以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用する場合について説明をするが、かかる場合に限定されるものではなく、シンク、コンロのある作業台を1列に並べたいわゆる1列型キッチン、或いはシンク、コンロをL字型に並べたいわゆるL型キッチンとして適用するようにしてもよい。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、表面が平滑なガラス板で構成されている。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。この天板13は、全ての領域が同素材で構成される場合に限定されるものではなく、後述するコイルユニットを配置する範囲について上述の如きガラス板等で構成されていればよい。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用機器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
ちなみに、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13上に載置された調理用容器20につき、IHヒータを利用して誘導加熱する。実際にこの誘導加熱は、天板13の下部に配設されたIHヒータ機器3を介して実行していくことになる。また、このシステムキッチン1では、ユーザがこれらIHヒータ機器3を操作するための操作板95が天板13上に配設されてなるとともに、この操作板95を介してユーザの操作を受けてIHヒータ機器3に制御信号を送信するための中央制御ユニット94が内部に実装されていてもよい。しかしながら、後述する制御ブロック332でIHヒータ機器3を制御する場合には、かかる中央制御ユニット94並びに操作板95の構成を省略するようにしてもよい。
IHヒータ機器3は、少なくとも1箇所に亘り固定配置されてなる固定コイルユニット31と、移動自在な可動コイルユニット32が設けられている。以下の説明では、この固定コイルユニット31を2箇所に亘り固定配置する場合を例にとり説明をする。また、この固定コイルユニット31が2箇所配置されている領域を固定誘導加熱領域33という。この固定誘導加熱領域33は図1に示すようにシンク14との間で調理用領域34を挟むようにして設けられる。可動コイルユニット32は、この固定誘導加熱領域33から調理用領域34を介してシンク14に至るまで、この天板13の長手方向を移動自在に配設されている。
また、このIHヒータ機器3は、その上面3aにつき、天板13と面一となるように構成されている。これにより一面均一な作業面を得ることができ、極めて清掃性が高いワークトップが実現できる。
図2は、これらコイルユニット31、32が配設されるIHヒータ機器3中の空間19の構成を示す斜視図である。このIHヒータ機器3中の空間19は、略平面状の底板28と、底板28に対して平行な天板13とを所定の間隔を持って設置し、さらにこれら天板13と底板28の周囲を側壁19aで囲むことにより密閉状態とされたいわゆる閉空間として構成される。
ちなみに、この空間19は、天板13上において調理用容器20が載置可能な位置に対応させて形成されている。この空間19内には、調理用容器20を誘導加熱するための固定コイルユニット31、可動コイルユニット32が配置される。なお、天板13上には、これらコイルユニット31、32が配置されている箇所に応じたマーキング601が描かれていてもよい。
可動コイルユニット32は、天板13の長手方向に向かって配設されているレール256と、このレール256に係合するレール係合部材257とを備え、レール係合部材257の上面に加熱コイルユニット258を搭載させている。
レール係合部材257は、レール256に沿って長手方向へスライドする。このレール係合部材257は、送信されてきた識別信号に基づき駆動する図示しない駆動モータにより駆動制御されることになる。
図3は、この可動コイルユニット32の他の構成例を示している。この構成例において上述した図2と同一の構成、部材に関しては同一の番号を付すことにより、以下での説明を省略する。
この図3に示す構成においては、感知センサ261が取り付けられている。この感知センサ261は、調理用容器20が載置されているか否かを判別するための素子であり、例えば、赤外センサ等で構成される。この感知センサ261により取り込まれた情報に基づいて調理用容器20が載置されている箇所に向けてレール係合部材257を移動させる。ちなみに、このレール係合部材257の駆動に関してはモータ260を介して実行するようにしてもよい。
図4は、これらコイルユニット31、32のブロック構成図であり、図5は、かかるコイルユニット31、32の構成断面図である。これら、図4,5に示すように、コイルユニット31、32は、インバータブロック331と、制御ブロック332に大別されて構成されている。このインバータブロック331は、実際に誘導加熱する高周波磁界を制御するためのブロックであり、制御ブロック332は、コイルユニット3全体を制御するためのブロックである。
インバータブロック331は、家庭用のAC200V(50/60Hz)の電源を電源プラグ329から電源コード330を介して受給する整流回路333と、この電源コード330と整流回路333との間に配設された電流検知コイル344と、この整流回路333に接続されてなり、鉄心にコイルを巻回すことにより構成されるチョークコイル334と、このチョークコイル334との間で直列LC回路を構成するコンデンサ335と、整流回路333の出力端子間を直列に接続するようにして配設される第1のスイッチング素子336並びに第2のスイッチング素子337と、これらスイッチング素子336,337に対して並列に接続される2つの共振コンデンサ338,339と、これら共振コンデンサ338,339の接続点に短絡されるカーレントトランス340と、インバータブロック331の内部の何れかに実装される回路保護サーモ341とを備えている。このインバータブロック331におけるカーレントトランス340の一端側と、上記スイッチング素子336,337の接続点には、さらに誘導加熱コイル342が接続され、この誘導加熱コイル342の略中心付近には鍋温度検知サーミスタ350が設けられている。ちなみに、加熱調理時においては、この誘導加熱コイル342からの高周波磁界により天板13を介して調理用容器20を誘導加熱できる位置まで、コイルユニット31、32自体が移動させられることになる。
制御ブロック332は、上記インバータブロック331における電流検知コイル344に接続される一次電流検知回路345と、整流回路333へ供給される電流を検知するための電源電圧検知回路346と、少なくとも上記一次電流検知回路345並びに電源電圧検知回路346に接続されてなり、この制御ブロック332全体を制御するための中央演算ユニットとしての役割を担う制御回路347と、この制御回路347と上記スイッチング素子336,337とに接続されるインバータ駆動回路348と、接続された回路保護サーモ341からの検知情報を制御回路347へ送信するための温度検知回路349と、カーレントトランス340並びに制御回路347にそれぞれ接続されるコイル電流検知回路351と、温度検知サーミスタ350並びに制御回路347にそれぞれ接続される鍋温度検知回路352とを少なくとも備えている。また、この制御ブロック332は、上記制御回路347に対して更に冷却ファン354と、アラーム362と、表示部363と、操作部357とを接続して構成されている。
これら各構成要素は、図5に示すように筐体305内部に実装されてなり、特にインバータブロック331並びに制御ブロック332は載置台306上に載置されて取り付けられることになる。さらに、この筐体305は、冷却用ファン354の配設位置近傍の底面において吸気口358が形成されてなり、さらに一の側面には排気口359が形成されている。
先ず、インバータブロック331の詳細な構成につき説明をする。
整流回路333は、接続された電源プラグ329からの電源用電流を整流するために配設されたものであって、供給された交流としての電源用電流を直流に変換する。チョークコイル334とコンデンサ335とにより構成されるLC直列回路は、いわゆる平滑回路を構成する。スイッチング素子336,337は、例えばトランジスタ等で構成され、各スイッチング素子336,337のエミッタとコレクタには逆導通用のダイオード362,363がそれぞれ並列接続される。スイッチング素子336のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QAが供給され、スイッチング素子337のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QBが供給される。即ち、インバータ駆動回路348は、この駆動信号QAと駆動信号QBとを交互に供給することにより、共振コンデンサ338,339と誘導加熱コイル342に共振電流を流すことが可能となる。
誘導加熱コイル342は、図5に示すように、筐体305の上面305aに対向させて配設されてなる。この誘導加熱コイル342における巻き数は、上記調理用容器20を加熱する際における電力を支配するものであり、調理用容器20における底板の表皮抵抗や共振電流の大きさとの関係において最適に調整されている必要がある。この誘導加熱コイル342は、上記供給される共振電流に基づいて共振されることになり、その結果、高周波磁界を発生させることが可能となる。
回路保護サーモ341は、温度の変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等で構成される。この回路保護サーモ341は、主としてインバータブロック331や制御ブロック332を構成する空間の温度を測定する。
温度検知サーミスタ350は、回路保護サーモ341と同様にサーミスタで構成される。この鍋温度検知サーミスタ350は、天板13を介して調理用容器20の温度を検知すべく、上述の如く誘導加熱コイル342の中心付近に配設されることになる。
カーレントトランス340は、誘導加熱コイルに流れる共振電流の電流値を検知するためのコイル等である。
次に、制御ブロック332の詳細な構成につき説明をする。
一次電流検知回路345は、接続された電流検知コイル344を介して、電源プラグ329を介して供給される電源用電流の電流値を検知する。この一次電流検知回路345は、この検知した電流値を制御回路347へと通知する。
電源電圧検知回路346は、電源プラグ329からの電源用電流に基づく電圧を検知する。電源電圧検知回路346は、この検知した電圧を制御回路347へ通知する。
制御回路347は、CPU等で構成される。この制御回路347は、上述した一次検知回路345により検知された電流値が通知され、かつ電源電圧検知回路346により検知された電圧が通知された場合には、これらを参照しつつ、設定された電力となるようにインバータ駆動回路348を制御する。この制御回路347は、操作部357を介したユーザからの命令を解釈し、これに基づいてインバータ駆動回路348、冷却ファン354、アラーム362を制御するとともに、所定の情報を表示部363を介して表示する。
インバータ駆動回路348は、正弦波信号を発振させるための発振回路として構成され、制御回路347による制御に基づいて、上記駆動信号QA又は駆動信号QBを生成する。
温度検知回路349は、回路保護サーモ341における抵抗値の変化を検出する。この温度検知回路349は、この検出した回路保護サーモ341の抵抗値の変化に基づき、筐体305の内部の温度を検知する。この温度検知回路349は、検知した筐体305内部の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して筐体305内部の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば運転中において冷却ファン等が停止した場合や、吸気口358や排気口359が詰まった場合等のように冷却性能が低下し、筐体305の内部の温度が急激に上昇した場合には、制御回路347は、温度検知回路349を介してこれを認識し、コイルユニット31、32全体の動作を停止させることも可能となる。
コイル電流検知回路351は、カーレントトランス340により検知された共振電流の電流値を読み取り、これを制御回路347へ通知する。制御回路347は、コイル電流検知回路351を介して共振電流の電流値を随時認識することができる。これにより、制御回路347は、例えば、調理用容器20の材質や形状に応じて決定される誘導加熱に必要な電力に対して、必要以上の共振電流が流れるのを抑制することが可能となり、さらには、誘導加熱中において調理用容器20が外された場合において、コイルユニット3全体の動作を停止させるとともに、アラーム362を介してこれをユーザに通知することも可能となる。
鍋温度検知回路352は、鍋温度検知サーミスタ350における抵抗値の変化を検出する。この鍋温度検知回路352は、この検出した鍋温度検知サーミスタ350の抵抗値の変化に基づき、調理用容器20の温度を検知する。この鍋温度検知回路352は、検知した調理用容器20の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して調理用容器20の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば調理用容器20の底部の温度が規定値以上に上昇した場合には、コイルユニット31、32全体の動作を停止させることも可能となる。
冷却ファン354は、制御回路347による制御に基づいて回転させられる。この冷却ファン354の回転に応じて、吸気口358から冷却風が吸い込まれることになる。この吸い込まれた冷却風は、インバータブロック331や制御ブロック332上を通過することによりこれらを冷却し、排出口359から外部へと排出されることになる。
アラーム362は、制御回路347による制御に基づいて所定の音を発生させる音声発振器で構成される。
表示部363は、制御回路47による制御に基づいて所定の情報を表示する液晶表示面等で構成される。
操作部357は、ユーザが実際にコイルユニット31、32を操作するためのキーやボタン等で具体化される。この操作部357においてユーザから入力された内容は、制御回路347へ通知され、制御回路347はかかる入力された内容に基づいてコイルユニット31、32の各構成要素を制御していくことになる。ちなみにこの操作部357は、筐体305の表面に形成されたボタン等を想定しているが、かかる場合に限定されるものではなく、例えば、無線通信でユーザからの入力内容を送信するためのリモートコントローラで構成されていてもよい。また、操作部357に関する機能についても、操作板95に担わせるようにしてもよい。
次に、上述の構成からなるコイルユニット31、32により、実際に調理用容器20を誘導加熱する方法につき説明をする。
先ず、電源プラグ329から電源コード330を介して電源用電流を受給する。この受給した電源用電流は、整流回路333において整流されることになる。このとき、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、スイッチング素子336,337に供給する駆動信号QA、QBの調整する。
図6(a)は、誘導加熱コイル342に流れる共振電流を、図6(b)は、このスイッチング素子336に対して供給される駆動信号QAを、図6(c)は、このスイッチング素子337に対して供給される駆動信号QBを示している。
インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、時点t0から時点t1に至るまで駆動時間がT1である駆動信号QAをON出力する。この駆動時間T1の間では、スイッチング素子336及びダイオード362と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ338とで形成される閉回路で共振することになる。ちなみに、インバータ駆動回路348は、時点t1において駆動信号QAをOFFにする。
次にインバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下、時点t2から駆動時間がT2である駆動信号QBをON出力する。この駆動時間T2の間では、スイッチング素子337及びダイオード363と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ339とで形成される閉回路で共振することになる。なお、この駆動時間T2は、上記駆動時間T1と同一である。
このように閉回路を変えて誘導加熱コイル342を共振させることにより、誘導加熱コイル342において高周波磁界を発生させることができる。この発生させられた高周波磁界は、天板13を介して調理用容器20の底板を通過していくことになる。この調理用容器20の底板は、金属製であるため、この高周波磁界を金属製の底板に通すことにより、渦電流が発生することになる。この渦電流と調理用容器20の持つ電気抵抗によりジュール熱が生じ、調理用容器20自体が発熱することになる。その結果、調理用容器20内にある食物を加熱調理することが可能となる。
また、このような構成からなるシステムキッチン1において、ユーザは、固定コイルユニット31を介して調理用容器20を加熱することに加え、長手方向に移動自在に配設された可動コイルユニット32を介して調理用容器20を加熱することができる。この可動コイルユニット32は、固定誘導加熱領域33から調理用領域34を介してシンク14に至るまで、この天板13の長手方向を移動自在に配設されているため、可動コイルユニット32を好みの場所へ移動させて、調理用容器20を加熱することが可能となる。
これにより、通常は、固定誘導加熱領域33近傍に可動コイルユニット32を近接させておくことも可能となるし、またシンク14に近傍にこの可動コイルユニット32を近接させて調理と洗浄を至近距離で交互に行うことができることとすることで、作業効率を改善することも可能となる。これにより、流し台領域Aにおいて水を満たしその結果重くなった調理用容器20につき、調理用領域34を介してこれを固定誘導加熱領域33に運ぶことなく、シンク14近傍に近接させた可動コイルユニット32へ搬送すれば足りることから、ユーザの労力の負担を軽減させることが可能となる。
本発明を適用したシステムキッチン1においては、誘導加熱すべき調理用容器をユーザの要望に応じた天板上の任意の箇所に配置することができ、かつ天板13上のスペースをより有効的に活用することができる。また、いわゆる調理スペースと、いわゆる加熱スペースとが相互に共有できる上に、調理内容によって、適時、都合のよい場所で鍋等の加熱が行うことが可能となる。
これは、ワークトップ面上において調理スペースと加熱スペースの広さを適宜、フレキシブルに変更させることが可能となり、限られた天板13上のスペースを効率的に利用することが可能となることを意味している。換言すれば、ワークトップ全面が加熱スペースにもなり、または調理スペースになりえる。また、調理用容器20の加熱箇所を自由に変えることが可能となることから、手近な場所での加熱が可能となり、調理用容器20の移動動作に伴うユーザの身体的負担が解消させることを意味している。
更に、ワークトップ面上を面一で構成することが可能となることから、段差を無くすことができ、ひいては調理作業をスムーズに行うことも可能となり、清掃性を向上させることができる。
なお、このシステムキッチン1においては、アイランド型で構成される場合において、図1に示すように可動コイルユニット32を天板13の長手方向の中心軸上を移動自在となるように構成されていてもよい。特にアイランド型のシステムキッチンでは、ユーザが互いに向き合って天板13の両サイドから調理を実行するケースが多いことから、あえてこの可動コイルユニット32を天板13の長手方向の中心軸上に設けることで両サイドから加熱調理を実行することも可能となるからである。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図7に示すような他のシステムキッチン2を適用するようにしてもよい。
このシステムキッチン2において上述したシステムキッチン1と同一の構成、部材に関しては、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
このシステムキッチン2は、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備え、さらに少なくとも1箇所に亘り固定配置されてなる固定コイルユニット31と、移動自在な可動コイルユニット32が設けられている。以下の説明では、この固定コイルユニット31を2箇所に亘り固定配置する場合を例にとり説明をする。また、この固定コイルユニット31が2箇所配置されている領域を固定誘導加熱領域33という。この固定誘導加熱領域33は図7に示すようにシンク14との間で調理用領域34を挟むようにして設けられる。可動コイルユニット32は、図8に示すように天板13の下部に形成された空間19内を上下左右、全方向に移動自在に配設されている。この可動コイルユニット32は、図示しないスイッチボックスを介して電源を取り入れるようにしてもよい。
この可動コイルユニット32の移動制御は、例えばリモートコントローラを利用して実行するようにしてもよい。
図9は、操作部357をリモートコントローラ110として具体化した例を示している。ちなみに、この図9(a)は、リモートコントローラ110の外観構成図を示しており、図9(b)は、リモートコントローラ110のブロック構成を示している。
このリモートコントローラ110は、樹脂製のケース116内部に各構成要素を実装することにより構成されるものであり、CPU、ROM、RAM等で具体化される制御部111と、この制御部111にそれぞれ接続されてなる液晶表示部112並びに送信部113と、ユーザが入力操作を実行するための操作ボタン114a〜114cと、位置送信部118とを備えている。
液晶表示部112は、ケース116の中央部表面に形成される液晶表示面等で構成され、制御部111による制御に基づいて所定の情報を表示する。この液晶表示部112からは、このリモートコントローラ110を実際に操作するユーザに対して、電源の投入状態に関する情報や、コイルユニット32に対する設定温度に関する情報等を表示する。
送信部113は、ケース116の先端部に設けられてなり、コイルユニット32との間で赤外線通信を行う。
操作ボタン114a,114b,114cは、それぞれ電源のON/OFF、設定温度の上昇、設定温度の下降等につきユーザ自身が指示を与えるべくケース116表面に形成されたものである。この操作ボタン114a、114b、114cに関する機能についても、操作板95に担わせるようにしてもよい。
制御部111は、押圧された操作ボタン114に応じて液晶表示部112における表示内容を切り替えるとともに、これに応じた赤外線の信号を作り出し、これにつき送信部113を介してコイルユニット32へ送信する。ちなみに、この制御部111に関する機能を上述した中央制御ユニット94に担わせるようにしてもよい。
位置送信部118は、制御部111による制御に基づいて、コイルユニット32に対して調理用容器20の載置位置を通知するための位置信号を送信する。この位置送信部118は、上記位置信号として、例えば電波を用いるようにしてもよいし、或いは音波(超音波)を用いるようにしてもよい。この位置送信部118は、その発信面をケース116の外部表面に形成させている。なお、この位置送信部118の構成が不要な場合には、これを省略してもよい。
また、上述の構成からなるリモートコントローラ110においては、所定の情報が重畳された赤外線による信号を受信するための機能を送信部113に含めるようにしてもよい。かかる場合には、外部から送信されてきた情報を液晶表示部112を介してユーザに伝えることも可能となる。
システムキッチン2では、コイルユニット32により調理用容器20の誘導加熱を実行する前に、天板13上における調理用容器20の載置位置を識別し、空間19内に配置されているコイルユニット32をその識別した調理用容器20の載置位置へ移動させる動作を実行する。
ここで、調理用容器20の載置位置をその底部中心を基準に考える。かかる場合において天板13上における座標を、例えば図10に示すように、横方向をxとし、縦方向をyと定義した場合に、調理用容器20の座標は、(x1、y1)で表される。また同様の座標系において、実際に空間19内に配置されているコイルユニット32の座標をその中心位置を基準に考える場合には、(x0、y0)で与えられることになる。
コイルユニット32の座標(x0、y0)が既知であることを仮定した場合に、かかる調理用容器20の座標(x1、y1)を取得することができれば、コイルユニット32につき座標座標(x0、y0)から座標(x1、y1)に至るまで図中R方向へ移動させればよいことを判別することが可能となり、コイルユニット3の移動方向と移動量を容易に算出することが可能となる。そして、かかる取得された座標(x1、y1)へコイルユニット3を移動させることになる。
ここで、調理用容器20の天板13上における載置位置(座標)の識別方法につき説明をする。
ユーザは、例えば図11に示すように、これから加熱調理を行う調理用容器20を天板13上の任意の箇所に載置する。このとき、ユーザは、操作部357としてのリモートコントローラ110を天板13上における調理用容器20の近傍に載置するものとする。ちなみに、このリモートコントローラ110は、誘導加熱すべき調理用容器20の載置位置に対してより近接させて載置されることが望ましく、リモートコントローラ110と調理用容器20とを互いに接触させて載置されるようにしてもよい。
次に、この載置されたリモートコントローラ110における位置送信部118から位置信号を送信する。この位置信号の送信に関しては、ユーザによる操作ボタン114の押圧を受けてから実行するようにしてもよい。またリモートコントローラ110の天板13に対する載置面に図示しないボタンを設けておき、実際にリモートコントローラ110が天板13上に載置された場合に、その図示しないボタンが天板13を介して押圧されるようにしておくようにしてもよい。これにより、かかる図示しないボタンの押圧を識別することにより、リモートコントローラ110自身が現時点において天板13上に載置されている旨を識別することができ、制御部111はこれを受けて位置送信部118に対して上記位置信号の送信を指示することが可能となる。
なお、この識別方法を実行する場合には、互いに異なる3箇所においてセンサ部131a,131b,131cを設けておく。その結果、位置送信部118から発信された位置信号は、それぞれセンサ部131a,131b,131cにより受信されることになる。このとき、各センサ部131a,131b,131cは、上記位置送信部118に対して互いに異なる距離に位置することになるため、受信する位置信号の位相差は互いに異なることになる。
制御回路347は、各センサ部131a,131b,131cにおいて受信した位置信号の位相差を識別する。この位相差は、各センサ部131a,131b,131c間における位置信号の到達時間差に相当する。そして、この制御回路347は、識別した位相差に基づき、各センサ部131a〜131cに対する位置送信部118の高さや座標を3次元網平均計算によって求める。この位置送信部118の発信面は、調理用容器20の近傍に載置されるリモートコントローラ110のケース116表面に設けられるため、制御回路347によって求められる位置送信部118の高さや座標は、調理用容器20の座標(x1、y1)に非常に近似したものといえる。
従って、制御回路347は、この求めた位置送信部118の高さや座標に基づいてこの調理用容器20の座標(x1、y1)を特定する。この特定においては、位置送信部118と調理用容器20の座標との位置ズレ量分を考慮しつつ、求めた位置送信部118の高さや座標に補正を加えていくことになる。
なお、この位相差を各センサ部131a〜131c間で顕著にすべく、位置送信部118から送信する位置信号を電波で構成する以外に、例えば音波(超音波)で構成するようにしてもよい。かかる場合には位置送信部118を圧電素子で構成し、制御部111から交流電圧をこれに印加することにより、その周波数で圧電素子を歪ませることが可能となり、超音波振動を励起させることになる。特に超音波は、電波と比較して空気中の伝播速度が著しく低いため、上記センサ部131間における到達時間差をより顕著にすることも可能となる。
制御回路347は、調理用容器20の座標(x1、y1)を算出した場合には、識別信号に当該座標に関する情報を盛り込み、これをスイッチボックス29を介して中央制御ユニット94(又は制御ブロック332)へ送信する。
また制御回路347は、調理用容器20の座標(x1、y1)を算出した場合には、その旨並びにかかる座標に関する詳細な情報を表示部363を介して表示するようにしてもよい。また、リモートコントローラ110は、かかる詳細な情報をコイルユニットから受信してこれを液晶表示部112へ表示するようにしてもよい。これにより、ユーザは、実際に求められた調理用容器20の座標(x1、y1)を視覚的に把握することも可能となる。
なお、上述した識別方法に限定されるものではなく、例えば、天板13の周囲縦横に亘り複数個配列させた赤外受光部により受光した調理用容器20からの赤外線に基づき、その座標(x1、y1)を識別するようにしてもよい。
また、天板13全体を撮影範囲として撮像することにより調理用容器20の位置を輝度分布から特定することにより、座標(x1、y1)を識別するようにしてもよい。
図12に示すように、底板28において光を受光するための受光部190を縦横ともに所定の間隔を置いてグリッド状に配置する。この受光部190の配置間隔は、周期的に或いは変則的に変更するようにしてもよいし、受光部190自体を離散的に配置するようにしてもよい。
この識別方法では、天板13として、可視光を透過可能な例えば半透明のガラス素材等を用いる。これにより、システムキッチン1を照明するための図示しない光源からの可視光がかかる天板13により遮蔽されることなくそのまま通過して底板28へ到達可能となる。
この底板28上に配置された受光部190は、天板13を通過して入射されてきた光を受光し、これを電気信号に変換する。調理用容器20が載置されている箇所に関しては、光が遮られ、調理用容器20が載置されていない箇所に関しては光が遮られることがなくなるため、調理用容器20の載置位置に応じて受光部190による光の受光量が変化することになる。規則的に配置された受光部190による受光量を比較することにより、座標(x1、y1)を識別するようにしてもよい。
各識別方法に基づいて検出された座標(x1、y1)は、中央制御ユニット94(又は制御ブロック332)へ送られる。
以下、この識別した座標(x1、y1)へコイルユニット32を移動させるため駆動制御方法につき説明をする。このコイルユニット3の移動制御は、中央制御ユニット94(又は制御ブロック332)により実行されることになる。
先ず、コイルユニット3における第1の駆動制御方法につき説明をする。
この第1の駆動制御方法では、例えば図13に示すようにコイルユニット32の底部に設けた駆動輪を駆動させることにより、上記識別した座標(x1,y1)へと移動させる。かかる場合において、中央制御ユニット94(又は制御ブロック332)は、両端に前輪225が固着された駆動軸231と、両端に後輪226が固着された駆動軸232とを備え、さらに、前輪225の方向を操作するためのステアリングサーボ機構233と、後輪を駆動するためのモータ234と、このモータ234を制御するためのモータコントローラ235とを備えている。さらに、この中央制御ユニット94(又は制御ブロック332)は、調理用容器20の載置位置を知らせるための識別信号を受信する受信部236を有し、受信部236はこれをステアリングサーボ機構233並びにモータコントローラ235へ送信する。
ステアリングサーボ機構233は、この識別信号を受けて前輪225の方向を回転させるべく駆動軸231を制御する。同様にモータコントローラ235は、この識別信号を受けてモータ234を回転させる。モータ234の回転に応じて歯車238が回転し、この歯車238と相互に噛み合うとともに駆動軸239中央に固着された歯車239もこれに応じて回転し、ひいては駆動軸239をも回転することになる。その結果、後輪226を駆動させることができる。
即ち、この受信部236に送られてくる識別信号は、調理用容器20の載置位置に応じた座標(x1,y1)に基づくものである。このため、コイルユニット3の座標(x0、y0)が既知であれば、かかるコイルユニット32をいかなる角度方向へ、いかなる距離を移動させれば、座標(x1、y1)へ到達させることができるか容易に判別することができる。そして、この判別した角度方向となるようにステアリングサーボ機構233により駆動軸231を制御し、判別した距離に相当する回転量となるようにモータコントローラ235によりモータ234を回転させる。ちなみに、ステアリングサーボ機構233により後輪226の方向を操作するようにしてもよいことは勿論である。
次に、第2の駆動制御方法につき説明をする。
この第2の駆動制御方法では、例えば図14に示すようなレール機構250によりコイルユニット32を移動させる。このレール機構250は、略平板状の底板28上にx方向へ延長されるようにして取り付けられた互いに平行な2本の第1のレール251,252と、この2本の第1のレール251,252にそれぞれ係合される第1のレール係合部材253、254と、両端が第1のレール係合部材253、253上面に固着され、y方向へ架設された第2のレール266と、この第2のレール266に係合する第2のレール係合部材267とを備え、第2のレール係合部材267の上面にコイルユニット32を搭載させる。
第1のレール係合部材253,254は、第1のレール251,252に沿ってx方向へスライドする。この第1のレール係合部材253,254は、送信されてきた識別信号に基づき駆動する図示しない駆動モータにより駆動制御されることになる。
また、第2のレール係合部材267は、第2のレール266に沿ってy方向へスライドする。この第2のレール係合部材267は、送信されてきた識別信号に基づき駆動する図示しない駆動モータにより駆動制御されることになる。即ち、この第1のレール係合部材253,254と、第2のレール係合部材266とは互いに直交する方向に移動させることができ、これによりコイルユニット32を任意の位置へ導くことが可能となる。
図15は、さらなる他の実施の形態としてのシステムキッチン5を示している。このシステムキッチン5において上述したシステムキッチン1と同一の構成要素、部材に関しては同一の番号を付すことにより以下での説明を省略する。
このシステムキッチン5では、システムキッチン2は、キャビネット11と、このキャビネット11の上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備え、さらに少なくとも1箇所に亘り固定配置されてなる固定コイルユニット31と、移動自在な可動コイルユニット432が設けられている。
可動コイルユニット432は、スロット433内に実装された図示しない電源プラグからコード434を介して接続されている。このコード434は螺旋状に巻きまわされており、可動コイルユニット432の天板13上における載置箇所に応じて当該コードが延伸収縮することになる。その結果、可動コイルユニット432は天板13上の至る箇所に載置することが可能となる。なお、この可動コイルユニット432の内部構成は、上述した可動コイルユニット32の同一であるが、これをラジェンドヒータ(電熱機)で構成するようにしてもよい。また、この可動コイルユニット432を使用しない場合には、スロット433内に収納しておくことも可能となり、天板13上の整理整頓の便宜を図ることが可能となる。ちなみに図16は、システムキッチン5において可動コイルユニット432をいわゆるコードレス型で構成した例を示している。
このようなシステムキッチン5においても、固定誘導加熱領域33近傍に可動コイルユニット432を近接させておくことも可能となるし、またシンク14に近傍にこの可動コイルユニット32を近接させて調理と洗浄を至近距離で交互に行うことができることとすることで、作業効率を改善することも可能となる。これにより、調理用容器20に対して流し台領域Aにおいて水を満たしその結果重くなった調理用容器20につき、調理用領域34を介してこれを固定誘導加熱領域33に運ぶことなく、シンク14近傍に近接させた可動コイルユニット432へ搬送すれば足りることから、ユーザの労力の負担を軽減させることが可能となる。また、このシステムキッチン5では、この可動コイルユニット432上に調理用容器20を載置し、そのまま可動コイルユニット432を天板13上において摺動させてユーザ任意の箇所まで移すことも可能となる。
特に固定誘導加熱領域33とシンク14が調理用領域34を挟んで切り離された状態で配置されるのが一般であるため、このような可動コイルユニット432がない場合には、水を入れた大鍋を火にかけようとした場合にユーザに非常に大きな負担がかかることになるが、本発明の如く可動コイルユニット432を実装することによりかかる負担を解消することが可能となる。