JP2015182094A - ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高電流溶接においてもアークが安定してスパッタ発生量が少なく、かつ、高入熱溶接においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法を提供する。
【解決手段】溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.1〜0.5%、Ti:0.1〜0.3%を含有し、Ca:0.0005%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下で、その他はFeおよび不可避的不純物からなるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤと、鋼板全質量に対する質量%で、Ca:0.0020%以下の鋼板で、かつ、下記式に示すAの値が30以下の組み合わせで溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
【選択図】なし
【解決手段】溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.1〜0.5%、Ti:0.1〜0.3%を含有し、Ca:0.0005%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下で、その他はFeおよび不可避的不純物からなるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤと、鋼板全質量に対する質量%で、Ca:0.0020%以下の鋼板で、かつ、下記式に示すAの値が30以下の組み合わせで溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
【選択図】なし
Description
本発明は、溶接用ソリッドワイヤを用いて高電流の溶接条件で溶接した場合においても
アークが安定して極めてスパッタ発生量が少なく、かつ、高入熱で溶接した場合においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
アークが安定して極めてスパッタ発生量が少なく、かつ、高入熱で溶接した場合においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
溶接用ソリッドワイヤを用いたガスシールドアーク溶接方法は高能率であり、機械的性能の良好な溶接金属と良好なビード形状が得られることから広く適用されている溶接方法である。厚鋼板の溶接においては、一般的にCO2をシールドガスとした炭酸ガス溶接方法が用いられるが、250A以上の高電流領域では溶滴がアーク反力によって持ち上げられるグロビュール移行となり大粒のスパッタが発生する。そのため、高電流領域ではスパッタ発生量の低減およびビード外観の面から、主成分をArガスとし、これにCO2を混合させたシールドガスを使用したMAG溶接方法などが適用されているが、シールドガスのコストが増加する。
溶接用ソリッドワイヤを用いた炭酸ガスシールドアーク溶接方法においては、溶接用ソリッドワイヤの成分、特にワイヤの製造時に必然的に含まれるCa量が多いとスパッタの発生量が多くなることが知られている。Caを含有したガスシールド溶接用ソリッドワイヤのスパッタ低減技術として、例えば特開2011−235299号公報(特許文献1)にCaに起因するスパッタの発生をAlおよびNbの1種または2種を含有させてアークを安定化しスパッタの発生量を減少するという技術が開示されている。しかし、Alを添加すると溶接金属の靭性が著しく劣化し、Nbを添加すると溶接金属の強度を高くするとともに靭性を著しく劣化させるので、厚板の多層盛溶接などには適用できないという問題がある。
また、特開2010−228001号公報(特許文献2)には、ワイヤのCa量を限定
し、溶接金属の引張強度および耐低温割れ性に優れた高張力鋼用の溶接用ソリッドワイヤが開示されている。しかし、鋼板に含まれるCaの影響を考慮されていないので、多量のスパッタが発生するという問題がある。
し、溶接金属の引張強度および耐低温割れ性に優れた高張力鋼用の溶接用ソリッドワイヤが開示されている。しかし、鋼板に含まれるCaの影響を考慮されていないので、多量のスパッタが発生するという問題がある。
さらに、特開平7−256484号公報(特許文献3)には、ワイヤのSeおよびCa量を限定することで溶接時のスパッタ発生量を低減する技術が開示されている。しかし、特許文献3の技術もワイヤのCa量のみを規定しており、鋼板のCa量は考慮されていない。そのため、Ca量の多い鋼板で溶接を行った場合、多量のスパッタが発生するという課題があった。また、高電流さらに高入熱の溶接施工条件では良好な機械的性質が得られないという問題もある。
本発明は、ガスシールドアーク溶接で溶接用ソリッドワイヤを用いて、高電流の溶接条件で溶接してもアークが安定して極めてスパッタ発生量が少なく、かつ、高入熱の溶接
においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、ガスシールドアーク溶接方法において、溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.1〜0.5%、Ti:0.1〜0.3%を含有し、Ca:0.0005%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下で、その他はFeおよび不可避的不純物からなるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤと、鋼板全質量に対する質量%で、Ca:0.0020%以下の鋼板で、かつ、下記式に示すAの値が30以下の組み合わせで溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
また、溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、Mo:0.1〜0.3%、B:0.002〜0.01%を更に含有することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法にある。
A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
また、溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、Mo:0.1〜0.3%、B:0.002〜0.01%を更に含有することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法にある。
本発明のガスシールドアーク溶接方法によれば、溶接用ソリッドワイヤを用いて高電流の溶接条件で溶接してもアークが安定して極めてスパッタ発生量が少なく、かつ、高入熱の溶接においても良好な機械的性質が得られるガスシールドアーク溶接方法が可能となる。
以下、本発明のガスシールドアーク溶接方法について詳細に説明する。
本発明者らは上記の問題点を解決するために、各種成分の異なる溶接用ソリッドワイヤを試作して、Ca量の異なる鋼板を、下向きビードオンプレートにて、表1に示す溶接条件Aで溶接を行い、溶接用ソリッドワイヤ成分と鋼板成分がアーク状態、スパッタ発生状況および溶滴移行状態へ及ぼす影響について詳細に調査した。
本発明者らは上記の問題点を解決するために、各種成分の異なる溶接用ソリッドワイヤを試作して、Ca量の異なる鋼板を、下向きビードオンプレートにて、表1に示す溶接条件Aで溶接を行い、溶接用ソリッドワイヤ成分と鋼板成分がアーク状態、スパッタ発生状況および溶滴移行状態へ及ぼす影響について詳細に調査した。
その結果、高電流のガスシールドアーク溶接時に発生するスパッタの発生形態は、アークにより溶融した金属がアーク反力により押し上げられて移行時に大粒の溶滴となり、溶融金属が飛び跳ねるグロビュール移行領域において、溶接用ソリッドワイヤに含まれるCaは溶滴の粗大化を引起し、鋼板のCaはアークの不安定化を引起すことが判明した。これは溶接用ソリッドワイヤのCaは溶融金属の表面で酸化されCa系酸化物になり、アークがCa系酸化物に集中してしまうため、一部分のアーク反力が高くなり溶滴の移行を妨げるため溶滴が離脱せず大きく成長する。鋼板のCaは同様に溶融プール中でCa系酸化物となり、アークが溶融プール中で揺動しているCa系酸化物を追い求めて揺動するためアークが不安定になる。この溶接用ソリッドワイヤと鋼板の2つのCaの作用によって、溶滴の粗大化とアークの不安定化が起こり多量のスパッタを発生させる要因であることが判明した。
そこで溶接用ソリッドワイヤのCa量と鋼板のCa量が及ぼすスパッタ発生への寄与率を考慮し、最適化することで、溶滴の粗大化とアークの不安定化を抑制し、スパッタの発生量が減少することを見出した。また、溶接用ソリッドワイヤのC、Si、CuおよびTi量を限定することにより高電流の溶接施工条件においてもアークが安定し、C、Si、MnおよびCu量の限定で溶接金属の強度を調整し、MnおよびTi量を限定することによって溶接金属の靭性を向上できることを見出した。さらに、溶接用ソリッドワイヤのMoおよびB量を限定することによって、高入熱溶接施工条件においても溶接金属の強度および靭性を確保できることを見出した。
以下、本発明における溶接用ソリッドワイヤ組成および鋼板のCaとその含有量の限定理由について説明する。なお、各成分の含有量は、溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%または鋼板全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときは単に%と記載して表すこととする。
[C:0.03〜0.10%]
溶接用ソリッドワイヤのCは、アークを安定化し溶滴を細粒化する作用がある。また、溶接金属の強度を高める効果がある。Cが0.03%未満では、アークが不安定で、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が低くなる。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属を著しく硬化させ耐割れ性が劣化すると共に溶接時のヒューム量が増加し作業性が劣化する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのCは0.03〜0.10%とする。
溶接用ソリッドワイヤのCは、アークを安定化し溶滴を細粒化する作用がある。また、溶接金属の強度を高める効果がある。Cが0.03%未満では、アークが不安定で、溶滴が大きくなり溶融金属が溶融プールに移行するときに大粒のスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が低くなる。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属を著しく硬化させ耐割れ性が劣化すると共に溶接時のヒューム量が増加し作業性が劣化する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのCは0.03〜0.10%とする。
[Si:0.5〜1.0%]
溶接用ソリッドワイヤのSiは、溶接金属の主要な脱酸剤として不可欠であると共に、ワイヤの電気抵抗を増大させ、アークを安定にする効果がある。また、溶接金属の強度を高めるための主要な元素である。しかし、Siが0.5%未満では、前記効果が得られず、アークが不安定になりアーク切れが発生する。また、溶接金属の強度が低くなる。一方、Siが1.0%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのSiは0.5〜1.0%とする。
溶接用ソリッドワイヤのSiは、溶接金属の主要な脱酸剤として不可欠であると共に、ワイヤの電気抵抗を増大させ、アークを安定にする効果がある。また、溶接金属の強度を高めるための主要な元素である。しかし、Siが0.5%未満では、前記効果が得られず、アークが不安定になりアーク切れが発生する。また、溶接金属の強度が低くなる。一方、Siが1.0%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのSiは0.5〜1.0%とする。
[Mn:1.0〜3.0%]
溶接用ソリッドワイヤのMnは、脱酸剤として作用する他、溶融金属の表面張力を低下させる効果があり、溶滴の離脱を促進してスパッタの発生量を減少させる効果がある。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止の効果がある。Mnが1.0%未満では、その効果が得られず、溶融金属の表面張力が高くなり、ワイヤから溶滴が離脱し難くスパッタ発生量が多くなる。また、高温割れが生じやすくなる。一方、Mnが3.0を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのMnは1.0〜3.0%とする。
溶接用ソリッドワイヤのMnは、脱酸剤として作用する他、溶融金属の表面張力を低下させる効果があり、溶滴の離脱を促進してスパッタの発生量を減少させる効果がある。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止の効果がある。Mnが1.0%未満では、その効果が得られず、溶融金属の表面張力が高くなり、ワイヤから溶滴が離脱し難くスパッタ発生量が多くなる。また、高温割れが生じやすくなる。一方、Mnが3.0を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのMnは1.0〜3.0%とする。
[Cu:0.1〜0.5%]
溶接用ソリッドワイヤのCuは、固溶強化により溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.1%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が低下する。一方、Cuが0.5%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、溶接用ソリッドワイヤのCuは0.1〜0.5%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
溶接用ソリッドワイヤのCuは、固溶強化により溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.1%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。また、溶接金属の強度が低下する。一方、Cuが0.5%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、溶接用ソリッドワイヤのCuは0.1〜0.5%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
[Ti:0.1〜0.3%]
溶接用ソリッドワイヤのTiは強脱酸剤として作用し、高電流溶接時のアークを安定化する作用があるほか、溶接金属にTiN、TiCなどの析出物を形成し、アシュキュラーフェライトの生成核となることで靭性を向上する。Tiが0.1%未満では、アークが不安定で、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.3を超えると、スラグが増加して溶接後のスラグ除去が容易でなく作業能率を阻害する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのTiは0.1〜0.3%とする。
溶接用ソリッドワイヤのTiは強脱酸剤として作用し、高電流溶接時のアークを安定化する作用があるほか、溶接金属にTiN、TiCなどの析出物を形成し、アシュキュラーフェライトの生成核となることで靭性を向上する。Tiが0.1%未満では、アークが不安定で、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.3を超えると、スラグが増加して溶接後のスラグ除去が容易でなく作業能率を阻害する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのTiは0.1〜0.3%とする。
[Ca:0.0005%以下]
溶接用ソリッドワイヤのCaは、溶滴表面でCa系酸化物となり、アーク反力を高め溶滴の移行を妨げて溶滴を粗大化しスパッタの発生を増加させる。そのため、溶接用ソリッドワイヤのCaは0.0005%以下とする。
溶接用ソリッドワイヤのCaは、溶滴表面でCa系酸化物となり、アーク反力を高め溶滴の移行を妨げて溶滴を粗大化しスパッタの発生を増加させる。そのため、溶接用ソリッドワイヤのCaは0.0005%以下とする。
[P:0.020%以下、S:0.020%以下]
溶接用ソリッドワイヤのPおよびSは、溶接金属の耐割れ性が劣化する。したがって、PおよびSともに0.020%以下とする。
溶接用ソリッドワイヤのPおよびSは、溶接金属の耐割れ性が劣化する。したがって、PおよびSともに0.020%以下とする。
[鋼板のCa:0.0020%以下]
鋼板のCaが0.0020%を超えると、溶融プール表面のCa系酸化物が多くなり、アークが揺動して不安定になりスパッタ発生量を増加させる。したがって、鋼板のCaは0.0020%以下とする。
鋼板のCaが0.0020%を超えると、溶融プール表面のCa系酸化物が多くなり、アークが揺動して不安定になりスパッタ発生量を増加させる。したがって、鋼板のCaは0.0020%以下とする。
[Aの値:30以下]
Ca系酸化物の生成による溶滴の粗大化とアークの不安定化を防止するため、溶接用ソリッドワイヤのCaと鋼板のCaの寄与率を算出し、スパッタ発生が抑制できる割合として下記A式を得た。下記式で示すAの値が30以下になるように溶接用ソリッドワイヤと鋼板のCa成分を調整すると、スパッタ発生への影響が抑制され、良好な溶接が可能となる。Aの値が30を超えると、スパッタが多量に発生する。したがって、Aの値は30以下とする。A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
Ca系酸化物の生成による溶滴の粗大化とアークの不安定化を防止するため、溶接用ソリッドワイヤのCaと鋼板のCaの寄与率を算出し、スパッタ発生が抑制できる割合として下記A式を得た。下記式で示すAの値が30以下になるように溶接用ソリッドワイヤと鋼板のCa成分を調整すると、スパッタ発生への影響が抑制され、良好な溶接が可能となる。Aの値が30を超えると、スパッタが多量に発生する。したがって、Aの値は30以下とする。A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104・・・式
[Mo:0.1〜0.3%]
溶接用ソリッドワイヤのMoは、組織を微細化して大入熱の溶接施工条件においても溶接金属の強度と靭性を確保する元素である。Moが0.1%未満では、これらの効果が得られず強度と靭性が劣化する。一方、Moが0.3を超えると溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのMoは0.1〜0.3%とする。
溶接用ソリッドワイヤのMoは、組織を微細化して大入熱の溶接施工条件においても溶接金属の強度と靭性を確保する元素である。Moが0.1%未満では、これらの効果が得られず強度と靭性が劣化する。一方、Moが0.3を超えると溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのMoは0.1〜0.3%とする。
[B:0.002〜0.01%]
溶接用ソリッドワイヤのBは、溶接金属の靭性低下の要因となる粗大な粒界フェライトの生成を抑止し、大入熱の溶接施工条件においても靭性を向上する効果がある。Bが0.002%未満では、靭性が低下する。一方、Bが0.01%を超えると、低融点のBが偏析して高温割れが発生する。また、溶接金属の靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのBは0.002〜0.01%とする。
溶接用ソリッドワイヤのBは、溶接金属の靭性低下の要因となる粗大な粒界フェライトの生成を抑止し、大入熱の溶接施工条件においても靭性を向上する効果がある。Bが0.002%未満では、靭性が低下する。一方、Bが0.01%を超えると、低融点のBが偏析して高温割れが発生する。また、溶接金属の靭性が低下する。したがって、溶接用ソリッドワイヤのBは0.002〜0.01%とする。
(実施例1)
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
表2に示す各種成分の溶接用ソリッドワイヤを試作して、JIS G3106に規定されるCa含有量の異なるSM490A、板厚9mm、長さ450mmの鋼板と各種組み合わせて、下向きのビードオンプレートにて表1に示す溶接条件A(高電流)で溶接した。また、機械的性能は、板厚20mmのSM490A鋼板(Ca:0.0010%)を用い表1に示す溶接条件Aで多層盛溶接した。なお、試作した溶接用ソリッドワイヤはワイヤ表面に銅めっきを施し、ワイヤ径は1.2mmとした。
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
表2に示す各種成分の溶接用ソリッドワイヤを試作して、JIS G3106に規定されるCa含有量の異なるSM490A、板厚9mm、長さ450mmの鋼板と各種組み合わせて、下向きのビードオンプレートにて表1に示す溶接条件A(高電流)で溶接した。また、機械的性能は、板厚20mmのSM490A鋼板(Ca:0.0010%)を用い表1に示す溶接条件Aで多層盛溶接した。なお、試作した溶接用ソリッドワイヤはワイヤ表面に銅めっきを施し、ワイヤ径は1.2mmとした。
各試作溶接用ソリッドワイヤと各種鋼板との組み合わせの評価は、アークの安定性スパッタ発生量を調査した。スパッタ発生量の測定は、銅製の捕集箱を用いて、ビードオンプレート溶接で5回溶接し、1分間当たりのスパッタ発生量を算出した。スパッタ発生量は1.5g/min以下を良好とした。また、各ワイヤの溶接金属の強度および靭性はJIS Z 3111に準拠して多層盛溶接し、引張強さ490〜650MPaを良好とした、靭性は0℃のシャルピー吸収エネルギー値が47J以上のものを良好とした。それらの結果を表3にまとめて示す。
本発明例であるワイヤW1〜W8は、溶接用ソリッドワイヤのC、Si、Mn、Cu、Ti、Caの含有量、鋼板のCaの含有量およびAの値が適正であるので、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、高温割れ等の溶接欠陥がない溶接部が得られ、溶接金属の引張強さおよび吸収エネルギー共に極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W9は、溶接用ソリッドワイヤのCが少ないので、アークが不安定で大粒のスパッタの発生量が多かった。また、溶接金属の引張強さが低かった。ワイヤ記号W10は、溶接用ソリッドワイヤのCが多いので、溶接時にヒュームが多く発生し、クレータ部に高温割れが発生した。また、溶接金属の引張強さが高かった。さらに、組み合わせた鋼板Caが多いので、アークが不安定になりスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W11は、溶接用ソリッドワイヤのSiが少ないので、アークが不安定になり、溶接金属の引張強さが低かった。ワイヤ記号W12は、溶接用ソリッドワイヤのSiが多いので、アークがやや不安定で溶滴移行時に大粒のスパッタが発生し、溶接金属の引張強さが高くなり吸収エネルギーが低かった。ワイヤ記号W13は、溶接用ソリッドワイヤのMnが少ないので、アークがやや不安定でスパッタ発生量が多く、クレータ部に高温割れが発生した。
ワイヤ記号W14は、溶接用ソリッドワイヤのMnが多いので、溶接金属の引張強さが高くなり吸収エネルギーが低かった。また、Aの値が高いので、アークがやや不安定でスパッタ発生量が多かった。ワイヤ記号W15は、溶接用ソリッドワイヤのCuが少ないのでアーク不安定になりスパッタ発生量が多かった。また、溶接金属の強度が低下した。
ワイヤ記号W16は、溶接用ソリッドワイヤのCuが多いので、クレータ部に高温割れが発生した。また、Tiが少ないので、アークが不安定になり、溶接金属の吸収エネルギーが低かった。ワイヤ記号W17は、溶接用ソリッドワイヤのTiが多いので、溶接時にスラグ量が増加したのでスラグ剥離作業に時間を要した。また、Caが多いので、アークがやや不安定でスパッタ発生量が多かった。
(実施例2)
表4に示す各種成分の溶接用ソリッドワイヤを試作して、JIS G3106に規定されるCa含有量の異なるSM490A、板厚9mm、長さ450mmの鋼板と各種組み合わせて、下向きのビードオンプレートにて表1に示す溶接条件B(大入熱)で溶接した。また、機械的性能は、板厚20mmのSM490A鋼板(Ca:0.0010%)を用い表1に示す溶接条件Bで多層盛溶接した。なお、試作した溶接用ソリッドワイヤはワイヤ表面に銅めっきを施し、ワイヤ径は1.4mmとした。
表4に示す各種成分の溶接用ソリッドワイヤを試作して、JIS G3106に規定されるCa含有量の異なるSM490A、板厚9mm、長さ450mmの鋼板と各種組み合わせて、下向きのビードオンプレートにて表1に示す溶接条件B(大入熱)で溶接した。また、機械的性能は、板厚20mmのSM490A鋼板(Ca:0.0010%)を用い表1に示す溶接条件Bで多層盛溶接した。なお、試作した溶接用ソリッドワイヤはワイヤ表面に銅めっきを施し、ワイヤ径は1.4mmとした。
各試作溶接用ソリッドワイヤと各種鋼板との組み合わせの評価の詳細は、実施例1と同様である。これらの結果を表5にまとめて示す。表4および表5中、本発明例であるワイヤW18〜W21は、溶接用ソリッドワイヤのC、Si、Mn、Cu、Ti、Ca、Mo、Bの含有量、鋼板のCaの含有量およびAの値が適正であるので、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、高温割れ等の溶接欠陥がない溶接部が得られ、溶接金属の引張強さ、吸収エネルギー共に極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W22は、Aの値が高いので、アークがやや不安定でスパッタ発生量が多かった。また、溶接用ソリッドワイヤのMoが少ないので、溶接金属の引張強さおよび吸収エネルギーが低かった。ワイヤ記号W23は、溶接用ソリッドワイヤのMoが多いので、溶接金属の引張強さが高く吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W24は、組み合わせた鋼板のCaが多いので、アークが不安定になりスパッタ発生量が多かった。また、溶接用ソリッドワイヤのBが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低かった。ワイヤ記号W25は、溶接用ソリッドワイヤのCaが多いので、アークがやや不安定でスパッタ発生量が多かった。また、Bが多いので、クレータ部に高温割れが生じた。
特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
Claims (2)
- ガスシールドアーク溶接方法において、溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.1〜0.5%、Ti:0.1〜0.3%を含有し、Ca:0.0005%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下で、その他はFeおよび不可避的不純物からなるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤと、鋼板全質量に対する質量%で、Ca:0.0020%以下の鋼板で、かつ、下記式に示すAの値が30以下の組み合わせで溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
A=(鋼板のCa+3×ワイヤのCa)×104 ・・・式
(但し、それぞれの成分は、全質量に対する質量%を示す。) - 溶接用ソリッドワイヤ全質量に対する質量%で、Mo:0.1〜0.3%、B:0.002〜0.01%を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接方法。
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JP2014059547A JP2015182094A (ja) | 2014-03-24 | 2014-03-24 | ガスシールドアーク溶接方法 |
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JP2018126755A (ja) * | 2017-02-08 | 2018-08-16 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 薄鋼板のパルスmag溶接方法 |
JP2018134648A (ja) * | 2017-02-20 | 2018-08-30 | 新日鐵住金株式会社 | 耐食鋼のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
CN114340837A (zh) * | 2019-09-17 | 2022-04-12 | 株式会社神户制钢所 | 气体保护电弧焊用焊丝 |
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2014
- 2014-03-24 JP JP2014059547A patent/JP2015182094A/ja active Pending
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