 0.1≦DSac≦0.9
(III)1.5≦DSpr≦2.9
熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物中のセルロースアセテートプロピオネートの含有量は80〜95重量%である。含有量を95重量%以下にすることにより、ポリエーテル化合物を加えたことによる熱可塑化効果が増し、溶融成形性が良好になる。含有量を80重量%以上にすることで、セルロースエステルの有する特徴である強度が増し、機械的特性の優れた成形物が得られる。
本発明は、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を可塑剤として用いる。
R1−O−[(CH2)nO]m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
これは、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物がセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性に優れるため熱可塑化効果が顕著に表れるばかりか、ポリエーテル化合物自身の耐熱性が良好なため、添加したポリマーの色調も良好になる効果を有するからである。さらには、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は生分解性の低いフェニル基、アルキルフェニル基、アリールフェニル基などの芳香族で置換されていないため生分解性が良好である特徴も有している。
具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレートなどが挙げられるがこれに限定されない。
この中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジラウレートが好ましい。
ポリエーテル化合物の分子量としては、200〜1000であることでポリエーテル化合物の揮発が抑えられ、セルロースアセテートプロピオネートとの相溶性も良好となるため好ましい。300〜800がより好ましい。
ポリエーテル化合物の配合量は、5〜20重量%である。配合量を20重量%以下とすることにより、機械的特性が良好となり、加熱時のポリエーテル化合物の揮発が抑えられる。また、溶融紡糸性の点から強度が高くなり紡糸断糸率が低下する。一方、配合量を5重量%以上とすることにより、熱流動性の点から、成形温度を低くすることができ、組成物の熱分解が抑制され得られるポリマーの色調が良好になる。
本発明の組成物にはホスファイト系着色防止剤を添加することができる。セルロースアセテートプロピオネートとポリエーテル化合物を少なくとも含む本発明の組成物にホスファイト系着色防止剤を添加した場合には、成形温度が高い範囲においても着色防止効果が非常に顕著であり、得られるポリマーの色調が良好になる。具体的なホスファイト系着色防止剤は、特に限定されないが、下記一般式(2)(3)(4)で示されるホスファイト系着色防止剤がセルロースアセテートプロピオネートとポリエーテル化合物を少なくとも含む組成物に対して着色防止効果が高く好ましい。
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
(ここで、R1、R2,R3、R4、R5、R6、R’1、R’2、R’3・・・R’n、R’n+1は水素又は炭素数4〜23のアルキル、アリール、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ポリアリールオキシアルキル、ポリアルコキシアルキル及びポリアルコキシアリール基から成る群から選択された基を示す。但し、一般式(2)(3)(4)の各同一式中で全てが水素になることはない。一般式(3)中で示されるホスファイト系着色防止剤中のXは脂肪族鎖、芳香核を側鎖に有する脂肪族鎖、芳香核を鎖中に有する脂肪族鎖及び上記鎖中に2個以上連続しない酸素原子を包含する鎖から成る群から選択された基を示す。また、k、qは1以上の整数、pは3以上の整数を示す。)
これらのホスファイト系着色防止剤のk、qの数は好ましくは1〜10である。k、qの数が1以上にすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。また、pの値は3〜10が好ましい。3以上のすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。
下記一般式(2)で表されるホスファイト系着色防止剤の具体例としては、下記式(5)〜(8)で表されるものが好ましい。
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
また、下記一般式(3)で表されるホスファイト系着色防止剤の具体例としては、下記式(9)(10)(11)で表されるものが好ましい。
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、0.005〜0.5重量%であるのが好ましい。配合量を0.005重量%以上とすることで加熱時の組成物の着色が抑制できるため好ましい。より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上である。一方、配合量を0.5重量%以下にすることにより、セルロースアセテートプロピオネートの分子鎖を切断し重合度を低下することによる劣化を抑制することができ好ましい。より好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物は、220℃における加熱減量率が5重量%以下である。ここで、加熱減量率とは窒素下において室温から10℃/分の昇温度速度で試料を昇温した時の、220℃における重量減少率をいう。加熱減量率を5重量%以下にするということは、低分子可塑剤を大量に含むなどによって成形加工時に発煙が生じることがないことである。例えば、溶融紡糸の際に発煙が生じることはなく、製糸性の良い、良好な物性を有する繊維が得られる。220℃における加熱減量率は好ましくは3重量%以下である。このように、本発明の加熱減量率の低い熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物は溶融紡糸に適している。
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物は、220℃、1000sec-1における溶融粘度が20〜200Pa・secである。220℃、1000sec-1における溶融粘度を20Pa・sec以上することにより、溶融紡糸に供した際には、紡出後の固化が十分に進み、収束しても繊維同士が膠着することがない。また、この場合、口金背面圧が十分に得られるため、分配性も良好となり、繊度の均一性が確保される。一方、溶融粘度を200Pa・sec以下とすることにより、紡出糸条の製糸性が良好であり、十分な配向が得られて機械特性の優れた繊維となる。また、配管圧力の異常な上昇によるトラブルが生じることもない。良好な流動性の観点から、220℃、1000sec-1における溶融粘度は50〜190Pa・secであることが好ましく、80〜180Pa・secであることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物の黄色度を示すb値は、−2〜8であることが好ましい。組成物のb値が−2以上であることにより、成形した後の青みが強くなく、また、組成物のb値が8以下であることにより成形物の黄味が強くなく、成形物に染料及び顔料を用いて着色した時の発色性が良好であるため好ましい。なお、b値は0以上、5以下であることがさらに好ましい。本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、ホスフェイト、チオフォスフェイト等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。また、その他有機酸系の生分解促進剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤等の添加剤を配合することは何らさしつかえない。
本発明で用いられるセルロースアセテートプロピオネートと可塑剤の混合に際して、公知の共溶媒を用いるキャスト法を用いても良いし、エクストルーダー、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等の通常使用されている公知の混合機を特に制限無く用いても良い。なお、混合する場合には混合を容易にするために粉砕機により予めセルロースアセテートプロピオネートの粒子を50メッシュ以上に細かく粉砕しておいても良い。また、セルロースアセテートプロピオネート合成時に可塑剤を添加し、セルロースアセテートプロピオネートの製造と同時に可塑剤を含むセルロースアセテートプロピオネートを得ても良い。
本発明で用いられるホスファイト系着色防止剤の混合に際しては、上述したセルロースアセテートプロピオネートと可塑剤の混合の前に、ホスファイト系着色防止剤を可塑剤と混合して添加しても良いし、ホスファイト系着色防止剤を直接セルロースアセテートプロピオネートと混合して添加しても良い。また、事前に混合した可塑剤を含むセルロースアセテートプロピオネート組成物とホスファイト系着色防止剤を公知の共溶媒を用いるキャスト法を用いても良いし、エクストルーダー、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等の通常使用されている公知の混合機を特に制限なく用いても良い。
本発明の組成物は熱流動性が良好であり、溶融紡糸法によって繊維化することができる。
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維の強度は、0.5〜2cN/dtexであることが好ましい。強度を0.5cN/dtex以上とすることで、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがないので好ましい。また、2cN/dtex以下では伸度が低下せず、毛羽立ちを抑えられ糸切れが少ないため好ましい。良好な強度特性の観点から、強度は0.7cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維の伸度は、2〜50%であることが好ましい。伸度を2%以上とすることにより、製織や製編時など高次加工工程において糸切れが多発することがない。また、50%以下では低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどにより最終製品の染色欠点を生じることがないため好ましい。良好な伸度としては、5〜45%であることがより好ましく、10〜40%であることが最も好ましい。
また、本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維のU%は、3%以下であることが好ましい。U%が3%以下である場合には、繊度の均一性に優れた繊維が得られる。良好なU%としては2%以下が好ましく、最も好ましくは1%以下である。
また、本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維の黄色度を示す色調(b値)は−1〜7であることが好ましい。−1以上であることにより繊維の青みが強くなく、7以下であることで黄味が強くなく、染色時の発色性が良好になるため好ましい。また、b値は0以上、4以下であることがさらに好ましい。
本発明で用いる溶融紡糸法は、前記した組成物を公知の溶融紡糸機において、加熱溶融した後に口金から押出し、紡糸し、必要に応じて延伸し巻取ることができる。この際紡糸温度は190℃〜250℃が好ましく、さらに好ましくは200℃〜240℃である。紡糸温度を190℃以上とすることにより、溶融粘度が低くなり溶融紡糸性が向上するので好ましい。また250℃以下にすることにより、組成物の熱分解が抑制されるため好ましい。
また、混合物は気泡の混入をできるだけ少なくするために、溶融紡糸機に供給する前にエクストルーダーを用いてペレット化しておくか、エクストルーダーが配管によって溶融紡糸機と結合されていることが望ましい。また、ペレット化した溶融成形用熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物は溶融紡糸に先立ち、溶融時の加水分解や気泡の発生を防止するために含水率を0.1重量%以下に乾燥することが好ましい。
本発明のセルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維は、優れた機械的特性および繊度の均一性を有し、生分解性に優れており、前記繊維を製造する際に熱流動性が優れるため紡糸時の断糸率が極めて少なく、生産性に優れている。また得られた長繊維は織物、編物等の繊維構造物や、メルトブロー法、スパンボンド法による不織布として用いても良い。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、セルロースアセテートプロピオネートの置換度、溶融粘度、加熱減量率、強伸度、U%は以下の方法で評価した。
(1)セルロースアセテートプロピオネートの置換度
乾燥したセルロースアセテートプロピオネート0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSac=(162.14×TA)/
[[1−(Mwac−(16.00+1.01))×TA]+[1−(Mwpr−(16.00+1.01))×TA]×(Pr/Ac)]]
DSpr=DSac×(Pr/Ac)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSac:アセチル基の置換度
DSpr:プロピオニル基の置換度
Mwac:酢酸の分子量
Mwpr:プロピオン酸の分子量
Pr/Ac:酢酸(Ac)とプロピオン酸(Pr)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
(2)溶融粘度
東洋精機(株)製キャピラリーレオメーター(商標:キャピログラフ1B、L=10mm、D=1.0mmのダイ使用)を用い、測定温度220℃、シェアレート1000sec-1で粘度を測定し、溶融粘度とした。
(3)加熱減量率
(株)マック・サイエンス社製TG−DTA2000Sを用い、窒素下において室温から400℃まで10℃/分の昇温度速度で試料を加熱した時、220℃におけるサンプル10mgの重量変化を加熱減量率とした。
(4)色調(組成物)
5mm角にカッティングした組成物のペレット10gを専用の容器に入れ、スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューターでL、a、b値を測定し、黄色みを表すb値を色調として用いた。
(5)強伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20mm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重を示した点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。また、破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
(6)U%
ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにて給糸速度25m/minで1分間の測定を行い、得られた値をU%とした。
(7)風合い
得られた繊維を用いて27ゲージの丸編みを作成し、官能検査によって風合いを評価した。十分なドライ感のある物を○、ドライ感のない物を△、著しいヌメリ感のある物を×とした。なお、○は好ましく、△は許容できる範囲であるが、×は問題がある。
(8)製糸性
溶融紡糸を行う条件において、ポリエーテル化合物の揮発が見られず、かつ紡出糸の細化変形性が良好なものを○とした。逆にポリエーテル化合物の揮発もしくは紡出糸の細化変形性不良により製糸困難なものを×とした。また、製糸は可能だがポリエーテル化合物の揮発が認められるものを△とした。
(9)色調(繊維)
得られた繊維をプレートに巻き、スガ試験器株式会社製SMカラーコンピューターでL、a、b値を測定し、黄色みを表すb値を色調として用いた。なお、プレートに巻いた繊維量は例えば繊度110dtexでは繊維180mを横幅6cmのプレートに縦幅4cmに巻き、プレート上の糸の厚みが平均して約2mmになるようにしたものを用いて測定を行った。また、カラーコンピューターの光の入射角は45度を用いた。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)30gに酢酸20gとプロピオン酸90gを加え、55℃で30分混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸10g、無水プロピオン酸140g、硫酸1.2gを加えてアシル化を行った。アシル化において、40℃を超える時は水浴で冷却した。撹拌を150分間行った後、反応停止剤として酢酸30gと水10gの混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸100gと水30gを加え60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートの置換度はアセチル基0.2、プロピオニル基2.4であった。
実施例1
合成例1で得られたセルロースアセテートプロピオネート92量%と可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)8重量%をニーダー中220℃で混合し、混合ポリマーを得た。これを5mm角程度にカッティングし熱可塑性セルロースエステル組成物のペレットとした。このペレットを80℃に加熱した熱風乾燥機中で10時間乾燥させた後、220℃、1000sec-1での溶融粘度を測定した。溶融粘度は163.5Pa・secであった。また、加熱減量率は0.9%、色調(b値)は4.2であった。
得られたペレットを単軸エクストルーダー式溶融紡糸機で、溶融温度220℃、パック部温度220℃にて溶融し、0.20mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出した。紡出糸の細化変形性は良好であり、口金に汚れは付着しなかった。また、紡出糸からは発煙は認められなかった。紡出糸は25℃のチムニー風により冷却した後、600m/minの速度でゴデットローラーにより引き取り、ワインダーにて巻き取ったところ、紡糸糸切れは認められなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
得られた繊維は、強度が1.3cN/dtex、伸度が23%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.1%であり、繊維長手方向における繊度の均一性が優れたものであった。色調(b値)は4.9であり、若干黄味が見られたが問題のないレベルであった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな望ましい風合いを有するものであった。
実施例2
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)90重量%と可塑剤としてポリオキシエチレンジラウレート(分子量600)10重量%を用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は125.3Pa・sec、加熱減量率1.0%、色調(b値)は4.0であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸の細化変形性は良好であり、口金には汚れは付着しなかった。また、紡出糸からの発煙は認められず、紡糸糸切れは認めらなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
得られた繊維は、強度が1.2cN/dtex、伸度が26%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.2%であり、繊度の均一性に優れていた。色調(b値)は4.2であり、若干黄味が見られたが問題のないレベルであった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな望ましい風合いを有するものであった。
実施例3
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)85重量%と可塑剤としてポリオキシエチレンモノオレート(分子量800)15重量%を用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は98.5Pa・sec、加熱減量率2.1%、b値は3.5であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸の細化変形性は良好であり、口金には汚れは付着しなかった。また、紡出糸からの発煙は若干認められたが、紡糸糸切れは認めらなかった。本組成物の製糸性は良好であった。
得られた繊維は、強度が1.0cN/dtex、伸度が28%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.0%であり、繊度の均一性に優れていた。色調(b値)は4.1であり、若干黄味が見られたが問題のないレベルであった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、若干のヌメリ感が認められるものの、ソフトな風合いを有するものであった。
合成例2
無水酢酸5g、無水プロピオン酸120g用いた以外は合成例1と同様に反応してセルロースアセテートプロピオネートを得た。得られたセルロースアセテートプロピオネートの置換度はアセチル基0.1、プロピオニル基2.4であった。上記の方法によって、セルロースアセテートプロピオネートを得た。
実施例4
セルロースアセテートプロピオネート(合成例2)92重量%と可塑剤としてポリオキシエチレンジオレート(分子量600)8重量%を用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は110.7Pa・sec、加熱減量率は1.8%、色調(b値)は4.5であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸の細化変形性は良好であり、口金には汚れは付着しなかった。また、紡出糸からの発煙は若干認められたが、紡糸糸切れは認めらなかった。本組成物の製糸性は良好であった。
得られた繊維は、強度が1.1cN/dtex、伸度が22%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.3%であり、繊度の均一性に優れていた。色調(b値)は5.1であり、若干黄味が見られたが問題のないレベルであった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな望ましい風合いを有するものであった。
実施例5
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)92重量%と可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)7.9重量%、ホスファイト系着色防止剤としてビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(下記式(6))を0.1重量%用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は168.2Pa・sec、加熱減量率は0.9%、色調(b値)は4.0であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸からの発煙は認められず、紡糸糸切れは認められなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
得られた繊維は、強度が1.4cN/dtex、伸度が23%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.1%であり、繊度の均一性に優れていた。色調(b値)は2.2であり、非常に良好であった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな好ましい風合いを有するものであった。
Figure 2004182979
実施例6
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)90重量%と可塑剤としてポリオキシエチレンジラウレート(分子量600)9.92重量%、ホスファイト系着色防止剤としてビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(下記式(7))を0.08重量%を用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は130.1Pa・sec、加熱減量率は1.1%、色調(b値)は3.5であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸からの発煙は認められず、紡糸糸切れは認められなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
得られた繊維は、強度が1.3cN/dtex、伸度が27%であり、機械的特性に優れていた。また、U%は1.2%であり、繊度の均一性に優れていた。色調(b値)は2.1であり、非常に良好であった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな好ましい風合いを有するものであった。
Figure 2004182979
実施例7
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)92重量%と可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)7.4重量%、ホスファイト系着色防止剤としてビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(下記式(6))を0.6重量%用いる以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は158.3Pa・sec、加熱減量率は1.2%、色調(b値)は4.2であった。
得られたペレットを実施例1と同様にして紡糸したところ、紡出糸からの発煙は認められず、紡糸糸切れは認められなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
得られた繊維は、強度が0.6cN/dtex、伸度が18%であり、若干機械的特性は悪いものの、問題のないレベルであった。また、U%は2.9%であった。色調(b値)は2.3であり、非常に良好であった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、ヌメリ感は全く認められず、ソフトかつドライな好ましい風合いを有するものであった。
Figure 2004182979
合成例3
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)50gを500mlの脱イオン水に浸して10分間おく。これをガラスフィルターで濾別して水を切り、700mlの酢酸に分散させ、時々振り混ぜて10分間おく。続いて、新しい酢酸を用いて同じ操作を再び繰り返す。
フラスコに900gの酢酸と0.9gの濃硫酸をとり、撹拌した。これに180gの無水酢酸を加え、温度が40℃をこえないように水浴で冷却しながら60分撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートは85.3gであり、セルロースアセテートの置換度は2.9であった。
比較例1
合成例3で合成したセルロースアセテートを用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。加熱減量率は1.3%と低いが、溶融粘度は251.2Pa・secと著しく高い値であった。また、色調(b値)は8.2と非常に黄味が見られた。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に紡糸を試みたところ、紡出糸からの発煙がなく、口金の汚れもみられなかった。しかし、溶融粘度が高すぎて流動性が悪く紡出糸の細化が起こらず、引き取ることができなかった。本組成物は非常に製糸性が悪いものであった。
比較例2
可塑剤としてポリオキシエチレンジオレート(分子量600)を用いた以外は比較例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。加熱減量率は1.4%と低いが、溶融粘度は243.9Pa・secと著しく高い値であった。また、色調(b値)は8.5と非常に黄味が見られた。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に紡糸を試みたところ、紡出糸からの発煙がなく、口金の汚れもみられなかった。しかし、溶融粘度が高すぎて流動性が悪く紡出糸の細化が起こらず、引き取ることができなかった。本組成物は非常に製糸性が悪いものであった。
比較例3
セルロースアセテートプロピオネート(合成例1)を98重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)2重量%用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。加熱減量率は0.8%と低いが、溶融粘度は261.2Pa・secと著しく高い値であった。また、色調(b値)は8.1と非常に黄味が見られた。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に紡糸を試みたところ、紡出糸からの発煙がなく、口金の汚れもみられなかった。しかし、溶融粘度が高すぎて流動性が悪く紡出糸の細化が起こらず、引き取ることができなかった。本組成物は非常に製糸性が悪いものであった。
比較例4
合成例1で合成したセルロースアセテートプロピオネートを70重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)を30重量%用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は17.8Pa・secであった。加熱減量率は18.4%と高い値であった。色調(b値)は4.1であった。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に紡糸を試みたが、流動性は非常に高かった。また、紡糸速度500m/minでは糸切れが多発して引き取りができなかったため、紡糸温度を300m/minと低速にして紡糸を行った。紡出糸からは可塑剤の揮発に伴う激しい発煙が認められ、走行糸条は安定しなかった。本組成物は発煙、糸切れ多発の観点から製糸性の悪いものであった。
得られた繊維は強度が0.3cN/dtexと低く、伸度は27%であった。また、U%は3.8%と繊度の均一性に劣るものであった。また、色調(b値)は4.9と若干黄味が見られたが、問題のないレベルであった。
得られた繊維を用いて編み地を作成し、風合いを評価したところ、非常にヌメリ感の強いものであり、布帛としての利用ができないものであった。
合成例4
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)50gを500mlの脱イオン水に浸して10分間おく。これをガラスフィルターで濾別して水を切り、700mlの酢酸に分散させ、時々振り混ぜて10分間おく。続いて、新しい酢酸を用いて同じ操作を再び繰り返す。
フラスコに900gの酢酸と0.9gの濃硫酸をとり、撹拌した。これに180gの無水酢酸を加え、温度が40℃をこえないように水浴で冷却しながら60分撹拌した。反応終了後、酢酸水溶液をゆっくり添加後、室温で一晩撹拌をした。その後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースエステルを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートは80.1gであり、セルロースアセテートの置換度は2.5であった。
比較例5
合成例4で合成したセルロースアセテートを70重量%、可塑剤としてカプロラクトンオリゴマー(分子量550)を30重量%用いた以外は実施例1と同様にして、ペレットを作成し、溶融粘度、加熱減量率および色調を測定した。溶融粘度は203.0Pa・secと高く、加熱減量率も19.0%と高かった。色調(b値)は8.2と高かった。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に紡糸を試みたところ、紡出糸からの発煙がなく、口金の汚れもみられなかった。しかし、溶融粘度が高く流動性が悪く紡出糸の細化が起こらず、引き取ることができなかった。本組成物は非常に製糸性が悪いものであった。
Figure 2004182979
Figure 2004182979
Figure 2004182979
得られる組成物および繊維は、生分解性を活かした分野、すなわち、農業用資材、林業用資材、水産資材、土木資材、衛生資材、日用品、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物5〜20重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とする熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物。
    R1−O−[(CH2)nO]m−R2 ・・・(1)
    (但し、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
  2. ポリエーテル化合物の分子量が200〜1000であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物。
  3. セルロースアセテートプロピオネートのアセチル基の置換度(DSac)とプロピオニル基の置換度(DSpr)が下記式(I)〜(III)を満足するものであることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物。
    (I) 1.6≦DSac+DSpr≦3.0
    (II) 0.1≦DSac≦0.9
    (III)1.5≦DSpr≦2.9
  4. 220℃における加熱減量率が5重量%以下、220℃、1000sec-1における溶融粘度が20〜200Pa・secであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物。
  5. ホスファイト系着色防止剤を0.005〜0.5重量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる、強度0.5〜2cN/dtex、伸度2〜50%、U%が3%以下であることを特徴とするセルロースアセテートプロピオネート繊維。
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