JP2007247130A - 熱処理炉および炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
熱処理室内での耐炎化進行度をより均一に進めることができ、処理効率が高く、しかも、品質、特に目付斑の少ない炭素繊維を得ることができる耐炎化炉を提供する。
【解決手段】
シート状に配列した複数本の糸条を横方向に通過させて熱処理するための熱処理室と、下方に向かって熱風を吹き出す熱風吹き出し口を前記熱処理室の上部に有し、前記熱風吹き出し口は、熱風の風速を熱処理室の機幅方向に可変とする機幅方向風速制御手段を有する、耐炎化炉。
【選択図】 図1
Description
炭素繊維の目付斑は、品質の均一性を著しく低下させるばかりか、得られた炭素繊維の高次加工性に悪影響を及ぼす。一般に、炭素繊維の目付は耐炎化熱処理度合いに大きく依存し、従来の技術によれば、炉内の温度を均一にすることはできたとしても、耐炎化炉の機幅方向における耐炎化熱処理度合いを均一にすることができなかったのである。
さらに、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記した目的を達成するため、次の構成を有する。すなわち、前記した製造方法で得られた耐炎化繊維を炭化処理する、炭素繊維の製造方法である。
また、本発明に係わる耐炎化処理室は、更に図2の10に示す熱風循環ダクト内、すなわち、熱処理室の上部にある熱風吹き出し口以前のダクト内に、熱風の風速を熱処理室の機幅方向に分割し、それぞれの領域の風速を独立して可変とする上記と同様の機幅方向風速制御手段、いわゆる多孔板を設置する。また、その制御した風量を保ちながら耐炎化処理室へ送り込めるよう、図2の13に示すような整流板を合わせて設置することも出来る。風速制御手段を、通常は、図5のように、少なくとも、両端部に各1対ずつ(風向制御手段(上部、下部)12b)と、中央部に1対(風向制御手段(中央部)12a)、すなわち3対設置する。また、少なくとも風向制御手段と同数の領域に分割できる枚数の整流板13を設置して機幅方向の風速分布を制御することができる。さらには、前記整流板13の枚数を増し、機幅方向を4〜9分割に区切って設置することにより機幅方向風速制御手段として機幅方向の風速分布をより精緻に制御することもできる。また、このとき、耐炎化処理室上部の吹き出し口3には、可変型の多孔板を必ずしも設置する必要はなく、固定式の多孔板でも良い。
図5に、機幅方向風速制御手段の一例を示す。図5において、多数の開口を有する板、いわゆる多孔板14aと多孔板14bを2枚重ね、一方の多孔板を並行移動することにより開口面積を可変とする1対の多孔板を風速制御手段として、それを上下方向(図2における機幅方向と対応する)に複数対配置すればよい。多孔板は、孔が円形である場合には口径10〜40mmφ、1m2当たり300〜1500個の孔を、矩形または正方形である場合には、一辺の長さが10〜35mm、1m2当たり300〜1500個の孔を有する。このとき、口径が10mmφあるいは一辺の長さが10mm未満であると、孔が小さすぎるために、異物が詰まりやすくなり、長期の連続運転が困難となる。また、40mmφあるいは一辺の長さが35mmを超えると、整流効果が小さくなり安定した風速を得られなくなることがある。開口位置が同じ多孔板を2枚重ね合わせて片方の多孔板を固定し、固定していないもう片方の多孔板をスライドさせることにより、上下の多孔板の開口の重なり具合により開口率を可変とする風速制御手段とできる。たとえば、図5のような場合には、両矢印で示したように、図中において左右方向に多孔板14bをスライドさせることにより、それぞれの領域の風速を独立して開口率を0〜100%に任意に設定することができる。なお、図5においては、左右方向に多孔板14bをスライドさせる態様を示したが、装置の構成によっては上下方向に多孔板14bをスライドさせる構成としても良い。上下方向に多孔板14bをスライドさせる場合には、各領域の多孔板14bが移動時に干渉しないように風速制御手段12a,12bを熱風循環ダクト内の上下流にずらして配置すれば良い。本発明は、上記の耐炎化処理室上部の吹き出し部に設置する機幅方向風速制御手段と同等以上の効果が得られる。図1または図2に示すように、耐炎化処理室と比較して、通常はダクトの方が断面積が小さい、すなわち風速が比較的速いところでの制御を行うため、精度良く調整が可能である。また、断面積が小さい部分であるため、多孔板も大幅に小さくすることが出来るため、安価で精度の高いものが設備化できるメリットがある。更に、多孔板を並行移動することによる開口面積を可変とすることが容易に出来るようになるため、困難であった炭素繊維製造中での風速制御を可能とすることが出来るようになった。
(1)熱風吹き出し口での気体風速
熱風吹き出し口の多孔板から50cm下に離れた位置で、風速計として、日本カノマックス社製ANEMOMASUTERMODEL6162を使用し、常温下で、測定しようとする位置で5点測定し、その平均値を用いた。
(2)炉内平均温度
炉内平均温度は、上部の入側と出側、下部の入側と出側及び耐炎化炉の幅方向中心部の図6の15に示す5箇所の温度を熱電対で5分間連続測定した平均温度を示している。
(3)炭化収率
以下に示す方法により、炭化炉に供給するポリアクリロニトリル糸条の供給速度と目付、及び、巻取られる炭素繊維の巻取り速度と目付を測定した後、下記式により算出した。
ここでいう、炭素繊維の巻き取り速度とポリアクリロニトリルの供給速度は以下の方法で測定した。炭素繊維を巻き取る装置の直前にある駆動ローラー及びポリアクリロニトリルを供給する駆動ローラーを、アドバンテスト社ユニバーサルカウンター(TR5821)を用いて、1回転当たりに要する時間を10点測定して、その平均値を得た。その平均値と、ローラーの直径から速度を算出した。
(4)耐炎化繊維の密度
JIS R7601(1986)記載の方法に準拠する。すなわち、1.0〜1.5gの繊維を採取し、熱風乾燥機を用い、空気中120℃で2時間絶乾し、絶乾質量B(g)を測定した後、密度既知(密度ρ)のジクロロベンゼンに含浸して、ジクロロベンゼン中の繊維質量B(g)を測定する。そして、次式、繊維密度=(A×ρ)/(A−B)により繊維密度を求める。それを5点分実施した平均値を耐炎化糸の密度とした。なお、本実施例では、ジクロロベンゼンとして、和光純薬(株)製特級を精製せずに用いた。
(5)炭素繊維の引張強度
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて作製する。また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を、引張強度とする。なお、本実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製”ベークライト(登録商標)”ERL4221を用いた。
(実施例1)
図2に示した耐炎化炉を用い、炭素繊維の前駆体繊維であるポリアクリロニトリル糸条(単繊維繊度:1.1dtex、単繊維数:12,000本)を300本併走させて、炉内平均温度250℃の空気中で耐炎化処理して耐炎化繊維を得た。ポリアクリルロトリル糸条を出入りさせる炉本体の機幅方向は2.5m、長手方向の距離は8mであった。また、熱風の循環速度は熱風吸い込み口の熱風循環ファン9の出側の風速を4m/秒となるように設定した。
(実施例2)
熱風吹き出し口に、図4に示すような機幅方向風速制御手段を用いない以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。また、図4に示すような機幅方向風速手段が取り付けられていた位置から、下へ1m離れた長手方向中央部の風速において、耐炎化炉上部の風速は、実施例1と同位置である耐炎化炉側壁から100mm離れた領域で1.5m/秒、耐炎化炉側壁から1.25m離れた領域(すなわち機幅方向中央部)で3m/秒になるように調整した。実施例1と同様の耐炎化炉内の上部の糸条の入側と出側、下部の糸条の入側と出側と耐炎化炉の中心部へ設置した5箇所の温度計の測定結果から耐炎化炉内の平均温度は250℃であり、熱風吸い込み口から上に0.5m離れた位置である耐炎化炉長手方向中央部の耐炎化炉内下部において、耐炎化炉側壁から100mm離れた位置で2.0m/秒、耐炎化炉側壁から中心方向へ1.25m離れた位置で1.7m/秒であり、機幅方向中央部と側壁近傍との風速差は、0.3m/秒であった。また、同箇所における耐炎化炉内下部の側壁近傍の温度は236℃であり、耐炎化炉内下部の機幅方向中央部の温度は232℃であった。
(実施例3)
熱風循環ダクトに、図5に示すような機幅方向風速制御手段を用いない以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。また、図4に示すような機幅方向風速手段が取り付けられていた位置から、下へ1m離れた長手方向中央部の風速において、耐炎化炉上部の風速は、実施例1と同様耐炎化炉側壁から100mm離れた領域で1.5m/秒、耐炎化炉側壁から1.25m離れた領域(すなわち機幅方向中央部)で3m/秒になるように調整した。耐炎化炉内の上部の糸条の入側と出側、下部の糸条の入側と出側と耐炎化炉の中心部へ設置した5箇所の温度計の測定結果から耐炎化炉内の平均温度は250℃であり、熱風吸い込み口から上に0.5m離れた位置である耐炎化炉長手方向中央部の耐炎化炉内下部において、耐炎化炉側壁から100mm離れた位置で2.2m/秒、耐炎化炉側壁から中心方向へ1.25m離れた位置で1.8m/秒であり、機幅方向中央部と側壁近傍との風速差は、0.4m/秒であった。また、同箇所における耐炎化炉内下部の側壁近傍の温度は235℃であり、耐炎化炉内下部の機幅方向中央部の温度は230℃であった。
(比較例1)
図2に示す耐炎化炉に代えて、図3に示した耐炎化炉を用いた以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。多孔板としては、口径30mmΦ円孔(孔面積:700mm2)が1m2当たり625個穿孔されている機幅方向において風速制御されない多孔板を用い、図4に示すような機幅方向風速手段が取り付けられていた位置から、下へ1m離れた長手方向中央部の風速において、耐炎化炉上部の風速は、耐炎化炉側壁から100mm離れた領域で2.0m/秒、耐炎化炉側壁から1.25m離れた領域(すなわち機幅方向中央部)で2.0m/秒となった。耐炎化炉内の上部の入側と出側、下部の入側と出側と耐炎化炉の中心部へ設置した5箇所の温度計の測定結果から平均温度は245℃であり、熱風吸い込み口から上に0.5m離れた位置である耐炎化炉長手方向中央部の耐炎化炉内下部において、耐炎化炉側壁から100mm離れた位置で2.6m/秒、耐炎化炉側壁から中心方向へ1.25m離れた位置で1.4m/秒であり、耐炎化炉内下部における側壁近傍部と、機幅方向中央部との風速差は、1.2m/秒であった。また、同箇所における耐炎化炉内下部の側壁近傍の温度は246℃であり、耐炎化炉内下部の機幅方向中央部の温度は220℃であった。
2 :熱処理室
3 :熱風吹き出し口
3a:風速制御手段(中央部)
3b:風速制御手段(端部)
4 :熱風吸い込み口
5 :前駆体糸条
6 :ガイドロール
7a:移動側多孔板
7b:固定側多孔板
8 :ヒーター
9 :熱風循環ファン
10 :熱風循環ダクト
11 :風向制御板
12a:風速制御手段(中央部)
12b:風速制御手段(端部)
13 :整流板
14a:固定側多孔板
14b:移動側多孔板
15 :耐炎化炉内温度測定点
16 :入側の炉壁
17 :出側の炉壁
Claims (7)
- シート状に配列した複数本の糸条を横方向に通過させて熱処理するための熱処理室と、下方に向かって熱風を吹き出す熱風吹き出し口を前記熱処理室の上部に有し、前記熱風吹き出し口は、熱風の風速を熱処理室の機幅方向に可変とする機幅方向風速制御手段を有する、耐炎化炉。
- シート状に配列した複数本の糸条を横方向に通過させて熱処理するための熱処理室と、下方に向かって熱風を吹き出す熱風吹き出し口と、熱風を吸い込む熱風吸い込み口と、熱風吸い込み口から熱風吹き出し部に熱風加熱手段および熱風送風手段を具備した熱風を循環する循環部からなる耐炎化炉において、熱風送風手段と熱風吹き出し口の間の循環部に熱風の風速を熱処理室の機幅方向に可変とする機幅方向風速制御手段を有する、耐炎化炉。
- 前記機幅方向風速制御手段が、2枚の多孔板を重ねてなり、一方の多孔板を並行移動することにより開口面積を可変とする1対の風速制御手段を、機幅方向に複数対配置してなる、請求項1または2に記載の耐炎化炉。
- 熱処理室の機幅方向両側壁には、糸条方向に沿う方向に、側壁下部面と鋭角をなすように風向制御板が設置されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の耐炎化炉。
- 前記風向制御板は、側壁下部面との角度を可変とする角度変更手段を有する、請求項4に記載の耐炎化炉。
- 複数本のポリアクリロニトリル糸条をシート状に配列し、請求項1〜5のいずれかに記載の耐炎化炉に横方向に通過させて耐炎化処理する、耐炎化繊維の製造方法。
- 請求項6に記載の製造方法で得られた耐炎化繊維を炭化処理する、炭素繊維の製造方法。
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