JP2007260692A - 厚鋼板のサブマージアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2電極以上の多電極サブマージアーク溶接において、第1電極としてワイヤ径が3.2mm以下のフラックス入りワイヤを用い、800A以上の電流で溶接する。
【選択図】図1
Description
そのため、溶接線が直線で長い厚鋼板の溶接には、2電極以上のサブマージアーク溶接が一般に適用され、高品質で高能率の溶接施工が行われている。
サブマージアーク溶接は、ガスシールドアーク溶接に比べて大電流を適用できるため、深い溶け込みを得ることができ、厚鋼板の溶接能率を高めるのに適している。しかしながら、大電流大入熱溶接が可能であるという利点により、溶接能率と欠陥抑制(スラグ巻き込み防止等)を重視するあまり、溶接入熱が過剰になり、溶接部特に熱影響部(HAZ部)の靭性が劣化するという問題がある。
なお、溶接入熱を下げた場合、必然的に溶着量が減少するので、開先断面積を溶着量の減少分に合わせて減らす必要が生じる。このため、より一層の深溶け込み溶接を行わなければ、溶け込み不足を生じてしまう。
従って、上記の問題を解決するには、投入入熱の低減と溶け込み深さの増大という相反する課題を両立させる必要がある。
しかしながら、この方法では、本発明で所期したほど良好な溶け込み深さおよび溶着速度は得られないという問題と、スラグ巻き込み等の欠陥が増大するという問題があった。というのは、電流密度が不足しているため、溶け込み深さの増大と共に溶着量を増大させる効果が不十分であるだけでなく、細径ワイヤ適用によって生じる溶融池の後方への強い流れを制御することができないからである。
しかしながら、この方法では、電流および電流密度が不十分であるため、入熱の大幅な低減と溶け込み深さの増大を両立させることは困難であった。
1.2電極以上の多電極サブマージアーク溶接において、第1電極としてワイヤ径が3.2 mm以下のフラックス入りワイヤを用い、800A以上の電流で溶接することを特徴とする厚鋼板のサブマージアーク溶接方法。
S≦7.6t−40.8 --- (1)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
を満足する条件下で溶接を実施することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のサブマージアーク溶接方法。
S≦3.15t−14 --- (2)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
を満足する条件下で溶接を実施することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のサブマージアーク溶接方法。
a)適正な溶け込み深さを維持しながら溶接入熱を大幅に低減することができ、その結果、溶接金属および溶接熱影響部で優れた低温靭性を得ることができる。
b)高強度鋼管で問題になる溶接熱影響部の軟化を抑制できるので、安定な継手強度を得ることができる。
c)本発明のように、ビードの幅に対して溶け込み深さの比率が大きい溶接を行った場合に発生し易いスラグ巻き込みなどの溶接欠陥は、フラックスコアードワイヤを適用することによって大幅に抑制することができ、その結果、高品質の溶接金属を得ることが可能となる。
d)製造者側からすれば、靭性が十分でなかった例えばCが多く、Cu,Ni等の合金元素が少ない、低コスト鋼材を適用することが可能になり、製造コストの低減も可能になる。
多電極溶接において溶け込み深さへの寄与が大きいのは第1電極と第2電極であるが、特に大きいのは第1電極である。
そこで、発明者らは、この第1電極として最適の形態について検討を重ねた。
その結果、第1電極として、細径のフラックス入りワイヤ(フラックスコアードワイヤともいう)を用いることが所期した目的達成のために、極めて有効であることの知見を得た。
この点、ソリッドワイヤでは、同じ径でも金属部分の断面積が大きく、その分電流密度の低下が避けられないので、十分な効果は得られない。
この効果を得るには、フラックス入りワイヤに充填する粉体に含まれる金属酸化物成分を粉体重量の1mass%以上とすることが望ましい。また、高溶着速度を得るためには、粉体に含まれる金属成分を粉体重量の80mass%以上とすることが望ましい。
また、ワイヤ径についても特に制限はなく、従来から使用される4.0〜6.4mm程度の径のワイヤを使用することができる。
同図(a)に示したように、従来は、大電流大入熱溶接を指向していたことから、開先断面性が大きく、かかる大開先断面性の下で高能率溶接を実施していたため、板厚方向だけでなく、板幅方向にも母材が溶解され、その結果、不要に熱エネルギーが消費されていただけでなく、溶接熱影響部の靭性劣化を余儀なくされていた。
これに対し、本発明では、同図(b)に示すように、ワイヤの径を細くして、アークを絞り、かつ深い溶け込みを得ることができるので、開先断面性を小さくしてトータル溶着量を低減することができ、その結果、低入熱の溶接が可能となり、溶接熱影響部の靭性劣化も防止することができる。
同図に示したとおり、ワイヤ径を細くするほど、同じ溶接電流値での溶着量は増大し、この傾向は、溶接電流が800A以上で顕著になる。
従って、細径のワイヤを用い、800A以上の溶接電流で溶接すれば、開先断面積を減少させ、トータルの溶着量を低減した場合であっても、深い溶け込みを得ることができ、かつ低入熱の溶接が可能になったのである。
なお、溶接電流があまりに大きくなると、入熱量の増大が避けられず、HAZ部靱性に悪影響を及ぼすようになるので、溶接電流の上限は1400A程度とするのが好適である。
図中、実線が鋼板の片面のみに開先加工を施した場合、また破線が鋼板の表裏両面にそれぞれ開先加工を施した場合であり、本発明では、開先断面積を小さく保つことによって所望の効果を得ることができる。
S≦7.6t−40.8 --- (1)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
の関係を満足する場合に、良好なサブマージアーク溶接を行うことができた。
また、鋼板の両面にそれぞれ開先加工を施した場合には、開先断面積Sが次式(2)
S≦3.15t−14 --- (2)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
の関係を満足する場合に、良好なサブマージアーク溶接を行うことができた。
このように、本発明では、開先断面積を小さく保つことによって所望の効果を得ることができる。
さらに、電極の傾斜角度については、溶接進行方向に対して被処理鋼板に垂直な線を0°として、第1電極の傾斜角度を−15〜+15°、後続の電極の傾斜角度は直前の電極に対して0〜30°とすることが好ましい。なお、傾斜角度に関し、−側は後退角側を、+側は前進角側を意味する。
(*5 電極間距離の好適下限値を示して下さい。)
すなわち、電極間距離を30mm以下とすることにより、溶融池の揺動が緩和させて、凸ビードが抑制され、さらに後方に配置される電極を直前の電極に対し0〜30°前進角側に傾斜させることにより、第1電極からの溶融金属の流れを緩和し、溶融池の動きを安定化させて、欠陥のない高品質なビードとすることができる。
表1に示す成分組成になる鋼板に、表2に示す加工条件で図4に示すような開先加工を施したのち、表3および表4に示す溶接条件で、片面サブマージアーク溶接を実施した。
第1電極にはすべてフラックス入りワイヤを適用した。また、特にX1については、第1電極および第2電極ともフラックス入りワイヤを適用した。軟鋼による外皮と充填される粉体の重量比率は3:1であり、粉体中のフラックス成分は1.5mass%、金属成分は98mass%とした。フラックスとしては、SiO2−CaO−CaF2を主成分とする溶融型フラックスを用いた。また、第1電極以外の溶接ワイヤとしては、C:0.07mass%、Si:0.5mass%およびMo:0.5mass%を含むソリッドワイヤを用いた。
また、表4には、溶け込み深さおよび溶接部外観について調べた結果も併記する。
さらに、表4には、HAZ靱性を評価するために、溶接部のボンド部からシャルピー試験片を採取し、−30℃でのシャルピー吸収エネルギーを測定した結果も、併せて示す。
なお、ここでいう溶け込み深さとは、開先底部より溶け込み先端までの距離を指し、開先内に仮付けビードがあっても、そのビード高さは含まない。
いずれも良好な溶接を実施することができた。
表1に示す成分組成になる鋼板に、表2に示す開先加工を施したのち、板厚ごとに溶接条件を設定して、表5および表6示す溶接条件で内面側溶接を行ったのち、表7および表8に示す溶接条件で外面側溶接を実施した。
第1電極にはすべてフラックス入りワイヤを適用した。軟鋼による外皮と充填される粉体の重量比率は3:1であり、粉体中のフラックス成分は1.5mass%、金属成分は98mass%とした。フラックスとしては、SiO2−CaO−CaF2を主成分とする溶融型フラックスを用いた。また、第1電極以外の溶接ワイヤとしては、C:0.07mass%、Si:0.5mass%およびMo:0.5mass%を含むソリッドワイヤを用いた。
また、表6,7に示した外面側溶接のうち、記号D1,D3,D4,D7,D8,D10が発明例であり、この場合にはいずれも、良好な溶接結果を得ることができた。すなわち、低入熱で、深い溶け込み深さが得られ、またHAZ靱性も良好であった。
これに対し、記号D2は、第3電極の電極角度が大きすぎたため、欠陥が生じると共にビード形状の乱れを生じた。
D5は、第2電極−第3電極間距離が大きすぎたため、スラグ巻き込みの欠陥を生じた。
D6は、第1電極の電流が不足したため、溶け込み不足が生じた。
D9は、第1電極のワイヤ径が太く電流密度が不足したため、溶け込み不足が生じた。
Claims (5)
- 2電極以上の多電極サブマージアーク溶接において、第1電極としてワイヤ径が3.2mm以下のフラックス入りワイヤを用い、800A以上の電流で溶接することを特徴とする厚鋼板のサブマージアーク溶接方法。
- 第1電極への給電に直流定電圧電源を用いることを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接方法。
- 溶接ワイヤの中心で測定する各電極間の距離が鋼板表面で30mm以下、また第1電極の傾斜角度が溶接進行方向に対して−15°〜+15°で、かつ後続の電極の傾斜角度が直前の電極に対して0〜30°であることを特徴とする請求項1または2に記載のサブマージアーク溶接方法。
- 鋼板の片面に開先加工を施し、開先断面積Sが次式(1)
S≦7.6t−40.8 --- (1)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
を満足する条件下で溶接を実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサブマージアーク溶接方法。 - 鋼板の表裏両面にそれぞれ開先加工を施し、開先断面積Sが次式(2)
S≦3.15t−14 --- (2)
ここで、S:開先断面積(mm2)
t:板厚(mm)
を満足する条件下で溶接を実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサブマージアーク溶接方法。
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