JP2007260727A - 極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 モールドパウダーの巻き込みによる介在物のみならず、脱酸生成物やArガス気泡の凝固シェルへの捕捉を防止して、清浄な極低炭素鋼スラブ鋳片を鋳造する。
【解決手段】 鋳型の両短辺5側から浸漬ノズル2側に向かって移動する移動磁場を印加し、溶鋼の吐出流に制動力を付与しながら極低炭素鋼スラブ鋳片を鋳造するに際し、前記浸漬ノズルの吐出孔6の下端位置を、移動磁場印加装置3の鉄心の下端よりも上方に位置させると同時に、該浸漬ノズルの吐出角度(θo )を、下記の(1)式で定まる角度θ0 とする。但し、Hは、移動磁場印加装置の鉄心の高さ、Y1は、鋳型内湯面から浸漬ノズルの吐出孔下端までの距離、Y2 は、鋳型内湯面から移動磁場印加装置の鉄心の上端位置までの距離、Wは、鋳型の幅、dは、浸漬ノズルの吐出孔部分における外径である。
θ0 =tan-1{(Y2+H/2-Y1)/[(W-d)/2]}…(1)
【選択図】 図3
【解決手段】 鋳型の両短辺5側から浸漬ノズル2側に向かって移動する移動磁場を印加し、溶鋼の吐出流に制動力を付与しながら極低炭素鋼スラブ鋳片を鋳造するに際し、前記浸漬ノズルの吐出孔6の下端位置を、移動磁場印加装置3の鉄心の下端よりも上方に位置させると同時に、該浸漬ノズルの吐出角度(θo )を、下記の(1)式で定まる角度θ0 とする。但し、Hは、移動磁場印加装置の鉄心の高さ、Y1は、鋳型内湯面から浸漬ノズルの吐出孔下端までの距離、Y2 は、鋳型内湯面から移動磁場印加装置の鉄心の上端位置までの距離、Wは、鋳型の幅、dは、浸漬ノズルの吐出孔部分における外径である。
θ0 =tan-1{(Y2+H/2-Y1)/[(W-d)/2]}…(1)
【選択図】 図3
Description
本発明は、極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法に関し、詳しくは、鋳型内の溶鋼に移動磁場を印加して鋳型内の溶鋼流動を制御しながら鋳造する極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法に関するものである。
自動車外装用鋼板、缶用鋼板、家庭電化製品用鋼板など、多くの用途に使用されている薄鋼板に対して、年々その加工性の向上がユーザーから要求されている。一方、冷間圧延後の薄鋼板に施される焼鈍は、従来のバッチ焼鈍から連続焼鈍へと急速に転換されている。このような状況により、薄鋼板用の鋼は、炭素含有量が0.01〜0.1質量%の低炭素鋼から、炭素含有量が0.01質量%以下の極低炭素鋼に転換されつつある。
このような組成の極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造し、鋳造されたスラブ鋳片を素材として薄鋼板を製造した場合、スラブ鋳片中に含まれている非金属介在物が原因となる鋼板表面疵の発生が、低炭素鋼のスラブ鋳片を素材とした薄鋼板と比較して多いことが知られていた。
特徴的な表面疵の一つは、「ブリスター疵」と呼ばれているふくれ状の疵である。このブリスター疵の発生する原因は、連続鋳造の際に凝固シェルの表層下にアルミナが捕捉され、冷間圧延後の連続焼鈍時に、アルミナの周囲に鋼中の固溶水素が凝集し気化して膨張するためである、といわれている。
極低炭素鋼は、精錬過程で、CO生成反応(脱炭反応)によって鋼中の炭素含有量を0.01質量%以下の低いレベルまで下げることにより溶製されているので、精錬中における溶鋼中の溶存酸素濃度が高くなる。従って、CO生成反応終了後におけるアルミニウムによる脱酸量が多くなるため、鋼中に懸濁するアルミナの量が低炭素鋼よりも多くなり、従って、ブリスター疵が発生しやすくなる。
特徴的な表面疵の他の一つは、「スリバー疵」と呼ばれている線状の疵である。スリバー疵が発生する原因は、極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造する際に、鋳型内における湯面位置の凝固シェル先端の爪部分に、モールドパウダーの液滴や脱酸生成物のアルミナが捕捉されるためである、といわれている。極低炭素鋼は、低炭素鋼と比較して凝固温度が高く、前記爪部分が成長しやすいので、スリバー疵が発生しやすくなる。
このようなことから、スラブ連続鋳造機で溶鋼、特に極低炭素鋼の溶鋼を鋳造する際には、鋳型内に磁場を印加することによって凝固シェルへの非金属介在物(以下、「介在物」と記す)の捕捉を抑制する方法が多数提案されている。例えば、特許文献1には、鋳型長辺背面に移動磁場印加装置を配置して、鋳型内湯面に水平方向の旋回攪拌流を形成するように移動磁場を印加し、鋳型内湯面の流速を0.1〜0.6m/秒に制御して、介在物を凝固シェルに補足させない方法が提案されている。
また、非特許文献1には、洗い流す介在物の粒径と必要な流速との関係が提案されており、特許文献2には、鋳型内溶鋼に磁場を印加して鋳型内湯面近傍の溶鋼流速を所定の範囲内に制御する方法が提案されている。
特開平6−606号公報
特開平9−192802号公報
新日鐵、君津:第111回製鋼部会「鋳型内電磁攪拌装置による鋳片品質向上技術」(1994)
しかしながら、上記の従来技術には、それぞれ以下の問題がある。
即ち、特許文献1の技術は、まさに積極的に鋳型内の溶鋼を攪拌して洗浄流速を増加させ、溶鋼中に混在する介在物を凝固シェルに捕捉させないようにする方法であるが、逆に、攪拌によってモールドパウダーを溶鋼中に混入させる危険がある。
非特許文献1では、より小さい介在物を洗い流すためには、より大きな流速が必要であるとしているが、湯面近傍における大きな流速(表面流速)は、逆に湯面変動やモールドパウダーの巻き込みの原因となる。鋳片品質を総合的に判断すれば、単に洗浄流速を増加させればよいというものではない。
特許文献2では、鋳型内湯面の表面流速の抑制に主眼をおいており、モールドパウダーの巻き込み防止には効果的であるが、近年の厳しい品質要求に応えるためには、鋳片表層の微小介在物の除去も必要であり、換言すれば、凝固界面近傍の溶鋼流速を確保して、介在物洗浄効果を高める必要があり、この観点からは十分とはいえない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、浸漬ノズルから吐出される溶鋼の吐出流に制動力が作用するように移動磁場を印加して極低炭素鋼スラブ鋳片を連続鋳造する際に、モールドパウダーの巻き込みによる介在物のみならず、凝固界面近傍における溶鋼流速を確保して、脱酸生成物やArガス気泡の凝固シェルへの捕捉を防止し、凝固シェルへ捕捉される脱酸生成物やArガス気泡の極めて少ない清浄な鋳片を鋳造することのできる、極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法は、鋳型の両短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する移動磁場を鋳型内の溶鋼に印加し、浸漬ノズルから吐出される溶鋼の吐出流に制動力を付与しながら極低炭素鋼スラブ鋳片を連続鋳造するに際し、前記浸漬ノズルの吐出孔の下端位置を、移動磁場印加装置の鉄心の下端よりも上方に位置させると同時に、該浸漬ノズルの吐出角度を、下記の(1)式で定まる角度θ0 とすることを特徴とするものである。但し、(1)式において、θoは、水平線を基準として下向きを正とし上向きを負とした、浸漬ノズルの吐出角度(deg)、Hは、移動磁場印加装置の鉄心の高さ(m)、Y1 は、鋳型内湯面から浸漬ノズルの吐出孔の下端までの距離(m)、Y2は、鋳型内湯面から移動磁場印加装置の鉄心の上端位置までの距離(m)、Wは、鋳型の幅(m)、dは、浸漬ノズルの吐出孔部分における外径(m)である。
第2の発明に係る極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法は、第1の発明において、前記浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表し、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表したときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持するように、前記浸漬ノズルから鋳型内に注入される吐出流の流速を移動磁場によって制御することを特徴とするものである。
本発明によれば、浸漬ノズルの吐出角度を上記(1)式で算出される値としているので、吐出流は鋳型短辺に衝突した以降も移動磁場の印加範囲に存在し、これにより、凝固界面近傍の溶鋼流速が増大して介在物及び気泡の凝固シェルへの付着が防止される。また、鋳型内の鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲に調整した場合には、モールドパウダーの巻き込みも防止され、極めて清浄な極低炭素鋼スラブ鋳片を安定して製造することが可能となる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、鋳型短辺側から鋳型中央の浸漬ノズル側に向かって移動する磁場を印加する場合の移動磁場印加装置及びメカニズムの概略斜視図、図2は、移動磁場印加装置が設置されたスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略正面図である。
図1及び図2において、相対する鋳型長辺4と、この鋳型長辺4の内側に内装された、相対する鋳型短辺5とから、水平断面が矩形状の鋳型1が構成されており、鋳型長辺4と鋳型短辺5とに囲まれて形成される鋳型1の内面空間のほぼ中央位置には、鋳型1の上方所定位置に配置されるタンディッシュ(図示せず)の底部に取り付けられた浸漬ノズル2が挿入されている。浸漬ノズル2の下部には、溶鋼7を鋳型短辺5の方向に向かって吐出するための一対の吐出孔6が備えられている。
鋳型長辺4の背面には、浸漬ノズル2を境として鋳型長辺4の幅方向左右で2つに分割された合計4基のリニア型の移動磁場印加装置3が、鋳型長辺4を挟んで対向して配置されている。移動磁場印加装置3は、鉄心3aの周囲に電磁コイル3bが巻かれて構成されており、図2の移動磁場印加装置3は鉄心3aの範囲を示している。それぞれの移動磁場印加装置3の電磁コイル3bは電源(図示せず)と結線され、また、電源は、磁場の移動方向、周波数、及び磁場強度を制御する制御装置(図示せず)と接続されており、制御装置から入力される磁場移動方向、周波数及び磁場強度に基づいて電源から供給される電力により、移動磁場印加装置3から印加される磁場強度、周波数及び磁場移動方向がそれぞれ個別に制御されるようになっている。
この場合に、吐出孔6の下端位置は、移動磁場印加装置3の鉄心3aの下端位置よりも鉛直方向の上方の位置に配置されており、また、吐出孔6から吐出する溶鋼7の吐出流8の鋳型短辺5に衝突する位置が、移動磁場印加装置3の鉄心3aの高さ方向の約1/2の位置になるように配置されている。
即ち、図3に示すように、浸漬ノズル2の吐出角度をθ0 (deg)、移動磁場印加装置3の鉄心3aの高さをH(m)、鋳型内湯面9から浸漬ノズル2の吐出孔6の下端までの距離をY1(m)、鋳型内湯面9から移動磁場印加装置3の鉄心3aの上端位置までの距離をY2 (m)、鋳型の幅をW(m)、浸漬ノズル2の吐出孔部分における外径をd(m)としたときに、浸漬ノズル2の吐出角度(θ0)を下記の(1)式により定められる角度(θ0 )に設定しているので、吐出孔6の下端から吐出される吐出流8は、鉄心3aの高さ方向の1/2の位置で鋳型短辺5に衝突するようになっている。この場合、吐出流8の軌跡は直線で近似している。また、吐出角度(θo)は、水平線を基準として下向きを正とし、上向きを負とした値である。ここで、図3は、本発明で使用するスラブ連続鋳造機における浸漬ノズル2からの吐出流8の吐出方向と移動磁場印加装置3との位置関係を示す概略図である。
このような構成のスラブ連続鋳造機を用い、図1に示すように、移動磁場の移動方向を鋳型短辺5の側から浸漬ノズル2の側として、移動磁場印加装置3によって移動磁場を印加しながら炭素含有量が0.01質量%以下である極低炭素鋼の溶鋼7を鋳造する。図1において、FX は溶鋼7の吐出流8に作用する電磁力を表し、VX は移動磁場の移動速度を表し、BYは移動磁場の磁束密度を表している。
移動磁場印加装置3には、図1に示すように複数の電磁コイル3bが幅方向に並んで設置されており、隣り合う電磁コイル3bに流す電流の位相をずらすことにより、所謂リニアタイプの移動磁場を発生させている。その磁場の移動速度VX は、電磁コイル3bのポールピッチτと周波数fとから、下記の(2)式によって表される。電磁コイル3bのポールピッチとは、S極からN極までの距離である。
ローレンツの法則より、発生する誘導電流JZ は下記の(3)式で表される。但し、(3)式において、σは溶鋼の電気伝導度、VXは移動磁場の移動速度、BY は移動磁場の磁束密度である。
電磁力FX は下記の(4)式で表され、主に磁場の移動方向と同じ向きに電磁力FX が作用する。
本発明においては、吐出孔6からの吐出流8が衝突する鋳型短辺位置は、移動磁場印加装置3の鉄心3aの高さ方向約1/2位置であり、吐出孔6からの吐出流8が鋳型短辺5に衝突するまでに、移動磁場による制動力が付与される位置関係になっている。しかし静磁場と違い、移動磁場による印加であるので、移動磁場の周波数の関係から吐出流8の一部には移動磁場が印加されずに、吐出流8が移動磁場をすり抜けて、鋳型短辺5に到達する可能性があり、すり抜けた吐出流8は鋳型短辺5に衝突して、上昇流と下降流とに分岐される。
しかし、本発明においては、吐出流8が衝突する鋳型短辺位置が鉄心3aの高さ方向約1/2位置であることから、下降流に転じた領域にも移動磁場が印加されているので、下降流が抑えられ、抑えられた下降流は鋳型長辺4に向いた流れとなる。これにより、鋳型内の凝固シェル10の壁面近傍における溶鋼流(以下、「壁面流」と称す)の流速が増加し、つまり、気泡や介在物の凝固シェル10への付着が発生しない範囲まで壁面流速が増速され、気泡や介在物の凝固シェル10への付着が防止される。尚、鋳型短辺5に衝突する以前に制動された吐出流8によっても、壁面流速は増速され、気泡や介在物の凝固シェル10への付着の防止効果が発揮される。移動磁場によって制動された吐出流8は、その流速を減じると同時に、移動磁場を迂回するように流れること、つまり鋳型長辺4に向いた流れとなることが本発明者等によって確認されている。
印加する移動磁場の強度は、鋳型内湯面9の上に添加したモールドパウダー11の巻き込みを防止すると同時に、鋳型内の湯面変動を防止する観点から、前述した特許文献2と同様に、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置(以下、「1/4幅位置」とも記す))における表面流速が−0.07m/秒から0.05m/秒のゼロに近い範囲内に維持されるように、調整することが好ましい。ここでは、鋳型短辺5から浸漬ノズル2に向けた流れの方向を正とし、その逆の流れの方向を負としている。
1/4幅位置の湯面直下の溶鋼流速は、図4に示すような方法によって測定することができる。即ち、鋳型1の中央に配置されている浸漬ノズル2から、一方の鋳型短辺寄りの1/4幅位置に、長さ400mm程度、直径20mm程度の例えばモリブデン−ジルコニア系サ−メット製の浸漬棒12を、その下端部を鋳型内の溶鋼7に浸漬させた状態で、その上端付近を支点とし、鋳型1の幅方向に回動可能に支持させて取り付ける。浸漬棒12の下端から鋳型内湯面9までの距離即ち浸漬棒12の溶鋼内における浸漬深さ(D)は、約100mmとする。このようにして鋳型内の溶鋼中に浸漬棒12を浸漬すると、浸漬棒12の浸漬部分は、湯面直下の溶鋼流によって、その上端付近の支点を中心として回動し、浸漬棒12に働く重力と、湯面直下の溶鋼流による力とが釣合ったところで停止する。このときの、浸漬棒12の軸線方向と鉛直方向とがなす角度θを測定し、浸漬棒12に働く重力と湯面直下の溶鋼流による力との釣合い計算をすることによって、鋳型内湯面直下の溶鋼流速を求めることができる。尚、種々の鋳造条件及び磁場印加条件において、図4に示すような方法によって1/4幅位置の湯面直下の溶鋼流速を測定したならば、それ以降は溶鋼流速を直接測定する必要はなく、鋳造条件及び磁場印加条件に基づいて1/4幅位置の湯面直下の溶鋼流速を推定すればよい。
このように、本発明では、移動磁場印加装置3の鉄心3aの高さ(H)、鋳型内湯面9から浸漬ノズル2の吐出孔6の下端までの距離(Y1 )、鋳型内湯面9から鉄心3aの上端位置までの距離(Y2)、鋳型の幅(W)、浸漬ノズルの外径(d)に応じて定まる吐出角度(θo )を有する浸漬ノズル2を用いて、移動磁場によって吐出流8に制動力を付与しながら鋳造する。この場合、移動磁場の強度は、1/4幅位置における表面流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になる強度であることが好ましい。
このようにして鋳造することで、壁面流速が促進されると同時に、鋳型内表面流速が最適化され、モールドパウダー11の巻き込みによる介在物のみならず、脱酸生成物やArガス気泡の凝固シェル10への捕捉を防止することができ、極めて清浄な極低炭素鋼スラブ鋳片を製造することが可能となる。
この現象は、連続鋳造設備を模擬した低融点合金モデルにおいても確認されている。即ち、低融点合金モデルを使用して、前述した(1)式で算出される吐出角度(θo )を有する浸漬ノズルを用いた場合(以下、「水準1」と記す)と、吐出孔6からの吐出流8の衝突する鋳型短辺位置が、鉄心3aの下端位置よりも下方となる浸漬ノズル、具体的には鉄心3aの高さ(H)の1/2だけ鉄心3aの下端位置よりも下方となる浸漬ノズルを用いた場合(以下、「水準2」と記す)とで、鋳型幅方向各位値における壁面流速を測定した。水準1及び水準2ともに、1/4幅位置における表面流速は−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になるように移動磁場強度を調整している。
その結果、水準1では、壁面流速は0.16〜0.25m/秒となり、気泡及び介在物が凝固界面に付着することを防止するのに十分な壁面流速が得られた。これに対して、水準2では、壁面流速は0.10m/秒未満であり、気泡及び介在物の凝固界面への付着を防止するには不十分な壁面流速であった。尚、水準2で用いた浸漬ノズルの吐出角度(θ1 )は、下記の(5)式によって定めるることができる。(5)式における各符号は、(1)式と同一である。
また、上記の水準1と水準2において、数値解析により求めた鋳型内の溶鋼流速のベクトル図を図5及び図6に示す。図5が水準1における溶鋼流速ベクトル図で、図5(A)は鋳型内湯面9のベクトル図、(B)は鋳型厚み中央位置における溶鋼流速ベクトル図、(C)は長辺面における溶鋼流速ベクトル図である。また、図6が水準2における溶鋼流速ベクトル図で、図6(A)は鋳型内湯面9のベクトル図、(B)は鋳型厚み中央位置における溶鋼流速ベクトル図、(C)は長辺面における溶鋼流速ベクトル図である。図5及び図6は、鋳型1の向かって右側半分における鋳型内溶鋼の流速を電磁流体シミュレーションによって求めた結果を示す図であり、矢印が溶鋼7の流れの方向を表しており、図中左側の上部部分が浸漬ノズル2に、図中右側端部が鋳型短辺5の内壁面位置に相当する。
図5及び図6を比較すると、図5に示す水準1の方が鋳型内における長辺面の溶鋼流速ベクトルが大きいことが分かる。また、数値解析により求めた壁面流の結果を図7に示す。図7からも明らかなように、水準2に比べて水準1では壁面流速が増速していることが分かる。図7には、磁場を印加していない場合も示しており、図7において、実線が磁場を印加していない場合を表し、◇印が水準1を表し、×印が水準2を表している。
このように、本発明では、壁面流速が速くなり、介在物の洗浄効果が向上することにより、凝固シェル10への介在物及び気泡の付着が防止されることが分かる。
以下、本発明の実施例を説明する。垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機を使用し、転炉及びRH真空脱ガス装置で溶製した極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造した。表1に、使用したスラブ連続鋳造機の仕様を示し、表2に、極低炭素鋼の化学成分組成を示す。
鋳片幅が1600mmの極低炭素鋼スラブ鋳片を2.4m/分の鋳造速度で、前述した(1)式で算出される吐出角度(θo )の浸漬ノズルを用いて鋳造した(本発明例)。また、比較のために、前述した(5)式で算出される吐出角度(θ1 )の浸漬ノズルを用いた鋳造も実施した(比較例)。本発明例及び比較例ともに、リニア型の移動磁場印加装置によって、1/4幅位置における鋳型内湯面直下の溶鋼流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持されるように制御した。
本発明例及び比較例における鋳片サンプルを採取し、鋳片幅方向で7箇所、鋳片の上面と下面との2箇所、合計14箇所の位置について、鋳片凝固組織のデンドライト傾角に基づいて鋳片表層部の溶鋼流速を推定した。表3に、デンドライト傾角から推定した溶鋼流速を示す。
表3に示すように、鋳片表層部の溶鋼流速の絶対値にはばらつきがあるものの、本発明例では、14箇所での溶鋼流速の平均値は0.18m/秒であるのに対し、比較例では14箇所での平均値は0.07m/秒であり、2倍以上の流速に増加した。また、本発明例では、鋳片の全ての位置で、凝固シェルへの介在物の付着が防止されると予想される0.1m/秒以上の溶鋼流速が得られた。これに対して比較例では、0.1m/秒以上の溶鋼流速は1箇所のみであり、他の部位では得ることができなかった。
また、連続鋳造されたスラブを素材とする冷間圧延薄鋼板の表面欠陥発生率を調べた。その結果、比較例では、冷間圧延コイルの表面欠陥発生率は2.2%と高かったが、それに対して、本発明例では、冷間圧延コイルの表面欠陥発生率は0.6%であり、極低炭素鋼の冷間圧延コイルの製造歩留りを大きく向上させることができた。
1 鋳型
2 浸漬ノズル
3 移動磁場印加装置
3a 鉄心
3b 電磁コイル
4 鋳型長辺
5 鋳型短辺
6 吐出孔
7 溶鋼
8 吐出流
9 鋳型内湯面
10 凝固シェル
11 モールドパウダー
12 浸漬棒
2 浸漬ノズル
3 移動磁場印加装置
3a 鉄心
3b 電磁コイル
4 鋳型長辺
5 鋳型短辺
6 吐出孔
7 溶鋼
8 吐出流
9 鋳型内湯面
10 凝固シェル
11 モールドパウダー
12 浸漬棒
Claims (2)
- 鋳型の両短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する移動磁場を鋳型内の溶鋼に印加し、浸漬ノズルから吐出される溶鋼の吐出流に制動力を付与しながら極低炭素鋼スラブ鋳片を連続鋳造するに際し、前記浸漬ノズルの吐出孔の下端位置を、移動磁場印加装置の鉄心の下端よりも上方に位置させると同時に、該浸漬ノズルの吐出角度を、下記の(1)式で定まる角度θ0 とすることを特徴とする、極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法。
θ0 :水平線を基準として下向きを正とし上向きを負とした、浸漬ノズルの吐出角度(deg)
H:移動磁場印加装置の鉄心の高さ(m)
Y1 :鋳型内湯面から浸漬ノズルの吐出孔の下端までの距離(m)
Y2 :鋳型内湯面から移動磁場印加装置の鉄心の上端位置までの距離(m)
W:鋳型の幅(m)
d:浸漬ノズルの吐出孔部分における外径(m) - 前記浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表し、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表したときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持するように、前記浸漬ノズルから鋳型内に注入される吐出流の流速を移動磁場によって制御することを特徴とする、請求項1に記載の極低炭素鋼スラブ鋳片の連続鋳造方法。
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