本発明は上記問題に対処するためになされたものであって、その目的は、アクセル操作部材の加速操作後の急激な戻し操作があった場合、直ちに自動ブレーキ制御を開始できる自動ブレーキ制御装置を提供することにある。
本発明に係る自動ブレーキ制御装置は、車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、前記車両のブレーキ操作部材(ブレーキペダル等)の操作が無い場合にも車両の車輪に摩擦制動力を付与するブレーキ制御手段とを備えた車両に適用される。前記ブレーキ制御手段は、ブレーキ液圧により摩擦制動力を付与するブレーキ液圧制御手段の場合、例えば、モータ、液圧ポンプ、複数の電磁弁等を内蔵したハイドロリックユニットで構成される。
本発明に係る自動ブレーキ制御装置の特徴は、前記車両のアクセル操作部材(アクセルペダル等)を基準位置から移動させる加速操作が行われた後に行われる同アクセル操作部材の同基準位置への戻し操作を示すパラメータが所定値よりも大きいとき、特定操作がなされたと判定する特定操作判定手段と、前記車体速度が所定の第1の車速未満であって、且つ前記特定操作がなされたと判定された場合、前記ブレーキ制御手段を制御して前記車輪に摩擦制動力を付与する自動ブレーキ制御を実行する自動ブレーキ制御手段とを備えたことにある。
ここにおいて、基準位置とは、例えば、アクセル操作部材が開放されている状態での位置(アクセル操作部材の非操作時の位置)等である。また、前記車体速度が所定の第1の車速未満であるか否かを判定する場合に使用される「車体速度」としては、例えば、前記加速操作の開始時点での車体速度、前記戻し操作の終了時点での車体速度、前記加速操作の開始時点から前記戻し操作の終了時点までの間における車体速度の平均値等が使用され得る。
これによれば、車体速度が所定の第1の車速未満であって、且つ、アクセル操作部材の基準位置への戻し操作を示すパラメータが所定値よりも大きいとき、特定操作がなされたと判定された場合(以下、「自動ブレーキ制御開始条件が成立した場合」と称呼する。)、直ちに自動ブレーキ制御が開始され得る。
ここで、上述した、シフトレバーの位置の選択ミスにより駐車場等において緊急に車両を減速させる必要が発生する場合(以下、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」と称呼する。)、停車中、或いは極低速走行中において、アクセルペダルの踏み込み後においてアクセルペダルの戻し操作を示すパラメータが所定値よりも大きい上記特定操作(例えば、急激な戻し操作。)が行われることが多いと考えられる。従って、上記構成によれば、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」において、アクセル操作部材の急激な戻し操作の後、直ちに自動ブレーキ制御を開始することができる。
なお、自動ブレーキ制御では、予め設定されたテーブル、マップ等に基づく所定のブレーキパターンをもって摩擦制動力を付与するように構成されることが好適である。これにより、自動ブレーキ制御開始後において車両をスムーズに停車させることができる。
この場合、前記パラメータは、前記加速操作の開始時点から前記戻し操作の終了時点までの時間に対応する時間速度とすると好適である。
「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」においては、アクセルペダルの踏み込みの直後において運転者の意思とは反対方向に車両が移動開始する。従って、アクセルペダルの加速操作の開始時点から戻し操作の終了時点までの時間が極短時間となるケースが多いと考えられる。以上のことから、上記構成によれば、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」において上記「特定操作」がなされたことを精度良く判定できる。
また、前記パラメータは、前記戻し操作における前記アクセル操作部材の戻し速度としてもよい。これによれば、上記「特定操作」がなされたことを、直接、精度良く判定できる。
上記本発明に係る自動ブレーキ制御装置においては、前記自動ブレーキ制御手段は、前記自動ブレーキ制御実行中において、前記ブレーキ操作部材の操作、及び/又は前記アクセル操作部材の操作が検出された場合、前記自動ブレーキ制御を終了するように構成されることが好適である。
自動ブレーキ制御実行中において、ブレーキ操作部材の操作、及び/又はアクセル操作部材の操作が検出された場合、自動ブレーキ制御に代えて運転者の意思を優先して車両を減速・加速させることが好ましいと考えられる。上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、自動ブレーキ制御を終了させることで運転者の意思を確実に優先させる
ことができる。
上記本発明に係る自動ブレーキ制御装置においては、前記自動ブレーキ制御が終了した後、或いは、前記車体速度が前記所定の第1の車速より大きい所定の第2の車速よりも大きくなった後、前記自動ブレーキ制御の実行を禁止する禁止手段を備えることが好適である。
上述したブレーキ操作部材の操作、アクセル操作部材の操作等に起因して自動ブレーキ制御が終了した後は、運転者は、車両の動きに対して高度な注意を払うようになる。従って、その後に続けて自動ブレーキ制御開始条件が成立した場合に自動ブレーキ制御を再び実行する必要性は低い。加えて、自動ブレーキ制御開始条件は、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」以外であって緊急に車両を減速させる必要がない場合でも成立し得る。換言すれば、渋滞時等において自動ブレーキ制御開始条件が不必要に頻繁に成立してしまう事態が発生し得る。以上のことから、自動ブレーキ制御が終了した後においては、自動ブレーキ制御開始条件が成立した場合であっても、逆に自動ブレーキ制御を行わないことが好ましいと考えられる。
また、アクセルペダルの踏み込み後に運転者の意思とは反対方向に車両が移動する場合、運転者は通常、車体速度が大きくなる前にアクセルペダルを戻す。従って、車体速度が大きくなることはないものと考えられる。即ち、車体速度が所定の第2の車速よりも大きくなったことは、シフトレバーの位置が運転者の意思と合致した位置に設定されていることを表すと考えられる。従って、車体速度が所定の第2の車速よりも大きくなった後は(特に、次にシフトレバーの位置が変更されるまでの間)、自動ブレーキ制御開始条件が成立した場合であっても、自動ブレーキ制御を行う必要がないと考えられる。
上記構成は係る知見に基づく。これによれば、自動ブレーキ制御が終了した後、或いは、車体速度が所定の第2の車速よりも大きくなった後において、不必要に自動ブレーキ制御が実行されることが禁止される。これにより、自動ブレーキ制御の不必要な実行により運転者が違和感を抱くことを抑制できる。
この場合、前記車両は変速操作のためのシフトレバーの位置を検出するシフト位置検出手段を備え、前記禁止手段は、前記自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態で前記シフトレバーの位置が変更されたとき、前記禁止を解除するように構成されることが好適である。
シフトレバーの位置が変更されると、シフトレバーの位置の選択ミスが発生する可能性が不可避的に発生する。従って、上述のように自動ブレーキ制御の終了等に起因して自動ブレーキ制御の実行が禁止されている場合であっても、シフトレバーの位置が変更されると、その後において「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」が再び到来し得る。即ち、自動ブレーキ制御を実行する必要が生じる可能性がある。
上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態であってもシフトレバーの位置が変更されると、その後において自動ブレーキ制御が実行可能となる。従って、シフトレバーの位置の選択ミスが発生する可能性が発生する毎に自動ブレーキ制御を確実に実行可能とすることができる。
なお、前記禁止手段が、前記自動ブレーキ制御が終了した後、且つ、前記車体速度が所定の第2の車速よりも大きくなった後において前記自動ブレーキ制御の実行を禁止するとともに、前記自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態で前記シフトレバーの位置が変更されたとき前記禁止を解除するように構成されている場合、シフトレバーの位置の前回変更時点から今回変更時点までの間における自動ブレーキ制御の実行回数は、「1」回、或いは「0」回に制限されることになる。
この場合、前記禁止手段は、前記自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態で、前記車体速度が所定の車速以下であって且つ前記シフトレバーの位置が変更されたとき、前記禁止を解除するように構成されるとより好ましい。
一般に、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」は、車体速度が小さい状態でシフトレバーの位置が変更された後に到来し得る。換言すれば、車体速度が大きい状態でシフトレバーの位置が変更されても自動ブレーキ制御の実行の禁止を解除する必要がない。上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、自動ブレーキ制御の実行の禁止が不必要に解除されることが抑制され得る。
上記本発明に係る自動ブレーキ制御装置においては、前記自動ブレーキ制御手段は、前記加速操作の開始時点から前記戻し操作の終了時点までの間における前記アクセル操作部材の前記基準位置からの操作の程度を表す値であるアクセル操作指標値を取得し、前記アクセル操作指標値が大きいほど前記自動ブレーキ制御により前記車輪に付与される摩擦制動力を大きくするように構成されることが好適である。
ここにおいて、前記アクセル操作指標値は、例えば、前記加速操作の開始時点から前記戻し操作の終了時点までの間における前記アクセル操作部材の前記基準位置からの操作量の時間積分値等である。
上記アクセル操作指標値が大きいほど上記戻し操作の終了時点での車体速度が大きくなる。上記戻し操作の終了時点での車体速度が大きくなるほど自動ブレーキ制御による摩擦制動力を大きくする必要がある。従って、上記構成によれば、自動ブレーキ制御においてアクセル操作指標値に応じた適切な大きさの摩擦制動力を発生させることができる。ここで、自動ブレーキ制御手段は、前記特定操作がなされたと判定された場合、前記車体速度がオートマティック・トランスミッションによるクリープ現象発生時の速度と同等の速度である低速未満のときのみブレーキ制御手段を制御して車輪に摩擦制動力を付与するようにすると好適である。これにより、駐車場等での停車中、或いは低速走行中において、運転者によるシフトレバーの誤選択(例えば、駐車発車時に、シフトレバーを後進位置にしなければならない状況において、前進位置にしてしまっている状況)があった場合、運転者によるアクセルペダルの踏み込み後、運転者の意思とは反対方向に車両が移動してしまうことを防止することが可能になる。
以下、本発明による自動ブレーキ制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動ブレーキ制御装置を含む自動ブレーキ装置10を搭載した車両の概略構成を示している。
この自動ブレーキ装置10は、各車輪にブレーキ液圧によるブレーキ力を発生させるためのブレーキ液圧制御部30を含んでいる。ブレーキ液圧制御部30は、その概略構成を表す図2に示すように、運転者によるブレーキ操作に応じたブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生部31と、車輪RR,FL,FR,RL にそれぞれ配置されたホイールシリンダWrr,Wfl,Wfr,Wrl
に供給するブレーキ液圧をそれぞれ調整可能なRR ブレーキ液圧調整部32,FLブレーキ液圧調整部33,FRブレーキ液圧調整部34,RL ブレーキ液圧調整部35と、還流ブレーキ液供給部36とを含んで構成されている。
ブレーキ液圧発生部31は、ブレーキペダルBPの作動により応動するバキュームブースタVBと、バキュームブースタVBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。バキュームブースタVBは、図示しないエンジンの吸気管内の空気圧力(負圧)を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合で助勢し同助勢された操作力をマスタシリンダMCに伝達するようになっている。
マスタシリンダMCは、第1ポート、及び第2ポートからなる2系統の出力ポートを有していて、リザーバRSからのブレーキ液の供給を受けて、前記助勢された操作力に応じた第1マスタシリンダ圧Pm を第1ポートから発生するようになっているとともに、同第マスタシリンダ圧Pm と略同一の液圧である前記助勢された操作力に応じた第2マスタシリンダ圧Pm を第2ポートから発生するようになっている。
これらマスタシリンダMC及びバキュームブースタVBの構成及び作動は周知であるので、ここではそれらの詳細な説明を省略する。このようにして、マスタシリンダMC及びバキュームブースタVBは、ブレーキペダルBPの操作力に応じた第1マスタシリンダ圧Pm 及び第2マスタシリンダ圧Pm をそれぞれ発生するようになっている。
上記マスタシリンダMCの第1ポートは、車輪RR,FL に係わる系統に属し、同第1ポートと、RRブレーキ液圧調整部32及びFLブレーキ液圧調整部33の上流部との間には、常開電磁開閉弁PC1が介装されている。同様に、マスタシリンダMCの第2ポートは、車輪FR,RL に係わる系統に属し、同第2ポートと、FRブレーキ液圧調整部34及びRL ブレーキ液圧調整部35の上流部との間には、常開電磁開閉弁PC2が介装されている。
RR ブレーキ液圧調整部32は、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁PUrrと、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁PDrrとから構成されている。増圧弁PUrrは、RRブレーキ液圧調整部32の上流部とホイールシリンダWrr とを連通、或いは遮断できるようになっている。減圧弁PDrrは、ホイールシリンダWrrとリザーバRS1とを連通、或いは遮断できるようになっている。この結果、増圧弁PUrr、及び減圧弁PDrrを制御することでホイールシリンダWrr 内のブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧Pwrr)が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
加えて、増圧弁PUrrにはブレーキ液のホイールシリンダWrr 側からRR ブレーキ液圧調整部32の上流部への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV1が並列に配設されていて、これにより、操作されているブレーキペダルBPが開放されたときホイールシリンダ圧Pwrr が迅速に減圧されるようになっている。
同様に、FLブレーキ液圧調整部33,FRブレーキ液圧調整部34、RLブレーキ液圧調整部35は、それぞれ、増圧弁PUfl及び減圧弁PDfl,増圧弁PUfr及び減圧弁PDfr,増圧弁PUrl及び減圧弁PDrlから構成されていて、これらの増圧弁及び減圧弁が制御されることにより、ホイールシリンダWfl,ホイールシリンダWfr 及びホイールシリンダWrl内のブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧Pwfl,Pwfr,Pwrl)をそれぞれ増圧、保持、減圧できるようになっている。また、増圧弁PUfl,PUfr及びPUrlの各々にも、上記チェック弁CV1と同様の機能を達成し得るチェック弁CV2,CV3及びCV4がそれぞれ並列に配設されている。
加えて、常開電磁開閉弁PC1には、ブレーキ液の、マスタシリンダMCの第1ポートから、RRブレーキ液圧調整部32及びFLブレーキ液圧調整部33の上流部への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV5が並列に配設されている。これにより、常開電磁開閉弁PC1が閉状態にある場合であっても、ブレーキペダルBPの操作により第1マスタシリンダ圧Pm がRRブレーキ液圧調整部32及びFL ブレーキ液圧調整部33の上流部の圧力よりも高い圧力になったとき、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧(即ち、第1マスタシリンダ圧Pm)そのものがホイールシリンダWrr,Wflに供給され得るようになっている。また、常開電磁開閉弁PC2にも、上記チェック弁CV5と同様の機能を達成し得るチェック弁CV6が並列に配設されている。
還流ブレーキ液供給部36は、直流モータMTと、同モータMTにより同時に駆動される2つの液圧ポンプ(ギヤポンプ)HP1,HP2と、常閉電磁開閉弁PC3,PC4とを含んでいる。常閉電磁開閉弁PC3は、マスタシリンダMCの第1ポートとリザーバRS1との間に介装され、常閉電磁開閉弁PC4は、マスタシリンダMCの第2ポートとリザーバRS2との間に介装されている。
液圧ポンプHP1は、減圧弁PDrr,PDflから還流されてきたリザーバRS1内のブレーキ液、或いは、常閉電磁開閉弁PC3が開状態にある場合においてマスタシリンダMCの第1ポートからのブレーキ液をチェック弁CV7を介して汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液をチェック弁CV8を介してRR ブレーキ液圧調整部32及びFL ブレーキ液圧調整部33の上流部に供給するようになっている。
同様に、液圧ポンプHP2は、減圧弁PDfr,PDrl から還流されてきたリザーバRS2内のブレーキ液、或いは、常閉電磁開閉弁PC4が開状態にある場合においてマスタシリンダMCの第2ポートからのブレーキ液をチェック弁CV9を介して汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液をチェック弁CV10を介してFR ブレーキ液圧調整部34及びRL ブレーキ液圧調整部35の上流部に供給するようになっている。
以上、説明した構成により、ブレーキ液圧制御部30は、右後輪RR と左前輪FL とに係わる系統と、左後輪RL と右前輪FR とに係わる系統の2系統の液圧回路から構成されている。ブレーキ液圧制御部30は、全ての電磁弁が非励磁状態にあるときブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧(即ち、マスタシリンダ圧Pm)をホイールシリンダW**にそれぞれ供給できるようになっている。
なお、各種変数等の末尾に付された「**」は、同各種変数等が各車輪FR等のいずれに関するものであるかを示すために同各種変数等の末尾に付される「fl」,「fr」等の包括表記であって、例えば、ホイールシリンダW**は、左前輪用ホイールシリンダWfl,右前輪用ホイールシリンダWfr, 左後輪用ホイールシリンダWrl, 右後輪用ホイールシリンダWrr を包括的に示している。
他方、この状態において、常開電磁開閉弁PC1,PC2を励磁して閉状態に、常閉電磁開閉弁PC3,PC4を励磁して開状態に制御するとともに、モータMT(従って、液圧ポンプHP1,HP2)を駆動することで、ブレーキ液圧制御部30は、マスタシリンダ圧Pm よりも高いブレーキ液圧をホイールシリンダW**にそれぞれ供給できるようになっている。
加えて、ブレーキ液圧制御部30は、増圧弁PU**、及び減圧弁PD**を制御することでホイールシリンダ圧Pw**を個別に調整できるようになっている。即ち、ブレーキ液圧制御部30は、運転者によるブレーキペダルBPの操作とは独立して、車輪に付与される摩擦制動力を車輪毎に個別に調整できるようになっている。
再び、図1を参照すると、この自動ブレーキ装置10は、対応する車輪が所定角度回転する毎にパルスを有する信号を出力する車輪速度センサ41**と、ブレーキペダルBPの操作の有無に応じてオン信号(High信号)又はオフ信号(Low信号)を選択的に出力する(STP信号を出力する)ブレーキスイッチ42と、アクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダル操作量Accp を表す信号を出力するアクセルペダルセンサ43と、変速操作のためのシフトレバーSLの位置を検出し、シフト位置Pos を表す信号を出力するシフト位置センサ44と、ホイールシリンダ液圧Pw**を検出し、ホイールシリンダ液圧Pw**を表す信号を出力するホイールシリンダ液圧センサ45**(図2を参照)と、運転者により操作される自動ブレーキ制御の実行を許可するか否かを決定するための作動スイッチ46とを備えている。
また、自動ブレーキ装置10は、電子制御装置50を備えている。電子制御装置50は、互いにバスで接続された、CPU51、CPU51が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM52、CPU51が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM53、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM54、及びADコンバータを含むインターフェース55等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース55は、センサ41〜45及び作動スイッチ46と接続され、CPU51にセンサ41〜45及び作動スイッチ46からの信号を供給するとともに、CPU51の指示に応じて、ブレーキ液圧制御部30の電磁弁、及びモータMTに駆動信号を送出するようになっている。これにより、CPU51(ブレーキ液圧制御部30)は、運転者によるブレーキペダルBPの操作とは独立して自動ブレーキ制御を実行できるようになっている。
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明の実施形態に係る自動ブレーキ制御装置を含む自動ブレーキ装置10の実際の作動について、電子制御装置50のCPU51が実行するルーチンをフローチャートにより示した図3〜図5を参照しながら説明する。
図3から図5のルーチンにおいて、フラグPERは、その値が「1」のとき自動ブレーキ制御の実行が許可されていることを示しその値が「0」のとき自動ブレーキ制御の実行が禁止されていることを示す。フラグBRKは、その値が「1」のとき自動ブレーキ制御実行中であることを示しその値が「0」のとき自動ブレーキ制御実行中でないことを示す。フラグSRTは、その値が「1」のとき後述する図4のステップ425の条件が成立したことを示しその値が「0」のときステップ425の条件が成立していないことを示す。
CPU51は、図3に示したフラグPER(許可フラグ)の設定を行うルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ300から処理を開始し、ステップ305に進んで、作動スイッチ46がON状態(自動ブレーキ制御の実行許可に対応する状態)になっているか否かを判定し、「No」と判定する場合(作動スイッチ46がOFF状態(自動ブレーキ制御の実行禁止に対応する状態)になっている場合)、ステップ395に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
以降、作動スイッチ46がON状態になっているものとして説明を続ける。また、現時点では、運転者が駐車場等にて駐車中の車両を発進させるため、図示しないエンジンが始動され、ブレーキペダルBPが踏み込まれた状態でシフトレバーSLの位置が走行位置(例えば、前進走行用レンジ(Dレンジ)、或いは後進走行用レンジ(Rレンジ))に移動させられた状態にあるものとする。この状態で、フラグPER、BRK、SRTは、初期値「1」、「0」、「0」にそれぞれ維持されている。
従って、CPU51はステップ305の判定にて「Yes」と判定してステップ310に進み、フラグPERが「1」になっているか否かを判定し、現時点では、「Yes」と判定してステップ315に進んで、フラグBRKの値が「1」から「0」に変更されたか否かを判定する。
現時点では、フラグBRKの値が「0」に維持されているから、CPU51はステップ315にて「No」と判定してステップ320に進み、車体速度Vso が本発明にかかる第2の車速に対応する所定車速Vref(例えば、10Km/h等)を超えているか否かを判定する。車体速度Vso は、車輪速度センサ41**の出力に基づいて得られる車輪**の車輪速度Vw**を用いて周知の手法により計算される。
現時点では、ブレーキペダルBPが踏み込まれていて車両は停止している。従って、CPU51はステップ320にて「No」と判定してステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このような一連の処理(ステップ305、310、315、320、395)は、ステップ315、或いはステップ320にて「Yes」と判定されるまで繰り返し実行される。即ち、開始された自動ブレーキ制御が終了するまで、或いは、車体速度Vso が所定車速Vrefを超えるまでフラグPERの値は「1」に維持される。
また、CPU51は、図4に示した自動ブレーキ制御の開始・終了判定を行うルーチンを図3のルーチンの実行に同期して繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ400から処理を開始し、ステップ405に進んで、作動スイッチ46がON状態になっているか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ495に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
現時点では、作動スイッチ46はON状態に維持されている。従って、CPU51はステップ405にて「Yes」と判定してステップ410に進んで、フラグPERの値が「1」になっているか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ495に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
現時点では、フラグPERは「1」に維持されている。従って、CPU51はステップ410にて「Yes」と判定してステップ415に進んでフラグBRKの値が「0」になっているか否かを判定する。
現時点では、フラグBRKの値は「0」になっている。従って、CPU51はステップ415にて「Yes」と判定してステップ420に進み、フラグSRTの値が「0」になっているか否かを判定する。
現時点では、フラグSRTの値は「0」になっている。従って、CPU51はステップ420にて「Yes」と判定してステップ425に進んで、車体速度Vso が本発明にかかる所定の第1の車速に対応する所定の低速Vlow 未満であって、且つ、アクセルペダル操作量Accp が「0」から「0」以外に変更されたか否かを判定する。所定の低速Vlowは、例えば、オートマティック・トランスミッション(AT)による所謂クリープの速度と同等の速度に設定されている。なお、アクセルペダル操作量Accp=「0」は、前記基準位置に対応している。
現時点では、車両は停止している一方でアクセルペダルAPが踏み込まれていない。従って、CPU51はステップ425にて「No」と判定してステップ495に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。このような一連の処理(ステップ405、410、415、420、425、495)は、ステップ425にて「Yes」と判定されるまで繰り返し実行される。
また、CPU51は、図5に示した自動ブレーキ制御を実行するためのルーチンを図4のルーチンの実行に同期して繰り返し実行している(即ち、図3〜図5のルーチンは全て同期して実行される)。従って、所定のタイミングになると、CPU51はステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで、作動スイッチ46がON状態になっているか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ595に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
現時点では、作動スイッチ46はON状態に維持されている。従って、CPU51はステップ505にて「Yes」と判定してステップ510に進んで、フラグBRKの値が「1」になっているか否かを判定する。
上述したように、現時点では、フラグBRKの値は「0」に維持されている。従って、CPU51はステップ510にて「No」と判定してステップ535に進んで、ブレーキ液圧制御部30に対して、モータMTを停止し、且つ全ての電磁弁を非励磁状態とする指示を行う。
これにより、自動ブレーキ制御が実行されない状態に維持される。このような一連の処理(ステップ505、510、535、595)は、ステップ510にて「Yes」と判定されるまで(即ち、自動ブレーキ制御が開始されるまで)繰り返し実行される。
次に、この状態にて、運転者が、車両を発進させるためにブレーキペダルBPを開放して速やかにアクセルペダルAPの踏み込みを開始した場合について説明する。この場合、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点(即ち、アクセルペダル操作量Accp が「0」から「0」以外に変更された時点)での車体速度Vsoは上記所定の低速Vlow 未満となる。従って、図4のルーチンを繰り返し実行しているCPU51はステップ425に進んだとき「Yes」と判定してステップ430以降に進むようになる。
CPU51はステップ430に進むと、フラグSRTの値を「0」から「1」に変更し、続くステップ435にて積算値Sを初期値「0」に設定し、続くステップ440にて経過時間T1をリセットする。
積算値Sは、図6に斜線にて示した「アクセルペダルAPの踏み込み開始時点(前記加速操作の開始時点)からアクセルペダルAPの踏み込み終了時点(前記戻し操作の終了時点)までの間におけるアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sf」を求めるために逐次積算されていく値である。経過時間T1は、電子制御装置50内に内蔵された図示しないタイマにより計時される、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点からの経過時間を表す。
続いて、CPU51はステップ445に進んで、その時点での積算値S(現時点では、「0」)に、現時点でのアクセルペダル操作量Accp とプログラム実行間隔時間Δtの積を加えて積算値Sを更新する。
次いで、CPU51はステップ450に進み、経過時間が所定時間TA(例えば、O.5〜1.0sec 程度)に達していないか否かを判定する。現時点は、アクセルペダルAPの踏み込み開始の直後であるから経過時間T1が所定時間TAに達していない。従って、CPU51はステップ450にて「Yes」と判定してステップ455に進み、アクセルペダル操作量Accp が「0」以外から「0」に変更されたか否か(即ち、アクセルペダルAPの踏み込み終了時点が到来したか否か)を判定する。
現時点は、アクセルペダルAPの踏み込み開始の直後であるから、アクセルペダル操作量Accp
が「0」以外から「0」に変更されていない。従って、CPU51はステップ455にて「No」と判定してステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以降、フラグSRTが「1」になっている。従って、CPU51はステップ420に進んだとき「No」と判定してステップ445に直ちに進むようになる。即ち、経過時間T1が所定時間TAに達していない状態でアクセルペダル操作量Accp が「0」以外から「0」に変更されない限りにおいて、ステップ405、410、415、420、445、450、455、495の処理が繰り返し実行される。この結果、経過時間T1の増大に伴ってステップ445の繰り返し実行により積算値Sが逐次積算されていく。
ここで、アクセルペダル操作量Accp が「0」以外から「0」に変更されることなく経過時間T1が所定時間TAに達した場合、CPU51はステップ450に進んだとき「No」と判定してステップ460に進み、フラグSRTを「0」に戻す。これにより、以降、CPU51はステップ420に進んだとき「Yes」と判定して再びステップ425に進むようになり、ステップ425の条件が成立したか否かをモニタするようになる。この場合は、アクセルペダルAPの踏み込み開始後、速やかにアクセルペダルAPの戻し操作が行われない場合に対応する。即ち、シフトレバーSLの位置が運転者の意思と合致していて、上述した「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」が到来していないことを意味する。
一方、例えば、DレンジとRレンジとの間でシフトレバーSLの操作ミスが発生していて「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」が到来している場合、運転者は、アクセルペダルAPの踏み込み開始後、直ちにアクセルペダルAPの戻し操作を行う。この結果、経過時間T1が所定時間TAに達していない状態でアクセルペダル操作量Accpが「0」以外から「0」に変更されることになる。このように、アクセルペダルAPの踏み込みを開始した後、所定時間TAが経過する前にアクセルペダルAPの踏み込みを終了する操作がなされた場合は、本発明にかかる「戻し操作を示すパラメータ」の一例である加速操作の開始時点から戻し操作の終了時点までの経過時間(T1)に対する時間速度が、前記加速操作の開始時点から所定時間(TA)が経過する際の時間速度よりも大きくなる。かかる場合が前記「戻し操作を示すパラメータが所定値よりも大きい特定操作」に対応する。
この場合、CPU51はステップ450にて「Yes」と判定してステップ455に進んだとき「Yes」と判定してステップ465に進み、フラグBRTの値を「0」から「1」に変更し、続くステップ470にてアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfをステップ445にて更新されてきた現時点での積算値Sに設定する。これにより、アクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfは、上述した図6に示した斜線部分の面積に対応する値となる。
以降、フラグBRKの値は「1」になっている。従って、CPU51はステップ415に進んだとき「No」と判定してステップ475に進み、ブレーキスイッチ42から出力されるSTP信号がON信号になっているか、又は、アクセルペダル操作量Accpが「0」以外となっているかを判定し、「No」と判定する場合、ステップ495に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、ブレーキペダルBPが操作されたか、又はアクセルペダルAPが操作されたかをモニタするようになる。
このように、アクセルペダルAPの踏み込みを開始した時点(前記加速操作の開始時点)での車体速度Vso が所定の低速Vlow 未満であって、且つ、前記特定操作がなされたと判定された場合(以下、「自動ブレーキ制御開始条件が成立した場合」とも称呼する。)、フラグBRKの値が「0」から「1」に変更されて、以下のように、自動ブレーキ制御が開始される。
即ち、フラグBRKの値が「0」から「1」に変更されると、図5のルーチンを繰り返し実行しているCPU51はステップ510にて進んだとき「Yes」と判定してステップ515に進み、フラグBRKの値が「0」から「1」に変更されたか否かを判定し、「Yes」と判定してステップ520に進み、先のステップ470にて設定されたアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfと、時間積分値Sfとブレーキ液圧パターンP(t)との関係を規定する所定のテーブル等を利用して、自動ブレーキ制御によるブレーキ液圧パターンP(t)(図7を参照)を決定する。
ここで、tは自動ブレーキ制御開始時点からの経過時間である。これにより、図7に示すように、アクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfが大きいほど、自動ブレーキ制御中に亘る摩擦制動力が大きく設定される。
続いて、CPU51はステップ525に進んで、経過時間T2をリセットする。経過時間T2は、電子制御装置50内に内蔵された図示しないタイマにより計時される、自動ブレーキ制御開始時点(フラグBRKの値が「0」から「1」に変更された時点)からの経過時間を表す。
次に、CPU51はステップ530に進んで、経過時間T2に従って、ホイールシリンダ液圧Pw**が先のステップ520にて設定されたブレーキ液圧パターンP(T2)に一致するように、ホイールシリンダ液圧センサ45**の出力を監視しながらブレーキ液圧制御部30内のモータMT、電磁弁に制御指示を行う。これにより、自動ブレーキ制御が開始される。
以降、CPU51は、フラグBRKの値が「1」から「0」に変更されるまで、ステップ505、510、515、530の処理を繰り返し実行する。これにより、経過時間T2の増大に伴ってステップ530の繰り返し実行により自動ブレーキ制御が継続され、この結果、自動ブレーキ制御開始後において車両を速やか、且つスムーズに停車させることができる。
次に、このように自動ブレーキ制御が継続された状態で、運転者がブレーキペダルBP或いはアクセルペダルAPを踏み込んだものとする。この場合、図4のステップ475にてブレーキペダルBP又はアクセルペダルAPが操作されたかをモニタしていたCPU51はステップ475に進んだとき「Yes」と判定してステップ480に進み、フラグBRKの値を「1」から「0」に変更し、続くステップ485にてフラグSRTの値を「1」から「0」に変更する。
これにより、CPU51は、図5のステップ510に進んだとき「No」と判定して再びステップ535に進むようになる。即ち、自動ブレーキ制御が継続されている状態で運転者がブレーキペダルBP或いはアクセルペダルAPを踏み込んだ場合に自動ブレーキ制御が終了する。これにより、運転者の意思が優先される。
加えて、フラグBRKの値が「1」から「0」に変更されると、図3のルーチンのステップ305、310、315、320、395を繰り返し実行してきたCPU51は、ステップ315にて進んだとき「Yes」と判定してステップ325に進み、フラグPERの値を「1」から「0」に変更する。
以降、CPU51はステップ310に進んだとき「No」と判定してステップ330に進み、車体速度Vso が所定車速Vref 以下であるか否かを判定し、「Yes」と判定する場合、続くステップ335にてシフト位置Pos が変化したか否かを判定する。ステップ330、335の何れかで「No」と判定される場合、CPU51はステップ395に直ちに進む。即ち、車体速度Vsoが所定車速Vref 以下の状態でシフト位置Pos が変化したか否かをモニタするようになる。換言すれば、車体速度Vsoが所定車速Vref 以下の状態でシフト位置Pos が変化するまでフラグPERの値は「0」に維持される。
このように、自動ブレーキ制御が終了すると、フラグPERの値が「1」から「0」に変更される。この結果、CPU51は、図4のルーチンのステップ410に進んだとき「No」と判定してステップ495に直ちに進むようになる。
即ち、以降において自動ブレーキ制御開始条件が成立する場合であっても、フラグBRKの値が現時点での値「0」から「1」に変更され得ない(ステップ465が実行され得ない)。換言すれば、自動ブレーキ制御が終了してフラグPERの値が「1」から「0」に変更されると、自動ブレーキ制御の実行が禁止される。これにより、その後において自動ブレーキ制御が不必要に頻繁に実行されてしまう事態が防止される。
次に、このように自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態において、車体速度Vso が所定車速Vref 以下であって且つシフト位置Pos が変化したものとする。この場合、図3のステップ330及び335にて「車体速度Vsoが所定車速Vref 以下の状態でシフト位置Pos が変化したか否か」をモニタしていたCPU51は、ステップ330、335に進んだとき共に「Yes」と判定してステップ340に進み、フラグPERの値を「0」から「1」に変更する。
これにより、CPU51は、図4のステップ410に進んだとき「Yes」と判定して再びステップ425以降に進むようになる。即ち、自動ブレーキ制御の実行が禁止されている状態において、車体速度Vso が所定車速Vref 以下であって且つシフト位置Pos が変化したとき、自動ブレーキ制御の実行の禁止が解除される。これにより、シフトレバーSLの位置の選択ミスにより「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」が到来する可能性が発生する毎に自動ブレーキ制御が確実に実行可能となる。
加えて、フラグPERの値が「0」から「1」に変更されると、CPU51は、図3のステップ310に進んだとき再び「Yes」と判定してステップ315或いはステップ320の条件が成立するか否かを再びモニタするようになる。
以上、運転者が駐車場等にて駐車中の車両を発進させた直後において、「シフトレバーの操作ミスによる緊急制動要求時」が到来して自動ブレーキ制御が実行された場合について説明した。一方、シフトレバーSLの操作ミスが発生しておらず(即ち、シフトレバーSLの位置が運転者の意思と合致していて)、車両を発進させた後において、上述した自動ブレーキ制御開始条件が成立しないまま車体速度Vso が所定車速Vref を超える場合も考えられる。
この場合、図3のステップ315或いはステップ320の条件が成立するか否かをモニタしているCPU51は、ステップ320に進んだとき「Yes」と判定してステップ325に進んでフラグPERの値を「1」から「0」に変更する。即ち、この場合も、自動ブレーキ制御の実行が禁止される。これにより、自動ブレーキ制御を行う必要がない状態で自動ブレーキ制御が開始される事態の発生が防止される。
以上、本例では、シフトレバーSLの位置が変更されてからその後に変更されるまでの間において、自動ブレーキ制御の実行回数は、「1」回、或いは「0」回に制限される。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る自動ブレーキ装置によれば、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点での車体速度Vsoが所定の低速Vlow 未満であって、且つ、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点からアクセルペダルAPの戻し完了時点までの時間が所定時間TAよりも短い場合(加速操作の開始時点から戻し操作の終了時点までの経過時間に対する時間速度が、加速操作の開始時点から所定時間が経過する際の時間速度よりも大きくなる前記「戻し操作を示すパラメータが所定値よりも大きい特定操作」が検出された場合)、直ちに自動ブレーキ制御を開始・実行する。
これにより、シフトレバーの位置の選択ミスにより駐車場等において緊急に車両を減速させる必要が発生する場合等において、運転者によるアクセルペダルAPの急激な戻し操作の後、直ちに自動ブレーキ制御を開始することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点での車体速度Vso が所定の低速Vlow 未満であって、且つ、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点からアクセルペダルAPの戻し完了時点までの時間(以下、「アクセル踏み込み継続時間」とも称呼する。)が所定時間TAよりも短い場合(即ち、加速操作の開始時点から戻し操作の終了時点までの経過時間に対する時間速度が、加速操作の開始時点から所定時間が経過する際の時間速度よりも大きい場合))、自動ブレーキ制御を開始しているが、前記アクセル踏み込み継続時間が所定時間TAよりも短い場合(即ち、前記特定操作が検出された場合)、且つ、アクセルペダルAPの戻し完了時点での車体速度Vso が所定の低速Vlow 未満である場合に自動ブレーキ制御を開始するように構成してもよい。この場合、図4において、ステップ425内の条件「Vso<Vlow」をステップ425内からステップ455内に移動すればよい。
また、上記実施形態においては、自動ブレーキ制御によるブレーキ液圧パターンP(t)を、前記アクセル踏み込み継続時間内におけるアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfに応じて決定しているが、アクセルペダルAPの戻し完了時点での車体速度Vso(即ち、ステップ455にて「Yes」と判定された時点での車体速度Vso)に応じて決定してもよい。この場合、アクセルペダルAPの戻し完了時点での車体速度Vso が大きいほど自動ブレーキ制御中に亘る摩擦制動力が大きく設定される。
また、上記実施形態においては、前記アクセル踏み込み継続時間が所定時間TAよりも短い場合に前記特定操作が検出されるが、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点からの経過時間T1が所定時間TAに達する前に本発明にかかる「戻し操作を示すパラメータ」の一例であるアクセルペダルAPの戻し速度DAccp が所定速度DAccpref よりも大きくなったときに前記特定操作を検出するように構成してもよい。この場合、図4のルーチンに代えて、図8にフローチャートにより示したルーチンが実行される。
図8において、図4のルーチンと同一のステップについては同じステップ番号が付されている。図8のルーチンは、ステップ805を挿入した点、並びに、図4のステップ455をステップ810に置き換えた点においてのみ図4のルーチンと異なる。
図8のステップ805では、アクセルペダルAPの戻し速度DAccp が計算されている。アクセルペダルAPの戻し速度DAccp は、前回の図8のルーチン実行時におけるアクセルペダル操作量Accpb から今回の図8のルーチン実行時におけるアクセルペダル操作量Accpを減じた値をプログラム実行間隔時間Δtで除することで求められる。
図4のルーチンに代えて図8のルーチンが実行される場合も、図8のステップ425内の条件「Vso<Vlow」をステップ425内からステップ810内に移動してもよい。
また、図4のルーチンに代えて図8のルーチンが実行される場合、自動ブレーキ制御によるブレーキ液圧パターンP(t)を、アクセルペダルAPの踏み込み開始時点からステップ810の条件が成立するまでの間におけるアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfに応じて決定しているが、ステップ810の条件が成立した時点での車体速度Vso(即ち、ステップ810にて「Yes」と判定された時点での車体速度Vso)に応じて決定してもよい。
また、上記実施形態においては、自動ブレーキ制御によるブレーキ液圧パターンP(t)を、前記アクセル踏み込み継続時間内におけるアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfに応じて変更しているが、アクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfに加えて、或いはアクセルペダル操作量Accp の時間積分値Sfに代えて、図9に示すように、路面の勾配に応じて変更してもよい。
この場合、例えば、路面の勾配を検出する周知の検出手段に基づいて検出された路面の勾配が降坂路に対応する場合、路面の勾配が水平路に対応する場合に比して自動ブレーキ制御中に亘る摩擦制動力が大きく設定される。一方、路面の勾配が登坂路に対応する場合、路面の勾配が水平路に対応する場合に比して自動ブレーキ制御中に亘る摩擦制動力が小さく設定される。これにより、車両の重力の車体前後方向の成分が考慮された適切なブレーキ液圧パターンを得ることができる。
加えて、上記実施形態においては、自動ブレーキ制御中においてブレーキペダルBPの操作が検出された時点で直ちに自動ブレーキ制御が終了するように構成されているが、自動ブレーキ制御によるブレーキ液圧パターンP(t)よりも大きいブレーキ液圧に相当するブレーキペダルBPの操作が検出された時点で自動ブレーキ制御を終了するように構成してもよい。
10…車両の自動ブレーキ装置、30…ブレーキ液圧制御部、41**…車輪速度センサ、42…ブレーキスイッチ、43…アクセルペダルセンサ、44…シフト位置センサ、45**…ホイールシリンダ液圧センサ、46…作動スイッチ、50…電子制御装置、51…CPU、PU**…増圧弁、PD**…減圧弁、MT…モータ