JP3881587B2 - アーク安定性に優れたチタン又はチタン合金のmig溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶・建築構造物などの構造物分野において、チタン又はチタン合金構造材のMIG溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、チタン又はチタン合金材料は、高い耐食性が要求される船舶・建築構造物・自動車・バイク等の構造材に使用されていたが、これら材料を溶接する場合、現在は、主に、非消耗電極式溶接方法の一つであるTIG溶接方法(タングステンイナートガスメタル溶接方法)を用いている。
【0003】
この他、代表的な溶接方法として、消耗電極式溶接方法であるMIG溶接方法(イナートガスメタルアーク溶接方法)がある。このMIG溶接方法は、TIG溶接方法に比べ、数倍以上の溶接能率が得られる溶接方法であるが、純Tiの溶接ワイヤを用い、この方法で、チタン及びチタン合金を溶接する際には、溶接アークが不安定となり、良好な外観形状の溶接ビードが得られない。
【0004】
これは、溶接中、アークが、陰極点を確保してアークを維持するために、被溶接材(チタン又はチタン合金)の表面に存在する酸化膜の間を激しく移動して暴れるというワンダリング現象によると考えられる。
【0005】
即ち、このワンダリング現象により、溶接ビードが蛇行したり、また、溶接スパッタが多量に発生して、被溶接材(チタン又はチタン合金)の表面に数多く付着することが原因である。
【0006】
このように、純Tiの溶接ワイヤを用いるチタン及びチタン合金のMIG溶接においては、ワンダリング現象に起因する溶接ビードの蛇行やスパッタの付着のため、溶接部の外観形状が不良となる。
【0007】
一方、TIG溶接方法では、高融点の非消耗電極を使用してアークを発生させ、被溶接材に生成する溶融池に、溶接ワイヤを供給して溶接を行うので、スパッタは発生しないし、また、電極側が負極性(被溶接側が正極性)であるので、溶接中、被溶接材表面の酸化膜が除去されるというクリーニング作用が起き、その結果、ワンダリング現象は生じないので、溶接ビードは蛇行せず、良好な外観形状の溶接部が得られる。
【0008】
このことから、チタン又はチタン合金の構造材を溶接する場合には、TIG溶接方法が専ら用いられている。
【0009】
例えば、特公昭59−226159号公報には、加工組織をなす2本のチタン帯板の長さ方向端面を突き合わせ、TIG溶接して溶接部近傍の母材部を軟化焼鈍することにより、破断することのない接続を行うチタン帯板の接続方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、TIG溶接では、溶接トーチと溶接ワイヤを適正な位置に保持する必要があり、工場等で、溶接トーチと溶接ワイヤを保持する装置を使用できる場合はよいが、被溶接物が大型構造物の場合、溶接作業者が、溶接トーチと溶接ワイヤを保持しつつ、溶接の進行に伴って移動しなければならなくなり、溶接作業者にとって作業負担が大きくなる。
【0011】
この作業負担を軽減するため、溶接トーチ内に溶接ワイヤを送給するガイド装置を組み込むことが考えられるが、そのような装置を備える溶接トーチは、MIG溶接用半自動溶接トーチに比べて高価なものとなってしまう。
【0012】
また、TIG溶接においては、MIG溶接に比べて溶接入熱が小さいために、溶接時間が長くならざるを得ず、そのため、作業能率が悪い。さらに、TIG溶接では、溶接時間が長いために、シールドガスに使用するガス量が必然的に多くなり、溶接コストが高くなる。
【0013】
このようなTIG溶接方法に替わる溶接方法として、特開2000−280076号公報には、不活性ガスに微量の酸化性ガスを添加したシールドガス及びチタン又はチタン合金の消耗電極を使用してパルス溶接電流を通電して溶接するチタン及びチタン合金のアーク溶接方法が開示されている。
【0014】
しかし、上記溶接方法のように、シールドガスから酸素あるいは酸化物を供給すると、溶接アークを安定化する一方で、酸素が溶接金属内に大量に混入してしまい、そのため、溶接部が硬化し、伸びが低下するなどの機械的特性の低下を招くことになる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑み、チタンおよびチタン合金を、安定してかつ高能率でMIG溶接し、さらに、半自動溶接による現場溶接を可能とし、溶接時間短縮によるシールドガス使用量低減によるコスト削減を可能にするMIG溶接方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ワンダリング現象の根本原因が、被溶接材の表面に存在し陰極点として作用する酸化物であることに着目し、溶接中、溶接ワイヤ先端に最近接する被溶接材の表面に酸化物を形成すれば、溶接アークを安定的に維持、継続できるとの発想に至った。
【0017】
そして、この発想を実現する手段について、鋭意検討した結果、本発明者は、溶接ワイヤに所定量のAlを添加しておくと、このAlが酸化して溶融池に移行し、このAl酸化物が陰極点として作用し、溶接中、溶接アークを安定的に維持、継続できることを見出した。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するため、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0023】
(1) チタン又はチタン合金のMIG溶接方法において、Al:4〜8質量%、残部Ti及び不可避的不純物のチタン合金からなるワイヤを用い、かつ、下記電流条件を満たすパルス溶接電流で、チタン又はチタン合金を溶接することを特徴とするチタン又はチタン合金のMIG溶接方法。
300A≦ピーク電流≦500A
2.0≦ピーク電流/ベース電流≦5.0
【0024】
(2) 前記ワイヤの断面外径が、1.6mm以上2.0mm以下であることを特徴とする前記(2)に記載のチタン又はチタン合金のMIG溶接方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明について、詳細に説明する。図1に、MIG溶接装置の外観を模式的に示す。
【0026】
被溶接材1にMIG溶接用トーチ2を対向させ、ワイヤ送給装置(図示なし)で溶接ワイヤ3を送給しつつ、直流パルス溶接電源(図示なし)を用いて、被溶接材1と溶接ワイヤ3の間にアーク4を生起し、被溶接材1に溶融池5を形成する。
【0027】
そして、溶接トーチ2を矢印方向に移動して溶接ビード6を形成する。この時、図1に示すように、溶接トーチ3の先端とともに、溶接アーク4の後方も、Arガス等の不活性ガスでシールドする。
【0028】
チタン及びチタン合金は、鋼等に比べて低温で酸化し易いので、溶接トーチの先端のみをガスシールドする(鋼ではこれで充分である。)だけでは、溶接金属が酸化して硬化し、良好な伸びが得られなくなる。
【0029】
そのため、チタン及びチタン合金のMIG溶接においては、溶接トーチ2の後方にシールドボックス7を付設して、溶接アーク4の後方も、Arガス等の不活性ガスでシールドする。
【0030】
この時、シールドガスが溶接ビード6の表面に均一に供給されるように、シールドボックス7内に、溶接方向と平行に、溶接ビードと反対側にガス出口9を適宜の数備える供給パイプ8を配置し、ガス出口9から噴出するシールドガスを一度シールドボックス内の上壁に当ててから、下方の溶接ビード6に当てる方法が一般的に採用されている。
【0031】
図2に、開先11を形成した被溶接材1を、図1に示すようなMIG溶接装置で溶接する場合における溶接ビード6の形成態様を模式的に示す。
【0032】
溶接トーチ2を矢印方向(溶接方向)に移動して、溶融池5の後方に溶接ビード6を形成していくが、この時、通常、溶接アーク4のワンダリング現象により、比較的大きなスパッタ12が、被溶接材の表面や、溶接ビードの表面に付着する。
【0033】
図3に、従来のMIG溶接により形成される溶接ビードの外観を模式的に示す。ワンダリング現象により溶接ビード6が蛇行し、かつ、溶接ビード6の周囲には、ワンダリング現象の痕跡が残されている。
【0034】
溶接ビードの蛇行の程度は、ビード蛇行幅として、溶接ビード始端部が最も凹んでいる位置14を通り溶接方向(図中矢印)に平行な直線と、溶接ビード始端部が最も出っ張っている位置15を通り溶接方向に平行な直線との最短距離(mm)(図中Wb)で示す。
【0035】
このビード蛇行幅は、略0であることが望ましいが、略0mmにすることが難しい場合、一応、0.6mmまでは許容できる範囲である。
【0036】
ワンダリング現象の痕跡は、ワンダリング現象が激しく起きる場合に、溶接ビード始端部の外側に、アークが移動して溶接ビードからはみ出した痕跡として残るものである。
【0037】
この痕跡が溶接ビードで隠れる場合は、外観上問題はないが、溶接ビードからはみ出て残っている場合、当然に被溶接材の外観を損ねるから、溶接部に残らないようにすべきものである。
【0038】
ワンダリング現象の程度は、この痕跡の幅をワンダリング現象幅とし、溶接ビードの始終端から溶接アークがワンダリング現象によって移動した痕跡の最も外側の位置までの距離(mm)の最大値で示す(図中Ww)。
【0039】
ワンダリング現象の痕跡を、溶接部に残してはいけないから、ワンダリング現象幅Ww0mmにすべきものである。しかし、0mmを指向する溶接条件を選択してもワンダリング現象が激しく起き、Wwが2〜3mmに達する場合もある。
【0040】
更に、図3においては、被溶接材の表面及び溶接ビードの表面に、比較的大きなスパッタ12が、数多く付着している。このように、従来のMIG溶接により形成される溶接ビードの外観形状は劣悪である。
【0041】
そこで、本発明者は、上記溶接ビードの外観形状を改善すべく、前記発想の下において改善策を鋭意研究した。
【0042】
その結果、本発明者は、チタン又はチタン合金のMIG溶接において、Alを4〜8質量%含有し、残部がTi及び不可避的不純物のチタン合金からなる溶接ワイヤを用いると、溶接アークが安定して、ワンダリング現象が起きず、その結果、スパッタの付着が極めて少なく、かつ、外観形状が極めて良好な溶接ビードを得ることができることを見出した。
【0043】
本発明のMIG溶接用ワイヤ(本発明ワイヤ)は、上記知見を基本思想とするものである。
【0044】
ここで、上記チタン合金においてAlを4〜8質量%と規定する理由は、Alが0.5質量%未満であると、陰極点の形成が不充分となり、溶接アークが安定せず、一方、10質量%を超えると、溶接部にAlがAl酸化物として多量に残り溶接部の靭性を劣化させるが、表2に示すように、4〜8質量%の範囲で、溶接ビードの外観形状が良好であることを実験的に確認したからである。
【0045】
図4に、Alを6質量%添加した純チタンの溶接ワイヤ(本発明ワイヤ)を用い、純チタン(被溶接材)にMIG溶接を行って得られる溶接ビードの外観を模式的に示す。図に示すように、ビード蛇行幅Wb≒0、ワンダリング現象幅Ww≒0であり、かつ、スパッタの付着は皆無である。
【0046】
本発明ワイヤのチタン合金が、Alの他に、酸素を1.0質量%以下含有すると溶接アークが更に安定し、ビード蛇行幅Wb≒0、ワンダリング現象幅Ww≒0、スパッタ付着が皆無で、かつ、機械的性質の優れた溶接部を確実に得ることができる。
【0047】
鋼のMIG溶接においては、シールドガスに酸化性ガスを所要量添加すると、溶接アークが安定し、スパッタ現象の抑制に効果があることが知られている。また、チタンやチタン合金のMIG溶接においても、特開平2000−280076号公報に開示されているように、シールドガスに微量の酸化性ガスを添加すると、アークの安定化、スパッタ現象の抑制に効果があることが知られている。しかし、酸化性ガス量、特に酸素量と溶接アークの安定性やスパッタ現象の低減との関連性は明らかにされているとは言い難い。
【0048】
また、通常、酸素は溶接アーク雰囲気から侵入し溶接部に残存するが、その量が多くなると、溶接部において強度が向上し過ぎて伸びが小さくなり、被溶接材の機械的性質とのバランスを欠くことになる。
【0049】
本発明においては、溶接アークの安定化、及び、溶接部の機械的性質の適正化のため、Oを1.0質量%以下に規定する。
【0050】
本発明ワイヤにおいては、溶接アークの安定化を主目的とするところ、溶接アークをより安定化するため、ワイヤの断面外径を、1.6mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。
【0051】
本発明者は、チタン及びチタン合金のMIG溶接における溶滴移行形態について鋭意研究し、低電流側では、グロビューラーとなって溶滴が大きくなって、スパッタが発生しやくなり、一方、高電流側では、スプレー状態となって溶滴が小さくなって、スパッタが抑制されることを解明した。
【0052】
一般に、MIG溶接において、溶接ワイヤの径が大きくなると、小さい場合に比べて、最大溶接電流が大きくなり、最適溶接条件の選択幅が広がる点で好ましく、また、溶接電流を一定とすれば、アーク中の溶接電流密度が小さくなり、溶接アークが安定化する点で好ましいが、溶接ワイヤの径を大きくすることには、ワイヤを円滑に送給し、溶接ビードの外観形状を良好に維持、継続する点で限界がある。
【0053】
そこで、本発明者は、更に、大径、高電流でもワイヤの円滑な送給を確保し、安定したアークの発生、継続を確実なものにし得るワイヤ径の最適範囲を調査した。
【0054】
その結果、ワイヤの断面外径は1.6mm以上2.0mm以下が好ましいことが判明した。ワイヤの断面外径が1.6mm未満であると、高電流を流すことができず、スパッタの抑制に限界が生じ、一方、2.0mmを超えると、ワイヤ速度の変動が溶接アークの安定性に大きく影響して外観形状の良好な溶接ビードを得ることができない。
【0055】
本発明のMIG溶接方法(本発明方法)は、本発明ワイヤを用いてチタン又はチタン合金を溶接するので、本発明方法によれば、溶接中、溶接アークが極めて安定化して、図4に示す外観形状が優れた溶接部を得ることができる。
【0056】
溶接電源としては、直流溶接電源または直流パルス溶接電源を用いる。一般に、パルス溶接電流を用いると、溶接時の溶滴移行が規則的かつスムーズに行なわれることが知られているが、本発明方法においても、直流パルス溶接電源を用いると、ワンダリング現象幅及び/又はビード蛇行幅がより減少することが、実験の結果判明した。
【0057】
更に、上記実験結果によれば、
300A≦ピーク電流≦500A
2.0≦ピーク電流/ベース電流≦5.0
の直流パルス溶接電源を用いると、溶接アークがより一層安定することが判明した。図5に、上記電流条件に従う溶接電流範囲を示す。
【0058】
なお、図5は、ワンダリング現象幅が略0mm、ビード蛇行幅が0.2mm超0.6mm以下の溶接ビードを、外観が良好な溶接ビード、ワンダリング現象幅が略0mm、ビード蛇行幅が0.2mm以下の溶接ビードを外観が極めて良好な溶接ビードとし、外観が良好な溶接ビードを○、外観が極めて良好な溶接ビードを◎で整理した結果を示す図である。
【0059】
ピーク電流が300A未満、又は、500A超の場合、または、ピーク電流/ベース電流が2.0未満、又は、5.0超の場合でも、ワンダリング現象幅及びビード蛇行幅は小さくなり、外観形状の良好な溶接ビードを得ることができるか、上記電流条件(図5、参照)の下で本発明方法を実施すれば、溶接中、溶接アークが極めて安定化して、外観形状が極めて良好な溶接ビード(図4、参照)を得ることができる。
【0060】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例で用いた条件は一例であり、本発明は、該条件に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
純チタン溶接ワイヤと、純チタン溶接ワイヤに、Alを2〜14質量%の範囲で添加した溶接ワイヤ(ワイヤ径:1.6mm)を用い、表1に示す溶接条件で、MIG溶接を行ない、溶接状態および溶接部を観察し評価した。その結果を、表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表2においては、ワンダリング現象幅が略0 mm 、ビード蛇行幅が0.2mm超0.6 mm 以下の溶接ビードを、外観が良好な溶接ビードと評価した。
表2から、Alを4〜8質量%含有する溶接ワイヤを用いた場合には、アークが安定してワンダリング現象が減少し(ワンダリング現象幅は0.0 mm)、かつ、溶接ビード蛇行幅も減少して、良好な外観形状の溶接ビードが得られていることが解かる。
【0065】
しかし、純チタン溶接ワイヤや、Alを10質量%を超えて添加した溶接ワイヤを用いた場合には、アークが不安定となって、ワンダリング現象が大きくなり(ワンダリング現象幅は8mm以上)、溶接ビード始端部の外側にワンダリング現象の痕跡が残り、また、溶接ビード蛇行幅も大きくなり(2mm以上)、溶接ビードの外観形状は不良となった。
【0066】
なお、表2中に、スパッタの付着状況は示していないが、目視観察により、Alを4〜8質量%含有する溶接ワイヤを用いた場合には、スパッタの付着が極めて少なくなっていることを確認した。このことも踏まえ、Alを4〜8質量%に規定した。
【0067】
(実施例2)
表3に、純チタン溶接ワイヤにAlを6wt%添加したワイヤ径1.2mmと1.6mmの溶接ワイヤを用いてMIG溶接を行なった場合における溶接ビードの外観形状評価を示す。ワイヤ径1.2mmの溶接ワイヤを用いた場合に比べ、ワイヤ径1.6mmの溶接ワイヤを用いた場合は、アークのワンダリング現象がより抑制され、ワンダリング現象幅Wwが減少するとともに、ビードの蛇行幅Wbも減少している。
【0068】
この結果から、溶接ワイヤ径を1.6mmとすることにより、高電流で安定したアークを生起して、外観形状の極めて良好な溶接ビードを得ることが可能であることが解かる。
【0069】
【表3】
【0070】
(実施例3)
純チタン溶接ワイヤにAlを6wt%添加したワイヤ径1.6mmの溶接ワイヤを用い、溶接電源として直流パルス溶接電源を使用し、表4に示す溶接条件で、パルス溶接電流のピーク電流250〜550A、ベース電流60〜300Aの範囲内で、それぞれの電流値を変えMIG溶接を行ない、溶接部を観察し評価した。
【0071】
その結果を表5に示す。表5中、Wwはワンダリング現象幅、Wbはビード蛇行幅であり、Ww=0mm、0.2mm<Wb≦0.6mmのものを“良好”と評価し、Ww=0mm、0mm≦Wb≦0.2mmのものを“極めて良好”と評価した。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
表5から、ピーク溶接電流が300〜500Aで、かつ、ピーク電流/ベース電流が2.0〜5.0の範囲において、ワンダリング現象幅及びビード蛇行幅が大きく減少し、溶接ビードの外観形状が極めて良好なものとなっていることが解かる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン又はチタン合金のMIG溶接において、溶接アークを安定化してワンダリング現象を抑制することができるので、溶接ビードの外観形状が良好で、かつ、機械的特性の劣化がない溶接部を得ることができる。
【0076】
したがって、本発明は、チタン又はチタン合金構造材で、大型の屋外構造物や、産業用機械構造物を構築することを可能にし、産業の発展に寄与するところが大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】MIG溶接装置の外観を模式的に示す図である。
【図2】溶接ビードの形成態様を模式的に示す図である。
【図3】従来のMIG溶接で得られる溶接ビードの外観を模式的に示す図である。
【図4】本発明のMIG溶接で得られる溶接ビードの外観を模式的に示す図である。
【図5】本発明における好適なパルス溶接電流の範囲を示す図である。
【符号の説明】
1…被溶接材
2…溶接トーチ
3…溶接ワイヤ
4…溶接アーク
5…溶接池
6…溶接ビード
7…シールドボックス
8…ガス供給パイプ
9…ガス出口
10…シールドガス流れ方向
11…開先
12…スパッタ
13…ワンダリング現象の痕跡
Ww…ワンダリング現象幅
Wb…ビード蛇行幅
Claims (2)
- チタン又はチタン合金のMIG溶接方法において、Al:4〜8質量%、残部Ti及び不可避的不純物のチタン合金からなるワイヤを用い、かつ、下記電流条件を満たすパルス溶接電流で、チタン又はチタン合金を溶接することを特徴とするチタン又はチタン合金のMIG溶接方法。
300A≦ピーク電流≦500A
2.0≦ピーク電流/ベース電流≦5.0 - 前記ワイヤの断面外径が、1.6mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン又はチタン合金のMIG溶接方法。
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