JP2007262575A - 溶銑脱燐方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行う方法において、処理後のスラグの塩基度が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように、溶銑を脱燐処理する。従来では操業上好ましくないと考えられてきた条件を敢えて組み合わせることにより、高いMn歩留まりを確保しつつ、脱燐反応を促進させて効率的な溶銑脱燐を行うことができる。
【選択図】図1
Description
一般に溶銑予備処理では、まず、酸化鉄等の固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行ない、この脱珪処理で発生したスラグを除去した後、精錬剤(媒溶剤)を添加して脱燐処理を行う。通常、脱燐処理の精錬剤としては石灰などのCaO系精錬剤を用い、酸素源としては固体酸素源(酸化鉄等)や気体酸素を用いる。また、処理容器としては、トーピードカー、取鍋(装入鍋)、転炉型容器などが用いられる。
Fレス操業では、CaOの滓化を図り、脱燐効率を維持することが重要であり、CaOを十分に滓化させるために比較的低いスラグ塩基度で操業(低C/S操業)を行うのが一般的である(例えば、特許文献1)。また、脱燐処理は熱力学的には処理温度が低い方が有利であるため、脱燐効率を高めるのに処理温度を比較的低くした操業が行われている(例えば、特許文献2,3)。
したがって本発明の目的は、高いMn歩留まりを確保しつつ、脱燐反応を促進させて効率的な溶銑脱燐を行うことができ、しかも設備負担も少ない溶銑脱燐方法、とりわけ、これをF源添加量を極力少なくし若しくはF源無添加で実現することができる溶銑脱燐方法を提供することにある。
[1]溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行う方法において、
処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO2)が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[2]上記[1]の溶銑脱燐方法において、処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO2)が2.2超え3.0以下となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[3]上記[1]又は[2]の溶銑脱燐方法において、溶銑の処理終点温度が1320〜1400℃となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの溶銑脱燐方法において、処理後のスラグのT.Fe濃度が15〜25mass%となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[6]上記[5]の溶銑脱燐方法において、処理後のスラグの酸化チタン(但し、TiO2換算)とAl2O3の含有量の合計が3〜15mass%となるように、酸化チタン源又は/及びAl2O3源を添加することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの溶銑脱燐方法において、処理後のスラグのF濃度が0.2mass%以下となるように、精錬剤を添加することを特徴とする溶銑脱燐方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの溶銑脱燐方法において、溶銑を粗鋼で要求されるP含有量(鋼の成分規格値)以下に脱燐することを特徴とする溶銑脱燐方法。
また、請求項2〜4に係る発明によれば、処理後のスラグ塩基度、T.Fe濃度、溶銑の処理終点温度をより好ましい限定的な範囲とすることにより、Mn歩留まりと脱燐効率をより高めることができる。
また、請求項5,6に係る発明によれば、酸化チタン源又は/及びAl2O3源を精錬剤の一部として用いることにより、脱燐効率をより高めることができる。
また、請求項8に係る発明によれば、溶銑を粗鋼で要求されるP含有量(鋼の成分規格値)以下に脱燐することにより、脱炭工程での脱燐が実質的に不要になるので脱炭スラグ量を極少化することができ、精錬工程全体でのより高いMn歩留まりが実現できる。
本発明では、上記のように処理後のスラグ塩基度とT.Fe濃度、溶銑の処理終点温度の三条件を最適化することにより、下記(1)〜(3)の作用によって高いMn歩留まりと脱燐効率で溶銑脱燐を行うことができる。
(2)高温処理によりCaOの滓化が促進されるため、スラグ塩基度を高めたことによる脱燐反応の向上効果を十分に引き出すことができ、また、スラグ中のT.Fe濃度を高めることにより、脱燐に不利な高温処理による脱燐効率の低下を補うことができ、これらの結果、高い脱燐効率を得ることができる。ここで、熱力学的にはスラグ塩基度が高いほど、また処理温度(溶銑温度)が高いほど、スラグ中のFeO濃度は低くなりやすく、したがってT.Fe濃度を高めにくい条件となる。しかし、スラグ塩基度と処理温度をともに高めた条件下で特別な操作を行うことにより、T.Fe濃度を効果的に高めることができ、高い脱燐効率を実現できる。
(3)スラグ中のT.Fe濃度が大きくなると、スラグの酸素ポテンシャルが高くなるためMn歩留まりには不利な条件となるが、上記(1)の作用が優勢であるため、高いMn歩留まりが得られる。
本発明では、溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行う。ここで、CaO源とは、CaOまたはCaOを生成可能なCa化合物(CaCO3、Ca(OH)2、CaMgO2等)を指す。CaO源を主体とする精錬剤としては、一般には生石灰が用いられるが、石灰石、消石灰、ドロマイト、CaO源を含む使用済みスラグ(転炉滓、連鋳滓、造塊滓など)などを用いてもよい。ここで、CaO源を主体とする精錬剤としては、CaO源をCaO換算で40質量%以上含むものが好ましい。
精錬剤は、上置き装入、浸漬ランスによる溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを通じた投射などの任意の方法により溶銑に供給することができる。これらのなかでは、上置き装入、上吹きランスによる投射、およびこれらの組合せが、設備の傷みが少なく好適であり、またこれらの手段で充分効果を得ることができる。
以上の理由から本発明では、処理後のスラグ塩基度は2.2超え3.5以下、好ましくは2.2超え3.0以下、より好ましくは2.5〜3.0とする。
この処理では、溶銑中燐の脱P率の目標を80%以上、溶銑中Mnの歩留まりの目標を30%以上とした。なお、脱P率(%)とMn歩留まり(%)は下式で定義した。
(脱P率)={[(処理前P濃度)−(処理後P濃度)]/(処理前P濃度)}×100
(Mn歩留り)=[(処理後Mn濃度)/(処理前Mn濃度)]×100
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
スラグ塩基度C/Sの制御手段としては、上記のようにCaO源の投入量を調整することの他にも、珪石やレンガ屑などの公知のSiO2源の投入量の調整、事前脱珪処理やFeSi合金の投入による溶銑中Si濃度の調整、などがある。
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
溶銑の処理終点温度の制御手段としては、上記のように気体酸素源と固体酸素源の供給比を調整することの他にも、スクラップなどの鉄源の投入量の調整、炭材などの投入量の調整、などがある。
この特別な操作としては、例えば、酸化鉄源の投入量を制御する、上吹き送酸ランスからの送酸をソフトブローで行う、などの方法を挙げることができる。
酸化鉄源としては、鉄鉱石、ミルスケール、砂鉄、集塵ダストなどを用いることができ、その投入方法としては、上置き装入、上吹きランスからの投射、浸漬ランスからのインジェクションなどの任意の方法を採ることができる。
Pd=Uo×(de/HL)×COSθ×(1/2)×(1/(0.016+0.19/Pi))/10
但し Uo: ランスノズル出口流速(m/s)
de: ランスノズル出口径(m)
HL: ランス高さ(m)
θ: ランスノズル中心軸とランス中心軸の成す角(rad)
Pi: ランスノズル入口圧(MPa)
このように上吹き送酸ランスからの送酸をソフトブローで行うと、スラグへの酸素供給が充分に行われ、スラグ中のT.Feを高濃度に維持することができる。このソフトブローは、少なくとも脱燐処理の後半に行なわれればよい。
先に述べたようにスラグ中のFeO濃度が大きくなると、スラグの酸素ポテンシャルが高くなるためMn歩留まりの確保には不利な条件となるが、本発明ではスラグ塩基度と処理終点温度の最適化による作用が優勢であるため、高いMn歩留まりが得られている。また、T.Fe濃度が15mass%以上になると、特にMn歩留まりのばらつきが小さくなり安定することが判る。
なお、上記試験において精錬剤の上置き装入に代えて、生石灰粉を主体とする精錬剤を上吹きランスから投射した場合も、同じような結果が得られた。
酸化チタン源又は/及びAl2O3源の添加量としては、処理後のスラグ中の酸化チタン(但し、TiO2換算)とAl2O3の含有量の合計が15mass%以下となるようにすることが好ましい。含有量の合計が15mass%を超えると、脱燐反応に必要なCaOを薄めてしまうことになり、脱燐能力を低下させてしまう。また、通常の脱燐操業においては、両者はスラグ中に合計で1.0〜2.5%mass程度は不可避的に含まれるが、3mass%未満ではCaO系精錬剤の滓化促進効果が十分でない。このため、処理後のスラグ中の酸化チタン(但し、TiO2換算)とAl2O3の含有量の合計は3mass%以上とすることが好ましい。
脱燐処理では、上述したような精錬剤以外に、炉体保護の目的でMgO源などを添加することができる。
また、本発明の溶銑脱燐は、脱燐処理と脱炭処理を異なる容器(例えば、転炉型容器)を用いて分離して行う(不連続に行う)方式、同一の転炉型容器を用いて脱燐処理と脱炭処理を中間排滓を挟んで連続して行う方式、のいずれに適用してもよい。
溶銑脱燐の処理時間は、容器の形状や容量にもよるが5〜30分程度とすることが好ましい。
なお、粗鋼で要求されるP含有量の例としては、0.03mass%以下(一般鋼)、0.015mass%以下(低燐鋼)などが挙げられる。
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を上置き装入した。そして、酸素ガスを上吹きランスで供給すると共に、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm3/hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm3/溶銑tとした。固体酸素源は、予定した投入量を全吹錬時間にわたって均等に投入する場合(均等分割)と、予定した投入量の1/2超(60〜100mass%)を、精錬期間の中間点以降に投入する場合(後半傾斜)の2通りを行った。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表1に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも併せて表1に示す。脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りは、下式で算出した。
(トータルMn歩留り)={(脱炭後Mn濃度)/[(脱燐前Mn濃度)+(脱炭時投入Mn濃度)]}×100
本発明例においては、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られた。その結果、脱炭吹錬において、装入Mn濃度が高く且つ装入P濃度が低く、低スラグ量での吹錬が行えたことにより、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも45%を超える結果となった。
これに対し、比較例においては、高脱燐率と高Mn歩留りの両立は実現できなかった。その結果、脱炭吹錬において、装入Mn濃度が低く且つ装入P濃度が高く、高スラグ量での吹錬となったため、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
脱燐用の精錬剤の一部として、酸化チタン源である砂鉄(TiO2含有量:7.5mass%)又は酸化アルミニウム源である造塊滓(Al2O3含有量:30mass%)を上置き装入した以外は実施例1と同様にして、脱燐処理および脱炭処理を行った。砂鉄を使用した吹錬における脱燐スラグ中のTiO2濃度は4.0mass%、TiO2とAl2O3の含有量の合計は6.3mass%であった。また、造塊滓を使用した吹錬における脱燐スラグ中のAl2O3濃度は4.5mass%、TiO2とAl2O3の含有量の合計は6.1mass%であった。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表2に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも併せて表2に示す。いずれの例においても、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られた。その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも45%を超える結果となった。
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。そして、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を酸素ガスとともに上吹きランスから投射した。また、No.17(本発明例)については、上記生石灰に代えて、炭酸カルシウムを酸素ガスとともに上吹きランスから投射した。酸素ガスの送酸条件は15000〜40000Nm3/hrとし、脱燐剤の投射量は6000〜30000kg/hrの範囲内で調整した。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm3/溶銑tとした。上吹きランスからの送酸は、送酸による溶銑浴面の動圧が精錬期間の後半で0.01〜0.02MPaとする場合(ソフトブロー)と、0.03MPaを超える場合(ハードブロー)の2通りを行った。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表3に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも併せて表3に示す。
本発明例においては、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られ、また、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも45%を超える結果となった。
これに対し、比較例においては、高脱燐率と高Mn歩留りの両立は実現できず、その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
予め脱珪処理した高炉溶銑(Mn濃度0.3mass%)を転炉型容器(300ton)を用いて脱燐処理した。この脱燐処理では、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、スケールを主体とした固体酸素源の大部分を、同ランスに設けられた別の投射口より不活性ガスとともに投射した。そして、脱燐剤としてホタル石などのフッ素源を含まないCaO主体の生石灰を、上置き装入する場合と、酸素ガスととともに上吹きランスから投射する場合の2通りを行った。酸素ガスの送酸条件は15000〜40000Nm3/hrとし、脱燐剤の投射量は6000〜30000kg/hrの範囲内で調整した。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm3/溶銑tとした。上吹きランスからの送酸は、送酸による溶銑浴面の動圧が精錬期間の後半で0.01〜0.02MPaとする場合(ソフトブロー)と、0.03MPaを超える場合(ハードブロー)の2通りを行った。
脱燐吹錬後の脱P率とMn歩留りを脱燐処理条件とともに表4に示す。また、脱燐・脱炭トータルでのMn歩留りも併せて表4に示す。
本発明例においては、脱燐吹錬後の脱P率85%以上、Mn歩留り40%以上が両立する結果が得られ、また脱燐・脱炭トータルのMn歩留りも45%を超える結果となった。
これに対し、比較例においては、高脱燐率と高Mn歩留りの両立は実現できず、その結果、脱燐・脱炭トータルのMn歩留りは低位であった。
Claims (8)
- 溶銑にCaO源を主体とする精錬剤と酸素源を添加して脱燐処理を行う方法において、
処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO2)が2.2超え3.5以下、T.Fe濃度が10〜30mass%となり、且つ溶銑の処理終点温度が1320℃以上となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする溶銑脱燐方法。 - 処理後のスラグの塩基度(%CaO/%SiO2)が2.2超え3.0以下となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項1に記載の溶銑脱燐方法。
- 溶銑の処理終点温度が1320〜1400℃となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶銑脱燐方法。
- 処理後のスラグのT.Fe濃度が15〜25mass%となるように、溶銑を脱燐処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
- 酸化チタン源又は/及びAl2O3源を精錬剤の一部として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
- 処理後のスラグの酸化チタン(但し、TiO2換算)とAl2O3の含有量の合計が3〜15mass%となるように、酸化チタン源又は/及びAl2O3源を添加することを特徴とする請求項5に記載の溶銑脱燐方法。
- 処理後のスラグのF濃度が0.2mass%以下となるように、精錬剤を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
- 溶銑を粗鋼で要求されるP含有量(鋼の成分規格値)以下に脱燐することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶銑脱燐方法。
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