JP2007269842A - 成形用樹脂、及びそれを含有するポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、優れた柔軟性及び風合いを有し、かつポリ乳酸固有の優れた透明性及び生分解性を有する成形用樹脂を提供することである。
【解決手段】本発明は、ジオール(a1)、ジカルボン酸(a2)、及びヒドロキシカルボン酸(a3)を反応させて得られるポリエステル構造単位(A)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)とを有するブロック共重合体(C)からなることを特徴とする成形用樹脂に関するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、とりわけ柔軟性の求められる様々な用途に使用可能な成形用樹脂、及び前記成形用樹脂とポリ乳酸とを含有してなるポリ乳酸樹脂組成物に関する。
ポリ乳酸は、一般にトウモロコシなどの天然原料から合成可能で、かつ優れた透明性、成形加工性、及び生分解性等を有することから、環境調和型の樹脂、とりわけ環境調和型の成形用樹脂として注目されている。特に近年、ポリ乳酸は、ポリオレフィン等衛生協議会の定めるポジティブリストに登録されたことで、食品包装分野をはじめとする新規分野への適用が可能となり、今後の展開が期待されている。
前記したように市場におけるポリ乳酸の幅広い用途への展開に対する期待が高まる一方で、ポリ乳酸は柔軟性等に乏しく脆いという固有の欠点を有しており、かかる欠点が、ポリ乳酸の市場展開における1つの大きな障害となっていた。
したがって、産業界からは、ポリ乳酸が有する優れた透明性等を損なうことなく、前記したような欠点を改質する方法が、これまで強く求められていた。
前記ポリ乳酸の欠点を改質する方法としては、例えばポリ乳酸と他の樹脂等とをブレンドする方法、またはポリ乳酸を他の樹脂等と共重合する手法等が知られている。
具体的には、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位と、ジカルボン酸及びジオールから誘導されるポリエステル構造単位とを有するブロック共重合体からなり、前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位とのいずれか一方の構造単位が形成するマトリックス中に他方の構造単位がドメインを形成するミクロ相分離構造を有する特定の成形用樹脂やそれを含有してなるポリエステル組成物が、柔軟性、耐衝撃性及び生分解性に優れ、なおかつ透明性にも優れることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、前記したポリエステル組成物等からなるフィルム等の風合い、即ち、該フィルムの、ソフト感、しなやかさ、しゃり等と言われる材質感や触感は、従来より包装材料として比較的多く使用されている、例えばポリエチレン−ポリプロピレンフィルム等の風合いと比較して十分といえるものではなかった。
また、前記ポリエステル組成物などを食品包装材料等のより一層優れた柔軟性等の求められる用途に使用する場合には、前記成形用樹脂のポリ乳酸に対する使用量を増加させる必要があるが、前記成形用樹脂の使用量を増加させると、成形用樹脂のブリードや、透明性の著しい低下、風合いの低下、機械的強度の低下等を引き起こす場合があった。
以上のように、包装材料をはじめとする高いレベルの柔軟性が求められる用途に適用可能な、優れた柔軟性、透明性及び風合いに優れた生分解性を有する成形用樹脂やポリ乳酸樹脂組成物は、未だ見出されていないのが実情である。
特開2004−250663号公報
本発明が解決しようとする課題は、優れた柔軟性及び風合いに優れ、かつポリ乳酸固有の優れた透明性及び生分解性を有する成形用樹脂を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、柔軟性及び風合いに優れ、ブリードを引き起こしにくく、かつポリ乳酸固有の優れた透明性及び生分解性を有するポリ乳酸樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、生分解性や透明性等に優れた特性を有するポリ乳酸に諸物性を付与することを目的として、該ポリ乳酸と共重合可能なポリエステルを各種検討するなかで、ジオール及びジカルボン酸の他に、第3成分としてヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるポリエステル由来の構造単位を有する成形用樹脂が、優れた柔軟性及び風合いを有し、かつポリ乳酸が本来有する優れた透明性及び生分解性を有することから成形用樹脂に使用できることを見出した。また、該成形用樹脂とポリ乳酸とを含有してなるポリ乳酸樹脂組成物が、柔軟性及び風合いに優れ、ブリードを引き起こしにくく、かつ透明性及び生分解性にも優れることを見出した。
即ち、本発明は、ジオール(a1)、ジカルボン酸(a2)、及びヒドロキシカルボン酸(a3)を反応させて得られるポリエステル構造単位(A)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)とを有するブロック共重合体(C)からなることを特徴とする成形用樹脂に関するものである。
また、本発明は、前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させて得られるポリエステル(A’)、及びポリヒドロキシカルボン酸(B’)を、エステル化触媒(D)の存在下、減圧条件にてエステル化反応させ、得られた反応物は回転型レオメーターを用いて、周波数1Hz、温度が該反応物の融点〜融点+50℃の範囲内の測定条件で、歪みを1〜60%まで変化させた時、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G’(M%)が、歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲となる時点まで当該エステル化反応を継続させることによりブロック共重合体(C)を得ることを特徴とする、成形用樹脂の製造方法に関するものである。
また、本発明は前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させて得られるポリエステル(A)、及びラクトン類を、開環重合触媒(D’)の存在下で反応させることによりブロック共重合体(C)を得ることを特徴とする、成形用樹脂の製造方法に関するものである。
また、本発明は、前記成形用樹脂、及びポリ乳酸を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物に関するものである。
本発明の成形用樹脂は、ポリ乳酸固有の透明性、生分解性及び成形加工性等を損なうことなく、優れた柔軟性、耐ブリード、風合いを有する。また、ポリ乳酸と前記成形用樹脂とを含有するポリ乳酸樹脂組成物もまた、ポリ乳酸が本来有する透明性や生分解性を損なうことなく、優れた柔軟性、耐ブリード等を有することから、食品包装分野等をはじめとする様々な用途、特に食品包装材料等に好適に使用することが可能である。
本発明の成形用樹脂は、ジオール(a1)、ジカルボン酸(a2)、及びヒドロキシカルボン酸(a3)とを反応させて得られるポリエステル構造単位(A)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)を有するブロック共重合体(C)である。
前記ブロック共重合体(C)は、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)をXとし、前記ポリエステル構造単位(A)をYとした場合、使用する原料の仕込み比率及び分子量、反応方法により異なるが、XY型ブロック共重合体、XYX型ブロック共重合体、XYランダム型ブロック共重合体、及びこれらの混合物等であるものを使用することができる。なかでも柔軟性に優れた成形用樹脂を製造する観点からXYX型のブロック共重合体やXY型のブロック共重合体を使用することが好ましい。また、成形用樹脂の特性を損なわなければ、これらに後述するポリエステル(A)やポリヒドロキシカルボン酸(B)等の未反応物が含まれていてもよい。
前記ブロック共重合体(C)は、前記ポリエステル構造単位(A)と前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)との質量割合[(B)/(A)]が、95/5〜10/90の範囲であることが好ましい。より具体的には、前記ブロック共重合体(C)自体を成形用樹脂に使用する場合、柔軟性及び成形加工性の向上の観点から、質量割合[(B)/(A)]が97/3〜65/35の範囲であることが好ましく、95/5〜60/40の範囲であることがより好ましく、93/7〜70/30の範囲であることが特に好ましい。
また、前記ブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂をポリ乳酸と混合し使用する場合には、柔軟性の向上、及び後述するポリ乳酸樹脂組成物から前記ブロック共重合体(C)のブリードを抑制できる観点から、前記質量割合[(B)/(A)]が60/40〜30/70の範囲であることが好ましく、55/45〜40/60の範囲であることがより好ましい。
また、前記ブロック共重合体(C)は、柔軟性の向上、ブリード抑制の観点から、重量平均分子量が5,000〜400,000の範囲を有することが好ましく、10,000〜350,000の範囲を有することがより好ましく、15,000〜300,000の範囲を有することが特に好ましい。
本発明の前記ブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物の形態(モルホロジー)は、透過電子顕微鏡(以下、TEMと省略する。例えば、日本電子データム社製、JEM―200CXを使用することができる。)を用いることによって観察することができる。
TEM観察方法の一例を挙げると、ブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物を例えば、加熱プレス機を用いて、適当な温度にて厚さ200μmのフィルム化した試料片とした後、適当な大きさに切りだし、可視光硬化型樹脂に包埋する。その後、試料片を染色剤として、四酸化ルテニウム、又は四酸化オスミウムを用いて、1〜2時間染色した後、液体窒素中に1晩以上放置する。その後、ウルトラミクロトームで試料片の超薄切片を作製してTEM観察を行なうことができる。
本発明の前記ブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂とポリ乳酸とを含有してなるポリ乳酸樹脂組成物の場合であって、前記ブロック共重合体(C)が有するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)がポリ乳酸構造単位である場合には、前記成形用樹脂と前記ポリ乳酸とが相溶したモルホロジーが観察される。かかる観察から、ポリ乳酸構造単位を有する成型用樹脂とポリ乳酸との相溶性は、極めて優れることがわかる。
前記ブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物の形態を観察するためのその他の方法としては、原子間力顕微鏡を用いて表面の軟硬を観察する方法、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位との間に溶媒溶解性に違いがあれば、試験片を溶剤に漬け込んで可溶部分を除去することにより、適当な処理をした後、走査電子顕微鏡を用いて間接的に観察する方法などが挙げられる。
前記ブロック共重合体(C)は、例えばポリエステル(A’)とポリヒドロキシカルボン酸(B’)とをエステル化反応させることによって製造することができる。
前記ブロック共重合体(C)の前記ポリエステル構造単位(A)を形成するポリエステル(A’)は、ジオール(a1)、ジカルボン酸(a2)、及びヒドロキシカルボン酸(a3)を反応させることによって製造可能なポリエステルである。
前記ポリエステル(A’)は、結晶性を有していても非結晶性を有していてもよいが、透明性、成形加工性に優れたフィルム又はシートを得るうえでは、非結晶性を有したポリエステルを使用することが好ましい。ここで本発明でいう「結晶性のポリエステル」、及び「非結晶性のポリエステル」とは、融点の有無で定義する。具体的には、「非結晶性のポリエステル」とは、融解熱量が0KJ/Kgであるポリエステルを指す。また、前記融点は、標準状態で状態調節を行ったポリエステル(A’)のフィルム片約10mgを、JIS−K7122に準じて、TAインスツメンタル社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」を使用して、窒素ガス流量50ml/分、昇温速度10℃/分で−100℃から210℃までの測定を行うことによって求めることができる。前記測定温度範囲内に、吸熱ピークが認められないポリエステル(A’)は、非結晶性ポリエステルということができる。
また、前記ポリエステル(A’)としては、10以下の酸価を有するものが好ましく、8以下であることがより好ましく、0.1〜5の範囲であることが特に好ましい。前記範囲内の酸価を有するポリエステルは、前記ブロック共重合体(C)を製造する際の反応の転化率の向上により未反応物を抑制でき、かつゲル化等しにくい成形加工性に優れたブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂を得ることができる。
また、前記ポリエステル(A’)としては、ジオール(a1)由来の構造単位と、ジカルボン酸(a2)由来の構造単位と、ヒドロキシカルボン酸(a3)由来の構造単位とが不規則に配列した、いわゆるランダム共重合体であるものを使用することが、副生成物生成を抑制でき、かつポリエステル(A’)を高分子量化できることから好ましい。
前記ポリエステル(A’)は、重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲であることが好ましく、重量平均分子量が10,000〜200,000の範囲であることがより好ましく、重量平均分子量が12,000〜200,000の範囲であることが特に好ましい。前記範囲内の重量平均分子量を有するポリエステル(A’)由来のポリエステル構造単位(A)を有するブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂は、ポリ乳酸と混合し使用した場合のブリードを抑制することができる。
前記ポリエステル(A’)を製造する際に使用可能なジオール(a1)としては、特に限定されないが、例えば脂肪族ジオールや脂環族ジオールを使用することが好ましい。
前記脂肪族ジオールとしては、例えば炭素原子数2〜45の脂肪族ジオールを使用することができ、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールB、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、キシリレングリコール、フェニルエチレングリコールなどを使用することができる。
前記ジオール(a1)としては、各種ジオールを2種類以上併用することもでき、例えば、プロピレングリコールとポリエチレングリコールとの併用、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールとの併用などが挙げられる。また、本発明では、芳香族環式構造を有するものの実質的には脂肪族ジオールと考えられるビスフェノールBのエチレンオキサイド付加物や、プロピレンオキサイド付加物なども脂肪族ジオールとして使用可能である。
前記ポリエステル(A’)を製造する際に使用可能なジカルボン酸(a2)としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸や、無水コハク酸、無水アジピン酸や、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を、単独で使用または2種以上併用することができる。例えばテレフタル酸とアジピン酸との併用、セバシン酸とダイマー酸との併用などである。
前記ジカルボン酸(a2)としては、得られるブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂の性能、具体的にはポリ乳酸へ優れた柔軟性及び透明性を付与可能であることから、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸これらの無水物、またはこれらのエステル化物、及びこれらの混合物を使用することが好ましい。
また、前記ポリエステル(A’)を製造する際に使用可能なヒドロキシカルボン酸(a3)としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸あるいはこれらの混合物を使用することができる。ヒドロキシカルボン酸(a3)として光学異性体の存在するヒドロキシカルボン酸を使用する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれも使用することができる。また、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)としては、固体または液体のものを使用してもよく、それらの水溶液を使用してもよい。
前記ヒドロキシカルボン酸(a3)としては、乳酸またはグリコール酸を使用することが、入手が容易であること、前記ポリエステル(A’)を製造する際の反応制御が容易であること、ポリエステルの2量体や3量体等をはじめとする副生成物の発生を大幅に抑制できることから好ましい。また、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)を用いることにより副生成物の発生を大幅に抑制でき、得られるポリエステルの分子量を比較的高分子量に調製することが容易である。
前記ポリエステル(A’)の製造方法は、特に限定されず、例えば前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(b2)、その無水物またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを、必要に応じてエステル化触媒(D)を用いて、公知慣用のエステル化反応によってエステル化させることにより製造することができる。その際、ポリエステル(A’)の着色を抑制するために、亜リン酸エステル化合物等の酸化防止剤を、前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(b2)、その無水物またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)との合計量に対し、好ましくは10〜2000ppm使用してもよい。
前記ヒドロキシカルボン酸(a3)は、前記したように、前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(a2)、その無水物またはそのエステル化物と一括混合してエステル化反応させてもよいが、前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(a2)、その無水物またはそのエステル化物とを予め反応させた後に、ヒドロキシカルボン酸(a3)を混合しエステル化反応させてもよい。
前記エステル化触媒(D)としては、周期律表2族、3族、及び4族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又はそれらの金属化合物からなるものを使用することが好ましい。前記エステル化触媒(D)としては、例えば、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属、又は金属化合物からなる重合触媒を使用することが好ましく、具体的には、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等を使用することが好ましい。
また、前記エステル化触媒(D)の使用量は、通常、反応が制御でき、かつ良好な品質が得られる量であればよく、一般的にジオール(a1)とジカルボン酸(a2)等とヒドロキシカルボン酸(a3)との合計量に対し、10〜1000ppmの範囲であることが好ましく、20〜800ppmの範囲であることがより好ましく、ポリエステル(A’)の着色を低減する観点から、30〜500ppmの範囲が特に好ましい。
前記エステル化触媒(D)は、ジオール(a1)とジカルボン酸(a2)等とヒドロキシカルボン酸(a3)等の原料を仕込む際に添加しておいてもよく、減圧開始の際に添加してもよい。
また、前記エステル化触媒(D)は、前記ポリエステル(A’)製造後に、公知慣用の方法で失活させることが、後述するポリ乳酸やラクトンとの反応の際にこれらとの溶融混合時に副反応を抑制できることから好ましい。エステル化触媒(D)の失活方法としては、例えばキレート化剤を使用する方法がある。
前記キレート化剤としては、公知慣用の有機系キレート化剤あるいは無機系キレート化剤を使用することができる。有機系キレート化剤としては、例えば、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子としてN含有のフェノール類やカルボン酸等が好ましく挙げられる。又、無機キレート化剤としては、例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物が好ましい。
また、エステル化触媒(D)の失活剤の添加前後にポリエステル(B)を酸無水物、又は多価イソシアネート、又は過酸化物等を用いて、公知慣用の方法でこれら反応させてポリエステル(B)の化学構造を分岐状にして、更に高分子量化のポリエステル(B)とすることもできる。
前記ポリエステル(A’)を製造する際の温度は、150〜260℃の範囲であることが好ましく、180〜230℃の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(A’)を製造する際の重合時間は2時間以上であることが好ましく、4〜60時間の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(A’)を製造する際の減圧度は、10torr以下であることが好ましく、2torr以下であることがより好ましい。
前記ポリエステル(A’)を製造する際に使用する前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(a2)、その無水物またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)との仕込み割合は、得られるポリエステル(A’)の両末端が水酸基となるような割合であれば特に限定されないが、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)は、前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(a2)、その無水物またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)との全量に対して1〜50モル%の範囲で使用することが好ましく、3〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。かかる範囲内のヒドロキシカルボン酸を添加することによって、ポリエステル(A’)中の前記ジオール(a1)と、ジカルボン酸(a2)、その無水物またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)の分子配列をランダムにすることができる。これにより、ポリエステル(A’)中の副生成物の生成の抑制、重合反応速度の向上が期待できる。特にヒドロキシカルボン酸(a3)が乳酸である成形用樹脂は、ポリ乳酸との相溶性の向上、性能面では、柔軟性、透明性を向上させることができる。
次に、前記ブロック共重合体(C)が有するポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)について説明する。
前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)を構成するポリヒドロキシカルボン酸(B’)としては、分子内にヒドロキシル基を有する脂肪族カルボン酸類の繰り返し単位からなるものであればよく、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体等を単独で使用または2種以上併用することができる。前記ポリヒドロキシカルボン酸(B’)としては、成形加工性を付与するためにポリ乳酸を主成分として使用することが好ましい。すなわち、ポリヒドロキシカルボン酸(B’)中に含まれるポリ乳酸の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、100質量%使用することが最も好ましい。ポリヒドロキシカルボン酸(B’)としてポリ乳酸を50質量%以上用いたブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂は、良好な透明性を有し、かつ優れた柔軟性、耐衝撃性を有する。また、かかる成形用樹脂は、ポリ乳酸と混合して使用した場合に該ポリ乳酸の透明性等を損なうことなく、優れた柔軟性をポリ乳酸に付与することが可能である。
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸(B’)としては、ポリ乳酸のように繰り返し単位中に不斉炭素原子を有するもの場合、L体、D体、L体とD体の混合物(混合比率は特に限定しない)、ラセミ体の何れも使用することができる。
前記ポリヒドロキシカルボン酸(B’)としては、優れた柔軟性、透明性、風合いを有する成形用樹脂を得るうえで、またはポリ乳酸に優れた柔軟性、成形加工性等の性能を付与するうえで、重量平均分子量5,000〜400,000の範囲のものを使用することが好ましく、10,000〜300,000の範囲のものを使用することがより好ましく、15,000〜300,000の範囲のものを使用することが特に好ましい。
また、本発明の成形用樹脂としては、回転型レオメーターを用いて周波数1Hz、温度が成形用樹脂の融点〜融点+50℃の範囲内の測定条件で歪みを1〜60%まで変化させた時に、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G’(M%)が歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲であるものを使用することが好ましい。
上記の回転型レオメーターとしては特に限定されないが、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製アレス粘弾性測定装置を使用することができる。
また、測定条件は、周波数:1Hz、温度:成形用樹脂の融点〜融点+50℃の範囲が好ましいが、成形用樹脂の融点以降の粘度が低い場合には、成形用樹脂の融点〜融点+30℃の範囲がより好ましい。
パラレルプレート:25mmφ、ギャップ(パラレルプレート間の距離):0.5〜2.0mmの範囲内であれば特に制限されないが、0.5〜1.0mmが特に好ましい。又、パラレルプレートの他にコーンプレートも好ましく用いることができる。
上記条件にて、歪みを変化させたときの貯蔵弾性率(G’)との関係を示す曲線を測定する。成形用樹脂は、歪みを1〜60%まで変化させたとき、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G'(M%)が歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲内にあることが好ましく、95〜100%の範囲内にあることが特に好ましい。
本発明の成形用樹脂を構成するブロック共重合体(C)は、例えば前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させて得られる前記ポリエステル(A’)、及びポリヒドロキシカルボン酸(B’)を、エステル化触媒(D)の存在下、減圧条件にてエステル化反応させ、得られた反応物を回転型レオメーターを用いて、周波数1Hz、温度が該反応物の融点〜融点+50℃の範囲内の測定条件で、歪みを1〜60%まで変化させた時、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G’(M%)が歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲となる時点まで当該エステル化反応を継続させることにより製造することができる(方法1)。
前記(方法1)での反応温度は、170〜220℃の範囲であることが好ましく、180〜210℃の範囲であることがより好ましい。前記範囲の温度で反応させることによって、得られるブロック共重合体(C)の分子量の低下を抑制することが可能である。
また、前記(方法1)での減圧度は、高真空である程、重合反応が速やかに進行するので好ましい。具体的には2kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましく、0.5kPa以下が特に好ましい。
前記エステル化触媒(D)の種類は、前記ポリエステル(A’)を製造する際に使用できるものとして例示したエステル化触媒(D)と同様のものを使用することができる。
また、水分は、一般に得られるブロック共重合体(C)の分子量の低下を招くため、特に前記ポリエステル(A’)としては、反応前に十分に乾燥させたものを使用することが好ましい。
上記エステル化触媒(D)の使用量は、ポリエステル(A’)とポリヒドロキシカルボン酸(B’)との合計量に対して50〜500ppmの範囲が好ましく、50〜300ppmの範囲がより好ましく、50〜200ppmの範囲が特に好ましい。該製法によって得られるブロック共重合体は、触媒の使用量がかかる範囲であれば、反応中にポリ乳酸の分子鎖の切断が抑えられ、さらにはブロック共重合体の分子量低下が抑制され、良好な色相を有する。
また、前記ブロック共重合体(C)は、例えば前記ポリエステル(A’)、及びラクトンを、開環重合触媒(D’)の存在下にて反応させることにより製造することができる(方法2)。
ラクトンと、前記ポリエステル(A’)とを開環重合触媒(D’)の存在下で反応させ前記ブロック共重合体(C)を製造する方法としては、例えば所定温度に設定した反応釜中に、前記ポリエステル(A’)と前記ラクトンとを適当な良溶媒中に分散、均一化し、次いで、開環重合触媒(D’)を添加して反応させる。
前記ラクトンとしては、例えば5員環および6員環のラクトンを使用することが好ましく、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、及びこれらの混合物等を使用することがより好ましい。
反応温度としては、反応が実質的に進行すればよく、得られるブロック共重合体(C)の着色及び熱分解を防止する観点から150〜220℃の範囲であることが好ましく、160〜210℃の範囲であることがより好ましく、170〜200℃の範囲であることが特に好ましい。
また、前記(方法2)は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。また、反応系内中の水分は、一般に得られるブロック共重合体(C)の分子量の低下を招くため、特に前記ポリエステル(A’)としては、反応前に十分に乾燥させたものを使用することが好ましい。
前記開環重合触媒(D’)としては、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、Ge、Co、Fe、Al、Mn、Hf等のアルコキサイド等が挙げられる。これらの中でも、錫粉末、オクタン酸スズ、2−エチルヘキシル酸錫、ジブチルスズジラウレート、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応に対する活性作用が高い重合触媒のため好ましい。
また、本発明の成形用樹脂を構成するブロック共重合体(C)は、例えば前記ポリエステル(A’)、及びポリヒドロキシカルボン酸(B’)とをエステル化触媒(D)を用いて、高沸点溶媒の共存下、減圧条件で共沸脱水重縮合反応させる方法等で製造することもできる(方法3)。
前記ポリエステル(A’)とポリヒドロキシカルボン酸(B’)とを共重合反応することにより前記ブロック共重合体(C)を製造する方法としては、例えば、前記ポリエステル(A’)とポリヒドロキシカルボン酸(B’)とを高沸点溶媒及びエステル交換触媒の存在下、高減圧下で共沸脱水重縮合反応する方法がある。
前記高沸点溶媒としては、例えばキシレン、アニソール、ジフェニルエーテル等を好ましく使用できる。また、減圧度は、高沸点溶媒が系内を還流させることが目的で、1000〜3000Paの範囲内であることが好ましい。なお、減圧下で反応させる場合には、前記高沸点溶媒が還流するような装置を用いることが好ましい。
また、水分は、一般に得られるブロック共重合体(C)の分子量の低下を招くため、特に前記ポリエステル(A’)としては、反応前に十分に乾燥させたものを使用することが好ましい。
前記ブロック共重合体(C)を製造する方法としては、前記(方法1)〜(方法3)のなかでも、溶媒を除去する必要のない(方法1)、及び(方法2)が好ましい。
前記ブロック共重合体(C)は、例えば多環能ポリオール、酸無水物、多価イソシアネート、エポキシ化合物、過酸化物等を用いることにより、その化学構造を分岐状にする等して高分子量化されていてもよい。
前記した各種方法で得られたブロック共重合体(C)からなる成形用樹脂は、その製造後に適当な溶媒を用いて、成形用樹脂を製造する際に使用した前記エステル化触媒(D)や前記開環重合触媒(D’)等を抽出除去する方法、または前記キレート化剤を用いて前記エステル化触媒(D)や前記開環重合触媒(D’)を失活させることにより、その保存安定性を更に向上させることができる。
前記成形用樹脂は、他に、必要に応じてその他樹脂、一般の可塑剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。
前記その他樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンに代表される汎用樹脂や、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、酢酸セルロース等に代表される生分解性樹脂、ポリエチレンオキサイド、MBS樹脂、ABS樹脂等を使用することができ、なかでも環境負荷低減の観点から生分解性樹脂が特に好ましく使用することができる。
本発明の成形用樹脂は、各種成形品、包装用材料をはじめ、ポリ乳酸等の各種樹脂用の改質剤に使用できる。また、本発明の成形用樹脂は、前記した用途以外にも塗料用樹脂、インキ用樹脂、トナー用樹脂、エマルジョン用樹脂、接着剤用樹脂、衛生材料、医療用材料、繊維材料、農業資材、漁業資材、紙等へのラミネーション用材料、発泡樹脂材料、パウダースラッシュ成形用樹脂、ドット接着用樹脂、合皮用樹脂等として好ましく使用することができる。
次に、本発明の成形用樹脂とポリ乳酸とを含有するポリ乳酸樹脂組成物について説明する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、前記成形用樹脂、ポリ乳酸、及び必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物に用いるポリ乳酸の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、50,000〜400,000の範囲がより好ましく、100,000〜300,000の範囲が特に好ましい。かかる範囲の重量平均分子量であれば、ポリ乳酸樹脂組成物は優れた機械的強度、成形加工性を有する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸と前記成形用樹脂とを加熱溶融混練することで製造することができる。また、ポリ乳酸に予め高濃度の前記成形用樹脂を加熱溶融混錬して得られたマスターバッチを、ポリ乳酸と加熱溶融混錬することで製造することができる。この際、前記マスターバッチに所望に応じて各種添加剤を混合しておいてもよい。前記各種添加剤としては、公知慣用の有機フィラー、無機フィラー(タルク、シリカ等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、各種カップリング剤、難燃材、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、天然材料、その他樹脂等を必要に応じて使用することもできる。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物に含まれる、ポリ乳酸と前記成形用樹脂との質量割合は、特に限定されるものではないが、97/3〜10/90の範囲であることが好ましく、90/10〜20/80の範囲であることがより好ましく、85/15〜40/60の範囲であることが特に好ましい。前記範囲の質量割合であるポリ乳酸樹脂組成物は、優れた柔軟性、透明性、機械的強度を有し、かつ該成形用樹脂のブリードを抑制することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性は、前記成形用樹脂の使用量、及び得られたフィルム状の成形物の延伸倍率を調整することにより任意に調整することが可能である。例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を厚さ35μmの9倍に延伸して得られた2軸延伸フィルムのフィルムインパクト値は1.0〜5.0Jの範囲である。なお、ポリ乳酸を単独で使用した場合のフィルムインパクト値は約0.90Jである。
なお、通常、厚みによりシートなる用語とフィルムなる用語とを慣用的に使い分けているが、本明細書では、混乱を避けるために総称してフィルムと記載する。また、フィルムの厚みには特に制限はないが、ここでは一般的に用いられている5μm〜2mmの範囲のものをいう。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の柔軟性は、前記成形用樹脂の使用量を調製することにより任意に調整することができる。例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物を成形して得られた厚さ200μmのフィルムの、動的粘弾測定装置(レオメトリックス株式会社製RSAII)を用いて測定周波数6.28(rad/s)で測定した貯蔵弾性率(以下、E'と省略する。)は、0.5〜3.5GPaの範囲である。なお、25℃におけるポリ乳酸からなるフィルムのE'は3.5〜4.0GPaの範囲である。
前記柔軟性は、引張り試験機(オリエンテック製、RTM−100)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下で、前記フィルムの引張り試験を行うことで評価することができる。前記試験は、幅5mm及び長さ300mmの短冊状に切り出したフィルムを、チャック間250mm、引張速度10mm/minで行うことができ、かかる試験により描かれた引張曲線から引張弾性率及び引張強度を求めることができる。ここで、引張弾性率は、降伏点強度の1/2の強度と歪みから算出される。なお、引張弾性率は、25℃におけるポリ乳酸のフィルムの引張弾性率が、3.6GPa〜4.5GPaの範囲であるのに対し、本発明の成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物は、3.5GPa以下であることが実用上好ましく、0.5〜3.0GPaの範囲であることが実用上より好ましい。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性は、ポリ乳酸単独の耐熱性と比較して実用上十分なレベルを有している。前記耐熱性の評価は、例えば、示差走査熱量計(TAインスツルメンタル社製、Q100)を用いて測定したガラス転移温度(以下、Tgと省略する。)に基づき行うことができる。ポリ乳酸のTgは、約55〜65℃の範囲であるのに対して、例えば前記ポリ乳酸100質量部に対して前記成形用樹脂を30質量部含有するポリ乳酸樹脂組成物のTgは、少なくとも30℃以上であり、かかるTgの差であれば、ポリ乳酸の耐熱性を、実用上可能なレベルで維持しているといえる。
また、前記ポリ乳酸樹脂組成物の透明性は、ポリ乳酸の透明性と比較して実用上十分なレベルを有している。例えば、加熱プレス機を用いて成形した前記ポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルム(膜厚200μm)のヘーズ値は、成形用樹脂の使用量に関わらず、ヘーズ値が好ましくは1〜10%の範囲、更に好ましくは1〜8%の範囲、特に好ましくは1〜5%の範囲のものを得ることができる。
前記したような優れた透明性を有するポリ乳酸樹脂組成物は、該組成物中に含まれる成形用樹脂が有するポリエステル構造単位(A)を構成するジオール(a1)として分岐ジオール、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等を、ジカルボン酸(a2)としてコハク酸、アジピン酸、及びこれら混合物を使用することにより得ることができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、良好な透明性及び生分解性を有し、かつ優れた柔軟性や成形加工性を有するが、より優れた柔軟性を付与する目的で、更に公知慣用の可塑剤を使用することができる。前記可塑剤としては、生分解性を有し、かつ前記成形用樹脂との相溶性が良好であるものを使用することが好ましい。
具体的には、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪族多価アルコールエステル、オキシ酸エステル、グリセリンアルキレート又はジグリセリンテトラアルキレート、ロジンエステル、天然油脂及びそれらの誘導体を好ましく挙げることができる。これら可塑剤としては、1種または2種以上混合して使用も何ら差し支えがない。
脂肪族多塩基酸エステルとしては、例えば、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等が好ましく挙げられる。
脂肪族多価アルコールエステルとしては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリジエチレングリコールモノオレイルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリジエチレングリコールモノオレイルエーテル、トリアセチン、グリセリントリプロピオネート、等が挙げられる。
オキシ酸エステル類としては、例えば、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、アセチルトリブチルクエン酸等が挙げられる。特に、トリアセチン、アセチルトリブチルクエン酸、ジブチルセバケート、トリエチレングリコールジアセテートは、結晶性ポリ乳酸(A)との相溶性に優れ、特に好ましく用いられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。
グリセリンのアセチル化物としては、一般式(1)〔化1〕で表されるグリセリンエステルである。
Figure 2007269842
式中、R1、R2、及びR3の少なくとも1つは炭素数6〜18のアシル基であり、残りが水素原子またはアセチル基で表される化合物を好ましく挙げることができる。
上記一般式(1)で表されるグリセリンエステルのアセチル基はグリセリン1モルに対して平均2モル以下である。炭素数6〜18のアシル基(以下、C6〜18アシル基という)は、グリセリン1モルに対して平均0.9モル以上である。アセチル基とC6〜18アシル基の総量がグリセリン1モルに対して平均2.7〜3.0モルの範囲のものである。好ましくは、アセチル基とC6〜18アシル基の総量が、グリセリン1モルに対して平均2.9〜3.0モルの範囲のものである。また、成形用樹脂(C)の可塑化効果及び非ブリード性等の観点から、このグリセリンエステルにおいて、C6〜18アシル基のうち、アシル基の炭素数が8〜18のものが好ましい。
更に上記一般式(1)において、R1、R2、及びR3の少なくとも1つが炭素数8〜18のアシル基であり、残りがアセチル基であるエステルがさらに好ましい。特に好ましいものとして、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノラウレート、及びグリセリンジアセトモノオレートが挙げられる。化合物(A)は単独で使用しても、混合して使用してもよい。代表的な市販品として、リケマールPL−004、PL−007、PL−009、PL−012、PL−014〔理研ビタミン(株)製、商品名〕等が挙げられる。
ロジンエステルとしては、ロジンとアルコール化合物またはエポキシ化合物とをエステル化反応させたものを用いることができる。
前記ロジンエステルの原料として使用される前記アルコール化合物としては、特に限定はなく各種公知の多価アルコールが使用できる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知の2価アルコール、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られた2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール;ジペンタエリスリトール等の6価アルコール;エチレングリコールやグリセリン等の脂肪族多価アルコールを開始剤とした酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体や共重合体等のポリエーテルポリオール類等が例示できる。これらアルコール化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらアルコール化合物のうち芳香環を有するものは、得られるロジンエステル自体の加熱安定性が良好で色調悪化が極めて少ないため特に好ましい。
前記ロジンエステルの原料として使用される前記エポキシ化合物としては、特に限定されず各種公知のモノエポキシ化合物や多価エポキシ化合物等が使用できる。モノエポキシ化合物としては、例えばn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル;バーサティック酸グリシジルエステル、前記ロジンのグリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル;スチレンオキサイド、シクロへキセンオキサイド等が挙げられる。
ジエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の非環状脂肪族ジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA系高分子量エポキシ樹脂、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−(β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等の芳香族または環状脂肪族ジグリシジルエーテル、無水フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族または環状脂肪族ジグリシジルエステル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロへキセンジオキサイド等の環状脂肪族環状オキシラン等のジエポキシ化合物が挙げられる。
トリエポキシ化合物としては、例えばトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等が挙げられる。またテトラエポキシ化合物としては、例えば1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル等が挙げられる。その他のポリエポキシ化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型樹脂のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらエポキシ化合物のうち芳香環を有するものは、得られるロジンエステル自体の加熱安定性が良好で色調悪化が極めて少ないため特に好ましい。
上記アルコール化合物またはエポキシ化合物と前記ロジンとの反応は、特に制限されず公知の反応条件を採用して容易に行うことができる。なお、エステル化工程においては必要により、例えば各種公知の有機燐系化合物等の安定剤やエステル化促進剤等を添加できることはもとよりである。代表的な市販品として、ラクトサイザーGL−2001〔荒川化学工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
天然油脂及びそれらの誘導体としては、例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油が挙げられる。
前記した可塑剤の添加量は、本発明を損なわなければ何ら差し支えがない。
また、本発明の成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物は、その他の各種添加剤として、公知慣用の有機フィラー、無機フィラー(タルク、シリカ等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、各種カップリング剤、難燃材、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、天然材料を必要に応じて使用することもできる。これら添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、成形用樹脂、又はポリ乳酸樹脂組成物に対して、0.01〜30質量%の範囲で添加することが好ましく、0.01〜20質量%の範囲で添加することがより好ましく、0.01〜10質量%の範囲で添加することが特に好ましい。
本発明の成形用樹脂やポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品は、35℃で湿度80%の恒温恒湿器に放置された場合であっても、これら成形品表面から200日以上ブリード物が発生することはない。
また、成形用樹脂やポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品等は、良好な分解性を有し、海中に投棄された場合でも、加水分解、生分解等による分解を受ける。海水中では数カ月の間に外形を保たないまでに分解可能である。また、コンポストを用いると、更に短期間で原形をとどめないまでに生分解され、また焼却しても有毒ガスや有毒物質を排出することはない。成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物は、自然保護の見地からみても極めて有用である。
本発明の成形用樹脂、及び本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えばTダイキャスト成形法やインフレーション成形法等の押出成形法等をはじめとする公知慣用の方法により、容易にフィルムに成形することができる。前記フィルムの厚みは、特に制限されないが、一般的に用いられている5μm〜2mmの範囲であることが好ましい。
前記した各種成形法により成形された、加熱溶融状態のフィルムは、通常、所定の厚みになるようにキャスティングされ、必要により冷却・固化される。その際、タッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一なフィルムを作製することができる。
前記フィルムは、該フィルムを構成する成形用樹脂またはポリ乳酸樹脂組成物のTg以上、融点以下の温度でテンター方式やインフレーション方式等の公知慣用の方法で一軸及び二軸に延伸することができる。延伸温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のTg〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、Tg〜(Tg+30)℃の範囲が特に好ましく設定することができる。但し、ここではTgが2つ以上ある場合、いずれかの高い温度のTgを指すものとする。延伸温度がTg未満では延伸が困難であり、(Tg+50)℃を越えると延伸による強度向上が認められないことがある。延伸処理を施すことにより、作製するフィルムに分子配向を生じさせ、柔軟性、透明性、耐衝撃性、及び耐熱性等のより一層の向上させることができる。
一軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸又はテンターによる横延伸により、縦方向又は横方向に1.3〜10倍延伸することが好ましい。二軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸及びテンターによる横延伸により行うことが好ましい。
前記延伸は、一軸目の延伸と二軸目の延伸を逐次的に行っても、同時に行っても良い。延伸倍率は、縦方向及び横方向にそれぞれ1.3〜6倍延伸するのが好ましい。延伸倍率がこれ以上低いと十分に満足し得る強度を有するフィルムが得難く、また、高いと延伸時にフィルムが破れてしまい好ましくない。なお、シュリンクフィルム等の特に加熱時の収縮性を要求するような場合には、一軸或いは二軸方向への3〜6倍等の高倍率延伸が好ましい。
また、フィルムの耐熱性を向上させるためには、延伸直後に、延伸された状態で熱セット処理を行うことが、フィルムの(収縮を抑制し、)歪みを除去し、または結晶化を促進させることができるため好ましい。熱セット処理温度は、結晶化温度(Tc)より20℃低い温度から、ポリ乳酸の融点未満の温度の範囲で行うことができるが、70〜150℃の範囲、より好ましくは90〜150℃の範囲で行うと、耐熱性だけではなく引張伸度、引張強度等の他のフィルム物性を向上させることができる。
熱セット処理時間は通常1秒から30分間であるが、生産性等の実用性を考えた場合、この時間は短い程良いため、好ましくは1秒〜3分間、より好ましくは1秒〜1分間である。フィルム等の成形の際、公知慣用の有機系又は無機系充填剤等の一般的なフィラーを添加することもできる。
フィルムの二次加工法としては、公知慣用の成形方法を利用することができる。例えば、比較的厚みのあるフィルムを二次加工する場合には、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等を利用することができる。また、比較的厚さの薄いフィルムを二次加工する場合には、例えば包装資材等を製造する場合には、横ピロー製袋機、縦ピロー製袋機、ツイストバック製袋機等の通常の製袋機を利用することができる。
前記以外の加工製品、具体的にはカップや皿などの容器を成形する場合には、通常の射出成型機、ブロー成形機、プレス成形機等を使用することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えば、トレー、カップ、皿、ブリスター、ブロー成形品、シャンプー瓶、OA筐体、化粧品瓶、飲料瓶、オイル容器、射出成形品(ゴルフティー、綿棒の芯、キャンディーの棒、ブラシ、歯ブラシ、ヘルメット、注射筒、皿、カップ、櫛、剃刀の柄、テープのカセット及びケース、使い捨てのスプーンやフォーク、ボールペン等の文房具等)等に有用である。
包装材料としては、シート用材料、フィルム用材料等、より具体的には、シュリンクフィルム、蒸着フィルム、ラップフィルム、食品包装、その他一般包装、ゴミ袋、レジ袋、一般規格袋、重袋等の袋類等、衛生材料としては紙おむつ、生理用品、医療用材料としては創傷被覆材、縫合糸等、繊維材料としては織物や編物をはじめ、レース、組物、網、フェルト、不織布等、農業資材として発芽フィルム、種ヒモ、農業用マルチフィルム、緩効性農薬及び肥料のコーテイング剤、防鳥ネット、養生フィルム、苗木ポット等、漁業資材としては漁網、海苔養殖網、釣り糸、船底塗料等、その他に、結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、パンティーストッキング、ヘアーキャップ、スポンジ、セロハンテープ、傘、合羽、プラ手袋、ヘアーキャップ、ロープ、チューブ、発泡トレー、発泡緩衝材、緩衝材、梱包材、煙草のフィルター等の多分野にわたる用途に使用することが可能である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明について更に詳細に説明する。
[数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法]
東ソー株式会社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(以下、GPCと省略する。)「HLC−8220」を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM-Mを2本、及びTSK gel SuperHZ-2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、標準ポリスチレンとの比較で成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物の分子量を測定した。
[ガラス転移温度の測定方法]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」(以下、DSCと省略する。)が安定化した後、成形用樹脂、またはポリ乳酸樹脂組成物の約10mgをDSCに入れ、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度50℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行い、この間に描かれるDSC曲線のガラス転移温度を検出した。
[ポリエステル(A’)を構成するジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位、及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比、及び成形用樹脂を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位の質量組成比の測定方法]
1H−NMR装置(日本電子株式会社製、JNM−LA300)を用いて、ポリエステルのクロロホルム−d(CDCl)溶液を分析することで、該ポリエステルを構成する中のジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位、及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比(モル%)を測定した。
また、成形用樹脂のクロロホルム−d(CDCl)溶液を前記と同様の装置を用いて分析することで、該成形用樹脂を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位との質量組成比(質量%)を測定した。
[溶融粘弾測定]
成形用樹脂の歪み―G’曲線を得るためにティー・エイ・インスツルメント社製アレス粘弾性測定装置を用いて測定した。測定条件は、周波数:1Hz、測定温度:180℃、治具:パラレルプレート(25mmφ)、ギャップ(パラレルプレート間の距離):1mm。得られた歪み―G’曲線から、歪み1%の時の貯蔵弾性率 G’(1%)と、歪み60%の時の貯蔵弾性率 G’(60%)を読みとり、G’(1%)とG’(100%)との比(G’(60%)/G’(1%))の割合を算出した。
[柔軟性の評価方法]
1.フィルムの動的粘弾性測定
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。次いで、動的粘弾測定装置(以下、DMAと省略する。レオメトリックス株式会社製RSAII)を用いて、前記フィルムを昇温速度2℃/min、測定周波数6.28(rad/s)、測定温度範囲−100℃〜150℃の範囲で貯蔵弾性率(以下、E'と省略する。)を測定した。なお、E’は概ね3.0GPa以下であることが実用上好ましい。
2.フィルムの引張弾性率測定
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。次いで引張り試験機(オリエンテック製、RTM−100)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下で、前記フィルムの引張り試験を行った。試験はフィルムを5mm幅、長さ300mmの短冊状に切り出し、チャック間250mm、引張速度10mm/minの条件で行った(JIS K 7127に準拠)。引張弾性率は、降伏点強度の1/2の強度と歪みから算出した。
なお、引張弾性率は、前記フィルムは、3.0GPa以下であることが実用上好ましい。
[成形加工性の評価方法]
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。次いで引張り試験機(オリエンテック製、RTM−100)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下で前記フィルムの引張り試験を行い、引張強度を測定した。引張強度が、概ね30〜60の範囲であるフィルムは、成形加工性と柔軟性とに優れるため好ましい。
[光学特性の評価方法]
1.ヘーズ値の測定
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを5cm×5cmの正方形(200μm厚み)に切り抜き、濁度計(日本電色工業株式会社製ND−1001DP)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のヘーズ値を測定した。なお、ヘーズ値は、概ね10%以下であることが実用上好ましく、5%以下であることが実用上より好ましい。
2.グロス値の測定
前記ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂からなるフィルムを、10cm×10cmの正方形(200μm厚み)に切り抜き、ヘイズ・グロスリフレクトメーター(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のグロス値(60°鏡面光沢度)を測定した。なお、グロス値は、概ね90%以上であることが実用上好ましく、100%以上であることが実用上より好ましい。
[ブリードの測定方法及び評価]
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを15cm×15cmの正方形(200μm厚み)に切抜き、該正方形のフィルムを40℃、湿度90%の条件に保った恒温恒湿器(エスペック社製、型式PR−2F)内に200日放置し、耐ブリード試験を行った。200日以上経過してもいずれもブリードが認めらなかったものを(ブリード)無、200日以内にブリードが認められたものを(ブリード)有と評価した。
[風合い評価]
ポリ乳酸樹脂組成物または成形用樹脂を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルム、及びそれらを後述する方法により二軸延伸して得られた延伸フィルム(厚み30μm)の風合いを、ポリ乳酸からなるフィルムを比較材料に用い、触手にて4段階で評価した。すなわち、ポリ乳酸固有の耳障りなシャリシャリ感を有するものを×、やや耳障りなシャリシャリ感を有するものを△、ポリプロピレンレンライクな滑らかな風合いを有するもの○、特にポリエチレンライクな滑らかな風合いを有するもの◎とした。
《参考例1》ポリエステル(A’−1)の製造
反応器にSuAを550.0gとPGを383.6gとD,L-乳酸(以下、LAと省略する。)90質量%水溶液を31.8gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。2時間後、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを、SuAとPGとLAとの合計量に対して70ppmを加えて、3000Paまで減圧し加熱撹拌した。減圧3時間後、さらに100Paまで減圧し、7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステル(A’−1)に対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が14,000、重量平均分子量が22,000のポリエステル(A’−1)を得た。なお、前記ポリエステル(A’−1)の酸価は0.5、ガラス転移温度は−4℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位とLA由来の構造単位との割合は50.4/46.6/3.2(モル%)であった。
《参考例2》ポリエステル(A’−2)の製造
反応器にSuAを390.6gとPGを280.2gとLA90質量%水溶液を318.0gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。2時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SuAとPGとLAとの合計量に対して70ppmを加えて、3000Paまで減圧し加熱撹拌した。減圧3時間後、さらに100Paまで減圧し、7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステル(A’−2)に対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が17,000、重量平均分子量が25,000のポリエステル(A’−2)を得た。なお、ポリエステル(A’−2)の酸価は0.6、ガラス転移温度は4℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位とLA由来の構造単位の割合は29.7/34.8/35.5(モル%)であった。
《参考例3》ポリエステル(A’−3)の製造
反応器にAAを818.0gとPGを493.0gとLA90質量%水溶液を214.0gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。2時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、AAとPGとLAとの合計量に対して70ppmを加えて、3000Paまで減圧し加熱撹拌した。減圧3時間後、さらに100Paまで減圧し、7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステル(A’−3)に対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が20,000、重量平均分子量が29,000のポリエステル(A’−3)を得た。なお、ポリエステル(A’−3)の酸価は0.5、ガラス転移温度は−33℃、PG由来の構造単位とAAと由来の構造単位とLA由来の構造単位との組成比は44.4/45.5/10.1(モル%)であった。
《参考例4》ポリエステル(A’−4)の製造
反応器にコハク酸(以下、SuAと省略する。)を500.0gとプロピレングリコール(以下、PGと省略する。)496.1gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。2時間後、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドをSuAとPGとの合計量に対して70ppmを加えて、3000Paまで減圧し加熱撹拌した。減圧3時間後、さらに100Paまで減圧し、7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステル(A’−4)に対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が15,000、重量平均分子量が24,000のポリエステル(A’−4)を得た。なお、ポリエステル(A’−4)の酸価は0.5、ガラス転移温度は−5℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位との割合は51.9/48.1(モル%)であった。
《参考例5》ポリエステル(A’−5)の製造
反応器にアジピン酸(以下、AAと省略する。)を550.0gとPGを315.1gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。2時間後、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを、AAとPGとの合計量に対して70ppmを加えて、3000Paまで減圧し加熱撹拌した。減圧3時間後、さらに100Paまで減圧し、7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステル(A’−5)に対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が15,000、重量平均分子量が24,000のポリエステル(A’−5)を得た。なお、ポリエステル(A’−5)の酸価は0.4、ガラス転移温度は−4℃、PG由来の構造単位とAA由来の構造単位との組成比は50.2/49.8(モル%)であった。
Figure 2007269842
Figure 2007269842
《実施例1》成形用樹脂Iの製造
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−1)を50質量部仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、数平均分子量88,000で重量平均分子量148,000のポリ乳酸(三井化学株式会社製、レイシアH440、以下、「PLA1」と省略。)を55質量部添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを前記溶融混合物に対して250ppm添加し、温度200℃及び減圧度150Paの条件下で4.5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを、得られた反応物に対して550ppmを添加することで、数平均分子量が25,000、重量平均分子量が35,000のブロック共重合体(C−1)からなる成形用樹脂I(ガラス転移温度:19℃、融点:143℃)を得た。
《実施例2》成形用樹脂IIの製造
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−2)を50質量部仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を55質量部添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを前記溶融混合物に対して250ppm添加し、温度200℃及び減圧度150Paの条件下で4.5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを反応物に対して550ppmを添加することで、数平均分子量が29,000、重量平均分子量が41,000のブロック共重合体(C−2)からなる成形用樹脂II(ガラス転移温度:26℃、融点:148℃)を得た。
《実施例3》成形用樹脂IIIの製造
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−3)を50質量部仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を55質量部添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを前記溶融混合物に対して200ppm添加し、温度200℃及び減圧度100Paの条件下で5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを反応物に対して450ppmを添加することで、数平均分子量が33,000、重量平均分子量が47,000のブロック共重合体(C−3)からなる成形用樹脂III(ガラス転移温度:−1℃、融点:141℃)を得た。
《実施例4》成形用樹脂IVの製造
180℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−2)を30質量部仕込み加熱溶融した。その後、L−ラクチド(以下、LACと省略する)を70質量部と、ポリエステル(A’−2)とLACとの合計量に対してトルエンを5質量部とを均一に溶融混合したものに、オクチル酸スズを溶融混合物に対して300ppm添加し、180℃にて5時間反応させた。反応終了後に2−エチルヘキサン酸ホスフェートを反応物に対して450ppmを添加することで、数平均分子量が55,000、重量平均分子量が88,000のブロック共重合体(C−4)からなる成形用樹脂IV(ガラス転移温度:40℃、融点:165℃)を得た。
《比較例1》成形用樹脂Vの製造
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−4)を50質量部仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を55質量部添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを溶融混合物に対して200ppm添加し、温度200℃及び減圧度100Paの条件下で3時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを反応物に対して400ppmを添加することで、数平均分子量が27,000、重量平均分子量が45,000のブロック共重合体(C−5)からなる成形用樹脂V(ガラス転移温度:17℃、融点:152℃)を得た。
《比較例2》成形用樹脂VIの製造
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(A’−5)を50質量部仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を55質量部添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトライソプロポキシドを前記溶融混合物に対して200ppm添加し、温度200℃及び減圧度100Paの条件下で3時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを反応物に対して400ppmを添加することで、数平均分子量が30,000、重量平均分子量が51,000のブロック共重合体(C−6)からなる成形用樹脂VII(ガラス転移温度:−40℃及び54℃、融点:146℃)を得た。
以上、実施例1〜実施例4で得られた成形用樹脂、及び比較例1〜比較例2で得られた成形用樹脂のポリエステル構造単位(A)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)との質量組成比を決定するため、1H−NMRスペクトル測定装置を用いて算出したところ、ほぼ仕込み組成比と同量であった。
Figure 2007269842
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表3、表4から、実施例で得られた成形用樹脂は、比較例で得られた成形用樹脂に比して特に耐ブリードに優れていた。このことから、実施例で得られた成形用樹脂は、ポリエステル(A’)からなる未反応物、または成形用樹脂の製造工程で生成された副生成物の量が少ないと考えられる。
《実施例5〜7》ポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−3)
80℃で3時間真空乾燥させたPLA1及び前記成形用樹脂I〜IIIを、それぞれ表5に示す配合割合にしたがって東洋精機株式会社製ラボ・プラストミルミキサーを用いて190℃、10分間溶融混練することによりポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−3)を得た。
《比較例3〜5》ポリ乳酸樹脂組成物(P−4)〜(P−6)
80℃で3時間真空乾燥させたPLA1及び前記成形用樹脂V〜VIを、それぞれ表6に示す配合割合にしたがって東洋精機株式会社製ラボ・プラストミルミキサーを用いて190℃、10分間溶融混練することによりポリ乳酸樹脂組成物(P−4)〜(P−6)を得た。
[ポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルムの作製方法]
実施例5〜7で得られたポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間、真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融、冷却固化させることで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。
《比較例6》PLA1(P−7)からなるフィルムの作製
PLA1を80℃、3時間真空乾燥させた後、205℃で加熱プレスすることにより、厚さ200μmのフィルムを作製した。
《実施例8》成形用樹脂(P−8)からなるフィルムの作製
成形用樹脂IVを80℃、3時間真空乾燥させた後、190℃で加熱プレスすることにより厚さ200μmの成形用樹脂からなるフィルムを作製した。
《実施例9》延伸フィルムの作製
ポリ乳酸樹脂組成物(P−3)を用いて作製した前記フィルム(厚み200μm)を、卓上型二軸延伸装置(岩本製作所株式会社製)を用いて、延伸温度60℃〜70℃の範囲で延伸倍率(縦×横:2.5×2.5(倍))の二軸延伸に供した。更に得られた二軸延伸フィルムは、熱処理温度120℃のオーブン中に1分間放置させ熱処理を行った。
《比較例8及び9》延伸フィルムの作製
ポリ乳酸樹脂組成物(P−4)及び(P−7)を用いて作製した前記フィルム(厚み200μm)を卓上型二軸延伸装置(岩本製作所株式会社製)を用いて、延伸温度60℃〜70℃の範囲で延伸倍率(縦×横:2.5×2.5(倍))の二軸延伸した。得られた二軸延伸フィルムは、熱処理温度120℃のオーブン中に1分間放置して熱処理を行った。
Figure 2007269842
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表5,表6より、比較例で示されたポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルムは、透明性を損なうことなく良好な柔軟性を付与することは可能であるが、食品包装材料をはじめとする様々な分野における高いレベルの柔軟性が求められる用途に適用可能な風合いには一歩及ぶものではないが、実施例で示されたポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルムは、柔軟性、光学特性、風合い、ブリードといったすべてを満足する優れたフィルムであった。
Figure 2007269842
表7より、比較例で示された二軸延伸フィルムは、透明性を損なうことなく良好な柔軟性を付与することは可能であるが、食品包装材料をはじめとする様々な分野における高いレベルの柔軟性が求められる用途に適用可能な風合いには一歩及ぶものではなかったが、実施例で示されたポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルムは、柔軟性、光学特性、風合い、ブリードといったすべてを満足する優れた延伸フィルムであった。
《微生物による分解性試験方法》
実施例1〜実施例4で得られた成形用樹脂、及び実施例5〜実施例7で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる前記フィルムを、金網に挟んだ状態で、45℃に保った電動コンポスト中に埋設し、30日〜60日間埋没した後に金網を取り出したところ、フィルムは殆ど原形をとどめていなかった。更に120日〜180日間埋没した後には、確認できない程に分解が進んでいた。このことから、本発明の成形用樹脂、及びポリ乳酸樹脂組成物は、生分解性にも優れるといえる。

Claims (15)

  1. ジオール(a1)、ジカルボン酸(a2)、及びヒドロキシカルボン酸(a3)を反応させて得られるポリエステル構造単位(A)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)とを有するブロック共重合体(C)からなることを特徴とする成形用樹脂。
  2. 前記ジオール(a1)が、脂肪族ジオール及び脂環族ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  3. 前記ジオール(a1)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  4. 前記ジカルボン酸(a2)が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及び無水コハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  5. 前記ヒドロキシカルボン酸(a3)が、乳酸及びグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  6. 前記ポリエステル構造単位(A)が、前記ジオール(a1)、前記ジカルボン酸(a2)、及び前記ヒドロキシカルボン酸(a3)を反応させて得られるランダム共重合体由来の構造単位である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  7. 前記ポリエステル構造単位(A)が、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)由来の構造単位を1〜50モル%有するものである、請求項1に記載の成形用樹脂。
  8. 前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)が、ポリ乳酸由来の構造単位である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  9. 前記ポリエステル構造単位(A)と前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B)との質量割合[(B)/(A)]が、95/5〜10/90の範囲である、請求項1に記載の成形用樹脂。
  10. 前記ブロック共重合体(C)が、10,000〜400,000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載の成形用樹脂。
  11. 前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させて得られるポリエステル(A’)、及びポリヒドロキシカルボン酸(B’)を、エステル化触媒(D)の存在下、減圧条件にてエステル化反応させ、得られた反応物を回転型レオメーターを用いて、周波数1Hz、温度が該反応物の融点〜融点+50℃の範囲内の測定条件で、歪みを1〜60%まで変化させた時、歪みM%(1<M≦60)の貯蔵弾性率G’(M%)が歪み1%の貯蔵弾性率G’(1%)の90〜100%の範囲となる時点まで当該エステル化反応を継続させることによりブロック共重合体(C)を得ることを特徴とする、成形用樹脂の製造方法。
  12. 前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させて得られるポリエステル(A’)、及びラクトンを、開環重合触媒(D’)の存在下で反応させることによりブロック共重合体(C)を得ることを特徴とする、成形用樹脂の製造方法。
  13. 前記ポリエステル(A’)が、エステル化触媒(D)の存在下、前記ジオール(a1)と、前記ジカルボン酸(a2)、その無水物、またはそのエステル化物と、前記ヒドロキシカルボン酸(a3)とを重縮合反応させる第一の工程、及び、前記エステル化触媒(D)を失活させる第二の工程によって得られるものである、請求項11または12に記載の成形用樹脂の製造方法。
  14. 請求項1〜11のいずれかに記載の成形用樹脂とポリ乳酸とを含有してなるポリ乳酸樹脂組成物。
  15. 請求項14に記載のポリ乳酸樹脂組成物からなるフィルム。

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