JP2007257904A - 電子部品用セパレータおよび電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術では耐熱性が不十分で、また機械的強度が低下し、その結果、電極間で内部短絡を生じたり、均一性が不十分でイオン移動もしくは電子移動が局所的に集中する部分が発生しやすく、信頼性の低下などの問題がある。薄膜化のなかで機械的強度を確保する方法としては、空隙率を低下させればよいが、その場合、内部抵抗の上昇を伴い、高機能化の要求を満たすことができない。
【解決手段】本発明の電子部品用セパレータは、フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されていることを特徴とする。架橋とは、三次元網目構造を有する状態であり、強度、耐熱性、耐溶剤性が向上する。また、本発明では、フッ化ビニリデン樹脂が化学的架橋を有することを特徴とすることで、長期にわたる高温使用にも耐え得るセパレータとすることができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の電子部品用セパレータは、フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されていることを特徴とする。架橋とは、三次元網目構造を有する状態であり、強度、耐熱性、耐溶剤性が向上する。また、本発明では、フッ化ビニリデン樹脂が化学的架橋を有することを特徴とすることで、長期にわたる高温使用にも耐え得るセパレータとすることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、電子部品、すなわち、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、ポリマーリチウム電池、ニッケル水素電池、アルミニウム電解コンデンサまたは電気二重層キャパシタに好適に用いられる電子部品用セパレータおよびその製造方法に関する。
近年、産業機器、民生機器に関わらず電気・電子機器の需要増加及びハイブリッド自動車の開発により、電子部品であるリチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池などの高性能電池の需要が著しく増加している。これらの電気・電子機器は高容量化、高機能化が日進月歩で進行しており、リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池においても高容量化、高機能化が要求されている。
リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池は、活物質とリチウム含有酸化物とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンで混合しアルミニウム製集電体上にシート化した正極と、リチウムイオンを吸蔵放出し得る炭素質材料とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンで混合し銅製集電体上にシート化した負極と、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレン等より成る多孔質電解質膜を、正極、電解質膜、負極の順に捲回もしくは積層された電極体に駆動用電解液を含浸しアルミニウムケースにより封止された構造のものである。また、アルミニウム電解コンデンサは、エッチングした後、化成処理を施して誘電体被膜を形成したアルミニウム製正極箔と、エッチングされたアルミニウム製負極箔とを、セパレータを介して捲回若しくは積層した電極体に駆動用電解液を含浸し、アルミニウムケースと封口体により封止し、短絡しないように正極リードと負極リードを封止体を貫通させて外部に引き出した構造のものである。また、電気二重層キャパシターは、活性炭と導電剤及びバインダーを混練したものをアルミニウム製正極、負極各集電極の両面に貼り付け、セパレータを介して捲回又は積層した電極体に駆動用電解液を含浸し、アルミニウムケースと封止体により梱包され、短絡しないように正極リードと負極リードを封止体を貫通させて外部に引き出した構造のものである。
従来、前記の電池のセパレータとしては、特許文献1に記載のようなポリオレフィン系の多孔質膜や不織布が使用されており、アルミニウム電解コンデンサまたは電気二重層キャパシタのセパレータとしては、セルロースパルプからなる紙やセルロース繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等からなる不織布が使用されている。
特開2003―317693号公報
ところで、先述のような電子部品は、高容量化、高機能化の試みが進んでいる。高容量化することにより、異常充電時などの異常発熱が大きく、高温に耐えうるための耐熱性、機械的強度、耐熱寸法安定性を持ったセパレータが求められている。一方、高機能化の一つとして急速充放電特性の向上、高出力特性の向上等が試みられており、セパレータにあたっては薄膜化および均一性の向上が強く要求されている。しかしながら、先述のような従来のセパレータでは、耐熱性が不十分であるばかりか、薄膜化により貫通孔が存在しやすくまた機械的強度が低下し、その結果、電極間で内部短絡を生じたり、均一性が不十分でイオン移動もしくは電子移動が局所的に集中する部分が発生しやすく、信頼性の低下などの問題がある。薄膜化のなかで機械的強度を確保する方法としては、空隙率を低下させればよいが、その場合、内部抵抗の上昇を伴い、高機能化の要求を満たすことができなくなる。
そのようなセパレータへの高機能化の要求が強まる中、フッ化ビニリデン樹脂を主体とする微多孔質膜のセパレータが提案されている。フッ化ビニリデン樹脂は薄膜化が容易で、空隙率も高くすることが可能であり、電解液の濡れ性および保持性がきわめて優れており、孔径の均一性も優れるため、電池ならびにキャパシタの低抵抗化、サイクル特性の向上、レート特性の向上が期待されている。
一方、電池、キャパシタの使用領域も拡大していく中で、比較的高温での使用に耐えうるものの要求も強くなってきている。例えば、タイヤ空気圧の測定などに用いられるセンサー用にとしては、タイヤ・ホイール内に近い場所に設置されることから、常時80℃付近の熱に耐え得る必要があるが、前記のフッ化ビニリデン樹脂は長期にわったって高温にされると、ゲル化が進行し延いては溶解に至り、性能が低下するばかりか絶縁性を維持できなくなることが懸念されている。さらに、電池、キャパシターの生産性向上、性能向上を目的として、製造時に高温に曝される工程が増えてきている。例えば、ラミネート・パック化する際には、ラミネート温度を高くして封止性を向上しつつ、封止の時間を短縮できるため、従来100℃付近であったラミネート温度を140〜160℃付近にまでする場合がある。このように製造時にかかる熱によりフッ化ビニリデン樹脂は電解液中で溶解する可能性があり、セパレータが溶解した場合には絶縁性が維持できなくなり、実質上使用できないものとなる。
このようなフッ化ビニリデン樹脂からなる多孔質膜のセパレータの耐熱性の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記問題を解決し、且つ、本来有するフッ化ビニリデン樹脂多孔質膜の優れた性能を維持しつつ、また、生産性も損なうことなく、優れたセパレータを得るに至った。さらには、本発明のセパレータを用いることで、性能の優れた電子部品を提供することを目的とする。
本発明の電子部品用セパレータは、フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されていることを特徴とする電子部品用セパレータ(請求項1)であり、前記フッ化ビニリデン樹脂がフッ化ビニリデンのホモポリマー、又は四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、エチレン、プロピレンのいずれか1種類以上とフッ化ビニリデンとからなるコポリマー、または前記ホモポリマーとコポリマーの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用セパレータ(請求項2)であり、電子線照射によって化学的に架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品用セパレータ(請求項3)であり、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中における100℃でのゲル分率が20重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品用セパレータ(請求項4)であり、ガーレ透気度試験機において測定される透気度が100秒/100ml以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品用セパレータ(請求項5)であり、セパレータの膜厚が5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品用セパレータ(請求項6)であり、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、ポリマーリチウム電池、ニッケル水素電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタから選ばれる電子部品に備えられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品用セパレータ(請求項7)である。
また、正極と負極とを有し、それらの間に請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品用セパレータが配置され、該電子部品用セパレータに電解液が含浸されたものであることを特徴とする電子部品(請求項8)である。
また、正極と負極とを有し、それらの間に請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品用セパレータが配置され、該電子部品用セパレータに電解液が含浸されたものであることを特徴とする電子部品(請求項8)である。
本発明の電子部品用セパレータは、微多孔質膜を構成するフッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されているので、優れた耐熱性を奏する。この耐熱性によりセパレータの製造工程等で発生する150〜200℃の高温にも十分耐えられる。
より具体的には、化学的に架橋されているので、不可逆な架橋状態により、加熱による架橋の結合力が弱くなることがなく、長期にわたる高温状態にも耐え得るセパレータを供給することが出来る。
より具体的には、化学的に架橋されているので、不可逆な架橋状態により、加熱による架橋の結合力が弱くなることがなく、長期にわたる高温状態にも耐え得るセパレータを供給することが出来る。
本発明で用いられるフッ化ビニリデン樹脂としては、フッ化ビニリデンのホモポリマー、又は四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、エチレン、プロピレンのいずれか1種類以上とフッ化ビニリデンとからなるコポリマー、または前記ホモポリマーとコポリマーの混合物が好適に用いられる。これらの樹脂は電子部品に用いられる電解液との相性が良く、電解液の濡れ性、保持性において優れた特性を発揮する。また、強度、柔軟性、緻密な多孔質を得るために重要である。特に、フッ化ビニリデンのホモポリマーは、結晶性が高いことから、強度が優れており、最も好適に用いることができる。また、上記以外のモノマーとして、フルオロアルキルエーテル等の含フッ素単量体、マレイン酸モノメチル等のカルボキシル基含有単量体、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル単量体、紫外線などにより反応し架橋点となる感光性基含有単量体等を共重合することも可能である。さらに、フッ化ビニリデン樹脂以外の樹脂を一部混合して用いることも可能ではあるが、フッ化ビニリデン樹脂の上記のような特性を損なうことなく添加できる範囲は20重量%以下である。
このようなフッ化ビニリデン樹脂は、公知の方法で合成することができる。すなわち、付加重合反応を用いて懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などにより得ることができる。本発明で用いられる樹脂の好適な分子量に特に制限は無いが、強度が優れていることから、重量平均分子量において10万以上が好ましく、樹脂の加工性の観点から100万以下が好ましい。
フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜の作製は、公知の方法で得ることができる。すなわち、フッ化ビニリデン樹脂を溶解可能な第一溶媒に混合溶解した後、この第一溶解とは混合し且つフッ化ビニリデン樹脂を溶解することができない第二溶媒を添加混合した塗料を、平滑な基板上に流延し乾燥する。その後にこの基板上から乾燥した樹脂層を剥離することで、フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜を得ることができる。上記の場合、第一溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を、第二溶媒としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、オクタノール、デカノール、ノナノール、ブタンジオール等を用いることが出来る。微多孔質膜を得る方法のもう一つの方法として、フッ化ビニリデン樹脂を溶解可能な第一溶媒に混合溶解した塗料を、平滑な基板上に流延した後、これを、フッ化ビニリデン樹脂を溶解できなく且つ第一溶媒と均一混合可能な第二溶媒の中に充分に浸漬させ、これを引き上げた後、乾燥する。その後にこの基板上から乾燥した樹脂層を剥離することで、フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜を得ることができる。上記の場合、第一溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を、第二溶媒としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、オクタノール、デカノール、ノナノール、ブタンジオール等を用いることが出来る。いずれの方法においても、必要に応じて、フィラー、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、粘度調整剤、架橋剤、架橋助剤、等の添加剤を塗料中に混合しておくことも可能である。このときの第一溶媒および第二溶媒の種類や量、基板の種類、流延する塗料の量、乾燥条件等を適宜選択することによって、微多孔質膜の膜厚、空隙率、孔径等を制御することが可能である。本発明で好適な微多孔質膜の諸物性は後述する。
本発明の最大の特徴とするところは、化学的に架橋されたフッ化ビニリデン樹脂を適用することにある。
一般的に樹脂の架橋状態は、化学的架橋と物理的架橋に大別され、前者は高分子の分子鎖間を化学結合により橋架けした状態を示し、後者は水素結合やファンデルワールス力のような二次結合による架橋状態を示す。本発明では前者の化学的架橋を選択したもので、具体的には下記の手段を用いる。
すなわち、本発明でいうフッ化ビニリデン樹脂を化学的架橋させる手段としては、有機過酸化物を用いて加熱する方法(熱架橋)、電子線を照射しラジカルを発生させ架橋する方法(電子線架橋)、ガンマ線、X線等を照射して架橋する方法(放射線架橋)、予めフッ化ビニリデン樹脂の樹脂骨格中に感光性基を導入しておき紫外線で架橋させる(光架橋)等の方法がある。本発明ではいずれの架橋方法を用いることが可能であるが、工業生産が容易な光架橋、電子線架橋が好適に選択できある。更に、生産性が優れ、均一な架橋を得ることができるという特徴をもった電子線架橋が最も好適に選択される。
一般的に樹脂の架橋状態は、化学的架橋と物理的架橋に大別され、前者は高分子の分子鎖間を化学結合により橋架けした状態を示し、後者は水素結合やファンデルワールス力のような二次結合による架橋状態を示す。本発明では前者の化学的架橋を選択したもので、具体的には下記の手段を用いる。
すなわち、本発明でいうフッ化ビニリデン樹脂を化学的架橋させる手段としては、有機過酸化物を用いて加熱する方法(熱架橋)、電子線を照射しラジカルを発生させ架橋する方法(電子線架橋)、ガンマ線、X線等を照射して架橋する方法(放射線架橋)、予めフッ化ビニリデン樹脂の樹脂骨格中に感光性基を導入しておき紫外線で架橋させる(光架橋)等の方法がある。本発明ではいずれの架橋方法を用いることが可能であるが、工業生産が容易な光架橋、電子線架橋が好適に選択できある。更に、生産性が優れ、均一な架橋を得ることができるという特徴をもった電子線架橋が最も好適に選択される。
有機過酸化物を用いて熱架橋を行う場合には、微多孔質膜を作製する際に予め有機過酸化物を混合しておく必要がある。用いられる有機過酸化物の例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。このような有機過酸化物をフッ化ビニリデン樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部を添加し塗料を調整し、乾燥させて微多孔質膜を得た後、50〜160℃の温度範囲下、1〜24時間の範囲で架橋反応を行い、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋した微多孔質膜を得ることができる。
また、電子線架橋を行う際には、微多孔質膜を作製した後に、10〜2000kVの加速電圧において、50〜500kGyの照射線量を照射させることで架橋が可能である。好適な加速電圧は、微多孔質膜の膜厚、密度によって適宜選択される。照射線量は架橋の度合いに影響を与え、照射線量が少ないと充分な架橋反応が起きず耐熱性が低下するし、必要以上に照射線量を増大させると架橋密度が上がり、得られた微多孔質膜が脆くなる。従って、上記照射線量の範囲が好適である。この場合、予め架橋助剤を混合した塗料を調整し、電子線を照射する前に微多孔質膜中に架橋助剤を含有しておくことも可能である。電子線架橋の架橋助剤の例としては、トリアリルイソシアヌレート、トチメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタクロイルホルマール、トリアクリルホルマール、トリメチロールプロパントリメタクリレート、等の多官能架橋剤が挙げられる。架橋した微多孔質膜の耐熱性の観点からは、トリアリルイソシアヌレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートが好適に用いられる。これら架橋助剤の配合量としては、フッ化ビニリデン樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲が好ましい。0.5重量未満では架橋助剤の添加効果が乏しく、5重量部を超える範囲で添加してもそれ以上の耐熱性の向上効果は得られにくい。
化学結合によって架橋された、すなわち、化学的に架橋された樹脂の架橋の度合いを知る手段として、架橋密度が挙げられる。しかし、架橋密度は定量的な測定が困難であるため、より簡便な方法として、ゲル分率でその度合いを知る方法がある。ゲル分率の測定は、架橋されていない場合には樹脂を完全に溶解する溶媒を用いて、この溶媒中に樹脂を浸漬させた状態で、一定温度に保持した後、未溶解で残った樹脂の重量を、溶媒に浸漬する前の重量から求めた重量%である。本発明では、フッ化ビニリデン樹脂を溶解する溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、100℃の環境下、1時間保持した後のゲル分率を求めた。従って、ゲル分率(%)=(DMFに浸漬後に溶解せずに残った微多孔質膜の質量)÷(DMFに浸漬する前の微多孔質膜の質量)×100 の式で求められる。本発明では、架橋されたフッ化ビニリデン樹脂の上記ゲル分率を適切な範囲にすることで、電子部品に好適なセパレータとすることができる。そのゲル分率の範囲は、20重量%以上から90重量%の範囲である。ゲル分率が20重量%未満であると、充分な耐溶媒性が無く、電解液に接した状態で加熱された場合、溶解して絶縁性が保持できなくなったり、長期間にわたる電解液との接触や、高温環境での耐熱性において樹脂が溶解し、やはり絶縁性が保持できなくなる。また、ゲル分率が90重量%より大きいと、耐熱性や耐溶媒性は満足するものの、強度的に樹脂が脆くなるため実質的に使用することが困難であったり、僅かな力で微多孔膜が破壊されることがある。従って、上記範囲が好ましいゲル分率の範囲であり、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは、40〜60重量%であり、耐熱性、耐溶媒性、強度の観点でバランスの優れたものとなる。
本発明のフッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜は、その膜内部に補強材として繊維状シート基材、延伸多孔質膜または貫通孔を有するフィルムのいずれかの多孔質基材を含むことが可能である。これら補強剤を用いることで、強い引張り強度を得ることが出来るため、加工時の取り扱い性、生産性が優れたセパレータとすることが出来る。補強剤として用いることができる繊維状シート基材としては、セルロースパルプからなる紙の他、綿、大麻、黄麻等の靭皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等からなる紙、あるいはレーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維及び再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維及びプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維等からなる不織布、織布及び網状物(メッシュ)を挙げることができる。また、補強剤として用いることができる延伸多孔質膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの共重合体、もしくはそれらを組み合わせた混合物よりなるポリオレフィン延伸多孔質膜が挙げられる。またポリエチレンとポリプロピレンからなるそれぞれの多孔質膜を2層以上積層した多孔質膜も好ましく用いることができる。また、貫通孔を有するフィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンから選ばれる垂直方向に貫通したフィルムが上げられる。これら補強剤として用いられる多孔質基材の膜厚に特に制限は無いが、補強効果がある範囲で1〜30μmが好ましい。
本発明のフッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜は、その膜内部に、有機物または無機物の絶縁性フィーラーを含有することが可能である。その場合、電気化学的に安定であるポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、シリカ等が挙げられる。
本発明のセパレータの膜厚は、電子部品の性能を向上する意味でとても重要であり、5μm以上50μm以下であることが好ましい。膜厚が5μm未満であるとセパレータの強度が充分でなく生産性が悪いばかりか、電子部品の使用中の収縮膨張等に耐え切れず破膜し絶縁性を維持できなくなる可能性がある。一方、膜厚が50μmより大きいと、最近の電子部品の小型化に対応できないばかりか、セパレータの抵抗が大きくなり、電子部品の容量低下、レート特性の悪化に繋がる。セパレータの膜厚のより好ましい範囲としては、10μm以上30μm以下であり、最も好ましい範囲は10μm以上20μm以下である。本発明のセパレータは、薄膜であっても充分強度が高く、絶縁性も維持できるため、20μm以下であっても充分実用に耐えうる上に、低抵抗化、レート特性の向上につながる。
本発明のセパレータにおいて、ガーレ透気度試験機において測定される透気度が100秒/100ml以下であることが好ましい。電子部品用セパレーターの透気度が100秒/100mlを超えると、イオン伝導性が低下する傾向がある。透気度をより好ましくは50秒/100ml以下にすることにより、優れたイオン伝導性を有する電子部品用セパレーターとすることができ、電子部品性能が向上する。ここで、ガーレ透気度測定装置により測定される透気度とは、JIS P8117に準拠して測定される値である。
本発明のセパレータの孔径は、バブルポイント法による平均孔径が0.1〜1μmであることが好ましい。平均孔径が0.1μm未満であると、電解液の含浸性が低下して抵抗が高くなる傾向があり、また、1μmより大きいとショートや漏れ電流を起こしやすくなる。さらに、バブルポイント法におけるバブルポイントは、0.1〜2μmであることが好ましい。バブルポイントは言い換えると最大の孔径となるため、最大の孔径が大きすぎるとやはり、ショートや漏れ電流を起こしやすくなる。
本発明のセパレータの空隙率は、40〜80%であることが好ましく、より好ましい範囲は、60〜70%である。空隙率が40%未満であると電解液の含浸性が悪く更には保持量が少なくなるために抵抗が高くなる。また、空隙率が80%より大きいと、セパレータの強度が低下し、電子部品に用いた場合の信頼性が低下する。ここで、空隙率とは、坪量M(g/m2)、膜厚T(μm)、密度(g/cm3)より求めた値である。この空隙率は多孔質の程度を示す。空隙率(%)=[1−(M/T)/D]×100
以上説明した本発明のセパレータは、上述したフッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されているために、耐熱性が向上されており、従って、電子部品に用いた場合、電子部品の生産性が優れる上に、電子部品の性能として、高温対応、高信頼性、高容量化などに寄与するため、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、ポリマーリチウム電池、ニッケル水素電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタなどの電子部品に好適に用いることが出来る。
次いで、本発明のセパレータを用いた電子部品について説明する。
電子部品としては、例えば、円筒型ポリマーリチウム二次電池を製造する場合、正極と負極の2枚のテープ状の電極間に、本発明のセパレータを挟み、捲回機によって積層しながら巻き取る。その後円筒状のアルミニウムまたはステンレス鋼製の器に入れ、電解液を注入する。正極及び負極のそれぞれの端子からリード線を出し、封止することによって製造することが出来る。上記正極としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどの活物質と、アセチレンブラックなどの導電助剤を、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液などのバインダー樹脂溶液に分散し、スラリー化したものを、アルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布したものが使用できる。上記負極としては、天然グラファイトを上記と同様のバインダー樹脂溶液に分散したものを、銅箔からなる負極集電体上に塗布したものが使用できる。また、電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶液に六フッ化リン酸リチウムを添加したものなどが使用できる。
電子部品としては、例えば、円筒型ポリマーリチウム二次電池を製造する場合、正極と負極の2枚のテープ状の電極間に、本発明のセパレータを挟み、捲回機によって積層しながら巻き取る。その後円筒状のアルミニウムまたはステンレス鋼製の器に入れ、電解液を注入する。正極及び負極のそれぞれの端子からリード線を出し、封止することによって製造することが出来る。上記正極としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどの活物質と、アセチレンブラックなどの導電助剤を、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液などのバインダー樹脂溶液に分散し、スラリー化したものを、アルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布したものが使用できる。上記負極としては、天然グラファイトを上記と同様のバインダー樹脂溶液に分散したものを、銅箔からなる負極集電体上に塗布したものが使用できる。また、電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶液に六フッ化リン酸リチウムを添加したものなどが使用できる。
また、本発明のセパレータを用いて、例えば、電気二重層キャパシタのコイン型セルを製造する場合には、2枚の円状の電極に本発明の円状のセパレータを挟んで積層体を形成し、アルミニウムまたはステンレス鋼製のコイン型の器に入れる。電解液を注入した後に、コイン型の上蓋で封止することによって製造することが出来る。2枚の電極は、器の内側でそれぞれ上蓋および下蓋(器の底部)に接した構造となっており、それぞれの蓋が端子となる。ここで、例えば、上記電極として活性炭電極等を、電解液として四フッ化ホウ素のテトラエチルアンモニウム塩等を使用することが出来る。
以下に、本発明の電子部品用セパレータを実施例によって説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)8重量部と、重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)2重量部とを、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、ジクミルパーオキサイド0.5重量を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、160℃の環境下において24時間熱処理した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は30μmであった。
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)8重量部と、重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)2重量部とを、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、ジクミルパーオキサイド0.5重量を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、160℃の環境下において24時間熱処理した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は30μmであった。
実施例2
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)8重量部と、重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−6FP)2重量部とを、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、トリアリルイソシアヌレート0.5重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機にて乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、加速電圧が100kV、照射線量が200kGyの電子線を照射した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は30μmであった。
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)8重量部と、重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−6FP)2重量部とを、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、トリアリルイソシアヌレート0.5重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機にて乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、加速電圧が100kV、照射線量が200kGyの電子線を照射した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は30μmであった。
実施例3
塗布量を調節した以外は、実施例2と同様にして、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は20μmであった。
塗布量を調節した以外は、実施例2と同様にして、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は20μmであった。
実施例4
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、トリアリルイソシアヌレート0.5重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機にて乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、加速電圧が100kV、照射線量が200kGyの電子線を照射した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は15μmであった。
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合した後、トリアリルイソシアヌレート0.5重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機にて乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、加速電圧が100kV、照射線量が200kGyの電子線を照射した。最後に、樹脂フィルム基材を剥離して、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は15μmであった。
実施例5
塗布量を調節した以外は、実施例4と同様にして、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は10μmであった。
塗布量を調節した以外は、実施例4と同様にして、本発明の電子部品用セパレータを得た。得られたセパレータの膜厚は10μmであった。
比較例1
物理的架橋を得ることができる重量平均分子量が100万であるポリアクリロニトリル(PAN)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
物理的架橋を得ることができる重量平均分子量が100万であるポリアクリロニトリル(PAN)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
比較例2
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
重量平均分子量が30万であるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
比較例3
重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
重量平均分子量が15万であるフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)10重量部を、良溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、貧溶媒としてデカノール10重量部を添加混合し塗料を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム基材上に、上記塗料をキャスティング法により塗布し、90℃の送風乾燥機中乾燥して溶剤を完全に蒸発させた。その後、樹脂フィルム基材を剥離して、膜厚30μmの比較用の電子部品用セパレータを得た。
実施例および比較例で得られた電子部品用セパレータの特性を下記のように測定した。
<透気度>
JIS P 8117に準拠した安田精機社製ガーレ式デンソメーターB型により測定した。その結果を表1に示す。
<ゲル分率>
電子部品用セパレータをステンレス・メッシュ製の籠に入れ、籠ごとDMF中に浸漬させたのち、100℃の環境下1時間放置した。その後、籠をDMFより引き上げ、表面に付着しているDMFを熱風により乾燥させた。DMF中に浸漬する前と、浸漬後の乾燥重量から、次式によってゲル分率を算出した。その結果を表1に示す。
ゲル分率(重量%)=(DMFに浸漬後に溶解せずに残ったセパレータの乾燥質量)÷(DMFに浸漬する前のセパレータの質量)×100
<透気度>
JIS P 8117に準拠した安田精機社製ガーレ式デンソメーターB型により測定した。その結果を表1に示す。
<ゲル分率>
電子部品用セパレータをステンレス・メッシュ製の籠に入れ、籠ごとDMF中に浸漬させたのち、100℃の環境下1時間放置した。その後、籠をDMFより引き上げ、表面に付着しているDMFを熱風により乾燥させた。DMF中に浸漬する前と、浸漬後の乾燥重量から、次式によってゲル分率を算出した。その結果を表1に示す。
ゲル分率(重量%)=(DMFに浸漬後に溶解せずに残ったセパレータの乾燥質量)÷(DMFに浸漬する前のセパレータの質量)×100
実施例1〜5の電子部品用セパレータは、透気度が100秒/100ml以下であったが、比較例1と3の多孔質膜は透気度が100秒/100ml以上であり、電解液の含浸性が悪くなり抵抗値が高い懸念がある。また、実施例1〜5のセパレータはゲル分率が20重量%以上あり、特に、実施例2〜5のセパレータは高いゲル分率を保っており耐熱性、耐溶剤性が高いのに対し、比較例の多孔質膜はゲル分率が低いため、耐熱性、耐溶剤性が満足のいくものではなかった。
次いで、電気二重層キャパシタの組み立てと高温保存後の絶縁性の確認を行った。実施例1〜5および実施例1〜3のセパレータについてコイン型セルを組み立てた。円形状にカットしたセパレータを、同じく円形にカットした下記電極の間に挟み、ステンレス製コイン型セルの中に入れた後、下記電解液を注入後、蓋をして封止することで、コイン型セルを組み立てた。このセルの組み立ては露点−30℃以下のグローブボックス内で行った。
使用電極(宝泉株式会社製): アルミ箔20μm,活物質:活性炭
電解液:1M (Et)4N−PF6(テトラエチルアンモニウム−六フッ化リン酸塩)含有プロピレンカーボネート溶液
上記キャパシタを作製後、20℃における抵抗値をACインピーダンス測定法により測定した。また、上記キャパシタを2.7Vまで充電し、初期電圧を測定した。その後、充電状態で80℃の環境下24時間放置した後、再度20℃にまで冷却し、加熱放置後の保持電圧を測定した。その結果を表2に示す。なお、電気化学測定には、ソーラトロン社製 SI1287−1255Bを用いた。
使用電極(宝泉株式会社製): アルミ箔20μm,活物質:活性炭
電解液:1M (Et)4N−PF6(テトラエチルアンモニウム−六フッ化リン酸塩)含有プロピレンカーボネート溶液
上記キャパシタを作製後、20℃における抵抗値をACインピーダンス測定法により測定した。また、上記キャパシタを2.7Vまで充電し、初期電圧を測定した。その後、充電状態で80℃の環境下24時間放置した後、再度20℃にまで冷却し、加熱放置後の保持電圧を測定した。その結果を表2に示す。なお、電気化学測定には、ソーラトロン社製 SI1287−1255Bを用いた。
表2に示されるとおり、実施例1〜5の抵抗値はいずれも低く、電子部品の高容量化やレート特性、サイクル特性などの性能を向上できることを示している。一方で、実用性が無いわけではないが、比較例1および3のセパレータは抵抗値がやや高く、高性能化は難しい。さらに、実施例1〜5のセパレータは高温に保存された状態でも電圧が低下せず、漏れ電流やショートを生じていないことを示している。したがって、高温に曝される環境下でも使用できる電子部品を得ることが出来る。しかしながら、比較例のセパレータはいずれも保持電圧がほとんどなくなっており、高温環境下での使用はできない電子部品となる。
これまで説明したとおり、本発明の電子部品用セパレータは、上述したフッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されているために、耐熱性が向上されており、従って、電子部品に用いた場合、電子部品の生産性が優れる上に、電子部品の性能として、高温対応、高信頼性、高容量化などに寄与する。よって、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、ポリマーリチウム電池、ニッケル水素電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタなどの電子部品に好適に用いることが出来る。
Claims (8)
- フッ化ビニリデン樹脂からなる微多孔質膜であって、フッ化ビニリデン樹脂が化学的に架橋されていることを特徴とする電子部品用セパレータ。
- 前記フッ化ビニリデン樹脂がフッ化ビニリデンのホモポリマー、又は四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、エチレン、プロピレンのいずれか1種類以上とフッ化ビニリデンとからなるコポリマー、または前記ホモポリマーとコポリマーの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用セパレータ。
- 電子線照射によって化学的に架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品用セパレータ。
- N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中における100℃でのゲル分率が20重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品用セパレータ。
- ガーレ透気度試験機において測定される透気度が100秒/100ml以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品用セパレータ
- セパレータの膜厚が5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品用セパレータ。
- リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、ポリマーリチウム電池、ニッケル水素電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタから選ばれる電子部品に備えられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品用セパレータ。
- 正極と負極とを有し、それらの間に請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品用セパレータが配置され、該電子部品用セパレータに電解液が含浸されたものであることを特徴とする電子部品。
Priority Applications (1)
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JP2006077986A JP2007257904A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 電子部品用セパレータおよび電子部品 |
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-
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- 2006-03-22 JP JP2006077986A patent/JP2007257904A/ja not_active Withdrawn
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