JP2006255759A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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寛昌 飯嶋
Atsushi Kubota
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Abstract

【課題】 モールドパウダーの巻き込みがなく且つ凝固シェルに捕捉される微小介在物の少ないスラブ鋳片を鋳造することのできる連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】 鋳型の背面に設置した磁界発生装置で磁界を発生させ、該磁界によって鋳型内に注入される溶鋼の流動を制御して連続鋳造を行うに当たり、浸漬ノズル2の吐出孔7の位置に設置した上部磁界発生装置3と、浸漬ノズルの吐出孔の下方に設置した下部磁界発生装置4と、の上下2段に磁界発生装置を設置し、上部磁界発生装置からは移動磁界を印加し、下部磁界発生装置からは静磁界を印加して、浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼8の、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表し、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表したときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、鋳型内の溶鋼に磁界を印加して鋳型内の溶鋼流動を制御しながら鋳造する連続鋳造方法に関するものである。
自動車外装用鋼板、缶用鋼板、家庭電化製品用鋼板など、多くの用途に使用されている薄鋼板に対して、年々その加工性の向上がユーザーから要求されている。一方、冷間圧延後の薄鋼板に施される焼鈍は、従来のバッチ焼鈍から連続焼鈍へと急速に転換されている。このような状況により、薄鋼板用の鋼は、炭素含有量が0.01〜0.1質量%の低炭素鋼から、炭素含有量が0.01質量%以下の極低炭素鋼に転換されつつある。
このような組成の極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造し、鋳造されたスラブ鋳片を素材として薄鋼板を製造した場合、スラブ鋳片中に含まれている非金属介在物が原因となる鋼板表面疵の発生が、低炭素鋼のスラブ鋳片を素材とした薄鋼板と比較して多いことが知られていた。
特徴的な表面疵の一つは、「ブリスター疵」と呼ばれているふくれ状の疵である。このブリスター疵の発生する原因は、連続鋳造の際に凝固シェルの表層下にアルミナが捕捉され、冷間圧延後の連続焼鈍時に、アルミナの周囲に鋼中の固溶水素が凝集し気化して膨張するためである、といわれている。
極低炭素鋼は、精錬過程で、CO生成反応(脱炭反応)によって鋼中の炭素含有量を0.01質量%以下の低いレベルまで下げることにより溶製されているので、精錬中における溶鋼中の溶存酸素濃度が高くなる。従って、CO生成反応終了後におけるアルミニウムによる脱酸量が多くなるため、鋼中に懸濁するアルミナの量が低炭素鋼よりも多くなり、従って、ブリスター疵が発生しやすくなる。
特徴的な表面疵の他の一つは、「スリバー疵」と呼ばれている線状の疵である。スリバー疵が発生する原因は、極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造する際に、鋳型内における湯面位置の凝固シェル先端の爪部分に、モールドパウダーの液滴や脱酸生成物のアルミナが捕捉されるためである、といわれている。極低炭素鋼は、低炭素鋼と比較して凝固温度が高く、前記爪部分が成長しやすいので、スリバー疵が発生しやすくなる。
このようなことから、スラブ連続鋳造機で溶鋼、特に極低炭素鋼の溶鋼を鋳造する際には、鋳型内に磁界を印加することによって凝固シェルへの非金属介在物(以下、「介在物」と記す)の捕捉を抑制する方法が多数提案されている。例えば、特許文献1には、鋳型長辺背面にリニア型移動磁界発生装置を配置して、溶鋼湯面に水平方向の旋回攪拌流を形成するように移動磁界を印加し、介在物を凝固シェルに補足させない方法が提案されている。また、非特許文献1には、洗い流す介在物の粒径と必要な流速との関係が提案されており、更に、特許文献2には、鋳型内溶鋼に磁界を印加して鋳型内湯面近傍の溶鋼流速を所定の範囲内に制御する方法が提案されている。
特開平7−314104号公報 特開平9−192802号公報 新日鐵、君津:第111回製鋼部会「鋳型内電磁攪拌装置による鋳片品質向上技術」(1994)
しかしながら、上記の従来技術には、それぞれ以下の問題がある。
即ち、特許文献1の技術は、まさに積極的に鋳型内の溶鋼を攪拌して洗浄流速を増加させ、溶鋼中に混在する介在物を凝固シェルに捕捉させないようにする方法であるが、逆に、攪拌によってモールドパウダーを溶鋼中に混入させる危険がある。
非特許文献1では、より小さい介在物を洗い流すためには、より大きな流速が必要であるとしているが、湯面近傍における大きな流速(表面流速)は、逆に湯面変動やモールドパウダーの巻き込みの原因となる。鋳片品質を総合的に判断すれば、単に洗浄流速を増加させればよいというものではない。
特許文献2では、鋳型内湯面の表面流速の抑制に主眼をおいており、モールドパウダーの巻き込み防止には効果的であるが、近年の厳しい品質要求に応えるためには、鋳片表層の微小介在物の除去も必要であり、この観点からは十分とはいえない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳型内の溶鋼に磁界を印加して鋳型内の溶鋼流動を制御しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに当たり、特許文献2と同様に鋳型内の表面流速を最適範囲に抑制した上で、更に、凝固シェルへの介在物の捕捉防止を促進させることのできる、換言すれば、モールドパウダーの巻き込みがなく且つ凝固シェルに捕捉される微小介在物の少ないスラブ鋳片を鋳造することのできる、鋼の連続鋳造方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究・検討した。その結果、移動磁界と静磁界とを組み合わせることで、鋳型内の表面流速を最適範囲に抑制すると同時に、凝固シェル近傍の溶鋼流速を増大させることができる、つまり上記課題を解決できるとの知見を得た。
本発明は、上記検討結果に基づいてなされたものであり、本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造用鋳型の背面に対抗して設置した磁界発生装置で磁界を発生させ、該磁界によって浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の流動を制御して鋼の連続鋳造を行うに当たり、浸漬ノズルの吐出孔の位置に設置した上部磁界発生装置と、浸漬ノズルの吐出孔の下方に設置した下部磁界発生装置と、の上下2段に磁界発生装置を設置し、上部磁界発生装置からは移動磁界を印加し、下部磁界発生装置からは鋳型幅方向全域に静磁界を印加して、浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表し、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表したときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持することを特徴とするものである。
本発明によれば、鋳型内の溶鋼湯面の流速を所定の範囲に制御すると同時に、凝固シェル近傍の溶鋼流速を確保することができるので、凝固シェルへのモールドパウダーの巻き込みがなく、且つ凝固シェルへの微細介在物の付着が極めて少ない、清浄で高品質の鋼スラブ鋳片を安定して製造することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略斜視図であって、移動磁界を鋳型短辺側から鋳型中央の浸漬ノズル側に向かって移動させて印加した場合を示し、図2は、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略正面図である。
図1及び図2において、相対する鋳型長辺5と、この鋳型長辺5の内側に内装された、相対する鋳型短辺6とから、水平内面空間が矩形状の鋳型1が構成されており、鋳型長辺5と鋳型短辺6とに囲まれて形成される鋳型1の内面空間のほぼ中央位置には、鋳型1の上方所定位置に配置されるタンディッシュ(図示せず)の底部に取り付けられた浸漬ノズル2が挿入されている。浸漬ノズル2の下部には、溶鋼8を鋳型短辺6の方向に向かって吐出するための一対の吐出孔7が備えられている。
鋳型長辺5の背面には、その鋳造方向の中心位置を吐出孔7の直下位置として、浸漬ノズル2を境として鋳型長辺5の幅方向左右で2つに分割された合計4基のリニア型移動磁界発生装置3が、上部磁界発生装置として鋳型長辺5を挟んで対向して配置されている。それぞれのリニア型移動磁界発生装置3は交流電源(図示せず)と結線され、また、交流電源は、磁界の移動方向、周波数、及び磁界強度を制御する制御装置(図示せず)と接続されており、制御装置から入力される磁界移動方向、周波数及び磁界強度に基づいて交流電源から供給される電力により、リニア型移動磁界発生装置3から印加される磁界強度、周波数及び磁界移動方向がそれぞれ個別に制御されるようになっている。
また、鋳型長辺5の背面には、その鋳造方向の中心位置を吐出孔7よりも離れた鋳型1の下端側とする静磁界発生装置4が、下部磁界発生装置として鋳型長辺5を挟んで対向して配置されている。静磁界発生装置4は鋳型幅方向全域に亘って設置されている。つまり、鋳型幅方向全域に亘って静磁界が印加できるように配置されている。静磁界発生装置4は直流電源(図示せず)と結線され、また、直流電源は、磁界強度を制御する制御装置(図示せず)と接続されており、制御装置から入力される磁界強度に基づいて直流電源から供給される電力により、静磁界発生装置4から印加される磁界強度が制御されるようになっている。静磁界発生装置4を永久磁石で構成することもできるが、磁界強度を任意に変更することができることから、電磁石型が好ましい。
このように構成されるスラブ連続鋳造機を用い、以下のようにして本発明の連続鋳造方法を実施する。
転炉または電気炉などの一次精錬炉若しくはRH真空脱ガス装置などの二次精錬炉で溶製された溶鋼8を、浸漬ノズル2を通してタンディッシュから鋳型1に注入する。溶鋼8は、吐出孔7から鋳型短辺6に向かう吐出流9となって鋳型内に注入される。鋳型内に注入された溶鋼8は鋳型1により冷却され、凝固シェル11を形成する。そして、鋳型内に所定量の溶鋼8が注入されたなら、吐出孔7を鋳型内の溶鋼8に浸漬した状態で、鋳型1の下方に設置したピンチロール(図示せず)を駆動して、外殻を凝固シェル11とし、内部に未凝固の溶鋼8を有する鋳片の引き抜きを開始する。引き抜き開始後は、溶鋼湯面10の位置を鋳型内の略一定位置に制御しながら鋳造する。鋳型内の溶鋼湯面10の上にはモールドパウダー12を添加する。モールドパウダー12は溶融して、溶鋼8の酸化防止や凝固シェル11と鋳型1との間に流れ込み潤滑剤としての効果を発揮する。
この鋳造中、リニア型移動磁界発生装置3からは移動磁界を、また、静磁界発生装置4からは静磁界を印加する。
リニア型移動磁界発生装置3には、図1に示すように複数の電磁コイル(但し図2では図示せず)が幅方向に並んで設置されており、隣り合う電磁コイルに流す電流の位相をずらすことにより、所謂リニアタイプの移動磁界を発生させている。図1では、磁界が鋳型短辺6から鋳型1の中央部の浸漬ノズル2に向かって移動する状態を示しており、図1において、FX は溶鋼8の吐出流9に作用する電磁力を表し、VX は移動磁界の移動速度を表し、BYは移動磁界の磁束密度を表している。その磁界の移動速度VX は、電磁コイルのポールピッチτと周波数fとから、下記の(1)式によって表される。電磁コイルのポールピッチとは、S極からN極までの距離である。
Figure 2006255759
ローレンツの法則より、発生する誘導電流JZ は下記の(2)式で表される。但し、(2)式において、σは溶鋼の電気伝導度、VX は移動磁界の移動速度、BY は移動磁界の磁束密度である。
Figure 2006255759
電磁力FX は下記の(3)式で表され、磁界の移動方向と同じ向きに電磁力FXが作用する。
Figure 2006255759
つまり、移動磁界の移動方向とそのときの電磁力FX を設定することにより、リニア型移動磁界発生装置3によって鋳型内の溶鋼流動を制御することができる。
このリニア型移動磁界発生装置3により印加される移動磁界の印加パターンは、図3〜図5に示す3種類であり、鋳造速度が速く、鋳型1における溶鋼流動を減速したい場合には、図3に示すように、磁界を両方の鋳型短辺6から浸漬ノズル2の方向に移動させ、電磁力FX によって浸漬ノズル2から吐出される溶鋼8の吐出流9を減速させ、また、凝固界面に沿って水平方向に回転するような溶鋼流動を誘起させる場合には、図4に示すように、移動磁界の移動方向を相対する鋳型長辺5に沿ってそれぞれ相反する向きとし、更に、鋳造速度が遅く、鋳型1における溶鋼流動を促進させたい場合には、図5に示すように、磁界を浸漬ノズル2から鋳型短辺6の方向に移動させ、電磁力FX によって浸漬ノズル2から吐出される溶鋼8の吐出流9を加速させる。ここで、図4に示す印加パターンは、鋳造速度に関係することなく採用することができるが、溶鋼流動を誘起させる印加パターンであることから、通常は鋳造速度が遅い場合に採用される。尚、図3、図4、図5は、磁界の移動方向を鋳型1の真上から示した図であり、図中の矢印が磁界の移動方向を表している。
溶鋼湯面10の上に添加したモールドパウダー12の巻き込みを防止すると同時に、鋳型内の湯面変動を防止するために、本発明では、静磁界発生装置4から静磁界を印加しながら、更に、リニア型移動磁界発生装置3から移動磁界を印加して、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置(以下、「1/4幅位置」とも記す)における表面流速を−0.07m/秒から0.05m/秒のゼロに近い範囲内に維持する。リニア型移動磁界発生装置3の印加パターンは、鋳造速度に応じて、図3〜図5のうちの1種の印加パターンを選択する。ここでは、鋳型短辺6から浸漬ノズル2に向けた流れの方向を正とし、その逆の流れの方向を負としている。
1/4幅位置の湯面直下の溶鋼流速は、例えば図6に示すような方法によって測定することができる。即ち、鋳型1のほぼ中央に配置されている浸漬ノズル2から鋳型幅1/4だけ離れた一方の鋳型短辺寄りの1/4幅位置に、長さ410mm、直径20mmのモリブデン−ジルコニア系サ−メット製の浸漬棒13を、その下端部を鋳型内の溶鋼8に浸漬させた状態で、その上端付近を支点とし、鋳型1の幅方向に回動可能に支持させて取り付ける。浸漬棒13の下端から溶鋼湯面10までの距離即ち浸漬棒13の溶鋼内における浸漬深さDは、約100mmで十分である。
鋳型内の溶鋼中にこのようにして浸漬棒13を浸漬させると、浸漬棒13の浸漬部分は、湯面直下の溶鋼流によって、その上端付近の支点を中心として回動し、浸漬棒13に働く重力と、湯面直下の溶鋼流による力とが釣合ったところで停止する。このときの、浸漬棒13の軸線方向と鉛直方向とがなす角度θを測定し、浸漬棒13に働く重力と湯面直下の溶鋼流による力との釣合い計算をすることによって、溶鋼湯面直下の溶鋼流速を求めることができる。
このように、本発明では、1/4幅位置の表面流速を−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲に維持して鋳造するので、鋳型内の湯面変動が防止されると同時に、溶鋼湯面10の上に添加したモールドパウダー12の巻き込みが防止される。1/4幅位置の表面流速が−0.07m/秒から0.05m/秒となる移動磁界の印加条件が鋳造条件に応じて把握できたなら、その条件で印加する限り、鋳造の毎に浸漬棒13などを用いて表面流速を測定する必要はない。
一方、1/4幅位置の表面流速が−0.07m/秒から0.05m/秒となるように移動磁界によって減速或いは加速された吐出流9のうちの鋳型下方に向かう下降流は、静磁界発生装置4による静磁界の印加された領域に進入する。尚、静磁界では、移動する溶鋼には誘導電流が発生し、この誘導電流と静磁界とによって移動する方向と逆向きの電磁力が溶鋼に作用する。つまり、溶鋼の流動を止めるように電磁力が作用する。
静磁界の印加された領域に進入した下降流は、静磁界によって減速するものも生じるが、静磁界の領域を迂回するように、或いは静磁界の領域に撥ね返されるようにして上昇流に転じる。この上昇流によって凝固シェル11の近傍の溶鋼流速が鋳型幅方向全体で増加する。その結果、凝固シェル11の近傍の介在物洗浄効果が増大し、微細介在物の付着が抑制され、微細介在物の極めて少ない凝固シェル11を得ることができる。
即ち、本発明では、浸漬ノズル2の吐出孔7の位置に設置したリニア型移動磁界発生装置3によって溶鋼湯面10における溶鋼流速が適正な範囲に制御されるとともに、浸漬ノズル2の吐出孔7よりも下方に設置した静磁界発生装置4により、凝固シェル11の近傍の溶鋼流速が増大し、これらにより、凝固シェル11へのモールドパウダー12の巻き込みのない、且つ凝固シェル11への微細介在物の付着の極めて少ない、清浄で高品質の鋼スラブ鋳片を安定して製造することが可能となる。
図1及び図2に示す連続鋳造機の鋳型部位を模擬した実機の1/5規模の実験装置を用い、浸漬ノズルから低融点金属を注入し、この低融点金属に磁界を印加する試験を実施した。試験では、低融点金属が凝固しないように装置全体を加熱して行った。
試験は、下部の静磁界発生装置からは印加せず、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の表面流速がほぼゼロになるように制御した場合と、下部の静磁界発生装置から印加するとともに、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の表面流速がほぼゼロになるように制御した場合の2種類を実施した。そして、そのときの鋳型長辺壁面における流速を測定した。
測定結果を図7に示す。図7に示す縦軸の流速は実機規模の溶鋼における流速に換算した数値である。図7に示すように、下部の静磁界発生装置から印加するとともに、上部のリニア型移動磁界発生装置で印加して1/4幅位置の表面流速がほぼゼロになるように制御した場合には、上部のリニア型移動磁界発生装置を単独に印加した場合に比較して、鋳型長辺壁面における溶鋼流速が増大し、凝固シェルにおける介在物洗浄効果が大幅に増加することが確認できた。
図1及び図2に示す垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機を使用し、転炉及びRH真空脱ガス装置で溶製した極低炭素鋼の溶鋼をスラブ鋳片に連続鋳造した。表1に、使用したスラブ連続鋳造機の仕様を示し、表2に、極低炭素鋼の化学成分組成を示す。
Figure 2006255759
Figure 2006255759
鋳片幅が1600mmの極低炭素鋼スラブ鋳片を2.4m/分の鋳造速度で連続鋳造する際に、下部の静磁界発生装置からは印加せず、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の溶鋼流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になるように制御した場合(水準1)と、下部の静磁界発生装置から印加するとともに、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の溶鋼流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になるように制御した場合(水準2)の2水準を実施した。そして、水準1及び水準2における鋳片サンプルを採取し、鋳片幅方向で7箇所、鋳片の上面と下面との2箇所、合計14箇所の位置について、鋳片凝固組織のデンドライト傾角に基づいて鋳片表層部の溶鋼流速を推定した。表3に、デンドライト傾角から推定した溶鋼流速を示す。
Figure 2006255759
表3に示すように、鋳片表層部の溶鋼流速の絶対値にはばらつきがあるものの、水準1では、14箇所での溶鋼流速の平均値は0.06m/秒であるのに対し、水準2では14箇所での平均値は0.18m/秒であり、約3倍の流速に増加した。
更に、スラブ鋳片の幅が1600mm、鋳造速度が2.4m/分の条件下で極低炭素鋼を連続鋳造する際に、(1):下部の静磁界発生装置からは印加せず、上部のリニア型移動磁界発生装置を図4に示す印加パターンで印加して溶鋼湯面に旋回流を形成させた場合(比較例1)と、(2):下部の静磁界発生装置からは印加せず、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の溶鋼流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になるように制御した場合(比較例2)と、(3):下部の静磁界発生装置から印加するとともに、上部のリニア型移動磁界発生装置を図3に示す印加パターンで印加して、1/4幅位置の溶鋼流速が−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内になるように制御した場合(本発明例)の3種類の鋳造条件で鋳造し、鋳造されたスラブを素材とする冷間圧延薄鋼板の表面欠陥発生率を比較調査した。
図8に、鋳造条件別に冷間圧延薄鋼板の表面欠陥発生率を調査した結果を示す。図8から明らかなように、比較例1及び比較例2では、冷間圧延薄鋼板の表面欠陥発生率は高く、それに対して、本発明例では、冷間圧延薄鋼板の表面欠陥発生率は低位安定しており、本発明によって冷間圧延薄鋼板の製造歩留りを大きく向上させることが確認できた。
本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略斜視図である。 本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略正面図である。 浸漬ノズルから吐出される吐出流を減速させるときの移動磁界の印加パターンを示す図である。 溶鋼に旋回流を形成させるときの移動磁界の印加パターンを示す図である。 浸漬ノズルから吐出される吐出流を加速させるときの移動磁界の印加パターンを示す図である。 1/4幅位置の溶鋼流速を測定する例を示す図である。 実施例1における調査結果を示す図である。 実施例2における調査結果を示す図である。
符号の説明
1 鋳型
2 浸漬ノズル
3 リニア型移動磁界発生装置
4 静磁界発生装置
5 鋳型長辺
6 鋳型短辺
7 吐出孔
8 溶鋼
9 吐出流
10 溶鋼湯面
11 凝固シェル
12 モールドパウダー
13 浸漬棒

Claims (1)

  1. 連続鋳造用鋳型の背面に対抗して設置した磁界発生装置で磁界を発生させ、該磁界によって浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の流動を制御して鋼の連続鋳造を行うに当たり、浸漬ノズルの吐出孔の位置に設置した上部磁界発生装置と、浸漬ノズルの吐出孔の下方に設置した下部磁界発生装置と、の上下2段に磁界発生装置を設置し、上部磁界発生装置からは移動磁界を印加し、下部磁界発生装置からは鋳型幅方向全域に静磁界を印加して、浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅1/4の鋳型短辺寄りの位置における湯面直下溶鋼流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表し、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表したときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113426972A (zh) * 2021-06-04 2021-09-24 北京首钢股份有限公司 一种结晶器保护渣的控制方法、装置、设备及存储介质
EP4249146A1 (de) 2022-03-21 2023-09-27 Primetals Technologies Austria GmbH Elektromagnetische rühr- und bremseinrichtung für eine kokille zur erzeugung von metallbrammen

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