JP2007246802A - ポリエステル樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジオール(c1)と、二塩基酸、二塩基酸無水物、及び二塩基酸のアルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のカルボン酸成分(c2)とを反応させてなる、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を、溶剤の存在下で多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させてなるカルボキシル基を有するポリエステル樹脂であって、該カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の少なくとも1.2倍であることを特徴とするカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
【選択図】なし
Description
また、特開2001−31940号公報(特許文献2参照)ではポリエステル樹脂とベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートとエポキシ化合物をブレンドしているが、硬化の過程ではエポキシ化合物と酸無水物との反応が優先し、ポリエステル樹脂の分子量増大が起きるとは考えにくい。
塗料組成物の例としては、密着性や加工性の向上を狙いとして、特開平11−116667号公報(特許文献3参照)や特開2001−40278号公報(特許文献4参照)、特開2003−213201号公報(特許文献5参照)が公開されている。
特開平11−116667号公報では、ポリエステル樹脂中の水酸基に、分子中に2個以上のカルボン酸無水基を含有するエステル化合物を反応させているが、反応後の数平均分子量は10000以下であり、また、反応前後における数平均分子量の変化は小さいものであり、この反応における分子量の増大は意図していないと考えられる。
特開2001−40278号公報では、ポリエステル樹脂の末端にカルボキシル基の導入を意図している。
特許文献1、3、4、及び5はポリエステル樹脂と分子内に2個以上のカルボン酸無水物基を有する化合物とを反応させているが、いずれも酸価の付与だけで、分子量の増大は狙っていない。
さらには、フイルム同士の接着で嫌われる硬化時にアウトガスを発生させる様な架橋剤、アミノ樹脂などの所謂縮合系架橋剤を用いることなく、硬化時にアウトガスを発生させない所謂付加反応型の架橋剤を用いることの出来るポリエステル樹脂を提供することにある。
次いで前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を溶剤に溶解した後、前記溶剤の沸点以下の温度で、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させることを特徴とする、数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍である、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の製造方法である。
このように、本来、末端にしか官能基の存在しない直鎖型ポリエステル樹脂の分子途中にカルボキシル基を導入することにより、高凝集力で且つ架橋密度の高い被膜を形成できる。さらには、高酸価を付与することにより、基材との密着性に優れ、またアミノ樹脂等の硬化時にアウトガスを発生させる架橋剤を用いることなく、付加反応型の架橋剤を用いることができる。
(c3)は、広く知られている多価アルコールと多価カルボン酸もしくはその無水物やアルキルエステルとの重縮合反応(エステル化反応ないしエステル交換反応)により合成することができる。
例えば、ジオール(c1)とカルボン酸成分(c2)とを反応釜に仕込み、加熱昇温することにより、エステル化反応またはエステル交換反応を行い、この反応で生じた水またはアルコールを留去しながら所定の酸価になるまで反応を続ける。必要に応じて、テトラブチルチタネート、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酢酸スズなどの重合触媒を用いることが出来る。
この反応は常圧下、減圧下の何れで行っても良いが、高分子量にするためには減圧下での反応が好ましい。又分子量の調節はジオール(c1)と、カルボン酸成分(c2)との仕込み比等によって行うことができる。
なお、ジオール(c1)とカルボン酸成分(c2)との反応は、無溶剤下でおこなうことが好ましい。
ジオール(c1)とカルボン酸成分(c2)との反応は、脱水もしくは脱アルコール反応が始まる温度から徐々に昇温し、200〜250℃で数時間保持することが好ましく、220〜240℃で3〜5時間保持することがより好ましい。また、減圧下で高分子量にする場合には、5mmHg以下の減圧度で、230〜250℃で1〜8時間反応を続ける。
即ち、原料として用いるジオール(c1)と、カルボン酸成分(c2)は、両者とも2官能であるが、必要に応じて3官能以上の多価アルコールや多塩基酸類を併用する場合には、アルコール成分・酸成分の内、それぞれ3モル%以下に留めることが好ましい。3官能以上のアルコール成分・酸成分が3モル%以上になると、分子量を大きくすることが出来ず、接着強度が低下する。
また、多価アルコール及び多塩基酸に特に制限はないが、ジオール(c1)、カルボン酸成分(c2)、および必要に応じて用いられる3官能以上の多価アルコールや多塩基酸類の組み合わせとしては、得られる水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)のガラス転移温度が30℃〜60℃になるように組み合わせることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以下になると、本発明のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂から得られる塗料や接着剤の耐熱性が低下したり、ブロッキング現象が生じやすい。一方、ガラス転移温度が60℃以上になると、加工性が低下したり、接着強度が低下する場合がある。
あるいはジメチルテレフタル酸、ジメチルイソフタル酸、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香族ジカルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸類としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸類としては、(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等が挙げられる。
カルボン酸成分(c2)は、得られる塗膜の硬度と可撓性を勘案してこれらのうちから適宜選択して使用することができる。
また、必要に応じて用いられる3官能以上の多価カルボン酸類としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸等が挙げられる。
また、必要に応じて用いられる3官能以上の多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
本発明のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、前述のように水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を、溶剤の存在下に多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させて得られるものであり、その反応方法を工夫することにより、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の分子末端のみならず、末端以外の部位にもカルボキシル基を導入することに特徴がある。
なお、本発明でいう「多塩基酸」とは、「二塩基酸」は含まないものである。
さらに、本発明は、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を多塩基酸もしくはその無水物(c4)で鎖延長して分子量を増大することに特徴があり、本発明のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍であることが重要である。
水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の分子量が小さいと、被膜の硬化時に、分子中に導入されたカルボキシル基と架橋剤との架橋点間分子量が小さくなり、強固な接着性を得ることが出来ない。
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)と多塩基酸もしくはその無水物(c4)との反応は逐次的に次々と鎖延長する反応ではなく、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の2分子づつが繋がって1分子を形成しているものと推察される。
カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍となるためには、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の分子の35%以上が2分子づつ繋がる必要があり、100%の分子が2分子づつ繋がると、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの2倍となる。100%の分子が2分子づつ繋がり、さらにそれらが繋がった場合には2倍以上の分子量となる。
従って、本発明の分子量の大きなカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を得るためには、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の分子量もある程度大きくなければならない。
これらの内、(無水)ピロメリット酸やエチレングリコールビストリメリテート(二無水物)が反応制御や経済性の面で好ましい。これら四塩基酸もしくはその無水物の添加量としては、本発明のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂に与える酸価で決められる。
例えば、エチレングリコールビストリメリテート(二無水物)を反応させる場合、酸価を5mgKOH/gとしたいときには、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(c3)100重量部に対して2.0重量部程度添加し、酸価を40mgKOH/gとしたい時には、15重量部程度添加すればよい。
四塩基酸もしくはその無水物の添加量が少ないと、水酸基を有するポリエステル樹脂末端の水酸基の当量に対して不足となり、鎖延長反応が不十分となり、十分に大きな分子量が得られなくなる。また四塩基酸もしくはその無水物の添加量が多過ぎると、水酸基を有するポリエステル樹脂末端の水酸基の当量に対して過剰となり、鎖延長反応が途中で停止してしまい、同様に十分に大きな分子量が得られなくなる。
本発明のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、塗料や接着剤に用いられるが、これらは常温の環境下だけではなく、低温や高温の環境下で使用される場合が多い。低温の環境下で使用される場合には、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は低い方が好ましく、高温の環境下で使用される場合にはガラス転移温度は高い方が好ましい。
例えばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素類、
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、
ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類の各種溶剤が挙げられ、これらの中でも芳香族炭化水素類とケトン類との混合溶剤が好適に用いられる。
これら溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。
水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)と多塩基酸もしくはその無水物(c4)との反応を無溶剤下でおこなった場合、目的の生成物が得られる以前にゲル化に至りやすい。
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)と多塩基酸もしくはその無水物(c4)との反応においては、反応温度は70〜140℃であることが好ましく、90〜120℃であることがより好ましい。
また、上記反応温度は、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を得るためのジオール(c1)とカルボン酸成分(c2)との反応における反応温度よりも低い温度であることが好ましい。
水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を溶剤に溶解して、比較的低い温度で多塩基酸もしくはその無水物(c4)を反応させることにより、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍となり得る。
触媒として用いられる四級アンモニウム塩としては、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。これらの触媒の添加量としては、反応温度にもよるが通常、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)100重量部に対して0.1〜1重量部用いられる。
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−グリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタングリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン等が挙げられる。また、フェノールやクレゾールのノボラック型エポキシ樹脂やナフタレン型やジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等も挙げられる。これらは、それぞれ単独、または併用して用いることが出来る。
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、
エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、
t−ブタノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類、
ε−カプロラクタム等のラクタム類
が挙げられ、その他、芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。
ブロック化イソシアネート化合物は前記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の方法により、反応させて得られ、それぞれ単独、もしくは併用して使用できる。
プラスチックとしては、PET、PP、PE、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド等の各種プラスチック及びそれらのフィルムが用いられ、それらの素材そのままで、あるいはコロナ処理や、電子線照射、UV照射等の表面処理を施した素材が用いられる。
また、PVAやトリアセチルセルロース、シクロオレフィンフィルム等のフラットパネル光学用途フィルムの接着剤としても用いることが出来る。
金属素材としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅メッキ鋼板、ティンフリスチール、ニッケルメッキ鋼板、クロム処理鋼板、アルミニウム板等が用いられる。また、ポリイミドフィルムに銅箔をラミネートしてエッチング処理により電気回路を形成した所謂フレキシブルプリントサーキット(FPC)基板等にも好適に用いられる。
[合成例1](水酸基を有するポリエステル樹脂A−1の合成)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び還流脱水装置を備えたフラスコに、ジメチルテレフタル酸262.7部、エチレングリコール91.1部、ネオペンチルグリコール91.7部、2−メチル−1,3−プロパンジオール52.9部及び酢酸亜鉛0.035部を仕込んだ。原料を加熱溶融して撹拌できるようになったら撹拌を開始して、留出するメタノールを常圧下に系外に除きながら170℃から220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、220℃で1時間保持した。内温を一旦170℃まで冷却し、イソフタル酸135.7部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸65.9部を加え、留出する水を常圧下に系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温し、さらに240℃で保持して、酸価が14.6になるまで反応を続けた。次いで、テトラブチルチタネート0.056部を加え、1時間かけて10mmHgまで減圧初期重合を行い、その後、5mmHg以下に減圧して8時間重合を続け、目標分子量に達したことを確認して水酸基を有するポリエステル樹脂A−1を得た。その特性値を表−1に示す。
合成例1と同様の方法で、表−1の仕込みモル比に従って、それらの合計量を700部として合成を行い、表−1に示した特性値の水酸基を有するポリエステル樹脂A−2〜A−5を得た。
[合成例6](カルボキシル基を有するポリエステル樹脂B−1の合成)
合成例1で得られた水酸基を有するポリエステル樹脂A−1、100部をトルエン100部に溶解した。次いで無水ピロメリット酸を2.5部、TBAB(触媒:テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド)を0.5部加え、100℃で6時間反応を続けた。目標の酸価と分子量を確認し、さらにメチルエチルケトンを53.8部加えて均一に溶解した後取り出した。得られたカルボキシル基を有するポリエステル樹脂B−1の特性値を表−2に示す。
合成例6と同様の方法で、表−2の仕込み重量比に従って合成を行い、表−2に示した特性値のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂B−2〜B−10を得た。
[比較合成例1](水酸基を有するポリエステル樹脂A−2の溶解)
合成例2で得られた水酸基を有するポリエステル樹脂A−2、100部をトルエン100部、メチルエチルケトン50部に溶解して、水酸基を有するポリエステル樹脂溶液C−1を得た。
合成例2で得られた水酸基を有するポリエステル樹脂A−2、100部をトルエン100部に溶解した。次いで無水トリメリット酸を3.5部、TBABを0.5部加え、100℃で6時間反応を続けた。目標の酸価と分子量を確認し、さらにメチルエチルケトンを55.3部加えて均一に溶解した後取り出した。
得られたカルボキシル基を有するポリエステル樹脂C−2の特性値を表−2に示す。
比較合成例2と同様の方法で、表−3の仕込み重量比と反応条件に従って合成を行い、表−3に示した特性値のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂C−3、C−4を得た。
トルエンを用いずに無溶剤下で反応をおこなったこと以外は比較合成例2と同様に反応をおこなった。
なお、C−6は反応途中にゲル化したので、以後の評価は行わなかった。
合成例I、合成例II、比較合成例で合成した水酸基を有するポリエステル樹脂及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を、夫々0.1%の濃度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解して、0.45μmのフィルターで濾過して試料とし、ゲル浸透型クロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定装置には昭和電工製GPC101を用い、カラムはShodex KF−806L×2 + KF−804L + KF−802 の4本連結カラムを用いた。移動相には上記と同様のテトラヒドロフラン(THF)を用い、注入量200μl、カラム温度40℃、流速1.0ml/minの条件で測定を行った。分子量の算出は標準ポリスチレン換算で行った。
ポリエステル樹脂1gをトルエン/イソプロピルアルコール=2/1(重量)の混合溶剤20mlに溶解し、0.1mol/LのKOHエタノール溶液で滴定して、樹脂1g当りのKOHのmg数を求めた。
示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/minの昇温速度で測定した。
上記、分子量、酸価、ガラス転移温度の結果を表−1、表−2、表−3に示す。
[実施例I−1]
合成例IIで得られたカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(B−1)を樹脂分換算(以下樹脂分換算で示す)で90部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828を10部、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が30%となるように混合溶解して、接着剤溶液を得た。
実施例1と同様の方法で、表−4の組成に従って接着剤溶液を得た。
[比較例I−1〜6]
実施例1と同様の方法で、表−4の組成に従って接着剤溶液を得た。
1.接着強度試験
上記接着剤溶液を厚さ50μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmと なる様に塗布し80℃で2分乾燥して接着剤積層物を得た。次に厚さ50μmのポリイ ミドフィルム上に、上記接着剤積層物を接着剤層の面がポリイミドフィルムと接する様 に重ね合わせ、80℃、1kgf/cm2、100mm/minの条件でラミネートし た。
この様にして得られた、ポリイミドフィルム/接着剤/ポリイミドフィルムの積層物 を加熱プレス機にて、150℃、10MPa、の条件下で2分間熱圧着した後、150 ℃のオーブンで3時間熱処理して硬化させた。このサンプルを10mmの幅にカットし て、引っ張り速度50mm/minで180度剥離試験を行った。
上記接着強度試験で作製したサンプルを10mmの幅にカットしたものを、260℃ で溶融した鉛フリー半田浴に1分間平らに乗せた後、取り出して接着剤層の発泡状態を 観察した。
〇 :試験前の状態と全く変化なし
〇△:試験片に5個以下の膨れが発生
△ :試験片の面積の1/2に膨れが発生
× :試験片全面に膨れが発生
上記接着強度試験で作製したサンプルを10mmの幅にカットしたものを、40℃、 80%加湿下にて2日間放置した後、260℃で溶融した鉛フリー半田浴に1分間平ら に乗せた後、取り出して接着剤層の発泡状態を観察した。
〇 :試験前の状態と全く変化なし
〇△:試験片に5個以下の膨れが発生
△ :試験片の面積の1/2に膨れが発生
× :試験片全面に膨れが発生
接着剤溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなる ように塗布し、80℃で2分間乾燥させた。この様にして得られた接着剤積層物を厚さ 35μmの圧延銅箔と貼り合せる際、圧延銅箔の酸処理面が接着剤層と接するようにし て、150℃、10MPaの加圧下で2分間プレスした。得られた、ポリイミドフィル ム/接着剤/圧延銅箔の積層物を150℃にて3時間熱処理して硬化させた。この様に して銅貼り積層板を得た。この銅貼り積層板を常法により銅箔面にフォトレジスト塗布 、パターン露光、現像、銅箔パターンエッチング、フォトレジスト剥離工程を経て、銅 線間が100μmとなる櫛型のパターン基板を形成した。
また、上記接着剤溶液を厚さ50μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30 μmとなる様に塗布し、80℃で2分間乾燥させた。この積層物を140℃で1時間熱 処理してフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを得た。このカバーフイルムの 接着剤層と上記パターン基板のパターン形成面とを貼り合わせ、150℃、10MPa の加圧下にて2分間プレスし、ラミネートした。この積層物を150℃にて3時間熱処 理して目的のサンプルを得た。この様にして得られた耐マイグレーション試験用FPC について、温度85℃、湿度85%の環境下で、印加電圧DC24V、1000時間の 導電試験を行った。
〇 :短絡の発生、及び基板の変色が全くなし
〇△:短絡の発生は無いが、基板が僅かに変色
△ :600時間で短絡が発生、基板の変色が著しい
× :300時間で短絡が発生、基板の変色が著しい
上記1〜4までの結果を表−4に示す。
[実施例II−1]
合成例IIで得られたカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(B−2)を樹脂分換算(以下樹脂分換算で示す)で90部、多官能エポキシ化合物エピコート1031Sを10部、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が30%となるように混合溶解して、接着剤溶液を得た。この接着剤溶液を用いて、乾燥後の厚みが30μmとなる様に離形紙に塗布し、80℃で2分間乾燥させた。この様な方法で離形紙/接着剤層の積層物を作製した。
実施例1と同様の方法で、表−5の組成に従って接着剤溶液を得、同様の方法で接着剤積層物を作製した。
[比較例II−1〜5]
実施例1と同様の方法で、表−5の組成に従って接着剤溶液を得、同様の方法で接着剤積層物を作製した。
1.接着強度の測定
(1)亜鉛鋼板/亜鉛鋼板
表面を脱脂した亜鉛鋼板(0.5mm厚×15mm幅×100mm長)に、実施例I I−1〜7、比較例II−1〜5で作製した接着剤積層物を接着剤層の面を亜鉛鋼板に 接するようにして重ね合わせ、80℃、1kgf/cm2、200m/minの条件で ラミネートした。次に、離形紙を剥がして露出した接着剤層の面に、もう一方の亜鉛鋼 板を重ね合わせ、80℃、1kgf/cm2、200m/minの条件でラミネートし て、亜鉛鋼板/接着剤層/亜鉛鋼板の積層物を得た。この積層物を、150℃、3MP aの加圧下で2分間プレスして、接着強度測定用サンプルを作製した。
(2)亜鉛鋼板/ウレタンゴム
(1)と同様の方法で亜鉛鋼板/接着剤層をラミネートし、離形紙を剥がして露出した 接着剤層の面に、ウレタンゴムシート(2mm厚×15mm幅×100mm長)を重ね 合わせて、(1)と同様の方法で接着強度測定用サンプルを作製した。
(3)アルミニウム板/アルミニウム板
(1)と同様の方法で、表面を脱脂したアルミニウム板(5182Al材、0.28m m厚×15mm幅×100mm長)に、接着剤積層物を重ねあわせ、同様の方法で、ア ルミニウム板/接着剤層/アルミニウム板の積層物を作製した。
(4)コロナ処理PET/コロナ処理PET
(1)と同様の方法で、コロナ表面処理を施したPET(ポリエチレンテレフタレート )フィルム(100μm厚×15mm幅×100mm長)同士を接着剤層を介して貼り 合わせて、接着強度測定用サンプルを作製した。
[実施例III−1]
合成例IIで得られたカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(B−1)を樹脂分換算(以下樹脂分換算で示す)で90部、多官能エポキシ化合物エピコート1031Sを10部、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が30%となるように混合溶解した。これに酸化チタン(タイペークCR−93、石原産業製)100部を加えて、アイガーミルにて顔料分散を行い、ホワイト塗料を作製した。
実施例1と同様の方法で、表−6の組成に従って、ホワイト塗料を作製した。
1.硬化性試験
試験片の表面にメチルエチルケトン(MEK)溶剤を浸した脱脂綿を当てて、これに加重1kgを掛けながら往復させる。その際、素地に達した往復回数から硬化の程度を判断した。
◎ :優良、50回以上
〇△:良好、20回以上〜50回未満
△ :やや硬化不良、5回以上〜20回未満
× :未硬化、5回未満
2.折り曲げ加工性試験
試験板を3cm×5cmの大きさに裁断し、塗膜面を外側にして、折り曲げ部の幅が3cmとなるようにして、厚さ0.25mmのブリキ板を一枚はさんで試験片を180度折り曲げ、1kgの錘を50cmの高さから落下させて試験片を完全に折り曲げる。この曲げ加工部を、1%食塩水溶液に浸漬したスポンジに接触させ、6Vの電圧をかけたときの通電量(mA、少ないほど折り曲げ加工性が良好)により、評価した。
◎ :優良、1mA以下
〇△:良好、1mA以上〜5mA未満
△ :やや折り曲げ加工性不良、5mA以上〜20mA未満
× :折り曲げ加工性不良、20mA以上
3.絞り加工性
塗膜面を外側にして、直径3cm、深さ3cmのキャップ形に絞り加工を行い、そのキャップを沸騰水中で30分間、熱水処理を行った。キャップ壁面の塗膜の剥離状態を観察した。
◎ :優良、キャップの壁面に剥離が認められない
〇△:良好、キャップの底面から5mmの高さまで剥離が発生
△ :絞り加工性不良、キャップの底面から10mmの高さまで剥離が発生
× :絞り加工性不良、キャップの底面から10mmを超える高さまで剥離が発生
4.耐ブロッキング試験
試験板を10cm×10cmの大きさに切り、試験板の塗膜面とブリキ板を重ね合わ せて、40℃、5kgf/cm2の条件で1時間プレスした後、試験板を固定して、ブ リキ板を引っ張り試験機にて100mm/minの速度で面方向に引き剥がし、その時 の引っ張り荷重で耐ブロッキング性を評価した(50g未満が実用レベル)。
◎ :優良、10g未満
〇△:良好、10g以上〜50g未満
△ :やや耐ブロッキング性不良、50g以上〜100g未満
× :耐ブロッキング性不良、100g以上
上記1〜4までの試験結果を表−6に示す。
Claims (10)
- ジオール(c1)と、二塩基酸、二塩基酸無水物、及び二塩基酸のアルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のカルボン酸成分(c2)とを反応させてなる、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を、溶剤の存在下で多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させてなるカルボキシル基を有するポリエステル樹脂であって、該カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが、前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍であることを特徴とするカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの3倍以下であることを特徴とする請求項1記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- 多塩基酸もしくはその無水物(c4)が、四塩基酸もしくはその無水物であることを特徴とする請求項1又は2記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- 水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)が10000〜50000、重量平均分子量(Mw1)が20000〜70000であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- 酸価が5〜40(mgKOH/g)であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- ガラス転移温度が30℃〜60℃であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- ジオール(c1)と、二塩基酸、二塩基酸無水物、及び二塩基酸のアルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のカルボン酸成分(c2)とを無溶剤下に反応させて水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を得、
次いで前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を溶剤に溶解した後、前記溶剤の沸点以下の温度で、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させることを特徴とする、数平均分子量(Mn2)及び重量平均分子量(Mw2)のいずれもが前記水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)の数平均分子量(Mn1)及び重量平均分子量(Mw1)それぞれの少なくとも1.2倍である、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂の製造方法。 - 四級アンモニウム塩の存在下に、水酸基を有するポリエステル樹脂(c3)を多塩基酸もしくはその無水物(c4)と反応させることを特徴とする請求項7記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の製造方法。
- 請求項7又は8記載の製造方法によって得られるカルボキシル基を有するポリエステル樹脂。
- 請求項1ないし6、又は請求項9いずれか記載のカルボキシル基を有するポリエステル樹脂とエポキシ化合物とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
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