JP2015100813A - 薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】 CMT溶接に使用し、特に薄鋼板の溶接においてアークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部が得られる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを提供する。【解決手段】 溶融プールとコンタクトチップ間でワイヤの送給および通電制御をする溶接に用いる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.1〜0.3%、Mn:1.9〜3.0%、Cu:0.1〜0.4%を含有し、P:0.030%以下、S:0.020%以下で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式に示すAの値が10〜35であることを特徴とする。A=(Mn+S?102)/Si・・・式【選択図】 図1
Description
本発明は、溶融プールとコンタクトチップ間でワイヤの送給および通電制御をする溶接
に使用し、特に板厚が0.5〜2mmの薄鋼板の溶接においてアークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部が得られる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤに関するものである。
に使用し、特に板厚が0.5〜2mmの薄鋼板の溶接においてアークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部が得られる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤに関するものである。
一般に、ソリッドワイヤを用いたガスシールドアーク溶接方法は高能率であり、機械的
性能の良好な溶接金属と良好なビード形状が得られることから薄鋼板の溶接に広く適用されている。一方、薄鋼板の溶接は、一般的にCO2をシールドガスとしたショートアーク溶接方法が用いられるが、スパッタ発生量の低減および高速溶接性確保の面から、主成分をArガスとし、これにCO2を混合、更にはO2ガスを混合させたシールドガスを使用したパルスMAG溶接方法などが適用されており、これらの溶接は生産性の向上から高速度で高電流の溶接条件で施工され、良好な溶接ビードを形成し健全な溶接継手を作製している。
性能の良好な溶接金属と良好なビード形状が得られることから薄鋼板の溶接に広く適用されている。一方、薄鋼板の溶接は、一般的にCO2をシールドガスとしたショートアーク溶接方法が用いられるが、スパッタ発生量の低減および高速溶接性確保の面から、主成分をArガスとし、これにCO2を混合、更にはO2ガスを混合させたシールドガスを使用したパルスMAG溶接方法などが適用されており、これらの溶接は生産性の向上から高速度で高電流の溶接条件で施工され、良好な溶接ビードを形成し健全な溶接継手を作製している。
近年、ガスシールドアーク溶接による溶接構造物には、更なる高品質化、高効率化が要
求されている。例えば、自動車業界においては環境負荷低減のため、燃費向上を目的とした鋼材の重量を軽減するために鋼材の薄板化が進められている。しかし、薄鋼板の溶接ではこれまで使われてきたパルスMAG溶接では溶接入熱が大きいため溶落ちが発生しやすい。また、溶接時の熱によるひずみ変形が大きくなるという問題がある。
求されている。例えば、自動車業界においては環境負荷低減のため、燃費向上を目的とした鋼材の重量を軽減するために鋼材の薄板化が進められている。しかし、薄鋼板の溶接ではこれまで使われてきたパルスMAG溶接では溶接入熱が大きいため溶落ちが発生しやすい。また、溶接時の熱によるひずみ変形が大きくなるという問題がある。
そのため、新しい溶接方法としてCold Metal Transfer溶接技術(
以下、CMT溶接という。)が開発された。CMT溶接はワイヤの送給を微小制御し、アークを出しながらワイヤを前進し、溶融したワイヤ先端の溶融金属を溶融プールに接触させてアークを消滅した後、強制的にワイヤを引戻して溶融金属を移行させ、再度アークを出しながらワイヤを前進することを繰り返す溶接方法である。したがって、CMT溶接に最適の溶滴移行性を実現できる溶接用ワイヤが必要となっている。
以下、CMT溶接という。)が開発された。CMT溶接はワイヤの送給を微小制御し、アークを出しながらワイヤを前進し、溶融したワイヤ先端の溶融金属を溶融プールに接触させてアークを消滅した後、強制的にワイヤを引戻して溶融金属を移行させ、再度アークを出しながらワイヤを前進することを繰り返す溶接方法である。したがって、CMT溶接に最適の溶滴移行性を実現できる溶接用ワイヤが必要となっている。
薄鋼板のガスシールド溶接用ソリッドワイヤとしては、例えば特開2007−3135
58号公報(特許文献1)にワイヤ成分を高Sとして高速溶接においても広幅でビード形状が安定して得られるという技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、Sにより溶接金属の後方への流速を低減させ、幅方向への湯流れを促進することで、幅の広いビードを得ることができるというものである。しかし、Sは溶融金属の表面張力および粘性を低下させる。CMT溶接においては溶融金属の表面張力が過度に低下すると、アークによって溶融した金属がワイヤ先端で維持できず、溶融金属と溶融プールが接触する前に溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱し、スパッタが発生するという問題がある。
58号公報(特許文献1)にワイヤ成分を高Sとして高速溶接においても広幅でビード形状が安定して得られるという技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、Sにより溶接金属の後方への流速を低減させ、幅方向への湯流れを促進することで、幅の広いビードを得ることができるというものである。しかし、Sは溶融金属の表面張力および粘性を低下させる。CMT溶接においては溶融金属の表面張力が過度に低下すると、アークによって溶融した金属がワイヤ先端で維持できず、溶融金属と溶融プールが接触する前に溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱し、スパッタが発生するという問題がある。
また、特開平7−96391号公報(特許文献2)には、ガスシールドアーク溶接用ワ
イヤとして、高張力鋼の薄鋼板の溶接において、溶接金属が優れた機械的性質と溶接作業性が得られる技術が開示されているが、CMT溶接の適用は考慮されておらず、特許文献2に記載のワイヤ成分では低電流のCMT溶接時にアークが不安定になり、スパッタが発生する。
イヤとして、高張力鋼の薄鋼板の溶接において、溶接金属が優れた機械的性質と溶接作業性が得られる技術が開示されているが、CMT溶接の適用は考慮されておらず、特許文献2に記載のワイヤ成分では低電流のCMT溶接時にアークが不安定になり、スパッタが発生する。
さらに、特開平5−305476号公報(特許文献3)には、ガスシールドアーク溶接
用ソリッドワイヤとして板厚6mm以下の鋼板を高速溶接しても溶接作業性、溶接品質に優れたソリッドワイヤの技術が開示されているが、特許文献3に記載の技術もCMT溶接の適用は考慮されておらず、CMT溶接時に溶融金属の表面張力が低下し、スパッタが発生するという課題があった。
用ソリッドワイヤとして板厚6mm以下の鋼板を高速溶接しても溶接作業性、溶接品質に優れたソリッドワイヤの技術が開示されているが、特許文献3に記載の技術もCMT溶接の適用は考慮されておらず、CMT溶接時に溶融金属の表面張力が低下し、スパッタが発生するという課題があった。
本発明は、CMT溶接に使用し、特に板厚が0.5〜2mmの薄鋼板の溶接においてワ
イヤ送給速度2.0m/min以下の低電流域でもアーク切れが発生せず、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部が得られる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とする。
イヤ送給速度2.0m/min以下の低電流域でもアーク切れが発生せず、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部が得られる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、溶融プールとコンタクトチップ間でワイヤの送給および通電制御をす
る溶接に用いる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.1〜0.3%、Mn:1.9〜3.0%、Cu:0.1〜0.4%、を含有し、P:0.030%以下、S:0.020%以下で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式に示すAの値が10〜35であることを特徴とする。また、ワイヤ径が0.8〜1.0mmであることも特徴とする薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにある。
A=(Mn+S×102)/Si・・・式
る溶接に用いる薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.1〜0.3%、Mn:1.9〜3.0%、Cu:0.1〜0.4%、を含有し、P:0.030%以下、S:0.020%以下で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式に示すAの値が10〜35であることを特徴とする。また、ワイヤ径が0.8〜1.0mmであることも特徴とする薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにある。
A=(Mn+S×102)/Si・・・式
本発明の薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤによれば、板厚が0.5〜
2.0mmの薄鋼板のCMT溶接においてワイヤ送給速度2.0m/min以下の低電流領域においてもアーク切れが発生せず、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部を得ることが可能となる。
2.0mmの薄鋼板のCMT溶接においてワイヤ送給速度2.0m/min以下の低電流領域においてもアーク切れが発生せず、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、良好なビード形状および高温割れのない溶接部を得ることが可能となる。
以下、本発明の薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤについて詳細に説明
する。本発明者らは上記の問題点を解決するために、各種成分の異なるワイヤを試作して、JIS G3131 SPCCの板厚0.4〜2.1mm、長さ200mmの鋼板を、図1に示す横向重ね継手とし、表1に示す溶接条件で溶接を行い、ワイヤ成分のアーク状態、ビード形状、スパッタ発生状況および溶滴移行状態へ及ぼす影響につき詳細に調査した。なお、図中1は溶接ノズル、2はワイヤ、3は上板、4は下板を示す。
する。本発明者らは上記の問題点を解決するために、各種成分の異なるワイヤを試作して、JIS G3131 SPCCの板厚0.4〜2.1mm、長さ200mmの鋼板を、図1に示す横向重ね継手とし、表1に示す溶接条件で溶接を行い、ワイヤ成分のアーク状態、ビード形状、スパッタ発生状況および溶滴移行状態へ及ぼす影響につき詳細に調査した。なお、図中1は溶接ノズル、2はワイヤ、3は上板、4は下板を示す。
その結果、CMT溶接時に発生するスパッタの発生形態は、アークにより溶融した金属が溶融プールに接触して移行する前に、溶融金属がワイヤ先端から離脱し、溶融金属が跳びはねることが要因であることが判明した。そこで、溶融金属の表面張力を低下させるS、Mn量と、溶融金属の表面張力を増加させるSi量を最適化することで、ワイヤ先端からの溶融金属の離脱を防止し、安定した溶滴移行形態とすることで、アークが安定し、スパッタの発生量を減少し、良好なビード形状が得られることを見出した。
以下、本発明におけるワイヤ組成とその含有量の限定理由について説明する。なお、各
成分の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときは単に%と記載して表すこととする。
成分の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときは単に%と記載して表すこととする。
[C:0.05〜0.12%]
Cは、アークを安定化し溶滴を細粒化する作用がある。また、溶接金属の強度を高める効果がある。Cが0.05%未満では、アークが不安定で、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生する。一方、Cが0.12%を超えると、溶接金属を著しく硬化させ耐割れ性が劣化する。したがって、Cは0.05〜0.12%とする。
Cは、アークを安定化し溶滴を細粒化する作用がある。また、溶接金属の強度を高める効果がある。Cが0.05%未満では、アークが不安定で、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生する。一方、Cが0.12%を超えると、溶接金属を著しく硬化させ耐割れ性が劣化する。したがって、Cは0.05〜0.12%とする。
[Si:0.1〜0.3%]
Siは、溶接金属の主脱酸剤として不可欠であると共に、ワイヤの電気抵抗を増大させ、低電流域でのアークを安定にする効果がある。また、溶融金属中にSiおよびOの微細介在物を生成することで、溶融金属表面のO量を減少させて溶融金属の表面張力を増大させる元素である。これによってワイヤ先端からの溶融金属の離脱が防止でき、アークが安定する。しかし、Siが0.1%未満では、前記効果が得られず、低電流域のアークが不安定になりアーク切れが発生する。また、溶融金属の表面張力が低くなりワイヤ先端から溶融金属が離脱しやすくなりスパッタ発生量が多くなる。一方、Siが0.3%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。したがって、Siは0.1〜0.3%とする。
Siは、溶接金属の主脱酸剤として不可欠であると共に、ワイヤの電気抵抗を増大させ、低電流域でのアークを安定にする効果がある。また、溶融金属中にSiおよびOの微細介在物を生成することで、溶融金属表面のO量を減少させて溶融金属の表面張力を増大させる元素である。これによってワイヤ先端からの溶融金属の離脱が防止でき、アークが安定する。しかし、Siが0.1%未満では、前記効果が得られず、低電流域のアークが不安定になりアーク切れが発生する。また、溶融金属の表面張力が低くなりワイヤ先端から溶融金属が離脱しやすくなりスパッタ発生量が多くなる。一方、Siが0.3%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。したがって、Siは0.1〜0.3%とする。
[Mn:1.9〜3.0%]
Mnは、脱酸剤として作用する他、溶融金属の表面張力を低下させる効果があり、溶滴の離脱を促進してスパッタを減少させる効果がある。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止効果がある。Mnが1.9%未満では、その効果が得られず、溶融金属の表面張力が高くなり、ワイヤから溶滴が離脱し難くスパッタ発生量が多くなる。一方、Mnが3.0%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下するため溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Mnは1.9〜3.0%とする。
Mnは、脱酸剤として作用する他、溶融金属の表面張力を低下させる効果があり、溶滴の離脱を促進してスパッタを減少させる効果がある。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止効果がある。Mnが1.9%未満では、その効果が得られず、溶融金属の表面張力が高くなり、ワイヤから溶滴が離脱し難くスパッタ発生量が多くなる。一方、Mnが3.0%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下するため溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Mnは1.9〜3.0%とする。
[Cu:0.1〜0.4%]
Cuは、固溶強化により溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.1%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。一方、Cuが0.4%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、Cuは0.1〜0.4%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
Cuは、固溶強化により溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.1%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。一方、Cuが0.4%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、Cuは0.1〜0.4%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
[P:0.030%以下]
Pは、0.030%を超えると溶接金属の耐割れ性が劣化する。
[S:0.020%以下]
Sは、溶融金属の表面張力と粘性に影響を与える元素であり、0.020%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下してワイヤ先端から溶融金属が不規則に離脱してアークが不安定でスパッタが発生する。
Pは、0.030%を超えると溶接金属の耐割れ性が劣化する。
[S:0.020%以下]
Sは、溶融金属の表面張力と粘性に影響を与える元素であり、0.020%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下してワイヤ先端から溶融金属が不規則に離脱してアークが不安定でスパッタが発生する。
[Aの値:10〜35]
溶融金属の表面張力のバランスをとるために、溶融金属の表面張力を低下させるS、Mnの含有量と溶融金属の表面張力を高めるSi含有量が、溶滴の移行に作用する割合との比として下記A式を得た。下記式で示すAの値が10〜35になるように各合金成分の添加量を調整すると表面張力が最適となり、溶融金属が溶融プールと接触した時にスムーズに溶融金属が移行してスパッタの発生が減少する。Aの値が10未満であると、溶融金属の表面張力が高くなり溶滴が大きくなってスパッタが発生する。一方、Aの値が35を超えると、溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Aの値は10〜35とする。
A=(Mn+S×102)/Si・・・式
溶融金属の表面張力のバランスをとるために、溶融金属の表面張力を低下させるS、Mnの含有量と溶融金属の表面張力を高めるSi含有量が、溶滴の移行に作用する割合との比として下記A式を得た。下記式で示すAの値が10〜35になるように各合金成分の添加量を調整すると表面張力が最適となり、溶融金属が溶融プールと接触した時にスムーズに溶融金属が移行してスパッタの発生が減少する。Aの値が10未満であると、溶融金属の表面張力が高くなり溶滴が大きくなってスパッタが発生する。一方、Aの値が35を超えると、溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Aの値は10〜35とする。
A=(Mn+S×102)/Si・・・式
[ワイヤ径:0.8〜1.0mm]
ワイヤ径は0.8〜1.0mmであることが好ましい。ワイヤ径が0.8mm未満では、ワイヤ送給性が不安定となりビード形状が不良となる。一方、ワイヤ径が1.0mmを超えると、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生してアークが不安定になる。
ワイヤ径は0.8〜1.0mmであることが好ましい。ワイヤ径が0.8mm未満では、ワイヤ送給性が不安定となりビード形状が不良となる。一方、ワイヤ径が1.0mmを超えると、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生してアークが不安定になる。
なお、薄鋼板の厚さは部材の変形や溶接部の溶込深さに影響するので0.5〜2mmであることが好ましい。薄鋼板の厚さが0.5mm未満では、溶接時の熱により部材の変形が起こると共に、溶落ちが発生しやすくなる。一方、薄鋼板の厚さが2mmを超えると、CMT溶接では溶込が不足しやすく十分な機械性能が得られない。
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
表1に示す各種成分およびワイヤ径のソリッドワイヤを試作し、JIS G3131 SPCCの板厚0.4〜2.1mm、長さ200mmの鋼板を、図1に示すように横向重ね継手とし、表2に示す溶接条件で溶接した。
表1に示す各種成分およびワイヤ径のソリッドワイヤを試作し、JIS G3131 SPCCの板厚0.4〜2.1mm、長さ200mmの鋼板を、図1に示すように横向重ね継手とし、表2に示す溶接条件で溶接した。
本発明例であるワイヤW1〜W8は、ワイヤの各成分の含有量およびAの値が適正で、ワイヤ径も適正であるので、溶融金属の表面張力が適正となり溶滴移行がスムーズに行われ、アークが安定してビード形状が良好でスパッタ発生量が少なく、高温割れ等の溶接欠陥がない溶接部が得られ極めて満足な結果であった。なお、ワイヤ記号W9は、ワイヤ径が小さいのでワイヤ送給性がやや不安定でアークがやや不安定になりビード形状もやや不良であった。また、ワイヤ記号W10は、ワイヤ径が大きいのでスパッタ発生量がやや多かった。
比較例中ワイヤ記号W11は、Cが少ないのでアークが不安定で大粒のスパッタの発生量が多かった。ワイヤ記号W12は、Cが多いのでクレータ部に高温割れが生じた。またワイヤ径が大きいのでスパッタ発生量が多かった。ワイヤ記号W13は、Siが少ないのでアークが不安定でアーク切れが発生し、スパッタ発生量が多かった。ワイヤ記号W14は、Siが多いのでスパッタ発生量が多かった。また溶接に用いた薄鋼板の板厚が厚いので溶け込みが浅かった。ワイヤ記号W15は、Mnが少ないのでスパッタ発生量が多かった。また、溶接に用いた薄鋼板の板厚が薄いのでクレータ部近傍で溶け落ちが生じた。
ワイヤ記号W16は、Mnが多いのでスパッタ発生量が多かった。また、Pが多いのでクレータ部に割れが生じた。ワイヤ記号W17は、Cuが少ないのでアークが不安定になりスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ径が小さいのでワイヤ送給性が不良でビード形状も不良であった。ワイヤ記号W18は、Cuが多いのでクレータ部に高温割れが発生した。また、Aの値が低いのでスパッタ発生量が多かった。ワイヤ記号W19は、Sが多いのでアークが不安定でスパッタ発生量が多かった。ワイヤ記号W20は、Aの値が高いのでスパッタ発生量が多かった。
1 溶接ノズル
2 ワイヤ
3 上板
4 下板
特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
2 ワイヤ
3 上板
4 下板
特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
Claims (2)
- 溶融プールとコンタクトチップ間でワイヤの送給および通電制御をする溶接に用いる薄
鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.1〜0.3%、
Mn:1.9〜3.0%、
Cu:0.1〜0.4%を含有し、
P:0.030%以下、
S:0.020%以下で、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記式に示すAの値が10〜35であることを特徴とする薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ。
A=(Mn+S×102)/Si・・・式
(但し、それぞれの成分は、ワイヤ全質量に対する質量%を示す。) - ワイヤ径が0.8〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013243596A JP2015100813A (ja) | 2013-11-26 | 2013-11-26 | 薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2013243596A JP2015100813A (ja) | 2013-11-26 | 2013-11-26 | 薄鋼板のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
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- 2013-11-26 JP JP2013243596A patent/JP2015100813A/ja active Pending
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